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元スレ僕「小学校で」女「つかまえて」
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幼稚園の運動会で、僕は同じように小さなトラックを走っていた。
最後の種目で僕の組が負けていて……前を走っていた誰か……隣じゃない誰かを夢中で追いかけていたんだ。
その時はリレーじゃなくて借り物競争だったのを覚えている。
しかし所詮は幼稚園児の借り物競争。
紙に書かれている物は全てコースの途中に置かれ用意されている。
走って、紙に書いてある物をマイクの前で読み上げて、物を拾ってゴールへ走る。
幼稚園ながら、しっかりとした競技だったと思う。
……。
僕は確かじょうろを借りたんだ。
用意されていたのは、子供用の小さいやつじゃない。
口が長くて、幼稚園児が扱うにはちょっとバランスの悪いじょうろだったのをよく覚えている。
最後の種目で僕の組が負けていて……前を走っていた誰か……隣じゃない誰かを夢中で追いかけていたんだ。
その時はリレーじゃなくて借り物競争だったのを覚えている。
しかし所詮は幼稚園児の借り物競争。
紙に書かれている物は全てコースの途中に置かれ用意されている。
走って、紙に書いてある物をマイクの前で読み上げて、物を拾ってゴールへ走る。
幼稚園ながら、しっかりとした競技だったと思う。
……。
僕は確かじょうろを借りたんだ。
用意されていたのは、子供用の小さいやつじゃない。
口が長くて、幼稚園児が扱うにはちょっとバランスの悪いじょうろだったのをよく覚えている。
他のみんなは物を拾う時に、いちいち止まったりしてた。
でも僕は、走りながらじょうろを掴んで全力で誰かを追いかけていたんだ。
最後のコーナー……最後の直線。
僕は少し後ろに迫っていた。
視界にゴールテープが見えた直線で……相手を抜けるはずだった。
そこで一気に加速しようとした瞬間……僕のじょうろが彼に掴まれた。
長い口をしっかりと握っていた手のせいで、僕はバランスを崩してしまい……。
泣いている僕を先生たちが抱き起こして、親の所へ連れていってくれたのを覚えている。
僕は、ゴールする事が出来なかった。
先生が来てくれるまでの間、ずっと一人で僕は泣いていた。
……。
でも僕は、走りながらじょうろを掴んで全力で誰かを追いかけていたんだ。
最後のコーナー……最後の直線。
僕は少し後ろに迫っていた。
視界にゴールテープが見えた直線で……相手を抜けるはずだった。
そこで一気に加速しようとした瞬間……僕のじょうろが彼に掴まれた。
長い口をしっかりと握っていた手のせいで、僕はバランスを崩してしまい……。
泣いている僕を先生たちが抱き起こして、親の所へ連れていってくれたのを覚えている。
僕は、ゴールする事が出来なかった。
先生が来てくれるまでの間、ずっと一人で僕は泣いていた。
……。
今の僕は泣いていない。
僕は大人だから。
一年生だけど一年生じゃないから。
ただ地面に突っ伏して、昔の記憶だけを思い返している。
幼稚園の記憶……今の僕も同じ事を幼稚園で経験したんだろうか。
経験していないなら、今日がその時なのかな。
もう何でもいい。
僕は負けてしまった。
あとは先生が僕を起こして、ゴールしないまま運動会が終わる。
本当にそれだけ。
僕は大人だから。
一年生だけど一年生じゃないから。
ただ地面に突っ伏して、昔の記憶だけを思い返している。
幼稚園の記憶……今の僕も同じ事を幼稚園で経験したんだろうか。
経験していないなら、今日がその時なのかな。
もう何でもいい。
僕は負けてしまった。
あとは先生が僕を起こして、ゴールしないまま運動会が終わる。
本当にそれだけ。
「……」
足音がした。誰かが僕の元へ駆け寄ってくる。
こうして地面に耳をくっつけているとそれがよくわかる。
頬にくっついている石灰の線がヒンヤリとして気持ちいい。
「……」
「転んじゃったね」
先生じゃない。
僕の記憶と違う。
足音がした。誰かが僕の元へ駆け寄ってくる。
こうして地面に耳をくっつけているとそれがよくわかる。
頬にくっついている石灰の線がヒンヤリとして気持ちいい。
「……」
「転んじゃったね」
先生じゃない。
僕の記憶と違う。
「でも僕ちゃん、カッコよかったよ。すごく速くて……びっくりした」
(やめてよ)
「ちゃんとドキドキもしたしさ。それに見ていて楽しかったよ、ありがとう」
(ダメなんだ、話しかけられると)
「ね……早くゴールしてさ、駄菓子屋行こうよ。何でも買ってあげるから、ね」
(子供扱いしないで)
「なんで起き上がってくれないの……?」
(だって君の声を聞いたら僕は)
「ねえ、どうしてそんなに泣いて……いるの?」
(僕は泣いちゃう、から……)
(やめてよ)
「ちゃんとドキドキもしたしさ。それに見ていて楽しかったよ、ありがとう」
(ダメなんだ、話しかけられると)
「ね……早くゴールしてさ、駄菓子屋行こうよ。何でも買ってあげるから、ね」
(子供扱いしないで)
「なんで起き上がってくれないの……?」
(だって君の声を聞いたら僕は)
「ねえ、どうしてそんなに泣いて……いるの?」
(僕は泣いちゃう、から……)
「っく……ひっく……うっ……」
「やっと立ってくれた。大丈夫?」
「ぐっ……ぐすっ……」
「よしよし、よく頑張ったね」
ポンポン、と優しく頭を二回だけ叩いてくれる。
何を言われても僕は言葉を話せない。
口の奥から押し寄せる空気の勢いが激しすぎて、ただ泣きながら……彼女の言葉を聞いている。
「僕ちゃんは頑張った。だから泣く事なんてないんだよ?」
「ほら、男の子でお兄ちゃんでしょ。シャキッとしなさい、シャキッっと!」
「そんなに泣いているなら、ずっとそこでそうしてる?」
遠い昔に怒られて言われたような言葉ばかりが……。
記憶の中かと錯覚するくらいに、僕は昔のように泣いている。
「やっと立ってくれた。大丈夫?」
「ぐっ……ぐすっ……」
「よしよし、よく頑張ったね」
ポンポン、と優しく頭を二回だけ叩いてくれる。
何を言われても僕は言葉を話せない。
口の奥から押し寄せる空気の勢いが激しすぎて、ただ泣きながら……彼女の言葉を聞いている。
「僕ちゃんは頑張った。だから泣く事なんてないんだよ?」
「ほら、男の子でお兄ちゃんでしょ。シャキッとしなさい、シャキッっと!」
「そんなに泣いているなら、ずっとそこでそうしてる?」
遠い昔に怒られて言われたような言葉ばかりが……。
記憶の中かと錯覚するくらいに、僕は昔のように泣いている。
せつないな…
あとずっとスルーしてたけど「僕」が白じゃない?
あとずっとスルーしてたけど「僕」が白じゃない?
「ぐすっ……とっ……となりがっ……ぼくをひっぱったんだよっ……ぐっ……」
涙と空気に負けないよう、僕は精一杯の言葉を彼女に伝える。
「だ、か……ら……ぐすっ、ぼくはわるく……ない……ヒクッ……」
その言い訳は本当に子供のまま。
情けないくらいの感情を、僕は彼女に吐き出していた。
「うん……うん。私は僕ちゃんの事わかっているから。だから心配しないで大丈夫だよ」
「ぐす……うっ……うん……」
「えらいえらい。じゃあ……そろそろゴールしよう。はい、ちゃんとバトン持って」
「ぐす……」
「アンカーがそんな顔しないの。ほら……手繋いで」
「す……」
「ゆっくりでいいから、ね。ほら……」
涙と空気に負けないよう、僕は精一杯の言葉を彼女に伝える。
「だ、か……ら……ぐすっ、ぼくはわるく……ない……ヒクッ……」
その言い訳は本当に子供のまま。
情けないくらいの感情を、僕は彼女に吐き出していた。
「うん……うん。私は僕ちゃんの事わかっているから。だから心配しないで大丈夫だよ」
「ぐす……うっ……うん……」
「えらいえらい。じゃあ……そろそろゴールしよう。はい、ちゃんとバトン持って」
「ぐす……」
「アンカーがそんな顔しないの。ほら……手繋いで」
「す……」
「ゆっくりでいいから、ね。ほら……」
一歩。
また一歩。
あの日辿り着けなかったゴールが近付いてくる。
僕と彼女は、大きな拍手に包まれながらゆっくりと二人で歩いている。
涙でオレンジの光が滲んで、ぼやけている。
一番近くにいる彼女の顔も、僕にはよく見えていない。
ただ僕の左手を引っ張ってくれている彼女だけを信じて、ゴールに向かって歩いている。
「僕ちゃん、一緒……」
彼女の顔は笑っている。
僕も笑顔に応えるよう、たくさん笑った。
涙でクシャクシャの顔を、彼女はいつもの笑顔で受け入れてくれる。
「じゃあ、いくよ……」
「うん……」
『せーのっ……』
また一歩。
あの日辿り着けなかったゴールが近付いてくる。
僕と彼女は、大きな拍手に包まれながらゆっくりと二人で歩いている。
涙でオレンジの光が滲んで、ぼやけている。
一番近くにいる彼女の顔も、僕にはよく見えていない。
ただ僕の左手を引っ張ってくれている彼女だけを信じて、ゴールに向かって歩いている。
「僕ちゃん、一緒……」
彼女の顔は笑っている。
僕も笑顔に応えるよう、たくさん笑った。
涙でクシャクシャの顔を、彼女はいつもの笑顔で受け入れてくれる。
「じゃあ、いくよ……」
「うん……」
『せーのっ……』
東の空から、うっすらと光る月が顔を出した頃。
僕たちの運動会は終わった。
母「女ちゃん、ありがとうね」
女「いえ。いいんです、僕ちゃん頑張ってましたし」
妹「おねーちゃん、おねーちゃん」
女「あははっ、よしよし」
妹「きゃっきゃっ」
当然のように彼女は僕と一緒にいて、今も僕の手を握っている。
暗闇だから誰にも見えているはずはない。
例え見えていたとしても、関係ない。
父「よし、みんなでご飯でも食べに行くか」
女「えっ、じゃあ私はこれで……」
僕「……」
グッ。
僕「一緒に行こう?」
僕たちの運動会は終わった。
母「女ちゃん、ありがとうね」
女「いえ。いいんです、僕ちゃん頑張ってましたし」
妹「おねーちゃん、おねーちゃん」
女「あははっ、よしよし」
妹「きゃっきゃっ」
当然のように彼女は僕と一緒にいて、今も僕の手を握っている。
暗闇だから誰にも見えているはずはない。
例え見えていたとしても、関係ない。
父「よし、みんなでご飯でも食べに行くか」
女「えっ、じゃあ私はこれで……」
僕「……」
グッ。
僕「一緒に行こう?」
……。
後で母親が教えてくれた事だけど。
彼女が僕を起こしてくれていた時、ビデオのバッテリーが丁度切れてしまっていたらしい。
一番いいシーンが撮れなかったと、父は嘆いていたそうだ。
僕(ううん。記録には残らなくてもいいんだ)
女「……ん?」
美味しそうにハンバーグを頬張る彼女を見つめながら、僕はそんな事を考えている。
後で母親が教えてくれた事だけど。
彼女が僕を起こしてくれていた時、ビデオのバッテリーが丁度切れてしまっていたらしい。
一番いいシーンが撮れなかったと、父は嘆いていたそうだ。
僕(ううん。記録には残らなくてもいいんだ)
女「……ん?」
美味しそうにハンバーグを頬張る彼女を見つめながら、僕はそんな事を考えている。
僕(今日の記憶を僕は忘れないから。この先また別の時間に行ったとしても……)
女「どうかした? ……あ、一口食べたいんだ。どうしよっかな~」
僕(彼女と一緒にゴールした、あの瞬間のドキドキを僕は……忘れない)
女「はいっ、あーん」
僕「……あーん」
女「美味しい?」
僕「おいしいよ。当たり前だよ」
女「ふふっ、よかった」
僕は彼女が食べさせてくれたハンバーグの味も……きっと忘れない。
女「ごちそうさまでした」
……彼女がここにいると、何だか家族が一人増えたみたいだ。
父「よし、みんな食べ終わったかな」
母「じゃあ帰りましょ。女ちゃん、送って行くからね」
妹「おねーちゃん、おねーちゃん」
女「どうかした? ……あ、一口食べたいんだ。どうしよっかな~」
僕(彼女と一緒にゴールした、あの瞬間のドキドキを僕は……忘れない)
女「はいっ、あーん」
僕「……あーん」
女「美味しい?」
僕「おいしいよ。当たり前だよ」
女「ふふっ、よかった」
僕は彼女が食べさせてくれたハンバーグの味も……きっと忘れない。
女「ごちそうさまでした」
……彼女がここにいると、何だか家族が一人増えたみたいだ。
父「よし、みんな食べ終わったかな」
母「じゃあ帰りましょ。女ちゃん、送って行くからね」
妹「おねーちゃん、おねーちゃん」
外に出ると、冷たい風が僕に襲いかかってくる。
月の光は優しくて綺麗だったけど、空気は優しくなかった。
少し時間が経てば秋もすぐに終わってしまう。
そしたら次は……寒い冬が来る。
僕「……」
女「ん? いきなり手なんか握ってきてどうしたの?」
僕「寒さ対策だよ」
女「私の手ってあったかくないよーだ」
僕「女の手なら何でもあったかいよ」
女「……」
ギュッ。
風は少しだけ強く吹いていたけれど。
彼女が握り返してくれた手はやっぱり僕をたくさん暖めてくれて。
これから秋が終わり、冬が来ても大丈夫だよ、とそう感じた。
秋の夜長はこうしてゆっくりと終わり、次の季節に変わっていく……。
月の光は優しくて綺麗だったけど、空気は優しくなかった。
少し時間が経てば秋もすぐに終わってしまう。
そしたら次は……寒い冬が来る。
僕「……」
女「ん? いきなり手なんか握ってきてどうしたの?」
僕「寒さ対策だよ」
女「私の手ってあったかくないよーだ」
僕「女の手なら何でもあったかいよ」
女「……」
ギュッ。
風は少しだけ強く吹いていたけれど。
彼女が握り返してくれた手はやっぱり僕をたくさん暖めてくれて。
これから秋が終わり、冬が来ても大丈夫だよ、とそう感じた。
秋の夜長はこうしてゆっくりと終わり、次の季節に変わっていく……。
誰もつっ込まなかったけど、僕が白組で女が赤組なのに途中で入れ替わってるな
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