私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。
元スレ僕「小学校で」女「つかまえて」
SS スレッド一覧へ / SS とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★★★×5
レスフィルター : (試験中)
二週間後。
久しぶりの外の空気は、なんだか冷たい。
僕は学校に行くため一人で道を歩いていた。
僕「……さぶっ」
僕の歩く通学路は、彼女の家の前を通っていない。
学校への道のりはいつも一人。
たまに他の友人とも登校はするけれど……今日は通学路なのに誰とも会わない。
僕(登校する日を間違えたかな?)
途端に不安になってしまう。
僕はこのまま、急いで学校に向かう事にした。
久しぶりの外の空気は、なんだか冷たい。
僕は学校に行くため一人で道を歩いていた。
僕「……さぶっ」
僕の歩く通学路は、彼女の家の前を通っていない。
学校への道のりはいつも一人。
たまに他の友人とも登校はするけれど……今日は通学路なのに誰とも会わない。
僕(登校する日を間違えたかな?)
途端に不安になってしまう。
僕はこのまま、急いで学校に向かう事にした。
「おはよう」
男「お、おはよう」
学校に着くと、久しぶりのクラスメートが僕に挨拶をしてくれる。
僕(よかった、学校は普通にあるみたいだ)
ほっと一安心。
その気持ちのまま、僕は自分の机に向かう。
女「あ、おはよう僕ちゃん」
僕「おはよ」
ああ、やっぱり笑顔の彼女がいる。
女「久しぶりだね」
ランドセルを片し、机の上をまっさらな状態にする。
僕はそのまま机に突っ伏して彼女の左頬を見つめる。
僕(マークは残って……ないよね)
三週間はさすがに残ってくれないみたいだ。
僕はまた、ただボーッと彼女を見つめている。
男「お、おはよう」
学校に着くと、久しぶりのクラスメートが僕に挨拶をしてくれる。
僕(よかった、学校は普通にあるみたいだ)
ほっと一安心。
その気持ちのまま、僕は自分の机に向かう。
女「あ、おはよう僕ちゃん」
僕「おはよ」
ああ、やっぱり笑顔の彼女がいる。
女「久しぶりだね」
ランドセルを片し、机の上をまっさらな状態にする。
僕はそのまま机に突っ伏して彼女の左頬を見つめる。
僕(マークは残って……ないよね)
三週間はさすがに残ってくれないみたいだ。
僕はまた、ただボーッと彼女を見つめている。
ごめん食事にお付き合いしていたよ。
僕(今日から三学期かあ)
眼鏡「あ、僕ちゃんおはよ」
僕「おはよう、眼鏡ちゃん」
眼鏡「年賀状届いた?」
僕「あ、うん」
眼鏡「僕ちゃんお返事くれないからさ。心配しちゃったよ?」
僕は誰にも年賀状の返事を書いていない。
僕「筆不精なんだよ僕は」
眼鏡「ふ……ふで、なに?」
女「怠け者って意味だよー」
横から女が口を出す。
僕(ちゃんと交換日記の返事は書いているじゃないか……)
僕(今日から三学期かあ)
眼鏡「あ、僕ちゃんおはよ」
僕「おはよう、眼鏡ちゃん」
眼鏡「年賀状届いた?」
僕「あ、うん」
眼鏡「僕ちゃんお返事くれないからさ。心配しちゃったよ?」
僕は誰にも年賀状の返事を書いていない。
僕「筆不精なんだよ僕は」
眼鏡「ふ……ふで、なに?」
女「怠け者って意味だよー」
横から女が口を出す。
僕(ちゃんと交換日記の返事は書いているじゃないか……)
僕「じゃあ日記も怠け者になっちゃおっかなー。お返事書けないね?」
ほんの冗談のつもりで、彼女に笑ってみる。
女「ん……」
いつもなら笑顔で言い返してくるはずの彼女が、いない。
女「……いいよ、別に」
僕「?」
女「眼鏡ちゃん、おトイレ付き合って」
眼鏡「え、あ……」
僕(……怒ったのかな?)
冗談は全部返してくれると思っていた僕は、彼女の態度に少し戸惑ってしまう。
僕(後で謝ればいっか。日記にもちゃんと書いてさ……うん)
……。
しかし、その戸惑いも放課後には忘れてしまう。
彼女の口からお別れを告げられたせいで、僕は今の感情を全部忘れてしまったんだ。
ほんの冗談のつもりで、彼女に笑ってみる。
女「ん……」
いつもなら笑顔で言い返してくるはずの彼女が、いない。
女「……いいよ、別に」
僕「?」
女「眼鏡ちゃん、おトイレ付き合って」
眼鏡「え、あ……」
僕(……怒ったのかな?)
冗談は全部返してくれると思っていた僕は、彼女の態度に少し戸惑ってしまう。
僕(後で謝ればいっか。日記にもちゃんと書いてさ……うん)
……。
しかし、その戸惑いも放課後には忘れてしまう。
彼女の口からお別れを告げられたせいで、僕は今の感情を全部忘れてしまったんだ。
帰り道。
一緒に歩いているはずなのに、僕と彼女の距離は遠い。
眼鏡「そっか、転校しちゃうんだね」
女「うん。お母さんのお仕事の都合でさ。多分三月にはもう……」
眼鏡「お引っ越ししてもずっと友達……だよ!」
女「うん!」
眼鏡ちゃんは、目の前で話している彼女の言葉がわかっていないのか。
僕(彼女がここからいなくなるんだぞ……)
元気でいてね、と笑いながら挨拶をする事なんて僕には出来ない。
僕(日記はどうするの? お祭りの約束だって。夏の花火、まだ一緒に見ていないのに)
僕(来年のクリスマス、お正月。年賀状ちゃんと書くからさ……だから……)
言いたい事はたくさんあった。
でも僕は、何も言えない。
一緒に歩いているはずなのに、僕と彼女の距離は遠い。
眼鏡「そっか、転校しちゃうんだね」
女「うん。お母さんのお仕事の都合でさ。多分三月にはもう……」
眼鏡「お引っ越ししてもずっと友達……だよ!」
女「うん!」
眼鏡ちゃんは、目の前で話している彼女の言葉がわかっていないのか。
僕(彼女がここからいなくなるんだぞ……)
元気でいてね、と笑いながら挨拶をする事なんて僕には出来ない。
僕(日記はどうするの? お祭りの約束だって。夏の花火、まだ一緒に見ていないのに)
僕(来年のクリスマス、お正月。年賀状ちゃんと書くからさ……だから……)
言いたい事はたくさんあった。
でも僕は、何も言えない。
眼鏡「じゃあまたね」
眼鏡ちゃんが別れ、僕たち二人だけの時間が訪れる。
僕はさっき思った事を彼女にぶつける事はできないんだ。
引っ越しは彼女の意志じゃない。
彼女に約束の事を話しても、笑顔になってくれないんだろう。
僕(女だって帰りたくないはずなんだ……)
女「……」
僕「ね、ねえ。三月までこっちにいるの?」
彼女の家までそんなに距離はない。
僕は思いきって話しかけてみる。
女「……二月には、向こうに行っちゃうかも。学校行く理由も無くなっちゃうからさ」
校舎の中では笑顔を作っていた彼女も、今はもう。
冬が終わってもまた冬が来る。
そんな顔をしながら僕と歩いている。
眼鏡ちゃんが別れ、僕たち二人だけの時間が訪れる。
僕はさっき思った事を彼女にぶつける事はできないんだ。
引っ越しは彼女の意志じゃない。
彼女に約束の事を話しても、笑顔になってくれないんだろう。
僕(女だって帰りたくないはずなんだ……)
女「……」
僕「ね、ねえ。三月までこっちにいるの?」
彼女の家までそんなに距離はない。
僕は思いきって話しかけてみる。
女「……二月には、向こうに行っちゃうかも。学校行く理由も無くなっちゃうからさ」
校舎の中では笑顔を作っていた彼女も、今はもう。
冬が終わってもまた冬が来る。
そんな顔をしながら僕と歩いている。
僕「じゃあ……あと二週間くらいで?」
女「うん」
そっけ無い彼女の返事。
女「来週には先生から話してくれると思うよ。早かったらその時から……」
僕「日記は?」
女「……」
女「私が全部貰っていい?」
冷たい返事をしても、彼女は彼女だった。
僕の事が嫌いで離れていくんじゃない……だから余計に寂しかった。
女「ま、知っている街に帰るんだから寂しさはそこまで無いけどね?」
精一杯、無理な笑顔でいる彼女を見て、胸が締め付けられる。
女「うん」
そっけ無い彼女の返事。
女「来週には先生から話してくれると思うよ。早かったらその時から……」
僕「日記は?」
女「……」
女「私が全部貰っていい?」
冷たい返事をしても、彼女は彼女だった。
僕の事が嫌いで離れていくんじゃない……だから余計に寂しかった。
女「ま、知っている街に帰るんだから寂しさはそこまで無いけどね?」
精一杯、無理な笑顔でいる彼女を見て、胸が締め付けられる。
彼女が帰る場所を、僕は知っている。
大学がある街の、昔彼女が住んでいた場所。
記憶の場所とぴったり重なる。
女「また、同じお家になっちゃった」
彼女はそこからもう一度人生をスタートさせる。
そして僕はこの場所に残る。
変な形だが……記憶の中の未来に繋がるような配置になったのだろうか?
僕にはこれからの未来なんて何一つわからないけれど。
大好きな人が遠くへ行ってしまう。
これだけは確実な未来のようだ。
僕は、この記憶を思い出す。
大学がある街の、昔彼女が住んでいた場所。
記憶の場所とぴったり重なる。
女「また、同じお家になっちゃった」
彼女はそこからもう一度人生をスタートさせる。
そして僕はこの場所に残る。
変な形だが……記憶の中の未来に繋がるような配置になったのだろうか?
僕にはこれからの未来なんて何一つわからないけれど。
大好きな人が遠くへ行ってしまう。
これだけは確実な未来のようだ。
僕は、この記憶を思い出す。
四年生になった時の事。
僕には好きな子がいた。
今思えばそれが……初恋だった。
両思いだったとか、付き合ったとか特別な話はないけれども。
僕は彼女の事が大好きだった。
しかし、その彼女も次の学年に上がる頃には転校してしまった。
僕の初恋は、そんなだった。
告白する事も特別に話しかける事も無く、ただ彼女との別れを寂しがっていた。
目の前にいる女とは状況が違うかもしれないけれど……。
僕にはそんな記憶もあったんだ。
僕(彼女が遠くなってしまう)
僕には好きな子がいた。
今思えばそれが……初恋だった。
両思いだったとか、付き合ったとか特別な話はないけれども。
僕は彼女の事が大好きだった。
しかし、その彼女も次の学年に上がる頃には転校してしまった。
僕の初恋は、そんなだった。
告白する事も特別に話しかける事も無く、ただ彼女との別れを寂しがっていた。
目の前にいる女とは状況が違うかもしれないけれど……。
僕にはそんな記憶もあったんだ。
僕(彼女が遠くなってしまう)
女「……ね。日記の事なんだけどさ」
家に着く前に、彼女が思い出したように話しかけてくる。
いや、ずっと話そうとしていたのかもしれない。
僕「明日僕が取っておいてあるノートを持ってくるよ」
女「ううん、そうじゃなくて……」
僕「?」
女「向こうに行っても、私にお返事書いてくれる?」
僕「日記の?」
女「違うよ。ほら……お手紙。文通しようよ?」
僕(文通……)
女「日記とはペースも変わるけどさ。電話より手紙の方がいいかなって思うし……」
彼女は、色んな方法で僕と繋がっていく方法を考えてくれたに違いない。
その答えが文通という事なんだろう。
僕は数ヶ月後から、郵便局にせっせと通う事になる。
これも新しい記憶だった。
家に着く前に、彼女が思い出したように話しかけてくる。
いや、ずっと話そうとしていたのかもしれない。
僕「明日僕が取っておいてあるノートを持ってくるよ」
女「ううん、そうじゃなくて……」
僕「?」
女「向こうに行っても、私にお返事書いてくれる?」
僕「日記の?」
女「違うよ。ほら……お手紙。文通しようよ?」
僕(文通……)
女「日記とはペースも変わるけどさ。電話より手紙の方がいいかなって思うし……」
彼女は、色んな方法で僕と繋がっていく方法を考えてくれたに違いない。
その答えが文通という事なんだろう。
僕は数ヶ月後から、郵便局にせっせと通う事になる。
これも新しい記憶だった。
先生「じゃあ……最後に女ちゃんから挨拶して」
女「はい。今日は私のためにお別れ会までしてくれてありがとう。みんなの事は忘れません」
空いた午後の時間を使って、教室では彼女のお別れ会が開かれていた。
女「みんなから貰ったこの寄せ書きも大切にします」
女「ありがとう、みんなも元気に頑張って下さい。私も頑張ります」
パチパチパチ。
一週間後に彼女は引っ越してしまう事に決まった。
まだ暖かい風も吹きそうにない、二月の真ん中辺りだった。
出発はちょうど日曜日だったので、僕は一人彼女を見送る事にした。
悪いけど、今回だけは眼鏡ちゃんには内緒。
一人、朝の町を駆け抜けた。
女「はい。今日は私のためにお別れ会までしてくれてありがとう。みんなの事は忘れません」
空いた午後の時間を使って、教室では彼女のお別れ会が開かれていた。
女「みんなから貰ったこの寄せ書きも大切にします」
女「ありがとう、みんなも元気に頑張って下さい。私も頑張ります」
パチパチパチ。
一週間後に彼女は引っ越してしまう事に決まった。
まだ暖かい風も吹きそうにない、二月の真ん中辺りだった。
出発はちょうど日曜日だったので、僕は一人彼女を見送る事にした。
悪いけど、今回だけは眼鏡ちゃんには内緒。
一人、朝の町を駆け抜けた。
女「あ……」
いた。
彼女は家の前に立っていた。
少しうつ向いていて……手を上品に前の方で交わせながら、僕を待ってくれていた。
僕「よかった、間に合った」
女「うん。まだお父さん来ないみたいだから」
僕「ん……あ、リボン。ちゃんとしてくれてるんだ」
彼女の頭には、僕がプレゼントであげたリボンが結ばれている。
しっかりとポニーテールに結んでくれているのは、僕のためだろうか。
女「えへへっ、大事にするからね」
僕「うん……もう見られないのかな、女のポニーテールも」
そう考えると、また新しい寂しさが生まれてくる物だ。
まじまじと彼女の髪を見つめている僕がいる。
いた。
彼女は家の前に立っていた。
少しうつ向いていて……手を上品に前の方で交わせながら、僕を待ってくれていた。
僕「よかった、間に合った」
女「うん。まだお父さん来ないみたいだから」
僕「ん……あ、リボン。ちゃんとしてくれてるんだ」
彼女の頭には、僕がプレゼントであげたリボンが結ばれている。
しっかりとポニーテールに結んでくれているのは、僕のためだろうか。
女「えへへっ、大事にするからね」
僕「うん……もう見られないのかな、女のポニーテールも」
そう考えると、また新しい寂しさが生まれてくる物だ。
まじまじと彼女の髪を見つめている僕がいる。
女「髪型、変じゃない?」
僕「う、うん。綺麗だよ、すごく似合ってる」
女「ふふっ、ありがとね」
……。
これで彼女が遠くに行ってしまうというのに、僕たちの話し声はとても淡々と。
日曜日の午後、まるでこれから一緒に遊ぶ約束をしているかのような……。
そんないつもの二人。
僕(いつもじゃないのに……)
女「最初のお手紙は私から書くからね」
僕「う、うん。あのさ……誕生日には……!」
女「誕生日? 僕ちゃんの?」
僕「ううん、女の……誕生日」
僕「う、うん。綺麗だよ、すごく似合ってる」
女「ふふっ、ありがとね」
……。
これで彼女が遠くに行ってしまうというのに、僕たちの話し声はとても淡々と。
日曜日の午後、まるでこれから一緒に遊ぶ約束をしているかのような……。
そんないつもの二人。
僕(いつもじゃないのに……)
女「最初のお手紙は私から書くからね」
僕「う、うん。あのさ……誕生日には……!」
女「誕生日? 僕ちゃんの?」
僕「ううん、女の……誕生日」
僕「うん。誕生日にはちゃんとバースデーカードを送るよ!」
女「……それってサプライズのつもり?」
僕「あ……」
言ったらサプライズにはなりはしない。
女「ふっ……あはははっ。そんなに楽しませてくれなくっていいんだよ僕ちゃんは!」
僕「は、ははっ。やっぱり最後は笑顔でいないといけないからさ」
彼女は泣いていない。
僕(どうして彼女はこんなに笑顔でいられるんだろう……)
彼女が車で走り去ってしまった後でも、僕が二年生になってからも……。
彼女が笑っていた理由はわからなかった。
女「……それってサプライズのつもり?」
僕「あ……」
言ったらサプライズにはなりはしない。
女「ふっ……あはははっ。そんなに楽しませてくれなくっていいんだよ僕ちゃんは!」
僕「は、ははっ。やっぱり最後は笑顔でいないといけないからさ」
彼女は泣いていない。
僕(どうして彼女はこんなに笑顔でいられるんだろう……)
彼女が車で走り去ってしまった後でも、僕が二年生になってからも……。
彼女が笑っていた理由はわからなかった。
三月の終わり……春休み。
約束通り、僕は彼女へのお手紙とバースデーカードを一枚。
それを握りしめて、嬉しそうに郵便局に向かっていた。
今日手紙を出せば四月の誕生日には彼女の手元に届く。
僕(彼女もそれが楽しみだと言ってくれていた……それだけで僕も頑張れるから)
淡いピンク色の封筒を握りしめて、僕は走り出す。
この手紙が君に届きますように。
遠い場所で僕を感じて……またいつもの笑顔になってくれますように。
約束通り、僕は彼女へのお手紙とバースデーカードを一枚。
それを握りしめて、嬉しそうに郵便局に向かっていた。
今日手紙を出せば四月の誕生日には彼女の手元に届く。
僕(彼女もそれが楽しみだと言ってくれていた……それだけで僕も頑張れるから)
淡いピンク色の封筒を握りしめて、僕は走り出す。
この手紙が君に届きますように。
遠い場所で僕を感じて……またいつもの笑顔になってくれますように。
先生「みなさん、さよなら。気をつけて帰ってね」
眼鏡「ねえ僕ちゃん、一緒に帰ろうよ
二年生になった日、そう声をかけてきたのは彼女だった。
僕「ん、そうだね。女ちゃん……」
眼鏡「?」
僕「ううん、なんでもないや」
このクラスにいない人間の名前を呼んでも虚しいだけ。
眼鏡「じゃあいこう僕ちゃん~」
彼女と帰る理由は特になかったけれど、僕は彼女と一緒に歩き出したんだ。
彼女のいない放課後。
僕は、やけに広く感じる田舎道を歩いている。
眼鏡「ねえ僕ちゃん、一緒に帰ろうよ
二年生になった日、そう声をかけてきたのは彼女だった。
僕「ん、そうだね。女ちゃん……」
眼鏡「?」
僕「ううん、なんでもないや」
このクラスにいない人間の名前を呼んでも虚しいだけ。
眼鏡「じゃあいこう僕ちゃん~」
彼女と帰る理由は特になかったけれど、僕は彼女と一緒に歩き出したんだ。
彼女のいない放課後。
僕は、やけに広く感じる田舎道を歩いている。
眼鏡「駄菓子屋寄ってく?」
僕「……今日はいいや」
眼鏡「そう……」
二人だけで歩く時間に、なんだか慣れない。
彼女がいないだけでこんなにも時間が長く感じる。
眼鏡「あ、あたしここだから。バイバイ」
僕「うん、またね」
思えば彼女と話していた記憶はあまり無い。
一年間、女とばかり話していた気がするよ。
僕「……今日はいいや」
眼鏡「そう……」
二人だけで歩く時間に、なんだか慣れない。
彼女がいないだけでこんなにも時間が長く感じる。
眼鏡「あ、あたしここだから。バイバイ」
僕「うん、またね」
思えば彼女と話していた記憶はあまり無い。
一年間、女とばかり話していた気がするよ。
僕「……」
しばらく歩くと、見慣れた彼女の家が見えてくる。
中に人がいる様子は無い。当たり前だ。
僕(呼び鈴を押したら彼女が家に)
僕(……いるはずもないか)
僕は明日から、遠回りのこの道を通る事は無くなった。
誰もいない彼女の脱け殻を見るのは、やっぱり寂しかったから。
僕は今日一緒に帰った彼女の気持ちに気付く事もなく……小学校を卒業した。
しばらく歩くと、見慣れた彼女の家が見えてくる。
中に人がいる様子は無い。当たり前だ。
僕(呼び鈴を押したら彼女が家に)
僕(……いるはずもないか)
僕は明日から、遠回りのこの道を通る事は無くなった。
誰もいない彼女の脱け殻を見るのは、やっぱり寂しかったから。
僕は今日一緒に帰った彼女の気持ちに気付く事もなく……小学校を卒業した。
中学生になった僕たちは、新しい制服という格好に身を包んでいた。
久しぶりの学生服の感じが、僕の体と心を締め付ける。
僕「なんだかんだで……中学生ね」
僕が記憶を持ったまま一年生になってから、六年が過ぎた。
女がいなくなった地元から、僕は逃げ出す事もできず。
大学生として過ごしていた昔に戻る事もできないでいた。
僕(このまま僕は……)
久しぶりの学生服の感じが、僕の体と心を締め付ける。
僕「なんだかんだで……中学生ね」
僕が記憶を持ったまま一年生になってから、六年が過ぎた。
女がいなくなった地元から、僕は逃げ出す事もできず。
大学生として過ごしていた昔に戻る事もできないでいた。
僕(このまま僕は……)
あれから、僕は時間や記憶に関する本を読み漁った。
と言っても漫画や小説がメインだけれども。
僕(未来から来た子、過去に時間が戻った物語……記憶を残している主人公)
そんな主人公たちの気持ちが、今の僕にはなんとなくわかる。
僕(多分彼女も……)
今ごろは制服を着て、彼女も新しい学校生活を始めているんだろう。
その姿を見る事ができないのがちょっとだけ残念だった。
僕(制服にあのリボンは……ちょっと子供すぎるかな?)
彼女とリボンがせめて一緒にいてくれれば、それでいい。
僕は学校が変わっても、ずっと彼女の事を想っている。
と言っても漫画や小説がメインだけれども。
僕(未来から来た子、過去に時間が戻った物語……記憶を残している主人公)
そんな主人公たちの気持ちが、今の僕にはなんとなくわかる。
僕(多分彼女も……)
今ごろは制服を着て、彼女も新しい学校生活を始めているんだろう。
その姿を見る事ができないのがちょっとだけ残念だった。
僕(制服にあのリボンは……ちょっと子供すぎるかな?)
彼女とリボンがせめて一緒にいてくれれば、それでいい。
僕は学校が変わっても、ずっと彼女の事を想っている。
僕「……小学校、僕です。みんなよろしくお願いします」
新しいクラスの挨拶。
この中学校のクラスだって八割は名前も知っている。
ここまでの記憶はまだあるようだ。
僕(高校のクラスなんて、九割名前を忘れている自信があるけれど)
……全員の自己紹介が終わる。
記憶通り、眼鏡ちゃんは別のクラスになっている。
僕(記憶がそのまま確かなら……)
僕は二週間後、彼女から話を持ちかけられる事になるはずだ。
僕の記憶……。
新しいクラスの挨拶。
この中学校のクラスだって八割は名前も知っている。
ここまでの記憶はまだあるようだ。
僕(高校のクラスなんて、九割名前を忘れている自信があるけれど)
……全員の自己紹介が終わる。
記憶通り、眼鏡ちゃんは別のクラスになっている。
僕(記憶がそのまま確かなら……)
僕は二週間後、彼女から話を持ちかけられる事になるはずだ。
僕の記憶……。
「……あ、君が僕君?」
僕「う、うん」
「へえ……君が眼鏡ちゃんの言ってた、ね?」
僕(確か、彼女は隣のクラスの……)
僕(……今は、忘れた)
「言ってたよ、恋する乙女はつらいって……ねえ?」
僕「で、何か用? 活発ちゃん」
活発「あれ? 自己紹介したっけ?」
僕「……知ってるから」
活発「ふうん、まあいいや。今日辺り、眼鏡ちゃんが電話で、くふふ」
僕(悪いけど、知ってるんだ)
活発「もてる男もつらいよね。じゃあ、伝えたから。頑張ってねー」
……。
足取り軽く、彼女は行ってしまう。
僕(ああ、確かこんな事を言われた気がする)
僕(確か今夜電話があって……)
僕「う、うん」
「へえ……君が眼鏡ちゃんの言ってた、ね?」
僕(確か、彼女は隣のクラスの……)
僕(……今は、忘れた)
「言ってたよ、恋する乙女はつらいって……ねえ?」
僕「で、何か用? 活発ちゃん」
活発「あれ? 自己紹介したっけ?」
僕「……知ってるから」
活発「ふうん、まあいいや。今日辺り、眼鏡ちゃんが電話で、くふふ」
僕(悪いけど、知ってるんだ)
活発「もてる男もつらいよね。じゃあ、伝えたから。頑張ってねー」
……。
足取り軽く、彼女は行ってしまう。
僕(ああ、確かこんな事を言われた気がする)
僕(確か今夜電話があって……)
……。
ジリリリリ。
ジリリリリ。
ガチャッ。
僕「もしもし?」
眼鏡「あ、も、もしもし……私だけど……」
僕「う、うん」
眼鏡「ごめんね、急に電話しちゃって……」
内容がわかっているとは言え、やはり緊張はする。
眼鏡「あのね、私ずっと、ずっとね……僕ちゃんの事が……」
眼鏡「好き、だったの……」
眼鏡ちゃんからの、二度目の告白。
僕はこの返事を二度断る。
理由は違うけれど……僕が彼女の気持ちを受け入れた事は、小学校から中学卒業の九年間、一度も無い。
僕「……ごめん。僕には好きな人がいるんだ」
ジリリリリ。
ジリリリリ。
ガチャッ。
僕「もしもし?」
眼鏡「あ、も、もしもし……私だけど……」
僕「う、うん」
眼鏡「ごめんね、急に電話しちゃって……」
内容がわかっているとは言え、やはり緊張はする。
眼鏡「あのね、私ずっと、ずっとね……僕ちゃんの事が……」
眼鏡「好き、だったの……」
眼鏡ちゃんからの、二度目の告白。
僕はこの返事を二度断る。
理由は違うけれど……僕が彼女の気持ちを受け入れた事は、小学校から中学卒業の九年間、一度も無い。
僕「……ごめん。僕には好きな人がいるんだ」
眼鏡「……そう、なんだ」
僕「うん、本当にごめん」
受話器の向こうから感じる十分なくらいの重圧。
今はそれに耐える事ができている。
眼鏡「ねえ僕ちゃんの好きな人って……誰? 新しいクラスの人?」
僕「……ううん。クラスにはいないよ」
眼鏡「じゃあ、仲良くしていたあの先輩?」
僕「先輩でもないよ。同級生の……女」
眼鏡「え、え……引っ越しした女ちゃん?」
僕「うん」
僕の気持ちはずっと彼女に向いている。
遠い場所、文字でしか会話の出来ない僕たちだけど。
電話とは違った嬉しさ、手紙が持っている暖かみが……僕たちの支えであり、繋ぎだった。
僕「うん、本当にごめん」
受話器の向こうから感じる十分なくらいの重圧。
今はそれに耐える事ができている。
眼鏡「ねえ僕ちゃんの好きな人って……誰? 新しいクラスの人?」
僕「……ううん。クラスにはいないよ」
眼鏡「じゃあ、仲良くしていたあの先輩?」
僕「先輩でもないよ。同級生の……女」
眼鏡「え、え……引っ越しした女ちゃん?」
僕「うん」
僕の気持ちはずっと彼女に向いている。
遠い場所、文字でしか会話の出来ない僕たちだけど。
電話とは違った嬉しさ、手紙が持っている暖かみが……僕たちの支えであり、繋ぎだった。
僕「じゃあ、また明日学校で……ね」
僕は無機質に電話を終える。
会えない、見られる事は無いから、と言って浮気のような真似はできない。
僕には彼女の事しか見えていなかったんだ。
僕「……さて、返事を書かないと」
テーブルに広げられた手紙を読み返し、僕は返事を書いている。
もうすぐ今日が終わる頃、僕はそれに封をして切手を貼り付ける。
これをポストに入れて、また一週間もすれば彼女からの手紙がまた返って来る。
唯一彼女を感じる事ができる。
遠くても……僕の心は彼女から貰えるたった一枚の紙に支えられている。
僕は無機質に電話を終える。
会えない、見られる事は無いから、と言って浮気のような真似はできない。
僕には彼女の事しか見えていなかったんだ。
僕「……さて、返事を書かないと」
テーブルに広げられた手紙を読み返し、僕は返事を書いている。
もうすぐ今日が終わる頃、僕はそれに封をして切手を貼り付ける。
これをポストに入れて、また一週間もすれば彼女からの手紙がまた返って来る。
唯一彼女を感じる事ができる。
遠くても……僕の心は彼女から貰えるたった一枚の紙に支えられている。
前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS スレッド一覧へ
みんなの評価 : ★★★×5類似してるかもしれないスレッド
- 妹「学校に行きたくないのです」 (1001) - [55%] - 2010/4/9 13:15 ★★★×4
- 男「え…お、女になってる…」 (128) - [49%] - 2012/10/5 13:00 ☆
- 希「えりちがかべとくっついた」 (142) - [48%] - 2014/1/3 13:45 ☆
- 妹「朝です。起きてください」 (1001) - [47%] - 2008/8/29 11:30 ★★★×4
- 妹「兄さん、お小遣いください」 (140) - [46%] - 2013/1/17 9:45 ☆
- 兄「彼女できたった」妹「えっ」 (202) - [46%] - 2012/5/13 8:45 ☆
- 触手「うねうね」女「なにこれ」 (246) - [46%] - 2012/12/3 5:15 ☆
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について