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元スレ僕「小学校で」女「つかまえて」
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家に着くと母がいつもの笑顔で僕を迎えてくれた。
何もしなくてもお風呂が綺麗になっていたり、ご飯が出てたり……ずっと当たり前のように経験していた事なのに、今は逆に慣れなかった。
妹は相変わらずテレビを見ている。
僕(あ、このシリーズ今日やってたんだ……懐かしい)
僕もテレビを見る以外に、何もする事が無い。
僕(安心する……)
心に引っ掛かる物が無いこの二日間は、とても楽しくて気持ちも安定していた。
僕(家はやっぱりこうじゃないとな……)
何もしなくてもお風呂が綺麗になっていたり、ご飯が出てたり……ずっと当たり前のように経験していた事なのに、今は逆に慣れなかった。
妹は相変わらずテレビを見ている。
僕(あ、このシリーズ今日やってたんだ……懐かしい)
僕もテレビを見る以外に、何もする事が無い。
僕(安心する……)
心に引っ掛かる物が無いこの二日間は、とても楽しくて気持ちも安定していた。
僕(家はやっぱりこうじゃないとな……)
父「……」
父「なあ。お前単位は大丈夫なのか。ちゃんと勉強しているのか?」
父「バイトは? 無駄遣いするなよ。留年なんてしたらそれこそ学校なんかすぐ辞めて働いてもらうからな……おい聞いているのか?」
僕(うるさいんだよ……)
父「まったく。お前は昔からそうだ。もっとちゃんとしないと社会で通用しない。甘いんだよお前は……」
僕(もう少し言い方だってあるだろうが、この……くそ親父……)
……
父「なあ。お前単位は大丈夫なのか。ちゃんと勉強しているのか?」
父「バイトは? 無駄遣いするなよ。留年なんてしたらそれこそ学校なんかすぐ辞めて働いてもらうからな……おい聞いているのか?」
僕(うるさいんだよ……)
父「まったく。お前は昔からそうだ。もっとちゃんとしないと社会で通用しない。甘いんだよお前は……」
僕(もう少し言い方だってあるだろうが、この……くそ親父……)
……
僕「……はっ!」
布団から飛び起きた僕は身体中汗でびっしょりだった。
隣では妹がスースーと寝息をたてながら眠っている。
僕(夢……?)
扉の部屋からは明かりが漏れている。父も母もまだ起きているようだった。
僕(昔……いや、昔って言い方は変かな?)
でもそれは確かに僕が見た光景。
いつかの夏休みで実家に帰った時に、珍しく父に説教をされた時の夢だった。
父は歳をとるに連れて怒りっぽくなってしまったのを覚えている。
帰省する度に、段々と怒られる時間が増えていった気がする。
実家に帰らなくなったのはそんな理由もあったからかもしれない。
布団から飛び起きた僕は身体中汗でびっしょりだった。
隣では妹がスースーと寝息をたてながら眠っている。
僕(夢……?)
扉の部屋からは明かりが漏れている。父も母もまだ起きているようだった。
僕(昔……いや、昔って言い方は変かな?)
でもそれは確かに僕が見た光景。
いつかの夏休みで実家に帰った時に、珍しく父に説教をされた時の夢だった。
父は歳をとるに連れて怒りっぽくなってしまったのを覚えている。
帰省する度に、段々と怒られる時間が増えていった気がする。
実家に帰らなくなったのはそんな理由もあったからかもしれない。
ガラッ。
父「ん、僕。起きてたのか? テレビの音で起こしちゃったかな、ごめんごめん」
僕「……」
父「トイレは大丈夫か? 喉が渇いてたりとか……」
僕「大丈夫だよ、おやすみパパ」
父「そうか。パパもあと少しで寝るからさ、おやすみ僕」
静かに扉を閉め、また暗い部屋を僕はいる。
先ほど見た夢のせいなのか、優しさのギャップに僕は驚いていた。
そして……テレビの音がすぐに小さくなる。
僕「パパ……」
布団の中で、僕は丸くなって眠っていた。
久しぶりに優しさに触れたせいなのか……訳の分からない涙が一晩中、ずっと溢れていた。
泣いてしまった理由が、自分でもわからなかった。
父「ん、僕。起きてたのか? テレビの音で起こしちゃったかな、ごめんごめん」
僕「……」
父「トイレは大丈夫か? 喉が渇いてたりとか……」
僕「大丈夫だよ、おやすみパパ」
父「そうか。パパもあと少しで寝るからさ、おやすみ僕」
静かに扉を閉め、また暗い部屋を僕はいる。
先ほど見た夢のせいなのか、優しさのギャップに僕は驚いていた。
そして……テレビの音がすぐに小さくなる。
僕「パパ……」
布団の中で、僕は丸くなって眠っていた。
久しぶりに優しさに触れたせいなのか……訳の分からない涙が一晩中、ずっと溢れていた。
泣いてしまった理由が、自分でもわからなかった。
女「おはよう僕ちゃん。昨日はありがとうね」
僕「うん、おはよう……」
女「……」
彼女はこちらをじっと見ている。
泣いた跡を隠すように、僕は慌てて目や頬の辺りを手で覆い隠す。
女「ふふっ、悪い事して叱られた?」
僕「そんなんじゃないよ」
すでに彼女には見られてしまっていたようだった。
隠した事が余計に恥ずかしく感じた。
女「ふ~ん……じゃあ、あれかな? 懐かしくて泣いちゃったってやつ?」
僕「……」
女「当たった? やっぱり泣いちゃうよね。私もそうだったもん」
僕「うん、おはよう……」
女「……」
彼女はこちらをじっと見ている。
泣いた跡を隠すように、僕は慌てて目や頬の辺りを手で覆い隠す。
女「ふふっ、悪い事して叱られた?」
僕「そんなんじゃないよ」
すでに彼女には見られてしまっていたようだった。
隠した事が余計に恥ずかしく感じた。
女「ふ~ん……じゃあ、あれかな? 懐かしくて泣いちゃったってやつ?」
僕「……」
女「当たった? やっぱり泣いちゃうよね。私もそうだったもん」
僕「それって前の時の……?」
女「うん。お母さんが優しくて……やっぱり一年生だからさ、お節介なくらいに優しかったのよ」
女「ご飯は好きな物作ってくれるし、デザートだって……。お風呂に一緒に入って絵本読んでくれて……私、途中で泣いちゃった」
僕「女……」
女「シンデレラが、ガラスの靴を落としたら泣いちゃうんだもん。お母さん、困っていた」
僕「そっか、女も……」
女「今は甘えていいんだ、優しくしてもらえるんだ、って考えちゃうとどうしてもね?」
それは何となく自分もよくわかる気がする。
心配事の無い毎日……あえて言うなら記憶と未来の事が心配だけど。
それ以外は何があるわけじゃない、本当に平穏な日常なのだから。
女「うん。お母さんが優しくて……やっぱり一年生だからさ、お節介なくらいに優しかったのよ」
女「ご飯は好きな物作ってくれるし、デザートだって……。お風呂に一緒に入って絵本読んでくれて……私、途中で泣いちゃった」
僕「女……」
女「シンデレラが、ガラスの靴を落としたら泣いちゃうんだもん。お母さん、困っていた」
僕「そっか、女も……」
女「今は甘えていいんだ、優しくしてもらえるんだ、って考えちゃうとどうしてもね?」
それは何となく自分もよくわかる気がする。
心配事の無い毎日……あえて言うなら記憶と未来の事が心配だけど。
それ以外は何があるわけじゃない、本当に平穏な日常なのだから。
女「優しいよね、みんなさ」
僕「そう……だね」
女「幸せなんだろうね、私たち」
僕「うん……」
彼女の言葉に僕は頷く事しかできないでいる。
……涙の事は、それ以上追及されなかった。
彼女は席に戻り、先生がやって来る。
今日は平仮名の「い、う」を覚えて、1+2の足し算を勉強して……今週と来週は、一年生は午前中で終わりの日が続いている。
学校の事は放っておいても、しばらくは何も問題が無さそうだ。
僕(じゃあ僕は……何をどうしよう)
僕「そう……だね」
女「幸せなんだろうね、私たち」
僕「うん……」
彼女の言葉に僕は頷く事しかできないでいる。
……涙の事は、それ以上追及されなかった。
彼女は席に戻り、先生がやって来る。
今日は平仮名の「い、う」を覚えて、1+2の足し算を勉強して……今週と来週は、一年生は午前中で終わりの日が続いている。
学校の事は放っておいても、しばらくは何も問題が無さそうだ。
僕(じゃあ僕は……何をどうしよう)
授業の時間を、僕はずっと考え事に充てる事ができた。
自分と女がここにいる理由。
僕が未来から来たのなら、帰る方法や解決策。
弟の出生やこれからの未来の事……何かを言えば未来に影響が出るのか?
僕(んー……)
しかし考えても考えても、答えは出るはずも無い。
僕(……ダメだ。何も浮かばないや)
僕(とりあえず時間だけは普通に過ぎていて、昔から僕たちのいた未来……現在? まで続いている)
僕(記憶がある理由なんて考えてもわからないし……まあいいか。害があるわけじゃないし)
僕は適当な所でこの問題を解く事を諦めてしまった。
自分と女がここにいる理由。
僕が未来から来たのなら、帰る方法や解決策。
弟の出生やこれからの未来の事……何かを言えば未来に影響が出るのか?
僕(んー……)
しかし考えても考えても、答えは出るはずも無い。
僕(……ダメだ。何も浮かばないや)
僕(とりあえず時間だけは普通に過ぎていて、昔から僕たちのいた未来……現在? まで続いている)
僕(記憶がある理由なんて考えてもわからないし……まあいいか。害があるわけじゃないし)
僕は適当な所でこの問題を解く事を諦めてしまった。
最初は、女と一緒にずっとそんな話もしていた。
でも変わらずに流れている日常、優しい現実……。
僕たちはいつの間にか、遠すぎる未来の事を話すのを止めていた。
今話していても何も変わらない。
確かそういうような結論になったと思う。
そして神社でお祭りが始まる四月の終わり頃には、そんな話題を出す事はすっかり無くなっていた。
でも変わらずに流れている日常、優しい現実……。
僕たちはいつの間にか、遠すぎる未来の事を話すのを止めていた。
今話していても何も変わらない。
確かそういうような結論になったと思う。
そして神社でお祭りが始まる四月の終わり頃には、そんな話題を出す事はすっかり無くなっていた。
女「もう、遅いよ!」
僕「ごめんごめん。寝坊しちゃった」
女「いつも遅刻するんだから……」
僕「だから悪かったってば……」
女「まあ、今日はお祭りだから許してあげる」
彼女の笑顔を見て、僕はまたホッとする。
女「じゃあ行こう!」
僕「ま、また走って……危ないよ?」
女「大丈夫だって、ほら早くー」
僕「ごめんごめん。寝坊しちゃった」
女「いつも遅刻するんだから……」
僕「だから悪かったってば……」
女「まあ、今日はお祭りだから許してあげる」
彼女の笑顔を見て、僕はまたホッとする。
女「じゃあ行こう!」
僕「ま、また走って……危ないよ?」
女「大丈夫だって、ほら早くー」
女「わあ……お店結構たくさん出ているんだね?」
僕「みたいだね。夜になってもやってるから、結構人が集まるんだよ」
田舎らしいこじんまりとした神社だが、お祭りの日には人が集まる。
今の時間は殆どの客が地元の小、中学生だが、夕方から夜にかけては大人も姿を見せるようになる。
僕「みたいだね。夜になってもやってるから、結構人が集まるんだよ」
田舎らしいこじんまりとした神社だが、お祭りの日には人が集まる。
今の時間は殆どの客が地元の小、中学生だが、夕方から夜にかけては大人も姿を見せるようになる。
女「田舎のくせに人が多いのね。ちょっとだけ驚いちゃった」
僕「また馬鹿にして……じゃあ帰る?」
女「だから冗談よ! これだけ人がいたら楽しいんだろうな、って思っただけなんだよ?」
僕「女の子ってズルい」
女「ズルくてもいいの。早く買い物しようよ」
いいように振り回される僕と、涼しい顔でお店を見て回る彼女……小さな一年生の男女がお散歩をしているような、周りから見たらただそれだけの風景だった。
僕「また馬鹿にして……じゃあ帰る?」
女「だから冗談よ! これだけ人がいたら楽しいんだろうな、って思っただけなんだよ?」
僕「女の子ってズルい」
女「ズルくてもいいの。早く買い物しようよ」
いいように振り回される僕と、涼しい顔でお店を見て回る彼女……小さな一年生の男女がお散歩をしているような、周りから見たらただそれだけの風景だった。
女「あ、クレープ……」
女「かき氷……」
女「あんず、水飴……」
お店を見てはすぐ別のお店へ……彼女は神社の奥に、早いペースで向かってしまう。
僕「何か食べないの?」
女「んー……」
僕「?」
口の辺りが強張って、目付きはしっかりしているものの、どこかを見ているわけでは無い。
これは彼女が本当に困った時の表情だった。
僕「何食べるか迷っている?」
女「かき氷……」
女「あんず、水飴……」
お店を見てはすぐ別のお店へ……彼女は神社の奥に、早いペースで向かってしまう。
僕「何か食べないの?」
女「んー……」
僕「?」
口の辺りが強張って、目付きはしっかりしているものの、どこかを見ているわけでは無い。
これは彼女が本当に困った時の表情だった。
僕「何食べるか迷っている?」
女「んん……」
表情は変わらない。迷っているわけでは無いのか?
……強張る口を開き、彼女は静かに話を始めた。
女「お金が足りなかったの……」
僕「え?」
女「おこづかい……足りないから」
僕「いくら持ってるの?」
女「百円……だけ」
小さな祭りだが、商品の値段が他と変わるわけじゃ無い。
最低でも三百円は無いと何かを買う事はできない。
女「……えへへ。やっぱり何も買えなかったか~。残念だよ~」
僕「女……」
女「せっかくのお祭りだけどさ~。家ってほら……確か僕ちゃんには話していた……ね?」
表情は変わらない。迷っているわけでは無いのか?
……強張る口を開き、彼女は静かに話を始めた。
女「お金が足りなかったの……」
僕「え?」
女「おこづかい……足りないから」
僕「いくら持ってるの?」
女「百円……だけ」
小さな祭りだが、商品の値段が他と変わるわけじゃ無い。
最低でも三百円は無いと何かを買う事はできない。
女「……えへへ。やっぱり何も買えなかったか~。残念だよ~」
僕「女……」
女「せっかくのお祭りだけどさ~。家ってほら……確か僕ちゃんには話していた……ね?」
僕は彼女の昔を知っている。
早くから夫婦別居をし、長らく母と二人暮らしだったと言う事を。
今も昔も貧乏であまり贅沢などしてなかったと言う事を、確か彼女から聞いていた。
僕「やっぱり、今も?」
女「……うん。向こうにいた昔とあまり変わってないみたい。お母さん、本当は千円くれようとしていたけど……お金あるって言っちゃったから」
僕「……」
女「でも僕ちゃんとお祭り来ただけで楽しいんだよ? 珍しい物たくさん見られるし、雰囲気だって……ね?」
そんなに一生懸命に笑わなくてもいい。
母親のために無理をする彼女の姿は簡単に想像ができてしまったから、余計に辛い。
早くから夫婦別居をし、長らく母と二人暮らしだったと言う事を。
今も昔も貧乏であまり贅沢などしてなかったと言う事を、確か彼女から聞いていた。
僕「やっぱり、今も?」
女「……うん。向こうにいた昔とあまり変わってないみたい。お母さん、本当は千円くれようとしていたけど……お金あるって言っちゃったから」
僕「……」
女「でも僕ちゃんとお祭り来ただけで楽しいんだよ? 珍しい物たくさん見られるし、雰囲気だって……ね?」
そんなに一生懸命に笑わなくてもいい。
母親のために無理をする彼女の姿は簡単に想像ができてしまったから、余計に辛い。
女「ほら、僕ちゃん何か買ってきなよ。ここで待ってるからさ?」
僕「嫌だよ、二人で行こうよ」
女「で、でも……見ると食べたくなっちゃうから……」
僕「女が食べたいの選んでいいよ。体が小さいから、半分こして一緒に食べようよ」
女「で、でもそれだと僕ちゃんのお金が……」
僕「大丈夫だよ。小さい時から小銭貯金とかしていて……今だって、昔の僕はちゃんと貯めていたんだからさ」
女「ほ、本当に……?」
僕「嫌だよ、二人で行こうよ」
女「で、でも……見ると食べたくなっちゃうから……」
僕「女が食べたいの選んでいいよ。体が小さいから、半分こして一緒に食べようよ」
女「で、でもそれだと僕ちゃんのお金が……」
僕「大丈夫だよ。小さい時から小銭貯金とかしていて……今だって、昔の僕はちゃんと貯めていたんだからさ」
女「ほ、本当に……?」
僕「うん。僕の千円は一緒に使お? 貯金はあと二千円くらいあるから大丈夫だよ!」
女「いいの……?」
僕「うん。二人で食べた方が美味しいもの!」
女「あ、ありがとう……僕……ちゃん……」
僕「な、泣くなんて大げさだよ~」
突然の涙に、僕は焦ってしまう。
女「ご、ごめん嬉しくてつい……あ、じゃあこの百円渡すから……」
僕「いらないよ。それは女が持っていて」
女「で、でも……」
僕「貯金があるんだから、任せてよ。ね?」
女「……うん、わかった」
彼女はやっと納得してくれた様子だった。
僕たちは自然に手を繋ぎながら、二人で屋台を回っていた。
女「いいの……?」
僕「うん。二人で食べた方が美味しいもの!」
女「あ、ありがとう……僕……ちゃん……」
僕「な、泣くなんて大げさだよ~」
突然の涙に、僕は焦ってしまう。
女「ご、ごめん嬉しくてつい……あ、じゃあこの百円渡すから……」
僕「いらないよ。それは女が持っていて」
女「で、でも……」
僕「貯金があるんだから、任せてよ。ね?」
女「……うん、わかった」
彼女はやっと納得してくれた様子だった。
僕たちは自然に手を繋ぎながら、二人で屋台を回っていた。
女「まずは何食べたい?」
僕「……かき氷がいい。値段も三百円で手頃だしさ」
女「うん、わかった!」
彼女には笑顔が戻っている。
よかった……と素直に感じた。
女「すいません、かき氷一つ下さい~!」
「はい、三百円ね。シロップはどうするね?」
僕「ブルーハワイで」
女「イチゴで」
僕「……」
女「……」チラッ
僕「……えっとイチゴでお願いします」
小学生一年生の上目遣いは、ズルい。
僕「……かき氷がいい。値段も三百円で手頃だしさ」
女「うん、わかった!」
彼女には笑顔が戻っている。
よかった……と素直に感じた。
女「すいません、かき氷一つ下さい~!」
「はい、三百円ね。シロップはどうするね?」
僕「ブルーハワイで」
女「イチゴで」
僕「……」
女「……」チラッ
僕「……えっとイチゴでお願いします」
小学生一年生の上目遣いは、ズルい。
僕「座って食べようか」
女「うん!」
ベンチに座って、二人で一つのカップを握っている。
落とさないよう、しっかりと僕は……。
僕「食べなよ」
女「買ったのはちゃんなんだから、それは遠慮する~」
僕「でもイチゴだよ」
女「……」
僕「食べる?」
女「うん……食べる」
女「うん!」
ベンチに座って、二人で一つのカップを握っている。
落とさないよう、しっかりと僕は……。
僕「食べなよ」
女「買ったのはちゃんなんだから、それは遠慮する~」
僕「でもイチゴだよ」
女「……」
僕「食べる?」
女「うん……食べる」
>>123
今のところ考えてないです。
女「美味しいよ~」
まだ夏でもないのに、彼女はとても美味しそうに氷を頬張っている。
僕「それはよかったよ」
女「はい、僕ちゃんも」
僕「ん」
当たり前のように、同じストローでかき氷を口に入れる。
僕(気にしない~)
女「美味しい?」
僕「うん。イチゴ味も悪くないのかもしれない」
僕(かき氷なんて何年ぶりかな? 懐かしいけど、よく覚えているようなこの味……)
僕「懐かしい」
今のところ考えてないです。
女「美味しいよ~」
まだ夏でもないのに、彼女はとても美味しそうに氷を頬張っている。
僕「それはよかったよ」
女「はい、僕ちゃんも」
僕「ん」
当たり前のように、同じストローでかき氷を口に入れる。
僕(気にしない~)
女「美味しい?」
僕「うん。イチゴ味も悪くないのかもしれない」
僕(かき氷なんて何年ぶりかな? 懐かしいけど、よく覚えているようなこの味……)
僕「懐かしい」
女「懐かしいって感想は変だよ?」
クスッと笑う彼女。
なんだろう、今日は特に笑われる事が恥ずかしいような気がした。
僕「いいんだよ、はい。残り食べていいからさ」
女「いいの?」
僕「体が小さいから、あまり入らないみたい」
男としてこの言葉を使うのはどうかと思ったが……。
女「じゃあ食べちゃうね~?」
笑顔でかき氷を食べる彼女……これだけで僕は何だか満足だった。
クスッと笑う彼女。
なんだろう、今日は特に笑われる事が恥ずかしいような気がした。
僕「いいんだよ、はい。残り食べていいからさ」
女「いいの?」
僕「体が小さいから、あまり入らないみたい」
男としてこの言葉を使うのはどうかと思ったが……。
女「じゃあ食べちゃうね~?」
笑顔でかき氷を食べる彼女……これだけで僕は何だか満足だった。
女「はい、ごちそうさま」
僕「じゃあ次は何が食べたい?」
女「んー……リンゴ飴、かな?」
僕「リンゴ?」
女「うん。大きくて美味しそうかなって……あ、僕ちゃんリンゴ飴嫌い?」
僕「ううん。好き」
本当は、リンゴ飴は買った事なんて無いけれど。
彼女が食べたいなら何でもいい。
女「えへへっ、それならよかったよ。すいませーん!」
僕「じゃあ次は何が食べたい?」
女「んー……リンゴ飴、かな?」
僕「リンゴ?」
女「うん。大きくて美味しそうかなって……あ、僕ちゃんリンゴ飴嫌い?」
僕「ううん。好き」
本当は、リンゴ飴は買った事なんて無いけれど。
彼女が食べたいなら何でもいい。
女「えへへっ、それならよかったよ。すいませーん!」
僕(リンゴ飴が三百円……まあ、こんなものかな)
女「おっきいよ~。美味しそうだよ~」
僕(まあ、嬉しそうで何よりだ)
女「ガリッ!」
僕「食べるの早」
女「飴の部分が余っていたからさ。ここだけ先にね」
僕「ああ……うん。まあ好きに食べたらいいよ」
女「えへへ、相変わらず優しいよね僕ちゃんってさ」
僕「……」
女「おっきいよ~。美味しそうだよ~」
僕(まあ、嬉しそうで何よりだ)
女「ガリッ!」
僕「食べるの早」
女「飴の部分が余っていたからさ。ここだけ先にね」
僕「ああ……うん。まあ好きに食べたらいいよ」
女「えへへ、相変わらず優しいよね僕ちゃんってさ」
僕「……」
先ほどの身の上話といい、僕は彼女の事情をその辺の人間よりは知っている。
そんな話をよく聞いていたからか、僕は自然と彼女を何かから守るような形になっていた。
僕が勝手にくっついていただけかもしれないけれど……。
女「リンゴ美味しい~」
でも彼女も何かある度に、僕に話をしてくれていた。
最低限の信頼はされていた……いう事でいいんだろうか。
あまり自分の事に自信は持てない。僕はそんな性格だった。
そんな話をよく聞いていたからか、僕は自然と彼女を何かから守るような形になっていた。
僕が勝手にくっついていただけかもしれないけれど……。
女「リンゴ美味しい~」
でも彼女も何かある度に、僕に話をしてくれていた。
最低限の信頼はされていた……いう事でいいんだろうか。
あまり自分の事に自信は持てない。僕はそんな性格だった。
女「はい、僕ちゃん」
僕「ん……」
リンゴのような物体が半分、割り箸に刺さって渡された。
僕「……ガリッ!」
力いっぱいにリンゴを噛んでみた。
女「か、固くない?」
僕「ちょっとだけ……」
女「慌てて食べなくても大丈夫だよ。時間はまだあるんだから、ね?」
時間……ね。
僕「ん……」
リンゴのような物体が半分、割り箸に刺さって渡された。
僕「……ガリッ!」
力いっぱいにリンゴを噛んでみた。
女「か、固くない?」
僕「ちょっとだけ……」
女「慌てて食べなくても大丈夫だよ。時間はまだあるんだから、ね?」
時間……ね。
女「ね、時間大丈夫?」
僕「え、ん?」
女「よく考えたらお互い門限があったもんね。時間はたくさんあるって言ったけど……夜中まではいられないもんね?」
僕「それはそうだけど……」
女「ね、どうする。まだ買い物する? それともちょっとお散歩する?」
僕「買い物して、お散歩する」
女「ふふっ、ワガママ僕ちゃん」
僕「え、ん?」
女「よく考えたらお互い門限があったもんね。時間はたくさんあるって言ったけど……夜中まではいられないもんね?」
僕「それはそうだけど……」
女「ね、どうする。まだ買い物する? それともちょっとお散歩する?」
僕「買い物して、お散歩する」
女「ふふっ、ワガママ僕ちゃん」
女「僕ちゃんは何が食べたいの? ずっと私の食べたい物ばかりで悪いから……」
僕「んー。やっぱりクレープかな」
女「あ、私も食べたい」
僕「味は?」
女「それは僕ちゃんに任せるよ。私に気を使わないで、好きなの頼んでいいからね?」
僕「ん……」
彼女と一緒にクレープのお店へ向かう。
僕「あ……」
僕たちはその値段を見て愕然としてしまう。
僕「んー。やっぱりクレープかな」
女「あ、私も食べたい」
僕「味は?」
女「それは僕ちゃんに任せるよ。私に気を使わないで、好きなの頼んでいいからね?」
僕「ん……」
彼女と一緒にクレープのお店へ向かう。
僕「あ……」
僕たちはその値段を見て愕然としてしまう。
クレープの値段は五百円。
僕の財布には四百円しか残っていない。
女「僕ちゃんのおこづかいって確か……」
僕「あはは、足りないや。何か他の物にしよっか?」
女「え、う、うん……そう言うなら」
僕「……クレープ食べたいの?」
また彼女の口が強張っているのが見えてしまった。
ああ、彼女はきっとクレープを食べたいんだなあ、と僕にはそれがすぐわかる。
僕の財布には四百円しか残っていない。
女「僕ちゃんのおこづかいって確か……」
僕「あはは、足りないや。何か他の物にしよっか?」
女「え、う、うん……そう言うなら」
僕「……クレープ食べたいの?」
また彼女の口が強張っているのが見えてしまった。
ああ、彼女はきっとクレープを食べたいんだなあ、と僕にはそれがすぐわかる。
女「……あ、ねえ」
僕「ん?」
女「これ……」
ごそごそ、と彼女は財布から先ほどの百円玉を取り出して僕に渡してくれた。
僕「これは受け取れないよ」
女「いいの使って。これでクレープ買えるよね?」
僕「それはそうだけど、百円くらい家からすぐに持ってこられるからさ?」
女「……ありがとう。でもね、このクレープは二人のお金で買いたいんだよ」
僕「?」
女「何て言うか……一緒にお祭り過ごしたよ! って言う思い出になるって感じでさ……」
思い出?
僕「ん?」
女「これ……」
ごそごそ、と彼女は財布から先ほどの百円玉を取り出して僕に渡してくれた。
僕「これは受け取れないよ」
女「いいの使って。これでクレープ買えるよね?」
僕「それはそうだけど、百円くらい家からすぐに持ってこられるからさ?」
女「……ありがとう。でもね、このクレープは二人のお金で買いたいんだよ」
僕「?」
女「何て言うか……一緒にお祭り過ごしたよ! って言う思い出になるって感じでさ……」
思い出?
女「だからこれを使って。一緒にクレープ食べよう?」
僕「……」
彼女の小さな手から僕は百円を受けとる。
僕「すいません、バナナとチョコとアーモンドのクレープを……」
僕も少し大きな声を出しながら注文をした。
隣で彼女は笑っていた。
きっと彼女もこのトッピングが好きだったのだろう。
あるいはクレープとチョコの甘い匂いがするからかな……。
彼女はこの上なく笑っていた気がした。
僕「……」
彼女の小さな手から僕は百円を受けとる。
僕「すいません、バナナとチョコとアーモンドのクレープを……」
僕も少し大きな声を出しながら注文をした。
隣で彼女は笑っていた。
きっと彼女もこのトッピングが好きだったのだろう。
あるいはクレープとチョコの甘い匂いがするからかな……。
彼女はこの上なく笑っていた気がした。
僕たちは、手を繋ぎながらお祭りの会場から遠ざかっている。
右手には半分に割いたクレープ、左手には彼女の小さな手を握りながら。
夕焼け空の赤が段々と小さくなって……背中からはお祭りの賑やかな音が聞こえている。
僕「この辺?」
女「うん。学校の近く。でも本当に送ってもらって大丈夫だったの?」
僕「……一人だと危ないから」
女「うん、ありがとう~」
小学生二人で歩いている事が安全とは言えないけれど、女性一人で帰るよりはまだマシだろう。
右手には半分に割いたクレープ、左手には彼女の小さな手を握りながら。
夕焼け空の赤が段々と小さくなって……背中からはお祭りの賑やかな音が聞こえている。
僕「この辺?」
女「うん。学校の近く。でも本当に送ってもらって大丈夫だったの?」
僕「……一人だと危ないから」
女「うん、ありがとう~」
小学生二人で歩いている事が安全とは言えないけれど、女性一人で帰るよりはまだマシだろう。
女「着いたよ。ここが私の家」
僕「あ、この辺りなんだね」
ここからなら学校までは五分くらいか。
近いと言うのは単純に羨ましい。
女「じゃあ……今日は本当にありがとう。ごちそうさま」
僕「うん。楽しんでもらえた?」
女「すっごく楽しかったよ! いいよねお祭り、本当に夏休みみたい!」
僕「まだ四月なんだけどね」
女「ねえ、夏もまたお祭りある?」
彼女は目をキラキラ輝かせながら僕に訪ねてくる。
僕「盆踊りもあるし……あの神社じゃ無いけど花火大会だって」
女「ね、次の時にはおこづかいいっぱい貯めておくからね? 今度お礼するからね?」
僕「あ、この辺りなんだね」
ここからなら学校までは五分くらいか。
近いと言うのは単純に羨ましい。
女「じゃあ……今日は本当にありがとう。ごちそうさま」
僕「うん。楽しんでもらえた?」
女「すっごく楽しかったよ! いいよねお祭り、本当に夏休みみたい!」
僕「まだ四月なんだけどね」
女「ねえ、夏もまたお祭りある?」
彼女は目をキラキラ輝かせながら僕に訪ねてくる。
僕「盆踊りもあるし……あの神社じゃ無いけど花火大会だって」
女「ね、次の時にはおこづかいいっぱい貯めておくからね? 今度お礼するからね?」
僕「いいよお礼なんて。と言うか行く事確定なの?」
女「先の事はわからないけど……行きたいなーって思ったんだよ」
そう言われたら、僕には何も返す言葉が無い。
相変わらず、彼女にはめっきり弱いようだ。
僕「まあ、考えておくよ」
女「ふふっ、ちゃんと考えておいてね?」
多分彼女との約束を忘れる事なんて無い……それがわかっているから、女の方も意地悪に笑っているんだろう。
僕「じゃあ、バイバイ」
女「うん。またね僕ちゃん」
お友達に手を振って、また明日……。
もう、辺りは少し暗くなり始めていた頃だった。
女「先の事はわからないけど……行きたいなーって思ったんだよ」
そう言われたら、僕には何も返す言葉が無い。
相変わらず、彼女にはめっきり弱いようだ。
僕「まあ、考えておくよ」
女「ふふっ、ちゃんと考えておいてね?」
多分彼女との約束を忘れる事なんて無い……それがわかっているから、女の方も意地悪に笑っているんだろう。
僕「じゃあ、バイバイ」
女「うん。またね僕ちゃん」
お友達に手を振って、また明日……。
もう、辺りは少し暗くなり始めていた頃だった。
父「僕、お祭りはどうだった?」
僕「楽しかったよ。友達みんなで行ったから」
女の子と二人とは、何か言う事が出来ない。
母「私もお昼前に妹と行ったんだけど……やっぱり賑やかだったわね」
妹「かきこおり~」
父「おこづかいは足りたか? お金落としたりしなかったか?」
僕「う、うん。大丈夫だったよ、父さん」
母「そう言えば、僕ちゃんにもそろそろお小遣いをあげ無いとダメかしらね?」
父「そうだな。お金の仕組みを教えておくのは大事だからな」
僕「楽しかったよ。友達みんなで行ったから」
女の子と二人とは、何か言う事が出来ない。
母「私もお昼前に妹と行ったんだけど……やっぱり賑やかだったわね」
妹「かきこおり~」
父「おこづかいは足りたか? お金落としたりしなかったか?」
僕「う、うん。大丈夫だったよ、父さん」
母「そう言えば、僕ちゃんにもそろそろお小遣いをあげ無いとダメかしらね?」
父「そうだな。お金の仕組みを教えておくのは大事だからな」
母「ねえ僕ちゃん。何か欲しい物とか無いの? せっかく小学校に入ったんだから、お祝いで何かね? パパ」
父「お、そう言えば入学祝いもまだだったな。どうだ、何かテレビゲームでも買ってあげて……」
僕「ま、まってよ。僕はそんな……お祝いなんていらないよ」
父「ええ~っ? どうしてだい?」
どうして、なんて言われても僕は余計に困ってしまう。
頭の中では様々な遠慮や気遣い……子供らしくない感情だけがグルグルと回っている。
僕(可愛くない子供……)
昔の自分なら、すぐに買いたい物だけを頭の中に浮かべただろう。
でも今は……欲しい物が何も出てきてくれなかった。
父「お、そう言えば入学祝いもまだだったな。どうだ、何かテレビゲームでも買ってあげて……」
僕「ま、まってよ。僕はそんな……お祝いなんていらないよ」
父「ええ~っ? どうしてだい?」
どうして、なんて言われても僕は余計に困ってしまう。
頭の中では様々な遠慮や気遣い……子供らしくない感情だけがグルグルと回っている。
僕(可愛くない子供……)
昔の自分なら、すぐに買いたい物だけを頭の中に浮かべただろう。
でも今は……欲しい物が何も出てきてくれなかった。
僕「僕より、妹に何か買ってあげてよ。その方が僕も嬉しいしさ」
僕「それにおこづかいだって、月に三百円くらいくれれば僕は満足だよ。あ、何かお手伝いもするからそのご褒美でもいいし……」
父「……」
母「……」
僕「ね? こうやってご飯を作ってくれるだけで僕は……」
僕「ぼ……ぼく……っ……」
母「僕ちゃん?」
父「な、何で泣いてるんだ。何かパパ達悪い事言っちゃったか……?」
そんな優しい目で僕を見ないで。
父「僕? 僕……」
母「僕ちゃん……!」
妹「おーちゃん、ないてる。ないてる?」
僕「ぐすっ……うっ……グス……」
僕「それにおこづかいだって、月に三百円くらいくれれば僕は満足だよ。あ、何かお手伝いもするからそのご褒美でもいいし……」
父「……」
母「……」
僕「ね? こうやってご飯を作ってくれるだけで僕は……」
僕「ぼ……ぼく……っ……」
母「僕ちゃん?」
父「な、何で泣いてるんだ。何かパパ達悪い事言っちゃったか……?」
そんな優しい目で僕を見ないで。
父「僕? 僕……」
母「僕ちゃん……!」
妹「おーちゃん、ないてる。ないてる?」
僕「ぐすっ……うっ……グス……」
その後、両親に慰められるままに僕は布団に入った。
父「寝るまで一緒にいようか?」
僕はそれを断った。
誰かがいたらまた泣いてしまう。
父「おやすみ僕。何かあったら起きて来なさい」
母「おやすみ……」
……
天井に浮かんだ小さな光が、涙で滲んでいる。
必死に目を閉じて、グッと涙を我慢する。
しかし、隣の部屋にいる父と母の姿を想像したら……また勝手に涙が溢れてしまう。
僕(お願いだから、そんなに……優しくしないでよ……)
父「寝るまで一緒にいようか?」
僕はそれを断った。
誰かがいたらまた泣いてしまう。
父「おやすみ僕。何かあったら起きて来なさい」
母「おやすみ……」
……
天井に浮かんだ小さな光が、涙で滲んでいる。
必死に目を閉じて、グッと涙を我慢する。
しかし、隣の部屋にいる父と母の姿を想像したら……また勝手に涙が溢れてしまう。
僕(お願いだから、そんなに……優しくしないでよ……)
布団に入ってから三十分は経っただろうか。
優しい言葉の一つ一つが、まだ僕の胸に突き刺さっている。
僕(……)
僕(みんな……優しかった)
僕は父と母にとって初めての子供だ。
両親からの愛を受け、かなり甘やかされて育ったと……そういう記憶がある。
昔の僕は何も知らない子供だ。
それを甘えだとは思う事ができるはずも無い。
ただ、親が優しくしてくれていた……大学生の僕にはそんな記憶しか持っていなかった。
優しい言葉の一つ一つが、まだ僕の胸に突き刺さっている。
僕(……)
僕(みんな……優しかった)
僕は父と母にとって初めての子供だ。
両親からの愛を受け、かなり甘やかされて育ったと……そういう記憶がある。
昔の僕は何も知らない子供だ。
それを甘えだとは思う事ができるはずも無い。
ただ、親が優しくしてくれていた……大学生の僕にはそんな記憶しか持っていなかった。
もちろん、実家に資産がたくさんあって親が何でも買い与えていたとか。
それこそ馬鹿みたいに、甘やかされ過ぎて育ったというわけでも無い。
いわゆる普通の育て方だったが……初めての息子だからつい溺愛してしまった。
振り返ってみればそれだけだった。
昔の僕にとっても両親にとっても……それは普通の愛情だった。
でも今は違う。
僕は昔の僕じゃない。
それこそ馬鹿みたいに、甘やかされ過ぎて育ったというわけでも無い。
いわゆる普通の育て方だったが……初めての息子だからつい溺愛してしまった。
振り返ってみればそれだけだった。
昔の僕にとっても両親にとっても……それは普通の愛情だった。
でも今は違う。
僕は昔の僕じゃない。
母「あ、おかえり僕」
母「ほら、帰ってきたらちゃんと神棚に挨拶して」
母「これお供え物。あとちゃんとご先祖様にも挨拶をして……」
母「え、旅行に連れていってくれる? 待って。その月は占いで厄が出ているから……その三ヶ月なら大丈夫かな」
母「……またそんな顔して。もう一回先生に占ってもらう? 前は鬼の子が宿っているなんて言われて……」
母「でもこの石のおかげで大丈夫だったでしょ。やっぱり英霊様を大切にすると幸せになるのよ?」
母「ねえ、お父さん。次はこの仏壇を買おうと思うんだけれどね……うん……」
……
母「ほら、帰ってきたらちゃんと神棚に挨拶して」
母「これお供え物。あとちゃんとご先祖様にも挨拶をして……」
母「え、旅行に連れていってくれる? 待って。その月は占いで厄が出ているから……その三ヶ月なら大丈夫かな」
母「……またそんな顔して。もう一回先生に占ってもらう? 前は鬼の子が宿っているなんて言われて……」
母「でもこの石のおかげで大丈夫だったでしょ。やっぱり英霊様を大切にすると幸せになるのよ?」
母「ねえ、お父さん。次はこの仏壇を買おうと思うんだけれどね……うん……」
……
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