元スレ朝倉「ただ月が綺麗だったから…」
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451 = 348 :
朝倉父「しばらくだ…メールで我慢しなさい」
朝倉「…何でよ、電話代だって、ちゃんとバイトのお金で払ってるじゃない!」
朝倉父「深夜遅くまで電話、それがほぼ毎晩続く…そんな生活はダメだ許さん」
朝倉「学校だって…ちゃんと行ってるじゃない…!」
朝倉父「…でも、成績は少し落ちたな。勉強に支障が出ているんじゃあ、以前と同じというわけには行かないよ」
朝倉「…」
確かに、私の成績は以前と比べちょっとだけ悪くなっていた
でも今の私には…口撃する手段の一つにしか、聞こえない
朝倉父「…いいか涼子。何も携帯を解約しようってわけじゃない…ほんの少し使う時間を制限するだけなんだ」
452 = 348 :
―解約
そっか…私の電話は親名義の携帯だ…
父親が店に行けば、すぐに電話は解約できる
…その言葉を聞いて、自分の中に新しい恐怖が浮かぶ
朝倉「解約は、嫌…」
朝倉父「時間で…使いすぎなければいいんだ。ほら…」
父はポン、と携帯をテーブルの上に置く
朝倉父「明日、学校に行く前には返すんだぞ」
朝倉「……」
453 = 348 :
すぐに携帯を取り、私は部屋に戻っていく
電源を入れる、懐かしい重量感が手にフィットする…
メールをチェックすると…一通、二通、三通…
全てキョンからだ
返せなかったおやすみメール…
学校に行く前のいってきますメール…
夕方、私の身を心配してくれているメール…
朝倉「キョン…」
すぐに私は、返信のためにメールをうつ…
454 = 348 :
同日 キョン
変だ…あれからメールが返ってこない
深夜のメールはともかく、朝と夕方…学校が始まる前と、終わった後でも返事が来ていない
思い当たる節は…父親との口論らしきやり取り
無理やり切られた電話…
そしてこれだけ時間が過ぎているという事は…携帯を没収された?
キョン「…涼子と連絡がとれないだけで、こんなに気持ちがザワザワするなんてな」
…それでも、いつか来ると思う連絡を信じて…俺は携帯を握りしめていた
―ピリリリリ
キョン「…!」
これは…メール、いや電話か?
携帯の表示を見ると…ハルヒからだった
キョン「なんだ、ハルヒか…」
がっかりしたとは言え、電話に出ないわけにはいかない
455 = 348 :
これが涼子だったらどんなに嬉しい事か…
―ピッ
キョン『…もしもし?』
ハルヒ『もしもしキョン?今大丈夫かしら?』
あまり大丈夫な気分ではない
キョン『ああ、どうしたんだ。いきなり電話なんて』
ハルヒ『連休…ゴールデンウィーク中の活動内容をちょっとね』
キョン『なんだよ…そんな事なら明日学校で話せばいいだろ?』
ハルヒ『本当は、今日話すつもりだったのよ。なのにキョンがさっさと帰っちゃうから…』
キョン『…ちょっと、居残りする余裕がなくてな。』
ハルヒ『ははぁ…また朝倉涼子ね』
キョン『…そうだよ、悪いかよ』
456 = 348 :
ハルヒ『別に悪いなんて言ってないわよ。ただ、そのおかげで確認だって取れなかったんだからね』
こういう気分の時は、些細な小言を言われても、気持ちが焦り不安定になる
キョン『…わかってる、悪かったよ。それで、ゴールデンウィークがなんだって?』
ハルヒ『今年のゴールデンウィークは、火、水、木曜日が3連休になるじゃない?』
ペラッ、とカレンダーをめくり確認してみる
キョン『ああ…月曜日と金曜日が厄介な週だな。それで?』
ハルヒ『それでね…活動に都合がいい日を今みんなに聞いているのよ。とりあえず日曜日から……』
…結局、ハルヒとはニ時間くらい話していた
月曜日と金曜日に学校はあるものの、放課後も含めて一週間丸ごと活動しよう、という結論になった
457 = 348 :
彼女に会いに行くには、その中で1日あればいい
一週間のうちに、1日くらいは活動を休んでも文句は言われないだろう
休みをもらうのは、いつもの事だ
キョン「ふぅ…なんだかんだで、話し込んじまったな」
改めて、メールを問い合わせする
…ピリリリリ
キョン「メールが…来ている?」
時間を見ると、電話をし出してから…10分ほど後
キョン「…涼子だ!」
458 = 348 :
俺はすぐにメールをひらく
朝倉『長い時間メール返せなくてごめんね。携帯親にとられてたわ。学校行ってる間は親に電話預けないといけなくなっちゃった』
朝倉『電話も禁止されちたから…夜しかメールできないの。しばらくは我慢しないとね』
キョン「…」
考えた通りだった。やはり親に携帯を使わせてもらえなかったらしい…
キョン「…夜の間だけ、か」
キョン『こっちも、返事が遅れて悪かったな。親に止められたなら、仕方ないな…とにかく、できるだけメール返すからさ』
…送信
459 = 348 :
メールはすぐに来た
朝倉『そうね。今は我慢するしかないわね…』
…短いメール。落ち込んでいる様子が手にとるようにわかる
キョン(よしてくれ…涼子がそんなに落ち込んでいたら…)
キョン『そうだな』
朝倉『うん…』
…お互い、1行のメール
朝倉『…今日はもう寝るね、おやすみなさい』
…
なんだろう、この気持ちは
電話が出来なくなったのは…どちらが悪いわけでもない
確かに、電話をし過ぎた自分たちのせい…自業自得なのかもしれない
俺はまだそれで納得はできる。多少の寂しさはあるが…
でも涼子は…親から電話を禁止され、携帯を持つ時間も制限されている
今日もすぐにメールを返せなかった…
気持ちが荒んでいくのは、なんとなくわかる
460 = 348 :
キョン「…本当は、俺が優しい言葉をかけるて支えるべきなんだろうな」
それなのに、自分もつられて寂しげなメールをしてしまった
キョン「…俺も寝よう」
その日は、なぜだかよく眠れた
胸には突っかかってるものが沢山あるのに…
462 = 348 :
さる→居眠りしてました
やっぱさるはつらいんで、いつものペースで
起きて少しメールをして…
眠るまで少しメールをする…
涼子との連絡これだけになってから、数日…
そんなに日にちは過ぎてなかったと思う
相変わらず、どこか寂しい様子の涼子のメール
電子の文字が無表情のまま、画面に並んでいる
キョン『…連休中に会うなら、どこか遠出でもするか?』
朝倉『1日じゃあ厳しいわよ? 時間ができたら、ね』
464 = 348 :
>>463
気持ち、女の子(乙女)っぽくするためです
まあ、イメージというか雰囲気というか…
なるべく元気に振る舞ってみても、彼女の反応はどこか寂しそうで…
朝倉『そろそろ…寝るね。おやすみなさい』
今日も…短い彼女との時間は終わった
何となく、言葉の裏に本音が隠れているのはお互いわかっている…
でも、本当に言いたい事を言えないような…そんなもどかしさがあった
歯切れの悪い生活…それが数日、続いてしまった
465 = 348 :
翌日…朝
―ピリリリリ
目覚ましとは違う電子音で目が覚める
この音は…メールだ
キョン(多分…涼子かな…)
時計を見ると…朝の5時か
朝倉『寂しい。ここから逃げ出したいよ…キョンに会いたい…家出したい…』
キョン(…何を言ってるんだ涼子…)
家出…その考えは全く無かったわけじゃない
でも俺たちは高校生だ
身の回りの色んなものを捨てて、大好きな人の所へ逃げていく…
そんな大それた事は考えが浮かんでも、口には出せなかった
外に出した所で…相手にかかる負担、周りに言った所で、絶対に変わる事のない日常
そのアンバランスさと優先度の不等号が…いつも自分の考えと言葉を遮っていた
466 = 361 :
僕はキョン相手にだけだったか男子相手にだけじゃなかったか
女性相手には私だったはず
467 = 348 :
それを…涼子今朝のメールで言葉に出してきた
少し意外なような…安心はしたような印象もある
でも…
キョン『おはよ。ちゃんと眠れたか? 連休中には会いに行くからさ』
…
朝倉『休みまで待てないよ…今日…すぐに会いたい…』
今日も明日も学校だ
…これは困った
キョン『…何かあったのか?』
朝倉『寂しい…会いたい…もう寂しい思いをするのは嫌だよ…』
キョン『家出したら、学校はどうするんだ?家族は?』
朝倉『もうなんでも…キョンがいればいい……』
468 = 426 :
こ れ は う ざ い
469 = 348 :
キョン『……』
自分も密かに持っていた願望
この環境から逃げたしたい欲望
止めるという考えより先に、会いたい気持ちが出てきてしまう
キョン『…それでいいのか?』
朝倉『いい…会いたい…私、あなたについて行きます…』
この時の俺たちは…学校とか、友達とか…
明日の事も何も考えないで…寂しさを我慢する事も全部忘れて…
ただ彼女に会いたかった…
周りから見たら、とても愚かな事なんだろう
今の俺たちには、周りの言葉なんて何の関係も無い事だった
470 = 348 :
5月2日(月)
昼過ぎ 佐々木
学校
佐々木「朝倉さん、ご飯にしようか」
朝倉「そうね。食べましょう」
彼女は…心なしか軽い感じで昼食を机に広げる
その様子は、なんだが少し嬉しそうだ
佐々木「…何かいい事でもあったのかい? あ、携帯を返してもらったとか?」
朝倉「ふふっ…ちょっとね。携帯はまだだけど…もういいのよ」
もういい?
今まではあまり聞かなかった…彼女からは初めて聞くような言葉だ
佐々木「ふぅん? まあ、元気そうならよかったよ。明日から3連休だね」
471 = 368 :
う ざ い け ど 気 持 ち は わ か る
472 = 365 :
う ざ い け ど こ ん な 彼 女 ほ し い
473 :
ああ、そっちのあさくらね
474 = 348 :
朝倉「そうね。今週はあと金曜日に学校があるだけだから楽よね」
佐々木「やっぱり、連休中はキョンに会いに行くの?」
朝倉「…」
佐々木「ん、都合が悪い…とか?」
朝倉「まだちょっと…わからない、かな。キョンも忙しいみたいだし…」
彼女が少ししょんぼりとしてしまった
佐々木「ああ…ごめんごめん。でも休みがたくさんあるんだから、1日くらいは時間を作ってくれるはずだよ」
慰めるように、言葉を投げ掛ける
朝倉「…ふふっ、ありがとう。佐々木さんにはなんか心配して貰いっぱなしね…」
彼女の笑顔につられて、自分も少し安堵をする
佐々木(心配は…いらなかったかな? 朝倉さんに対して…ちょっと敏感になりすぎ、かもね)
475 :
高校生だし仕方ない
476 = 348 :
不思議そうな顔を、自分もしていたんだろう
彼女も、ハッと私の方を見つめ直してくれる
朝倉「あ、ごめんね。なんだか変な話して…」
佐々木「…ううん、いいんだよ。人の話を聞くのは好きだからね」
朝倉「いつかちゃんとお礼もしないとね…」
佐々木「お礼なら…いつも朝倉さんが作った卵焼きを貰ってるから、それで十分だよ」
彼女の作る卵焼きは…おいしい
砂糖のきいた甘い卵焼き…それを一切れ食べるだけで幸せになれる
477 = 348 :
朝倉「そう…じゃあ、今日はこれ全部あげるわよ」
佐々木「全部…? 食欲無いの?」
朝倉「ううん、そんなじゃないわよ。今日のは佐々木に食べて欲しいの」
佐々木「くつくつ…じゃあ、遠慮なく…いただきます」
彼女からもらった卵焼き…
相変わらず美味しい…けど、今日は少しだけ砂糖が抑えられていた気がした
微妙に砂糖の量が違ったのか
私の味覚がいつもと変わったのか
彼女に何か変化があったのか
さっき…考える事をやめた私には、食事中に微かに沈む彼女の顔を見つける事は…
私にはできなかった
478 = 348 :
佐々木「じゃあ、よい休日をね」
朝倉「うん、さよなら佐々木さん」
彼女とは、いつものコンビニ…バイト先まで彼女を見送ってから別れた
明日から連休だ…何をして過ごそう
ちょっと遠出でもしようか、誰か友達と遊ぼうか…
朝倉さんと遊ぶのもいいかもしれない
そんな事を考えながら帰路につく
…
佐々木「ただいま」
家に帰ってきたものの…特別やる事があるわけでもない
カバンを置き、服を着替え…自分の勉強机に座る
佐々木(…ああ、そう言えば宿題も多目に出てるんだったな…)
479 :
さすがにこれ、高校生という設定にしては親厳しすぎwwww
480 = 348 :
カバンから教科書を取りだし、ザッと目を通す
佐々木(…まあ、ちょっとだけ片付けておこうかな)
スラスラと、問題を説いていく
時間は…帰宅してから1時間が経っていた
佐々木「ふぅ…ちょっと休憩しようかな」
トタトタ、と台所の冷蔵庫に向かう
佐々木「あら…飲み物、何も無いじゃない…」
佐々木(買ってこなくちゃ…)
玄関を出て、彼女…朝倉涼子がいるコンビニに向かう
買い物のついでだ、少し話して行こう
私の舌は、彼女の卵焼きの味をまだ覚えていた
それくらい、今日食べた卵焼きはおいしくて、嬉しかった
481 = 348 :
―ピンポーン
店内に入り、辺りを見回す
いつものレジには、いつもの彼女の姿が…無い
佐々木「あら…」
佐々木(裏の仕事をしてるのかしら? でもこの時間はいつも一人だったし…)
つい1時間前に、このバイト先で別れたばかりだ
彼女がいないはずがない…
佐々木「あの…すいません」
店員「はい?」
佐々木「今日朝倉さんて、来ていませんか?」
店員「あー、朝倉さんね。あの子辞めちゃったんだよね。ほんの数日前にさ」
佐々木「え…」
辞めた?
彼女からは一言もそんな事は聞いてない
482 = 348 :
佐々木「あの…理由とかわかりますか?」
店員「んー…ちょっとわからないかな。特にトラブルも無かったから…」
佐々木「そうですか…」
とりあえずその場は、ジュースを2本だけ買ってお店を出た
佐々木(彼女に、連絡してみようか…)
しかし、携帯は持ってきていない
ここからだったら、家に帰るより朝倉さんの家に行く方が距離は近い
でもなんだか、今日は胸騒ぎがする
佐々木「…ちょっと行ってみよう」
483 = 348 :
―ピンポーン
急ぎ足で向かった、朝倉涼子のマンション
ここに来るのは…彼女に手を出してしまった、いつかの日以来…
ちょっと嫌な記憶がよみがえる…
―ガチャリ
朝倉母「はい?」
中からは彼女の母親が出てきた
何度か顔を合わせた事もあるので、お互いに知己の仲だ
朝倉母「あら、佐々木さん、こんばんは」
佐々木「こんばんは。あの、涼子さんいらっしゃいますか?」
朝倉母「あら、涼子は今日はバイトの日なのよ。ほら、あの大通りのコンビニで……」
佐々木(……)
484 = 348 :
朝倉母「なにか用事だった?」
佐々木「あ、いえ…ちょっと近くまで来たものですから」
朝倉母「そう、ごめんなさいね。来たこと伝えておくわね」
佐々木「…はい。連休が終わったら、学校で会えますしね」
朝倉母「そうね…じゃあ、体に気をつけて休日を過ごしてね」
佐々木「はい…お邪魔しました」
…
公園
ベンチに座って、さっきのジュースを一口…
佐々木「ふぅ……」
一息ついて、何もない空を見ている
辺りはすっかり暗い…
確証なんて無いけれど…多分、自分にはわかってしまったような気がする
佐々木「ああ…君はもうこの街にはいないんだね……」
486 = 348 :
同時刻 駅 朝倉
―ガタン、ガタン
夜を走る電車の中に私はいる
手には…ちょっとした荷物と、胸にいっぱいの不安
朝倉(キョンに…会いたい…)
会いたいからこそ、私はこうやって電車に乗っている
家族も、友人も、学校も…
全てを捨てて、私はここにいる
朝倉(…早く着かないかな…)
ただ彼に会う時間だけが待ち遠しい
でも、この数時間を乗りきれば…あとはずっと、キョンと一緒にいられる
朝倉(キョン…キョン…)
今からでは、向こうに着くのは0時近くになってしまう
それでも、大好きな人に会えるなら…残りの時間なんて、どうでもいい事だった
488 = 479 :
だんだんクライマックスだな
489 = 348 :
乗り換え駅
朝倉「あ…」
キョン「よう…おかえり」
彼がいる
ずっと会いたかった、大好きな彼が目の前にいる
朝倉「うん…うん…ただいま…」
キョン「…泣くなよ。ほら、とりあえず電車に乗るぞ」
グイッと彼は私の手をとる
朝倉「うん…」
490 = 348 :
―電車
朝倉「迎えに来てくれて、ありがとう」
キョン「いいんだよ。いつもあの駅で待ち合わせしていたからな…思い出の駅みたいなもんだ」
朝倉「思い出…本当ね…」
キョン「…携帯も置いてきたんだろ?」
朝倉「持ってて、連絡くると嫌だから…あ、キョンとのメールはちゃんと別に保存してあるからね?」
キョン「ああ…ありがとうな。今日からは、ずっと一緒だ」
朝倉「うん…思い出…キョンといっぱい作りたいな…」
キョン「ああ、ああ…一緒にいるんだ。これから、たくさん作ればいい」
朝倉「キョン……」
自分のワガママ…全部を受け止めてくれる彼の横顔…
やっぱり私は…彼に恋していたんだと…そう思った
491 = 348 :
地元駅 キョン
涼子と話していると、時間が過ぎるのがあっという間だ
もう、俺たちを最後の駅まで運んでくれた
キョン「着いたな…ほら、カバン持つぞ」
朝倉「あ…ありがとう」
時間はもう0時近く…人影は、あまり見当たらない
人目が少ない駅は…今の俺たちにはとても落ち着ける空間だった
…クリスマスの日の、駅を少し思い出してしまう
492 = 348 :
朝倉「この時間なら、知り合いもいないわよね?」
キョン「さすがにこの時間じゃあな…誰か駅で待ち合わせでもしてれば、いるかもな」
朝倉「こんな時間に出歩く高校生も、なかなかいないわよね」
彼女はふふっ、と小さく笑う
…駅前で、待っていたハルヒの事が頭に浮かんだのは…涼子には秘密だ
キョン「…さ、いくか」
朝倉「うん!」
知っている道…家への帰り道を歩いていく
今日は涼子と一緒に、ゆっくりと…
493 = 348 :
朝倉「住んでいた地元でも…久しぶりに来ると、ちょっと懐かしい感じがするわね」
キョン「そうか?」
朝倉「うん。それに深夜だから、ちょっと雰囲気も違うし…ね」
キョン「確かにな…」
そんな話しているうちに、もう家の側まで来てしまった
キョン「っと…もう家か…」
朝倉「そうね…ねえ、本当に大丈夫なの?」
家出をするにあたって、まず涼子をどこに泊めるか…それがまず問題だった
一人でホテルに泊めるわけにもいかず…結局、家で匿う形となったのだが…
キョン「見つからないようにするから、大丈夫さ。家族に見られたら…ヤバいからな」
当然、家族には内緒だ
494 = 348 :
朝倉「うん…でもずっとキョンの部屋にいられるかなら…いいかな」
キョン「…ちょっと窮屈な思いさせちまうかもしれないけどな」
朝倉「キョンといられるなら…いい…」
キョン「涼子…」
…
キョン「ただいま…」
廊下には誰もいない…大丈夫…
言う間に涼子を部屋に走らせる
涼子が部屋に入った音が聞こえた
とりあえず…これで一安心だ
俺も部屋の扉を開け…中に入る
495 :
妹「きょんくんあーさーだーっ……」
妹「あかーさん! キョンくんがっ! キョンくんがああっ!」
キョン「」
朝倉「」
496 = 348 :
朝倉「もう、寂しい思いしなくていいんだよね…?」
キョン「ああ…一緒だ。ずっと一緒にいよう…」
朝倉「うん…うん……」
キョン「…もう、寝るか?」
朝倉「そうだね…もう1時だもんね」
キョン「…布団1つしかないけど、いいよな?」
朝倉「うん…一緒がいい…」
―ドクン
2人布団に入って…隣に並んでいる
キョン「涼子、ほら…頭」
朝倉「ん……」
彼女は頭をスッと、俺の腕にのせてくる
そのまま…彼女を引き寄せ、また腕にギュッと抱きいれる
朝倉「あったかい……」
キョン「布団の中に涼子がいる…いい匂いだ…」
497 = 348 :
心臓がドキドキ言っている
朝倉「本当に夢を見てるみたい…」
キョン「涼子……」
そのまま、彼女にキスをする
朝倉「ん…」
少し…肩がフルフルと、揺れている
キョン「涼子…緊張してるのか?」
朝倉「ほんのちょっと…」
キョン「それなら…心臓の音をきくといい。ほら」
もう一度、彼女を抱き寄せる
今度は胸の位置に彼女の顔が来るように
朝倉「んっ…」
499 = 348 :
朝倉「ふ~ん…じゃあ、キョンちゃんも落ち着く?」
キョン「ん…」
朝倉「心臓の音…きく?」
キョン「あ、ああ…そうだな…」
朝倉「えへへっ、じゃあ…おいでおいで♪」
ピョコッ、と布団から頭を出した彼女が腕を広げる
その胸に吸い込まれるように…俺は頭を彼女の心臓にくっつけた
―トクン トクン
朝倉「きこえる…?」
キョン「ああ…落ち着く…」
確かに落ち着く…心地よい鼓動が俺の耳をとらえて離さない…
が…それ以上に…
心臓…つまり涼子の胸が俺の頬に当たっている状況が…俺の心臓をまた早くする
キョン「…柔らかい」
500 = 348 :
朝倉「私の胸?」
キョン「ああ…なんか、柔らかい…」
朝倉「えっちだ…」
キョン「…心臓がちょっと早くなったぞ」
朝倉「そ、そういうのは、言わなくていいのよ…ばか…」
キョン「おっ…また少し…」
朝倉「…! もうダメ。胸に耳くっつけるの禁止!」
プイッと…彼女は反対側を向いてしまう
キョン「…そうか、涼子はそっちの方がいいのか」
朝倉「え…あ……」
彼女が向こうを向いたまま…俺は涼子を後ろから、覆うように抱きしめる
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