元スレ朝倉「ただ月が綺麗だったから…」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
201 = 176 :
朝倉「ケーキ…どうだった?」
キョン「全部美味しかったよ。おかげで腹もいっぱいだ、ごちそうさま」
クリスマスらしい料理は食べられなくても、彼女が作ってくれたケーキを食べる事ができた
本当に…幸せだ
朝倉「よかった…キョンが幸せなら、私も幸せよ…」
彼女はまた…体をこちらに任せてくる
肩に涼子の頭が寄せられて…また、俺の首筋に彼女の顔が触れ合っている形だ
涼子の肩を抱きながら…俺も、持っていた袋の事を思い出す
キョン「そうだ、涼子…渡すものがあるんだ」
202 = 190 :
何やってんだキョン早く渡せよ
203 = 176 :
朝倉「ん…なーに?」
持ってきたカバンから、リボンの巻かれた箱を取り出す
キョン「クリスマスプレゼント…涼子に」
朝倉「あ、ありがとう…嬉しい…でも、私今日プレゼント用意してないのよ…」
元々は佐々木と遊ぶ予定だったんだ
持ってなくて当然だ
キョン「俺はこれを涼子にあげたいだけだからな…プレゼントは、気にしなくていいさ」
朝倉「私だってプレゼント渡したいの! あ、じゃあ…今度! 会う時までに…用意しておくからね…?」
キョン「ああ、わかった。楽しみにしとくよ」
朝倉「うん…あ、開けてもいい?」
205 = 176 :
キョン「ああ。気に入るかはわからんがな」
シュッとリボンをほどき、袋を開けていく
中からはプラスチックで覆われた、透明な小さな箱
箱というよりは…スライドする、小さなショーケースだ
そのケースの中には…
朝倉「指輪が…2つ…?」
キョン「何にするか迷ったんだけどな」
朝倉「キョンがくれるなら、何でも嬉しいわ…でも、2つ…?」
キョン「これはお揃いの…ペアリングってやつだ。ほら、指貸してみ」
朝倉「あっ……」
206 = 176 :
彼女の左手を掴み…指輪を取り出す
その指輪は、彼女の薬指にスッポリとはまる
キョン「よかった、ピッタリみたいだな」
朝倉「薬指…キョン、これって……」
キョン「あ、ああ…指のサイズがわからなくてな、店員に相談したら薬指で考えるのがいいって言われて…それでな」
さすがに渡す時は緊張して…ドキマギしながら、答えてしまう
朝倉「本当、ぴったり…ね」
キョン「手はよく握ってたから…指の細さや、大体のサイズは覚えていたんだ。涼子の指は、平均よりちょっと細かったみたいだな」
朝倉「そう…なんだ…」
彼女はただうつ向いて…軽く両手を絡めながら、指輪を見つめている
207 = 176 :
キョン「もう一つのは俺の、と…」
指輪を取りだし、指にはめようとした時…
朝倉「あ…待って」
キョン「ん…?」
朝倉「もう片方は…私からキョンに付けさせて?」
キョン「そうだな…わかった」
自分の薬指に、彼女がもう一つの指輪をはめてくれた
朝倉「これで…お揃いね」
キョン「ああ…お互い離れているけど、少しでも近くにいられるように、な…?」
朝倉「うん……!」
また彼女はギュッと力強く抱きついてくる
そして俺も…ギューッと彼女を抱き返す
208 = 176 :
しばらく抱きついてると、俺の首筋に…ヒヤリとした液体が流れてくる…
キョン「ん…涼子?」
朝倉「……」
彼女は答えない
少しして、これが彼女の涙だと言う事に気付く
キョン「好きだ…本当に、大好きだ…」
朝倉「うん…私も…好きよ、大好き……」
遠い場所で、星が輝く下で、俺たちは長い時間ずっと抱きあっていた
今日この日…彼女と過ごしたクリスマス…
その日は星空がとても輝いて見えて…
流れる時間や冷たい空気…全てが、なんだか…
俺にとって世界が変わった日だったんだと…思う
210 = 176 :
…どれくらいの時間、ここにいただろうか
時計を見ると、もう夜中の7時を過ぎている
朝倉「時間、大丈夫…?」
彼女は不安げに、訪ねてくる
キョン「そろそろ電車に乗った方がいいのかもな」
朝倉「うん…」
キョン「じゃあ…行くか」
2人また手を繋ぎながら、駅に向かって歩いていく
朝倉「今日は…ありがとう。ここまで来てくれて嬉しかった」
キョン「…佐々木に感謝だな。俺も会えると思ってなかったからな」
朝倉「うん…お礼、伝えておくね?」
キョン「ああ…頼んだよ」
211 :
今、西の空に大きい満月ありますねん
212 = 176 :
>>211
こちらは曇り…今日は見れないのが、残念
彼女とほんの少し話をしただけで、すぐ駅には着いてしまった
近くの神社だ…移動距離も、こんなものだろう
キョン「もう駅か…」
朝倉「うん…」
キョン「…メール、するよ」
朝倉「うん…帰ったら、教えてね…?」
キョン「ああ…またな」
朝倉「今日はね、クリスマスに会えたから…たくさん話せたから寂しくないよ…」
キョン「そうだな…」
朝倉「こんなに素敵なプレゼントも貰ったし…今は、本当に幸せよ…」
キョン「涼子が幸せなら…それでいい。そろそろ…行くよ」
朝倉「うん! またすぐ会えるわよね。その日まで…またね、キョン」
キョン「ああ…またな、涼子」
最後は、2人とも笑顔でバイバイができた
213 = 176 :
駅の改札を通って、ホームに行く
案内に目を通すと…20時に次の電車が来るらしい
あと15分程待つようだ
キョン「ふぅ…」
俺はベンチに腰を下ろす
彼女に会えた安堵と、これから帰るという気疲れ…
さっきの出来事の色んな事を考えながらも…15分後には、帰りの電車の中に座っていた
214 = 176 :
夜8時
電車に乗り込み…やっと一息つく
足にかかる暖房が温かい…
キョン「ここから5時間か…やっぱり、遠いな」
電車が走りだし…涼子のいた街が、どんどん遠くなっていく
でも今は不思議と悲しくはなかった
好きな人に会えた満足感、プレゼントをあげる事ができた幸福感…
そして左手の薬指についている指輪
そのどれもが、俺の心を満たしてくれる
さっき涼子と…駅で話していた通りだ
そんな事を考えてると…すぐに、一つ目の乗り換えの駅に着いた
ここまでおよそ1時間…遠いようで近い…ここまでは、そんなだ
215 = 176 :
キョン「もう着いたか…早いな」
そのまま、駅の中を移動する
目的の路線を見ると…
昼や夕方の時と比べ、乗り換え本数がまた減っている事に気付く
昼間の時間帯なら30分に1本は電車も来ていたのだが…
キョン「…50分ほど、足止めか」
次の電車は10時近くに来るようだ
キョン「ここで…あせっても、仕方ないか」
ベンチに腰をおろし…冷たい風が吹き抜ける駅のホームで俺は…電車を待っていた
217 = 176 :
夜10時頃
―ガタン ガタン
待っていると…やっと電車が来る
あれから1時間。寒空の下で待つのも楽ではない
キョン(待った後に…涼子に会えるなら、別だけどな)
心の中でそんな事を思いながら、電車に乗りこむ
そしてまた揺られながら…帰っていく
―ガタン
この電車の先に、誰もいないのかと思うと…憂鬱になる
ただ家に帰って、また涼子のいない毎日が始まる…
キョン(よく考えたら…寂しいもんだな)
悲観的な考えしか浮かんで来ないのは…彼女から離れてしまっているからだろうか?
218 = 176 :
50分ほど走った後…電車はまた次の駅に着く
ここは、いつも涼子と会っていた駅だ
人もいない、空気も冷たい…
朝や昼に来るのとは、ずいぶん違った印象だ
キョン「やはり、一人で来ると味気ないもんだな」
真夜中のクリスマスイブだけあって、人は本当にまばらだ
そして、時刻表を見る…
今の時間は11時を過ぎている
キョン「次の電車、この時間は…また1時間か。くそっ、乗り換えがうまくいかないな……」
219 = 176 :
この時間では…次に電車に乗る頃には、日付が変わってしまえ
キョン(…日付?そう言えば、終電…大丈夫なのか?)
今さらになってその疑問が浮かんでくる
乗るわけではないが、この駅の時刻表を調べてみる
大体の基準を考えるわけだ
キョン「ここの終電は…夜中の1時8分」
キョン「次の駅でもう一回乗り換えなくちゃならんしな…間に合うのか?」
それを今考えても、電車が早く来る訳ではない
俺は潔く、電車を待つ事にした
もうすぐ、涼子と過ごした今日が終わる
220 :
ハル×キョン 主義だが、この朝倉なら許す。
朝倉カワユス
221 :
支援
眠いだろうけど頑張ってるね
応援してる
222 = 176 :
12月25日0時 ハルヒ
駅で彼を待ってから数時間…
日付はもう変わってしまった
ハルヒ「…来ないわね…」
待合室では小さな電気ストーブが動いているが、やはり冬の空気は冷たい
ハルヒ「はぁ…息真っ白…」
フゥ、とため息を落とす
さっきから、何度同じ動作をしたかわからないくらいだ
ハルヒ「まったく…何やってるのよ、あのバカ…」
悪態をつきながらも、自分は彼の到着を待っている…
223 = 176 :
さっきまでの楽しかったクリスマス会が何だか嘘のような…
自分を寂しい気持ちにさせる、この寒い空気がなんだか嫌だった
ハルヒ「でも…キョンに渡さなきゃ…」
そんな寒さも、彼を思えば…何ともなかった
いつまでだって待っていられる…
それでも今はただ、私には座っている事しかできなかった
224 = 176 :
12月25日 0時12分 キョン
―ガタン
ああ、やっと電車が来た
しかし、この電車に乗った後にもう一つ乗り換えをしなくてはならない
キョン「終電…間に合うのか?」
考えれば考えるほど、もどかしい
キョン「またここから一時間か…」
改めて考えると、涼子のいる街まで本当に遠い
恋人が…なんでこんなに遠いんだろう
どうして俺は、彼女の近くに住んでいないんだろう
キョン「…こんな事考えるなんて、どうかしてきたな、俺も」
225 :
うむ
226 = 176 :
キョン(やっぱり…近くにいきたいな…涼子…)
電車の中の暖かさと、たまった疲れのせいで、俺はいつの間にか寝てしまった
最後の駅で乗り換えなので、乗り過ごす不安は無かったが…
ただ、帰りの電車に乗れるのかだけが、ちょっと不安だった
どんなに気持ちは焦っても…あと1時間は、どうしようもない時間だ
227 = 176 :
12月25日 1時17分
やっと最後の駅に着く
が…案内を見て愕然とする
キョン「電車が…もう無い…」
時刻表では、1時前でこの駅の電車は終わっていた
先ほど俺が乗ってきた電車が最後で…もう、電車は来ないみたいだ
この駅からの電車に乗れなければ、俺は家に帰れない
キョン「どうする…かな……」
228 = 190 :
ずっと付き合ってるけどさすがにもう寝る
そして起きたら読む
がんばれ>>1
つ旦
おやすみ
230 = 176 :
こんな時間だ
高校一年生がうろついていい時間ではない
何かあって、補導でもされたらたまったもんじゃない
キョン「かといって、電車で一時間の距離を歩くわけにもいかないしな…」
漫画喫茶にでも泊まるか?
キョン「いや、未成年だからどちらにしろ危ないか…」
進めない、泊まれない、帰れない…
周りでは、ガラガラ、とシャッターが動く音がする
駅員が駅を閉めるような準備をしている
231 = 176 :
支援感謝
キョン「ここにいても…仕方ないか……」
途方にくれながら駅を出る
ここらの街並みは…少し小高いビルが並んだ…ちょっとした都会だ
…しかしそのビルが、今の俺にはとても恐ろしいものに見えた
駅前なのに、明かりが点るような店は何もない…真っ暗だ
街全体に広がる黒が、余計に俺を不安にさせる…
232 = 176 :
12月25日 1時49分 ハルヒ
―ガタン、ガタン
ホームに電車が来る
これがこの駅の最後の電車…
今までの電車にキョンはいなかった
この電車に乗っているはずだ
ハルヒ「キョン…よかった、やっと会える…」
改札の方を向きながら、出てくる人々に目をやる
一人…二人…
改札を、まばらになりながら人が通っていく
彼の姿は…まだ見えない
233 = 176 :
いつの間にか…改札を通る人はいなくなっていた
それでも、さっきの中に…キョンの姿は無い
ハルヒ「……」
「…そろそろ、駅を閉めますよ」
ハルヒ「…え、あ、はい…」
いつの間にか、時計は2時を過ぎている
駅員に声をかけられて、もう人が来ない事を理解する
「夜中だから、お気を付けて」
ハルヒ「はい…」
駅を出ると、寒い空気が一気に襲ってくる
さっきまでのストーブがあった待合室とはやっぱ違う…
何より、気持ちまで凍ってしまいそうだ…
235 :
ほっほっほ
236 :
起きてから読んだぜ
支援
237 :
ようやく追いつけた
支援
238 :
よかった生きてた
支援
239 :
ハルヒ・・・
240 = 197 :
どうする?キョン
241 :
このBGMが会うわ
http://www.youtube.com/watch?v=qrM-8I2khkw&feature=related
242 = 176 :
ハルヒ「…来なかったじゃない」
ずっと待っていたが、彼は来なかった
ハルヒ「…お泊まりかしら」
嫌な考えばっかり浮かんでくる
ハルヒ「有希が言ってたのは、この事ね…最愛の人と会っている…ってさ……」
243 :
来たか
というか心えぐられるよな
本気で好きになった人が一番の笑顔を向けるのは自分以外の人で、しかも聖夜に夜通しずっと一緒に過ごしてるらしいって現実は
244 = 176 :
支援、ありがとうございます
ハルヒ「…もう、帰ってこないのかな」
今日一日会えない…それだけで、これから先もうずっと会えないような…
そんな気がした
真っ暗な空に向かって…ううん、キョンに向かって話しかけるように私は呟く…
ハルヒ「どこにいるのよ…早く…、帰って来なさいよ、バカ……」
…
ハルヒ(ここで文句を言っても…仕方ないのに、ね…)
ハルヒ「もう…帰ろっかな…」
私はしばらく、その真っ暗で灰色な空を一人で見上げていた…
そのまま空を、ほんの少しの時間…見上げていた……
245 = 176 :
12月25日 1時58分 キョン
「なあ、あんた」
キョン「……」
「あんたってば、大丈夫か?」
駅の前で一人座っていると、後ろから声をかけられる
キョン「…」
振り向くと…
白い帽子を被り白い手袋をつけた…初老くらいのじいさんが立っていた
キョン(この格好…タクシーの運転手…か?)
「何やってるんだい、こんな時間に」
246 :
続きキテター
無理せずマイペースで頑張れ
248 = 221 :
ほ
249 = 220 :
ほほ
250 :
ほ
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