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元スレ阿良々木「みんなが僕のことを好きだって?」
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「ど、どうした?」
「うん。ちょっと探すの時間かかりそうだから……」
「あ、そうか。
よし、だったら僕も一緒に探そうか」
「ううん、いいの、大丈夫だよ!
暦お兄ちゃんはこの部屋で、飲み物でも飲みながら撫子を待ってなきゃいけないんだよ!
それ以外にないんだよ!」
……僕は待ってなきゃいけないのか。
それ以外にないのか。
いよいよ強制力が強い言葉になってきたぞ、千石の消去法主義。
つーかもはや消去法の態を取れているのかすら怪しい。
……まあ、他人の家の物置なんて、見られたくないものが入っている可能性は否定できないしな。
僕だって、家の物置で小学生の頃の恥ずかしい作文を詰めた段ボールなんか発掘したとしても、
笑いながら懐かしめる程にはまだ大人になっていないと自覚しているし、
なんせ相手は中学生の、思春期真っ盛りな千石なのだから尚更だろう。
「だ、だから、その、これっ……!」
言って千石が差し出してきたのは、からんと涼やかな氷の音を鳴らす麦茶入りのコップ。
変に気合いが入った渡し方だったのが気になるけれど、とりあえず受け取る。
汗をかいたコップから伝わってくる確かな冷気に、
それだけで暑さが霧撒するような気がした。
「なんか悪いな。ありがとう」
「いいんだよ、暦お兄ちゃん」
千石は。
いや、千石に限ってそんなことがないのは、
勿論当然のように言うまでもなく百も承知だけど、
それでもあえて言うのならば。
照れくさそうというよりはむしろ、悪戯が成功したかのように、にっこりと笑って。
「じゃあ、撫子、ラケット探してくるよ。
暦お兄ちゃん、麦茶――絶対飲んでね」
すっと、廊下に消えていった。
「………………」
手の中のコップを見つめる。
いや、飲むよ。
丁度喉渇いてたしさ。
飲みますよ。
飲むけどさ。
あんなに念を押すほど、僕って千石の前じゃ遠慮してるように見えるのかな。
実際はそりゃもうそんなこと全然ないのだけれど、
もともとの彼女の性格も相まってか、千石にはやたらと気を遣わせちゃってる気がする。
高校生が中学生に気を遣わせてどうすんだよ……。
「……ま、考えすぎか」
そう勝手に結論を出して、思考を放棄。ゴミ箱にぽい。
僕は綺麗な琥珀色の麦茶がたっぷり入ったコップを煽った。
焦がれた喉を通る痛みにも似た冷気に、胃が流動するのを自覚する。
美味いなあ、麦茶。
なんて考えながら、半分ほど飲んだ頃だろうか。
「あれ……」
なんだか頭が重い。くらくらするというか、瞼の開閉がやたらと困難になり、
思考も視点も標準が定まらず、
靄がかかったように――ああ、これ、あれだ。眠い時になる症状だ。
寝起きの直後から続いていた緊張の糸が、どういうわけか麦茶を飲んで安心したのか、
いきなりの耐えがたい睡魔に襲われて。
「………ごめん、千石」
ラケット見つかったら、起こして。
泥に沈んでいくような、不思議で不自由な拘束感に負けて。
そのまま僕は――意識を手放した。
―――
「………んむ?」
水中でゆっくりと浮上していく空気のように、意識がぼんやりと持ち上がった。
はっきりしない視界の中で、
しかし手首と足首に感じた痛みと不自由さに、顔をしかめる。
現状を確認するまでもない、あまりに明瞭な事態に滅入りそうになった。
首を回して周囲を確認。
僕がいるのは相も変わらず千石の部屋で、
しかしいつの間にかベッドに寝かされていて――そして、手足が、キツく縛られていた。
「………んむ?」
水中でゆっくりと浮上していく空気のように、意識がぼんやりと持ち上がった。
はっきりしない視界の中で、
しかし手首と足首に感じた痛みと不自由さに、顔をしかめる。
現状を確認するまでもない、あまりに明瞭な事態に滅入りそうになった。
首を回して周囲を確認。
僕がいるのは相も変わらず千石の部屋で、
しかしいつの間にかベッドに寝かされていて――そして、手足が、キツく縛られていた。
「なんだよこれ……」
ぼんやりと呟く。
今朝のファイヤーシスターズの襲撃よりも尚、明確に自由を奪われた状態。
寝ている間に拘束されていたという状況は、夏休みに旧戦場ヶ原から食らわされているけれど、
その戦場ヶ原は自然と候補から外れるとなると、
犯人の人と成りがまったく掴めない。
僕の知り合いに、そういうバイオレンスな発想力を持つ人間は、当然のようにそうはいないのだ。
ところで人間は過去を振り返る生き物なので、
僕は過去、こういう不自由さを味わわされた経験を振り返ってみる――までもないか。
大抵、怪異絡みの問題ばかりだ。
と、なると。
「………っ!」
ぞくりと、背筋が凍った。
まったくどうかしている。
どうしてすぐにその結論に至らなかったのか。
怪異絡みの厄介事で。
吸血鬼もどきである僕の自由を奪うだけの認識はあって。
そしてここは――千石の家だ。
「千石っ!!!」
張り上げた大声に、喉が裂けるかと思った。
それくらい、強烈で狂乱しそうなくらいの脅威を感じる。
これまでの情報を分析して得られる答えは、ただ一つ。
千石が危ない。
犯人の狙いは――千石だ。
「千石、どこだっ!!!」
絶叫した。
首を回しても、部屋の中に内気で恥ずかしがりな女子中学生の姿はない。
脊髄にドライアイスを直接放り込まれたみたいな、
不愉快で不条理な、ざらざらとした目眩みたいな浮遊感。
張り上げた大声に、喉が裂けるかと思った。
それくらい、強烈で狂乱しそうなくらいの脅威を感じる。
これまでの情報を分析して得られる答えは、ただ一つ。
千石が危ない。
犯人の狙いは――千石だ。
「千石、どこだっ!!!」
絶叫した。
首を回しても、部屋の中に内気で恥ずかしがりな女子中学生の姿はない。
脊髄にドライアイスを直接放り込まれたみたいな、
不愉快で不条理な、ざらざらとした目眩みたいな浮遊感。
くそ、いったいどれほどの時間、眠っていたのだろうか。
僕が傍についていながら、どうしてこうなった。
相手がなんなのか分からないけれど、しっかりと起きて千石の傍にいれば、
少なくとも彼女を安全な場所に逃がすことくらいできたはずなのに。
ちきしょう。
ちきしょう!
「千、石っ!!! どこだ、いないのかっ!!!」
身を捩りながら放った叫びに答えた声は。
「ど……どうしたの、暦お兄ちゃん。そんなに大きな声を出して」
「………………あれ?」
紛れもなく、千石撫子その人のものだった。
視線を巡らせると、部屋の入り口で怯えたように立ちすくんでいる千石の姿が目に入る。
後ろで犯人に包丁で脅されているなんて様子もなく、
相変わらずのおかしなデザインのワンピースという装いで、
怪我をしている様相も皆無だ。
紛れもなく、いつも通りの、千石である。
おや?
おやおや?
どういうことだ?
「千石……?」
「うん、暦お兄ちゃん。撫子だよ」
暦だぜ。予告編クイズ!
じゃねえ。
そんなことをやっている場合じゃないし、
次回に引くほどの内容もないから予告編なんかやる必要もない。
えっと。
うん。
状況がさっぱり分からない。
「……ともあれ、千石は無事なのか?」
「うん。どうして? 何かあったの?」
僕の質問に、千石はちょこんと首をかしげて答える。
いや、何かあったっていうか、現在進行形で僕はどうにかなっちゃってるんだけどさ。
手足、縛られるし。
まさか見えていない訳でもないだろうから、
千石を待ってる間に僕が変な遊びを始めたとか思って、
見て見ぬふりをしてくれているのだろうか。
大変な汚名だった。
妹の友達の女子中学生の部屋のベッドで、
自らの手足を縛って寝転がる遊びが好きな男子高校生になんか、僕はなりたくない。
しかし僕が記憶障害にでもなっていない限り、
僕をこんな変態だと勘違いされかねない危機的状況に放り込んだ犯人は確実にいるわけで、
千石の様子を見る限り現在の家にはもうその姿は見えないようだけれど、
となると今度は単純な泥棒という可能性もある。
なくなった物の確認とかしなくてはならないだろう。
まあ。
兎にも角にも、早いところ自由を確保したい。
「千石、事情が気になると思うんだけれどさ、それは追々話すから、
とりあえずこの手足を縛っている縄をほどいてくれないか?」
しかし、千石は。
にっこりと、今まで見たことのないような楽しそうな笑顔で。
短く、答えた。
「やだ」
>>325
フィリップ「ぞくぞくするねぇ・・・」
フィリップ「ぞくぞくするねぇ・・・」
>>329
ここで放置プレイだと…
ここで放置プレイだと…
そういえばDJナデコとブラザーメメの一時間番組はなかなかおもしろかった
支援
支援
「……………ん?」
今、なんて?
「それは無理だよ、暦お兄ちゃん」
千石は、同じ笑顔のまま言った。
無理って?
「……え、僕の側からはよく見えないのだけれど、これ、そんなに強く結ばれてるのか?」
「そうじゃなくてね」
まるで物分かりの悪い子供を諭すような口調。
「それ、結んだの、撫子だもん。なのにそんなに簡単に、ほどいてあげるわけないよ」
「…………………ほう」
……………。
……ほほう。
意味が分からない。
千石が? どうしたって?
僕を、拘束した。
………なんで?
部屋に満ちていたはずのストロベリーオーラが、
なんだかいつもと違う――あるいは妖艶とも言えてしまうような千石の様子に影響されたのか、
知らない間にラズベリーオーラに変わってしまったように思えた。
空気に味がついているみたいな甘い部屋だったのに。
今やなんだか呼吸が苦しい。
ちなみにどうしてラズベリーかというと、個人的に、
なんとなくラズベリーには大人っぽいイメージがあるからだ。
どうしてだろうな。
まあ、いいや。
現実逃避をしている場合じゃない。
「あー、千石?
じゃあ訊くけれど、どうして僕を拘束したりしたんだ?
さすがの僕も、こんな状態でする遊びに心当たりはないぜ」
王様ゲームを二人でやろうとする子だから、
どんなゲームをどんな風に勘違いしているのか分かったものじゃない。
ツイスターゲームは面白かったけれど。
「暦お兄ちゃんが何を言ってるのか、撫子、ちょっとよく分からないよ……」
「なんで悲しそうな顔をする……」
ぶっちゃけ僕のほうがさっぱり分からない。
まさしく五里霧中である。
くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
「あ、そうだ! ねえ、暦お兄ちゃん。
撫子、ちゃんと物置で見つけたんだよ!」
ぴょん、と跳び跳ねるようにして――そんな、およそらしくない仕草をして、
千石は言葉を放る。
「見つけた?
……ああ、ラケットか。
バドミントン、やるって話だったもんな」
「違うよ、これだよ」
「…………………」
のこぎりだった。
僕の目が、おかしくなってしまったのでないのなら。
千石の手に握られているのは間違いなく、のこぎりである。
金属板にジグザグの刃をつけた工具であり、主に木材や金属を切断する際に使用される。
千石の持ってきたそれは、ごくごく一般的な両刃のこぎりだ。
「……なあ、千石?
のこぎりでバドミントンは、ちょっと難しいんじゃないか」
「バドミントンは、もういいの」
叩きつけるように言葉を重ねられる。
「じゃあ、のこぎりなんて、一体何に……」
千石は、みょんみょんとのこぎりの刃を曲げながら、
鈍い光を反射させるそれをうっとりと眺めて口を開く。
ああ。
ああー。
嫌な予感しかしない。
で、僕は悪い予感ばっかり当たるのだ。
「暦お兄ちゃんの足を、切り落とすためだよ」
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