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元スレ阿良々木「みんなが僕のことを好きだって?」
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「かかっ、どうやら火炙りは楽しかったようじゃの、お前様」
「んなわけあるかよ……」
足をぱたぱた落ち着きなく動かしながら、
もふもふとエンゼルクリームを頬張る金髪幼女を見つつ、ため息を吐く。
全身大火傷しては治り、大火傷しては治りを一時間くらい延々と繰り返したんだぞ。
楽しいわけがない。
ところで昨日、全身全霊で高笑いしながら、
本当に楽しそうに散々僕を焼いた影縫さんは、
どうやら斧乃木ちゃんが今回の仕事――というか忍野と貝木のところへのお使いでスランプを抜けたらしく、
二人揃って町を出ていった。
安いスランプである。
その一方で見事に服ごと燃やし尽くされた僕は、
朝持ってきて隠しておいた寝間着を着て家に帰ったのだった。
……みみっちい伏線だ。
「はあ……」
「なんじゃ、せっかくこの儂とデートしておるのじゃぞ、
ちーぃとは楽しそうにしたらどうなんじゃ」
「………おい、僕のオールドファッションを勝手に食うな」
「もふっ! ……美味い!」
まあ、いいか。
忍から視線を外し、ミスタードーナツの店内をぼんやりと見やる。
超速再生と灼熱焼失の繰り返しのせいで、まだ身体が火照っている気がした。
「……………はぁ」
落ち着いた音楽の流れる店内。
レジの方では、若い女店員たちがちらちらとこちらを見ては、
忍がドーナツにかじりつく度に黄色い悲鳴を上げていた。
「有名になっちゃったしなあ……」
髪を染めている人すらいない田舎の町で、
めちゃくちゃ目立つ容姿と言動の忍を連れて何度もミスタードーナツを訪れていたせいで、
すっかり有名になってしまい、今では女子中高生の間で
忍はおみくじみたいな扱いすらされているらしい。
ミスタードーナツに行って忍に会えたら、一週間運気急上昇なんだってよ。
常時忍を影に潜ませている僕は、運気急上昇どころか完璧に焼かれたぞ。
>>1は出来る子
なんてぼんやり考えていると。
「八股狸」
「………うん?」
不意に、忍が件の怪異の名前を口にした。
視線を向けると、口の周りをべとべとしにた元吸血鬼の、
ぞっとするほど真剣な瞳とかち合う。
「ほら、お前、威厳もなにもあったもんじゃねえぞ」
「………ぅぎゅっ」
ナプキンを取って口の周りを拭いてやる。
「んみ、…………むっ……んぅ……や、やめんかっ、それくらい自分で出来るっ!」
「当たり前だ」
出来なくてどうする。
「まったく、お前様は時折、儂のことを勘違いしたような態度を取るの」
「別に、勘違いはしてねえよ」
忍野忍の立ち位置は、ちゃんと分かっている。
僕の従僕で。
僕の主人で。
人類の味方でもなければ敵でもない――500歳の貴族の吸血鬼の一欠片。
「ただ少なくともミスタードーナツに来ている時だけは、
お前はただの生意気な八歳児だ」
ぱないの! とか言うしな。
小さな手で不器用に口元を拭う忍は、やや不満そうに口を尖らせる。
「で? 八股狸が、なんだって言うんだよ」
「うむ。あの小僧から八股狸に関して聞いた話を、今更ながら思い出しての」
忍の言う「あの小僧」とは、忍野メメのことである。
「おそらくじゃが、お前様よ。
この話、まだまだ厄介なことになるかもしれんぞ?」
「厄介なこと?
……あ、おい、それは僕のフレンチクルーラーだ!」
「もきゅもきゅ」
二人で5個ずつ買ったのに、忍はもう7個目である。
「んぐ……うむ。厄介なことじゃ」
「なにナチュラルに続けようとしてやがる、僕のドーナツ返せ!」
「嫌じゃ」
んべ、とザクロみたいに真っ赤な舌を出す忍。
お前、そんなことするやつが、どの口で儂のことを勘違いしておるとか言ったんだよ……。
「八股狸」が俺に憑りつかないのはおかしいだろと
僕はブサ顔でそうキメた
僕はブサ顔でそうキメた
考えたら八股狸は消えたけど八股狸がでてきた原因は消えてねえんだよなwww
「それで、話を戻すが、厄介なこととは八股狸に惑わされた者の記憶じゃ」
「記憶……?」
「うむ。元委員長はレアケースとして、
よいか、八股狸に惑わされた者には、その間の記憶が残る者と残らぬ者がいる。
残る者は元々怪異についてその存在を認識している者で――残らぬ者は、その逆じゃ」
怪異を知る者と、知らない者。
なるほど、そうなると確かにファイヤーシスターズは昨日の記憶はすっぽり無くしているはずだ。
羽川は障り猫のシステム上、ブラック羽川時の記憶は残らないから例外として。
だから忍とはこうして八股狸の話ができるのだ。
「で、それのどこが厄介なんだよ」
「分からぬか?
つまり蝸牛の娘とエロ娘と照れ娘には、あの間のおかしくなっていた記憶が残るのじゃぞ?」
うん。
だから、それの何が厄介なんだ。
「あいつらには怪異のせいだってちゃんと説明してやればいいだけだろ?
確か今日、神原は千石と会うみたいなことを戦場ヶ原が言っていたから、
神原にメールを入れておけばいいか。
八九寺は、まあ、会えたときに説明するとして」
「はあ。お前様は本当に阿呆じゃ。
小僧が愚鈍だと馬鹿にするのも分かるわ」
「………あん?」
忍が僕の最後のフロッキーシューを食べようとする手をたしなめながら、
携帯を取り出し神原にメールを送信した。
「これでよし、と」
「なんて送ったのじゃ?」
「んー、お前らがおかしくなってたのは怪異のせいだ、ごめんって」
「……ちゃんともう祓ったと付け加えたほうがよいと、儂は思うがの」
「いや、この文脈なら分かるだろ」
「……ま、お前様がよいなら儂は文句は言わん」
フロッキーシューを半分に割って渡してやると、
忍はぱくりと食い付きながら続けた。
「ところでお前様よ、あの小僧に言われたことはどう思っているのじゃ?」
「忍野に言われたこと?」
「あの娘御みんなが、お前様のことを好いておるという話じゃ」
「ああ。お前、そんなの気にしてたのか。
いいか、忍。冷静に考えろよ、そんなことあり得るわけがないだろ?
僕は元ぼっちの根暗野郎だぜ。
好きになる要素なんてまったくねえよ」
「元じゃなくて今もぼっちじゃろう」
「…………………」
「女御ばかりに現を抜かしおって、クラスに男の友達は一人もおらんし。
ぶっちゃけ、同性から一番嫌われるタイプじゃ」
「…………………」
死にたい。
「ま、お前様が一生ぼっちなのは置いておいて」
「今、一生っつったか?
見てろよ、大学デビュー決めてやるからな!」
「うざい」
なんだか忍が冷たい。
あんだけ焼かれた後くらい、優しくしてくれよ。
「あの娘御みんなが、お前様のことを好いておるという話じゃ」
「ああ。お前、そんなの気にしてたのか。
いいか、忍。冷静に考えろよ、そんなことあり得るわけがないだろ?
僕は元ぼっちの根暗野郎だぜ。
好きになる要素なんてまったくねえよ」
「元じゃなくて今もぼっちじゃろう」
「…………………」
「女御ばかりに現を抜かしおって、クラスに男の友達は一人もおらんし。
ぶっちゃけ、同性から一番嫌われるタイプじゃ」
「…………………」
死にたい。
「ま、お前様が一生ぼっちなのは置いておいて」
「今、一生っつったか?
見てろよ、大学デビュー決めてやるからな!」
「うざい」
なんだか忍が冷たい。
あんだけ焼かれた後くらい、優しくしてくれよ。
「で、お前様よ。
お前様は別に、あの娘御たちから好かれておらんとは限らんのではないか」
忍はにやにやと笑いながらそんなことを言う。
「少なくともあの娘御たちにとって、お前様は命の恩人じゃろう。
それに、自分が自分に下した評価ほど当てにならないものもあるまいて」
「まあ……確かに一理あるけれど」
人間が一人の人間として自らのことを語る際に、そこから主観を取り除いたら、
他のどんな他人を語るよりも情報が少なくなるのは、ある意味当然である。
「自分のことほど主観に頼って捉えていることなぞ、普通、ありはせんしの」
忍は、ぺろりと口元のクリームを舐めとって笑う。
そう。
他人の目から見えている自らの姿形を見ることは、
鏡をもってしても絶対に不可能であるのと同じように。
他人が聴いている自らの生の声を聴くことは、
録音機器をもってしても確実に不可能であるのと同じように。
鏡を通した自分はあくまで虚像でしかないし、
スピーカーから排出される自分の声は、頭蓋骨の振動によって聞こえる自らが認識している声とも、
生の空気の振動で伝わる声とも異なっているのは――今更、言うまでもない。
「じゃから、あの娘御たちも――あるいは儂も、
お前様をこっそりと愛しているという可能性は、否定できんじゃろう?」
「はあん………そうかね」
そうは思えないけれど。
特にお前なんか、僕のことを殺したいほど憎んでいて当然なわけだし。
「まあ、でも、いい機会にはなったかもな」
「ん?」
「自分が、周りにどんな風に思ってもらえているのか、
改めて考えてみるいい機会にはさ」
「………ふん」
つまらなそう鼻を鳴らす忍は、しかし窓の外を見て、にぃい、と口元を歪める。
「どうした?」
「見てみるがよい。お出ましじゃ」
「…………なっ、……にい?」
店舗の外には。
さっきメールを送ったばかりの神原駿河が、
千石撫子をお姫様抱っこしたまま走ってきていた。
「………なあ」
「なんじゃ?」
「あれさ……千石、何か持ってない?」
「持っておるの」
「銀色の……」
「のこぎり、じゃの」
なんでだよ……なんでなんだよっ!?
ぞくぞくとした寒気が沸き上がる。
「お、こちらに気付いたの」
「ばっ……馬鹿忍、お前なに笑顔で手ぇ振ってんだ、逃げるぞっ!」
僕は忍を小脇に抱えると、全速力で外に飛び出し、
神原と千石の位置から逆方向へと走り出した。
「阿良々木先輩、どうして逃げるのだ!」
「ま、待ってよ、暦お兄ちゃん!」
「うるせえ、誰が待つか!
つーか千石、なんでお前のこぎり持ってんだよ!?」
「え!? な、撫子は別に、暦お兄ちゃんの足を切り落としたいなんて思ってないよっ!?」
僕もそんなこと言ってねえ。
「仕方ないのだ、阿良々木先輩! これは私達の意思じゃない!」
「そうだよ、暦お兄ちゃん! これは怪異のせいなんだよ!」
「いやいやいやいやいや!」
大爆笑する忍を抱えながら、町を走る。
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