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元スレ勇者「最期だけは綺麗だな」
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>>102
勇者起きとったんかワレェ!
勇者起きとったんかワレェ!
【#7】悔恨と祈り
勇者「……ッ」ガバッ
シーン
勇者「っ、眩しいな。朝になっちまったのか」
勇者「(つーか此処は……そうか、あいつが運んでくれたのか。借りを作っちまったな)」
勇者「(火傷も治ってる。動いても問題もないみたいだな。術法ってのは便利なもんだ)」
勇者「(ご丁寧に服まで作ってある。継ぎ接ぎだけど、素っ裸よりはよっぽどマシだ)」
勇者「ったく、本当にバカな女だな」バサッ
勇者「(俺と旅なんてしなけりゃ、こんな目に遭うこともなく、そのうち言い寄られて良い嫁さんになれただろうに)」
勇者「(いや、ああいう奴等って結婚しないんだっけ。神だか信仰だかに捧げるとか何とか……)」
勇者「(好き好んで神なんていう見えない存在に縛られて一生を終えるのか。意味分かんねえ)」
勇者「……まあいいや」
勇者「つーか、あいつは何処行ったんだ? 外には墓しかねえってのに」ザッ
ガチャ
僧侶「………」
勇者「おい、何やってんだお前」
僧侶「あ、おはようございます。もう動いても大丈夫なんですか?」
勇者「見りゃあ分かるだろうが、それより何やってんだって聞いてんだよ」
僧侶「(一晩で人が変わるとは思ってないけど、ありがとうくらい言えないのかな、この人……)」
勇者「おい、聞いてんのかお前」
僧侶「ハイハイ聞いてますよ。お墓に手を合わせているんです。見れば分かるでしょ」フン
勇者「何で?」
僧侶「何でって……勝手に立ち入ってしまったので、その謝罪とお礼をしていたんです」
勇者「はっ、死んだ奴に何を言っても届くわけねえだろうが」
僧侶「何とでも言って下さい。これは、私がそうしたくてしているだけですから」
僧侶「何より、墓地に来たら手を合わせるのは常識です。亡くなった方のご冥福と、これからも安らかにーーー」
勇者「もういい分かった。好きにしろよ」
僧侶「はい、そうさせて貰います」ニコリ
勇者「………」
僧侶「あの、何ですか?」
勇者「別に何でもねえよ。俺は家に戻って準備する。お前も、それを早く済ませろ」
僧侶「はい、分かりまし……家?」
勇者「あ?」
僧侶「い、いえ、何でもありません」
勇者「………」ザッ
僧侶「(誰がどう見たって廃屋なのに、家? あの人、この場所を知ってるのかな)」
僧侶「(夜は暗くて見えなかったけど、辺りには家があった形跡がある。向こうには畑があったのかな?)」
サァァァァ
僧侶「うわぁ、草花が風に揺られて綺麗だなぁ……陽も当たるし空気も澄んでる」
僧侶「こんなに良い場所なのに何で誰もいないんだろう? 魔物が増えて移住したのかな?」
僧侶「(それとも、何かあったのかな……)」
ザッ
僧侶「?」クルッ
勇者「………」
僧侶「あ、もう済んだんですか? と言うか、その武器は一体……金棒?」
勇者「これは金砕棒。こっちは……まあ、鉄板みたいなもんだな。剣なんかより約に立つ」
勇者「刃毀れすることはないし、何より頑丈だ。大抵の奴は打っ叩いただけで殺せる」ブンッ
僧侶「(うわっ、前に背負ってた武器の束よりも重そう。素振りしてる音が怖い……)」
勇者「これなら、あの野郎相手にもーーー」
僧侶「あ、あのっ」
勇者「何だよ?」
僧侶「武器の説明はともかく、そんな物騒な物を何処から持ってきたんですか?」
勇者「そういや言ってなかったな」
勇者「目的地ってのは此処だ。元々、此処にはコレを取りに来るつもりだったんだよ」
勇者「この武器は王や教皇と会う前まで使ってたもんだ」
勇者「でも、こんな優美さも華やかさもねえ武器を持ってると良い顔されないから、あの家に隠しといた」
勇者「身なりを整えて装飾の付いた剣を腰に下げて、後は猫被って神の為とか言えば言うこと聞くからな」
僧侶「そうだったんですか(後半は聞かなかったことにしよう。それより……)」
勇者「何だよ、その面は」
僧侶「……あの、此処は何なんですか? 何かあったんですか?」
勇者「…………」
僧侶「(や、やっぱり聞いちゃダメだったかな)」
僧侶「(凄く怖い顔してるし、絶対に何か言われる。ああ、やめておけば良かーーー)」
サァァァァ
勇者「……此処は村だった」
僧侶「え?」
勇者「住んでた連中はいがみ合うこともなく、日々を平和に過ごしてた。手を取り合ってな」
僧侶「村の方々は移住したんですか?」
勇者「移住なんかしてねえよ。殺されたんだ」
僧侶「!?」
勇者「………ある日、森で行き倒れてる男をガキが助けた。その男がお尋ね者の野盗の一人だとも知らずにな」
僧侶「………」
勇者「傷が癒えて村を立ち去ると、そいつは仲間を引き連れて戻って来た。で、村を襲撃して占拠した」
勇者「男は殺され、女は犯され、子供は玩具にされた。野盗を助けたクソガキも一緒にな」
僧侶「(………酷い)」
勇者「そのガキはわんわん泣いてたよ」
勇者「拷問好きの変態がいてな。鞭で叩かれたり、斬られたり、焼き印押されたりしてた」
勇者「そのガキは顔が良くてな、特別気に入られてたんだ。だから、死なないように遊ばれ続けた」
僧侶「…………」
勇者「痛みで意識朦朧としながら、ガキは自分の行いを省みた」
勇者「困っている人がいたら助けなさいと両親に教わった。人に手を差し伸べることは正しいはずだ」
勇者「そう、自分は正しいことをしたはずだ」
勇者「それなのに、あろうことか助けた人間に両親も村の人も友達も殺された。生きてるのは自分だけ……」
勇者「そのガキは、そこでようやく自分が間違っていることに気が付いた。で、糸がぷっつり切れた」
僧侶「……糸?」
勇者「生を繋いでた糸さ。生きる気力とか、希望とか、そういったものが次々に切れたんだ」
勇者「自分の軽はずみな行動。その所為で失われたものを背負いきれなかったんだろうな」
僧侶「……その子はどうなったんですか?」
勇者「さあ、どうなったんだろうな? とにかく、そのバカの所為でこの村は滅びた」
勇者「バカって言うか咎人だな」
勇者「何をしようと決して救われないし、幾ら謝っても決して許されることはない。恨まれて当然だ」
勇者「もし運良く誰かに助けられて生き延びてたとしても、陰険で捻くれた嫌味な奴に育ってるだろうよ」
僧侶「(……安らかに、お眠り下さい)」キュッ
勇者「……お前みたいな奴に手を合わせて貰ったんだ。村の奴等も少しは救われたと思うぜ?」
僧侶「……そうでしょうか」
勇者「死人の気持ちなんて分かんねえけど、きっと喜んでるさ」
僧侶「貴方は?」
勇者「あ?」
僧侶「……貴方は良いんですか? その、祈らなくても……」
勇者「お前はどうか知らねえけど、俺は死んだ奴に何を言っても無駄だと思ってる」
勇者「何か伝えたいことがあるなら、生きてる内に伝えなけりゃ意味が無いんだよ」
勇者「それに、祈ったところで聞く耳なんぞ持たねえさ」
僧侶「……そんなことは、ないと思います」
勇者「そうだと良いけどな……」
サァァァァ
勇者「……そろそろ行くぞ。あの野郎が待ってる」ザッ
僧侶「あ、はい。分かりました……」
トコトコ
勇者「あ~、腹減ったな」
僧侶「(この人のことだから、これ以上踏み込んだことを聞いたら怒るだろう)」
僧侶「(同情したり、慰めの言葉なんて口にしたら、もっともっと怒るだろう)」
僧侶「(だけど、祈ることくらいは許して下さい)」
僧侶「(貴方が嫌っている神にではなく、村人の御霊に祈ることは許して下さい)」
僧侶「(貴方が抱えているものを、少しでも軽くしてくれるようにと、祈らせて下さい……)」
勇者「おい」
僧侶「は、はい!?(もしかしてバレた?)」
勇者「お前、寝てねえだろ。隈が酷くて見られたもんじゃねえ」
僧侶「(女性に向かって何て言い草だ……)」
僧侶「(幾ら何でも酷すぎる。別に女性扱いされたいわけじゃないけどね!)」
勇者「おぶってやるから来いよ」
僧侶「結構です」
勇者「お前がそうでも俺の気が済まねえんだよ。俺は借りを作るのは嫌いなんだ、早くしろバカ」
僧侶「へ~、結局は自分の為ですか。そうですか」
勇者「うるせえな、いいから早くしろよ。さっきからフラついてんじゃねえかお前」
僧侶「嫌です」
勇者「お前が付いてくるのを待ってるより、俺が背負って歩いた方が早いんだよ。分かったかバカ」
僧侶「(くっ、言い返せない)」
勇者「いつまで突っ立ってんだよ。早くしろ」
僧侶「…………」
トコトコ ギュッ
勇者「よし、行くぞ。化け物出たら落とすから、そのつもりでな」ザッ
僧侶「(何でもっと優しく出来ないのかな。普通に言ってくれればいいのに)」
僧侶「(そうしたら良い人……いや、これまでのことを考えれば普通くらいには……)」
勇者「お前は軽いな。これからはもっと沢山食え。太れ、そんで体力付けろ」
僧侶「(落とされるまでは寝たふりしてよう)」
勇者「あっ、兎だ。今なら……」
僧侶「やめてっ!!」
勇者「うるせっ!耳元で叫ぶんじゃねえよ、兎が逃げたじゃねえか!!」
>>121お前のSSよりは面白いよ
糞作者兼糞読者に絡まれて災難だな
大体の読者なんて好き勝手言うから嫌ならやめても良いんだよ
読者は何言っても自由で作者は何言われても書けって言う方がおかしいんだからさ
大体の読者なんて好き勝手言うから嫌ならやめても良いんだよ
読者は何言っても自由で作者は何言われても書けって言う方がおかしいんだからさ
【#8】距離
勇者「………」ザッ
僧侶「(やっぱり、まだ熱が残ってる)」
僧侶「(目に見える傷は癒えたけど、内側はそうもいかない。高位の魔は、魂をも容易く傷付ける)」
僧侶「(しかも相手は龍、魔の頂点)」
僧侶「(物理的な破壊力は言うまでもなく、魂そのものに対する破壊力も凄まじい)」
僧侶「(存在そのものが規格外。龍とはそこに在るだけで人を壊し、人を狂わせるという……)」
僧侶「(事実、熱に当てられただけで苦しかった。対峙した時は意識を保つのもやっとのことだった)」
勇者「………」
僧侶「(あれと対峙して、あの炎を直接浴びたとなれば、その痛みは想像を絶するものだろう)」
僧侶「(少なくとも数日は安静にしないと満足には動けない。本来なら安静にさせてる……)」
勇者「あの野郎の所為で焼け野原だな」
勇者「……まあ、この方が見通しが利くし、歩くのも楽だから良いけどよ」ザッ
僧侶「(だけど、休むように言ったとしても休まないだろうな。この人のことだから、そんなことを言ったら怒るに決まってる)」
僧侶「(きっと、休んでなんかいられるか、バカだろお前。とか言われるんだろうな。でも……)」
勇者「………」
僧侶「……あの」
勇者「あ?」
僧侶「体を休めた方が良いと思います。まだ熱が残っていますし、これ以上無理をしたらーーー」
勇者「これくらい何ともねえよ」
僧侶「でも」
勇者「舌噛むぞ、黙って目瞑ってろ」
僧侶「(やっぱり駄目だ。私の話なんてーーー)」
勇者「お前は旅に慣れてない」
僧侶「え?」
勇者「お前は旅にも戦闘にも慣れてない。命を張るなんてことはそう簡単に出来やしない」
勇者「この前まで守られてる立場だった奴が、急にやる気を出したってすぐには変わらないんだ」
僧侶「(……慰めてくれてる、わけじゃないよね。何が言いたいんだろう?)」
勇者「俺のことはいいから、お前は自分のことだけを考えろ。つーか、自分のことしか考えるな」
勇者「お優しいのは結構なことだ」
勇者「でもな、そんなんだと化け物に殺されちまうぞ。その優しさってヤツに付け込まれてな」
僧侶「(この人の言う化け物ってなんだろう?)」
僧侶「(人を襲い喰らう魔物? それとも理性や道徳倫理を失った人間のこと?)」
僧侶「(でも、そうだとしても、人間には救いがあると信じたい。人は変われると信じたい)」
僧侶「……私には、そんな風には出来ません」
勇者「だろうな。分かってるよ、お前がそういう奴だってことくらいは」
僧侶「(分かってる、か……)」
勇者「誰かの為に何かをしたいなら、自分をしっかり持たなきゃならない」
勇者「理想を現実にしたいなら死ぬ気で生きろ。誰かを殺してでもな。口先だけなら何とでも言えるんだ」
僧侶「……あの」
勇者「あ?」
僧侶「ありがとうございます……その、色々と教えてくれて……」
勇者「………」
僧侶「(あ、喋らなくなっちゃった。素の時にお礼言われるのとか慣れてないのかな?)」
僧侶「(というか、旅に出てから初めてまともな会話をしたような気がする)」
僧侶「(今まではず~っと口喧嘩してばかりだったし、バカとか言われ……あれっ!?)」
勇者「………」
僧侶「(今の会話の中で一度もバカって言われてない。こんなの本当に初めてだ……)」
僧侶「(……待て待て、何を喜んでるんだ私は)」ブンブン
僧侶「(そもそも日に何度もバカバカ言うのがおかしいのであって、今の会話が普通のはずだ)」
僧侶「(……それは、まあ、私にだって反省しなくちゃいけないところは沢山あるけど……)」ウーン
勇者「さっきから何してんだお前」
僧侶「へっ? 何かしてました?」
勇者「頭振ったり、ぶつぶつ言ったり、う~ん……とか言ってたな」
勇者「正直気持ち悪いんだけど、もしかして頭の病気? 幼児退行? おもらしでもしたの?」
僧侶「ち、違いますっ!」
勇者「あ、そう。じゃあ静かにしてろ」
僧侶「(すぐにこういうことを言う……)」
勇者「お前が何を考えてんのか知らねえけど、人間は急には変われねえよ」
勇者「それに、どんだけ頭の中で理屈をこねくり回したって結局はやるかやらないか、二つに一つだ」
僧侶「(……私の頭って透けて見えるのかな。分かりやすい女とか言われたし)」ウーン
勇者「うるせえ」
僧侶「ご、ごめんなさい(また言ってたんだ。これからは気を付けよう……)」
勇者「……おい」
僧侶「何ですか?」
勇者「あいつは北の山村で待ってる。だから、これからは北を目指すことになる」
僧侶「(あいつって……あ、龍か。そう言えば、あの場所で待つとか言ってたような気がする)」
勇者「この森を抜けて暫く進むと町があるから、着くまでは休んでろ。いいな」
僧侶「(……過去に何があったんだろう。何があったら、あんな風に戦えるんだろう)」
僧侶「(自分の命を投げ出してまで殺したいって、どう考えても普通じゃない。何があったら、そこまでーーー)」
勇者「おい、聞いてんのか」
僧侶「えっ?」
勇者「町に着くまで休んでろって言ったんだよ。ちゃんと聞いてろバカ」
僧侶「……はい、分かりました(今のは話を聞いてなかった私が悪い。しかし、バカと言う必要はない)」
勇者「………」ザッ
僧侶「………」
勇者「………」
僧侶「………」
勇者「………」
僧侶「(…………今更だけど、本当におんぶされてるんだ。こんな風になるなんて思わなかったな)」
人をおぶって速く走れない以上焼け野原歩いてると敵を見つけても隠れられないんだが
状況に応じてそれなりのルート通れよな
もしかして頭の病気? 幼児退行? おもらしでもしたの?
状況に応じてそれなりのルート通れよな
もしかして頭の病気? 幼児退行? おもらしでもしたの?
>>140
お前は自分のスレに籠もってろ。
お前は自分のスレに籠もってろ。
【#9】人でなし
僧侶「…スー…スー…」
勇者「(やっと静かになった)」
勇者「(それにしても、まさか此処まで付いてくるとは思わなかったな)」
勇者「(どうせ口先だけの奴だろうと思ってた)」
勇者「(威勢が良いのは最初だけで、すぐに音を上げて逃げ出す。そう思ってたんだけどな……)」
僧侶「…スー…スー…」
勇者「(つーか、よく寝られるなコイツ)」
勇者「休めとは言ったけど本当に寝るか普通。朝まで縫い物するとかバカじゃねえの」ボソッ
僧侶「…んっ…ん~?」
勇者「………」
僧侶「…スー…スー…」
勇者「………」ザッ
僧侶「…スー…スー…」
勇者「(……妙な気分だ)」
勇者「(誰かを背負うってのはこういうもんなのか? あの人もこんな気持ちだったのか?)」
勇者「(自分以外の命、鼓動、息遣い、体温、声……こいつの全部が、俺の背中にある)」
勇者「(一度でもしくじれば、俺は勿論、こいつも終わる。こいつはそれを分かってんのか?)」
勇者「(…………そういや、俺もそうだったな)」
勇者「(何も分からず、ただ付いていくだけ。その先に何があるかなんて考えなかった)」
勇者「(あの時に何かをしていれば、何かが変わっていたかもしれないのに……)」
勇者「(あの人はどんな想いで俺を背負っていたんだろう。どんな想いで俺に託したんだろう)」
僧侶「…ん~…ふふっ…」
勇者「(……悩んでるのがバカらしくなるな。どんな生き方したらこんな風に育つんだ)」
勇者「(村でも簡単に騙されてたし、人は嘘を吐くってことを知らねえのかコイツは)」
勇者「(挙げ句、どんな罪人にさえ救いがあると本気で思ってやがる。人はやり直せると……)」
勇者「(きっと、そう教わって、そのまま育ったんだろうな。教会の中で守られながら、誰を疑うこともなく)」
勇者「(旅に同行したのだってそうだ)」
勇者「(司教に命じられるまま、それが使命か何かだと吹き込まれ、世の全ては神の望みしことだと……)」
僧侶「…スー…スー…」
勇者「そう簡単に自分を捧げるなよ……」
>>同感
勇者「………起きろ」ユサユサ
僧侶「んぅっ…どうしたんですか?」
勇者「姿は見えないが何かいる。さっさと降りろ。俺の傍から離れるな」
勇者「さっさとしろ!」
僧侶「は、はいっ!」サッ
>>使えない道具なら捨ててしまえば良いのに、バカみたい
僧侶「(本当に姿を消してる。禁術? でも、そんなことを出来る人間なんて……)」
勇者「うるせえバカ、さっさと出て来い」
>>いるわよ? 目の前に、ほら……
チュッ
勇者「ッ!?」ブンッ
>>あら、照れてるの? もしかして初めて?
勇者「(姿が見えないにしても妙だ。力の流れが読めねえ。異物が混じってるみてえだ)」
僧侶「大丈夫ですか!?」
勇者「ああ、何もされちゃいない。少し遊ばれただけだ。お前はじっとしてろ」
勇者「……どこ行きやがった」
僧侶「う、上です!!」
勇者「はあ?」チラッ
魔女「あ、見つかっちゃった。初めまして、私は……そうね、魔女。魔女でいいわ」
勇者「下着見えてんぞ」
魔女「見せてるの、綺麗でしょ?」
勇者「派手な下着は好みじゃねえな」
魔女「あらそう。なら、次から地味なのにするわ。でも残念、気に入ってくれると思ったんだけどな……」
勇者「そうか、次は期待してる。お前に次があるかどうかは分かんねえけどな」ジャキッ
魔女「あら怖い」
勇者「……何で姿を現した。あのまま隠れてればいいものを」
魔女「別に? 特に深い理由も意味もないわ」
魔女「初対面なのに姿を見せないのは礼儀がなってないと思っただけよ」
勇者「挨拶もなく唇を奪うのは礼儀正しいとは思えねえけどな。少しは慎み深くしろよ。女だろ」
魔女「別にいいでしょ? というか、ワガママの一つや二つ許しなさいよ。男でしょ?」
勇者「(何なんだ、あの女……)」
僧侶「……貴方は何ですか?」
魔女「はぁ?質問の意味が分からないんだけど? 聞きたいことがあるならハッキリ言いなさいよバカ」
僧侶「っ、貴方は人間なのですか?」
魔女「そんなの見れば分かるでしょ? 私のどこをどう見たら魔物に見えるわけ?」
僧侶「貴方が使用したのは禁じられた術です」
僧侶「仕組みを理解したとしても扱うのは非常に困難とされる高位の術法。加えて、貴方の法力はどこかおかしい」
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