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元スレ勇者「最期だけは綺麗だな」
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【#17】影
僧侶「なんで……」
勇者「話は後だ。お前は矢を止めることだけを考えるんだ。いいな」
僧侶「そんな状態で戦ったら、次は確実に……」
勇者「分かってる。僧侶、すぐに終わらせる。それまでは何とか耐えてくれ。『頼む』」
僧侶「はいっ、任せて下さい」ニコリ
勇者「………」
ザッ…
羅刹王「亡骸の寄せ集め。お前の魂を映したかのような姿だな。死を呼ぶ醜悪な本質そのものだ」
勇者「……」
羅刹王「狂った音色がまた一段と大きくなったぞ。身を焦がす程の闘志と殺意を感じる」ズォ
勇者「(あれが、奴の弓か)」
羅刹王「醜き獣、歪みの男。そのひび割れた魂が何時まで持つのか見物だな」
勇者「言ってろ」ダッ
羅刹王「(この矢で、仕留める)」
勇者「(弓に余程の自信があるみたいだな)」
助手『貴方の言うように矢を通じて魂を供給しているなら、弓にも何らかの細工が施されていると思われます』
助手『弓こそが幾度もの蘇りを可能にしている呪物、或いは術具であるのかもしれない』
勇者「(体には届かねえが弓には届く)」
羅刹王「(踏み込みが浅い。そこからでは届かん。俺の矢が先にーーー!!)」バッ
ズガンッ!
勇者「(外したが、どうやら当たりのようだ)」
羅刹王「………」
勇者「随分と大袈裟に避けたな」
羅刹王「(今のは間違いなく弓を狙った一撃。単に武器破壊を狙ったとも考えられるが……)」
勇者「………」
羅刹王「(まさか、気付いているのか)」
勇者「………」
羅刹王「(僅かに探りを入れているような感もあった。確信はないと言ったところか)」
勇者「口数が減ったな。良いことだ」ダンッ
羅刹王「(ここで退けば気取られるかも分からん。打って出る)」ギリリ
キュドッッッ!
勇者「(早いが、見える。避けられる)」
羅刹王「(この距離で躱すか)」タンッ
勇者「………」
羅刹王「(そうだ、そのまま詰めてこい。矢は幾らでもある。雨は、避けられまい)」ズズズ
勇者「………」ダンッ
羅刹王「愚か者が、周りが見えんのか」
勇者「見えてねえのは、てめえの方だ」
フッ…
羅刹王「(何故矢がーーー!?)」
僧侶「………」
羅刹王「(馬鹿な有り得ん。矢が刺さった状態で俺の魔術を妨害したと言うのか!!)」
勇者「くたばれ」
羅刹王「ッ!!」
バギャッ!
羅刹王「………」ボタボタッ
勇者「(野郎、咄嗟に弓で弾きやがった)」
羅刹王「やってくれたな……」
勇者「弓は破壊した。次で終わらせる」
羅刹王「獣の分際で自惚れるな。それを可能にしたのは、お前ではない」ザッ
勇者「………」ジャキッ
羅刹王「どうやら見くびっていたようだ。真に警戒すべき脅威は、お前などではなかった」ダンッ
勇者「(っ、狙いは僧侶か!!)」ダッ
ガシッ!
僧侶「あうっ…」
勇者「僧侶!!」
羅刹王「動くな。動けば、この娘を殺す」
勇者「ふざけんなよ、化け物が」ザッ
羅刹王「動くなと、言っている」
ギリギリ…
僧侶「あっ、ぐっ……」
勇者「………」
羅刹王「それでいい。武器を捨てろ」
勇者「……黙れ」ジャキッ
羅刹王「……強い怒りを感じる。いや、迷っているな? まさか、娘ごと俺を斬るつもりか?」
勇者「………」
羅刹王「ハハハッ!! 実に醜い。憎しみに囚われた目をしている。この娘の命より俺への殺意が勝るか。それで勇者とは笑わせてくれる」
僧侶「くっ、うぅっ……」
勇者「………」スッ
羅刹王「来るか? 俺はどちらでも構わんぞ?」
ガランッ…
羅刹王「何だ、それは……」
ドゴォッ!
勇者「ぐっ……」
僧侶「うぅっ!!」ジタバタ
勇者「………」
ドガッ!
勇者「がっ……」
羅刹王「所詮は弱者。意志を貫く力など有りはしない。お前に俺は殺せない」ガシッ
ブンッ! ドガンッ! ガラガラ…
勇者「」ドサッ
羅刹王「………消えていない。今ので砕けたと思ったが、どういうことだ」
僧侶「……て」
羅刹王「何?」
僧侶「もう、やめーーー」
羅刹王「黙っていろ」
ギリギリッ
僧侶「かっ、はっ……」
勇者「……せ」
羅刹王「藻掻くな。今、終わらせてる。塵も残さず、消し去ってくれる」ズズズ
ガシッ!
羅刹王「?」
勇者「そいつを離せ……」
羅刹王「この期に及んで人のような口を利くとは驚いた。獣の分際で、大したものだ」
ドガッ! ドガッ! ドガッ!
勇者「離…せ……」
羅刹王「(やはり、この男は危険だ。いずれは全てを脅かす)」
羅刹王「その力、此処で断ち切る」スッ
ザクッッ! ボタボタッ…
羅刹王「な……に?」グルリ
助手「はぁっ、はぁっ、勇者さん!! しっかりして下さい!!」ガクガク
勇者「(震えてんじゃねえか。終わるまで隠れてろって言ったのによ……)」
羅刹王「何だ、お前は……」ガクンッ
助手「勇者さん!!」
勇者「………」ジャリッ
羅刹王「これは、どうしたことだ? こんな、こんな馬鹿なことが、この傷は、このような奴が、俺に傷を」
助手「勇者さん、早く!!」
勇者「……分かってる」ガシッ
羅刹王「巫山戯るなあああッ!!!」ガバッ
ゴシャッッ!
羅刹王「ひっ、ひゅっ……」
ドサッ…
助手「や、やった!! やりましたよ!!」
勇者「………」
助手「あの、ところで狩人さんはーーー」
勇者「僧侶を抱えて此処から離れろ」
助手「え?」
勇者「まだ僧侶の矢が消えてねえ!! さっさとしろッ!!」
ズルルルッ!
助手「!?」
羅刹王「小僧ォォッ!!」
助手「しまっーーー」
ガギャッ!
助手「………?」
勇者「行けッ!!」
助手「は、はい!! 僧侶さん!!」ガシッ
僧侶「っ、待って下さい。まだ、あの人が……」
助手「無理です!! 今は勇者さんの言う通り此処から離れましょう!!」
ダッダッダッ…
僧侶「待っ……て……」ガクンッ
羅刹王「無駄なことを」
勇者「(あれは、どういうことだ……)」
勇者「(俺から受けた傷は殆ど消えているが、あいつから受けた脇腹の傷は消えていない)」
羅刹王「あの娘は直に死ぬ。直接手を下さずともな」
勇者「(あの傷が治癒しなかった理由は分からねえが、あの傷を狙う他に方法はない)」
羅刹王「言ったはずだ。お前に、俺を殺すことは出来ないとな」
勇者「(もう魔術は防げねえ。使われたら終いだ。問題は、この距離をどうやって詰めるか……?)」
勇者「(……そうかよ。なら、やってやる)」
羅刹王「獣に、神は殺せない」
勇者「笑わせんな化け物」
羅刹王「口だけは達者だな」サァァ
勇者「それはお前もだろうが、獣相手に逃げ隠れするんじゃねえよ。神様なんだろ、おい」
羅刹王「あの娘はいない。お前に魔術は防げんだろう。これで最後だ」
勇者「聞いてんのか腰抜け。おら、何とか言えよ。神様気取りの化け物が」
キュドッッ! ボタボタッ…
勇者「……ゴフッ」
羅刹王「俺にそのような口を利いた奴は、お前が初めてだ」
勇者「(熱い。目が焼ける)」ガクンッ
勇者「(音がうるせえ。燃えて爆発してるみてえだ。髪の毛一本、血の一滴まで……)」
羅刹王「何故砕けない……」
羅刹王「ひび割れた魂が、何故そこまで耐えられる。その身に何をした」
勇者「……か」
羅刹王「……二つ。そうか、甲冑に魂を分けたな。半分は剥き出しになるが、もう半分は守られる仕掛けか」
勇者「……だ」
羅刹王「成る程、ようやく解けたぞ」
勇者「……ま」
羅刹王「それは呪いではなく加護。あの娘の仕業か? 魂を引き裂くとは、残酷なことをするものだ」
勇者「………ろ」
羅刹王「何?」
勇者「……か、さっさとしろ。まだか、さっさとしろ」
羅刹王「(痛みに狂ったか。当然だ。魂は守れるだろうが、肉体の崩壊は避けられん……影?)」
バサバサッ…ギャアギャア
勇者「鴉、鷹」
羅刹王「(……見るに堪えんな。終わらせてやる)」スッ
バサバサッ…
勇者「……遅えんだよ」
狩人「これでも急いで来たのだ。無茶を言わないでくれ」
羅刹王「!!?」
狩人「音は捉えた。もう遅い」
ゴシャッッ! ズパンッッ!
羅刹王「」グラグラ
ドサッ…
狩人「………」
勇者「………」
狩人「……ふむ、もう再生はしないようだな。手を貸そうか」
勇者「いや、いい。一人で立てる」ザッ
狩人「そうか。では、行こう」
勇者「どうやって壊すつもりだ」
狩人「これのことかね」スッ
羅刹王「」
ズル…ズル…
勇者「まだ生きてんだろ。肉が追って来てる」
狩人「うむ、再生はしていないが安心は出来ない。これは助手に任せようと思う」
狩人「どうやら、助手には破壊出来るらしい。詳しい説明は後にしよう」
シャラ…
勇者「(今の音、こいつの服の中か?)」
狩人「何かな?」
勇者「いや、何でもねえ」
狩人「……大丈夫、壊れていないよ。合流したら必ず返す。安心したまえ」
勇者「分かってたなら最初から言え。おら、行くぞ」
狩人「………」
勇者「おい、どうした」
狩人「君が来てくれて助かったよ」
勇者「お前、変わった奴だな。いずれ殺し合う奴に礼なんて言うなよ」
狩人「はははっ! 君は正直な奴だな。だが、それはそれ、これはこれだ……っ」
勇者「痛むのか……」
狩人「これ程までに苦戦したのは初めてでね。あまり気にしないでくれ」
勇者「分かった」
ザッザッザッ…
狩人「………」フラッ
ドサッ
勇者「………」
狩人「………」
勇者「………」グイッ
ザッザッザッ…
狩人「助かったよ。快適ではないがね」
勇者「黙ってろ」
狩人「怪我の影響か、かなり痩せているようだな。戻ったら何か食べたまえ」
勇者「……体が見えるのか」
狩人「音を捉えることが出来れば見える」
勇者「便利だな。次は最初から使え」
狩人「む。言っておくが、その責任は君にある」
勇者「あ?」
狩人「君の音があまりに大きい為に、羅刹王の音を捉えるのに時間が掛かってしまったのだ」
勇者「そうかよ」
狩人「そうだとも」
勇者「………」
狩人「………」
勇者「……一つ、頼みがある」
狩人「何かね?」
勇者「あいつ等を届けるまでは待って欲しい。用事は、その後にしてくれ」
狩人「すぐに返答は出来ない。少し、考える時間をくれないか」
勇者「ああ、分かった」
ザッザッザッ…
狩人「…………………」
【#18】二つ、二つ
狩人「遅れて済まなかったね」
助手「狩人さん、勇者さん……」
勇者「僧侶は」
助手「この建物の中にいます」
助手「矢が消えた直後にご自身で治癒をしていましたが、暫くして気を失ってしまいました。疲労からだと思われます」
勇者「そうか……」
狩人「助手。早速で悪いが、君に頼みたいことがある」スッ
羅刹王「」ビクビク
助手「ひっ!? な、何でそんなものを……」
狩人「どうやら、頭部が生きているようなのだ。君に壊して欲しい」
助手「え!?」
狩人「気は進まないだろうが、やってくれ」
助手「で、ですが、僧侶さんの矢は消えていますよ? 音もしないですし大丈夫なのでは?」
狩人「念のためだ」
ゴトッ…
羅刹王「」
助手「(き、気持ちが悪い。頬や瞼が僅かに痙攣している)」
狩人「どうしたのかね?」
助手「あの、勇者さんでは駄目なんですか?」
勇者「時間が掛かり過ぎる。俺の場合、傷を負わせることは出来たが破壊するには至らなかった」
狩人「一方、君の負わせた傷は治癒しなかった。この中で、唯一君だけが癒えぬ傷を負わせた」
狩人「私は君が負わせた魂の傷を広げることで、何とか羅刹王を倒すことが出来たのだよ」
助手「しかし、何故……」
狩人「それは私にも分からない。ただ、古い書物の中には、人間にしか殺せないとあった」
助手「人間、ですか」
狩人「ああ。何を以て人間とするのかは定かではないが、どうやら君には可能なようだ」
助手「……分かりました。やってみます」チャキッ
羅刹王「」
助手「(うっ。こっちを見ている)」
羅刹王「あ゛あ゛あ゛」ブルブル
助手「ひぃっ!?」
狩人「はははっ」
助手「わ、わ、笑い事じゃないですよ!!」
狩人「コホンッ。そうだな、済まなかった」
助手「(心臓が飛び出るかと思った)」
羅刹王「や゛めーーー」
勇者「うるせえ」ゲシッ
羅刹王「」ゴロン
助手「な、何て罰当たりな。そんなことをしたら呪いや祟りが……」
勇者「呪ってやると言って死んだ奴ならいるが、未だに何もない。死んだら終わりだ。何も出来やしねえよ」
助手「(なんて説得力だ)」
狩人「いきなり言われて困惑するのは分かる。今日出来ないなら、日を改めて……」
助手「やります」
狩人「む、そうか? それは助かる」
助手「ただ、一人にしてくれませんか……」
勇者「……分かった。俺は中で待ってる。終わったら来い」ザッ
狩人「大丈夫なのか?」
助手「はい、大丈夫です」
狩人「そうか。では、私も中で待っているよ」ザッ
助手「(僕にしか出来ない。皆、この悪魔に殺されかけた。終わらせるんだ)」
ーーー
ーー
ー
僧侶「…ハァッ…ンッ…」
勇者「………」
狩人「君は何ともないのか? その甲冑に傷はないようだが、魂は未だにひび割れたままだ」
勇者「一度、砕けるような感覚はあった。意識が爆発して吹っ飛ぶみたいにな」
狩人「だか、生きている」
勇者「みたいだな。俺にも分からねえ」
狩人「ふむ……」
勇者「何だよ」
狩人「君は聞こえていなかったかもしれないが、二つあると言っていた。魂を分けたとも」
勇者「お前には、どう見える」
狩人「概ね、羅刹王の言っていた通りだ」
狩人「その甲冑には魂が宿っている。勿論、君の魂だ。だが、ほんの僅かに音が異っている」
勇者「異なる?」
狩人「限りなく近いが、異なる二つだ。同じ二つだが、何かが違う」
狩人「君の音が大きいと言ったが、甲冑から発せられる音が異様に大きいのだ。それ故に気付くのが遅れた」
勇者「あいつ……助手は、俺の音を追ってきたと言っていた。この甲冑の音か?」
ーー
ー
僧侶「…ハァッ…ンッ…」
勇者「………」
狩人「君は何ともないのか? その甲冑に傷はないようだが、魂は未だにひび割れたままだ」
勇者「一度、砕けるような感覚はあった。意識が爆発して吹っ飛ぶみたいにな」
狩人「だか、生きている」
勇者「みたいだな。俺にも分からねえ」
狩人「ふむ……」
勇者「何だよ」
狩人「君は聞こえていなかったかもしれないが、二つあると言っていた。魂を分けたとも」
勇者「お前には、どう見える」
狩人「概ね、羅刹王の言っていた通りだ」
狩人「その甲冑には魂が宿っている。勿論、君の魂だ。だが、ほんの僅かに音が異っている」
勇者「異なる?」
狩人「限りなく近いが、異なる二つだ。同じ二つだが、何かが違う」
狩人「君の音が大きいと言ったが、甲冑から発せられる音が異様に大きいのだ。それ故に気付くのが遅れた」
勇者「あいつ……助手は、俺の音を追ってきたと言っていた。この甲冑の音か?」
狩人「そのようだ」
狩人「その音は、ある時から強く発せられるようになった。街から出た時期と合致する」
勇者「(なる程。引き寄せの甲冑ってのは、そういうことか)」
狩人「ところで、誰がそれを?」
勇者「魔女と名乗る女だ。街を出る間際にな」
狩人「素性は」
僧侶「……ン…」
僧侶『きっと、もうすぐ思い出すわ。すべてが重なれば、私が誰なのか分かる』
僧侶『そうじゃないの。話しても伝わらないのよ。貴方自身が思い出すしかない』
勇者「……分からねえ。ただ、この甲冑を外せるのは創り出した本人だけみてえだ」
狩人「それは確かかね」
勇者「何とも言えねえな。あの女を殺すか、あの女が外すか、それしかないと言っていた」
狩人「そうか。それから接触は?」
勇者「ない。事ある毎に絡んで来たが、ここ最近は現れてねえ」
狩人「何か狙いがあると思うか」
勇者「………」
僧侶『その名で私を呼ぶ意味を、貴方は理解しているの?』
僧侶『私を忘れないで。貴方の魂のその奥に、私はいるわ』
勇者「さあな……」
狩人「話してはくれないのか」
勇者「お前の答えを聞いてからだ」
狩人「私の答えが、君の望むものではなかったら。君は、どうする」
勇者「………」
狩人「………」
僧侶「……んっ? あっ」
狩人「目が覚めたようだね」
僧侶「大丈夫ですか?」ギュッ
勇者「ああ、大丈夫だ。待たせて悪かったな。もう少し休め」
僧侶「いえ、私はもう大丈夫です。貴方が無事で……良かった……」
狩人「…………」
ザッ
助手「お待たせしました」
僧侶「あ、助手さん。皆さん無事で良かった。本当に終わったんですね」
勇者「……ああ。今、終わった」
【#19】個々
勇者「………」
狩人「………」
助手「(空気が重い。だけど、それも当然のことなのかもしれない。二人は全く別の場所に立っている)」
助手「(悪魔を倒した今、二人を繋ぐものは何もない。何が起きても、不思議じゃない)」
狩人「………」
助手「(狩人さんは国の考えに賛同している。人の世。その未来の為なら犠牲は厭わない)」
助手「(犠牲になるのが人であっても、それを受け入れている。現実的だけど、諦めているとも言えるんじゃないだろうか)」
勇者「………」
助手「(勇者さんは認めないだろう。それは既に行動で示している。騎士と戦い、難民を救い出した)」
助手「(国の在り方を否定、頑として戦った。そこには共感出来る。だけど、それが新たな犠牲者を生んでしまった)」
勇者「………」
狩人「………」
助手「(人を守り、人を存続させる。その為に、人は人を犠牲にしている。それが、今だ)」
助手「(最良の策がそれなのだとしたら、そこに善悪などないのだろうか。正義や悪さえも)」
僧侶「あ、あのっ」
勇者「何だ?」
僧侶「皆のところに戻らないのですか?」
助手「(僧侶さんは、勇者さんが来てから雰囲気が変わった。表情が柔らくなって声も落ち着いた気がする)」
助手「(山で見た時とはまるで違って見える。きっと、これが本来の彼女なのだろう)」
僧侶「あの、聞いていますか?」
勇者「……そうだな。おい」
助手「は、はい」
勇者「お前は馬に乗って先に行け。僧侶を連れてな。あいつ等の所へは、僧侶が案内しろ」
僧侶「えっ、でも……」チラッ
狩人「私は構わないよ」
助手「し、しかし、そう簡単に決めて良いのですか? そんな話は一度もしていないんですよ?」
狩人「君は先に見てくると良い。今後どうするかは、そこで決めることにしよう」
僧侶「っ、そんなの」
狩人「信用出来ないか?」
僧侶「……はい」
狩人「それはそうだろうね。私の目的は彼を捕らえることだ。それに変わりはない。無論、此処で逃がすつもりもない」
狩人「彼はそれを分かっているからこそ、君と助手に先に行くように言ったのだと思うがね」
僧侶「………」
狩人「そんな目で見ないでくれ。私も彼と話したいと思っているのだ。今後の為にね」
勇者「決まりだ。お前達は先に行け」
僧侶「嫌です。そんな状態で狩人さんと二人になるのは危険です」
勇者「こんな状態だから、この女は手出し出来ねえんだ。まともな状態なら殺し合ってる」
僧侶「でも、貴方を殺すのが目的だったりしたら……」
勇者「だったら、とっくに殺されてる。僧侶、少し冷静になれ。今の俺を殺しても意味はない」
僧侶「………」ギュッ
助手「狩人さんはそんな人ではないですよ。出会って間もないですが、それは確かです」
僧侶「でもっ」
勇者「急がねえと日が落ちる。いつまでも膨れっ面してんじゃねえ」
僧侶「はい、分かりました……」
狩人「話は以上かな? では、僧侶さんにこれを返そう」スッ
僧侶「あっ」
狩人「言っただろう。約束は守るとね」
僧侶「……ありがとうございます」ギュッ
助手「あの、お二人はどうしますか? 夜明けまで此処に?」
狩人「いや、後から行くよ。今から歩けば麓の森には辿り着けるはずだ」
助手「分かりました。僧侶さん、行きましょう」
僧侶「………」チラッ
勇者「何してる。早く行け」
僧侶「(せっかく矢が消えたのに、また離れ離れになっちゃうんだ。嫌だ、離れたくない……)」
勇者「どうした。何かあるなら言え」
僧侶「……いえ、なんでもないです。早く来て下さいね?」
勇者「分かってる。あいつ等にはお前から伝えておいてくれ」
僧侶「はい、分かりました……」
トボトボ…
助手「狩人さん、先に行きます」
狩人「うむ。ああ、待ってくれ。聖水はあるかね?」
助手「はい、一応持って来ていますが」
狩人「それは良かった。一つくれないか、それがなければ会話も出来ない」
助手「しかし……」チラッ
勇者「………」
狩人「彼ではなく私が使うのだ。問題はないよ」
助手「そ、そうですか。分かりました」スッ
狩人「ありがとう。では、行きたまえ」
助手「はい。では、先に行きます。お二人も、道中お気を付け下さい」ザッ
ザッザッザッ…
【#20】感情論
狩人「彼女には随分と好かれているようだね」
勇者「お前はそんな話がしたくて残ったのか?」
狩人「迂遠な会話は不要か……では、早速本題に入ろうじゃないか。その力を渡せ」
勇者「それは出来ねえな。渡そうにも甲冑が邪魔をする。蓋をされてるようなもんだ」
狩人「それが事実だと証明出来るのかね」
勇者「出来ねえな。殺して確かめてみるか? 欲しいものが消えちまっても知らねえけどな」
狩人「質問を変えよう。君はどうするつもりだ?」
勇者「あ?」
狩人「君はその力で何をしようとしているのかと聞いているのだ」
勇者「龍を殺して終わりだ。他にはない」
狩人「終わった後なら譲渡すると?」
勇者「その時、誰かがいれば、そうするかもしれねえな」
狩人「(蓋云々の話は嘘だろうが、万が一にも力が消えてしまえば、そこで終わりだ)」
狩人「(やはり、魔女とやらを排除しないことにはどうしようもないようだな)」
勇者「お前はどうなんだ」
狩人「どう、とは?」
勇者「何故、国のやり方に従う」
狩人「どちらが正しいのかという話なら遠慮するよ。言い争いになるだけだからね」
勇者「議論するつもりなんてねえよ。ただ、お前を知りたいだけだ」
狩人「………」
勇者「お前は俺のことを色々と知っているみてえだが、俺はお前を知らない。善悪なんてのはどうでも良い」
狩人「………」
勇者「話したくねえなら、それでいい。こっちもそうするだけの話だ」
狩人「……必要だからだ」
勇者「あ?」
狩人「間違いだ何だと言われようと、今の人々にそれが必要ならば、私はそれを受け入れる。今は、受け入れるしかないのだ……」
勇者「……受け入れた先に何があるんだ。人は弱い。真実に、押し潰されるだけだ」
狩人「ああ、分かっているさ。だから、見えないようにしているのだ」
狩人「罪は背負う。後には残さない。未来を生きる者達には、理想の世界を届けてみせる」
勇者「………」
狩人「数多の屍を踏み拉いてでも、人は進まなければならない。人でなしと罵られても構わない」
狩人「苦しみのない世界を届けること。それが、私が死者に出来る唯一の弔いだ」
勇者「その未来に、この力がどう関係する」
狩人「……それを話す前に、君はその力がどんなものか知っているかね」
勇者「滅ぼす力だ」
狩人「極めて分かりやすく言えば、そうだな。だが、それは表面的な部分でしかない」
狩人「遙か昔から存在する力だ。神の一欠片、滅びの遺児、様々な呼び名がある」
狩人「時代の時々に現れ、ふと消える。そしてまた現れる。未だ、解明はされていない」
勇者「それで?」
狩人「その力は様々な恩恵を与える。それは君が一番良く分かっているだろうがね」
狩人「王位の悪魔と対等に戦える力、強靭な肉体、龍の炎にすら耐えうる堅固な魂」
勇者「大袈裟に言うな。何度か耐えられるってだけの話だ。死なないわけじゃねえ」
狩人「だが、それ程の力を持つ人間は君の他にはいない」
勇者「お前も戦っただろうが」
狩人「君と私では違う。羅刹王に真正面から挑んでも、私は勝てなかっただろう」
狩人「私には、この体を生かして先程のように不意を突くくらいしか方法はない」
狩人「それも、君が羅刹王を引き付けてくれてやっとだ。王位相手に一人では戦えない」
勇者「それは俺も同じだ。僧侶がいなけりゃ、魔術でやられていた」
狩人「意外だな……」
勇者「何がだ」
狩人「他人を認めるような発言をするとは思わなかった。彼女を、信頼しているのだな」
勇者「………」
狩人「……まあ、それはいい。君はそう言うが、私は逆だと思う」
勇者「何?」
狩人「君が窮地に陥ったのは、その甲冑と彼女の存在があったからだ」
狩人「君が一人なら、そうはならなかったはずだ。彼女がいなければ矢を受けることもなかった」
勇者「煩え女だな」
狩人「それは済まなかった。では、話を戻そう」
狩人「先程も言ったように、それ程の力を持つ人間は君の他にはいない」
狩人「悪魔を打ち倒す力を持ち、強靭な肉体と魂を持っている。正に、人を超えた存在だ」
勇者「それはもう聞いた。何が言いたい」
狩人「君は、進化したのだよ」
勇者「進化だと?」
狩人「そうだ。君だけが進化したのだ。自分以外の人間を置き去りにしてね」
勇者「………」
狩人「責めているわけではないよ。それは君個人に宿った力だからね」
狩人「しかし、おかしいとは思わないか? 何故個人に宿る。継承も一人にしか出来ない。それでは不公平だ」
勇者「目的は力の共有か。その為に俺を?」
狩人「より正確に言うなら君ではない。君の持つ力が必要なのだ」
狩人「その力が全ての人間に宿れば、何ものにも縛られない完全な種となるだろう」
勇者「本気で言ってんのか?」
狩人「勿論だ。君は知らないだろうが、既に幾度か研究されているのだよ」
狩人「これまで力を宿した人間全てが、君のように戦いの道を選んだわけではない」
狩人「その力を人類の発展に役立てようとした探求者は、確かに存在したのだ」
勇者「やけに詳しいな。何処で知った」
狩人「………」
勇者「………」
狩人「……そう遠くない過去」
勇者「?」
狩人「先人の遺志を継ぎ、全人類への継承を夢見た研究者がいた」
狩人「彼女は力を宿していた。言わば、当時の勇者だ。彼女が着目したのは肉体の強化だった」
狩人「どんな障害、如何なる体質を持つ人間も、それによって改善または克服出来ると信じていた」
勇者「………」
狩人「だが、力の複製を目的とした研究は危険視され、教会は禁忌に触れると糾弾した」
狩人「研究で得られたものは全て焼き尽くされ、彼女は程なくして捕らえられた」
狩人「要は悪用すると考えられたわけだ。彼女は弁明したが、遂に受け入れられることはなかった」
勇者「彼女はどうなった」
狩人「大罪人として処刑されたよ」
狩人「誰からも理解を得られないまま処刑台に上がり、衆目に晒され、罵声を浴びながら……」
狩人「彼女は最期まで抵抗しなかった」
狩人「力を使えば逃げることなど容易かっただろう。牢を破壊することも出来たはずだ」
狩人「それをしなかったのは、自分の研究は人類の為だと証明する為だったのかもしれない」
勇者「それが、彼女の最期か」
狩人「………っ。いや、まだ続きがある」
狩人「彼女は力が消えぬよう、死に際に力を託したそうだ。自らの命を絶つ存在に」
勇者「………」
狩人「処刑に用いられたのは切っ先も刃もない鉄の塊。優秀な処刑人に主君から贈られた品だ」
狩人「処刑人は、主君にそれを使うことを強要された。見事、首を刎ねて見せろとな」
勇者「………」ギュッ
狩人「彼は見事、首を刎ねて見せた」
狩人「二人がどのような関係だったのかは分からない。ただ、彼だけは泣いていた。彼女の為に」
勇者「……そうか」
狩人「……もし君と会うことが出来たら、どうしても聞きたかったことがある」
勇者「何だ」
狩人「彼がその後に歩んだ道は正しかったと思うか?」
勇者「……俺はそう信じてる。あの人も、人の為に生きた。最期まで」
狩人「……………そうか。それならば良いのだ。彼女も報われることだろう」
勇者「だと良いけどな」
狩人「長くなってしまったな」
勇者「構わねえよ。聞いたのは俺だ」
狩人「……君は本当に、復讐の為だけに戦うつもりなのか?」
勇者「ああ、それだけで良いと思ってた。戦って戦って、最期まで戦い抜いて死ぬ」
狩人「今も、同じか?」
勇者「どうだろうな。良く、分からねえんだ」
勇者「あいつと歩いている内に色んなものを貰っちまった。今はあいつ等もいる。もう、俺だけじゃない」
狩人「………」ギュッ
勇者「どうした」
狩人「君は勇者に相応しくない。その力は相応しき者へと渡すべきだ」
勇者「………」
狩人「それが、もう一つの捕らえる理由だった」ザッ
勇者「良いのか、それで」
狩人「そう簡単に答えは出ない。今は、魔女とやらと倒すまでは共に歩こうと思っている」
勇者「答えは出る。必ず」
狩人「君の望まない答えかもしれないがね」
勇者「それでも良い。今は、それだけで充分だ」
狩人「では、行こうか」
勇者「ああ、行こう。まだ間に合う」
狩人「フフッ。ああ、そうだな……」
ザッザッザッ…
魔女『…………』
サァァァァ…
>>彼女は選んだ
>>連なる一つが、未来が、また一つ確定した
【#21】不在の者
巫女「…スー…スー」
僧侶「………」
僧侶「(あの人は今、どの辺りにいるんだろう。本当に大丈夫なのかな……)」
僧侶「(ううん、きっと大丈夫。考えがあってのことだ。大丈夫、明日には合流出来るんだ)」ウン
巫女「…スー…スー…」
僧侶「(早く会いたいなあ……)」コテン
僧侶「(あの人がいないと、何だか変な感じがする。話したいことだって沢山あったのに)」
僧侶「(……駄目だ。さっきから同じことばかりを考えてる。疲れてるのに、眠れないや)」
シーン…
僧侶「………」
羅刹王『一つ聞きたい。お前は何処から来た?』
羅刹王『どうやら我々とは異なる進化を遂げているようだ。我々以前の存在なのか』
僧侶「(動揺を誘っただけだ)」
僧侶「(あの言葉には何の根拠も証拠もない。それなのに、何故こんなにも引っ掛かるのだろう)」
羅刹王『お前は疑問を抱かなかったのか? 俺の魔術を妨害する程の魔力を扱えることに』
僧侶「(そんなの知ってる。言われるまでもなく、知ってることだ)」
僧侶「(私の当たり前が、皆の当たり前ではないことくらいは分かってる)」
僧侶「(そもそも、悪魔の言葉に意味なんてない。深く考える必要なんてないのに……)」
騎士『こんな体になって更に痛烈に突き付けられた!! 私が独りだということを!!』
騎士『誰も助けてはくれない。この苦しみを分かってくれる同類などいない』
騎士『私を救ってくれたのは後にも先にも唯一人。勇者様だけだ。同じ印を持つ、たった一人』
僧侶「(どっちも同じ、悪魔の言葉)」
僧侶「(なのに、頭から離れない。声に宿った熱も、想いの強さも、消えてくれない……)」
巫女「…スー…スー…」
僧侶「(頭の中がぐちゃぐちゃだ。このままじゃ駄目だ。気持ちを切り替えないと)」ザッ
ザッザッザッ…
助手「………」
僧侶「助手さん?」
助手「え? あっ、僧侶さん……」
僧侶「どうしました? 眠れないのですか?」
助手「ええ。こうも静かだと、考え込んでしまって」
僧侶「何かありましたか?」
助手「此処に来て、皆さんと話して、ちょっと考えさせられてしまいました」
僧侶「そうですか……」
助手「甘い考えですが、誰もが希望を抱いて生きることが出来たらと、そう思わずにはいられない」
僧侶「私もそう思います。今や、痛みや悲しみで溢れていますから……」
助手「魔物が異常に増え、それによって被害も増した。今も増え続けている」
助手「元凶である龍を倒せば魔物は消える。しかし、軍や教会による幾度かの討伐は失敗に終わっています」
助手「だからこそ、人々は勇者という存在に希望を抱いている。僕も、その一人です」
僧侶「………」
助手「僧侶さんの前でこんなことを言うのは気が引けますが、神様は何処で何をしているのでしょうね」
助手「神様が世界を創造したと言うのなら、何故こんな世界にしてしまったのか……」ウーン
僧侶「……ごめんなさい。私にも、分かりません」
助手「えっ!? いやあの、決して責めているわけではないですよ?」
僧侶「………」ギュッ
助手「……僧侶さん」
僧侶「?」
助手「良かったら、話して下さいませんか。話すだけでも、楽になります」
僧侶「……………よく、分からないんです」
助手「分からない?」
僧侶「色々知って、分からないことが増えて、自分が分からなくなっていくんです」
僧侶「上手く言えないですけれど、知らない存在になってしまうような。そんな気がして……」
助手「………」
僧侶「知っていますか? 悪魔も恋をするんです」
助手「えっ?」
僧侶「傷付いて、迷って、誰かに縋る。弱くて、悲しい、一人ぼっちの女の子でした」
僧侶「悪魔だったのか人間だったのか、それは今でも分からないけれど……」
助手「………」
僧侶「っ、ごめんなさい。変な話をしてしまって……」
助手「いえ、そんなことは……分からないのは、僕も同じですから」
僧侶「えっ?」
助手「狩人さんと出会って、たった数日で世界の見え方がすっかり変わってしまった」
助手「知り得た一つ一つが大きくて深い。これまで生きてきたのが、幻だと思えてしまう程に」
僧侶「幻……」
助手「世界は分からないことだらけです。でも、分からないのなら知ればいい」
助手「そうすれば、いつかは分かる時が来る。答えは見つかるはずです」
僧侶「ありがとうございます……」ペコッ
助手「いえ、そんな……」
助手「(こうしてみると、同じ年頃の女性にしか見えないな。金砕棒の存在が異質だけど)」
僧侶「あの、一つ聞いても宜しいですか?」
助手「何でしょうか?」
僧侶「どうして狩人さんと?」
助手「そう言えば、話していませんでしたね……」
助手「つい数日前、街の地下を見て、真実を知って、そこで助手になるように言われました。強制的でしたけどね」
僧侶「後悔はないのですか?」
助手「ない、とは言えないです。ですが、これで良かったのではないかとも思っています」
僧侶「何故です?」
助手「元は兵士でした。民を守る兵士として、自分なりに出来ることをしてきたつもりです」
助手「でも、僕は何も知らなかった。世界の仕組みも、こんなにも人間が窮地に立たされていることも」
僧侶「………」
助手「それが、この数日で真実を知って、狩人さんと出会って、本当のことに触れている」
助手「それが嬉しくもあり、怖ろしくもあります。付いて行くのに必死ですけどね」
僧侶「ふふっ、それは私もです」
助手「何だか不思議ですよね。こんな風に話せるなんて思ってもいませんでした」
僧侶「……この出会いが良い方向に進んで行くと、そう信じたいです」
助手「勇者さんが心配ですか?」
僧侶「心配というか、心配ですけど、あの人らしくないような気がして……」
助手「らしくない?」
僧侶「らしくないと言うか、何でしょうね……」
僧侶「あの人が、狩人さんと共に行動するだなんて思いませんでした。はっきりしている人ですから」
助手「(確かに、危うく殺されるところだった。敵と判断したら容赦しない人なのだろう)」
僧侶「向かって来る敵は何がなんでも倒す人です。目付きが変わって、倒すことだけを考えるんです」
僧侶「そういう姿を何度も見ていますから、何があったのかなって……」
助手「そんなに意外なのですか?」
僧侶「疑えというのが、あの人から教えられた一つですから」
助手「ですが、僕を信じてくれましたよ?」
僧侶「ええ、そこにも驚いています」
僧侶「街を出てから考えることも多くなったようですし、何かあったのかな……」
助手「うーん。気になるのは分かりますが、そればかりは本人に聞くしかないですよ」
僧侶「そ、そうですよね。そうしてみます」
助手「(何だか、僧侶さんが小さく見える。いや、大きく見えていただけなのかもしれないな)」
助手「(こんなに小さな体躯で悪魔と戦ったのか。きっと、それだけ強く、勇者さんをーーー)」
僧侶「どうしました?」
助手「いえ、良い関係だなと思っただけです」
僧侶「?」
助手「(二人は互いを信頼しているのだろう。狩人さんと僕も、そうなれるだろうか……)」
【#22】次々と
巫女「早く来ないかな……」
僧侶「昼までには来ると思う。もう少し待っていよう」
巫女「あのね? わたし、話したいことがあるの」
僧侶「……そっか、でも本当に大丈夫? 無理に話さなくても良いんだよ?」
巫女「ううん、わたしは話さなきゃいけないの。もう、決めたの……」
僧侶「頑張ったんだね。今まで、ずっと我慢していたんでしょう?」
巫女「ガマン、なのかな……わたしも、よく分からない。あの人を見て、決めたの」
僧侶「?」
ザッ
助手「僧侶さん、おはようございます」
僧侶「あ、おはようございます。どうしました?」
助手「もうすぐ来ると思います。昼まで掛かると思いましたが、急いで来たようですね」
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