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元スレ勇者「最期だけは綺麗だな」
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僧侶「そうですか、良かった……?」
ザワザワ…
助手「到着したようですが、何だか騒がしいですね」
僧侶「行きましょう!」タッ
ーーー
ーー
ー
勇者「悪い、待たせちまったな」
僧侶「いえ。それより、皆さんが……」
ザワザワ…
狩人「まあ、歓迎されていないのは分かる」
助手「昨夜説明したのですが、まだ受け入れてはいないようです」
狩人「それはそうだろう。もう一度、私からも説明した方が良さそうだ」ザッ
僧侶「ど、どうしましょう?」
勇者「俺も行く、僧侶と助手は此処にいろ」
狩人「……」
>>彼女が狩人か……
>>僧侶さんによると国側の人間らしい
>>それは昨日の男も同じだろ?
>>昨日の子は無害そうだったじゃない
狩人「(こうなると想定はしていた。しかし、思ったよりも多い。これは苦労しそうだ)」
>>どちらも国側の人間だ
>>昨日は受け入れてたじゃないか
>>全員が納得してるわけじゃないわ
>>本当に信用出来るのか?
狩人「(この雰囲気を見るに、私が幾ら話しても良い結果は得られそうにないな)」
ザッ…
勇者「先に俺が話す」
狩人「そうしてくれると助かる」
勇者「聞いてくれ」
勇者「こいつは俺の力を狙っているが、この甲冑が外れるまでは手出しは出来ない」
勇者「甲冑が外れるまでは協力すると言っている。裏切ることは、まずないだろう」
勇者「お前等には近付けない。俺の傍に置いて監視する。それで納得してくれないか」
>>何で、そんな奴と一緒に?
>>そうよ、置いてくれば良かったじゃないの
狩人「そうされても追うだけだ。大して意味はない。傍に置いた方が楽だと考えたのだろう」
狩人「安心したまえ。彼の目もある、貴方達に手出しは出来ないよ。するつもりもないがね」
狩人「勿論、戦闘には参加する。彼との約束は守る。質問は以上かな?」
シーン…
狩人「宜しい。では……」チラッ
勇者「遅れを取り戻す。此処からは急ぐぞ」ザッ
>>態度のデカい女だったな
>>それは彼にも言えることだろ?
>>お前達、いつも守られといて良く言えるな
>>単に性格の話だよ。そう目くじらを立てないでくれ
>>狩人さんか、綺麗な女性だ
>>ああ、肌なんか真っ白だ。不健康そうだけど
>>やめてよ、こんな時に気持ち悪いわね
>>なっ!? そういう君だって、助手とかいう男を可愛いとか何とか言っていたじゃないか!!
>>下らない喧嘩は止せ。早く来ないと置いて行かれるぞ
勇者「はぁ……」
狩人「ははは。賑やかそうで良いじゃないか」
勇者「まあな、そこら辺は助かってる。落ち込まれるよりはずっと良いからな」
狩人「ところで、目的地のことだが」チラッ
巫女「……」サッ
狩人「やれやれ。それで? 目的地は何処なのかね?」
勇者「東にあるとしか聞いてねえな」
狩人「君は馬鹿なのか?」
勇者「言わねえもんは仕方ねえだろうが、何度聞いても着けば分かるとしか言わねえんだ」
クイッ
勇者「?」
巫女「言っても信じないから、言わないだけ」
勇者「だとよ」
狩人「彼女には随分甘いじゃないか。それで良いのか、君は」
僧侶「(な、仲良くなっている)」
僧侶「(何を話したんだろう? 戦うよりはずっと良い。ずっと良いけど、何だろ……)」
勇者「近々話す。そうだろ?」
巫女「う、うんっ!」
狩人「そうか。では、楽しみに待っておこう」
勇者「目的地が何処でも文句は言うなよ」
狩人「……ふむ。君、本当は既に知っているね? 何故言わない。皆も不安がると思うのだが」
勇者「それも、後で話す」
狩人「いいだろう。この話は終りにする」
ザッ…
助手「あの、少し宜しいですか」
勇者「どうした?」
助手「ちょっと此方へ。直接見た方が早いと思われます」
勇者「分かった。僧侶、代わってくれ」
僧侶「えっ? あ、はいっ」
巫女「……」
狩人「言いたいことがあるなら、言った方が良い。隠し事は、時に悲劇を生むからね」コソッ
巫女「……」
狩人「私には見えている。変わった魂の形をしているな。敵ではないようだが、何故隠す」
巫女「真実は、時に人を傷付ける。私にも目隠しが必要だと判断しただけ」
狩人「それが貴方の本性かね。貴方が何を話すのか、非常に興味がある」
巫女「……」
ザッ…
勇者「何してる」
巫女「……」
狩人「いや、なんでもないよ。それより、何があったのかね」
勇者「聖水の入った小瓶が割れた」
狩人「あれは早々割れるものではない。管理者は何をしていたのだ。残りは幾つある」
勇者「ない」
狩人「何?」
勇者「俺達が所持していた聖水も、助手の奴が所持していた聖水も、小瓶は全て割れていた」
狩人「割れていたではなく、割られていたの間違いではないのか」
勇者「出発前に確認した時は割れていなかったらしい。助手のもな」
狩人「私達が合流してから、それ程時間は経過していない。割られたのなら分かるはずだ」
勇者「だろうな。だが、誰も異変には気付かなかった」
狩人「他に手掛かりはないのかね?」
勇者「小瓶には針を刺したような複数の穴があった。それ以外にはない」
狩人「保管方法は」
勇者「複数人が分担して所持していた」
狩人「不可解だな。誰一人気付かないとは……」
勇者「お前が持っていたのはどうだ」
狩人「……その可能性は考えたくはないが、確かめた方が良さそうだな」スッ
勇者「………」
狩人「………」
勇者「半分、残っていたはずだよな」
狩人「そのはずだ」
勇者「ったく、面倒なことになったな」
狩人「どういうことだ。何故、濡れてすらいない……」
勇者「(手の込んだ嫌がらせだな。魔女の仕業か?)」
僧侶「魔物が来ます!!」
勇者「くそっ、考えるのは後だ。やるぞ」ジャキッ
狩人「ああ、分かっている」ガチリ
【#23】異種の台頭
勇者「皆、下がれ!!」
巫女「お姉ちゃん、結界はわたしがやる」
僧侶「うん、お願い。皆さん、落ち着いて一ヶ所にまとまって下さい!」
狩人「助手、私の背後に付け。万が一魔物が抜け出した場合の処理を頼む」
助手「了解しました」
ザザザザザ…
勇者「(雑魚相手に癪だが、いつも通り避けながら戦うしかねえな)」ダンッ
ズドンッ!グシャッ…
勇者「(何だ、この数は……!!)」
ガリッ!ガリガリ…
勇者「ぐっ、離…せッ!!」ガシッ
ゴキンッ!
勇者「(魔物って言っても犬畜生じゃねえか。くそ、こんな奴等に噛まれた程度で……)」
僧侶「んっ!!」
ゴシャッ! ドサドサッ…
僧侶「立って!! しっかりして下さい!!」
勇者「っ、分かってる」
僧侶「(もう出会った頃とは違う。この人に頼るわけにはいかない。私が、守る)」ジャキッ
僧侶「土、掴め」ザクッ
ゾゾゾゾッ!
僧侶「狩人さんっ!!」
狩人「了解した」ダンッ
ズパンッッ!ドサドサッ…
狩人「減る気配がない。どうする。このままでは押し切られて囲まれてしまうぞ」
僧侶「私がやります。下がって」
狩人「……分かった」
僧侶「(岩、壁)」ザクッ
ドゴンッ!ドゴンッ!
狩人「(壁で挟んだが、道を塞いだわけではない。彼女は何をするつもりだ……)」
僧侶「焼き尽くせ」ザクッ
ゴォォォォッ…
僧侶「……」
狩人「(一匹残らず、確実に殺す為の壁か。複数の魔術を、しかも、これ程の高威力で……)」
僧侶「よしっ、終わりました」
狩人「……」
勇者「僧侶、皆は無事か?」
僧侶「はい、大丈夫です。魔物は一匹も通していません。さあ、手を」スッ
勇者「悪いな……」ガシッ
グイッ…
僧侶「さあ、先を急ぎましょう?」ニコッ
勇者「僧侶」
僧侶「何です?」
勇者「助かった。ありがとな」
僧侶「へへっ、私も戦えるようになったでしょう?」
勇者「ああ、そうだな……」
僧侶「どうしました?」
ザッ
狩人「おそらく、貴方に戦わせるのが心苦しいのだ。女性に無理を強いるのは、男性としては恥ずべきことらしい。助手がそう言っていた」
僧侶「へっ?」
助手「えっ!? いやその、別に僕は聞かれたから答えただけであって……」チラッ
僧侶「え~っと……」チラッ
勇者「……」ザッ
僧侶「あっ、ま、待って下さい」タッ
ザッザッザッ…
狩人「ふむ、行ったか」
助手「狩人さん、何であんなことを……」
狩人「少し二人で話がしたくてね。ところで、君は彼女をどう思う」
助手「えっ、僧侶さんですか? 凄まじい魔術の使い手だと思いますが」
狩人「彼女はね、まだ数回しか戦っていないそうだ。実戦で魔術を扱うのも、数えられる程度だ」
助手「そんな馬鹿な……」
狩人「戦いに関してはは素人だが、突出した魔術の才能を持っている。最初はそう考えていた」
狩人「だが、人間には、属性の異なる高威力の魔術をほぼ同時に扱うなど出来はしない」
狩人「少なくとも、彼女以外にそのようなことが出来る魔術師を、私は知らないよ」
助手「何が、言いたいのですか……」
狩人「そう戸惑うな。魂に異常はなかった。彼女は間違いなく人間だよ。しかしーーー」
羅刹王『歪みを消し去れば、与えてやる』
羅刹王『その娘。そして、共にいる男だ。生かしておけば、人すらも滅ぼすだろう』
羅刹王『お前は存在してはならない歪みだ。その矢が、お前を殺すだろう』
狩人「しかし、彼女は何かが違う。何かがね……」
【#24】岩屋
僧侶「男性は此方にお願いします」
>>男の方が狭くないか?
>>こんな時に文句を言うな。眠れる場所を作ってくれただけ有難いと思え
>>アイツには、してもらうのが当たり前になってるのさ。感謝は長続きしない
>>腹立たしいが、そうみたいだな。彼女、傷付いてないと良いけど……
>>ああ、皆がそうだとは思って欲しくないな
>>出来ることはやろう。少しでも負担を減らすんだ
ザワザワ…
狩人「まさか此処までとはな。簡易的だが、寝床まで場所まで作ってしまうとは驚いた」
助手「あの状態を維持するにも魔力を消費するはずですよね……」
狩人「勿論だ。四方を囲む岩の壁、簡易住居、結界。彼女にしか出来ない芸当だ」
ザッ…
僧侶「あの、狩人さんは私と一緒でも良いですか? ちょっと離れた場所ですけど……」
狩人「私は何処でも構わないよ。面倒を掛けて申し訳ない」
僧侶「助手さんは、その隣です」
助手「わざわざ別の場所に? 心遣い、感謝します」
僧侶「いえ、今日はお疲れ様でした。短い時間ですけど、しっかり休んで下さいね」
狩人「ところで、彼は?」
僧侶「えっと、向こうです。今は巫女ちゃんと一緒にいます。大事な話があるらしいです」
狩人「……」
助手「勇者さんはいつも一人なのですか?」
僧侶「はい、あの姿に慣れていない方が多いので……」
助手「そうでしたか……」
僧侶「では、行きましょう」
助手「は、はい。お願いします」
トコトコ…
狩人「(あの二人が何を話しているのか、非常に興味がある。だがーーー)」
僧侶「狩人さん、行きましょう?」
狩人「(監視は彼女に任せたと言うわけか。仕方がない、ここは従おう)」
ーーー
ーー
ー
勇者「で、話ってのは?」
巫女「わたしのこと、僧侶のこと。そして、魔女のこと」
勇者「何故、俺にだけ話す。あいつには話さないのか?」
巫女「話しても受け止められない。混乱を招くだけ。出来ることなら、貴方から伝えて欲しい」
【#25】我
勇者「何故だ」
巫女「その方が安全」
勇者「取り敢えず話せ。それからだ」
巫女「分かった。まず、僧侶と私の魔力が同じであることには気付いていた?」
勇者「ああ、会った時にな。だが、今の魔力は出会った時とは違う」
勇者「魔力の質を変えるなんてのは聞いたことがねえ。偽装は出来ないはずだ」
巫女「全ては僧侶の為にしたこと。僧侶は、私や魔女とは違う。記憶を持たない」
勇者「記憶がない? いや、いい。続けてくれ」
巫女「魔力が同じなのは、私と僧侶が同じ存在だったから。それから、魔女も」
勇者「……続けろ」
巫女「元々は同じ場所にいた」
巫女「あらゆるものを見渡せる場所で、あらゆるものを見渡せる目を持った存在として」
勇者「……」
巫女「始めは存在と呼べるのかさえ分からない何かだった。見ているだけの何かだった」
巫女「見ているという意識などなかった。見ていたというのも、正しいのかどうか分からない」
巫女「私は生命の移り変わりを、大地の形成を、種の滅びと誕生を、その繰り返しを見ていた」
巫女「私が私を認識したのは、人が誕生してからだった。正しくは、認識させられた」
勇者「人間にか」
巫女「そう。人は奇妙なことをし始めた。存在しないはずの何かを崇め、祈り、願い、愛し、怖れた」
巫女「供物を捧げ、踊り、歌った。それは人だけが取った行動だった」
巫女「太古の獣にも、木から下ることを選んだ獣にも、そんなものはなかった」
勇者「……」
巫女「それは無視できないものとなり、私はそこにいられなくなってしまった」
勇者「何故」
巫女「世界を自由に飛び回り、全てを見渡す目を持った鳥が、突然窓のない箱に閉じ込められた。それが、どれ程の苦痛か分かるでしょう」
勇者「……」
巫女「視野は急速に狭まり、全ての私が一つとなり、私は私に押し込められ、更に混乱した」
巫女「私は何とかしようとしたけれど、事態は改善しないまま、時だけが過ぎた」
巫女「その間も聞き続けていた。貴方達の声を、あらゆる声を、私は聞き続けてきた」
巫女「私を呪う声、救いを求める声、存在を揺るがす程の叫びが、長い長い間、私を苦しめた」
巫女「遂には、私は私を忘れ、更に小さな存在となって、何も知らぬまま、此処にいた」
勇者「居た?」
巫女「移動したわけではなく、物質として、肉体を得て存在していたの」
巫女「ただ、以前の記憶を失っていたのは幸運だった。同じような混乱は避けられたから」
巫女「私は此処で生きる人々と同様に無知で、何かに縋らなければ生きていけない、弱い生物となっていた」
勇者「……」
巫女「そして、初めて出会ったのが、貴方」
勇者「待て。お前は出会った時から知識を持っていた。無知ではなかったはずだ」
巫女「貴方が教えてくれた」
勇者「何かを教えた覚えはねえな」
勇者「貴方が私を助けてくれた」
巫女「無知で希薄な私を守ってくれた。世界を見せてくれた。私を教えてくれた」
勇者「何をーーー」
巫女「私は貴方の傍にいることを望んだけれど、貴方は私を置いて龍と戦い、敗れた」
勇者「なっ……」
僧侶『貴方は私を置いて、一人で龍と戦ったわ』
僧侶『私が目を覚ました時には終わっていたわ。息絶えた貴方と、傷だらけの龍がいた』
僧侶『何度も甦らせようとしたけれど、幾ら魂に呼び掛けても、貴方は戻って来なかった』
巫女「どうしたの?」
勇者「いや、今はいい。続けてくれ」
巫女「分かった。私は何度も蘇生を試みたけれど、貴方が蘇ることはなかった」
巫女「私には、貴方の死を受け入れられるはずがなかった。そして、爆発が起きた」
勇者「爆発?」
巫女「そう、あれは爆発だった。芽生えた自我、溢れ出る強烈な感情が、記憶を呼び覚ました」
巫女「そして、一ヶ所だけを残して、あらゆるものが爆発に巻き込まれた」
勇者「何?」
巫女「それが、今目指している場所。貴方が行くべき場所。戦う意味を、探す場所」
勇者「……」
巫女「話が逸れた。爆発は力を生んだが、一つの存在には到底耐えられるものではなかった」
巫女「想いに任せた爆発の連続が終わった時、気付けば、私達は三つに分かれていた」
勇者「それが、お前と僧侶、そして魔女か」
巫女「そう。何が起きたのかを把握するには、私にも時間が掛かった」
巫女「彼女。いや、魔女は、元に戻ったと言っていた。次は、自分自身の意思で決めるのだと」
勇者「何を決める……」
巫女「救うに値する生命なのか、救うに値する世界なのか、人の望みし存在として、世界を見定める」
勇者「……」
巫女「魔女は既に決めていた。貴方を利用して、滅ぼそうとしている」
勇者「神としてか? 馬鹿げてる」
巫女「そうしたのは、人。私達をそうしたのは人の意思、信仰と呪詛」
勇者「人が、神を創ったってのか」
巫女「その解釈が正しいとは断言出来ない。私達は、始まりから存在していたから」
勇者「……そうか、押し付けたんだな。人が、お前達に、この世界の全てを」
巫女「……」
勇者「一つだった時と今は違うのか? 誰が三つに分かれることを決めた」
巫女「決めたのは、元の私。一番近いのは魔女。多くの力と、感情を引き継いでいる」
巫女「魔女は、私や僧侶とも違う。何か別のものを宿している。だから、魔力も違う」
勇者「僧侶は何なんだ。あいつには僧侶としての記憶、過去がある」
巫女「僧侶は創造された命、創られた過去、極めて人に近い性質、信仰と現実で揺れる存在」
勇者「意味が分からねえ。何故そんなに面倒なことをした」
巫女「僧侶は人間として決める。それが役目」
勇者「何もかもが偽りか」
巫女「彼女の中では本当の過去。でも、綻びはある」
勇者「綻び?」
巫女「爆発によって生まれた歪み。記憶の辻褄が合わない部分は必ずある」
勇者「気付くのか」
巫女「いずれは」
勇者「半端臭えことしやがって……」
勇者「お前は俺から伝えろと言ったが、俺が言ったところで混乱する」
巫女「私も力を貸す。矛盾をなくす」
勇者「そんなことは不可能だ」
巫女「私には、それが出来る。信じて」
勇者「……もう一つ、聞きたいことがある」
勇者「この屍肉と骨には、魂が宿っていると言っていた。狩人が言うには俺の魂らしい」
巫女「そう、だから貴方は……」
勇者「あ?」
巫女「貴方が羅刹王を倒せなかったのは、魂が分散していたから。よって、力も分散した」
勇者「それはいい。お前には魔女が何をしたのか分かるのか?」
巫女「過去と呼んで良いのか分からないけれど、過去の貴方の魂を宿らせたのだと思う」
勇者「どうやって? お前の言ってることが真実なら、その俺は既に死んだはずだ」
巫女「無理矢理に魂を呼び起こし、定着させたと考えられる。爆発の際に持ち出したのかもしれない」
勇者「何でもありだな」
巫女「そうでもない。貴方を蘇生出来なかったのが、その証。優れた力も、扱えなければ意味がない」
勇者「それで爆発か。ガキみてえだな」
巫女「正しく、その通り。あの時の私は、生まれたばかりの赤子同然だった」
勇者「お前は何処まで知ってる。全てが見えているのか?」
巫女「今の私には見えない。見えていた頃の元の私には決して戻れない」
勇者「……」
巫女「話を戻す。先の話が事実なら、魂は重なり始めているはず。何か兆候は?」
勇者「夢を見た」
巫女「夢」
勇者「俺は夢の中で、魔女を僧侶だと認識していた。以前からそうだったようにな」
勇者「どんな関係だったかは知らねえが、随分と気を許してたよ」
巫女「記憶の混乱はあるの?」
勇者「ああ、気持ち悪くて吐きそうだ。夢を見てからな」
巫女「完全に繋がるまでは、それが続く」
勇者「……繋がれば、どうなる」
巫女「分からない。魂の同化が何を及ぼすのか想像は出来ない。見たことがない」
勇者「死んだ俺は、俺と違うのか?」
巫女「僧侶と出会うまでは同じ。貴方と僧侶だけが前とは違う。歪められた存在」
勇者「(歪みってのは、このことか)」
勇者「死んだ俺とは何が違う?」
巫女「そんな姿にはならなかった」
勇者「魔女はいねえからな。それは分かる。他にはねえのか」
巫女「それから、狩人と助手はいなかった。全てが同じにはならない」
巫女「貴方も、前とは違う」
勇者「どこが?」
巫女「前は私を育ててくれた。兄であり、父のような、頼れる存在だった」
勇者「冗談だろ」
巫女「冗談じゃない。本当」
勇者「俺が育てただと? 馬鹿言うな、そんなことをするはずがねえ」
巫女「あの人を悪く言うのはやめて。貴方だって、勇者を馬鹿されたら怒るくせに」
勇者「……悪かったな」
巫女「別にいい」
勇者「でも、育てたってのはどういうことだ? まさか、赤ん坊の状態から育てたのか?」
巫女「違う。この状態から育てた。此処に来た時の姿が、私」
勇者「成長するのか」
巫女「元の私は成長した。成長速度は人間と違う。精神に見合った姿になる」
勇者「いきなり大人になるってのか?」
巫女「そんな感じ」
勇者「想像出来ねえな。つーか、お前ってそういう奴だったんだな。いつものは演技か? そうは見えなかったが」
巫女「演技じゃない」
巫女「私は薄いから、巫女のような人格を作った。それは巫女も薄々分かっている。理解出来ているかは分からないけど」
勇者「薄ってのは何だ」
巫女「感情が希薄。表現が下手」
巫女「これでは人に溶け込めない。だから作った。魔女が色濃く受け継いだから、そうなった」
勇者「僧侶は?」
巫女「自我が芽生え始めた頃の私に似ている。世界を知り始めた時の私に近い」
巫女「あの年頃の性格に近付ける為に、意図的にそうしたのだと思う。それぞれ違う」
勇者「肉体的な状態もか?」
巫女「精神的にも肉体的にも違う。原型となった姿も三つある」
巫女「私は最初の頃、子供。僧侶が中間、子供と大人の間。魔女は成長した後、大人」
勇者「……」
巫女「どうしたの?」
勇者「お前も魔女も、最初から僧侶の存在を知っていたんだよな」
巫女「知っていた。魔女は僧侶が大嫌い」
勇者「それは分かる。僧侶も嫌いだろうけどな。だが何故? 元は一つなんだろ?」
巫女「だから嫌いなの」
巫女「何も知らない頃の、貴方を失う前の自分を見せられているようで、許せないんだと思う」
勇者「お前はどうなんだ」
巫女「私は力になりたい。僧侶は、私や魔女とは違う。過去に囚われず、前を見ている」
巫女「囚われる過去がないとも言えるけど、そうしなかったら、私達と同じだったと思う」
勇者「……そうか」
巫女「貴方はどうするの?」
勇者「龍を殺して魔女も殺す。方法なんてそれしかないんだろ?」
巫女「魔女と、戦える?」
勇者「戦う。やることに変わりはない」
巫女「魂が完全に繋がるまでに何とかした方が良い。そうしないと、躊躇いが生じる」
勇者「何てことはねえさ……なあ、巫女」
巫女「?」
勇者「よく、話してくれたな」
巫女「信じるの?」
勇者「どうだろうな。何となく理解はしたが、信じられるかどうかは分からねえよ」
勇者「お前と僧侶の魔力が同じなのは気になってたが、こんなことになるとは思わなかった」
巫女「魂が繋がれば、信じる」
勇者「かもな。ところで、聖水の小瓶を割った奴を知ってるか?」
巫女「知らない。以前は、そんなことは起きなかった」
勇者「……そうか。なら、何とかするしかねえな。もう話すことはないか?」
巫女「昨夜のことを話したい」
勇者「何かあったのか?」
巫女「昨夜、助手が言っていた」
巫女「神は何処にいるのかと、何故こんな世界にしたのだと、神が居てくれたらと……」
勇者「お前は神じゃない。世界を創ったのも、お前じゃないんだ」
巫女「分かってる。でも、考えた」
勇者「何をだ」
巫女「もしも私が神だったら、どうするのだろうって」
勇者「どうするか、決めたのか?」
巫女「分からない。でも」
勇者「……」
巫女「もし、私が神だったら、今のような世界にはならなかったと思う」
勇者「そうか、そうかもな……」
巫女「神は憎い?」
勇者「どうだろうな。ただ、いなくて清々してる」
巫女「じゃあ、私のことは?」
勇者「お前が神なんかじゃなくて良かったと思ってるよ」
巫女「これからも、一緒にいていいの?」
勇者「何だよ、他に行くとこがあるのか?」
巫女「……ない」
勇者「だったら、此処にいろ」
巫女「う、うんっ」
勇者「さあ、そろそろ休め。今日は疲れただろ」
巫女「待って。僧侶とも話をして欲しい。悩んでいるみたいだったから」
勇者「分かったよ」
巫女「……ねえ、あなた」
勇者「ん?」
巫女「知りたいこと、聞きたいことは、まだ沢山あると思う。でも、直に分かる。何もかも」
勇者「そうかい……」
巫女「きっと、大丈夫。前と同じにはならない。私もいる。僧侶もいる。皆もいる」
勇者「そうだな。ありがとう……」
巫女「ねえ、もう少しだけ、一緒にいてもいい?」
勇者「好きにしろ。こんな化け物と一緒でいいならな」
巫女「貴方は化け物じゃない。幾ら魔女でも、貴方の心までは変えられない」
勇者「……」
ポカッ…
巫女「なんで?」
勇者「ガキなのに随分と気が利く返しをすると思ってな。巫女、変に気は遣わなくていい。お前が疲れるだけだ」
ポンッ…
巫女「(あっ。これ、懐かしいやつだ)」
勇者「いいか、ちゃんと戻って寝ろよ。俺が連れて行くと叫ぶだろうからな」
巫女「(前とは違うけど、違うけど、本当は違わない。この人は、この人のままだった……)」
簡単に
全部見える。見えるだけ。自我とかない何か。
↓
人が進化、神と名付けた何かに祈ったりし始めた。
↓
私は私を認識した。一つの存在になる。狭い。
↓
人増える。宗教作る。祈り続ける。
↓
苦しい。私はますます存在を固定されて、以前のように飛べなくなる。
↓
私はそれに耐えきれずに墜落。肉体を得てしまう。容量少ない。記憶ない。
↓
勇者と出会う。勇者が助ける育てる旅をする。
↓
私は懐いた。とんでもない速さで成長した。
↓
勇者が私を置いていく。追う。絶対見つける。
↓
勇者が龍と戦って死んでいた。
↓
勇者死ぬのは絶対嫌だ。私は私を思い出した。目茶苦茶しても助ける。
↓
良く分からないけど時間が戻った。
↓
とんでもない力だ。私は一つの存在ではいられない。元の私を三分割。
↓
魔女、巫女、僧侶。
↓
魔女と巫女は自分で決めること。僧侶は勇者と旅して人間目線で決めること。
↓
僧侶はそれ知らない。勇者と出会う旅をする。
↓
魔女は滅ぼす。巫女は傍観。
↓
今
ここまでとします。
乙 一気に世界観広がったけど違和感なくて面白い
続き楽しみにしてる
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【#26】彼女の気持ち
助手「はぁ」トスン
助手「(狩人さんと旅をしてから、一日一日の内容が濃すぎる。多分、まだ三日くらいのはずだ)」
助手「(なのに、もう何ヶ月も旅をしているような感じがする。しかも、勇者さんと一緒に旅するだなんて……?)」
僧侶『あの』
狩人『何かな?』
助手「(そういえば隣だった。壁際だからか、僅かに声が漏れてくる)」
助手「(速やかに此処を出るべきだろうか。しかし、他の人は僕を警戒していたしーーー)」
僧侶「何故、あの人と一緒に?」
狩人「やれやれ、まだ私を疑っているのか。少しは彼の判断を信じたらどうだ」
僧侶「それは……」
狩人「まあいい、このままでは互いに疲れるだけだ。貴方にも話しておこう」
僧侶「えっ?」
狩人「何を驚くことがある。彼には既に話しているのだ。今更隠す必要もないだろう」
僧侶「それは、そうですけど」
狩人「意外かな?」
僧侶「……はい。他人に目的を知られたりするのを、極力避けているように思っていました」
狩人「私が言えたことではないが、初めの印象で決め付けるのは止した方が良い」
僧侶「っ、そうですよね。ごめんなさい……」
狩人「いや、いい。それも仕方のないことだよ。そう思われて当然の言動を取っていたからね」
狩人「では、一度しか話さないから良く聞きたまえ。質問は後にしてくれると助かる」
僧侶「はい。分かりました」
ーーー
ーー
ー
僧侶「……彼女を処刑したのが、先の勇者」
狩人「そういうことになるね。我ながら、過去に縛られているとは思うよ」
狩人「その点で言えば、私も彼のことは言えない。彼と私では、目指すものが違うがね」
僧侶「(彼女は、狩人さんにとってどんな人だったんだろう。母親、とかなのかな?)」
僧侶「(あらゆる障害の克服。進化。それは、狩人さんにとっても希望だったはずだ)」
狩人「……」
僧侶「(もしかして、復讐するつもりだったのかな。力を受け継いだ、あの人に……)」チラッ
狩人「いや、そんなつもりはないよ。彼にも、先の勇者にも、憎しみはない」
僧侶「何も言ってないです」
狩人「顔に出ていた。彼と再会してからの貴方は非常に分かりやすい」
僧侶「うっ……はぁ、あの人にも同じことを言われました。お前は分かりやすい女だって」
狩人「はははっ、まあ良いじゃないか。知られて困るようなことでもないだろう」
僧侶「でも、何か嫌です……」
狩人「(小さくなってしまった。こうして横顔を見ると、まだ少女の域を出ないな)」
狩人「(少女のような振る舞いに反して魅惑的な身体。本人は気付いていないようだが、ある意味で危うい女性だ)」
狩人「(庇護欲そそる女性というのは、このことを言うのだろうか? 私には理解出来ないが)」
僧侶「あの、狩人さん」
狩人「何かな」
僧侶「狩人さんは、彼女の為に研究を?」
狩人「影響を受けたのは確かだが、決めたのは私だ。言っただろう、進化の道を作ると」
僧侶「勇者とは人に奉仕する存在だと言うのもそこから? 勇者であった彼女の姿を見ていたから、貴方はあの人を……」
狩人「……」
僧侶「ご、ごめんなさい。勝手に推察してしまって……」
狩人「いや、構わないよ。彼を勇者だと認めなかったのは、それも関係しているだろう」
狩人「勇者が人に尽くす存在であるべきだという考えは、今までも変わらない」
僧侶「今でも、あの人が嫌いですか?」
狩人「好き嫌いではない。ある点に於いては信頼出来るが、全てを信じているわけではない。それだけだ」
僧侶「じ、じゃあ、あの人の体が元に戻ったら? あの人と戦うのですか?」
狩人「それを決めるのは私だけではない。彼がどのような決断をするかで、また変わる」
僧侶「そう、ですよね……」
狩人「あまり楽しい話ではないな。この話はやめよう。貴方の精神にも良くない」
僧侶「……はい」
狩人「僧侶さん、私からもいいかな。少し別の話をしよう。気分転換だ」
僧侶「気分転換? 何でしょうか?」
狩人「彼をどう思っているのかね」
僧侶「えっ!?」
狩人「私ばかり情報を与えるのは不公平と言うものだ。貴方もそうするべきだと思うのだが」
僧侶「そんなことを言われても、と言うか、気分転換になってないです……」
狩人「ああ、無理に話さなくてもいいよ。ただ、その場合は此方で勝手に判断する」
僧侶「は、話します。話しますから、そういうのはやめて下さい」
狩人「む、そうか」
僧侶「(誤解されるのも嫌だし話そう。狩人さん、あんまり興味なさそうだけど……)」
僧侶「ありふれた言葉ですけど、とても大切な人です。色々気付かせてくれた人でもあります」
僧侶「あの人、今はとても弱っているから……私が守りたいなって、そう思います」
狩人「肉体関係はあるのかね?」
僧侶「あははっ、そんなのないですよ……ん?」
狩人「……」
僧侶「に、肉体関係!? な、ないですよ!! 何を言い出すんですか!!」
狩人「これは至って真面目な質問だ。街で見た幾つかの資料にはそう記されてあった」
僧侶「……神聖娼婦、ですか?」
狩人「ああ、貴方の項目にはそうあった」
僧侶「……」
狩人「しかし、貴方を見ていると、どうもそのようには見えなくてね」
狩人「獣性を収めるだけの肉体関係では、そこまで献身的にはなれない。記載内容とは違うと思ったのだよ」
僧侶「……」
狩人「複雑な事情があるなら、話さなくても構わない」
僧侶「いえ、話します。私も、それについては整理したいと思っていたので」
狩人「……」
僧侶「私は、あの人の力になるようにと、司教様の計らいで同行することになりました」
僧侶「もしかしたら、そのような役目も期待されていたかもしれません。あの人も知っていたかも知れない」
狩人「……」
僧侶「けれど、私は一度たりとも、そのような行為を強いられたことはありません。行為を求められたこともありません」
僧侶「望まれたことも。勿論、他に何らかの理由があって行為に及んだこともありません」
僧侶「私は、そのような存在として、あの人の傍にいたことはありません」
僧侶「あの人は、そんな人じゃない……」ギュッ
狩人「……」
僧侶「今も傍にいるのは私自身の意思です。誓いも、信仰も、そこには含まれません。私が、そうすると決めました」
狩人「……そうか。済まないな、結局嫌な話になってしまった」
僧侶「いえ、話せてすっきりしました。ずっと、もやもやしていたので良かったです」ウン
狩人「それは良かったよ。しかし、別の面で気になってしまうな」
僧侶「何がです?」
狩人「いや、数ヶ月共に過ごしているのだろう?」
僧侶「はい、そうですけど……」
狩人「彼は大丈夫なのかと思ってね。性欲、それによる獣性の昂ぶりというのは馬鹿に出来ない」
僧侶「へえ~、そうなんですか」
狩人「……」
僧侶「?」
狩人「本当に、何もなかったのか」
僧侶「な、ないですってば。あの人は強いんです。そんな気持ちには負けません」
狩人「成る程、それは素晴らしい。性衝動に抗うには余程の精神力、自制心が必要だからね」
僧侶「そうです。あの人は強いんです。そういう素振りは見せたこともないですからね」ウン
狩人「ふむ」ジー
僧侶「えっ、何ですか」
たゆんっ
狩人「まあ、貴方に問題があるわけではなさそうだ。貴方を女性として見た時、興奮しない男性はいないだろう」
僧侶「興ふ………………ん!?」バッ
狩人「どの部位に興奮するのかは、人それぞれだがね」
僧侶「部位とか言わないで下さいっ!」
狩人「だとすると、彼の方に問題があるのかもしれないな」
僧侶「へっ?」
狩人「今の時代、男色の気があるのは別段おかなしなことではない」
僧侶「あははっ。まさか、あの人に限ってそんなことは有り得ませんよ」
狩人「……」
僧侶「……本気で言ってます?」
狩人「勿論だ」
僧侶「絶対に有り得ません。あの人がいやらしい目で見られていたことはありますけどね」
狩人「男性にか?」
僧侶「いえいえ、性別を問わずです。露骨にそのような誘いをする方もいましたからね」
狩人「何故貴方が誇らしげなのだ」
僧侶「それは、えっと、か、顔は良いですから。今はちょっと、あれですけど……」
狩人「顔や肉体の造形が美しいのは私も認めるよ。男性まで虜にするとは驚きだ。しかし」
僧侶「?」
狩人「しかし、それは何の証明にもならない」
僧侶「」
狩人「戦いの途絶えない旅路の中、貴方のような女性が傍にいる。その先は想像に難くない」
狩人「そう考えると、彼が何かしらの問題を抱えていると思わずにはいられないのだよ」
僧侶「問題なんてありません。あの人は男性的です。口調や振る舞いを見れば分かるでしょう」
狩人「そうは言うが、此方には助手がいる。少々不安なのだよ」
僧侶「ば、馬鹿なこと言わないで下さい!!」
狩人「証明出来るのかね?」
僧侶「出来ます!! えっと、え~っと…………!!」ハッ
狩人「?」
僧侶「も、揉まれたことならあります!」
狩人「揉まれた? それを?」
僧侶「それとか言わないで下さい」
狩人「失礼。乳房を揉みしだかれたわけだね?」
僧侶「違います。揉みしだかれてはないです。揉まれただけです」
狩人「それで?」
僧侶「それだけですけど……」
狩人「それでは何の証明にもならないだろう」
僧侶「ぐっ。もうっ、何なんですかさっきから!! 何が言いたいんですか!?」
狩人「事実を述べているまでだよ」
僧侶「事実無根です! そっちだって証明出来ないでしょ!?」
狩人「いや、私は男性として少々問題があるのではないかと言っているだけだよ」
僧侶「疑ったら何とでも言えるじゃないですか!! ないものは証明出来ませんよ!!」
狩人「ほう。随分と必死じゃあないか」ニコニコ
僧侶「ば、馬鹿にしてますねぇ?」イラッ
狩人「いや? そんなことはないよ?」
僧侶「くぅ……!!!!」ハッ
狩人「ふふっ、どうしたのかね?」
僧侶「狩人さんっ!! 貴方、本当は女性が好きなんでしょう!?」
狩人「何を馬鹿な。それこそ有り得ない」
僧侶「じゃあ証明してみて下さいよ!!」
狩人「!?」
僧侶「おやぁ? どうしましたかぁ? 早くして下さいよ、さあさあさあっ!!」
狩人「いや、私はただーーー」
僧侶「3、2、1。ほら出来ない!! 同じことですよ!! はいっ、この話は終わりっ!!」バンッ
狩人「……っ」
僧侶「(ふん、勝った。狩人さんに勝ってやった。私の勝ちだ。馬鹿なこと言うからだ)」
狩人「くっ。フフッ、アハハハッ!!」
僧侶「え?」
狩人「私はからかっただけだよ。それを貴方は、勝ち誇った顔で……っ、アハハハッ!」
僧侶「……私もからかっただけですけど?」
狩人「フ、フフッ、見え透いた嘘と、その顔はやめてくれ」
僧侶「……」
狩人「からかっただけですけど? フフッ…」
僧侶「真似しないで下さい」
狩人「フフッ…」
僧侶「ひ、人の気持ちを弄ぶなんて最低です!」
狩人「人聞きの悪いことを言わないでくれないか。貴方が勝手に話しただけだ」
僧侶「っ、屁理屈じゃないですか!!」
狩人「ちなみに、胸を揉まれたと高らかに言い放ったのも貴方だ」
僧侶「~~!!」カァァ
狩人「ハハハッ、冗談だよ。悪かったね。貴方の反応があまりに面白くて、つい」
僧侶「もういいです。真面目に考えた私が馬鹿でした」
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