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    元スレ武内P「アイドル達に慕われて困っている?」

    SS+覧 / PC版 /
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    701 :

    中身チェックしてんじゃねーよw

    702 = 669 :

    李衣菜「でも……良かった~~っ……!」

    武内P「しかし、確かによく似ていますね」

    李衣菜「ですよね!?」

    武内P「はい。多田さんが、焦って見間違うのも、無理はないかと」

    李衣菜「でも、やっぱりプロデューサーは冷静ですね!」

    武内P「あ、いえ……」


    武内P「前川さんの年齢を考えれば、当然の結果です」

    武内P「彼女は……まだ、15歳ですから」

    武内P「その……犯罪行為に、あたりますので」


    李衣菜「……」

    李衣菜「あっ」

    703 = 669 :

    李衣菜「そう、そうですよね! あ、あははは!」

    武内P「しかし、何故これを?」

    李衣菜「ちょっと……その、セクシーについて調べてて」

    武内P「セクシー、ですか?」

    李衣菜「ほら、みくちゃんって、私より歳下なのに色っぽいじゃないですか」

    李衣菜「それで調べてたら……辿り着いて」


    李衣菜「でも……良かったぁ!」

    李衣菜「秘訣は、エッチな*の尻尾じゃないんですね!」


    武内P「た、多田さん!?」

    武内P「中身のチェックを入念にしすぎでは!?」

    704 = 669 :

    李衣菜「えへへ……バレちゃいました?」

    武内P「その、そこまでチェックしたのなら、別人だと気づいたのでは?」

    李衣菜「いや、なんていうか、こう……みくちゃんだー! と思って見てたので……」

    武内P「自分で、フィルターをかけていた、と」

    李衣菜「でも……改めて見ると、やっぱり別人ですね」

    武内P「……はい、パッケージはよく似ていますが」

    李衣菜「で、でも! 口調もかなり似せてるんですよ!?」


    李衣菜「後川みくちゃん!」


    武内P「それは、完全にそっくりさんAV女優の名前です!」

    705 = 669 :

    李衣菜「いや、でも! 聞いてくださいよ、プロデューサー!」

    武内P「はい……何でしょうか?」

    李衣菜「後川みくちゃん、名前の通り後ろ専門なんです!」

    武内P「多田さ――んっ!?」

    李衣菜「だから、あー、このプロ意識はみくちゃんだ! ってなって!」

    武内P「プロですが! それは、違うジャンルのプロです!」


    李衣菜「みくちゃん、こんなロックなファックをしてるんだな、って!」

    李衣菜「……今の、ちょっとうまくないですか?」


    武内P「待ってください! そのダジャレは……仕込んでいましたね!?」

    李衣菜「……えへへ」

    武内P「えへへ、ではなく!」

    706 = 669 :

    武内P「……とにかく、その方は別人ですので、ご安心ください」

    李衣菜「でも、プロデューサー」

    武内P「あの……まだ、何か?」

    李衣菜「本当に! 本当に、似てるんですよ!」

    武内P「いえ、別人です」

    李衣菜「……本当に?」

    武内P「はい。私は、担当である前川さんを見間違う事は、ありません」

    李衣菜「……」


    李衣菜「自分がロックと信じるものが、ロックなら」

    李衣菜「自分がみくちゃんと信じるものも、みくちゃんになりませんか?」


    武内P「多田さん!? 何を言っているんですか!?」

    707 = 669 :

    李衣菜「本当に! 本っ当に、似てるしセクシーなんですよ!」

    武内P「落ち着いてください、お願いします!」

    李衣菜「こう、ちょっと無理矢理気味にされちゃうシーンがあって!」

    武内P「やめてください! 内容説明をしないでください!」


    李衣菜「みくはアイドルだもん!」

    李衣菜「おちんぽなんかに、絶対屈しないにゃ!」

    李衣菜「みくは、自分を曲げないよ!」

    李衣菜「って! もう、物凄くロックで! 格好良かったんです!」

    李衣菜「……まあ、すぐ、ふにゃああんっ、ってなっちゃうんですけど」


    武内P「あの、せめて!」

    武内P「せめて、声のボリュームを落としていただけますか!?」

    708 = 669 :

    李衣菜「くううっ! あの感動を伝えたい!」

    武内P「いえ、あの! もう十分! 十分、伝わりましたから!」

    李衣菜「見ます!? プロデューサーも、見ます!?」

    武内P「結構です! 大丈夫ですので!」

    李衣菜「大丈夫で、結構見るって事ですか!? 待っててくださいね!」

    たぷたぷたぷたぷ

    武内P「多田さ――んっ!?」

    李衣菜「えっと、シリーズ三作目の、あのシーンが良いかなぁ」

    たぷたぷたぷたぷ

    武内P「大ファンになっているじゃないですか!?」

    709 = 669 :

    李衣菜「ほら、ここです! このシーン!」

    武内P「っ!?」


    『みくは、絶対にアイドルを辞めない! 辞めたくないにゃ!』

    『だから、こんなの全然平気だよ! 我慢出来るもん!』


    武内P「……あの、本当に、いたたまれないのですが」

    李衣菜「わかります! でも、ここから! ここからですから!」

    武内P「……」


    『っ!? そ、それは……エッチなマタタビ!? ひ、卑怯にゃ!』

    『……ふにゃああんっ♡ エッチなネコチャンになっちゃうにゃああん♡』


    李衣菜「ねっ!? 言いそうじゃないですか!?」

    武内P「はい、確かに」

    武内P「……」

    武内P「いっ、いえ! 今のは……今のは、その……何でもありません」

    710 = 669 :

      ・  ・  ・

    武内P「……」

    李衣菜「見てみて、どうでした?」

    武内P「……別人では、ありました」

    李衣菜「……」

    武内P「……ですが、はい」


    武内P「非常に……その、感動しました」


    李衣菜「でしょう!? 体は屈してるのに、心は屈しないんです!」

    武内P「プレイ内容はハードですが、それ以上にストーリーの出来が素晴らしいです」

    李衣菜「ですよね!? ですよね!?」

    武内P「まさか……AVの最後のFinの文字を見て、感動するとは思いませんでした」

    711 :

    た、武内Pがおかしくなってもうた・・・。

    712 = 669 :

    李衣菜「みくちゃんだと思って見ると、こう、負けてらんない! ってなるんです!」

    武内P「はい。私も、前川さんのこの熱意に応えねば、となりますね」

    李衣菜「あっ、違いますよ、プロデューサー!」

    武内P「? はい?」

    李衣菜「後川みくちゃんちゃん、ですよ♪」

    武内P「そうですね……後川みくちゃんさん、でしたね」

    李衣菜「まさか、『ちゃん』も名前の内とは思いませんでしたよね」

    武内P「ですが、本当に……良い、AVでした」


    ガチャッ!


    菜々「し、失礼しまーす」

    夏樹「おーい、だりー! カフェで待ち合わせの約束だろ?」


    李衣菜「あっ」

    713 = 669 :

    李衣菜「みくちゃんだと思って見ると、こう、負けてらんない! ってなるんです!」

    武内P「はい。私も、前川さんのこの熱意に応えねば、となりますね」

    李衣菜「あっ、違いますよ、プロデューサー!」

    武内P「? はい?」

    李衣菜「後川みくちゃんちゃん、ですよ♪」

    武内P「そうですね……後川みくちゃんさん、でしたね」

    李衣菜「まさか、『ちゃん』も名前の内とは思いませんでしたよね」

    武内P「ですが、本当に……良い、AVでした」


    ガチャッ!


    菜々「し、失礼しまーす」

    夏樹「おーい、だりー! カフェで待ち合わせの約束だろ?」


    李衣菜「あっ」

    714 = 669 :

    また書き込みエラーが
    >>713は無しで

    715 = 669 :

    李衣菜「ごっ、ごめん! すっかり忘れてた!」

    夏樹「おいおい、しっかりしてくれよな」

    菜々「でも、普段はそういう事が無いのに、珍しいですね?」

    李衣菜「ちょっと、プロデューサーとAVを見てて……えへへ」


    夏樹・菜々「……」

    夏樹・菜々「はっ?」


    武内P「申し訳、ありません」

    武内P「図らずも、多田さんを引き止めるような形になってしまいました」

    夏樹「……な、なあ? アタシらの勘違い、だよな?」

    菜々「アニマルビデオとか、そういうオチですよね!? ねっ!?」


    李衣菜「えっ? 違うよ?」

    武内P「アダルトビデオ、ですね」


    夏樹・菜々「……」

    夏樹・菜々「はあっ!?」

    716 = 669 :

      ・  ・  ・

    李衣菜「……二人共、どうだった?」

    夏樹「どうもこうもないぜ、だりー」

    菜々「はい、言いたいことは、すっごくわかります」


    夏樹「今すぐにでも、ギターをかき鳴らしたいくらいだぜ!」

    菜々「ナナも、思いっきり歌って踊りたい気分ですよ!」


    李衣菜「だよね!? そうだよね!?」


    夏樹「あんなもんを見せられて、熱くならないわけないだろ?」ニコッ!

    菜々「ナナも、もっともっとラブリーでキュートを目指しますよっ!」ニコッ!


    武内P「良い、笑顔です」

    717 = 669 :

    夏樹「……それにしても、後川みくちゃん、か」

    菜々「……ナナ達も、負けてられませんね!」

    李衣菜「……うん、もっともっと頑張らないと!」


    ガチャッ!


    みく「おはよーございまーす」


    武内P「前川さん、おはようございます」

    李衣菜「あっ、みくちゃん! ちょうど良いところに!」


    みく「えっ、何? どうしたの?」


    李衣菜「今、皆でみくちゃんのそっくりさんのAV見てたんだけどさ!」

    李衣菜「みくちゃんも、一緒に見ようよ!」


    みく「……」

    みく「えっ?」

    718 :

    さすがの大阪人もこれには閉口する

    719 = 669 :

    みく「李衣菜ちゃん!? 何言ってるにゃ!?」


    夏樹「いや、みく。これは、一度は見るべきだと思うぜ」

    菜々「ナナは、いつでも見られるように購入しましたよ!」


    みく「はっ!? えっ!?」

    みく「み、みくにそっくりさんの……動物が出てるビデオ……だよ、ね?」


    武内P「はい、ある意味では、そうですね」


    みく「な、なーんだ! もう、ビックリさせないでよ!」

    みく「みくはてっきり……もうっ! もーう!」


    李衣菜「人間も、やっぱり動物だなぁって思うよね」

    夏樹「あの腰使い、最高にロックだったな」

    菜々「うぅ……ナナは、あの動きをしたら腰を痛めそうです」

    武内P「……笑顔です」


    みく「一回安心させないでよPチャン!?」

    720 = 669 :

      ・  ・  ・

    李衣菜「……みくちゃん、どうだった?」


    みく「……うっ……ぐすっ……ひっく!」ポロポロッ!


    夏樹「おっ、おい、みく!?」

    菜々「どっ、どうして泣いてるんですか!?」


    みく「李゙衣゙菜゙ちゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙っ!」ポロポロッ!

    ぎゅっ!

    李衣菜「みっ、みくちゃん!? ど、どうしたの?」

    みく「ごれ゙がら゙も゙頑張ろ゙うねえ゙え゙え゙え゙え゙っ!」ポロポロッ!

    李衣菜「うん……うん、みくちゃん!」

    ぎゅうっ!


    武内P「……本当に、良い、ユニットです」

    721 :

    なつななェ…
    新田さんのもありますか?

    722 = 669 :

      ・  ・  ・

    李衣菜「……みくちゃん、落ち着いた?」

    みく「……うん、ごめんね李衣菜ちゃん」

    李衣菜「いっ、良いよ良いよ、気にしないで!」

    みく「でも、夏樹チャンと菜々チャンと約束してたんでしょ?」

    李衣菜「そうだったけど……まあ、でも大丈夫!」

    武内P「はい、木村さんはギターの練習に、安部さんはウサミン星に行かれましたから」

    みく「後川みくちゃんさんのAVを見て……やる気を出したんだよね」

    武内P「そう、ですね」

    みく「……」


    みく「『みくは、Pチャンのおちんぽには負けないよ!』」


    武内P「前川さん? その台詞は――」

    李衣菜「――シリーズ、第一作目の!」

    723 :

    美波はAVの偽物の方がまともなんじゃ

    724 = 669 :

    みく「……えへへ、どうだった?」


    李衣菜「凄い……! 凄いよ、みくちゃん!」

    李衣菜「まるで、本物のそっくりさんみたいだった!」

    武内P「はい。絶対に屈しないという、強い意思を感じました」

    武内P「それと同時に、これは確実に負けてしまうだろうな、とも」


    みく「後川みくちゃんさんは、みくを演じる女優さんだったにゃ!」

    みく「でも、みくはアイドルもだけど、声のお仕事もしたいの!」

    みく「だったら、声の演技だけでも追いつかないと、でしょ!」


    李衣菜「……みくちゃん」

    武内P「……前川さん」


    みく「えへへ……ちょっと、格好つけすぎかな?」


    武内P「……いえ、そんな事は、決して」

    725 = 669 :

    李衣菜「くうーっ! 今のを聞いて、思い出してやる気出てきたよ!」

    みく「にゅっふっふ! それじゃ、どんどんいくにゃ!」


    みく「『にゃあんっ♡ Pチャン、凄いにゃああんっ♡』」

    みく「『こんなに激しくされたら、変になっちゃうよぉ♡』」

    みく「『あっ♡ にゃっ♡ にゃうんっ♡』」


    李衣菜「凄い……! みくちゃん、本当に凄いよ!」

    武内P「前川さん、とても、良い声が出ています」


    みく「もっ、もう!/// そんなに褒めないでっ!///」

    みく「『……にゃああっ♡ もう、もう限界にゃっ♡』」

    みく「『見ててっ♡ エッチなみく、ちゃんと見ててえっ♡』」


    李衣菜「最高だよ、みくちゃん!」

    武内P「はい……とても、輝いています」


    みく「『にゃあああああんっ♡』」

    726 = 669 :

      ・  ・  ・

    武内P「――えっ!?」

    ガタッ!

    ちひろ「心当たりは……ありませんか?」


    武内P「前川さんの……AV撮影、ですか……?」


    ちひろ「はい」

    ちひろ「カメラマンは……その、李衣菜ちゃんという噂が」

    武内P「多田さんが!? あの、何かの間違いでは!?」

    ちひろ「……本当に、間違いは無かったんですか?」

    武内P「千川さん?」


    ちひろ「相手は、プロデューサーさん」

    ちひろ「撮影場所は、此処だという話ですよ」


    武内P「……」

    武内P「えっ?」

    727 = 669 :

    ちひろ「プロジェクトの、他の皆が声を聞いたらしいんです」

    武内P「待ってください! 誤解です!」

    ちひろ「みくちゃんが、プロデューサーさんに挑んで負けた、って」

    武内P「そ、それは、演技です!」

    ちひろ「……そうですよね、そういう撮影だったら演技しますよね」

    武内P「っ!? ち、違います! その、こちらを見てください!」

    たぷたぷたぷたぷ

    ちひろ「これは……みくちゃんじゃないですか!?」

    武内P「いっ、いえ! こちらの方は、後川みくちゃんさんという別人で!」

    ちひろ「や……ヤダ……ハード……!///」


    武内P「前川さんは、後川さんを演じていただけなのです!」


    ちひろ「えっ、と……そういう裏の芸名って言う事ですか……?」

    武内P「増々誤解です! そういう意味ではなく!」

    728 :

    本物のそっくりさんってややこしいな!

    729 = 694 :

    男優は武内Pのそっくりさんの明智Pとかかな?

    730 = 669 :

    武内P「こちらを見ていただければ、わかります!」

    ちひろ「みっ、みくちゃんのあられもない姿を見ろと!?」

    武内P「みくちゃんさんの作品は、本当に感動しますので!」

    ちひろ「何を言ってるんですか!?」

    武内P「お願いします、千川さん!」


    武内P「どうか……どうか、このAVを見てください!」


    ちひろ「そっ……そんな事言われても……!?」オロオロ!

    武内P「お願いします、千川さん……!」

    ちひろ「あ……あぅ……!?///」オロオロ!

    ちひろ「どうして……そこまで私に見せようとするんですか……?///」オロオロ!


    武内P「私はこれを見ると……とても、やる気が出ます」


    ちひろ「……やる気、って……///」

    ちひろ「……はぁ……ふぅ……///」

    ちひろ「わっ、わかりまし!/// で、でも――」


    ちひろ「撮影するのは、無しですからねっ!?///」



    おわり

    731 :

    武ちひもたまにはいいよね
    続きはよ

    732 :

    しぶりんの策略でとときら学園に出ることになった武内P

    733 :

    雪山で遭難して裸で温めあうしかない状態になったアイドル/ちっひ
    複数人だったらバトルロイヤルしか起きないか

    734 :

    雪山遭難やゴンドラ停止の密室状態って良いよな

    735 :

    かな子が一番あたたかい

    736 :

    何故かマンアフターマンと言う単語が脳裏をよぎったわ

    737 :

    これしぶりんが私も撮影してよって来る流れじゃないのか…
    しぶりんがハメ撮りを迫るのは絶対同人誌でありそう(あるの?)

    738 :

    ちっひ誤解してヤル気満々になってるけどこの後どうなるんやろなあ

    739 :

    某芸人コンビみたいに勘違いしたまま話が進んで後戻り出来ない状態に…ね

    740 :

    アイドルとして手違いでプロデュースされるちひろさんください!

    741 :

    ちっひすこ

    742 :

    未成年とAV見てる時点でアウトだろ

    743 :

    いうほどアウトか?

    744 = 741 :

    やっぱりアウトか

    745 :

    >>740
    書きます

    746 = 745 :


    「その……どうぞ、自己紹介を」


     会議テーブルの中央、右手を首筋から下ろしたプロデューサーさんが、声を発した。
     オーディションの最中だって言うのに、その口調はぎこちない。
     表情に乏しく、感情表現も小さい彼だけど、その戸惑いがこちらにも伝わってくる。
     でも……わかります、その気持ち。


    「……千川ちひろ、です」


     だって、プロデューサーさんがオーディションをしているのは、私なんですもの!
     346プロダクションは大手なだけあって、オーディションに使用する椅子も質が良い。
     折りたたみタイプの椅子なのに、座り心地は良いんだけど……とにかく、居心地が悪い。
     だって、自己紹介も何も、同じ職場で働く仲間じゃないですか!


    「それだけかね?」


     プロデューサーさんの隣に座る、今西部長がニコニコと笑いながら問いかけてくる。
     人好きのする、相手の警戒心を解いてしまいそうな表情。


     でも、この状況を作りだしたのは、この人なのだ。


    「年齢は? 申し訳ないが、プロフィールが用意されていなくてね」


     以前から、346プロダクション内で、サービス残業、そして、休日出勤は問題になっていた。
     見かねた専務が、社内改革の一つとして、その問題の改善に取り組んでいたの。
     私も、専務のその取り組みには大いに賛成だったのよ?
     だって、プロデューサーさん、明らかに働きすぎですもの。


    「……25歳、です」


     だから、今日も無理をしてるんじゃないかって、事務所の近くに来たついでに、差し入れを。
     そうしたら、案の定昼休みを返上してまで作業に、没頭してて……。
     そんなの見たら、ちょっと位手伝いたくなっちゃっても、仕方ないですよね!?
     それで、事務作業をしている間に、プロデューサーさんに休憩に行って貰ってたら――


    「む? 26歳じゃなかったかな?」


     ――……プロデューサーさんを尋ねてきた、今西部長に見つかっちゃったの。
     部長は、私が休日だと知っていて、
    それでプロデューサーさんが無理をしていないか確認しに来たみたいで。
     当然、どうしてプロジェクトルームに居るのか問い詰められたわ。
     あの時、PCの前で固まっていず、すぐにでも逃げ出してれば!


    「25歳です!」


     こんな事には、ならなかったのに!


    「おうおう、こりゃあ元気で宜しい!」


     ――ははあ、さては、アイドルのオーディションを受けに来たのかい?


     ……だなんて!
     何が、さては、よ!

    747 = 732 :

    千川さんマジ天使

    748 = 745 :


    「……!」


     膝の上で作った握りこぶしをギュッと握り、プロデューサーさんを睨みつける。
     今西部長が、たまにこういった悪ノリをするのはわかってましたけど!
     プロデューサーさんが、そういうのに逆らえない人だとは知ってましたけど!
     今度、絶対埋め合わせはして貰いますからね!?


    「その……ふ、普段は、何をなされているのですか?」


     マニュアル通りの、無難な質問。
     プロデューサーさんも、この状況に混乱してるみたいだけど……。
     でも、だからって、本当にオーディションの手順を踏む事は無いと思うんです。
     そもそも、貴方が仕事の虫でなければ、こんな事に……って、これは八つ当たりよね。


    「はい。とても……と~っても! 仕事熱心な方の、サポートをしています!」


     八つ当たりとわかってはいるけど、しないとは言ってません。
     プロデューサーさんは、言葉に詰まると、
    ポケットから青いハンカチを取り出し、額の汗を拭った。
     その、一挙手一投足をジッと見つめながら、無言で抗議する。


    「は、はい……とても、助かっています」


     大きな体が、まるで一回り小さくなったかのように、私には見える。
     そんな私達のやり取りを見ながら、今西部長はニヤニヤと笑っている。
     んふふ、と笑いながら頬杖をつくなんて、審査員としてちょっと態度が悪いんじゃないですか?
     プロデューサーさんから視線を外し、今西部長をキッと睨みつける。


    「ほほう、休日出勤もしてしまったりする程……君も熱心にサポートを?」


     ……ずるい! 本当、ずるいですよ、部長!
     そういう事を言われたら、何も言えなくなっちゃうじゃないですか!


    「だけどね、安心してくれたまえよ!」


     部長が、椅子に深く腰掛け直しながら、言う。



    「うちは今、サービス残業や休日出勤は厳禁の、ホワイト企業だからね!」



     ははは、と笑いながら、隣に座るプロデューサーさんに同意を求める、部長。
     しどろもどりになりながら、そうですね、と、小声で言葉を返している、プロデューサーさん。


     これは、お説教なのだ。


     何度注意しても直らない、私達の悪癖を矯正するための、一風変わったお説教。
     それは、わかってるんです。
     わかってるんですけど……!


    「それじゃあ、次の質問に移ろうか!」


     何で、そんなに楽しそうなんですか、部長!

    749 = 745 :

      ・  ・  ・

    「そうかそうか、そのプロデューサーは困った奴だねぇ!」


     いくつか質問をされる度、ふつふつと、それまでとは違う怒りがこみ上げてきていた。
     最初は、この状況に対する憤りだったけど、それとはまた別。


    「ええ……いつか倒れちゃうんじゃないかと、心配です」


     そう言って視線を向けると、右手を首筋にやって、困ってる。
     困ってるんだけど、私の小言は、ちゃんと届いてないみたい。
     ため息をつきたくなるけれど、もう、慣れちゃいましたよ、プロデューサーさん。
     そんな貴方だからこそ、手伝ってあげなきゃって思う私も……大概ですけど。


    「……部長、そろそろ時間が」


     プロデューサーさんが、そろそろ切り上げ時だと、時計を見ながら言う。
     流石に、これが私達に対するお説教だと察したみたいだけど、その効果はあまり無さそう。
     真面目で、誠実で、不器用で……とっても、頑固な人。
     もう少し、自分のことを顧みて欲しいと思うのは、同僚として、当り前だと思います。


    「おや、もうそんなに経っていたかね?」


     ようやく解放される……そう、思うと同時に、まだ、言い足りないとも思う。
     言っても意味がないのはわかっているけれど、それでも言わずにはいられない。
     もう……本当に、どうしたら。


     どうしたら、貴方に――プロデューサーさんに、思いが伝わるのかしら。



    「それじゃあ、何か一曲歌って貰おうかな」



     …………。


    「はいっ!?」


     ぶ、部長!? 今、何て言ったんですか!?
     聞き間違いだとは思うんですけど、歌えって……言いました!?


    「ん? どうしたのかね?」


     ニコニコと笑いながら、部長は机の上に両肘をつき、組んだ手の上に顎を乗せる。
     その、有無を言わさない様子に、私は、視線でプロデューサーさんに助けを求めた。


    「っ……!?」
    「……!」


     目と目が、合う。
     しかし、私が送った救難信号は、何の手違いか、



    「『お願いシンデレラ』なら……すぐに、曲を流せますが」



     私が望んだものとは、まるで違う手助けをするという行動をさせるに至った。

    750 = 745 :


    「ぷっ、プロデューサーさんっ!?」


     貴方まで、何を言い出すんですか!?
     部長のわるふざけに付き合ってないで、真面目に……あっ、駄目。


    「はい? 何か、問題でも?」


     プロデューサーさんは、いつもの調子に戻っている。
     いつもの、アイドルをプロデュースする時の、普段の調子に。
     でも、待ってください! 私、アイドルじゃないですよ!?
     貴方の同僚の、事務員ですからね!?


    「オーディションで歌うのに、何の問題もないさ」


     部長は、プロデューサーさんがこういう反応をすると予想していたのだろう。
     そもそも、この人達は、少し感覚が麻痺している部分がある。


     人前で、歌わせる。


     ……それが、彼らにとっては当り前の事で、
    また、それを求めた相手は、いつもそれに応えてきたのだ。


    「そうだろう? 千川くん」


     それに、どうやら部長は、これも私への罰のつもりでいるらしい。
     そうでなきゃ、そんなにニヤニヤ笑ってるはずがありませんものね!
     本当、意地が悪いんですから!


    「……」


     プロデューサーさんは、カタカタとノートPCを操作している。
     きっと、『お願い! シンデレラ』のBGM部分をあそこから流すつもりでいるのだろう。
     ……ああ、もう……本当に……?
     やめてください……音量だけじゃなく、微妙に音響も気にしないで良いですから!


    「……はい、いつでも、大丈夫です」


     プロデューサーさんは、コクリと頷いた。
     アイドルの子達は、この様子を見ると、とても勇気づけられた、良い表情をする。
     でも、今の私の表情は、色々な感情によって、どう表現したものか迷うものになっている。


    「ささ! 時間も無いんだ、立って立って!」


     部長が、両手で立ち上がるように指示してくる。
     差し入れをするために立ち寄って、すぐに帰るつもりだったのに。


    「……どうして、こんな事に」


     はぁ、とため息をつく。
     ため息をつくと幸せが逃げてしまうと言うけれど、
    もう、多少幸せが逃げた所で、この状況に変化は無いのだから、構わない。


    「――千川ちひろ、歌います!」


     もう、ヤケよ!


    「『お願い! シンデレラ』」


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