元スレ咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
201 :
ネリー可愛い
202 :
まーた連絡先をしつこく聞くのかこのピンクは
203 :
今日の夕方から夜多少短いですが更新します
一応なんですが和はっていうか咲和は好きなので和を悪く書いたりはしないです
204 :
だろうね。せっかく臨海に入ったんだからネリーやガイトさんと絡ませてくれてもいいのに相変わらず和出すから丸わかりだよ。
205 :
>>204
和咲アンチさんちーっす!
206 :
>>204
ネリ咲や臨海と咲も親密だからそんな目くじらたてなくても大丈夫だぞ?
208 :
この話はどう見ても咲ネリーだろww節穴かよwwww
209 = 203 :
咲「へ?」
和「まさか……まさか、本当に会えるなんてっ!」
和「咲さん咲さん咲さんっ! お久しぶりですっ!!」
穏乃、玄、宥、憧、晴絵「っ」ビクッ
咲「え……ええっと……?」
和「去年のインターミドル以来ですね。あの日は咲さんが忙しくあまり話せなくてずっと心残りでした」
和「せめて連絡先を渡せていれば。長野で進学する事になっていたので当時はこれからいつでも、と勘違いして必死にならなかったのが悔やまれます」
和「東京に、いってしまっていたんですね」
和「でも過ぎた事を言っても仕方ありません。こうしてまた会えた……それだけで私は……私はっ……」
憧(和ガチ泣きしてるんだけど……え? どういう事?)
咲「?? あの、人違いじゃ……」
和「咲さんっ!」
ぎゅっ
咲「ひぅっ!?」
和「あの子より先に会えた……これはきっと、運命なんですよね……」
憧「ちょっと、あれ誰よ。さっきまでと違いすぎんだけど」ヒソヒソ
玄「さ、さあ……誰なんだろう」ヒソヒソ
穏乃(ううっ……私と再会したときより喜んでない……?)ガクッ
和「咲さん……」
咲「……」ガクガクガクガク
憧「あれちょっとヤバイよね。止めてくる」
玄「わ、私もいくよ」
穏乃「……」ガクリ
憧「あ、あのさ和、そろそろ離してあげたら……?」
和「え? ああっ、何やら咲さんが苦しそうにっ」
ばっ
咲「あ……な、なにが……」ふらっ
玄「おっと、大丈夫ですか?」
咲「あ……ありがとうございます。受けとめてくれて」
玄(おもちないなぁ……)「いえいえ、気にしないでください」
210 = 203 :
咲「ふう……」
和「咲さんっ!!」
憧「ちょっとタンマ」和ぐいっ
憧「あの子誰なのよ? ただの知り合い……にしては反応がすごいけど」
和「一言でいうと私がこの世で最も尊敬する人です。中学時代にみた闘牌に心奪われてしまったんです」
憧「尊敬……にしちゃ」
憧(てか力強っ、私じゃなきゃ押さえつけられないな)
和「はあああ……っ」ジーッ
咲「っ……」身構え
和「艶々とした茶色い髪、くりくりした瞳、そしてたおやかさの中にも凛々しさを秘めたお顔……」
和「はああっ……咲さんを越える生き物はこの地球に存在しません」
晴絵(数年ぶりに会った教え子がおかしくなってた)
憧(どう収拾つけんのよこれ)
憧「あーそっちの咲さん……だっけ? も混乱してるみたいだし、まず挨拶しようよ」
憧「私たちにも紹介してほしいし」
和「そ、そうですね。興奮のあまり先走ってしまいました」
咲「っ……」感謝の視線
憧「あたしは新子憧。阿知賀女子の一年。奈良代表ね」
咲「あ、あの……宮永咲。臨海女子の一年……東東京代表です」
玄「松実玄なのです」
宥「松実宥。玄ちゃんの姉だよ」
灼「鷺森灼……よろしく」
憧「んで、あっちでがっくりしてるのがシズ……高鴨穏乃」
憧「あと監督の……晴絵っ、何ぼさっとしてんの」
晴絵「あ、ああ……赤土晴絵。阿智賀女子の監督だ」
211 = 203 :
憧「あたしと穏乃は一年だから敬語はいーよ。よろしく」
咲「う、うん……よろしくお願いします」ぺっこりん
憧「あはっ、微妙に敬語混じってるよ」
和「……」ムスー
憧「って、なんでむすっとしてんのよ」
和「……いえ。置いてきぼりだったので」
憧「あはは、あんたも紹介したら?」
和「もう憧、冗談が過ぎ」
咲「あの……どなたですか? できたら紹介してもらいたいんですけど……」
212 = 203 :
憧「えっ?」
玄「和と知り合い……じゃなかったのですか?」
咲「は、はい。その……初対面だと思うんですけど」
憧(ええ……和?)
和「」
憧(あ、死んでる)
灼「一応紹介してあげた方がいいと思……」
憧「……あー。こっちで土気色の顔してるのは和。原村和ね」
憧「あたしが言うのもなんだけど、去年のインターミドルチャンピオンで結構有名人よ」
晴絵(インターミドル……宮永咲……はっ!)
咲(原村和……あれ、どこかで……)
咲「よ、よろしくお願いし」ぺっこりん
和「うっ、うううううっ……!」
憧「またガチ泣き!? ……ってまあしゃーないか」
和「そ、そんなぁ……何かの冗談ですよね。そんなオカルトありえませんよぉぉぉっ……」
和「インターミドルで何度もお会いしましたよね!? いやほとんど私が会いにいったんですが……それでも、それでもっ、覚えてないなんてあんまりですよぉぉ……」
213 = 203 :
咲(インターミドル……ピンクの髪……あっ!)
咲「お、思い出しました!」
和「っ!!」
咲「インターミドルで何度も会いに来てくれましたね……あの、そのときはそっけなくしてしまってごめんなさいっ」頭下げ
和「さ、咲さん……」
咲「中学のときは麻雀をやめるつもりで……これからも続けそうな相手とは親しくしないようにしてたんです」
咲「原村さんはとても上手かった印象があるので……これからも麻雀していくんだろうなって」
咲「あの、あんな冷たくして許してもらえないと思いますけど……本当にごめんなさい!」
和「……」
憧(なるほどねー。そういう事情か)
憧(よかったじゃない、和)
214 = 202 :
【速報】ピンク、許される
215 = 203 :
咲「原村さん?」
和「……」
咲「……」
和「……」
咲「……あ、あの……」
和「結婚しましょう」
咲「えっ!?」
他一同「っ!?」
和「咲さんのつれない態度にはそんな理由が……嫌われていなくて本当に安心しました。これはもう婚約まったなしですね」
咲「え……いやその、昔もなんですけどちょっと怖っ……」
和「屠殺場の豚をみるような視線に最初こそ反発しましたが……なるほど。今ではむしろ興奮するくらいなので一向に構わなかったんですけど、ふふ……優しくされるというのもいいものですね。やはり咲さんは女神でした」
咲「あ……あのう…………」ガクガクブルブル
和「咲さん、結婚しましょうっ!」
咲「ひうっ」
憧「やめんか」ぽこっ
和「あたっ、何するんですか憧、今いいところ」
憧「いやいや明らかにドン引かれてるでしょ。気づきなさいよ」
和「え……そんな……っ」
和「そうなんですか、咲さん……?」
咲「えっと、あのっ……もうちょっと落ちついて話しましょう」
咲「友達になろうって言われたあのとき……本当は嬉しかったので」
咲「これからも仲良く……してください」
和「さ、咲さぁん……」ウルウル
憧「あんまり甘くするとつけあがるわよ」
宥「け、結婚って……」赤面
玄「結構アグレッシブだったんだねえ……」
216 = 203 :
咲「あの……原村さん……」
和「私の事は和と呼んでください」
咲「え、でもまだ……」
和「和で」
咲「……和ちゃん」
和「はい。なんでしょう?」
咲「ええっと……実は私迷子になってて……」
咲「だから、早いうちに戻らないといけなくて」
憧「そういや会ったときなんか途方に暮れてたわね」
宥「迷子……あったかくないよぉ……」
玄「ふむふむっ、ここは、名探偵玄ちゃんの出番」
和「大変じゃないですかっ!」
和「携帯でチームメイトに連絡はとれないんですか?」
咲「きのう充電し忘れたから電池が切れちゃってて……」
和「番号は覚えてませんか?」
咲「番号……? あっ、電話番号の事だね」
咲「番号は……えっと」
和「……」
咲「……覚えてない」
憧「そうすると連絡とるのは難しそうね」
憧「晴絵、臨海女子の監督と知り合いだったりしないの?」
晴絵「いや……臨海女子に知り合いはいないな」
217 = 203 :
灼「八方塞が……」
穏乃「じゃあさ、控え室の場所は?」ピョコッ
憧「あっ、復活した」
咲「控え室……わからないです」
穏乃「だめかぁ……」
晴絵「無闇に探し回るよりいっそ抽選会で探した方がいいかもしれないね」
憧「どうする?」
咲「……抽選会で探します」
憧「んじゃ決まり。それまで一緒にいよっか」
咲「ありがとうございます……っ」
憧「あはは、そんなかしこまらなくていーよ」
咲「心細かったので……それにさっきは和ちゃんとの間に入ってくれて助かりました」
咲「新子さんがとりもってくれなかったら……」
咲「……」和の荒ぶりっぷりを思い出す
憧「うわ震えてる……まあ災難だったね」
咲「あの……憧さんとお呼びしてもいいですか?」
憧「え? ああ、もちろんいいけ……」
和<●><●>
憧「ど……ってうわっ!」
憧「……なに和?」
和「いえ? 憧はずいぶん慕われたみたいだなーと」
憧「……どうしろってのよ」ハァ
和「まあさっきは私も助けられました。なのでとやかく言えませんね」
和「あくまでっ、正妻の座は渡しませんが!」
憧「狙ってないんだけど」
憧(そもそも、あたしが好きなのは……)ちらっ
218 = 203 :
憧(シズの鈍感っ、何か言いなさいよっ)
玄「話についてけないよ……名探偵玄ちゃんの出番……」
宥「玄ちゃん、元気だして」
玄「うわーん、おねーちゃーん」だきっ
宥「よしよし」
灼「賑やかすぎ……」
晴絵「あはは、人数的には二人増えただけなんだけどねえ」
憧「ねえ晴絵、とりあえず控え室にいってから抽選会にいくの?」
晴絵「ん、そうなるかな。じゃあいこう……」
はやり「ーー」テクテク
晴絵「か……」
はやり「? ーーあっ!」
ダダダダッ
はやり「赤土晴絵さん? 赤土晴絵さんだよね?」
晴絵「み、瑞原プロ……」
憧、和、玄、宥、穏乃「プロっ!?」
灼「……」
はやり「いやあ久しぶりだね☆ 元気にしてた?」
晴絵「は、はあ……まあ」
はやり「しかも咲ちゃんまでいるっ☆」
咲「は、はやりさん……」
はやり「やっほー☆ なんだかびっくり箱みたいなメンバーだねっ☆」
憧「ねえあれって牌のおねえさんの人よね」ヒソヒソ
宥「う、うん、テレビでみたことある」ヒソヒソ
玄「おもちおっきいのです」ヒソヒソ
灼「あのプロきつ……」ヒソヒソ
219 = 203 :
はやり「はやりはインターハイで解説求められるらしいから下見にきたんだ☆ みんなは今から抽選会?」
晴絵「え、ええ……控え室にいったら向かう予定です」
はやり「ん~? なんだか固いなあ☆ 久しぶりだからしょうがないっか。それじゃ特定の出場校とあんまり話しちゃいけないらしいから、はやりはそろそろいくね☆」
はやり「またね晴絵ちゃん、咲ちゃんっ☆」
はやり「はやや~☆」手振り振り
晴絵「はは……嵐みたいな人だ」
咲「……ふふ」
穏乃「はあ……びっくりした」
憧「心臓に悪いわよ」
和「ふむ……あの服装、趣味が合いそうです」
晴絵「まあとにかく控え室に……ってか和、戻らなくていいのか」
和「咲さんがここにいるのならば話は別です。帰るのは延期です!」
憧「それでいいのか清澄……」
和「ふふふふ……抽選会で戻れば大丈夫です。これで暫く一緒ですね咲さん♪」
咲「う、うん」
穏乃「和といられるけどなんか複雑……」
憧「あれに対抗しても馬鹿らしいわよ」
和「咲さん手を繋ぎましょう」
咲「えっ? えっと……うん、わかった」
和「っ!!」ぱぁぁっ
憧「まあ思ったより無害よね」
220 = 203 :
抽選会 会場道中
和「え……咲さん、クラスメイトさんはご存じで?」
咲「うん。ご存じ……っていうか三年同じ中学で麻雀部だったし」
咲「クラスメイトちゃんの事……知ってるの?」
和「ーーーー」
灼(和って人の表情、筆舌に尽くしがた……)
和「う……意識が飛びかけました。これが敗北の味、ですか」
咲「敗北?」
和「はい。ですが私は倒れませんっ、咲さんの心を射止めるまでは!」
咲「は、はあ……えっと」
憧「適当に流しときなって。やばくなったら止めたげるし」
221 = 203 :
抽選会 会場付近
憧「おわ、人だかり」
玄「ここは密集具合が段違いだね……」
宥「あったかい……かも」
晴絵「灼、人込みに飲み込まれないようにしろよ」
灼「心配しすぎだと思……」
和「あああっ……ついに着いてしまいました」
咲「また会えるよ」
和「そうですよね! 私たちは赤い糸で結ばれてますから!」
……キー…… サ…… サキー……
和「あれなんでしょう?」
咲「この声……もしかして」
ネリー「サキーっ!!」
咲「うわわっ」
だきっ
和「くぁwせdrftgyふじこlp」
咲「ネ、ネリーちゃん……いつも言ってるけどいきなり抱きつくのは」
ネリー「えへへっ、ごめんごめん」
和「いつも!? いつもって言いました今!?」
智葉「やれやれ、こんなところにいたか」
ダヴァン「サキの迷子癖にも困ったものデス……ハフッハフッ」
ハオ「メガンのそれのが百倍迷惑なんだけど……」
明華「とにかく見つかってよかった。咲さん、ご無事でしたか?」
穏乃「あ、あわわわわわっ」
玄「が、外人さんがいっぱいなのです」
宥「あったか~い」
灼「制服着てない人多……」
222 = 203 :
晴絵(これが留学生軍団、臨海女子……世界ランカーに去年の個人三位。文句なしの強豪)
和「そんなにひっついて! 離れなさいっ、馴れ馴れしいですよ!」
ネリー「サキ、何このピンクおっぱい?」
咲「原村和ちゃん。中学のときの……えっと知り合い。さっき会って一緒にいたんだ」
ネリー「ふーん」
和「咲さんなんなんですか、このちびっこは!」
咲「同じ臨海女子で留学生のネリーちゃん。友達だよ」
和「なっ」
ネリー「ふふん、なるほどね。よろしく『知り合い』のノドカ」
和「くううっ……」
憧「まあーた火種か」
智葉「とにかく抽選が始まる前に見つかってよかった。携帯も通じないから肝を冷やしたぞ」
咲「うう……ごめんなさい……」
明華「まあ結果よければ、ですよ。次から気をつけましょう」
咲「はい……」
和「咲さんの隣に座るのは私ですっ!」
ネリー「ノドカは永水の席に座った方がいいんじゃない?」
咲「の、和ちゃん……自分の学校のとこ戻らないとまずいよ」
和「くっ、この場は預けます。でも勘違いしないようにっ」
和「咲さん、また会いましょうっ! というか会いにいきます!」
ダダダダッ
ーー只今より、インターハイ本選、組合わせ抽選会を行いますーー
ネリー「おかえりっ、サキ」
咲「ただいま」
223 = 203 :
ここまで
シノハユ知識ほぼなしで大人組の呼び方だけ表みつからなかったので間違いあったらご容赦
224 = 202 :
乙
淫乱ピンクの闇は深い……
225 :
凄く面白い
226 :
ネリーと咲のプラトニックさに対してピンクの露骨さよ…
227 :
乙
シズ頑張れ憧も頑張れー
228 :
これはネリーを応援するしかあるまい
乙っす
あ、そういえば>>84の絶賛する風越と清澄の部長ってキャプと部長?
だとしたら咲さんと面識あるんかな?
229 = 202 :
和がクラスメイトの話題振ったのは清澄にいるのか、風越の大将だったからなのか?
230 :
あと一人の大将は誰だろうな
池田が咲を知ってたわけはなさそうだし
金角ちゃんか?
231 :
>>228
いちいちネリーネリーウザい
まるで咲和が嫌みたいだが>>1が書くの黙って見てろ
232 = 208 :
今更ながら衣がインタビューに答えててワロタwwww
233 :
正直和に頑張って貰いたい
咲和って半公式みたいなもんだし
234 :
いやでも、二次創作だからこそ俺は咲ネリーの方がいいかなって思うけどね
235 :
触るなって
236 :
風越の大将は金角ちゃんではないです
投下します
237 = 236 :
まどろみの中で記憶がおぼろげに映し出される。
今はもう懐かしく、けれど未だ心を締めつけるありし日の残照。
蓋をしてしまった思いで。
「もう一度よ。咲、もう一度」
幼く、まだ咲が九九も暗唱できなかった頃、母は口癖のようにそう口にした。
教育熱心だったのだろう。
物心がついてすぐ様々な習い事を勧められ、姉の照と同様、多くの習い事に時間を費やしていた。
そこらの教育ママの方針とやや毛色が違ったのは、バレエやスケートといった一芸で勝負する世界ではなく、茶道華道といった教養として通用するものに徹底していた事。
だから咲は、周囲の大人たちは、夢にも思わなかった。
タレント性のみではなく、プロとして暮らしていくのに必ず相応しい実力がなくてはならない麻雀に打ち込ませるとは。
「あなた達には才能がある。凡人が及びもつかないほどの」
その一言で姉妹の教育方針は一変した。今まで熟してきた習い事など忘れろとばかりにすっぱりとやめさせ、母が抱える大勢の部下はあたふたしていたが。まさに鶴の一声で、仰々しい名前のつく茶道華道の家元とのあいだに生じた問題も切って捨てる。
その際に被ったらしい少なくない損失、それを歯牙にもかけず、強行した母に疑問を呈す者もいたようだが、幼い咲には察しかねる話だった。
とまれ、才能を見いだされ麻雀の腕を磨く幼少時代を姉ともども過ごす事になった。
しかし母の意向といえど、麻雀は好むところであったので、姉妹はむしろ望んで打ち込んだ。
プロ雀士のような講師を雇わず、内実は終始『家族麻雀』であったのは資金や人脈に糸目をつけない母にして奇妙ではあったが、咲にそのへんの機微を理解するにはまだ幼く、勧められるまま『家族麻雀』に没頭した。
「もう一度よ。咲、もう一度」
それが母の口癖だった。
238 = 236 :
「そうね……真剣さが足りない。お年玉を賭けましょう」
姉妹ははた目にも素晴らしい麻雀の才を有し『家族麻雀』でたゆまず努力を積み重ねたが、どうしても実力が伸び悩んでしまう時期があった。
そんなとき母が提案したのは、子どもの貴重なお小遣い源であるお年玉を賭けるというものだった。
姉妹はささやかな反発こそしたが、有無を言わせぬ母の語り口と、少なくとも負けなければ減りもしない、という説明で渋々受け入れた。
そして姉妹はめきめきと腕を上げていく。中でも咲の成長は目覚ましく、姉の一歩上をいっていた。
照「咲っ、もう一回! もう一回勝負して!」
負けん気の強い姉はその事実に屈せず、姉妹の勝負は白熱した。しかし咲は勝ちに頓着しない。実力の優劣にもこだわりがない咲にとって姉の情熱は少しばかり重く、辟易としてしまう事もあった。
ただ結局のところ、大好きな姉と卓を囲める。それだけで咲は楽しかった。咲は、咲なりに麻雀を楽しんだ。姉も、姉なりに楽しんでいたろう。二人は仲睦まじい姉妹だった。
詰まるところ何も問題はなかった。あの日までは。
239 = 236 :
咲「うわあっ! すごいっ、きれいだよおねえちゃんっ!」
照「高いから気をつけて。落ちたら危ない」
その日。咲は、小高い山々が連なる、山頂からの景色が一望できる場所に来ていた。
そこから見渡す景色は壮観。
心の奥底まで訴えてくるプリミティブな情動に刺激された咲は、喜色に溢れた声でしきりに感嘆した。
照「……綺麗だね。ずっとこうしていたい」
咲「今日は麻雀の練習はおやすみだっていってたよ」
手ごろな場所に座り、地べたの感触を確かめる。天候の影響もなく快適な座り心地だったのでこれ幸いと座り込む。
照「咲……おいで」
手招きする姉に促されるまま姉の膝の上にちょこんと乗る。
姉妹の体格にあまり差はない。妹の気遣いに姉はふっと笑みを零して返す。
そこからの記憶は曖昧だ。不鮮明な映像が、切れ切れに脳裏をよぎる。
そしてーーーー
咲「リンシャンカイホー? 何それ」
照「麻雀の役の名前だよ。『山の上で花が咲く』って意味なんだ」
咲「咲く? おんなじだ! あたしの名前と!」
照「そうだね、咲。森林限界を超えた高い山の上、そこに花が咲くこともある」
照「咲、おまえもその花のように、強くーーーー」
今と昔を繋ぐ言葉。姉の言う通りの強さを手に入れようと思った。
狂おしく咲き乱れる桜に人が心奪われるように、私もまたそんな花であろう。
咲き誇る花のイメージ。嶺山開花。
それはーーーー
咲「カンっ!」
咲「ツモ……リンシャンカイホー!」
家族の仲を裂く引き金となった。
「咲、あなたその打ち方、どこで覚えたの?」
「やめなさい……その打ち方は」
「あなたにはもっと相応しい打ち方がある。誰もたどり着けない、考えもつかない、神に愛されたものがなせる闘牌。あなたにはそれができる」
「才能を示すものは、すべからくそれを磨く義務が生じる。腐らせてはならない」
「……一見華々しく見えるそれは、あなたの才能を曇らせる……」
「だから、そんな打ち方はやめてしまいなさい」
「そう……それは照から教わったの」
「大丈夫。怒ったりしない。咲のためを思ってしたことだもの」
「姉はいつだって妹を想っているもの」
「……あなたは、その打ち方さえやめればいい」
暗転。
240 = 236 :
智葉「宮永、上がったか」
咲「はい先輩、……みていたんですか?」
合宿所の練習ルーム、その一室。広々とした部屋の壁に背を預けていた智葉が、対局を切り上げた咲に声をかけてくる。
智葉「様子を見ておきたかったんでな。調子はどうだ?」
咲「……正直、エンジンがかかりすぎて……力を制御しきれてない感じです」
咲「見苦しいところをお見せしました」
智葉「気にするな。それより……何かあったのか」
尋ねるというより確認する風に話す智葉にぎくりとした。
咲「鋭い……ですね」
智葉「そんな事はいい。話せるのなら聞いておく」
咲「……強い人と戦ったんです。その影響で」
智葉「そうか……稀にある事だな」
智葉「相手は?」
咲「えっと……それは」
衣の屋敷に出向いて対局した事は伏せたい。はやりとの関係も露呈するかもしれないから。
今さっき対局したばかりの部員も居合わせている。
どうしよう……答えないとまずいかな。
言い淀んでしまう。しかし智葉から追及はなかった。
咲「……その……」
智葉「いや、いい。忘れてくれ」
「無理はするな」とだけ釘を刺し、踵を返す智葉。
智葉「ネット麻雀の用意をさせておいた。慣らしに使えそうなら使え」
咲「わ、わかりました」
どこまで見抜いてたんだろう。咲は若干焦りつつ、返答した。
既に智葉は入り口の方に歩いている途中で、そのまま別れるかと思われたが、ふいに頭だけ振り返って告げる。
智葉「夜、時間を空けておけ。団体戦のメンバーも含んでミーティングがある」
全国に出場する内輪での話だろうか。智葉も個人戦を一位で通過している。咲はそれに頷いて返した。
咲「ネット麻雀か……ちょっと苦手なんだよね」
伝言すると智葉は今度こそ退室し、咲は備えつけのPCに向かい、準備されていたネット麻雀に取りかかる。
241 = 236 :
咲「えいっ。……これ? ………………」
咲「こ、これなら…………このっ、…………」
咲「あ…………負けちゃった」
明華「そうみたいですね」
咲「わっ!」
身がすくむ。意識の外からかかった声。後ろから明華が覗き込んできていた。
咲「みょ、明華さん……」
明華「驚かせてしまいましたね。ふふ、ごめんなさい」
咲「……むう、からかってますね」
悪びれない笑みでしとやかに振る舞う明華に、じっとりとした目つきで抗議する。
なのに当の彼女はますます相好を崩した。
明華「いつもネリーがいますから。私だって、たまにはコミュニケーションを図りたいんですよ」
咲「……その言い方はずるいですよぅ……」
明華「まあまあ。ネット麻雀の方はよろしいんですか?」
咲「うーん、やっぱり現実に打とうかと……」
明華「ネットの世界は能力が通じにくいですね。大分と苦戦したようで」
明華「ところで……それはチャットが来ているのではないですか?」
咲「え?」
指摘されて視線を移す。敗北を示す表示画面の端、チャットコマンドが点滅している。
たどたどしい操作でウィンドウを開くと、簡素なページにメッセージが記されていた。
『あなたは宮永咲さんですか?』
咲「あれ……」
なんでわかったんだろう。目をしばたたかせる傍ら、明華が厳しい表情を浮かべた。
242 = 236 :
明華「咲さん……本名でしてたんですか?」
咲「え? はい、名前を入力してくださいとあったので……」
明華「そういうときはハンドルネームを使うものですよ。ネットでは大体そうです」
明華「まあ、そうそう本名だとはばれないと思いますが……って待って、待ってください」
咲「はい?」
明華「何してるんですか」
咲「宮永咲かと訊かれたので『はい。そうです』と……」
明華「何してるんですかっ!」
素早くマウスが取り上げられる。きょとんとした。
『咲さん、本当に咲さんなんですか?』
『まさか……いやでもこの感じ……』
明華「しかもネット麻雀では有名なプレイヤーではないですか……いえ、まるでわからないプレイヤーも、それはそれで不安ですが」
『咲さん? 返事をしてください』
明華「……困りましたね」
『私は宮永咲じゃありません。さっきのは冗談です』
『……あなた、さっきまで打っていた人と違いますね。代わってください』
明華「は?」
『いやいや。同じ人ですよ』
『そこをどけ。次はない』
咲「ど、どうしたんですか……」
明華「…………」
明華「……咲さん、私の言う通りにキーボードを打ってみてもらえますか?」
咲「え……は、はい……構いませんけど」
明華の指示に従って人差し指でキーボードを叩く。
咲「えーっと……『おかしな事を言いますね』……っと」
『咲さん!? 咲さんなんですか!?』
咲「え?」
明華「は?」
243 = 236 :
『いや……ちょっと違いますね。咲さんの言葉じゃないような……』
『おい邪魔をするな。潰すぞ』
咲「ひいっ……」
明華「……なんなんですかこの人」
『咲さん? 咲さんっ、返事をしてください!』
『くっ、さっきから邪魔してんのはどこの誰だよおっ! この女狐! 泥棒猫っ!』
明華「…………」
咲「……ひいぃ……なんなの……」
明華「咲さん、PCの電源を落としましょう」
明華「あとそのネト麻のアカウントも消します」
咲「わ、わかりました……」
明華「これは注意を怠った私の責任ですね……すみません、咲さん」
咲「よくわからないですけど……明華さんのせいじゃないです……」
明華「いえ、アレをただの人間と侮った私が悪いです。正直日本をなめていました」
咲「え……ええっと……?」
明華「咲さんのようなか弱い女性をお守りするのがフランスの誇
り。騎士の誓い」
明華「あのような怪物に狙われているとは……咲さん、大丈夫です」
ふわりと明華の身体がかぶさる。優しい抱擁に照れくさい気持ちになった。
咲「あの……ちょっと恥ずかしいです……」
困ったような笑みとともに、明華の身体が離れていく。
自分の顔が赤くなっているのがわかる。
頬に手をやる。熱い。
明華「日本の方は奥ゆかしいですね。照れなくてもいいのに」
柔らかく笑ってそう言う明華に苦笑を零し、咲はーーーー。
それらを追体験する意識は、恐いのか恥ずかしいのか、それとも最初に覚えたもの悲しさか。
いろんな感情があふれて、ごちゃごちゃと混ざるのを感じながら、咲の意識は浮上していった。
244 = 236 :
抽選会で白糸台と臨海の場所がわかってちょっと居眠りしちゃう咲さんでした
ここまで
245 :
淫ピェ…
246 :
明華さんカッコいい
247 :
さすがデジタルの申し子やで!
248 :
のどキチこわい
249 :
乙乙
>>248
その呼称初めて見たww言い得て妙だすげえ
250 :
全編コメディとかギャグ多めとかなら淫ピ要素も別にいいんだけど
基本的にシリアスな作品なのに淫ピ要素入れられても浮いてるしつまんなくて笑えもしない
和を悪く書かないって言ってるけど、今のところ気持ち悪いとしか感じないんだが
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