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    元スレ淡「咲は私の言うとおりにしてればいいんだから!」

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    101 = 98 :

    「…で、辻垣内にあれから何か言われたりした?」

    先程時間を潰している間に見付けた小さな公園に淡は入って行った。
    夕方も過ぎた時間なので、遊んでいる子供たちもいなくて静かに話も出来ると判断したからだ。

    淡はベンチに腰を降ろしたが、咲は距離を取ったまま立っている。

    「どういう知り合いか聞かれたよ。この間偵察に来た時声を掛けられたって、言っておいたけど」

    「ふん。言い訳じみたこと言うんだね」

    冷めた口調で、淡は返す。

    「淡ちゃんがおかしな真似するからでしょ。特に親しい間柄でも無いのに」

    怒る咲を前にして、さっき推測したばかりのことを投げかけてみる。

    「そんなに辻垣内に誤解されたくないの?深読みされて、勘違いされたら困りますって?」

    「は?」

    立ち上がって咲の腕を掴む。

    「辻垣内のこと、好きなんでしょ」

    「な、何言ってるの。どこからそういう発想が出てくるの…」

    言い掛かりだと、咲は絶対認めないつもりでいるだろう。
    最も、ちょっとした動揺も淡は見逃さない。

    102 = 98 :

    (ふん、とぼけても無駄だよ)

    「ふうん、じゃあ私の勘違いだって言いたいわけ?」

    「当たり前でしょ。勘違いっていうか、妄想?」

    強気な視線を向けて言う咲に「そう」と頷く。

    「なら辻垣内にも聞いてみるかな。最近、後輩から熱い視線を送られてないかどうか」

    「…えっ」

    「また部室まで行ってみるかな~」

    咲の腕を放し、歩き始める振りをする。

    「ちょっと、どういうつもり!?勘違いって言ってるでしょ」

    淡の制服をぐいっと咲の手が引っ張る。

    「なら別に辻垣内に聞いても問題無いでしょ。それとも掘り下げられると何か困るの?」

    「それは…」

    「どうなのよ」

    困りきった顔をしている咲の姿を見るのが楽しい。
    目を伏せて、もごもごと口を動かす咲に詰め寄る。

    「言わないなら、もっとレベルを上げるかな」

    「そうだなぁ…今日咲に告白されて付き合うことになったって言ってみるか」

    「止めてよ!淡ちゃん、何がしたいの!一体何が望みなの!」

    必死になる咲に、淡はそっとほくそ笑んだ。
    どうやら本当に咲は、智葉に誤解されたり好きという気持ちをばらして欲しくないようだ。

    103 = 98 :

    完全に弱みを握ったと、淡は拳を握り締める。

    「そうだねー、私の望みは…」

    うーんと考え込んだ瞬間、淡のポケットから着信音が鳴り響く。

    「誰よ、こんな時に」

    見慣れない番号だったので無視しようとしたが、鳴り続けている。
    咲に「逃げたら部室へ直行するから」と言い渡し、仕方なく通話ボタンを押す。

    「ハイ?」

    「あの、淡…」

    最悪だ、と淡は顔を顰める。

    「何よあんた、二度と会わないって言ったでしょ!」

    相手は少し前に付き合ってた上級生の女だ。
    付き合ったというか、ただ淡の都合で連れ回しただけに過ぎないが。

    「ごめんなさい。でも、やっぱりもう一回話がしたくて」

    「こっちは何も話すことなんかないよ」

    「……」

    「全部終わったんだから。もういいでしょ。切るよ」

    まだ何か言いたそうな様子だが、構わず淡は切った。

    (誰かから携帯借りたか、新しく買ったか。そこまでして話そうとしても無駄だったね)

    早速今掛けて来た番号を、着信拒否する。

    104 = 98 :

    「何よ」

    「別に…」

    一部始終を聞いてた咲に、呆れたような目を向けられる。

    「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ」

    「何も無いよ。淡ちゃんのことに、口出ししたくも無いから」

    文句は一言も無い。
    ただ目線だけが「最低」と訴えている。

    「フン。咲みたいなねんねに何がわかるって言うのよ」

    「だから、何も言ってないでしょ。ねえ、もう帰ってもいいかな?」

    身を翻して帰ろうとする咲を「待ちなよ」と引き止める。

    「あんた、辻垣内に告白するつもりなの?」

    「…だから、その件は」

    「認めないっていうんなら、辻垣内にばらすよ」

    「なっ…」

    「冗談だって言い訳しても、しばらく気まずさは残ったままだろうね」

    楽しげに話す淡を、咲は唇を噛み締めて睨む。

    105 = 98 :

    「認めたら、ばらすのだけは勘弁してあげるよ」

    「なんでそんなことするの…」

    「面白そうだから」

    きっぱりと言い切る淡に、当然のことながら咲は怒り出す。

    「面白そうだからって、人に迷惑掛けていいの!?」

    「私は私のやりたいようにやるよ」

    咲は最悪…と嘆く。

    「さあ、どうすんの咲。この場で認めれば辻垣内には何も言わない。でも認めないと即ばらすよ」

    「……」

    咲は悔しげに淡を見やる。

    「…認める、よ」

    「はあ?聞こえないなあ。もっと大声で言って。咲の好きなのは、誰?」

    「辻垣内先輩のことが好き!これでいいんでしょっ!」

    やけくそ気味に叫んだとしても仕方ない。
    肩で息をする咲に、淡は満足げに微笑んでみせた。

    106 = 98 :

    「やっと認めたね。しっかし辻垣内のどこが良いの?私にはさっぱりわからないんだけど」

    「わからなくたっていいよ。別に…」

    「そっか。ライバルが増えたら困るって心配してるんだ。安心しなよ、私はあんなの趣味じゃないから」

    「ああ、もうどうとでも言えばいいよ」

    疲れた、と咲は呟く。
    本当に疲れきった表情をしている。

    「で、あんたは告白するつもりはあるの?」

    「え?」

    「するならその前に、私に報告して」

    「なんで!?そんな義務みたいに言ってるの!?」

    更にわけのわからない展開に、咲は口をぱくぱくと動かす。

    「そんなの、咲が派手に振られるところを見たいと思ってるからだよ」

    「淡ちゃんって、最低!」

    咲が怒るのも当然だ。振られるところが見たいと言って喜ぶバカはいない。
    そんな咲にもどこ吹く風で、淡は咲の腕を掴んで引き寄せた。

    「痛っ、放してよ」

    「辻垣内にばらされたくないんでしょ。だったら私の言うことを聞きなよ」

    107 = 98 :

    「私、先輩に告白するつもりなんか無いんだけど」

    「は?」

    ぱっと手を放すと、咲の体が傾いて地面に倒れてしまう。

    「いったー、急に放さないでよ」

    「あんた、あいつに告白するつもり無かったの?」

    上から咲を見下ろす。
    倒れこんだまま、咲はこくんと頷いた。

    「なんでよ。辻垣内をモノにしようって思ってるんでしょ?」

    「私、別に先輩と付き合いたいとか考えてないよ」

    「ただ一緒に麻雀が出来ればいいの……それだけで」

    咲の言ってることは、全く淡には理解出来ないことだ。

    ちょっと気に入れば声を掛け、すぐに相手を思い通りにしてきた。
    一緒に麻雀をしてさえいれば満足だなんて、あり得ない。

    「咲の考えてること、さっぱり理解出来ない」

    「私も淡ちゃんのこと理解出来ないよ」

    首を傾げてる淡に、咲は溜息をついてみせた。

    108 = 98 :

    「そういうことなんで、振られるところは見れないから。ご期待には添えません」

    「待ちなよ。まだ結論には早いよ」

    「え?」

    立ち上がった咲は制服についた埃を払う。
    その間にも、淡は自信たっぷりに話を進める。

    「要は、こういうことだね。咲はどうせ辻垣内に告白しても振られる」

    「それ位なら、お気に入りの後輩の座をキープしておきたいと、こういうことだよね?」

    「全然違う」

    「そんなのただの意気地無しがやることだよ」

    「聞いてよ、人の話」

    もしもし、と咲は淡の顔の前で手を振る。
    だが淡はまるで聞いていない。

    「そんな弱気でいいと思ってるの?」

    「いや、だから…」

    「咲が良くても、私は許さない。そうだね…なら楽しみ方を変えるとするかな」

    「楽しみ方?」

    109 = 98 :

    「これから先、私の言う通りに辻垣内にアプローチしなよ」

    びしっと指を突きつけて、淡は宣言した。
    が、咲が簡単に従うはずがない。

    「嫌だよ、そんなの。なんでそんなことしなきゃいけないの」

    「バーカ。私が辻垣内との仲を進展するようアドバイスしてやろうって言ってるの」

    「有り難く思いなよ。そして逐一報告すること」

    「バカはそっちでしょ…」

    「大体さっきの電話の話聞いてて、淡ちゃんのアドバイスが役に立つとは思えないんだけど」

    「何よあんた。私の言うとおりにしてたら、絶対上手く行くのにそれを拒否するの?」

    「そんな根拠どこにあるの」

    「これから証明してあげるから。全部終わったら、私に土下座して感謝しなよ」

    「辻垣内とうまくいったのは淡様のおかげだって!」

    「嫌って言ってるでしょ」

    「なら、すぐに辻垣内にばらす!」

    「うっ…」

    よりによってこんな傍若無人に知られるなんてと咲は頭を抱えた。
    その横で、淡は完璧なる作戦を早くも練り始めている。

    本来なら試合以外で関わることもない淡と咲。
    二人の出会いは、着実におかしな方へと転がり出した。


    ――――

    110 = 98 :

    とりあえずここまでです。
    週一でまったり投下しようと思ってたんですが
    予定を変更して急ピッチで早めに終わらせます。
    あと、自分の発言のせいでスレが荒れてしまい申し訳ありませんでした。

    112 :

    乙乙

    113 :

    スレタイそういう事か、乙

    114 :


    その方がいいね・・・悲しいけど

    115 :

    乙乙
    いつか刺されそうな淡ちゃんやな

    116 :

    気になるのはしょうがないか
    まあ、乙した

    118 :


    ファッキューアッワ

    119 :

    クズあわあわとは珍しいな
    咲ちゃんに更正してもらおう(提案)

    120 :

    >>97
    煽ってるつもりだろうが何言ってるか本気で分からん。分かるのは擁護した貴様は京太郎信者ってこった

    121 :

    信者と豚発言してる奴が一極過ぎて笑える
    負けるなよ>>1

    122 :

    続き気になる、はよ

    123 :

    日一で淡々と更新してたら何とかなるだろうけどな

    124 :

    まあ、あわあわの最期は咲が通報した京太郎と特別ゲスト高山の肉棒による二輪挿し中出しの刑で決まりだなww


    そうすりゃ万事解決だ^^

    125 :

    やっぱ面白いな

    127 = 124 :

    >>84
    コンプレックスマンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
    確かに俺もそう思っていたわ。

    ここの京アンチや百合豚って昔、こっそり好きだった女子を京太郎みたいな感じの男に取られたから、それで京太郎に逆恨みとかしてんだろうなどうせwwwwww

    128 = 122 :

    京豚の嫉妬レスが熱い

    129 = 124 :

    >>128
    ようコンプレックスマンww
    スルー出来ないなんてやっぱりお前図星だったのか(笑)

    130 :

    結局のところ淡か智葉どっちを選ぶんだろうか?

    131 :

    そりゃスレタイ通りっしょ

    132 :

    「おっちょこちょいでも良いんだって」

    「は?」

    ……オッチョコチョイって?
    意味のわからない言葉を発する淡を前にして、咲は両眉を寄せた。



    県予選初日を明日に控えた本日。
    淡は再び咲を呼び出した。この間考えた作戦を実行する為に。

    弱みを握られてる咲としては淡の言う通りにするしかない。
    そうして部活帰りの所を車に乗せられ、大星家へと連れて来られた。

    淡の家はかなりの規模で、驚いてしまうが顔には出さない。

    (度を越えた金持ちだから、人格が破綻してるのかな…)

    勿論余計なことも言わない。
    淡の話だけ聞いて、さっさと帰ることが一番優先するべきことだ。

    車から降りて、淡は咲に家の中へ入るように指示をする。
    外観だけじゃなく中もかなりお金を掛けた装飾に溢れ返っていた。

    長い廊下を歩き、そして淡が「入って」と指示した部屋は。


    客間でも自室でも無く、キッチンだった。

    133 = 132 :

    「えーっと、どういうこと?」

    淡は一人納得しているようだが、咲はエスパーじゃない。
    いきなりキッチンに連れてこられ、おっちょこちょいでも良いとか言われても。

    これから何をするのか淡が何を言いたいのかわかるはずもない。
    だが淡はこれ位わからないのか、と言った具合に溜息をついてみせる。

    その態度にカチンときたが、咲は黙って次に言われる言葉を待った。

    「少し辻垣内のことを調べさせてもらったよ」

    「はあ…」

    ポケットから一枚の紙を取り出し、淡は内容の一部を読み上げる。

    「好みのタイプは何でも一生懸命やる子。ただしおっちょこちょいでも良い」

    「へ?」

    「辻垣内はそういうのが好きなんだって。なんかマニアな匂いがするね」

    マニアな匂いと言われ、何だかとんでもないものだろうかと咲は誤った想像をしてしまう。

    「まあ、人の好みはそれぞれだしどうでも良いけど」

    「それより辻垣内の心をがっちり射止める準備の方が重要だよ」

    「準備、って」

    嫌な予感に、咲は逃げ腰になる。
    淡の自信たっぷりな態度が更に不安を煽る。

    134 = 132 :

    「決まってるでしょ。明日は県予選だよ」

    「辻垣内の好みのタイプもわかった。ならすることは一つ。わかるよね?」

    「ワカリマセン」

    淡の頭の中なんて、という言葉は呑み込む。

    「全く、飲み込みが遅いんだから」

    「そうじゃないと思うけど」

    「まあいいよ。咲、当然料理は出来るよね?」

    会話になってない会話に、段々咲は頭が痛くなってきた。

    「まあ、出来るっちゃ出来るけど」

    「よし。じゃあ辻垣内に自作うなぎ弁当差し入れ作戦開始だよ!」

    「……ハイ?」

    とんでもない単語に咲は瞬時に固まってしまう。

    「あの」

    「何」

    「弁当差し入れ作戦って、何?」

    恐る恐る尋ねてみると、もう一度まだそんなこともわからないのかと言った風に見られる。

    135 = 132 :

    「明日から県予選でしょ」

    「うん」

    「普段はクラスも学年も違う咲と辻垣内は、昼ご飯を一緒に食べる機会はほとんどない」

    「…うん」

    「だったら明日することは一つ。辻垣内の好物を作って、その弁当を差し入れして一緒に食べる」

    「どう?いい考えでしょ!」

    「ちょっと待って」

    もしもし、と悦に入ってる淡に呼びかける。

    「うなぎ弁当って、何」

    「辻垣内の好物がうなぎなんだって」

    「それで、どうせ弁当を作るならと最高級のうなぎを用意させたんだよ」

    「用意させた!?生きたうなぎを!?」

    「うん。鮮度が落ちないように、水槽に入れてある」

    その一言がトドメになって、咲はふらっと近くの壁に手をついた。

    (常識が通じない…)

    しかも行動に起こす財力があるので尚タチが悪い。

    136 = 132 :

    「どうしたの咲?」

    「どうしたもこうしたもないよ!何の為にそんなもの用意してるの!?」

    叫んでも淡には通じないとわかっていても、言わずにはいられない。

    「そんなものって、どうせ差し入れするなら良いうなぎがいいに決まってるでしょ?」

    「咲のサポートの為にわざわざ取り寄せたげたんだよ。感謝してよ」

    「どこの世界にうなぎをさばいて弁当にする高校生がいるの!?そんなんで先輩が喜ぶとでも!?」

    「だから言ったでしょ。辻垣内は一生懸命な子がタイプだって」

    「度が過ぎてるよっ!」

    そうかな?と淡は首を傾げる。

    (ダメだ、やっぱり普通がわからないんだ)

    「偶然良いうなぎが手に入ったから今日のお弁当に持って来たけどちょっと量が多いから先輩食べて下さい作戦、開始だよ!」

    「作戦名、長っ!」

    咲の叫びを無視して、淡は話を進める。

    「じゃあさっそく、うなぎをさばいて蒲焼にするところからはじめようか」

    「…はあ。もうどうにでもして」

    抵抗するのを諦めた咲は、淡が満足して早く帰れるようにと
    用意されたうなぎをさばき始めた。


    ――――

    137 = 132 :

    そして夜が明けて県予選初日。

    西東京の白糸台高校は、東東京の臨海女子とは大会会場が違う。
    が、どうせ大将の自分まで出番は回ってはこないだろうと、淡は東東京の会場まで足を運んでいた。

    「咲の奴、一体どこにいんのよー!?」

    広い会場の中。
    わざわざ智葉を探し出して、淡は額に血管を浮かべた。

    よりによって、咲がそばにいない。
    智葉は留学生の一人と食事中だった。

    (まさか、逃げたんじゃないでしょうね)

    ここで逃げたとなったらただじゃおかないと、淡は拳を握り締める。

    「ねえ、辻垣内!」

    大声で智葉の名前を呼ぶと、怪訝そうに立ち上がりそれでも淡の方へと歩み寄ってきた。

    智葉「またお前か。一体何の用だ?」

    「咲はどこにいんの?今日は欠席? 」

    一瞬、智葉は考え込むが以前にも淡が咲へ声を掛けたこともあって、
    二人が知り合いだと納得したのだろう。特に疑問に思わず淡に返事をする。

    智葉「宮永なら来ているぞ。何か用事か」

    「今ここにいないのは、どうして?」

    智葉「同じ1年のネリーらとどこかで食べているのだろう。会場から外へ出ていないとは思うが」

    淡は思い切り顔を顰める。

    (この分だと、作戦は実行してないようだね)

    「そう。食事の邪魔して悪かったね」

    くるりと智葉に背を向けて、淡は走り出した。
    会場のどこかにいる咲を探し出す為に。

    138 = 132 :

    咲はすぐに見つかった。
    智葉のいうように、ネリーやハオと一緒にお弁当を広げていた。

    「ちょっと咲!こんな所で何してんの!」

    淡の大声に、咲は飛び上がってしまった。

    「あ、淡ちゃん!?どうしてここに…」

    そのまま淡に腕を捕まれ、凄い力で引っ張って行かれる。

    ネリー「サキがユウカイされる!」

    「えと、ネリーちゃん達。友達としゃべってくるから先に食べておいてね」

    ハオ「分かりました。行ってらっしゃいサキ」



    食堂の隅の席まで連れて行かれた咲は、淡から視線をそらしたままでいる。

    「言ったよね?辻垣内に弁当差し入れしろって」

    「……」

    「一緒に食べてないなんて、どういうこと?」

    びくっと身を縮める咲に淡はため息をつく。
    どうして言う通りにしないのだろう。本当に腹立たしい。

    さらに淡が問い詰めようとしたところで、後ろから聞きなれた声が淡を呼んだ。

    誠子「こら!淡!」

    「げっ、誠子!なんでここに!?」

    誠子「お前がこの会場にいるって情報を他校生からもらってな」

    誠子「全く。弘世先輩がカンカンだぞ、早く戻るんだ」

    139 = 132 :

    「うっさいなあ。どうせ私まで回ってこないでしょ。ならいいじゃん」

    誠子「そういう問題じゃないんだよ!」

    誠子「つか、咲ちゃんに絡んで何やってるんだよ」

    「別に。ちょっとしゃべってただけだよ。ねえ咲?」

    咲に目を向けるが、無言で逸らされる。

    「何とか言ったらどうなの、咲」

    誠子「淡、やめろって。咲ちゃん怖がってるだろ」

    「はあ?咲は作戦を無視したことわかってて咎められたくないだけ。そうでしょ咲」

    誠子「作戦って何だよ…」

    「誠子には関係ないでしょ。向こう行ってよ」

    揉め始める二人を前にして、咲はどうしようかと視線を泳がす。

    誠子「もう咲ちゃんに構うの止めて、一旦戻ろう、な?」

    「うるさい誠子。私はまだ咲に聞きたいことがあるんだから。一人で帰ってよ」

    誠子の声を振り切って、淡は咲に声をかける。

    「どうして辻垣内に、それ渡さなかったの」

    それ、と指さした前には咲がさばいたうなぎが入った弁当箱がある。

    「昨日せっかく頑張って作ったのに、無駄にしちゃってそれでもいいの?」

    「いいよ、別に」

    投げ遣りな言葉にカッと来るが、咲の目を見て押し黙る。
    唇はぎゅっと結ばれ、潤んだ瞳で淡を睨みつけている。

    140 = 132 :

    「私にはやっぱり無理だった」

    「どうしようって直前まで悩んでたけど、淡ちゃんみたいに何も考えずに先輩を誘うことなんて出来ないよ」

    「変に思われるかもしれないって……そう考えたら動けなくなった」

    「……」

    「臆病者とか言いたければ、言えばいいよ」

    咲の表情は変わらず、淡を睨みつけているけれど。
    どうしてだか、泣いているようにも見えた。涙なんか出ていないのに。

    「悪かったね」

    「え?」

    「ちょっと私も強引に進めようとした。咲の意見、一個も聞いて無かったし」

    「はあ…」

    素直な淡の言葉を聞いて、咲は拍子抜けした顔で見上げる。

    「それ、美味しそうだね。ちょっともらってもいい?」

    「…うん」

    淡の言葉に、咲は素直にお弁当箱を差し出した。
    一口、食べてみる。

    「美味しい」

    「そう?よかった」

    顔を見合わせて、そして。
    お互いに笑う。

    「もともと中身は淡ちゃんがくれたものだし」

    「そうだったね」

    141 = 132 :

    一応和やかとも言える空気に、一人蚊帳の外だった誠子が声を掛ける。

    誠子「ちょっと待って、私完全に無視されてない?」

    「なんだ、まだ居たの誠子」

    誠子「ヒドすぎる!何呑気に咲ちゃんの作ったお弁当食べてるんだよ?」

    誠子「しかも辻垣内に差し入れってどういうことなんだ?」

    「誠子には関係ないことだよ」

    誠子「何だって?あー、もういい。咲ちゃん、私にもお弁当食べさせてくれないかな?」

    「えー…っと」

    誠子「そこで淡の顔見るのはなんで!?なあなんで?」

    「うるさいなあ誠子は」

    あんまり騒ぐものだから、咲は誠子にもお弁当を差し出した。

    誠子「ありがとな、咲ちゃん」

    「いえ」

    誠子「あー、咲ちゃんのお弁当美味しい!つかこのうなぎ自分でさばいたの?凄いな」

    「料理は家でよく手伝ってますから」

    誠子「へえ、いいお嫁さんになるな。咲ちゃんは」

    その光景になんとなく面白く無いものを感じ、ふと目を逸らす。

    (別に…何がむかつくって訳じゃないんだけど)

    きっと自分のおもちゃを他人が構っているのが気に入らない。
    それだけだと言い聞かせて。

    さて次は何作戦で行くかと、淡は新しい計画を考え始めた。


    ――――



    142 = 132 :

    書き溜め分終了です。
    次は2、3日後に投下予定です。

    143 :

    乙 咲さんの料理スキルに脱帽

    144 :

    乙でした!

    147 :

    嵐怖くてsageなきゃいけねーなら渋で書いたらいいのによ…

    149 :

    なに今ってsage進行に文句つけだす奴がいるの

    150 :

    前の盲目の時もsage進行だった気が


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