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    元スレ淡「咲は私の言うとおりにしてればいいんだから!」

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    151 :

    乙 俺も咲ちゃんの弁当食いたい

    153 :

    うなぎさばくのって免許必要なレベルじゃ……

    154 :

    うちの親素人だけどさばけるぞ

    155 :

    免許が必要なのは毒のある河豚みたいな魚
    うなぎは料理し慣れてる人なら普通に捌ける

    156 :

    うなぎも生で食うと血中にある毒で死ぬぞ

    157 = 156 :

    うなぎも生で食うと血中にある毒で死ぬぞ
    まあ捌くのはそんなに難しくないが

    158 :

    盲目の少女面白かったし期待してるで

    160 :

    いささか騒がしかった食事が終わった。
    立ち上がった咲は、淡の方を向いて口を開く。

    「じゃあ私、そろそろ控え室に戻るから」

    昼休憩も残り少ない。
    お互い午後から試合を控えている身だ。

    「そうだね。今後の件はまた話し合うことにしようよ」

    「今後って?」

    嫌な予感に咲は眉を顰める。
    大体こういう勘は当たるものと決まっている。

    「例えば練習を日々頑張っているけどいまいち成果が上がらないんでどこがいけないのか指導お願い、
    出来たら一緒に付き合って下さい作戦のこととか」

    「前よりも長くなってるし!素なのかわざとなのかもう分かんないよ…」

    げんなりとする咲の後頭部を、淡は軽く叩いてやる。

    「終わっても先に帰るんじゃないからね。そうだ、待ち合わせ場所はこの会場前。必ず来なよ」

    「何勝手に決めてるの」

    「咲にそんな口利く権利は無いって忘れたの?」

    うっと咲は口篭る。
    逆らえば、淡は迷うことなく智葉に全部喋ってしまう。

    「…わかったよ。待っとけばいいんでしょ」

    とぼとぼと歩き出す咲に、それまで黙っていた誠子が声を掛ける。

    誠子「咲ちゃん、試合頑張ってね」

    「はい、亦野さんも頑張ってください。それじゃあ失礼します」

    肩越しに振り向いて返事をする。
    そしてすぐに前を向いて、咲は行ってしまう。

    161 = 160 :

    誠子「なあ、淡」

    去っていく咲の背中を見ながら、誠子は話を切り出した。

    「何」

    誠子「咲ちゃんって、辻垣内のことが好きなのか?」

    2人の会話を聞いていれば簡単にわかること。

    「言っちゃ駄目だよ。もちろんテルーにもね」

    肯定も否定もせず、ただ淡は釘を刺すだけ。

    誠子「別に誰にも言うつもりは無いけどな。ただ何でお前がその手助けしてるんだ?」

    誠子が納得出来ないのは、そこだ。
    淡が他人の恋に首を突っ込むなんて珍しい。

    「別に…単なる暇つぶしだよ」

    ぷいっと淡は顔を背け、歩き出した。
    こっちもそろそろ試合の時間になる。

    大将の淡までは回って来ないだろうが、
    レギュラー二人がいないのはまずい。

    誠子「単なる暇つぶしとは思えないけどな。ひょっとして親切心を装ってモノにしようとか?」

    「は?」

    誠子「咲ちゃんって足キレイなんだよなー、触ったらすべすべしてそうで」

    「何気持ち悪いこと言ってんの」

    足フェチの先輩に、心底気味悪そうに顔を顰めた。

    162 = 160 :

    誠子「あ、怒ったのか?やっぱり咲ちゃんの事気になってるんだろ」

    「誰があんなのに。それだけは見当外れだよ」

    言い切った淡を見て、誠子は「そうか」と頷く。

    誠子「なら、もう咲ちゃんと関わるのはやめた方がいいんじゃないか?」

    「何で?テルーの妹だから?」

    誠子「いや、そんなんじゃなくて…」

    淡の鋭い視線に臆することも無く、誠子は静かに答える。

    誠子「今はそうでなくても、側にいるうちに好きになってしまう可能性もあるだろう」

    誠子「でもあの子は辻垣内が好きなんだろ。そうなったら傷付くのはお前だぞ」

    誠子の言葉が終わるのと同時に、淡は鼻で笑い飛ばす。

    「そんなありえない話を作り出して、笑っちゃうよ」

    そんなことあるものか。
    咲を好きになってしまうなんて、ありえない。

    誠子「でも」

    「もういいよ。とにかく誠子は私のすることに口出ししないでよ」

    誠子「淡…」

    はあと誠子は溜息を付く。
    聞こえていたが、 淡は無視して横を向いた。

    あまりにも馬鹿馬鹿しい話で、相手にする気にもなれないからだ。

    この時、淡は誠子の話をまともに取り合っていなかった。
    口を出されて煩いとしか認識していない。

    ようやく理解した時にはもう時遅く。
    苦しい気持ちに身動き出来なくなってしまう、なんて知らずにいた。


    ――――


    163 = 160 :

    試合が終わって、淡は即効で東東京の大会会場へと急いだ。
    なぜか誠子まで付いてきたが、まあいい。

    「何やってたの。遅かったね」

    言われた通りに、咲は待っていた。

    「これでも車を急がせてきたんだから」

    「で、そっちは勝ったの?」

    「あんた、他校の結果くらい聞いてないの?」

    「うん」

    即答だった。
    脱力する淡を見て、咲は誠子に「どうかしたんですか?」と尋ねる。

    誠子「咲ちゃんがあんまり淡に無関心だから、がっかりしてるみたい」

    「そういう事を言ってるんじゃない!試合に勝つことも大事だけど、情報を得ることも必要でしょ」

    「あんた、次どこと当たるか知ってんの?」

    「え、知らないけど」

    「ほら!こういう態度がダメだって言ってるの!」

    熱く語る淡を前に、咲は「はあ…」と頷くことしか出来ない。

    「もっと辻垣内にやる気があることをアピールしないと。今みたいな無関心な発言は絶対に控えなよ」

    「それも作戦の一つ?」

    「そう。一生懸命頑張ってます作戦」

    「大分短くなったね…そのまんまなのは変わらないけど」

    164 = 160 :

    二人の会話を聞いていた誠子が笑い出す。

    誠子「何かからまわってるボケとツッコミみたいだな」

    「咲が無関心なのがいけないんだよ。そういう所、徹底的に直して行くからね」

    「…頼んでないのに」

    「なんだって?」

    「いや、淡ちゃんの指導受けてこれからも頑張って行こうかなーって」

    「とてもそんな風には聞こえなかったけど」

    溜息をつく淡に「そうだ」と咲は顔を上げる。

    「で、そっちは勝ったの?」

    「当たり前でしょ。私を誰だと思ってんの?」

    誠子「まあ淡まで回らなかったんだけどな」

    鼻を高くする淡にすかさず誠子がツッコミをいれる。
    そんな二人を見て、咲はくすっと微笑んだ。

    「私、また淡ちゃんと打てるの楽しみにしてるからね」

    「…っ」

    全開の笑みを浮かべる咲に、一瞬目を奪われる。

    「…ふん。今度はリベンジしてやるんだから」

    すぐに我にかえって、咲の頬を片手で摘んだ。

    「いひゃい、ひゃなしへぇ(痛い、放して)」

    ぽいっと手を放すと、咲は頬を擦りながら淡を涙目で見やった。

    誠子「咲ちゃん、大丈夫?可愛い顔が歪んだらどうするんだ淡」

    「ってあの、何で亦野さんは私の足撫でてるんですか…?」

    誠子「思った通りの感触!すべすべだー」

    「キモっ!」

    誠子「ぎゃっ!」

    淡に蹴られて転がる誠子を冷たく見下ろす。

    「ウチの部員に変態はいらないね。ここで始末しておくかな」

    誠子「ちょっとした出来心だろー!」

    悪かった、許してと誠子が人目も憚らずわめいて。

    「許してあげたら?」と呆れながら止めに入る咲に、
    淡は振り上げた拳を降ろした。

    165 = 160 :

    これからどうしようか考えていると、咲が夕飯の手伝いがあるから帰りたいと言い出したので
    この場は一旦解散することに決めた。

    別に咲の意見を尊重したわけでなく、傍にいる誠子がうっとおしかったからだ。

    誠子「うーん、やっぱりいい足してるなぁ…」

    小声で呟いているけど、聞こえてくる。
    こんなのをずっと聞かされたら頭がおかしくなってしまう。

    だが言うべきことは言わないと。
    淡は咲に向かって「アドバイス」を言い渡す。

    「いい?今日の作戦は失敗したけど、今から言うヤツは絶対実行してもらうから」

    「あまり無茶なのは出来ないよ?」

    無駄だとわかってても、咲は遠回しに抵抗してみた。

    「大丈夫。今度のは幼稚園児でも出来る位簡単だから」

    「毎日一回挨拶以外に、辻垣内と何か会話すること。いいね」

    「えっ…」

    眉を顰める咲を余所に、淡は得意げに胸を張る。

    「さっさと進展したいけどシャイな私には無理だからじっくりお互いのことを知りながら仲を深めていく作戦、開始だよ」

    「だからその作戦名が長いんだって気付いてる?」

    咲の言葉を無視して、淡は「絶対やりなよ」と念押しする。

    166 = 160 :

    「毎回どんな会話をしたか全て私に報告すること」

    「会話の中からどうすれば辻垣内が喜ぶか、気を引き付けるか対策が出来るからね」

    「親しくとなると同時に、辻垣内のデータも取れる…これぞ完璧な作戦だね!」

    両腕をバッと大きく広げて、淡は満足げに笑った。

    「で、もう言いたい事は終わった?私、すぐにでも帰りたいんだけど」

    「いいけど、私の言ったことちゃんと守りなよ」

    「ハイハイ」

    おざなりな言い方に、淡の顔が引きつる。
    そんな淡の様子に気にすることなく、咲はこの場から去っていこうとする。

    誠子「咲ちゃん、またね」

    淡の隣で誠子が愛想良く咲に手を振る。

    「…さようなら。亦野さん」

    またねと言いながら、誠子の目は咲の顔ではなくひたすら足にのみ注がれている。
    誠子の視線に気付いた咲は、そそくさと足早に帰って行った。

    167 = 160 :

    誠子「いやー、あの足は十年に一人の逸材だな」

    一人で誠子は鼻息荒くしている。

    「誠子、本気でキモイ。離れて」

    言いながら、淡は自ら距離を置こうとした。

    誠子「キモイとは何だ!私はただ足に対して拘りがあるだけで」

    「誠子の価値観なんかに興味ないから」

    必死に自分の考えは普通だと誠子は主張しているが理解出来ないし、理解したくもない。

    「大体、咲に近づくなって私に言っておいて、誠子の方こそ興味津々じゃない」

    あのおもちゃで遊んで良いのは自分だけだ。
    興味を示している誠子に不快な目を向けると、あっさり「それは違うぞ」と否定される。

    誠子「咲ちゃんの足は一級品だけど、それだけだ」

    誠子「他に好きな人がいるのに振り向いてもらおうとは思わない。相手が辻垣内なら尚更だ」

    「どうだか」

    誠子「あ、やっぱり私が咲ちゃんと仲良くなるのがイヤなのか?」

    「……」

    誠子の言ってる意味じゃなく、自分のおもちゃに他の人間の手垢がつくのが嫌なだけだ。

    遊ぶ権利があるのは自分だ。
    そんな楽しいことを他人に教えたくないだけ。

    この時の淡は、たしかに自分の感情をそういうものだと信じ込んでいた。

    「別に勝手にすれば。ただ誠子の足フェチに咲は完全に引いてたみたいだけど」

    嫌味っぽく言うと、誠子は驚いたように声を上げる。

    誠子「ええー、そうかな?あれだけ褒めてたのになんでだろ…」

    どうやら気付いてなかったらしい。

    おかしいなあ、とぶつぶつ言ってる誠子に
    淡は付き合いきれない、とそっとこの場を離れて行った。

    168 = 160 :

    書き溜め分終了です。
    次は2、3日後に投下予定です。

    173 :

    翌日。

    早速作戦が実行されてるか確認の為、淡は運転手を急かして臨海女子を訪れた。
    ちょうど校門から出てくる智葉を見かけて、淡はさっと隠れる。

    多分咲はもう少ししたら出てくるだろう。

    (早く終わってたら、とっくに帰ってただろうけどね)

    連絡手段を取る方法を考えておくべきか。
    このままだと簡単に逃げられることもありそうだ。

    しばらくして、淡は咲の姿を発見した。
    ただ一人では無く、同じ麻雀部員の明華を伴っている。

    そのまま淡に気付かず、通り過ぎようとした瞬間。

    「…ちょっと」

    咲の制服を引っ張ってやった。

    「えっ!?」

    驚いた咲が後ろを振り返ると、眉を吊り上げた淡が立っていた。

    「何この私を無視して行こうとしてんのさ?」

    「淡ちゃん、また来たの?」

    明華が二人の顔を見比べて、首を傾げる。

    明華「咲。いつの間にチーム虎姫の方とお知り合いに?」

    「あ、えっと…」

    174 = 173 :

    「…あんたは?」

    明華「私は二年の明華と言います。麻雀部に所属してます」

    明華の丁寧な挨拶に淡は「ふーん」と無関心そうに返した。

    「あんた 、私のこと知ってんの?」

    明華「ハイ。全国レベルの選手は全て頭にインプットしてますから」

    「あ、そう。私今から咲と大事な話があるんで悪いけど一人で帰ってくんない?」

    「え、ちょっと?私は話なんか無いって!」

    抵抗する咲に、淡はいつもの台詞を使う。

    「なら、話し相手を辻垣内に変えるとするかな」

    「……」

    これを言われたら、どうにもならない。

    「明華先輩、すみません。私ちょっとこの子と話があるんで」

    明華「分かりました。ではお先に失礼しますね」

    また明日ゆっくり聞かせてもらいますねー、と明華はぶんぶんと手を振って帰っていった。

    何を聞かせるのか。
    きっと淡との関係だろう。

    非常に気が重くなった咲の腕を淡が掴む。

    「行くよ、咲。さっさとしなよ」

    「あー、ハイハイ」

    もうどうにでもしてと、少しやけくそ気味に咲は返事をした。

    175 = 173 :

    またあの公園で話をするかと考えたが
    淡自身何か飲みたかったので、今日は近くのカフェへ入ることにした。

    注文を終えて、頼んでた品が揃ってから淡は改めて咲に向き直った。

    「で。今日の成果を聞かせてもらおうじゃない」

    「…やっぱりその話、しなきゃいけない?」

    「当たり前。何の為にわざわざ臨海まで足を運んだと思ってんの?」

    ぼそっと咲は不満げに呟く。

    「頼んでないのに」

    「何か言った?」

    さあ言えと迫る淡に、咲は渋々口を開く。
    どこか落ち着かなく目をきょろきょろさせて。

    「えっと、ちょうど休憩時間に先輩が近くにいたから」

    「いたから?」

    「良い天気ですね、って」

    最初の出だしに、淡はコーヒーを吹き出しそうになった。
    そこを突っ込むのは後にしようと、「それで?」と話を促す。

    「先輩は、そうだなって言った」

    「で?」

    「お終い」

    「…………」

    まさかこれで終わりじゃないだろう。
    そう思って淡は咲を凝視するが、俯いたまま動こうとしない。

    176 = 173 :

    「それじゃ通りかかった近所の人への挨拶と同じじゃない。どこが会話?」

    怒るというよりも呆れた。溜息しか出てこない。
    淡に呆れられるのが不本意なのか、咲は口を尖らせて抗議する。

    「だっていきなり会話しろって言われても、何話したらいいか分からないし…」

    「そういう時は『良い天気ですね』の後に『こんな日は絶好の登山日和だから今から行きませんか?』」

    「『時間は遅いかもしれないけど、きっと星空が綺麗に見えます。そして一泊しましょう』位言えないの?」

    「一気に一泊旅行に進展するチャンスだったってのに、全くもう…」

    「言えるわけないよそんな事!だいいち部活はどうするの!」

    淡の提案に、出来るかと咲はすかさずツッコミをいれる。

    「全く。咲に欠けてるのは積極性だね。分かってるの?」

    「淡ちゃんの言動を全て実行したら、絶対変な目で見られるよ」

    折角良いアドバイスをしてやってるというのに、咲は不満そうにしている。
    淡は再びため息を吐く。

    「大体、今のままの会話を続けていたんじゃ親しくなるのに100年かかるよ。それじゃ嫌でしょ?」

    「別に…」

    カップに口をつけて、咲はコーヒーを一口飲んだ。

    177 = 173 :

    「ねえ、前にも言ったけど。別に辻垣内先輩が私のことを見てくれなくてもいいの」

    「今の状態で満足してるから。もう余計な口出さないで…って淡ちゃんに言っても無理だろうけど」

    ふぅっと息を吐く咲に、淡は「わからない」と眉を寄せる。

    満足している?
    好きな相手が振り向いてくれなくて、今の状態で何故満足出来るのか。

    ろくろく会話も出来ず、接点は部活だけ。
    どこが良いというのだろう?

    「あんた、本当に辻垣内のこと好きなの?」

    ぽろっと疑問が零れる。

    「さあ…」

    「さあって…そこが肝心でしょうが。でないと作戦を練っても意味が無くなるでしょ!」

    何の為に手を貸したと思ってると怒る淡に、咲は冷静に話をする。

    「好きだとは、思ってるよ。ただそれが独り占めしたい、まではいかないだけで」

    「辻垣内先輩の麻雀してる所は、凛々しくてかっこよくて…ずっと見ていたい」

    「でも、淡ちゃんが言うみたいに一緒にお弁当食べたいとか、一泊したいとかはまでは結びつかないんだ」

    要するに、まだ恋とは何かわかっていないらしい。

    (やっぱりまだまだ子供だよ、咲は)

    同い年なのにこうも違うものなのか。

    178 = 173 :

    「辻垣内の麻雀している姿は、見ていたいんだね」

    「うん」

    「その辻垣内がずっと咲と一緒にいたいって言ったら、どうする?」

    「どうするって…よくわかんない。そんな風になれるなんて、思ったことも無いから」

    「でもやっぱり嬉しいかな。会話はあんまり上手く出来ないけど…」

    「って、なんで淡ちゃんにそんな事まで話さなきゃいけないの!?」

    ハッと口を押さえる咲に、淡は「勝手に喋ったのは咲でしょ」と冷静につっこむ。

    なんだか恥ずかしいことを喋ったと、咲は顔を赤くしてコーヒーを俯いて飲み干し始める。
    そんな咲を淡はまじまじと見つめる。

    こうして話していると、最初のおどおどしていた時とまた違う印象を見せる。
    知れば知るほど面白い存在。

    (咲のこと、もっと知ってみたい気にさせられる…)

    179 = 173 :

    誠子『側にいるうちに、好きになってしまう可能性もあるだろう』

    誠子『でもあの子は辻垣内が好きなんだろ。そうなったら、傷付くのはお前だ』

    不意に誠子の言葉が浮かぶが、即座に否定する。

    (そんなのとは違う。これはただの好奇心なんだから)

    なかなかこちらを向かない咲に、淡は声を掛けた。

    「ねえ咲、携帯は持ってるよね」

    「うん。高校に入って買ってもらったけど…」

    淡が虎姫のメンバー以外で他人の携帯ナンバーを聞きだしたのは、これが初めてだった。

    今までは尋ねなくても相手が教えてくれる。
    それに聞きたいと思うような人も別にいなかった。

    初めて、連絡を取りたいと思った相手。
    そのことに全く淡は気付かない。

    ただ、「これでいつでも呼び出し出来る」と満足そうに笑った。


    ――――

    180 = 173 :

    書き溜め分終わり。
    明日から帰省するので次は5日ほど空きます。

    181 :

    乙 深みに嵌ってく淡いいね

    182 :

    乙 いつも楽しみにしてます

    183 :

    乙でした!

    185 :

    楽しみにしてます

    186 :

    続き待ってる

    187 :

    エタらせる為にスレ建てる傍迷惑なモ豚
    モ豚は接点もないキャラと組み合わせて飽きたらすぐエタるクッソ根気も何もない屑
    それだけじゃ飽き足らず安価スレでは馬鹿の一つ覚えの如く流れ無視で咲咲咲

    二度と速報にその面見せるなガキ

    188 :

    この程度も待てない方がガキだろ

    189 :

    まーた自演っすか?
    さすが和咲アンチで他と咲にするためには手段は選ばないねぇ

    190 :

    淡と関わってから気が休まった日は無い。
    白糸台高校の前に立ち、咲は重い溜息をついた。

    携帯に残されていたメッセージ。

    『今日は遅くなりそうだから咲がこっちに来て』

    これに従って、咲はここまで来た。
    幸い淡が運転手を寄越した為移動する手間は無かったが、そういう問題じゃない。

    (何で私、携帯番号教えちゃったんだろ…)

    今になって悔やんでも仕方ないことだ。
    どうせあの時拒んでいても、後に姉である照から咲の番号を聞いたに違いない。

    トボトボと歩いて、咲は学校の中へと入って行った。
    運転手から「淡お嬢様より部室で来るようにと伝言を預かってます」と言われたからだ。

    「で、どこだっけ。その部室って」

    以前にも淡に連れられて来たことはあったが、いかんせん方向音痴の咲には
    一度来ただけの場所を探し当てることなど不可能に近い。

    迷子になる前に、咲はその辺を歩いている生徒に場所を尋ねることにした。

    191 = 190 :

    「あの、すみません」

    生徒「ん?」

    「麻雀部の部室はどちらでしょうか?」

    生徒「我が麻雀部に何の用?君、他校生だよね?」

    逆に質問されて咲は戸惑う。
    大会中ということで警戒されているのだろうか。

    「えっと、私は…」

    淡に呼ばれて来たと咲が言おうとする前に、
    ぐいっと後ろから腕を引っ張られる。

    「こんな所で何してんの、咲」

    「淡ちゃん!」

    生徒「あ、大星さんこんにちは」

    「部室で待っててって伝言頼んだはずなんだけど、聞いてなかったの?」

    「聞いたけど、ちょっと迷っちゃって…」

    二人のやり取りを見ていて、
    女生徒は恐る恐るというように淡に声を掛ける。

    生徒「あのう、ひょっとしてこちらの方は」

    「何よ」

    生徒「大星さんの恋人なんでしょうか?」

    咲も淡も瞬時に固まってしまう。
    が、すぐに我に返って声を上げる。

    192 = 190 :

    「勝手な勘違いしないでよ!咲に興味なんてある訳ないでしょ!」

    「恋人な訳無いです!勘違いでも止めてください! 」

    同時に、否定した。

    「…ちょっと、勘違いでも止めろってどういう意味?」

    「私に興味無いんでしょ。なら良いじゃない」

    「よくない。私が否定するのは良くても、人に言われるのはムカつく」

    「勝手なことばかり言って。そういう言い方にこっちもムカつくよ」

    取っ組み合いでも始まりそうな言い争いを前にしても、
    女生徒はのほほんと「仲良しですね」なんて言う。

    咲・淡「「どこが!?」」

    生徒「だって、息ぴったりです」

    ね?という女生徒に、淡と咲は互いに顔を見合わせてしまう。
    すぐに「ふん!」とそれぞれ逆方向を向いたが。

    「とにかく咲は私の恋人なんかじゃないから。妙な噂流さないでよ?」

    生徒「わかりました」

    淡の言葉に、女生徒は真面目に頷く。

    「さっ、部室行くよ!」

    「ちょっと淡ちゃん、腕掴まないでよ!」

    193 = 190 :

    誠子「あれ?咲ちゃん」

    「こんにちは。亦野さん」

    部室のドアを開けると、中にいた誠子がこちらに顔を向けた。

    誠子「淡、また咲ちゃんを引っ張り込んで何するつもりだ?」

    「別に。咲、そっちのソファに座って」

    「…分かったよ」

    咲は言われたとおりに備え付けのソファに腰を下ろす。

    「他のメンバーは?」

    誠子「弘世先輩と宮永先輩はミーティング。尭深は風邪でお休みだ」

    「ふーん」

    煩い先輩方がいなくて良かったと呟きながら、淡も咲の向かいのソファに腰を下ろした。

    誠子「ねえ。咲ちゃんはミニスカートの方が似合うと思うんだ」

    「…はい?」

    突然妙なことを言われ、咲が怯んでいるのを見てため息を吐いた。

    「その辺にしておけば?誠子の嗜好に咲が怯えてるじゃん」

    誠子「どうせまた作戦会議だろ。そんな話より私と生足について語ろうか、咲ちゃん」

    言われても咲は同意も出来ず、ただ顔を引き攣らせるだけだった。

    (駄目だこりゃ…)

    誠子は無視する格好で、淡は話を切り出した。

    194 = 190 :

    「で、今日はどうだった?」

    「どうって」

    「辻垣内との会話の件だよ」

    淡の言葉に、咲はうんざりしたように溜息をつく。
    誠子が首を傾げているが、構ってられない。

    「今日は何を話したの」

    「今日は…何も」

    「どういうこと?」

    「先輩、何だか忙しそうだったから…声をかけずらくって…」

    「……」

    が、淡にそんな言い訳など通じない。

    「それにしたって、一言も会話交わせないなんて情け無い」

    そう言うと、咲はむっと唇を尖らせる。

    「そんなこと言われたって…」

    誠子「淡、その辺にしとけよ」

    呆れたように誠子が呟く。
    そして、咲の方へ笑顔を向ける。

    誠子「ごめんね、咲ちゃん。うちの後輩が無理ばかり言って。お詫びにこれでも食べて」

    立ち上がって、誠子は鞄から何か取り出した。
    淡からはよく見えなかったが、どうやらお菓子のようだった。

    195 = 190 :

    「くれるんですか?」

    誠子「勿論」

    「ありがとうございます、亦野さん」

    誠子はパッケージの箱を破り、中のチョコレートを取り出して咲に手渡した。

    「ちょっとビターですね。でも美味しい」

    誠子「そりゃ良かった」

    自分を差し置いて、ほのぼのとしている二人。
    それを見て淡がキレずにいるはずが無い。

    「咲、あんたは他の女に愛想を振り撒いている場合じゃないでしょ!?」

    「は?別に振り撒いて無いし」

    淡の鋭い視線に、咲は訳がわからないと眉を顰める。

    「咲が会話をすべきなのは辻垣内でしょ!」

    「そのノルマをこなさずに、今どこぞの馬の骨といちゃつくとはどういうこと!?」

    「ノルマって」

    誠子「馬の骨扱いかい」

    咲と誠子のツッコミが入った。

    「咲の気持ちは所詮その程度の物だったんだね」

    「今のままでいいって言うのも、勇気が無い自分を言い訳してたんでしょ」

    バンっ、と机が大きく音を立てる。

    「淡ちゃんに、勝手に人の気持ちをとやかく言う権利なんか無いっ!」

    咲が両手で叩いた音だった。

    「帰る」

    鞄をつかんで、咲は素早く部室から出て行ってしまう。

    196 = 190 :

    誠子「ちょっ、咲ちゃん!」

    誠子も慌てて追い掛けていく。

    誠子「淡、言い過ぎだぞ」

    振り向きそれだけ口にして、誠子も外へと駆け出して行った。

    「ふん。むかつく奴。誠子も追い掛けていくこと無いのに」

    淡はソファに踏ん反り返って呟く。
    何故か苛立ちは収まらない。

    気にする程の存在でも無いのに、思考を支配されて更に苛つく。


    「あー、終わった終わった。お菓子食べたい!」

    「ん?淡はまだ残ってたのか」


    結局ミーティングが終わった菫と照が部室にやって来るまで、
    電気も点けないまま淡はずっと動かず悶々としていた。


    ――――

    197 = 190 :

    誠子「お前が悪い、全面的に」

    翌日、顔を合わせるなり誠子はそう告げた。

    「誠子に説教される筋合いはないし」

    話を聞くつもりも無い。
    淡は誠子を無視して歩き出そうとした。が、肩を掴まれる。

    「放してよ」

    誠子「もう咲ちゃんに構うのは止めとけ。お前がやってる事、何の意味も無いだろ」

    「うるさい」

    手を振り解こうにも、誠子の力は意外と強い。

    誠子「咲ちゃんに八つ当たりしてもしょうがないだろ。あの子の想いまで否定して。お前にそんな権利あるのか?」

    誠子に言われた同じ台詞に、昨日と同じ苛立ちが蘇る。

    「咲の味方までして、好感度でも上げるつもり?その調子ならいつか落ちるかもしれないね」

    誠子「淡……」

    誠子は怒っていない。
    どちらかというと、悲しんでいる目をしている。

    二人が言い争いしている間に、二軍の部員の一人が遠慮がちに寄って来た。

    部員「大星さん。監督が呼んでるって」

    「分かった」

    誠子に背を向けて、淡は立ち去ろうとした。

    誠子「淡!せめて咲ちゃんに自分の価値観を押し付けるのは勘弁してやれよ」

    馬鹿馬鹿しくて話にならない。
    自分のやってる事に非は無いと淡は思っている。

    けれど今回だけは。
    誠子の言葉と咲が昨日見せた表情がだぶって、中々頭から消えていかない。

    198 = 190 :

    (咲、辛そうな顔してた)

    気持ちを疑われたことと、臆病者と言われ怒っていたけれど
    どこか泣きそうな顔もしてた。

    自分は悪く無いはずなのに、どうしてこんな気持ちにさせられるのだろう。

    生徒「大星さーん!」

    部活が終わり教室へと向かう途中、何人かの女子生徒達に囲まれる。
    よく試合を応援しに来る生徒達なので、淡も顔程度は知っていた。

    生徒A「私達、今度の試合も応援に行くから!」

    生徒B「頑張って下さいね」

    口々に言って、何かプレゼントらしき物を渡してくる。

    「…一つ質問があるんだけど」

    生徒B「なんでしょうか、大星さん!」

    淡からの質問に、女子生徒達は「何かしら」と期待の目を向ける。

    「好きな相手に見返りを求めず、声を掛けずに一緒の場所にいられるだけで良いと思ったことはある?」

    返答に困り、女子生徒達は顔を見合わせるばかりで答えない。

    多少なりとも相手の気に留まりたいと思うのが普通だろう。
    淡にも、それは理解出来る。

    けれど・・・。


    『別に先輩が私のことを見てくれなくてもいいの。今の状態で満足してるから』


    咲は、自分とは違い過ぎる。
    違い過ぎて、気になるのだろうか。



    ――――

    199 = 190 :

    書き溜め分終わり。
    次は2、3日後に投下予定です。

    200 :

    乙乙


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