私的良スレ書庫
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元スレ八幡「お前の21歳の誕生日、祝ってやるよ」雪乃「……ありがとう」
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お待たせしてすみません
本当は黙ってしれっと更新したかったんですけど、スレ落ちの可能性があるので生存報告だけでも
次の土曜日に頑張って更新します!
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そこまで姑息なやつじゃないだろ>>1は
たぶん
たぶん
「来て、くれるか?」
俺が訊ねると、雪ノ下はひっそりと眉をひそめながら目線を横に逸らした。
いま、何を考えているのか。
って、俺がそう思えた立場じゃないわな。
彼女の方こそ、俺の提案にただただ疑問符を浮かべていることだろう。
何度訪れたか、再びしばしの沈黙。
それが殊更、俺を焦らせた。
本当はすぐにでも連れていきたい。
しかし、彼女にもしその気がないのなら、さすがに気持ちを汲んであげねばならない。
でもそうなると、俺と雪ノ下の築いた関係を再び繋ぎ合わせることが難しくなる。
それはもちろん、奉仕部で過ごした3年間の出来事も思い出すのが辛くなってしまいかねない、ということだ。
そんなこと、俺は1ミリも望まない。
過去に望んだことだって当然ない。
雪ノ下もきっと、そう想っている……たぶん。
ちょうど4年くらい前のことだろうか。
俺は奉仕部のやつらに、つい思いの丈を涙と一緒にこぼしてしまった。
そこで放った言葉をいまも忘れることができないでいる。
「……俺は、本物が欲しい」
ふと口にすると、彼女の目の色は明らかに変わっていった。
あの時と……、そして、現在も。
形は違えど。
「…………変わ、るの?」
彼女の潤んだ瞳から、一光の煌めきが滴っている。
隠そうとせず、俺に見せつけるかのような。
見たことのないその姿に、さすがに平常心を保つことは無謀である。
だが同時に、彼女の泣き顔は綺麗だとも思った。
「……本物に、変わるの……?」
言うと瞬きをして、今度は頬を伝うことなく、瞳から離れるように床へこぼれ落ちていった。
やはりそんな彼女は綺麗で、とても醜かった。
彼女の流す涙は、嬉しさや怒り、悲しさから来るものではないのだ。
ただ不安で不安で仕方ない、極限の状態だからこそ溢れてしまった。
そんな涙を見て、俺は解れた頭のなかをひたすらかき回し、言葉を紡ぎ出す。
「変える……」
いや、違う。
「手に入れるよ、絶対に」
これで俺の腹は括られた。
勝ち逃げしてやる、2人で。
ようやく邪魔な水滴が拭われると、彼女は軽く微笑んだ。
「……行きましょ」
・・・・・・・・・・
雪ノ下はすぐさま部屋からブラウンのロングコートを取り、上目遣いに俺を見ながら袖を通す。
ジッとこんなに目を合わせるのは随分と久しぶりな気分だ。
財布とスマホをポケットにしまい、くるっとマフラーを巻くと準備が整ったようで一度頷いてきた。
玄関でそれぞれの靴を履き、戸締まりを行うのを半歩後ろで見て待つ。
下りのエレベーターに乗っている間は会話もなく、ドアを見つめているだけの空虚な一時だった。
見かけはそんなんでも、俺たちの気持ちは常にお互いを意識していて、なんともこそばゆいものである。
エントランスを出ると彼女は一旦足を止めた。
俺の行く方向を窺うつもりだろう。
ここへ向かうときに通った道々を進もうと、右へ曲がる。
少し早歩きで俺に追い付くと、肩を並べて同じ歩調で歩き続けた。
彼女のちょうど良い歩幅に合わせるため、いつもよりゆっくりめに進む。
手がほんのりかじかんだので、ズボンのポケットに手を突っ込む。
ふと見上げると夕闇はすっかり落ち、周りにそびえ立つビルやマンションの明かりをよそに、月が一際目映く光っている。
俺を真似たのか、雪ノ下も空を仰いでそっと呟いた。
「月がきれい……」
そんな一言を聞いて、つい顔が綻んじまう。
「そうだな」
人と月を眺めるのはいつ振りだろうか。
……一人で見るよりも、美しく思えた。
隣で寄り添い歩いているのがコイツだからかもしれないけどな。
5分ほど歩くと着いたのは、海浜幕張駅だ。
改札の方へ向かうと、彼女は手早くICカードを手に取り、少し遅れてゲートを潜った。
ホームへ上るエスカレーターを見て、ふと彼女に問う。
「トイレ、平気か?」
急かすように外出の準備をさせてしまったので、もしかすると……と思ったからだ。
「ええ、大丈夫」
口の端を上げそう答えるので、俺は頷きをもって返事と代えた。
乗り場へ向かうと、あと2分ほどで電車が来るらしい。
帰宅ラッシュということもあって、下り方面から来る電車からはわらわらと人が降りていく。
俺らは上りの東京方面へ向かうホームにいた。
「まさか、電車に乗って向かうとはね」
二列に並ぶ乗車位置の隣に立つ雪ノ下がそう言う。
「すまんな、歩いて行ける距離じゃなくてな」
さすがに電車移動ということくらいは言っといた方が良かったか。
そう思ったところに彼女が口を開いた。
「いいわよ」
俺の立つ向きとは逆に、電車がやって来る方向を見つめながら一呼吸置いた。
「……すこし、デートみたいであるしね」
直後、電車が到着するアナウンスが真上のスピーカーからうるさく響いた。
恥ずかしいことを言われてなにか返そうと思ったのに、完全にタイミング失っちまった……。
まさかそれを狙って言ったんじゃないんですかね……?
そうしてやって来た電車は当駅始発らしく、難なく座ることができた。
一応、紳士の振る舞いをすべく、雪ノ下に座席の端っこを譲った。
世のカップルってこういうことで揉めたりしてしまうんだろうか。
……まあ、俺たちには関係ないことだな、きっと。
「寝過ごさないようにしてよ?」
少し顔を近づけ、小声で囁いてきた。
「当たり前だろーに。計画おじゃんになっちまうだろ……」
そう告げてから15分ほど経ったあたりで、隣の雪ノ下が妙にソワソワしているように窺えた。
平静でいるときよりも顔が色んな方向に動いているのだ。
新浦安駅を発車すると、車内アナウンスが再生された。
『次は、舞浜ァ 舞浜ァ お出口は、右側です』
そうなると次は、向かいのの車窓を見つめながら目を頻繁に瞬かせていた。
あぁ……コイツ、次がディスティニーリゾートの最寄りだからって、すげぇ期待してるよ……。
顔は冷静を装ってるのに、すげぇワクワクしてやがる。
そして舞浜駅に到着し、ドアが開く。
雪ノ下が俺を睨むように見てくる視線がビンビンに伝わってくるが、寝たフリを貫き通しなんとか切り抜いた。
横目でチラッと彼女を眺めると、切なげな面持ちで次第に離れてゆく夢の国を目で追いかけていた。
…………まあ、考えとくよ。
ディスティニーの名残を残さず、電車は江戸川区に突入したのでもうそろそろだな。
心なしか俯いていた雪ノ下に顔を寄せると、驚いたかのように目を開き見返してきた。
「次、降りるぞ」
「え、次……?」
『次は、葛西臨海公園 葛西臨海公園……』
まさしくそこが、俺が彼女を連れて来たかった場所である。
意外と降りる人が多いようで、停車寸前になると多数のカップルらが立ち上がった。
そうしてドアが開き、ぞろぞろと降車する乗客たち。
ホームに降り立ち、振り返ると雪ノ下が困惑とした表情をチラつかせながら周りを見渡している。
……これはしっかりと先導しなきゃな。
意を決して、スッと彼女の右手を掴んだ。
「あっ……」
雪ノ下が漏らしたその声を聞くと、次第に俺の胸が高速で鼓動を打っていることに気づいた。
たったこんなことで、互いが恋愛ベタ全開な反応を示すなんて参ったもんだわ……。
俺もまだまだだな。
封印していたラブプラスとかをこっそりやりこんで、シチュエーションの復習くらいしとくべきだった。
「……こっちだ。行くぞ」
彼女の掌を引き、下りのエスカレーターに向かう。
俗に言う恋人つなぎではなく、指先まで触れるように繋いではいない。
今まで何度か指を絡め合うことはあったが、いざ公衆の面前でとなるとどうにも踏み出せないでしまう。
改札口でそれぞれICカードを出す必要があるのだが、どちらとも手を離そうとせず、空いた片方の手で取り出してはそのまま駅前ロータリーに出た。
……え、これって間違ってるの?
一人で考えては苦笑を浮かべる始末。なかなかにきめぇ。
そうすると、繋がれた手が二度軽く引っ張られた。
横の雪ノ下を見ると、驚きも疑問も浮かべない、いつもの無表情のような面持ちで遠くを見つめている。
「……ねぇ、ここって?」
問うと、俺に顔を向けた。
駅舎のオレンジ色の灯りが彼女を照らし、忠実にそして上品に描かれた肖像画を見ているような気分だ。
こういう形の灯火が、雪ノ下の顔立ちの良さをさらに引き立たせるのだろう。
「こっからまた少し歩けば、ようやく着く」
「かなり、移動するのね」
そう言うと、さっきよりも強く俺の掌を握ってきた。
「……はぐれるのは、嫌だから」
彼女は俺から視線を外し、下を向きながら呟くように言う。
それを見て堪らず俺もぎゅっと固く握り返してしまった。
そんな仕草見せられたら、もう無理だっつうの……。
「……離すなよ」
そう告げると、共に並んで歩き出す。
公園からすぐの場所に海があるため、こんなところからでもほんのり磯の香りを感じる。
腕時計を確認すると、あと10分といったところか。
事前に見たサイトによると、駅から歩いて7分くらいらしいから丁度いいな。
日を経るごとに寒さは増していき、いまも冷たい風が吹いている。
でも、右手はしっかり温かい。
舗装された道を歩きながら横目で彼女を見ていると、つい目があってしまった。
ドキッとした気持ちと、ビビってしまった驚きがダブルでパンチしてきた。
一瞬逸らしてしまったが、視線を戻してみると雪ノ下は変わらず俺を見つめ続けている。
こういうの、苦手意識ないんかなコイツ。
等間隔に立ち並ぶ街灯によって、はっきりだったり暗くぼんやりだったりを繰り返しながら、彼女の瞳を確認できる。
おう、何やってんだ俺たち。
そう思うとつい気恥ずかしくなり、また再度目を逸らす。
「ふふっ」
すると、隣からくすくすと笑う声が聞こえた。
「な、なんだよ」
気になって彼女に改めて顔を戻してみると、誇らしげに微笑んでいた。
「あなたが先に逸らしたから、私の勝ちね」
「………………っ!」
あぁ、そ、そういうことすか……。
本当さ、頼みますから、そんなに可愛さ出さないでくれないか?
もう限界に近いんでお願いしますってマジで!
「……お、俺の負けだな、そうだな」
負けたら罰ゲームがあるようで、なんだか俺の心臓部が苦しくなってきた。
くそう、辛いはずなのにすっげぇ満たされてる気分だぜ!
そうしているうちに、目的の場所が見えてきた。
「ここ……だな」
辺りは薄暗く、緩やかな波の音が響き渡る。
俺たちのいる海沿いの歩道から、目の前には真っ暗闇に広がった東京湾が映っている。
「どうして、こんなところに?」
雪ノ下が当然訊ねてくる。
現時刻は18時59分。
もうすぐに分かることだから、あえて返事をせずに黙ってその時を待っていた。
すると、海の向こう側。
俺たちがさっき通ったあの場所で、多色多彩の明かりが点された。
幻想的なBGMが歪んだような、分散された欠片となったパレード音がこちらまで届いてくる。
「あれって……」
歩道の柵に手をかけ、その様子を眺めていた。
その時。
その時。
突然目の前の海が、煌々と輝き出した。
こちらへ寄せられる波の一つ一つが飾りとなって、水面の明かりを芸術品のように表す。
雪ノ下は驚きを隠せず、見開かれた目は何度も瞬きをしている。
まだ、気づかないか。
「後ろ、見てみ」
俺が言うと、海辺の方向からそっと振り返る。
「!」
そこには、無数の光が視界いっぱいに映し出された。
木々に編まれた電飾。
広場に咲き誇る色とりどりの明かりの束。
そして、一段ずつ綺麗に煌めく階段を経て辿り着く、まるでお城のように橙色や蛍光色などの輝きを放つ眺望台。
これは思っていたよりもだいぶ豪勢なイルミネーションの数々だ。
「すごい……」
無意識なのか、声に出さずしていられなかったのか、彼女がそう口にした。
「こんなに、光るもんなんだな」
俺の率直な感想がそれだった。
いや、画像で見たときよりも強烈な発光具合なんだよこれ。
「……すごく、綺麗」
「そうだな」
寄り添った状態でそのイルミネーションを眺めながら、思い思いに呟く。
さっき駅前で見たときよりも、彼女の姿はとても映えていた。
綺麗な飾りに照らされた雪ノ下雪乃は、美しい。
その一言でまとめるのが精一杯なほどだ。
……そろそろ、言うべきだな。
乙。相変わらず最高だぜ。
頑張れ>>1 お前がNo.1だ。
頑張れ>>1 お前がNo.1だ。
いつの間にこんなに更新してくれてたとは
ちゃんと次スレ立てて続き書くんですよね?
ちゃんと次スレ立てて続き書くんですよね?
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