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元スレ八幡「お前の21歳の誕生日、祝ってやるよ」雪乃「……ありがとう」
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「電話、小町さんから?」
しれっと彼女は尋ねてきた。
「あ、あぁ。……なんでわかったんだ?」
「電話越しの声が聞こえてきたから……」
あー、小町の声ってよく響くからなぁ。
地下鉄の車内でもすらすら聞き取れるだけあって、声量と高さが他よりも多いんだろう。
逆に俺の場合はなに喋っても「え?」「なんだって?」と聞き返されるばかりなので極力声を出さないように努めている。
ほら、普段から会話数が少ないとハキハキ言葉が出なくなるから……。
だが逆説的に『地下鉄=会話に適していない空間』ということなので、そもそもくっちゃべってる奴らが悪なのだ。
外にいるときより声でかいし、調節間違えてかなりうるさい馬鹿もいるし。鬱陶しいし!
地下鉄では車輪の回る音、車両のモーター音、車内アナウンスのお姉さんの声だけ響かせとけ。あとはいらん。
全員ぼっちを装ってください。
なんでこんな場面でこんなクソ食らえな独白をせにゃならんのだ。
なにしろ元凶は小町なのだが……。
いや、俺がすっぽかさなければこんなことにならなかったんですよねハイ……。
「……それで、小町さんと約束があったんでしょう?」
疑問符を浮かべ俺を見つめる素顔の雪ノ下。
さっきまで涙を流していたような気配は一切感じられない。
「約束組んでたのをすっかり忘れててな……。だからそっちに行かなきゃならなくなった」
俺はバツが悪そうな顔のまま、彼女から顔を逸らしてしまった。
ただ俺がカッチョ悪いというだけの結果なので、恥ずかしくて目を合わせられないからだ。
「そう……」
別段感情を変えた様子もなく、短い応答をしてきた。
「でも……勿体ないわね。せっかく買ってもらったおでん……」
「ああ……」
さっき彼女が温め直してくれたコンビニおでん。
本当は二人っきりでじっくり味わうつもりだった品物。
上流階級である雪ノ下に気に入ってもらえるか不安だったが、俺の食べたいものを二人で共有したくて。
……こんな後味寂しいものになるなら、買わなきゃよかっただろうか。
ふとテーブルを見やると、すでに冷めた細かい大根と、彼女の食べかけの玉子が静かに汁に浸かっている。
そして俺たちのいる空間も、沈黙に浸かってしまった。
彼女はいま、なにを考えているんだろう。
なにを思っているんだろう。
そこで俺は、なんと口を開けば良いのだろう……。
「…………比企谷くん」
沈黙から引き揚げたのは雪ノ下だった。
俺の名前を呼び、ひと呼吸置く。
「……とっておくわ、おでん」
言葉の真意を理解するのに時間はかからなかった。
そうだ、今日がダメなら明日がある。
明日になっても、変わらず雪ノ下はこの部屋で待っていてくれる。
焦らなくても良い。
ゆっくりでも、彼女をさらに深く知っていけるのだから。
すると俺も、言葉がすぐに思い付くと口が開いた。
「……明日、食べような」
「ええ……」
柔らかで嬉しそうな表情を向けられる。
ほんの小さなものであったが、笑顔を頂くことができた。
これで、今夜思い残すことはない。
はやく約束を果たしに行かないと小町に目で殺される。
玄関まで向かうと、雪ノ下が付いてきてくれた。
靴を履き、紐を結び、立ち上がり、身体を反らす。
「じゃあな」
「さよなら、気を付けてね」
軽く右手を挙げ、そっと扉を閉めた。
エレベーターに乗り込み、一階を目指す。
下降を感じ佇みながら、スッキリした気持ちとモヤモヤした想いが二律背反で対立する。
最後に笑顔が見られて良かった、という気持ち。
……本当は、もう少し一緒にいたかった、という想い。
やだ、なによこの乙女!
どんだけ好きなのよ、アイツのこと……。
目的階に到着して降りると、そこで違和感。
あれ、来たときより身の回りが軽いぞ?
そこで気付いた失態。
コート忘れてきてもうたああああああああああ!!!!
エントランスで独りがっくり項垂れる俺氏。
それなら取りに戻ればいい話なんだが……。
そうするといよいよ、俺が我慢ならずに約束を放棄しかねない……。
仕方ない。寒いなか鼻水垂らして「凍っちゃう凍っちゃう凍っちゃう」って言いながら街を歩くか?
どうする、俺?どうすんのよ!?
「……比企谷くん!」
「うわゎっ!」
声の方へ振り向くとそこには、たった1分前まで共に過ごしていた、雪の女王の姿が。
「ゆ、雪ノ下……」
「外に出るというのに、薄い格好だと思ったら……」
彼女の右腕に掛かっている、求めていた羽織り物。
「……忘れものよ」
「…………サンキュ」
マジでけっこう感激してるんです俺。
物を受けとり、すぐさまコートに袖を通す。
あーこれだよ、求めていたのさこの厚着を!
「くしゅっ」
ん?いまのくしゃみ……
って、コイツしかいないよな。
「……なんだよ、もう寒いのか?」
「部屋の室温がずっと高かったから……」
「冷え性過ぎるだろお前……」
そんなエントランスと部屋の温度差あったか?
萌え豚ハフハフ男とキリスト女大生の合コンじゃないんだからさ……。
ちくしょう、せっかく出るときまで我慢してたんだが……
まあ本人がいる前で、ずっと意地張ってても仕方ないから。
「あっ…………」
思うが早いか、その時には彼女を抱き寄せていた。
ちょっぴり冷えた彼女の身体がみるみるうちに温くなる。
「……明日せっかく来ても、もし風邪の看病することになったらイヤだしな」
なんて、猿でもわかるクッサイこじつけ。
いっそ、何も言わずにすればキマってたろうか。
「…………ふふ、バカね……」
愛情の裏返しだったのか、そう言うと俺の胸元に顔を預けてくる。
雪ノ下なんでこんないい匂いすんだよ、生活に欠かせなくなっちゃうだろ。
ああもうダメだ、止めどきが見当たらない。
なんか、もうずっとこのままでいい気が…………
「もう、おしまい」
気づけば雪ノ下は俺から一歩距離を置いていた。
「ファッ!?」
な、なんか嫌がられるようなことしたか?
そりゃかなり強く抱きしめちまったが、それは隠蔽ゼロの愛情表現であるからにしてだな!
俺がどぎまぎしてる目の前で、なぜだか変な方向を向いている雪ノ下。
そして唇を湿らせ、視線だけで俺を見つめて口を開く。
「……これじゃいつまで経っても、拒絶する気になれないから…………」
……え?
「……また、明日」
いつだか見た、校舎で別れたときの雪ノ下。
初めて俺にさよならの挨拶を告げてくれた、あの時と同じような去り方。
俺は彼女がエレベーターに戻る姿を、ただ呆然と見つめるしかできなかった。
エロ同人的に、頭が真っ白だよぉ……状態であった。
サボりまくってたせいでたいして話が進まぬまま気づけば、今週土曜日がゆきのんの誕生日とは……
いままでの分を取り戻す勢いで鋭意執筆してるのでお待ちください。
今日中にもう一回更新します!
いままでの分を取り戻す勢いで鋭意執筆してるのでお待ちください。
今日中にもう一回更新します!
てか八幡とゆきのんラブラブすぎない?
本当にシリアス展開なるのこれ?
本当にシリアス展開なるのこれ?
そもそも雪乃に抱えている問題なんて無くて、ひたすらイチャイチャするだけもわたしは一向にかまわんッッ
改めて再読してみたらこの八幡思考が童貞臭すぎて、後にくるであろうシリアスが心配になる
・・・・・・・・・
タワーマンションを出て、海浜幕張駅からバスで実家最寄りへ。
同じ幕張なので、なんなら歩いて移動できる距離まである。
普通こういう暇なときには、スマホでひたすらツムツムしてるところなんだが……。
なんだ、このやるせない虚無感は……。
いままで体感したことのない、一抹の寂しさが全関節に詰まっているような、この身動きの取れなさ。
最後にアイツが言い放ったあの言葉……
「いつまで経っても、拒絶する気になれない……」
彼女の思うことはつまるところ、
『もっとも~っと抱きしめてほしい』
……ということですよね?
や、やだっ、顔赤くなってきちゃった……!!
こ、ここここれが俗にいう恋なのっ……!?
え、折本?
なにそれ横浜にある小学校でしょ?
にしても、雪ノ下は本当に素直じゃない。
あんな遠回しな表現をするもんだから、どういった反応が正しいのか考えてるうちにアイツいなくなるし。
高校時代はアイツのそーいうところが可愛くねえと思ってたが……
変わっちまうもんだな、感受ってものは。
チンポーン 次、止マリマス
ん? 次なんてバス停だ?
うわあっぶな、ちょうど降りる停車場じゃんかよ。
そんじゃ到着する前にボタンの感触でも愉しみますか。
ポチポチポチポチ
うむ、この押し心地エクセレント。
俺たぶん雪ノ下と付き合ってから、いろいろぶっ飛びはじめてると思う。
・・・・・・・・・・
バス停から歩いて5分とかからないうちに、実家に着いた。
これと言って感動もなく、先週帰ったときよりも枯れ葉が散ってるなと思いましたまる
玄関の扉を開けると、家族の笑い声がリビングから漏れ聞こえてくる。
「ただいまーっと」
いつもの声音で帰宅を告げる。
『あ、やっと帰ってきたっぽい!』
とっさに気付いたのは妹のようだ。
なんだよ帰ってきた“っぽい”って。
確信を持って出迎えしていただきたいものだよ。
そしてこっちへ寄ってくる妹・小町。
小町「よかったー、思ったよりもとっとと早く来てくれて」
「そらな、愛スル妹ノタメナラバ何処カラデモ翌来ルワヨ」
小町「なんでロボットみたいにカタコトなの? ペイマックスですらもっと流暢だよ?」
ああいかん、約束をすっぽかしかけた俺はしぶしぶ帰宅を決意しました。って気持ちが出ちゃうところだった。
しかし流石やはり俺の妹だ。
成長するたびに段々魅力がかかってきてるな。
髪型はそう変わらんでも、身長は中学の頃よりまた伸びて雑誌モデルになってもおかしくないから、そろそろSEVENTEENの表紙飾ると思うわ。
胸も……まぁそうさね、並ぐらい……
小町「どこ凝視してますかアナタは」
「アォチッ!」
俺の向けてた視線の先に当の本人の顔がフレームインしてきた。
しかもものっそいジト目。
「はぁ~、ダメだよ? 実の妹にそんなムッシュムラムラしちゃ」
「大丈夫だ、問題ない。そんな古いギャグかます時点でその線はもう消えた」
「ぐへぇー」
上半身だけでずっこけた感じを表現したっぽい。なにそれ流行ってんの地味にウザかわ。
…………うむ、雪ノ下で想像してみたらあれだな、捗るな。
「ほら早く靴脱いで。鍋のお肉ちゃんとお兄ちゃんの分のこしてあるから」
「おお、気が利く」
頼むぞ小町、俺に余計な質問だけはするなよ……。
雪ノ下とのことはまだまだお前にゃ刺激が強いからな……。
・・・・・・・・・・
食事も片付き、両親は明日も早くから仕事のためすぐに就寝。
俺は小町と一緒にリビングで食後のコーヒーを飲みながらゆっくりしていた。
実家だからこそホッとする、なんとも平穏な過ごし方だ。
つい2時間前にアイツと舌を絡ませていたのがまるで幻想のようだ。
よくそんな直後に実家へ帰ったもんだよ。
「お兄ちゃん、ボーッとしてどうしたの?」
「……いや、俺もいっちょまえな男になったなぁって思いに耽ってたんだ」
「どしたの急に? 彼女でもできたとかー?」
ファッ!?
あははーと笑いコーヒーをひと啜りする小町。
そして、なにも返事ができずに目が泳ぎっぱなしな俺。
そんな兄貴を見かねた妹が瞬時に顔を硬直させる。
「え……?」
ヤバイ、感付かれたか?
「えぇーーーっ!?」
アカン、感付かれたわ(白目)
「ちょっ、嘘でしょお兄ちゃん!!あちゃっ!」
あまりの驚きで履いてたジャージにコーヒーをこぼす始末。アホや。
いや、即座に否定しなかったよ俺もアホなんだけどさっ!!☆
なぜ言葉が出なかったんだ……。
最愛な妹に対して嘘はつけないという善良な心が、俺に静止をかけたんだろうなチクショウ。
「ほ、ほほホント? ついに春がやってきたの?出来たの彼女ケホゴッホゲホッ!」
あまりの衝撃でむせぶ妹にどう声をかけたら良いんだ。
まぁ事実なことにはまちがいないし、そろそろ小町を安心させた方がいいだろうな……。
「……まぁ、本当、です」
「ケホッ、すごい!やったじゃん、お兄ゴッホ」
画家の兄貴みたいな呼び方をするほど、小町にとっても喜ばしいことだったんだろうか。
もちろん嬉しいけど、なんか今まで心配かけてすまなかったという気持ちの方がでかいわ……。
「で、相手って誰!小町の知ってる人なんでしょうか??」
目をキラキラ輝かせながら、拳をマイクに見立てて俺の口元へ突き当ててきた。
やっぱ訊くよなぁ……、どうしようか。
こうなったら包み隠さずおっぴろげちゃえば、後々気が楽なんだろうけども……。
一応、曖昧な言い方で誤魔化しとこう。
「ええと……ご想像にお任せします」
「お、いまのは肯定と捉えてよろしいということですね!?」
え、ちょっと待って。
ちっとも濁せやしなかったんだけど!?
なんなら綾鷹の方がもっとドロドロ濁ってるレベル。
もはや隠すという選択肢は残されてないんじゃないですかね?
にしても小町の食いつきっぷりがとんでもなくてすごい圧倒されちゃうんですけど助けろ(涙)
「もしかして雪乃さんだったりしてー?」
「はいっ!?」
素で驚いちゃった時点でもうこれ挽回の余地なんて無いですよね?
なんか顔が湿っぽいんだけどなにこれ緊張の賜物?(脂汗)
「……え、もしかして当たり?」
たぶん俺の心拍数はこれ以上あがったらハートが飛び出てしまう。
もういいや、バラしてまえ!!
「……あんま広めんじゃねぇぞ」
目を逸らしながらそう告げたと同時にみるみる顔が熱くなってきてしまった。顔アツッ!
素直じゃないがしっかり認めたことになる。
にしても、好きな人をカミングアウトするのって思ってた以上に羞恥プレイなんだな……。
学校で教えてくれなかったことをいま初めて学べた気がした。学びたくなかった。
すると、近くから何やらすすり泣くような声が聞こえ……
は!?なんでどうした!?
「お、おい小町!お前なに急に泣きだして……」
「うぅぅ……おにいちゃぁん……」
下を見つめながら涙を拭う妹の姿を見るのは久々だった。
なんだよ、雪ノ下にいじめられた過去でもあったのか?
「……よかった……お兄ちゃん良かったねぇっ……ヒクッ」
「小町……?」
そりゃあ俺にとって初めて彼女が出来たわけだし、祝福してもらえるのはとても嬉しい。
でも、なぜそんなに涙が溢れてしまうんだ?
「うぅっ……雪乃さん、気づいてくれたん、だよね……?」
「え?」
目元を擦りながら、嗚咽混じりに言葉を続ける。
「お兄ちゃんってこう見えて、優しくてっ……変に人想いで……」
顔を上げ、俺と目が合うとまた口を開く。
「……それで実は、けっこう、イイ男なんだよ、ってこと…………」
赤くなった目ではにかみながら微笑んできた。
「……お兄ちゃんに、しっかり隣に寄り添ってくれる人が……できてくれて、良かった……」
「小町……」
こんなに俺のことを想い、涙を流すほどに交際を祝してくれるなんて思いもよらなかった。
……小町のおかげで、俺まで視界がぼやけてきた。
「えへへ……なんでこんなに泣いちゃってんだろ、小町」
「本当だ、ビックリしたわ……」
平常心を装っていつものように突っ込むのが精一杯だった。
「……でも、やっぱり嬉しいからさ。お兄ちゃんを愛してくれる人が、ちゃんと他にもいたっていう事実が」
「…………ぷふっ」
いまの小町の言葉で、つい照れ笑いしてしまった。
よくそんなこと云ってくれるな……。
「……あっ、いや!えっと……」
当の本人もようやく気づいたか、眼よりも赤くなった顔で言い訳を考えている。
でもきっと、こう言うはずだ。
「い、いまの、お兄ちゃん的にポイント高い、でしょ……?」
……そうだな、今までで一番高いぞ。
「ありがとな、小町」
すると俺の腕が自然と小町の方へ運ばれる。
「あっ……」
久しくやってあげてない、小町の頭をなでなで。
良いことすると、よく求めに来たものだ。
飼い慣らされた猫のように、気持ち良さそうに顔をほころばす。
「ねぇお兄ちゃん……」
「ん?」
「これ、小町的にものすごくポイント高いよ……?」
そりゃどうも。
こんな大盤振る舞い、貴重だからな。
家族の良さを、小町の愛を、改めて実感できたひとときであった。
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