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    元スレ八幡「徒然なるままに、その日暮らし」

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    1 :

    「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のSSです。
    漫画版から入って原作読んで見事にハマってしまい、勢いのまま書きました。
    8巻が待ち遠しくて仕方ない……
    遅筆ですが、ゆっくり進めていきたいと思いますので、よろしければお付き合いください。


    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1370617665

    2 = 1 :

    ① 漫然と比企谷八幡は未来に思いを馳せてみる


    『高等教育という言葉が市民権を得てから久しい。
    戦後日本の経済復興のその目覚ましいスピードに焚きつけられるが如く、教育はその制度もその内容も加速度的に向上させ続けてきた。
    もちろんこの事実とその功績を否定するつもりは毛頭ない。
    今俺たちが恩恵を受けている様々な製品やサービスもまた、そんな教育や経済の発展により生み出されてきたものであり、それを手放すことを是とできる者などいないだろうことは想像に難くなく、故に否定できる道理など存在しない。

     しかし、西暦も既に二千年代に突入し、それでもなおもその加速度を緩めることなく疾走を続けんとする現状に対して、俺は疑問の声を投げかけたいと思う。
    重ねて言うが、何も教育制度そのものを否定したいわけではない。
    それが果たして現代の世相と照合してなお最適なものと言えるどうかと問いたいのだ。

     団塊の世代、氷河期世代、ゆとり世代――連綿と続く歴史に思いを馳せてみる。
    なるほど、高度経済成長期という一つの揺るぎなき成功例が、当時の教育制度の適切さを示す一つの証拠となっていることは事実だろう。
    だがその後はどうか?
    時は流れ、バブルの崩壊から、見せかけだけの好景気が長く続き、そして気付いた時にはデフレの真っ只中。
    明らかに減速し、あるいは衰えすら窺えてしまうのが現状だ。

    3 = 1 :


     経済を動かすのも、国を動かすのも、人だ。全ては人に始まり人に収束する。
    詰まる所、斯様に経済大国の名を欲しいままにしていた日本という国が、今こうした閉塞感に陥ってしまったことは、他でもなく人に起因すると言っていいだろう。
    それはすなわち、経済を、国を動かす人材が、時代に即したそれでなくなった――少なくともその比率を大きく下げてしまったと考えるのが自然ではないか。

     その理由は、まず何よりも教育制度にあると思うのだ。
    現行の教育制度において、学習の内容は全て画一的な形で学生の元に示され、また学ぶ際には皆が徹底的に管理されて、さながらベルトコンベアーで流れる工業製品のように作り上げられているような気さえする。
    もちろんそのやり方の全てが間違っているとは言えないだろう。
    型にはめるようなやり方は、大きく外れた者を現れ難くする効果が期待できる。
    けれど同時に、優れて突出した者もまた現れ難くなってしまうのだ。

     皆が横並び。安定で平穏。それだけ聞けば悪いことではないようにも思えるが、決して良い事とも言い難い。
    個を殺し、我を潰し、小さく型に嵌めてしまうことを、出る杭を軒並み打ち据えてしまうことを、果たして教育と言ってもいいだろうか?
    学問の基礎を教えることは大事ではあるが、しかし何もかもを教科書通りに杓子定規に当てはめることが正しいとは思えない。
    真の教育とは、その人の個性を見出し、伸ばし、その上で必要な知識や経験を与えることにこそ主眼を置くべきではないのか。

    4 = 1 :

     誰も彼もを、量産型の、上でも下でもない中間レベルの人材に仕立て上げることが求められる時代は終わった。
    一億総中流という言葉が闊歩していたのは昭和の時代までだ。
    平成の時代には、当然それに即したスタイルを見出さなければならない。
    それが他ならぬ現代を生きる俺たちの責務というものである。

     だから今こそ固定観念を廃棄し、俺たちは新たな視点で進むべき道を模索するべきだ。
    人によっては、今まで通りの制度に邁進することが最良ということもあるだろう。
    だがそうでない者にまで、この旧来通りのやり方を押しつけることは止めよう。
    それが明日の日本を明るく照らす第一歩になるかもしれないのだから。

     よって俺もまた、あらゆる外的圧力を跳ね除け、あらゆる束縛から逃れ、ここで高らかに主張しよう。
    従来通り、旧来通りの回答ではないかもしれないが、自分の素養と本質を見極め、最適解を提示したいと思う。
    すなわち、高校を卒業したら家庭に入ることを、俺は第一に志望する』

    5 = 1 :

    「一度外科手術でも受けてみたらどうだ?」
    「言葉の意味が分かりかねます」
    「なに、医者に診てもらうだけでは足りんだろうと思ってな」
    「何か問題ありましたかね?」
    「お前は聞かんと分からんのか?」

     放課後の職員室で、平塚先生の悩ましい声を聞きながら、今読み上げられた渾身の進路についてのレポートを思い返してみた。
    いくら俺だって、自分の意見が一般的ではないことは重々承知している。
    だからこそ丁寧に且つ迂遠に攻めてみたのだが、何が不味かったのだろうか?

    6 = 1 :

    「あぁ、結論を最初に書くべきだったとかそういう?」
    「そうだな、そうしてくれていれば長々と下らん戯言を読むことなく最初からこうできた」

     言うが早いか、先生の拳が俺の腹部にめり込んだ。
    ひゅっという変な声が自分の喉から漏れる。
    一瞬自分に何が起こったのか分からなかった。
    ……声が出ねぇ。つか息ができない。待って、これちょっとやばい。
    殺人級の拳を躊躇いなく教え子にぶつけられる先生の常識も超やばい。

    7 :

    改行した方がいいと思うぞ

    期待してる

    8 = 1 :

    「悶えるな、気持ち悪い。いいから聞け」

     よくねぇよ。理不尽過ぎるだろ。
    まぁいつものことといえばそうなんだけど。
    いや、この理解もどうなんだ? 諦めるポイントがずれている気がする。

    「全く、奉仕部で経験した様々な活動から何も学んでこなかったのか? 君は」
    「学んだからこその今の結論だったんですが」
    「なお悪い」

     呆れたように先生が小さくため息をつく。
    少しだけ憂いを帯びたその表情は、ついさっきの蛮行が無ければ艶っぽさを感じられたかもしれない。
    相も変わらず残念美人だ。天も二物くらい与えてやれよと思う。

    9 = 1 :

    「そもそも何なんだ、家庭に入るというのは?」
    「文字通りの意味です」
    「当てがあるのか? 当てが」
    「今はないですけど、まぁ見つかるまでは花婿修行的な感じで」
    「阿呆かお前は、いや阿呆だお前は」

     暴言で締められた。
    いや、今の別に言い直す必要なかったよね。
    自分で聞いといてそれはひどいと思う。
    それともあれか、自分が家庭に入りたくても入れないという嫉みが……

    10 = 1 :

    「今何を考えた?」
    「いえ何も、全然、全く、これっぽっちも」

     瞬間睨まれる。
    鋭い……勘も視線も鋭過ぎるだろう。
    既にして物理的圧力を錯覚する程の勢いだ。
    何? もしかして俺ここで亡き者にされるの?
    こんなに人目のあるところでまさかそんな、と思いつつも、背中に一筋の汗が流れた事実は否定できない。
    なるほど、これが殺意というものか。

    11 = 1 :

    「……もういい。馬鹿な話をこれ以上続けても仕方がない。もう一度書き直して明日再提出しろ」
    「どうしても駄目ですか?」
    「むしろ何故これが通ると思った?」
    「いや、先生の願望にもマッチしてるから、その辺の勢いでこう」
    「少し黙れ」

     先生の拳が、今度は鳩尾に突き刺さった。
    衝撃は一瞬。でも効果は絶大だ。
    比喩じゃなく腹を貫通されたかと思った。
    ちょっと待って、もう痛いとか苦しいとかじゃないよこれ。
    全然呼吸できないし。生まれたての小鹿みたいに足震えてるし。
    本当にこの人はどうしてこんな条件反射みたいに暴力が振るえるんだよ。
    仮にも国語教師なら、もうちょっと言葉の持つ力というものを信じてほしい。

    12 = 1 :

    「そ、それに、大学じゃなきゃ勉強できないわけでも、働けないわけでもないじゃないですか?」

     腹を抑えながら、でも一応言いたいことは言っておく。
    大学に行くばかりが正解ではないというのは、自分の偽らざる本音だ。
    実際、大学に行ったからと言って勉強するようになるとは限らない。
    むしろ大学に行って勉強してる奴の方が珍しいとさえ聞くくらいだ。
    四年間サークルだのバイトだの何だのに精を出して、適当な論文だけ書いて、それで何がどうなると?

     もちろん社会的評価というものの存在は分かっている。
    大卒という肩書きの重みも知らないわけじゃない。
    けれど、どうにも俺はそれに納得できないのだ。
    別に大学に行くだけが人生でもないだろう。
    そもそもぼっちの俺がそんな所に行って何をしろと?
    俺のそんな主張にも、しかし先生はひらひらと手を振って返すのみ。冷たい。

    13 = 1 :

    「いいから書き直してこい。話はそれからだ」
    「はぁ、了解です」
    「ちなみに次もお話にならないものだったなら、私も対話を諦めるからな」
    「表現が嫌過ぎる……」

     というか今までのやり取りで対話のつもりだったんだ……ある意味そっちの方が衝撃だった。
    二発入れられた拳は、合いの手か何かという認識なのだろうか? 空恐ろしい話だ。
    仕方なく、突っ返されたレポートを受け取り、出口へと向かう。
    その背に、平塚先生の少しだけ穏やかな声がかけられる。

    「比企谷、君の言うことも決して全てが間違っているわけではない。だがそれで全てを結論付けてしまうには早過ぎる。もう少しちゃんと悩んでしっかり考えてから決めたまえ」
    「……分かりました」

    14 = 1 :

     とりあえず頷いておく。
    しかし良いこと言ってるようにも思えるけど、正直その結論を言うだけなら、俺の腹を二回も殴らなくても良かったよね?
    あれですか、欲求不満か何かですか? 何でしたら良いボクシングジムでも紹介しますよ? いやまぁ良いジムも悪いジムも知らんけど。
    もちろん口に出したりはしない、超怖いし。
    今これ以上のダメージは命に関わる。既に体力ゲージは真っ赤だ。何なら無双乱舞撃ててもおかしくない。いやおかしいか。

     ということで、これ以上ここにいる理由も無く、またいても俺の傷が増えるだけだし、と足を引きずるように職員室のドアへ向かう。
    いや、ようにっていうか、気付けば俺、完全に足を引きずって歩いてるんだけど。
    ちょっとこれ、ホントにボディ効き過ぎだって。

     え? どういうこと? ガチだったの? マジでやる気だったの? 冗談きついぞ。
    というかあり得ない。どんなパンチ持ってんだ、この先生。進む道間違え過ぎだろ。
    今からでもプロに転向しろ、プロに。
    もっとも打たれ弱いこの人がリングに上がって本当に戦えるかどうかは割と未知数だけど。

    15 = 1 :

     職員室を出ると、真っ直ぐに奉仕部の部屋へと向かう。
    部室の前まで到着して扉に手をかけると、抵抗は全く感じられなかった。
    つまりは、いつも通り既にあいつがいるということだ。
    おつかれ、と軽く言葉をかけつつ扉を開く。

     部屋の入り口から室内を覗くと、予想に違わずその人――雪ノ下雪乃が、いつもの席でいつものように雑誌を広げている姿が目に飛び込んでくる。
    静かな教室の中、窓から降り注ぐ陽光を浴びて本の頁をゆっくりとめくっているその姿は、整った容姿と相まってさながら一枚の絵画のようだ。
    並みの人間には、触れることはおろか近づくことさえ許されないのではないか、とすら思ってしまう。
    現実にはただ本を読んでいるだけだというのに、相変わらず何をしていても様になるもんだと感心せずにはいられない。
    と、俺が入ってきたことに気付いた雪ノ下が、雑誌に落としていた視線をちらとこちらに向けてくる。

    16 = 1 :

    「あら比企谷くん、どうしたの? いつもより暗い雰囲気のようだけど。十円玉でも落とした?」
    「お前俺のテンションがそんなことで下がると思ってんのか」
    「十円を笑う者は十円に泣くわよ。そもそもあなたが十円を稼ごうと思ったら、何時間働かないといけないと思っているの?」
    「俺をどんだけ劣悪な労働環境に叩き込みたいんだよ、お前は」

     開口一番の毒舌にむしろ安心する。って、んなわけあるか。
    相も変わらず涼しい顔で毒吐きやがって。
    労働基準法を完全無視か。
    世に言う社畜と呼ばれる方々でも、まさかそこまでの悪条件で働いている事もないだろう。
    そんなんだったら俺は逃げるぞ。地の果てまでも。

    17 = 1 :

    「んで、いるのはお前だけか。由比ヶ浜は?」
    「さっき来れないかもしれないと連絡があったわ。補習があるそうよ。無理して来なくても大丈夫と伝えておいたけど」
    「ふーん」

     となると、今日は二人だけの部活か。
    まぁそういう日もあるよな。
    ぐるりと見回すと、何故か部屋ががらんとしているような気がしてしまう。
    たった一人いないだけで、こうも部屋の空気が変わるものなのか。
    というか、あいつの存在感がそれだけ強いってことかね。空気の俺とは大違いだな。

    18 = 1 :

    「それで、実際何かあったの?」

     ぱたんと雑誌を閉じてこちらに向き直る雪ノ下。
    透明な視線が、真っ直ぐに俺の目を射抜いてくる。
    その余りに整い過ぎた器量のせいで、ともすれば感情に乏しく見えてしまうが、もちろん実際にはそんなことはなく。
    本当の所、こいつは割と人情家だったりする。
    今だってまるで興味なさそうに見えて、少し気になってるのがよく分かる。
    意外と少なからず心配してくれているのかもしれない。いや、それは希望的観測が過ぎるか。

     しかしホントこいつ黙ってたらまさに完全無欠だよな。何とももったいない。
    毒舌が封印されたら、それこそ全校中のアイドルにだってなれるだろうに。
    そんな益体も無い事を思いつつ、鞄をいつもの場所に置いて自分の席に向かう。

    19 = 1 :

    「別に大したことじゃないって。ただ進路調査のレポートの再提出を命じられて、その際ボディに何発かいいのをもらったってだけだ」
    「惜しいわね、どうせなら頭にもらえば良かったのに」
    「それは平塚先生に言ってくれ」

     というか、惜しいの意味もどうせの意味も分からない。
    今更頭に数発いいのが入った程度で直る性格だと思ってんのか? 昭和の時代のテレビかよ。
    それか単純に俺が痛い目にあってほしいだけという説もある。
    心配してくれているというのは、やはり俺の考え過ぎだったらしい。
    今日も平常運転のようで安心した。

    20 = 1 :

     と、そんな俺の思考を読んだわけでもないだろうが、ふと柔らかな笑みを浮かべる雪ノ下。
    思わず見惚れてしまいそうな程に綺麗で清らかな微笑。
    しかし、こいつの本性を知っている俺は騙されない。
    雪ノ下は、辛辣になればなるほど良い笑顔になるのだ。
    端的に、俺をおちょくってる時にこそこいつの笑顔は輝くとさえ言ってもいいだろう。言いたくもないが。
    そんな俺の想像に違わず、優しげな微笑みを浮かべたまま、雪ノ下は軽く皮肉を口にする。

    「それにしても進路調査の再提出ねぇ。全く先生も無駄なことをするものだわ。比企谷くんが探さなければならないのは、進路ではなく退路でしょうに」
    「退路を考えてくれるとはずいぶん優しいじゃねぇか。てっきりそんなの真っ先に塞がれると思ってたわ」
    「……相変わらず後ろ向きにポジティブね、あなた」

     予想と違った反応をされたせいか、どこか拍子抜けな表情。
    とは言え、どうしたって呆れられるのは避けられないようだ。
    約束された敗北というのは何とも空しい。

    21 = 1 :

    「それにしても再提出って、一体何て書いたの?」
    「黙秘する」
    「駄目ね、あなたに人権はないわ」
    「おい待て、奪うならせめて黙秘権までにしてくれ」
    「それで、何て書いたの?」

     腕を組んだいつものポーズで、冷たい視線を向けてくる雪ノ下。
    こいつ人の話を聞きやしねぇ。
    というか、何でいちいち見下さないと話ができないんだよ、こいつは。
    もっともこの点については、いつもその視線に負けてしまう俺にも問題があるのかもしれないが。
    だってこいつの睨みマジで怖いし。
    思わず素直に白状してしまう俺を、一体誰が責められようか。

    22 = 1 :

    「……今までとおんなじだよ。家庭に入りたいって書いたら何故か怒られた」
    「呆れた、まだそんなことを言っていたの? いっそ消えてしまえばいいのに」
    「会話の端々でさり気なく俺の失踪を望むな」
    「ねぇ比企谷くん、諦めるのは良くないわ。例え合格する可能性が限りなくゼロに近かったとしても、その確率はゼロに漸近するだけで決して無くなるわけではないのよ。だからせめて今くらい叶わぬ夢を見ておきなさい」
    「お前今自分で自分の言説否定したからな。叶わないって言い切ったからな」

     別に合否判定を気にしてるわけじゃないから。
    そんなことを真摯な眼差しで言ってんじゃねぇよ。
    何を説き伏せようとしてるんだ、お前は。
    そんな俺のジト目を意にも介さず、雪ノ下は軽く肩を竦めて呆れたような声で続ける。

    23 = 1 :

    「大体あなた、自分で進路は私立文系って言ってたじゃない。興味のある大学だって無いわけではないのでしょう?」
    「まぁそりゃ無くはないけどさ。でもあれだ、今回のは第一志望を書けって事だったし、それならこう書くしかないだろ」
    「何胸を張って戯言を言っているの? 息を吸うことか息を吐くことか、どちらかだけでも止めてくれない?」
    「止めてたまるか。俺はゲイラになるつもりはない」

     あの最期は悲惨過ぎるよなー。呼吸が限界に達してから破裂する辺りが特に。
    しかし雪ノ下は元ネタを知らないらしく、怪訝そうな表情で小首を傾げている。
    ネタの選択に失敗したか。

    24 = 1 :

    「とりあえずあれだ、書き直せって言われたし、今度は普通に大学名を並べていくことにするわ」
    「最初からそうしなさい。この程度のことすら言われなければ分からないなんて、あなたの頭の容量は何キロバイトなの?」
    「ごく自然にフロッピー以下に設定すんな。幾らなんでももうちょっとあるっての」

     わざわざキロと付け加える辺りがこいつの性格の悪さを端的に示していると言えよう。
    無駄に芸が細かいというか。
    一通り俺をおちょくって満足したのか、雪ノ下がふっと小さく笑ってから話を戻す。

    25 = 1 :

    「そもそも、大学進学って決して悪い事ではないでしょう。元よりあなた勉強自体は嫌いではないみたいだし」
    「ばっかお前、ぼっちが大学デビューとかどういう事態になるか分かってんのかよ? そんなもん悲劇しか生まれねぇよ。そりゃもうハムレットも真っ青なレベルだぞ」
    「戯曲家が聞いたら激怒するレベルの暴言ね」
    「ん? つーかよく考えたらハムレットとか普通に友達いるじゃん、しかも身分は王子さまだし。何それ、悲劇とか言って俺よか全然マシじゃねぇのか? そんなことで不幸だとか温いっての。んな程度のメンタルで社会を生き抜いていけると思うなよって言いたいね」
    「あなたも社会から脱落寸前でしょうに、何を偉そうに語っているの?」

     半眼でこちらを見てくる雪ノ下。
    この負け犬が、と言わんばかりの冷たい視線に思わず目を逸らす。
    気を取り直すように一つ咳払い。

    26 = 1 :

    「とにかくだ。キャンパスライフとか言ってそんなリア充の巣窟に一人叩き込まれてみろ、次の日には陽のあたる場所で俺を見ることはなくなるぞ」
    「一日で何が起こるのよ……」

     頭が痛いのか、雪ノ下は悩ましげな表情でこめかみを軽く押さえていた。
    持てる者には想像できないかもしれないが、環境の変化に希望を見出すと変な方向にブーストがかかるのが生粋のぼっちだ。
    何が起こるか分からんから怖いんだよ。
    一日で急転直下引きこもりにクラスチェンジなんてざらにあることだぞ。

    27 = 1 :

    「そもそも、始める前から諦めているのがおかしいのよ。どうせなら大学デビューを目指して派手にやらかして、そんな自分に絶望してからにしなさい、諦めるのは」
    「完全に手遅れになってんじゃねぇか」
    「大丈夫、その一部始終は私が余すところなく記録しておいてあげるから。きっと素敵な思い出になるはずよ」
    「なるわけあるか、トラウマにしかならねぇよ。お前俺を追い詰める為に手段選ばなさ過ぎだろ」
    「今のうちにHDビデオカメラを購入しておこうかしら」
    「そんなことの為に散財すんな、つーか頼むから止めて下さい」

     こいつなら本気でやりかねないから怖い。
    そんな記録映像を残して誰が得するんだよ。
    でも何か今の話だと、雪ノ下は大学に入ってからも俺たちのやり取りは続くって思ってるわけか?
    卒業したら接点も無くなって清々するくらいのこと言われるかと思ってたけど。
    ちょっと意外かもしれない。

    28 = 1 :

    「んで? 俺のこと散々言ってくれたけど、お前はどうなんだよ?」
    「私?」
    「あれだけ言うんだから、さぞかし立派な進路を考えてるんだろうなぁ」

     特に深い意味はないけど、さっきまでの仕返しとばかりに踏ん反り返って言ってやると、雪ノ下はより一層好戦的な目になった。
    敵意を向けられたら、より以上の敵意で返さないと気が済まないらしい。
    こいつマジでアマゾネスの末裔か何かじゃねぇの? 闘争本能が強過ぎるわ。

    29 = 1 :

    「まぁあなたに教えてあげる理由なんてないけれど、何も考えていないと思われるのは癪に障るし、特別に話してあげないでもないわ」
    「なんでそんなに偉そうなんだよ」
    「と言っても、まだ検討段階というところなのだけど」

     そう言って前置きしてから、雪ノ下は地元の国立大学の名を挙げた。
    面白味も何もないけど、まぁ何しろこいつは学年一位なわけだし、当たり前というか実に妥当な結論だった。

    「しかしやっぱ地元狙いなんだな」
    「えぇ。ただ学部はまだ検討しているところよ。法学や経済学が強い学校と聞くし、よく考えてみようと思って」
    「ふーん、法学に経済学ねぇ、やっぱ賢いやつは違うわ」

     と一瞬納得しかけたところで、ふと違和感を覚える。
    確か雪ノ下って国立理系を目指しているとか言ってたような気がするんだけど。
    今までにも何度か直接聞いてるし。

    30 = 1 :

    「なぁ、雪ノ――」

     問いかけようとしたところで、ふと思う所があって動きを止める。
    よくよく考えたら、国立理系という道は、正確には雪ノ下の目指す道というよりも姉の陽乃さんの通った道だった。
    雪ノ下は姉が自分よりずっと優秀だと考えていて、今までずっと追いかけながらも決して追いつけず、それでも目標とし続けていて。
    その希望の進路もまた、この延長線上にあったものに過ぎない。
    陽乃さんのようになりたいと思っていたが故の、それは選択。
    それが本当に自分の意思と言えるかというと、正直怪しい所だろう。
    きっと雪ノ下自身も、少なからずそう思っていたはずだ。

     そんな雪ノ下が、改めて自分の進路について考えていると言う。
    自分の道を、自分の目指すべき姿を、今改めて。
    俺はこいつの家庭の事情なんて未だに何も知らないけれど。
    でも、その心の変化は、きっと雪ノ下にとって良いことなんだと思う。
    いつだって自信満々で、ともすれば傲岸不遜で、決して安易に周囲に迎合せず、真っ直ぐに自分の信じる道を貫く――それが俺の知る雪ノ下雪乃という人間。
    同じ所で足踏みを続ける俺なんかとは、やっぱり全然違うんだよな。

    31 = 1 :

     そんなことをぼんやりと考えていたのだが、妙な気配を感じて視線を動かすと、雪ノ下がやけに剣呑な目でこちらを見ていることに気付いた。
    腕を組み、俺を見下すようにおとがいを上げて、冷ややかな眼差しを向けながら苛立ちを露にしている。
    何だよ、どうして急にそんなに機嫌が悪くなってんだよ。

    「言いかけて途中で止めないで頂戴、気分が悪いわ、まるでファーストネームで呼び捨てにされたみたいで。一体何を言おうとしたのよ」
    「別に名前呼びしようとしてたわけじゃねぇよ、ただちょっとあれだ、何というか、その……」
    「何? はっきり言いなさい、職質を受けている犯罪者でももう少し挙動は自然よ」
    「ナチュラルに人をこき下ろすな。ちょっと気になっただけだっての。ほら、以前は陽乃さんの後を追いかけて進路を決めてたみたいに言ってたから」
    「あぁ、そういうこと」

    32 = 1 :

     そこで雪ノ下も得心がいったのか、ようやくこちらに向けられていた氷点下を思わせる視線が和らいだ。
    おかげでこっちも一息つける。どんなプレッシャーだよ。
    俺が猟犬に睨まれた野鳥のような気分でいたことなど露知らず、雪ノ下は少し遠い目をする。

    「以前は確かにそうだったわね。けれど、色々あって考えを少し改めたのよ。まだ途上に過ぎないけど」
    「そうか、まぁいいんじゃねぇの? その方がお前らしいわ」

     自信に満ちた、いつもの雪ノ下の表情。
    それを目にして、こっちの方が安心してしまう。
    こういうのもカリスマっていうのかね?
    まぁ進路だの何だのは俺が口出しすることでもないし、と思っていると、ふと雪ノ下が怪訝そうに眉根を寄せる。

    33 = 1 :

    「ちょっと待って。それより、どうしてあなたが姉さんのことをファーストネームで呼んでるのよ、陽乃さんとか、随分親しげじゃない?」
    「え? 今更それ聞くのか? いやだってそう呼んでいいって本人に言われたし。つーか他になんて呼べばいいんだよ。ここで雪ノ下さんとか呼んだらややこしいだろ」

     何か喋ってる内にどんどん機嫌が悪くなってないか? というか普通に睨まれてるんですけど。今日一の鋭さじゃねぇの、これ。
    思わず一歩引いてしまう。目なんてとてもじゃないけど合わせられない。
    ここで、実際のところはお義姉ちゃんを一番に推奨されたとか口にしたら、俺の命が割と危険に晒されそうな予感がする。
    いやむしろ悪寒がしてる。だから言わない。
    沈黙は金。けだし名言である。

    34 = 1 :

     しかし何をそんなに怒ることがあるんだ? 由比ヶ浜だって陽乃さんのことは名前で呼んでるし、別に問題ないと思うんだけど。
    え? ひょっとして自分の姉を親しげに呼ばれるのが気に食わないとか、そういう怒り?
    それか、俺如きが他人を名前呼びとは百年早いとかそういう系? そんなひどい。
    少し腰が引けているのを自覚しつつも、逸らしていた視線を戻して、ちらと雪ノ下の様子を窺ってみる。

    「……」
    「雪ノ下?」

     けれど、さっきまでの鋭い視線はどこへやら、雪ノ下はこちらを見向きもせずに何やら考え込んでいる。
    呼びかけても無視される始末だ。
    本当にこいつが何を考えているのかさっぱり分からん。
    どうしていいやら分からず黙っていると、少しの間をおいて雪ノ下がまるで判決を言い渡す裁判官のように重々しく口を開く。

    35 = 1 :

    「……姉さんがファーストネームで呼ばれているのに、私はファミリーネームで呼ばれているというのも、少し腹立たしいわね」
    「何でだよ、そんなことで怒られても知らんわ」
    「勘違いしないで。別にあなたの評価なんて塵ほどの価値も興味もないわ。だけど、だからと言ってあなたなんかに私のことを軽んじられるというのは納得いかないのよ」
    「無茶苦茶言ってんなお前」

     眼光鋭くこちらを睨む雪ノ下の表情には、口にした言葉のその字面以上に怒りが滲んでいる。いや何でだよ。
    負けず嫌いにしても突っかかる所がおかしいだろ。ひょっとして俺に暴言吐きたいだけなんじゃないのか?
    そんな俺の不満など何処吹く風と、雪ノ下は首を左右に振って、諦めたようにぽつりと言う。

    36 = 1 :

    「……仕方がないわね。正直全く気が進まないけれど、いっそ不愉快とすら思う気持ちもあるけれど。この際そこは目を瞑って、特別にあなたに私をファーストネームで呼ぶことを許可してあげるわ」
    「どういう理由でそんなに上から目線なんだよ」
    「何よ、文句でもあるの?」
    「いや文句じゃなくて」

     そう、あるのは文句ではない。支障だ。
    お前軽々しくファーストネームで呼べとか言ってくれるけど、俺にはハードル高過ぎるんだよ。
    (一応)同姓の戸塚相手でさえ、数えるほどしか呼んだことないってのに。
    と、やんわりと抵抗の意思を視線に乗せてみたのだが、受ける雪ノ下の視線は一切揺るがない。
    むしろその冷たさが増しているとさえ思えるくらいだ。ホント何でだよ。

    37 = 1 :

    「何? 変に意識しないでくれる? 気持ち悪いから」
    「だからいちいち俺を罵倒すんな」
    「別にファーストネームで呼ぶくらい気にする程のことでもないでしょう。大体あなた、由比ヶ浜さんのことも結衣って名前で呼んだことあるじゃない」
    「ん……まぁ、そりゃそうか」

     言われてなるほど、ちょっと納得してしまう。
    確かに、別に女子を名前で呼ぶのなんて始めてのことでもあるまいし。
    変に考えるからおかしくなるんだよな。
    それを言ったら葉山とかどうなるんだよって話だ。
    いや全く、さすがクラスの中心だよな。葉山さんまじぱねぇ。

    38 = 1 :

     しかし、そう考えると少し気も楽になった。
    それにまぁこんな機会でもないと、こいつを名前で呼ぶことなんてできないだろうし。
    物は試しと改めて雪ノ下へと向き直る。
    対する雪ノ下の方もまた、それを受けて立つとばかりに腕を組んで、不遜な表情のまま真っ直ぐにこちらに視線を向けてきていた。
    視線が交差し、周囲に静寂が訪れる。

     あとは軽く名前を呼ぶだけ。
    そう考えて口を開こうとして。
    どうしてか身体が固まってしまう。

    39 = 1 :

     一瞬の停滞。
    その間も交わされる視線。
    雪ノ下の瞳は変わらず真っ直ぐに俺を見据えていて。
    それを意識すると、余計に身体が強張ってしまう。
    胸の奥で心臓がやけに騒いでいる。
    何故か分からないけれど、凄まじく緊張していた。
    もう動悸で身体が揺れてんじゃないのって疑うレベル。
    何? 何なのこれ? もしかして俺死ぬの?

    「……」
    「……」

    40 = 1 :

     一瞬開きかけた口は、しかし意に反してすぐに噤まれてしまう。
    よく考えたら、いつぞやの由比ヶ浜の時とは状況が違い過ぎるのだ。
    あの時は話の流れがあって、むしろ名前で呼ぶ方が自然な状況になってたし、会話の勢いでさり気なく口にすることだってできたけど、今は違う。
    部室に二人きり、雪ノ下と向かい合わせ、静寂の空間。
    おまけにこんな思いっきり待ち構えられた状態で、しかも真正面から見据えられた体勢でとか、何段ハードル重ねてんだよ。
    かと言って今更止められもしないし、そもそも目を逸らすことさえ許されない雰囲気だし、八方塞がりもいい所だ。

     駄目だ、意識するなって考えると余計に意識しちまうぞ、これ。
    何も考えるなって思うと、余計に変なことばっか考えてしまう。
    血の巡りが良過ぎるのか、頭がぼーっとしてくる。
    おまけに、視界に入ってくるのは、沈黙を保つ雪ノ下の姿だけなのだ。思考が暴走するのもむべなるかな。
    澄んだ目してるんだなーとか、睫毛長いなーとか、髪綺麗だなーとか、何かわけのわからん考えがぐるぐる回っている。
    知恵熱出そうな勢いだ。
    何をそんなに緊張しているのか、自分で自分が分からない。

    41 = 1 :

     中々喋らない俺に痺れを切らしたわけでもないだろうが、雪ノ下の表情がぴくりと揺れる。
    それが切っ掛けとなったのか、ようやく俺の口が動いてくれた。
    まるで溜めに溜めた想いを吐き出すように、一言。

    「……雪乃」
    「……っ!」

     その名前を、ただそれだけを、確かに自分の意思で口にする。
    俺が名前を呼んだ瞬間、雪ノ下の瞳の奥が大きく揺らめいたような気がした。
    でもそれ以上に、俺の心の方が激しく動揺してしまい、その事実に気を回す余裕なんて全く残されていなかった。

    42 = 1 :

     ほとんど反射的に俯いて、そのまま頭を抱えてしまう。
    無理! これ絶対無理! こいつを名前で呼ぶとか難易度高過ぎ!
    何かすげぇ心臓がばくばく言ってるし。顔とか絶対赤くなってるぞ、これ。

     つーか動揺し過ぎだろ、俺。
    何でこんなに意識してんだよ、こいつの名前って魔法か何かかよ。それも自爆系の。
    しかも呼ぶ時ちょっと声震えてたし、何か少し裏返ってた気もするし。
    恥ずかし過ぎる……何これ、名前で呼ぶのってこんなに大変なの? リア充ってこんなのさらっとできんの?
    あいつら異星人かよ。絶対頭のネジ何本か飛んでるって。

     敗北感に打ちひしがれている俺に、しかし雪ノ下からの罵詈雑言は無かった。
    何なら鬼の首を取ったように俺の無様をあげつらわれるかと思ったけど。
    というか、いっそ罵倒してくれた方がむしろ気が楽だよ、これ。

    43 = 1 :

     恐る恐る視線を上げると、雪ノ下の絶対零度の視線が俺に向けられている――ということはなく。
    いつの間に体勢を変えたのか、俺の目に映るのはその後ろ姿だけ。
    雪ノ下はこちらを見ておらず、背中を向けたまま微動だにしない。
    その表情は全く窺えなかった。

    「……あ、あのさ」

     俺が声をかけてみると、大げさな位にその肩がびくっと動く。
    え? 何? 何があったの?

    44 = 1 :

    「えっと」
    「黙りなさい」
    「いや」
    「黙りなさいと言っているのよ、頭だけでなく耳までおかしくなったのかしら、全く救い難いわね、いえそもそも安易に救うつもりなんて決してないけれど」
    「だから」
    「本当にどうしようもない人ね。大体さっきも言ったけれど、ファーストネームで呼ぶくらいの事で一々大仰に構え過ぎなのよ。この程度の事でじたばたしていて受験の時なんてどうするつもり? 一生を左右するかもしれない試験の緊張感なんて、こんな温いものではないわよ」
    「ひょっとしてさ」
    「あぁでもそうね、そういう緊張感とは今まで無縁でいたからこそ進路調査でもふざけたことばかり書けてしまうのね、よくわかったわ。いい? 進路というのはそういう軽い気持ちで決めていいものではないの。もちろん私も人の事を言えるほど立派な考えを持っているわけではないけれど、今のあなたなんて論外よ論外、そもそも――」
    「お前も、恥ずかしかったの?」
    「っ! 何を馬鹿なことを言っているの? あなたに名前で呼ばれた程度のことで動揺なんてするわけないじゃない。もういいわ、よく考えたら今は依頼も来ていないし、そもそも由比ヶ浜さんもいないわけだし、今日の活動は止めにしましょう。じゃあそういうことでさよなら、悪いけれど戸締りはよろしくお願いするわ」

    45 = 1 :

     立て板に水といった感じで捲し立てるように早口でそう言い残すと、雪ノ下はぱっぱっと周囲を片付けて、鞄を手にとって風のように教室を出ていった。
    結局、あれから一度も俺の方を見ることもなく。
    故に、俺はあいつがどんな表情をしていたか、全く分からなかった。
    でもそれで良かったと思う。
    というかそうでなかったら困るくらいだ。
    俺の表情もまた見られずに済んだわけだから。

    「あぁよくわかった、俺はリア充なんて一生なれないんだな」

     こんなことさらっと毎日やるとか絶対無理だろ。
    身体が持たんわ。
    そう考えるとあれだな、葉山とか普通に凄いよな。
    羨ましいと言うよりももう普通に尊敬するぞ。

    46 = 1 :

     ため息をつきつつ、窓の外へと目をやる。
    空はどこまでも晴れ渡っていて、遠く運動部の掛け声が響いていた。
    あぁ、今日も皆が青春を謳歌しているのだろう。
    全く自分には場違いな空気だ。

    「……俺も帰るか」

     重い体を動かして鞄を手に取り、鍵を片手に部屋を出る。
    戸締りを忘れたら、また明日何を言われるかわかったものじゃないし。
    しっかり鍵をかけて職員室に向かう。
    本当にもう、俺の青春ラブコメはいつ始まるんだろうね?

    47 = 1 :

    ということで、今日はここまで。
    ヒッキーとゆきのんの恋愛未満って感じのやり取りが大好きです。
    原作ではガハマさん優勢かもですが、逆転を期待してます、ホント。

    今後ですが、別に長編ってわけじゃなく、ちょこちょことオムニバス形式で書いて行けたらいいなあ、とかぼんやり考えてます。
    次の話がいつになるかとか全然確約できませんが、また随時状況報告はスレでしていくように心がけます。
    気長にお待ち頂ければ幸いです。

    49 :

    おっつ

    50 :

    期待してる


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