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    元スレほむら「結局残ったのは巴マミのソウルジェムとまどかの抜け殻だけだった」

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    みんなの評価 : ★★★
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    601 = 9 :

    ふと、風の流れが変わり、誰かが病室に入ってくる気配がした。

    恭介は窓の方に身体を向けていたので、姿は見えなかったが、
    その気配は恭介の寝ているベッドのすぐ傍で立ち止まった。

    まあ、誰かといってもここに来るのは病院の看護師さんか
    見舞いに来る幼馴染ぐらいのもので、
    入って来て黙っているのなら、その幼馴染に間違いないのだが。

    恭介は身体の向きを変えながら言った。

    「今日は早いんだ……ね……?」

    すっごい美人がそこにいた。

    602 :

    >>546
    まじでこれか?

    603 = 9 :


    黒髪の腰まである長いストレートヘア、引き締まった口元、鋭さを感じる目つき。

    凛とした雰囲気に、恭介も通う見滝原中の女子制服が見劣りする程だ。
    黒いカチューシャがよく似合っている。

    さっきまでの陰鬱な気分を一時忘れ、恭介は彼女をしばし見つめてしまった。

    「って、……きみは?」

    こんな目立つ生徒なら一目見れば忘れることは無いだろう。
    だが、恭介には見覚えがなかった。

    彼女は背格好に似合わず低めの声でこう言った。

    「こんにちわ」

    綺麗な声だった。

    604 = 9 :


    「ええと、さやかの友達かな?」

    恭介の知らない見滝原中の女生徒ということであれば、
    まず幼馴染の知り合いという線が思い浮かぶ。

    だが、彼女は少し意外な答えを返してきた。

    「あなたのクラスメイトよ」

    「え? ごめん、キミみたいな子、居たかな?」

    思ったまま、そう訊いてしまったわけだが、彼女はそれに実に明快に答えてくれた。

    「仕方が無いわ。転校してきたのはあなたが入院した後だから」

    なるほど彼女は転校生でしかもクラスメイトってことか。

    自分のクラスにこんな美人の転校生がやって来てたなんて、
    貴重なイベントを逃して損した気になった恭介だが、
    ここは挽回のチャンスと考え直した。

    605 = 9 :

    恭介は入院生活の陰鬱を振り払って
    精一杯の爽やかな笑顔で言った。

    「そうだったんだ。じゃあはじめましてだね? 僕は上条恭介」

    「知ってるわ」

    一言のもとに切り捨てられてしまった。
    だが諦めない。

    「あー、そうだよね、ここに来る位だから知らないはず無いか。
     それで、さやかは一緒じゃないのかい?」

    「いいえ。彼女はまだ来ないわ」

    確かに。幼馴染のさやかはいつもCD屋に寄ってからここに来るから、
    まだしばらく姿を見せないはずだ。

    それにしても彼女は何用でここに来たのだろう?

    さやかと待ち合わせという雰囲気でもない。
    お見舞いに来たというにはなんか無愛想だし。

    607 = 9 :


    「………………」

    「………………」

    小説ならたっぷり半ページを三点リーダーで埋めつくす程の沈黙の後、
    恭介は我慢できなくなって声を出した。

    「……えっと、」

    それに感応するように彼女は言った。

    「その……、腕はどう?」

    「え?」

    その言葉に恭介の心の闇が蠢きだした。

    608 = 9 :


    そうか、この子も『同じ』だったのか。

    彼女は恭介自身でなく、この腕が紡ぎだしていたものを心配して
    様子を見に来た人間なのだ。

    そう断定して恭介は口を開いた。

    「どうって……、きみはここに何をしに来たの?」

    それを確かめるつもりもあって、恭介は彼女を糾弾するようなニュアンスを込めて言った。
    だが、彼女はそれに動じた風も無く冷たい口調で言った。

    「お見舞い………違うわね」

    「だったら何?」

    心配じゃないとしたら、何だ?
    彼女の容姿や物腰から恭介はもう一つの可能性に思い当たった。

    609 = 9 :


    つまり同業者の可能性だ。

    彼女はライバルたる恭介の様子を伺いに来たのかもしれない。
    それなら彼女にとっては僥倖だ。

    何故なら恭介はまさ今日、担当医に「諦めろ」と宣言されたのだから。

    彼女は続けた。

    「あなたの気持ちを確認しに来たのよ」

    「気持ち?」

    「そうよ」

    「君は知ってるのかい? 僕の腕のこと」

    「ええ。知ってるわ」

    610 = 9 :


    判ってて勝ち誇りに来たのか。
    可愛い顔をしてえげつないことをする。性格が歪んでいるな。

    まあいい。彼女には勝ち誇らせてやるさ。

    「僕の指が二度と動かないってことも?」

    「ええ」

    「今日聞かされたよ。この腕は、どんなにリハビリしたって二度とバイオリンは弾けないんだ」

    「そのようね」

    言ってて空しくなってきた。
    もう良い。

    「僕を馬鹿にしに来たんなら帰ってくれないか?」

    611 = 9 :


    「どうして私があなたを馬鹿にするの?」

    「バイオリンを弾けなくなった僕にはもう何の価値も無いんだよ。
     そうやってみんなから見放された惨めな僕を、君は見下して楽しんでるんだろ?
     ……そうさ、さやかだって」

    つい幼馴染の名前を出してしまったが、
    彼女は恭介に追い討ちをかけてきた。

    「それは悪趣味ね。質問は撤回するわ。あなたは馬鹿にする価値も無い」

    最悪だ。
    だがその通り、恭介にはもう何も残っていないのだ。

    「もう出て行ってくれよ」

    うな垂れて、そう言った恭介。
    だが彼女はそこで意外な行動に出た。

    612 = 9 :


    近づいて来て、恭介の左手を握ったのだ。
    正に今回の怪我で動かなくなったその左手を。

    そして恭介の目を見て言った。

    「あなたは、あなたの幼馴染があなたのバイオリンの腕だけのために、
     毎日ここに通っているとでも思っていたの?」

    真っ直ぐな瞳だった。

    彼女はさらに両手で上条の手を握り、顔を近づけきた。
    なんともいえぬ良い匂いが鼻腔をくすぐる。

    「あなたは彼女が大切じゃなかったの?
     あなたにとって彼女の価値は、あなたのバイオリンを褒めることだけだったの?」

    「それは……」

    そんな彼女の真摯な問いかけに、
    さっきまで彼女を糾弾していた自分が急に恥ずかしくなった。
    歪んでいたのは恭介の方だ。

    613 = 9 :


    彼女は口調をより強くして続けた。

    「馬鹿にしないで! そうよ、馬鹿にしてるのはあなたの方よ!」

    それは恭介を叱責するように。

    「あなたを大切に思っている人がバイオリンが弾ける弾けないだけで、
     あなたの価値を計ってるなんて、あなたはどうして思えるの?
     本当にあなたの価値はバイオリンだけだったの?」
         
    「……」

    恭介は何も言えなかった。

    そんな訳ない。

    確かに今まで必死に努力してきたバイオリンが弾けなくなる、というのは受け入れがたい事実だ。

    だが、だからといって、恭介を大切にしてくれた幼馴染の気持ちや、
    こうして初対面なのに叱責してくれる彼女のことまで否定してしまうのは違うと思う。

    614 = 9 :


    それくらいは恭介にも判った。
    きっと判ってて甘えていたのだ。

    気が付くと彼女はもう手を離して最初に立っていた所に戻っていた。

    彼女は相変わらず冷静な口調で言った。

    「よく考えることね。そしてもし判ったのなら、その気持ちを彼女に伝えてあげて。出来るだけ早く」

    それだけ言うと、彼女は静かに病室を出て行った。

    開け放った窓から午後の風が柔らかにカーテンを揺らしている。
    そこには彼女が来る前の風景が静かに佇んでいるばかりだった。

    まるで夢を見てたみたいだ。

    ついさっき主治医に宣言され、暗雲が立ち込め暗闇に閉ざされていた恭介の心は
    まだ雲ってはいるものの、まるで魔法でもかけられたかのように軽く、明るくなっていた。

    615 = 9 :

    切りが良いのでここまで

    恭介視点残り半分は早めに投下したい

    616 :

    乙っちまどまど!

    618 :

    お疲れ様でした。

    619 :

    ほむほむがタイプなのか…
    真っ当に年相応の男の子してる恭介はなんだか新鮮だ

    620 :

    >>619
    上条さんは面食いだからな
    さやかよりわかめを選んだ時点で明らか

    621 :

    さやかは近すぎて上条さんから女性として意識されてなかった

    ってどこかの雑誌でブチさんが言ってたな確か

    622 :

    >>620
    本編は選ぶ選ばないの話じゃなかったぞ
    一人が告白してくれたからその相手にOKしただけ

    623 = 620 :

    >>622
    知らないのか上条君はさやかに元々異性としての感情をいだいてないんだぜ

    624 :

    顔がどうこうじゃなくて、もし恭介と仁美が幼馴染みだったなら仁美がそうなってただけじゃね
    告白直前のやりとり見てると本編の仁美すら、あの時点までは意識してなさそうだけど

    625 :

    >>619
    俺は逆にほむほむが男にフラグ建てるのが新鮮だなと思った

    626 :

    ほむほむに男とくっついて欲しいと思ってる人は居ても少数だろうから珍しいんじゃないかね
    かくいう私もほむまど派でね

    627 :

    ほむらはさやかの事を示唆しただけで
    それだけでフラグって・・・

    628 :

    さやか、仁美はヴァイオリンと恭介を分離不可能なレベルで見ているから、ヴァイオリンと離して考えろと言われても難しいかもしれない。
    腕が治らないVerの恭介との相性はまどか、杏子、ほむほむ辺りが良いかもしれない。

    629 :

    >>628
    魔法が存在する世界だから、さやかから見れば諦めるのは早いと考えるから
    あの反応は妥当と思うけど
    マミがQB治していたし他人のだって多分治せるんじゃないかと

    630 :

    >>629
    治せないと考える根拠もあるぜ。例えば、神経系の壊死とか。

    さやかが倒れた時に一瞬で死体だと判別された=不随意生理機能が止まってた。
    つまり、魔法少女は神経系の機能全てをソウルジェムが代行していると考えられる。
    同じ理由からQBの体内にも生化学的な神経組織が存在するかは疑わしい。

    よって、回復魔法は生きている人間の神経系を修復できない可能性が高い。

    631 = 629 :

    死体だと判別されたのはアニメ的な分かりやすさ優先の演出だろうし
    試してないから可能性については未知でしょう。
    虚淵か新房の回答とかないかな

    632 :

    さやかの特性になってた超自己再生も願いである上条ちゃんへの癒しも
    根が同じなんだろうから、その手の回復は流用はできそうな気はするけどなぁ
    だがまあ明言されてない以上書き手次第だろ

    633 :


    恭介はしばらく、先ほどの余韻に浸るように呆けていたが、
    やがて、幼馴染の美樹さやかが病室にやってきた。

    彼女は早速今日の収穫物である音楽CDを取り出して、
    あれやこれやと喋りながら甲斐甲斐しくCDプレーヤーをセットしてくれた。

    話は聞けるように片側イヤホンで音楽を聴きながら、恭介はさやかに問いかけた。

    「さやかはさ、僕がバイオリンを弾けなくなったらどうする?」

    「え? 何言ってるの? 大丈夫だよ、頑張ってリハビリしようよ。あたし応援してるからさ」

    彼女はいつも通りの元気な顔でそんなことをいう。
    だか恭介は自分にとって残酷な決定事項を伝えなければならなかった。

    634 = 9 :


    「どんなにリハビリしたって僕の指は二度と動かないよ」

    「そんなことないよ、諦めちゃ駄目だよ」

    「今日医者に言われたんだ。諦めろってさ」

    「え?」

    「奇跡か魔法でも無い限り無理だって言われたんだ」

    「そんな……」

    彼女の表情が曇る。
    やはり彼女は『バイオリンを弾く恭介』が大事なのだろうか?
    そんな考えが頭をもたげる。

    635 = 9 :


    「僕はもう二度とバイオリンは弾けないよ……」

    「……あ、あるよ」

    「奇跡も、魔法もあるんだよ!」

    恭介はがっかりした。

    「……それがさやかの答えかい?」

    『恭介が二度と弾けない』という事実を否定したのだ。

    「え?」

    「さやかはやっぱりバイオリンが弾ける僕にしか興味が無いのかな」

    「そ、そんなこと……」

    「あの子の言ってたことは嘘だったみたいだ」

    さやかは恭介の言うことをよく理解出来ないようだった。

    636 = 9 :


    でも、それでも構わなかった。
    あの子が気付かせてくれたことがあったから。

    「き、恭介、あの子って誰?」

    今日初対面だが『恭介の恩人』といっても良いだろう。

    「……僕はさやかに言っておかなければならないことがあるんだ」

    恭介は真剣になって言った。

    「え? な、なに?」

    「たとえ、さやかがそうだしても、さやかは僕の“大切な幼馴染”には変わりないからね」

    ――転校生さん、これでいいんだよね?

    恭介は無意識に微笑んでいた。

    637 = 9 :


    なにやらさやかが熱っぽい顔しているが風邪でも引いたのだろうか?
    心配である。彼女は『大切な幼馴染』なのだから。

    「あ、そういえば」

    恭介は彼女の制服を見て思い出した。

    「ん?」

    「僕が入院してる間に転校してきた子っているかな?」

    「転校生? 居るけど転校生がどうしたの?」

    「それって、綺麗な黒髪の長い子で……すごい美人で素敵な子かな?」

    さやかが表情を変えた。どうしたのだろう?

    638 = 9 :


    「た、多分そうよ……美人かどうかはともかく」

    「そうなんだ……夢じゃなかったんだ」

    本当に夢を見てたかと思ったのだ。
    だが現実と確認できてよかった。

    彼女には現実に会うことが出来るのだ。

    「き、恭介……?」

    「名前はなんていうのかな? 聞きそびれちゃって。あ、やっぱりいいや直接聞きたいからさ」

    彼女に直接礼を言いたい。名前もその時に彼女の口から聞きたいと思ったのだ。

    639 :

    修羅場のよかん...

    640 = 9 :


    「……転校生、来たの?」

    「来たというか……。とにかくリハビリは頑張るよ。
     指は動かなくても早く歩けるようにならなきゃね」

    退院だけだったら真面目に歩く練習をすればすぐだと聞いている。

    「はぁ……。はやく退院したいなぁ」

    恭介は無意識にそう呟いていた。


    《ある日目覚めると病室にすっごい美人がいた》糸冬

    641 = 9 :

    今日は以上。

    642 :



    >>639
    ただでさえまどかが二人いてほむらの取り合いになりかねないからねww

    まどかが二人いるSSは2つ
    ソウルジェムだけの変則ダブルまどかを含めると3つかな。

    643 :


    わーお…マジで惚れてしまってたか

    644 :

    乙。

    これはほむらがさやかに逆恨みされそうな悪寒。ほむらはまどか一筋なのに……。

    645 :

    乙っちまどまど!

    646 :

    乙・フィナーレ!
    さやかあちゃん、そこで黙っちゃ駄目だよ

    647 = 642 :

    >>646
    そうなんだが二人の前提がすれ違ってる。
    恭介はバイオリンが無かったとしても自分の価値を認めてほしいと考え
    さやかは奇跡と魔法の存在を知り、腕を治すためにその身を捧げても構わないと考えてる。

    で周りの魔法少女達はそのさやかの献身性が
    理想と現実のギャップで破滅していく危うさを知ってるから止めたいんだよね。

    648 :

    さやかは今の自分を肯定してくれる相手じゃないと刻み込まれたのは
    地味に取り返しがつかなさそうだな

    649 :

    さやかの契約フラグが折れた。
    このほむほむは変態化していないから、振り向くかどうかは恭介のがんばり次第。

    650 :

    >>649
    嫉妬でほむらを殺そうと契約
    対ほむら専用能力


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