元スレ咲「え? どの学年が一番強いかって?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
251 = 1 :
優希「そういうことじゃないんだじょ。そうじゃなくて……全国を戦っている途中で……私はものすごいことに一つ気がついたんだじぇ」
数絵「ものすごいこと……?」
優希「私が負けても……清澄は負けないんだじょ」
数絵「…………は?」
優希、誇らしげに胸を張る。
優希「次鋒の染谷先輩、中堅の部長、副将ののどちゃん、大将の咲ちゃん。みんな……私よりずっと強いんだじょ。
みんな……県大会でも全国大会でも……私の負けを取り返して……最後には勝ってくれたじょ」
数絵「けど……それは、他の人はそうかもしれないが……でも、いくらチームが勝ったからって、優希が負けたことに変わりはないだろう」
優希「そうだじょ。私が負けたことに変わりはないじぇ。でも、チームが勝ったなら、私の負けなんてどうでもいいって思えるんだじょ」
数絵「どうでもいい……? 負けたことが?」
優希「じょー、どうでもいいは言い過ぎたじぇ。なんというかだじょ……私は、私の勝ち負けに拘らなくなったんだじょ」
数絵「優希が勝っても負けても、チームは勝つからか?」
優希「そんな感じだじぇ。私は……私よりずっとずっと強いチームのみんなを信じるって決めたんだじょ。
私が泣くのは、先鋒戦で私が負けたときじゃない。大将戦が終わってチームが負けたときだって決めたんだじょ」
253 = 1 :
優希「そうしたら……先鋒戦が少し違って見えた。私が先鋒戦でやるべきことは、一位を取ることじゃない。みんなの点棒を少しでも守って、できることなら増やすこと。
そして、最後まで諦めずに全力で打つこと……そういう風に思えたんだじぇ」
優希「インターハイの決勝だって、当然、私は咲ちゃんのお姉ちゃんに勝てなかったじょ。大惨敗だじょ。けど……みんなはそれを責めなかった。よくやった、すぐに取り返してやるって言ってくれた。
その言葉を聞いて……私は負けたけど……胸を張れたじょ。心から、みんなを応援することができたんだじょ」
優希「今回の対抗戦だってそうだじぇ。部長は最初からこれを『団体戦』って言ってたじょ。だから……私は私のあとに続くみんなを信じる。
のどちゃんや咲ちゃん、鶴賀の影の薄いの、しらたき糸こんにゃくの大将、のどちゃんの奈良のお友達、あとよく知らないけど関西の二人……」
優希「もちろん、数絵のことも、私は信じてるじぇ!!」
254 = 1 :
優希、南浦の右手を両手で包んで、満面の笑みを浮かべる。
優希「数絵が勝つって、私は信じてるじぇ。数絵なら、私の仇を取ってくれるって信じてるじぇ。
そんでもって……そんな数絵を笑顔で送り出したいから……私は負けても笑っているんだじぇ?」
南浦、照れたように顔を背け、優希の手を振りほどく。
南浦「やはり……私には団体戦のことはよくわからない。優希の言ってることだって……半分も理解できない」
言って、そのまま優希を置き去りにし、早足で対局室へ向かう南浦。
しかし、その右手は、優希の期待に応えるように、高く掲げられていた。
南浦「とにかく……私は今度こそ……勝つ――!!」
優希「おうっ!! 好きなだけぶちかますじぇっ!!」
南浦数絵――出陣ッ!!
255 = 1 :
@実況室
すばら「天江選手が片岡選手を直撃いいい! 姉帯選手が流れを止めたかに見えましたが、すぐに突き放しましたあああ!! これが魔物の力なのでしょうか!?
天江衣選手、その強さを余すところ無く見せ付けて東場終了ですっ!!」
初瀬「いやぁ……本当に尋常じゃない場でしたねぇ」
純「…………なんか妙だな」
すばら「は……? 妙……?」
菫「私も、少し気になることがあります」
すばら「えっ? お二人とも、どうしました?」
純「気のせいならいいんだが……。なあ、初瀬ちゃん」
初瀬「(ちゃん!?)え、あ、はい。なんですか?」
純「初瀬ちゃんトコの小走先輩ってのは、何者だ?」
初瀬「いや、だから、うちの先鋒ですよ」
純「晩成……ってのは阿知賀に負けたんだよな? そんとき、小走先輩と戦ったのは誰だ?」
初瀬「松実玄さん……です」
純「あのドラ娘か……。初瀬ちゃん、悪いんだが、あいつをここに呼んできてくれないか? 話が聞きたい」
初瀬「えっ? 松実玄さんをですか? はあ……わかりました。行ってきます!」ダッ
256 = 1 :
菫「井上さんも、小走選手のことが気になるんですか?」
純「まあな。あいつがどれほどのもんなのか、対戦経験のあるやつに聞いてみたくなった。どうにも、さっきからうちの衣が不調っぽいからよ」
すばら「不調……!? 天江衣選手が? あれでですか!?」
純「ああ。いくら姉帯がオカルト技を持ってようと、それで衣が海底を和了れねえ……なんてことにはならねえんだよ。
同じように、いくら片岡が東場に強くたって、火力で衣が劣るはずがねえ。今の5200は衣にしては低過ぎる」
菫「東三局一本場と、先ほどの東四局のことですね。私も、その二局での小走選手の動きに違和感を覚えました。
もしあれが天江選手の本調子でないというのなら、或いは小走選手にペースを乱されているのかもしれません」
純「そうか……やっぱりあんたもそう思うか」
すばら「あの……できれば私にもわかるように解説してほしいのですが……」
純「じゃあ、まず、東三局一本場。衣が三度目の海底を狙いにいって、姉帯に振り込んだ局だな。このとき、衣は親だった。つまり、誰かが鳴かないと、衣に海底は回ってこない。
もちろん、衣が本気で海底を狙うなら、自分で鳴くことだってある。さっきの場合、衣は別に海底を狙っていたわけじゃなかったと思うぜ。出和了りするつもりだったようにオレには見えた。
けど……実際は、小走が片岡の二索をポンして衣に海底を回した。それを受けて、衣は狙いを出和了りから海底に切り替えた」
すばら「まあ……そういうこともあるんじゃないですか?」
純「じゃあ聞くが、なんで小走は二索をポンする必要があったんだ?」
すばら「え……? どうしてでしたっけ……染め手か喰いタン狙い……?」
純「よーく思い出してみろよ。あのとき、小走は既に、二索を暗刻で抱えていたんだぜ?」
すばら「!? そ、そうでしたっけ!?」
258 :
ひゃっほーい
259 = 154 :
ニワカ先輩の時代がきたようだな
260 = 1 :
菫「ええ……井上さんの言う通りです。しかも、ポンしたあとも小走選手は手の内に二索を抱え続けていました。
ああいう鳴き方は、どこか清澄の宮永咲選手を彷彿とさせますね。嶺上開花を狙いにいく鳴き――テンパイと同時に加槓するための布石です」
すばら「加槓狙いのポン……? それはつまり、小走選手もまた、宮永咲選手のように、嶺上開花を得意としているということですか?」
純「バカ言うな。あんな魔物が二人もいてたまるかよ」
すばら「じゃあ……」
菫「小走選手は別に嶺上開花を狙っていたわけではないと思いますよ。彼女にとって重要だったのは……ツモ番さえ回ってくればいつでもカンができる――そんな状態を維持することだったんじゃないでしょうか?」
すばら「なんでわざわざそんなことを……?」
純「ニブいぜ、煌ちゃん。そりゃ、衣が十七巡目にリーチした直後に、加槓するためだろ」
すばら「!!?」
菫「カンの効果は何も嶺上牌をツモれるというだけではありません。海底牌を王牌に取り込む、という効果も付随します」
すばら「な……なるほど!!! 小走選手はあのポンで……後々やってくるであろう天江選手の十七巡目リーチを無効化するつもりだったんですね!! 天江選手がリーチしたあとに加槓すれば……天江選手に海底は回らない!!
あれ……でも、結局小走選手はカンをしませんでしたよ?」
261 = 1 :
純「そりゃするわけねえよ。あのときは、衣の十七巡目リーチに対して、先に姉帯のほうが仕掛けてたからな。
というか……小走は、姉帯が衣の十七巡目リーチを打ち破るような何かをするつもりなんだと……それを見越してわざわざ衣に海底を回した感じがするな。あのポンが加槓狙いになっていたのは、ついでの保険みたいなもんだ。
姉帯が衣を削れそうなら傍観。姉帯の仕掛けが衣に通用しない、または小走自身にとばっちりのあるような場合には、姉帯の何かと衣の十七巡目リーチをまとめて加槓で潰す……そんな意図があったように見える」
菫「さらに言うなら、小走選手が最後まで二索を抱えていたということは……即ち、いつ海底牌が王牌に取り込まれるのか――そのタイミングを小走選手がずっと握っていたということを意味します。
つまり、あの海底牌は、その前の二局で天江選手が掬い上げたような……確かな形を持った月ではなかった。シュレディンガーの猫みたいなものでしょうか(誤用)。
いかに天江選手の支配力が絶対であろうと、あの海底牌だけは、小走選手の最後のツモ番まで……生きた牌なのか死んだ牌なのか不確定だった。井上さんの言う天江選手の不調というのは、たぶん、その辺りが原因なんだと思います」
すばら「天江選手と姉帯選手の一騎打ちに見えたあの局の裏で……そんな謀略が……!!?」
純「さて、じゃあ謎は解けたところで、東四局についてもちょっくら考察してみようか」
すばら「お願いしますっ!!」
262 = 1 :
菫「ま、図式は東三局一本場と同じですよ。小走選手は、恐らく片岡選手の手が進む気配を感じた。それで……今度は片岡選手に天江選手を削らせようとしたのでしょう。
狙い通り、片岡選手は小走選手の捨てた五索でハネ満の混一中ドラ三をテンパイ。しかし……テンパイさせてはみたものの、姉帯選手のときとは事情が違った」
純「清澄の片岡は、姉帯のようにピンポイントで衣に標準を当てていたわけじゃねえ。東場なのをいいことに、ただ真っ直ぐ突っ走っただけだ」
菫「当然、片岡選手がハネ満をツモる可能性もあります。そうなった場合、一番被害を受けるのは親の小走選手です。
だから、身の危険を感じるや否や、小走選手は作戦を変更。天江選手に北を鳴かせてテンパイさせ、片岡選手を一瞬で討ち取らせた」
すばら「トップを引き摺り下ろすために他家を利用する……!! しかも、自分の失点が最小限に済むように何重にも保険をかけて……素早く場の変化に対応……!!
まったくもってすばらですっ!!」
菫「驚くべきはそれだけじゃありません。小走選手にとって、今日の面子は初対戦の相手ばかりです。
にも拘わらず、小走選手は東一局から東三局のたった三局であの全国レベルの化け物たちの打ち筋を解析し……あの天江衣の支配下にありながらも、見事に打ち回して見せた。
こと対応力に関しては、うちの照にも匹敵する柔軟さじゃないでしょうか」
純「そうだな。間接的にではあるが、衣の海底を封じて、火力もそぎ落とした。本人はただの一度もテンパイできてねえってのに、大したもんだぜ」
すばら「あ、その、天江選手の火力をそぎ落としたというのも、やはり小走選手が?」
264 = 1 :
純「ああ。さっきの東四局、衣がテンパイしたのは小走の北を鳴いたからだが、そもそもあの北は、小走が対子で抱えていたのを崩したものだ。どう考えても不自然だろ?
なんであの終盤まで、あいつは自風でも場風でもない北を抱えてたんだと思う? いや、配牌から対子になってたんならまだわかるぜ。
けど、あいつのところに最初の北が入ったのは確か五巡目くらいだ。普通なら速攻捨てるだろ、そんな不要牌」
すばら「抱えておいたほうがいい……そう判断するだけの理由があったんですね?」
菫「順当に考えれば、北が天江選手の自風牌だったからでしょう。天江選手の場の支配力を考えれば、セオリー通りの打牌をしていては、天江選手の思う壺になりかねない。
私でも、それくらいは思い至るかもしれない。ただ……私なら、いざ自分の手が進みそうな状況になれば、さすがに手放すと思います」
純「が、小走はそれをしなかった。八巡目くらいか、まるで北を吐き出せと言わんばかりに、あいつの手が進んだ。捨て牌を見りゃわかるが、あそこで北を手放せば、小走はテンパイまで辿り着けたんだ。
なのに、小走は頑なに北を抱え続けた。その結果――衣の打点が5200まで引き下げられた」
すばら「北を抱え続けるだけで……そんなことができるんですか?」
純「できるさ。ちょっと考えれば気付くことだ。もし、小走がもっと早くに北を手放したとして、衣がそれを鳴いたとき、本来小走に行くはずだったツモは誰のものになる?」
すばら「誰って……ああ……そういうことですか!!?」
265 :
小走先輩って実はすごい人なんじゃ…
266 = 1 :
純「そう――衣が小走から鳴けば……本来は小走がツモるはずだった牌が、以降、全て衣に流れるようになる」
菫「ちなみにですが、麻雀では、鳴いた人が鳴かれた人のツモを引き継ぎます。例えば、天江選手のように海底を狙いたいのであれば、本来海底をツモる人――初期状態では南家です――から鳴けばいい。
まあ、皆さんご存知だと思いますが」
すばら「なるほど……敢えて北を抱えることが、そのまま天江選手の思惑を外すことに繋がるんですね!!」
純「そういうことだ。で、まあ、北を抱え続けた小走のところには、中盤以降、北を捨てていれば衣の手に収まっていたであろう、衣の有効牌が流れてきた。
具体的には、赤五筒と、一索。もし仮に、小走が北を早々に手放し、衣がそれを鳴いた場合。衣の手はこんな感じになってただろうな」
衣手牌:①①①⑤[⑤]⑤1119/北北(北):待ち9:ドラ西
すばら「これは……先ほどと似ていますが……点数は全く変わってきますね」
菫「対々北三暗刻赤一……12000ですね。先ほどの5200の倍以上の点数です。まあ、あくまで現行ルール上、の話ですが」
すばら「ん? どういうことですか?」
267 = 1 :
純「一索と一筒と五筒と自風の刻子を揃えたこの和了りの形――これは世が世なら、役満確定の超大物手なんだよ」
菫「その役の名は『花鳥風月』……非常に風流な古役です」
すばら「ほええ……古役ですか……!」
純「衣のやつはわりとこういう古風な和了りを好む。なんたって『月』が入ってるしな。けど、それも現実では小走に阻まれて、確定とまではいかなかったわけだが。
ついでに言うなら、清澄の片岡があの場面で一索ではなく九索切りを選んだことについても……オレは評価したいね。
たぶんだが、衣は一索で和了りたかったはずだぜ。ま、点数は変わらないけどな」
すばら「北を抱える――それだけで古役の役満手をたったの5200に引き下げた……想像以上にとんでもないことをやっていたんですね……!!」
純「ああ。そして……オレの予感が正しければ、ここからが本番だぜ」
すばら「というと?」
菫「ここまで……小走選手は徹底して裏に回っていました。それは、天江選手の支配下で身動きが取れなかった――というだけかもしれませんが……果たして本当にそうでしょうか?」
純「初対面の相手の得意技や引き出しを一通り見ておきたかった――そんな打ち回しにも見えなくはないよなぁ」
すばら「では……もし動くとしたら?」
純「そろそろじゃねえかとオレは踏んでる。だから、南場に入る前に、対戦経験のあるやつの話を聞きたかったんだ。あの打ち回しが偶然なのか……それとも全て計算尽くなのか……」
と、実況室の扉、開く!!
268 = 1 :
初瀬「お待たせしましたっ! 連れてきましたよ、松実玄さんです!!」
玄「連れてこられました! みなさんご無沙汰してますっ! で、私になんの御用でしょうか!?」
純「よう、ドラ娘。県大会であの小走ってのと戦ったんだってな。どうだった?」
玄「どうだったって……ものすごく強かったですよ!」
すばら「ものすごく……とはどれくらいですか?」
玄「だって、小走さん、あの先鋒戦で一度も私に振り込みませんでしたから」
純「一度も……ってのは確かにすげえな。いくらドラ娘の手が読みやすいっつったって」
玄「正直……あのとき私が小走さんを相手に勝てたのは幸運が重なったからです。最初の8000オール……あれがなかったら、結果はどうなっていたかわかりません」
菫「最初……そうですね。阿知賀は無名校で、しかも晩成と当たったのは一回戦。データがなければ、対策の立てようがない」
玄「そうなんです。あれは本当に私たちに有利な戦いでした。決勝で当たっていたら、少なくとも先鋒戦――私は小走さんに勝てなかったと思います。小走さん、あの最初の8000オールを見ただけで、すぐに私の体質に気付いたみたいでした。
先鋒戦、東二局には、もう私の弱点を見抜いて狙い打ちしてきましたよ。南場に至っては、私よりも小走さんのほうが稼いでいたくらいです」
純「お前より稼いだ? 嘘だろ?」
玄「本当です。ね、初瀬ちゃん?」
初瀬「はい。まあ……さすがに最初の8000オールを皮切りにした序盤の荒稼ぎの分を取り返すまではいきませんでしたけど。確かに、先鋒戦の南場は……小走先輩のほうが優勢でしたね」
すばら「ドラ爆体質の松実さんとまともに打ち合って稼ぐなんて……私には信じられません。園城寺さんやチャンピオンならともかく……」
玄「ああ……花田さん……あの準決勝は大変でしたねぇ」
269 = 1 :
純「思い出話は後にしてくれ。ほかに小走について、なんか客観的なデータはないのか?」
初瀬「先輩は、奈良の個人一位です」
純「はああああああ!!? 奈良一位!? そりゃマジか!?」
初瀬「え……? 知らなかったんですか?」
菫「まあ、私は知っていたよ。私たちの学年で、奈良の小走やえは、長野の福路美穂子と同じくらいよく聞く名前だ」
純「そうだったのか……! あ、でも、奈良の個人戦って阿知賀の面子は出なかったんだよな……?」
玄「はい。なんですけど、私たち阿知賀と晩成さんはインターハイの前に壮行試合をしていて、うちの五人と晩成さんの上位ランカーで入り混じって打ったんですが、そのときのトップも小走さんでした。
二位はうちのおねーちゃんで、私は全然でしたね」
菫「ほう……あの松実宥を押さえてのトップとは」
玄「小走さんは……本当に打ち方が柔軟なんですよ。打てば打つほど……こちらが勝てなくなってくるんです。あっ、そう言えば、私たち、インターハイの前にいろんなところと練習試合をしたんですけど……」
純「はるばるうちにも来てくれたよな」
玄「ええ……各県の二位さんと戦ったんです。それで……本当に色んな人と打ったんですが、その中で、私たち全員が勝てなかった人っていうのが……二人いたんです」
純「一人は、うちの衣だな」
菫「もう一人は?」
玄「三箇牧の荒川憩さんです」
すばら「まあ……そのお二人にみんなが勝てるようなチームなら、確実に全国優勝できるでしょうね」
270 = 1 :
玄「はい……で、そのことなんですけど」
純「なんだ?」
玄「よくよく思い返してみれば、晩成さんとの壮行試合――あのとき、私たち五人は、結局、誰も小走さんに勝てなかったんですよね」
菫「それは……興味深いお話ですね」
純(おいおい……衣や荒川憩と同列に語られるレベルかよ……!? 冗談じゃねえ……強い強いっつっても……てっきり風越・池田の同類だと思っていたが……)
玄「なんていうか、本当に本当に、あの県大会の先鋒戦で私が小走さん相手に区間一位を取れたのは、幸運だったんだと思います」
初瀬「来年は、負けませんよ。憧にもよろしくお伝えくださいっ!」
玄「うん! あっ、でも、憧ちゃんは今日は敵さんだからなぁ……」
菫「別に伝えるのはこれが終わったあとでもいいでしょう」
すばら「というか、初瀬さんは新子さんのお友達なんですから、直接言えばいいのに」
初瀬「そ……それはなんというか……恥ずかしいんですっ!!」
和む四人を余所に、純は衣の身を案じる。
純(衣……!! 気をつけろ……お前が負けるとは微塵も思っちゃいねえが……そいつはただの噛ませ犬じゃねえぞ……!!
そろそろ何かやってくる……腕の一本くらいは覚悟しとけ……!!)
先鋒戦後半、波乱の南入――!!
271 = 1 :
@対局室
実況室の喧騒など届かない、静かな対局室。
優希が出ていってからしばらく経ったのち、暖かい風を纏って現れる――南浦数絵。
待ち受けるのは、いずれも自らの高校を牽引する実力の持ち主。
衣「なんだ……随分と遅かったな。衣に恐れをなして逃げたのかと思ったぞ」
魔物――長野・龍門渕高校・大将……天江衣ッ!!
豊音「南浦さん、長野の五位なんだってー? 一位と四位は福路さんと竹井さんなわけだから……来年は全国デビュー間違いなし? 今のうちにサインもらっちゃおうかなー」
魔人――岩手・宮守女子・大将……姉帯豊音ッ!!
小走「ふん、またニワカが一人増えたか……」
王者――奈良・晩成高校・先鋒……小走やえッ!!
南浦「……よろしくお願いします」
無名――長野・平滝高校・個人……南浦数絵ッ!!
四雄、激突ッ!!
272 = 1 :
>>1です。途中ですいません。夕ご飯を食べてきます。
一時間くらいで戻ってきますので、もしよろしければ保守をばお願いします。
273 = 109 :
王者の打ち筋本領発揮かな
274 :
>>272
おまかせあれっ!
276 = 154 :
ニワカは保守にならんよ
278 :
まあ心配しなさんな
私は小三の頃からスレ落ちすらしない
279 :
おうナレーションマダオっぽくさせんのやめいや
280 :
読んでる途中ほ
281 = 154 :
ほ
282 = 150 :
うえのさんのまわりにあつまるむしたちはつぶします
283 = 228 :
ほー
284 = 274 :
むー
285 = 63 :
ほ
286 = 1 :
保守ありがとうございました。お待たせしてすいません。再開します。
288 = 154 :
ついに王者のうちゅ筋が
289 = 1 :
南一局・親:南浦
十巡目
南浦(これが天江衣の支配か……先ほどの龍門渕透華と同種の何か……優希が苦労していたのも頷ける。けれど……前半とは違って……今度は優希が道を示してくれた。
天江衣も絶対ではない……セオリーに縛られないこと……そして……諦めないこと……覚悟して望めば……突破口は開けるはず……!)タンッ
南浦、意地のテンパイッ!!
豊音(おっとー? こっちはまだサンシャンテン止まりだってのに……この東南コンビは本当に強いねぇ……対して……天江さんはどう出るかな……?)タンッ
衣(南浦数絵……張ったか。18000程度……しかし……それが衣のぶら下げた餌だとは気付くまい……)タンッ
衣、南浦を釣り上げる準備は万全ッ!!
小走(……)タンッ
豊音「ポンッ!!」タンッ
南浦(む……飛ばされた? いや、これは話に聞いている……宮守の鳴き……!)
衣(宮守の大将……鳴いた瞬間に力が膨れ上がった……これが咲との戦いで見せた――もう一つの得意技か……!)タンッ
290 = 1 :
小走(……)タンッ
豊音「それもポンだよー」タンッ
南浦(二連続……!? これは……宮守の力なのか……それとも……?)
衣(まただ……また衣の支配が不自然に揺らいでいる……!? しかし……宮守の大将以外に……別段変わった力は感じないが……)タンッ
小走(……)タンッ
豊音(っと……さすがに三連続はないか……けど……今の捨て方……明らかに面子を崩して私に差し込んできてる。そういえば……さっきの先勝のときも……きっかけは晩成の人のポンだったっけ……)
南浦(さて……やっとツモが回ってきたわけだが……)
291 = 1 :
南浦、長考。
南浦(ふっ……優希に当てられたか。強敵を前に……私は少し冷静じゃなかったかもしれない。ダマの18000……改めて眺めてみると……こんないかにもな手はないな……)
南浦、ちらりと、対面の天江の様子を伺う。
南浦(天江衣……二連続でツモ切り……既に張っていると見たほうがいいだろう。そして……今ツモった牌は、途中鳴きが挟まったものの、結局ツモ順は元通りだから、いずれにせよ私がツモっていた牌。
私のテンパイには絡まない不要牌だ。それも……対面の天江にわりと安全そうなヤオ九牌。当然……私はここで突っ張る選択をしただろう。
しかし……東四局……あの悪魔のようなシャンポン待ちを思えば……これが安全である保障などどこにもない……)
南浦、小さく溜息をついて、上家を一瞥。
南浦(晩成の……天江と宮守は気付いているのかいないのかわからないが……モニターで見ていた私にはわかる。相当な手練。
たぶん……今の宮守への差し込みには隠された意図がある。例えば……私のツモ番を二度も飛ばすことで……頭を冷やせと言いたかったとか……)
南浦、一度目を閉じて、深呼吸。
南浦(いいだろう。確かに……ここで突っ張るのは、素直という名の愚直かもしれない。
勝ちを放棄するわけではないが……この面子……石橋を叩いて渡るつもりで打たなければなるまい……ここは我慢が正解……それだって一つの戦い方だ)タンッ
南浦、ツモ牌を抱え、テンパイを崩す。
直後――!!
292 :
こんなもんをあと半荘8回ぶんも書くんか
がんばりやさんだな
293 = 1 :
豊音「チー!!」タンッ
歯を剥き出しにして笑む、魔人・姉帯豊音!!
魔物・天江衣、あくまで落ち着いて、ツモ牌を手にする。
衣(宮守の大将が三副露……。いや、それよりも……南浦数絵。なぜテンパイを崩した……? 衣の狙いに気付いたか?
さすが、とーかや池田、それに鶴賀の大将をも個人で上回っただけのことはある、というべきか。清澄のゆーきと特性は似ていても……地力ではこいつのほうが一枚上手……同じ誘いには乗ってこないか)
衣、南浦に定めていた照準を、外す。
衣(仕方あるまい。立て直すのに二、三巡掛かるかもしれないが……南浦数絵が退いた以上……この手はもう死んだも同然)タンッ
衣、南浦のオリを受けて、不慮の方向転換。
それは、ほんの僅かではあるが、確かな隙ッ!!
294 = 1 :
豊音「それ……! ポン――!!!」
衣(ここで喰らいつかれた……!? くっ……ほんの数巡前まで消え入りそうなほど小さな気配しか漂わせていなかったのに……!!)タンッ
豊音(何を企んでたか知らないけど、やっと出してくれたねー? ぎりぎりまで力を溜めてた甲斐があったよー……!)
小走(……)タンッ
南浦(宮守がこれで四副露……せっかくの親だったが……ここまでか)タンッ
豊音、十二枚もの手牌を晒し、残るは孤独な裸単騎ッ!
豊音「ぼっちじゃないよー……?」
しかし、それは、たった一巡の孤独ッ!!
豊音「……ツモ!! 断ヤオドラ二――1000・2000!!」
友引――発動ッ!!
豊音(いつまでもマイナスに甘んじていられない……! 天江さんはちょー強いし……他の二人もなんか不気味だけど……私だって負けてられないよー!!)
衣(宮守の大将……衣の揺らぎを突いて確実に和了ってくる……打点が低いのがまだ救いか)
南浦(前半の南一局と比べると……大分凹まされたな。我ながら不甲斐ない……)
南:92400 衣:125100 姉:99500 や:83000
295 = 8 :
小走先輩なんて全然大したことない
容姿端麗で部活は県一位で全国常連校のエース
JSの頃から豆ができないほどの努力家であり、後輩からも慕われる人格者
そんな偏差値70の高校に通う、どこにでもいるドリルが小走先輩
ニワカ過ぎて全然すごくない
296 = 228 :
支援だよー
297 = 1 :
南二局・親:豊音
十巡目
南浦(天江衣の支配下では……セオリー通りに打つのは危険……こうして多少回り道をするのも悪くはないだろう。
場の支配といっても色々と種類があるのか……天江のそれは先ほどの龍門渕透華のそれと似ているが違うところもある……弱々しいが……まだ南の風は吹いている。
どんな打ち方だろうと……この風は――私に味方してくれるはず……!)タンッ
豊音「チーッ!!」タンッ
衣(また鳴かれたか……南浦数絵の吹かす風……その流れをうまく掴んでいるように見える。もっと言えば……咲が槓材を手の内に引き込むのと似ているな。
自分の力を信じられる者は……衣の予想を超えてくる。追っかけリーチといい、先制リーチといい……技巧に富んだ打ち手だ)タンッ
小走(……)タンッ
南浦(ん……鳴けるところが出てきた? 面白い……乱戦になれば……より天江を撹乱できるかもしれない……やってみる価値はある!!)
南浦「チーです」タンッ
豊音「それもチーだよー」タンッ
衣(煩いやつらだ……それで衣を惑わしたつもりか……小賢しい!!)タンッ
豊音「ポンだよー!」タンッ
衣(ふん……鳴きたければ好きに鳴くがいい……)タンッ
298 = 1 :
南浦(これは……どうする……? 少々強引な気がするが……ここで動かなければ宮守に先を超されるか……?)
南浦「……ポンッ!」タンッ
南浦、イーシャンテンッ!!
しかし、それを見て、魔物は微笑む。
衣「…………鳴いたな、南浦数絵?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
南浦(え……? そんな……いや……まさか……!! 信じられない!! 私と宮守の二人がかりで場を乱したつもりが……それすら手の平の上だったというのか……!? この……化け物め……!!)
衣「宮守のも……鳴いてはリーチをかけられまい。衣に対抗できる唯一の手段を自ら放棄するとは……愚かなことだ」
豊音(んー……? あれ……ちょっと待って……今ぐるぐるしててわかんなくなったけど……そっか! 今の鳴きで海底は……! マズい……マズいマズいよー……!?)
衣「朝生暮死……お前たちの足掻きもここまで……そのまま成す術もなく暗い水底に沈むがいい!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
天江衣、本日四度目の――海底コースッ!!
300 = 1 :
南浦(風が……止んだ? そんな……さっき風が吹いていると思ったのは天江が支配を緩めていたからなのか……? ダメだ……もう何をしても手が進む気がしない……!)タンッ
豊音(困ったなぁ……天江さんの言う通り……鳴いたら先勝と先負は使えない。友引だって……四副露にならないとその効果は発動しない。せめて……あと一度……誰か鳴かせてくれれば……!)タンッ
そして……間もなく辿り着く、大禍時の十七巡目――!!
南浦(天江衣……龍門渕透華の一見して静かな雰囲気とは違う……牙を剥き出しにした魔物……! こんなの……どうやって打ち倒せというんだ……!!?)タンッ
豊音(あー……とうとうここまで来ちゃったよー……これはもう覚悟を決めるしかない……か……!!)タンッ
衣「……リーチ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
衣、貫禄の十七巡目リーチッ!!
供託に出されたたった一本の千点棒が、一瞬で場の空気を絶望色に染め上げるッ!!
打つ手無し、繰り返される東二局、三局の悪夢ッ!!
その――次の瞬間ッ!!
みんなの評価 : ★★★×4
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