元スレ和「え? どの学年が一番強いかですか?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
512キロバイトがどうこう言われたので新しいスレを立てました。
前スレ:咲「え? どの学年が一番強いかって?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357781827/
2 = 1 :
怜(これは……!!? やって……やってもうた……!! 神代……! 次々巡もドラの七萬をツモ切りかいな……!! これじゃ……なんもわからへんやん……なんも変わらへんやん……!!
せめて……他の牌を切るとか……手出しとか……そういう情報がないと……こんなんダブルやり損やで……!!)クラッ
怜、眩暈を堪えて、必死に意識を保つ。
怜(ホンマにしくったわ……生きるんて辛いな……どないしよ……結局メンチンで潰されんのかどうかはわからへんかったんや……リーチかけとこか。
神代が和了らへんかったら一発ツモや……ほんでもって……運が良ければ裏も乗るかもしれん……裏ドラ三枚とか乗ったら儲けもんやし……リーチ……かけとこか……!)
怜、点棒を確認、赤五筒を手に取る……!
怜(ほな……行くで……頼むから潰されんでな……裏ドラ期待の……赤ドラリーチ……!!!)
その――打牌の直前ッ!!!
怜(待って……うち今なんて言うた……? 裏ドラ期待の……赤ドラリーチ……? ドラって……? ドラ…………!? そうや……ドラ……!!! これは……なんてことや……見落としてたで……!!!)
インターハイ、阿知賀のドラゴンロードと卓を共にした怜。
ドラには、人よりも少し、思い入れがある。
3 :
512行くとかすげえなおい
5 = 1 :
怜(なんで今までこの不自然さに気付かなかってん……!! そうや……この場のドラは七萬……萬子や……!! 神代がこの状態になって……独占しとる色がドラになったんはこれが初めて……!!
ほんでもって……さっき同じような一色独占しとった石戸霞と……神代との違い……! 鳴きを入れると崩れ……終盤になればなるほど支配力が落ちてくる石戸霞と……神代小蒔の一色独占は明らかに強度が違う……!
神代の一色独占は絶対や……この違いが……あのドラの七萬に……現れてんで……!!)
永水・石戸霞の支配は、王牌にまでは及ばない。
霞の支配する一色牌と字牌・計64牌、そのうち、霞の手に入らない33牌を、霞は王牌に押し込めることができない。
ゆえに、中盤以降では、溢れた一色牌と字牌が、他家の手にも入るようになる。
石戸霞の一色独占能力は、山の深いところでは、機能しない。
怜(石戸霞の一色独占では……ドラ表示牌が石戸の色になるケースはなかった。インターハイで宮永咲が嶺上牌を掠め取っとったけど……それもやっぱり石戸の色やなかった。
対して神代小蒔の一色独占は……あくまで推測やけど……鳴こうがズラそうがどうやっても神代は一色独占するし……他家の絶一門は最後まで解けん……! それが正しいんやとすれば……あとは単純な引き算やん……!!)
仮に、神代小蒔はどういう手順であろうと一色牌をツモり続け、他家の手に神代小蒔の独占色が入ることは絶対にないのだとして――。
怜(一色牌36枚……そのうち神代小蒔の手に入るんは最大31枚……神代が北家の今は30枚や。
ほんでもって……残りの6枚が絶対にうちらのとこに回ってこんのやとしたら……それらは全部王牌に押し込められとるはず……やから今……神代の色がドラに現れてるんやないか……!!?)
王牌14枚、うち、6枚が、神代小蒔の一色牌。
6 = 1 :
怜(今はドラ表示牌で1枚見えとるから……残り5枚。13枚中5枚なら……ちょっと無理するだけで……この絶一門を崩せる……!! 絶一門が崩れるんやったら……神代から直撃を取ることも……不可能やなくなる……!!)
そして……その一縷の可能性を……怜は既にその目にしていた……!!
怜(ダブル……やり損なんかやなかったで……!! もちろん……上手くいく確率はごっつう低いけど……ここで勝負に出なくて……何が千里山のエースや……!!
神代から直撃を取れるかもしれへん僅かなチャンス……!! 2000オールで流してしまうんはヘタレのやること……!! さあ……宣言通りにぶちかましたんで……全国区の魔物……!!!)タンッ
怜、手に掴んだままの赤五筒を、河に流すッ!
リーチは――掛けずッ!!
怜(こっからは完全な運勝負やで……今さっきダブルを使ったうちは……きっともうこの南三局が終わるまで未来が見えへん……見えへんっちゅうことは……わからへんってこと……神代が勝つかもしれんし……うちが勝つかもしれへんよな……!!)
そして……ツモは巡って、神代小蒔へ。
小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
神代は、手にしたドラの七萬を――、
小蒔()タンッ
切るッ!!!!
怜(切ったッ!!! 切ったな……神代小蒔……!! うちがテンパイしとんのに……こいつは今メンチンを和了らんかった……!!! 今のこいつの手は……七萬で和了れん……!! これで第一関門……突破や……!!!)
7 = 1 :
そして、怜がツモったのは、予知通りの、四索ッ!
怜手牌:2223456789②②②:ツモ4:ドラ七
ツモのみ……500オールッ!
怜(ほな……ダブルで見た未来を……現実にしてみよか……!!)タンッ
怜、四索、ツモ切りッ!!
和了り拒否ッ!!
セーラ(怜……? なんや楽しそうやな……これは何か狙っとるんか……? オモロいやん……千里山の真のエースが……どんな戦い方をするんか……元エースとしてじっくり見させてもらうで……!)タンッ
友香(これでやっとイーシャンテン……手が重たいんでー。というか……千里山の園城寺怜……赤五切りなんて張ったっぽい感じに見えたけど……その四索ツモ切り……なんか打ち方に違和感がある。
まさか……何を狙ってんのかわかんないけど……この状況で和了り拒否とかしてるんでー……?)タンッ
友香、怜のツモ切りを訝しく思いながらも、自らの手を進める。
怜(劔谷……劔谷のさっきの一撃……あれを食らわんかったら……こんな無茶な作戦……思いつきもせんかったで。あんたには感謝しとる。
あんたが……さっき無茶やって成功してみせよったから……うちも……頑張ったらうまくいくんちゃうかって……希望が持てる……! ホンマ……あんたは大した一年生やで……!!)
怜、友香の捨てた二筒を……ダブルで見えていたその二筒を――鳴くッ!!
怜「カンッ――!!!」パララッ
怜、二筒、大明槓ッ!!!
未来を……変える……ッ!!!
8 = 1 :
怜(頼むで……!! 来てくれや……!! うちに……この魔物に一発ぶちかます……唯一の武器を……!!!)
石戸霞より高い強度を誇る、神代小蒔の一色独占。
もし仮に、その支配が王牌にまで及んでいたのだとしたら。
嶺上牌にすら、神代小蒔の色が一枚もなかったとしたら。
当然、他家が絶一門を崩すことは不可能。神代小蒔は、他家に振り込む憂いなく、淡々と九蓮へ向けて不要牌を切るだけ。
しかし……現実はそうではなかったッ!!
互角の力を持つであろう、龍門渕・天江衣の支配と同じくッ!!
神代小蒔の支配もまた……淵底の向こう――王牌にまでは及んでいなかった……!!!
あくまで、神代は王牌に一色牌を押し込めるだけ……!!!
その押し込めた牌の並びまでは……神代にすら……未知ッ!!!!
怜(……ッ!! 来た……!!! ホンマに……来たで……!!!!)
怜手牌:2223456789/②(②)②②:嶺上ツモ七:ドラ七・⑧
怜(さあ……嶺上張り替え……!! 覚悟せえや……魔物……神代小蒔……!!)タンッ
怜、九索切りッ!!! 七萬単騎の切っ先を、神代の喉に突き立てるッ!!!
怜手牌:七222345678/②(②)②②:待ち七:ドラ七・⑧
9 = 1 :
セーラ(嶺上……なるほど……考えよったな……!! 確かに……神代の一色独占とうちらの絶一門が最後まで続くんやとしたら……神代の色が王牌に埋まっとらな計算が合わへん。嶺上で神代の色をつかめるなら……直撃も可能や……!!)タンッ
友香(へえ……嶺上とは思いつかなかったんでー……! 千里山の園城寺怜……一巡先を見れる力があるからか……こういう無茶はあんまりしてこないタイプだって思ってたけど……さすがに千里山のエースは伊達じゃないみたいでー)タンッ
怜(さあ……神代小蒔……ツモ飛ばされて……ツモ順ズレたけど……どうせお構いなしに萬子ツモってくるんやろ……!! せやけどな……うちはもうさんざん見とるんや……!
神代小蒔……! あんたは鳴きに関係なく……必ずうちが未来予知で見た一色牌をツモってくる……!! つまり……あんたが今からツモるんは……二巡前にうちがダブルで見た……七萬ってことやんな……!!
ほんでもって……あんたはさっき……うちがテンパイしたのに七萬で和了らんかった……! あんたは七萬では和了れん……! やったら当然……どんだけそれが危険やわかってても……人やないあんたはそれをツモ切るんやろ……!!! これで詰みやで……!!
楽勝や……全国区の魔物……!!)
神代小蒔、山から牌をツモるッ!!!
小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
そして、それをまるで機械のように、躊躇なく、ツモ切るッ!!!
切ったのは……ドラの七萬ッ!!!!
怜「ロンやッ!! 断ヤオドラドラ……7700ッ!!!」ゴッ
10 = 1 :
怜、死力を尽くしての狙い撃ちッ!!!!
本来なら2000オールで8000点しか詰め寄れなかったところを、7700直撃で、トップ・神代小蒔との差を15400点縮めるッ!!
しかし、その差はまだ大きく……!!!
否、大きいからこその……!!!
怜「これでうちの連荘や……!! まだまだ祭りは終わらへんで……一本場ッ!!!」
怜、逃げや流しは眼中に無しッ!!!
千里山のエースが狙うはただ一つ……トップの座ッ!!
一巡先を見る者――決死の一本場に挑むッ!!!
友:114300 神:123400 セ:90600 怜:71700
11 = 1 :
@実況室
すばら「園城寺選手が神代選手を直撃いいいいい!!! 絶対無敵に見えた一色独占をドラ単騎で粉砕ッ!!! 全国ランキング二位――名門・千里山女子のエースがその強さを見せ付けましたあああ!!!」
初瀬「園城寺選手……得意の一発ツモでも十分だったはずなのに……! 危険を冒してまで神代選手を削りに来るとは……まったく予想できませんでした!」
純「これが……さっき小走が言ってた『勝ちにいく戦い方』の一つなんだろうな。園城寺は一発ツモで連荘をしてもよかった。一巡先が見える園城寺なら、早和了りもしやすいし、ただ早いだけじゃなくリーチ一発で手を高められる。
しかし……それだけじゃ断トツの神代には届かないと踏んだ。なんつーか、機械みたいな神代と違って、意思が感じられるよな。オレは好きだぜ、ああいう流れを呼び込む感じの戦い方」
菫「しかも、今の和了りはただの無鉄砲な特攻ではありません。東四局で森垣選手が園城寺選手から直撃を取ったときのような、勝算と確信に満ちた狙い撃ちです。文句のつけようがない闘牌ですね」
すばら「しかし……すばらなのはすばらなのですが……私としては園城寺選手の身体が心配です。インターハイのときのように……無茶をし過ぎなければいいのですが……」
純「親の連荘……一本場か。園城寺は……きっと勝つまで和了り続けるつもりなんだろうが……本当に大丈夫なのか?」
初瀬「あっ……今、園城寺選手が……!!?」
12 :
前スレ落ちたと思ったら使いきりおったwww
13 :
こっちになったのねん
しえ
14 = 1 :
@対局室
南三局一本場・親:怜
配牌、理牌ッ!!
怜(牌が……重たいで……なんや……ダブル一回ってこんなしんどかったか……?
あのインターハイんときは……フナQの言うてた三年パワーってやつでどうにか保ってたんかもな……今のとこはまだ一巡先が見えとる……やけど……あと一回でもダブルやったら……たぶん意識飛ぶわ……これ……)
怜配牌:①⑦⑦⑧⑨1688東東西中:ツモ①:ドラ③
怜(これは……七対子か……鳴いて対々が早そうか……? 東を鳴けたらそれで役がつくけど……あんま鳴くんもな……点数下がってまうし……)コホッ
怜、一巡先を見る。セーラはツモ切り發、友香は手出しの西、神代は手出しの二萬、怜のツモは、二索。
怜(セーラは役牌ツモ切りか。数牌メインでわりと早そうやな。劔谷はなんともわからん……神代は手出し……早速九蓮に一歩近付いた……ほんでうちは二索かぁ……いつもやったら……とりあえずオタ風牌切りやな。
一索は浮いとるけど……二索が来るなら捨てへんでええ……中張牌が少ないから……もう四、五巡様子見ていけそうやったらチャンタ系も悪くない……やけど……それで……神代をまくれるやろか……?)
怜、先ほどの直撃に満足せず、貪欲に勝ちを目指す。
怜(いつも通りやったら……勝てへんかもしれへん……うちはもう……一巡先しか見えへんわけやない……回数限定必殺技を持っとるんや……それを使わんっちゅうんは……手抜きと変わらんよな……!!
あかんあかん……千里山のエースは……手抜きなんて……せえへんよな……!!!)
怜、何があっても雀卓のほうへは倒れないように、椅子の手摺を掴んで身体を支え、唇を噛む。
そして……一巡先のその先の――さらに先まで目を凝らすッ!!!
15 = 1 :
怜(この局……最初から飛ばすで……手抜きもせえへん……手抜かりもあらへん……正真正銘これがうちの全力や……行くで…………トリプルッ!!!!)ギュルギュルギュル
怜、三巡先へ――!!!! しかし……その代償は大きく……!!!
セーラ「――!!! ――――!!!!」
怜(…………あれ……なんや……セーラ……何言うてんのか聞こえへん……)
セーラ「怜……!!! 怜ッ!!! しっかりせえや!!!!」
怜(……え……うち……今……どないなっとんの……? って……なんや……痛っ……!)
セーラ「聞こえとるか……!! 返事せえや、怜!!」
怜「…………聞こえ……とるわ…………大丈夫やって……」クラッ
セーラ「大丈夫やあらへんやろ!!! なんや……いきなり手摺掴んだと思うたら……そのまま後ろに仰け反って……!! しかも口から血ぃ流しとるし……!! びっくりするわ……!!!」
怜「……ああ……唇噛み切ったんか……道理で痛いと思うた……」
セーラ「ホンマ……俺が竜華やなくてよかったな……竜華やったら……卓をひっくり返してでも怜のこと抱き締めに行ってたで……!!」
怜、ぼやけた視界で世界を見る。
セーラは、怜を案じつつも、席を立ってはいなかった。
対局中、手牌を開けたそのときから、席を立って移動するのは反則であり、罰符を払って場は流れる。
セーラ……怜の闘う気持ちを汲んでの……必死の我慢ッ!!
16 = 1 :
怜「ありがとな……セーラ……おかげで……未来に繋がったわ……」
セーラ「ええから……早くその血ぃ拭きや……制服に垂れんで……」
怜「何から何まですまんな……」
怜、対面に座る友香に、軽く笑ってみせる。
怜「第一打から待たせてすんまへん……ほな……いま打ちますわ……」
対して、友香、険しい表情で、少し怒ったように、低い声で言う。
友香「病弱かなんか知りませんけど……この場はあなたと神代だけのものじゃないんでー。次に意識飛ばして対局を止めたら……私棄権するんでー……よろ」
怜「せやな……ホンマ……申し訳ない。神代さんも……聞こえてんのかどうか知らんけど……ホンマにごめんなさい……」
小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
怜「ほな……行きますわ……」コホッ
怜、第一打は、中ッ!!
18 = 1 :
怜(迷惑……かけてもうた……あかんなぁ……それは勝つ負ける以前の問題やん……反省反省……)
セーラ(ったく……心配かけさせよって……これで何もできひんようやったらドツいたるで……)タンッ
友香(千里山の園城寺……確か……インターハイの準決勝では……二巡・三巡先まで見えてるっぽいときがあった。美幸先輩と一緒にモニターで見てたけど……その二、三巡先まで見たっぽいときの園城寺は……今みたいに死にそうな顔してたっけ。
ってことは……今、園城寺は一巡先よりもさらに遠い未来を見てきたってことでー……? じゃあ私がここで西を切るのも、次に何を切るのかも……わかってる。
まあ……それならそれで……別にいいんだけど……ただ……そういう無茶をするんだったら体力くらいはつけてきてほしいもんでー……)
友香、溜息。
怜(あれ……なんや……劔谷……何を迷っとん……? 西切るんちゃうのか……?)
友香(何をそんな不思議そうな顔でこっち見てるんでー。そっちは一回対局を止めてるんだから……私が少しくらい長考したって……文句言われる筋合いはないんでー)
友香、徒に、手牌を弄っては、切る牌を選ぶ……フリを続ける。
友香(さて……さすがにこれ以上悩むのはマナー違反でー!)タンッ
友香、迷った末に、西切り。
否、友香は、決して迷ってなどいない。
怜(劔谷……まさか今……うちのために目一杯時間使ったんか……!?)
友香(また倒れられたらたまんないんでー。ここで棄権とか絶対嫌なんでー。それに……フラフラの半病人に勝っても……こっちはまったく嬉しくないんでー!)
友香、怜に塩ッ!!!!
怜(おおきに……劔谷……!!)コホッ
19 :
落ちたと思ったらこっちにいた!支援
20 :
容量落ちとかVIPで初めて見たわ
21 = 1 :
しかし、そんな友香とは対照的に――。
小蒔()タンッ
友香(ふん……ノータイムで切ってきたか……さっきから本当に人間じゃないみたいでー)
怜(せやろな……まあ……勝手に無理してんのはうちや……同情引きたいわけやない……ただ……勝ちたいだけや……)ツモッ
怜、ツモ、二索ッ!! 打、一索ッ!!
怜手牌:①①⑦⑦⑧⑨2688東東西:ドラ③
怜(トリプルで見た未来では……次に二索、その次に西をツモる……それで……七対子テンパイ……目指すんは……最速で……最高打点の……和了りや……!!)
そして、ツモは巡り、怜の見ていない五巡目――!
怜(ここで……發かいな……)
怜手牌:①①⑦⑦⑨2288東東西西:ツモ發:ドラ③
22 = 1 :
怜(發はな……セーラが最初に捨てとる。そのあと……三巡目に劔谷が捨てとるから……残ってんのは二枚。どう考えても……場に一枚も見えてない九筒のほうが確率は高い。
やけど……なんとなく筒子の高めは劔谷が抱えとる感じもする……ほんでもって……セーラも劔谷も發を一枚ずつ切っとるっちゅうことは……もう手牌に發がないってことやんな……当然……神代の手牌にも發はないわけで……。
となると……この山の中に……ほぼ確実にもう一枚の發が眠ってる……なんとなくやけど……ここが運命の別れ道な気がするわ……)
怜、深呼吸ッ!!
怜(セーラはなんやかんや言うてそういうとこシビアやし……神代は九蓮マシーンやからあれやったけど……唯一……劔谷が毎巡牌捨てるんに時間使うてくれたおかげで……大分休めたわ。
さっきはな……前局のダブルから間を置かずにトリプルやったから……さすがにしんどかったけど……今なら……ちゃんと意識保てる気がする……!)フゥ
長く息を吐きながら、目を閉じて、集中を高めていく怜ッ!!!
怜(負けへんで……絶対勝つんや……! やって……セーラが……竜華が……フナQが泉が……千里山のみんなが……! みんなが見てくれとるんや……! みんなが見とんのやったら……! うちは……何度だって……無茶するわ……!!)
怜、第三の瞳、再び開眼ッ!!!!
怜(くぅ……!!! これは……しんどいなぁ……!!!)クラッ
眩暈ッ!! 頭痛ッ!!! 吐き気ッ!!!!
怜(でも……みんなが見てるから……!! うちは千里山のエースやから……!!! 最後まで……!! 全力で戦うねん……!! 行くで……トリプル…………ッ!!!!)ギュルギュルギュル
怜、三巡先へ――!!!
果たしてその意識は――!!?
23 = 1 :
怜(あ…………ぶなかったで…………!!!)フラッ
落ちずッ!!
怜(ハハ……なんとか……戻ってこれた……!! うち一人じゃ……こんなことできひんかったな……みんな……おおきに……!!)タンッ
怜、七対子張り替えッ!!!
發を残して、九筒切りッ!!!
それからツモは巡り、二巡後ッ!!!
怜「……リーチ……」フラッ
セーラ(怜のリーチ……! 神代のメンチンをかわせる確信があるんか……!?)タンッ
友香(園城寺のリーチ……!!! ってことは一発来るんでー!?)タンッ
怜(神代は……和了られへんよ……うちが四巡目でテンパイしてから……手が進んだのは二回だけ……ほんでもって……さっきうちがトリプルで見た未来の中では……ずっとツモ切りばっかで和了らへん。
うちはずっと張っとるんやから……メンチンツモるんやったらその未来が見えるはず……それが見えへんってことは……たぶんやけど……神代はまだテンパイすらできてへんねん……!!!)
小蒔()タンッ
神代の出した牌、当然、誰も鳴けずッ!!
この瞬間、未来は不確定から――確定へッ!!!
怜「ツモや……ッ!! リーチ一発ツモ七対子……4000オールは……4100オールッ!!」パラララ
24 = 1 :
園城寺怜、意地の二連続和了ッ!!!
親満ツモで、トップ神代との差を更に詰めるッ!!!
また、この和了りで個人成績は友香を抜いて二位浮上ッ!!!
だが……その猛追もここまで……!!!
怜(あかん……この感じ……次からは……もう一巡先も見えへんな……)クラッ
セーラ(怜……お疲れやな。さすが千里山の真エースはごっつう強いわ……! やけど……さすがにこれ以上は無理し過ぎ……ちゅうか……一人で張り切り過ぎや……ぼちぼち俺にも見せ場くれや……!!)
友:110200 神:119300 セ:86500 怜:84000
25 = 1 :
南三局二本場・親:怜
セーラ(神代小蒔がこの状態になってから……俺が和了ったんは……神代の親を流すためのザンクだけ……もちろん……このままで終わるつもりはない……)タンッ
セーラ(この神代相手に……じっくり高い手を作るんは無謀……誰やってそう思う……早和了りせんと役満ツモられるんやから……安く早く手を作るのが当然や。
そら怜みたいに一発を狙って和了れるんやったら……安手でも今みたいに満貫に持っていけるんやろうけど……俺は怜やない……それは無理や……)タンッ
セーラ(ただでさえ……俺は今断ラスやねん。ザンクなんかで刻んどる場合ちゃう……そもそも……麻雀は三、四局に一回和了れるか和了れないかのせめぎ合いや……その和了れる一回で……なるべく多く稼ごう思うんは……俺は普通の感覚やと思うんやけどな。
安いから和了りやすいとか……鳴いたから和了りやすいとか……まあそういう傾向もなくはないんやろうけど……期待値で言えば……俺は……和了れる一回を高めるほうが正解やと思う……いや、正解とかやないな……単純に……好きなだけや)タンッ
セーラ(と……怜が鳴けるとこ切ってきたな……四巡目で鳴き三色テンパイ……流すには絶好の手や……)
セーラ、手牌の搭子に手をかけ、苦笑。
セーラ(いやいや……ちゃうやろ。俺の打ち方はそうやないやろ……! そんなんで勝っても……オモロないわ……!)ツモッ
セーラ「ほい来たでー……リーチッ!!」タンッ
セーラ、平和三色テンパイから、迷うことなくリーチッ!
26 = 1 :
セーラ(怜の未来予知か……神代のメンチンか……どうせ潰されるときは潰されんねん。そんなんに一々ビビって打っとったら和了れるもんも和了れへん。
俺は迷わへんで……! 未来も見えへんし……一色独占も無理やけど……俺は俺のプレイスタイルをけっこう気に入ってんねん。好きこそ物の上手なれってな。好きなように打って……楽しんで……その上で勝つ……!! それが俺の麻雀やっ!!)
二巡後
セーラ「ツモやッ! リーピン三色ツモ……裏なし、2000・4000は、2200・4200!!」
怜(セーラ……うちから鳴かずに……あくまで門前で手を高めて来た……しかも……うちが散々悩んだ神代相手にリーチするかどうか問題も……一切迷わずテンパイ即リー……。
ホンマ……セーラは高い手和了ることしか考えてへんなぁ……そのブレのなさが……最高にカッコええで……)
友香(さっきから……じわじわ削られてる感じでー? 結局……魔物相手に私だけ何もできてないし……これじゃあ見てるみんなもつまんないよね……次がオーラス……せめてもう一発くらいは和了って終わりたいんでー!)
次局オーラスへ向けて意気込む、劔谷・森垣友香ッ!!
しかし……その結果は――!?
友:108000 神:117100 セ:95100 怜:79800
27 :
512kb突破ってすごいな。このまま最後までがんばってくれ
28 = 1 :
南四局・親:セーラ
三巡目
友香「ツモでーッ! ダブ南ッ! 500・1000でー!」
セーラ「(げ……超走ってんなー……!? ゴットーでラス親流されてもうた……ま、そういうこともあるやんな……)ほな……お疲れさん。楽しかったで」
怜「(三巡目ツモとか……んなアホな……そんなん何もできひんわ……)ご迷惑おかけしてすんまへんでした……よかったらまたよろしくです……ほな、おおきに」コホッ
友香「(だあああああこれ悔しいんでー!! 結局何も……何もできなかった……! 千里山のダブルエースは神代相手でも自分の麻雀を打ってたっていうのに……私はこの様なんでー!! これが全国の頂……!! まだまだ……道のりは長いんでー!!)
お疲れ様ですっ! どうもありがとうございましたでー!!」
小蒔「(あれ……私また対局中につかれてて寝ちゃってました……? 点が……増えてる……? けど……いつもに比べると増え方が若干少ないような気もしますね……これは……あとで何があったか霞ちゃんたちに聞いてみないとっ!)
え、えっと……すいません寝てましたっ! あ、ありがとうございましたっ!!」ペコリ
セーラ・怜・友香(も……元に戻った……!)
中堅戦前半――終了ッ!!
<中堅戦前半結果>
一位:神代小蒔+8400(116600)
二位:森垣友香+1800(110000)
三位:園城寺怜+200(79300)
四位:江口セーラ-10400(94100)
29 = 4 :
しえー
30 = 1 :
@実況室
すばら「森垣選手の超速攻ッ!! 一巡目にダブ南を鳴いてテンパイ……! そのまま三巡目にツモリましたああああ!! これにて中堅戦前半、決着ですっ!!」
純「今の和了り……本人は納得してないみたいだけどな。オレは逆に驚いたぜ。あの場面……千里山の二人が奮闘した直後……熱くなっててもおかしくはない状態で、森垣は冷静に卓を見て、最善の結果を残した。
配牌イーシャンテンに助けられた形ではあるが、配牌イーシャンテンだったからこそ……一巡目で鳴いたことに意味がある」
菫「そうですね。ともすると、門前で高めを狙えると……欲が出てしまうものです。待ちも広かったですしね。たとえ鳴かずとも序盤に和了れる確率は高い。けれど……森垣選手はただ速さだけを追求して……流すことを選んだ」
初瀬「オーラス……森垣選手が流さなかったら……どうなっていたかわかりませんよね。麻雀でもしもの話をしてもきりがないですが……私は、配牌を見たときに、もうダメかと思いました」
すばら「神代選手ですね。終わった今になって、流された側の手牌をどうこう言うのは失礼かもしれませんが……神代選手もよかったですからね、配牌。
あの場面……千里山のお二人は気付いてない感じでしたが、森垣選手はそれを察知したようでした。しかし……一体なぜ察知できたのかは、私にはよくわかりません」
菫「それについては……初瀬さん、どう思います?」
初瀬「えっ、私ですか? えっと……たぶんですけど……神代選手の第一打です。あの……ツモ切り一索」
すばら「あの一索で……配牌の良し悪しがわかるものですか?」
31 = 1 :
初瀬「えっと……九蓮が清一より格段に難しい理由の一つに……門前で1・9を暗刻にしないといけないことが挙げられます。神代選手の場合も……ランダムに一色を引き続けるわけですが……ここ数局を見る限り1・9はまだ一度も切っていませんでした。
配牌に1・9が二~四枚あるのを……中張牌で穴があるところを埋めつつ……じわじわ増やしていって……最終的にはテンパイ。
確率的に考えて、九種をランダムに引いていくわけですから、サイコロを千回振ったらどの目も同じくらい出るように、普通は1~9の各牌をまんべんなくツモります。麻雀は牌の数が限られているので、よりその傾向が強い。
そうなると、多くの場合、最後に待つのは三枚揃えなきゃいけない1・9になります。メンチンを一萬で和了った南二局一本場のケースも、やっぱり九萬待ちでした。
そんな神代選手が……不要牌はツモ切りするというルールで打っている神代選手が……第一打からいきなり一索をツモ切ってきた。あの一索切りで、神代選手の手に一索が三枚あることが確定するわけです。
残りがどうなっているかまでは……他家からは推測するしかありませんが、配牌がいいのだろうと考えるのに、あの一索切りは十分な判断材料だったと思います」
すばら「なるほどっ!! 言われてみればそうですねっ!!」
純「さすが偏差値70。論理的だねぇ。ま、オレならそんな細かいこと抜きに、もう見ただけでヤバい流れを感じ取るだろうがな」
菫「森垣選手が果たして論理か直感か、どちらで危険を察知したのかはわかりません。
けれど、その危険を察知したまさに直後、彼女は園城寺選手から南を鳴きました。危険察知から行動決定に擁した時間は、ほんの一瞬です。驚くべき判断速度だと言っていいでしょう」
初瀬「そうですね。私だったら……危ないかなって思っても、どうしようか迷っているうちに一枚目の南はスルーしてしまうかもしれません」
すばら「というわけでっ!! 最後まで見ごたえたっぷりのすばらな中堅戦前半でしたっ!!
さて……ここでとうとう対抗戦も折り返しっ!!! 後半戦も楽しみですっ!! それではみなさん、後半戦開始までしばしお待ちをっ!! この対抗戦は実況の新道寺・花田煌と……」
菫「解説の白糸台・弘世菫と」
純「同じく龍門渕・井上純と」
初瀬「晩成・岡橋初瀬で……」
すばら「お送りしていますっ!!! すばらっ!!」
32 :
ここで小蒔が落ちなかったって事は今までの扱いからして荒川さんかまs(ry
33 = 1 :
@会場某所
莉子「友香ちゃーん!!」
友香「莉子っ!? みんなも!? 一体どうしたんでー?」
美幸「そんなの決まってるもー。頑張った友香を迎えに来たんだもー」
友香「そんな……私、何もできなかったんでー。園城寺怜に当てたときは少し届いたかなって思いましたけど。神代小蒔があんなになって思い知りましたんでー。私はまだまだ……あの人たちには勝てません」
澄子「そんなことないわ。友香は堂々の二位じゃない」
友香「数字の問題じゃないんです。私は……本当に……何もできなかったんでー……」
梢「友香……本当に……最後までよく頑張りましたね」
梢部長、大健闘した一年生の肩に、そっと手を置く。
それまで平静を装って笑っていた友香、部員の顔を見て安心したのか、顔は笑っているのに、目から涙が零れてくる。
友香「うう……!! 部長……!!! みんな……!! 私……本当に……恐かったんでー!!」ポロポロ
美幸「うんうん……あれは見てるだけでもきついもー。お疲れだもー。よしよし……」ギュッ
34 = 1 :
友香「うう……! 本当に辛かったんでー……苦しかったんでー……!!」ポロポロ
莉子「友香ちゃん……」
澄子「友香……」
美幸「そうだなもー……ありゃ人間じゃないなもー。けど……友香が必死で戦ってるのを見て……私らみんな……勇気をもらったもー。今日帰ったら……みんなでどうやったらあれに勝てるか考えてみようもー。
神代小蒔は来年もインターハイに出てくる……そのとき……あいつを倒せるように……一緒に頑張ろうもー」
友香「美幸……先輩……!!」
美幸「友香……私が間違ってたもー。インターハイのときは……チャンピオンみたいな人らは世界が違うって思ったけどもー……今日の友香を見て……みんなと一緒なら……まだ戦えるって思えたもー。
私らは来年いないけど……友香たちが全国で活躍するの……楽しみにしてるもー!」
友香「は……はいっ……!! 頑張ります……っ!!!」
莉子「友香ちゃん……私も……友香ちゃんに負けないよう頑張るよっ!」
澄子「莉子は……とりあえず気絶しないようにするところからね」
友香「莉子……澄子先輩も……応援ありがとうございましたでー!」
梢「じゃあ……友香、私たちは最後まで観戦室まで見てますからね。他の一年生の皆さんと……いい機会ですから仲良くなってきなさい。友香がこれだけ頑張ったんです……勝てるといいですね、一年選抜チーム」
友香「部長……! はいっ! ありがとうございますでー!!」
35 = 1 :
@会場某所
初美「姫様おつかれですよー! って……つかれてない?」
小蒔「初美ちゃん……みんなも! お迎えありがとうございますっ!」
霞「あら、小蒔ちゃん、つかれてないのね」
小蒔「はい。なんだかそのようで!」
巴「まあ……なんにせよお疲れ様です」
はるる「」ポリポリ
霞「どう、楽しかった?」
小蒔「楽しかったよー!! みなさんびっくりするくらいお強くて……勉強になりました!」
霞「そう、ならよかったわ」
巴「じゃあ……まあ姫様はお祓いの必要がないってことで。私らは観戦室に場所に戻りましょうか、はるる」
はるる「」ポリポリ
初美「巴もはるるもお勤めご苦労様なのですよー」
霞「小蒔ちゃん、チームメイトとは仲良くなれた?」
小蒔「気が合いそうな方いっぱいいますっ! 奈良の松実さんとか、長野の妹尾さんとか! あと天江さんが可愛いったらなくてっ!! みなさんよくしてくださいます」
36 = 1 :
霞「楽しそうねえ。小蒔ちゃんは対局も終わって役目を果たしたことだし、あとは、お友達をいっぱい作ってくるといいわ」
小蒔「そうしますっ! では、また閉会式で!」ダッダッダ
霞「ええ……またね」
初美「姫様、楽しそうですねー。あんなに走って戻っていくなんて、よほど二年選抜の控え室は居心地がいいんですかー」
巴「姫様に同年代の友達が増えるのは、いいことです」
霞「そうね。ちょっと浮いてないか心配だったけど、杞憂だったわ」
はるる「」ポリポリ
初美「もうこれで姫様も私たちもあとは見るだけですからねー。気が楽ですよー」
巴「二人もチームメイトと親睦を深めてくるといいよ」
霞「そうね……今日のメンバーが集まることはもうないでしょうから、せっかくだし……対局が終わったあと、どこかで打ち上げがしたいわ」
巴「カスミン、周りはみんな未成年なんだから、お酒はダメだよ」
霞「私も……未成年だけど……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
巴「冗談よ冗談っ!! 冗談だから無闇にそれ降ろすのやめてええええええ!!!!」
初美「あぁあ、せっかく姫様がつかれずに帰ってきたのに、仕事が増えたみたいですよー」
はるる「…………」ポリポリポリポリポリポリ
37 = 1 :
@会場某所
セーラ、怜に肩を貸して控え室へ戻る。
途中、対局室に向かう竜華と泉、それに駆けつけてきたフナQが合流。
竜華「怜……! セーラ……!! よく生きて帰ってきたなぁ!!」
怜「けっこうギリやったけどな……」
セーラ「俺は全然ピンピンしとんでー!」
Q「先輩は点数がズタボロですやん」
セーラ「やかましいわっ!」
泉「お二人とも、無事で何よりです」
怜「泉も……次……頑張ってな」
セーラ「泉も泉でえろう大変な卓に入ってしもたもんなー」
Q「その通り。十万点持ちですけど……トバされても不思議やないです」
泉「みんなして脅さんでくださいっ! ただでさえ……部長とガチで打つってだけでプレッシャーやのに……!!」
38 = 1 :
怜「ハハ……ま、きっとトビそうになったら竜華が助けてくれるわ」
竜華「できたらええけどな。泉、悪いけど、今回の面子が相手やと、うちも泉を庇っとる余裕ないで」
泉「大丈夫です。自力でなんとかしてみせますよ」
竜華「そら頼もしいわ」
Q「泉は口だけは高一最強ですからね」
セーラ「ほな、二人とも気張ってなっ! うちらは控え室で応援しとるわ。千里山魂見せたれよ!!」
怜「竜華、泉を頼むでー」
竜華「できる限りのことはするわ」
フナQ「泉、泣くんやないでー」
泉「もー! 先輩方ひどいですわー!」
ひとしきり談笑したところで、怜とセーラとフナQはそれぞれの控え室に帰っていく。
残された、竜華と泉。
40 = 1 :
泉「あの……部長……」
五人でいるときは空元気で明るく振る舞っていた泉、多少緊張した面持ちで、先輩・竜華に話しかける。
竜華「ん、なんや、泉。恐くなったんか?」
泉「そらまあ……同卓するんが大阪三強の虎と竜と悪魔ですから……恐くない言うたら嘘になります」
竜華「コラコラ。人をそんな魔物みたいに言わんといてや。うちも洋榎さんも憩ちゃんも、みんな普通の人間やて。さっきの神代小蒔みたいな無茶苦茶はせんよ。泉は泉の麻雀を打ったらええ。南北大阪の個人戦決勝にでも来たと思うて、楽しみや」
泉「うちがセーラ先輩か園城寺先輩やったら……確かにそうですね。個人戦決勝ですか……わかりました。うちの力でどこまでやれるか……頑張ってみます」
竜華「ほな……行くでっ!」
清水谷竜華、二条泉、出陣ッ!!
41 :
ここまでいったのか
42 = 1 :
すばら「ここから対抗戦は後半へと入っていきますっ!! 大熱戦かつ大接戦が続いておりますが、そんな中現在のところは116600点の二年選抜が頭一つトップに立っています! それを追うのは一年選抜・110000点、三年選抜・94100点!!
混成チームは未だ大きく点を稼いだのが小走選手だけというやや苦しい状況ながら、79300点でトップと37000点差と、一発が決まれば十分にひっくり返せる位置につけていますっ! 果たしてここから順位は動くのか否か!! 中堅戦後半、開始ですっ!!」
@対局室
東家:二年選抜・荒川憩(三箇牧)
憩「ほな、みなさん、お手柔らかによろしくでーすっ」
南家:三年選抜・愛宕洋榎(姫松)
洋榎「ほんなら、うちは手堅く勝たせてもらうでー」
北家:混成チーム・清水谷竜華(千里山女子)
竜華「お手並み拝見、ってところやなっ」
西家:一年選抜・二条泉(千里山女子)
泉「(えっ!? なに? なんやこの流れっ!?)えっ……えっと……みなさん手強そうなんで…………頑張ります」
憩・洋榎・竜華「オモロなっ!!!」
泉(手……手厳しいっ!!)
中堅戦前半――開始ッ!!!
43 = 1 :
@実況室
すばら「これはまた、見事に大阪府の有力選手が集まりましたねっ!」
純「オレはあんまり関西には詳しくねえから、多少説明がほしいけどな」
菫「では、近畿地区担当の初瀬さん、お願いします」
初瀬「私ですか!? え……えっと、そうですね。まず言っておきたいのは、この中堅戦後半は、事実上の大阪最強を決める戦いだということです。まさか、こんなところで竜と虎と悪魔の三強直接対決を見れるとは思いませんでした」
すばら「竜に虎に悪魔ですかっ! 随分とまた物々しい通り名ですね!!」
初瀬「物々しいどころか物足りないくらいです。あの方たちに関しては……通り名のほうが名前負けしている。それくらい実力のあるお三方ですから」
純「竜ってのは……あれか。うちの龍と名前が似てる、千里山の黒髪ロングか」
初瀬「はい。北大阪最強の高校を司る竜――千里山女子の部長にして大将・清水谷竜華選手のことです」
菫「なら当然、竜と並び立つ虎は、姫松の彼女ということになりますね」
初瀬「南大阪最強の高校を率いる虎――姫松の主将にしてエース・愛宕洋榎選手ですね」
すばら「そして……白衣の悪魔なわけですねっ!」
初瀬「彼女と対戦経験のあるプロの方が、雑誌の取材か何かでこう答えたそうです。『あれは天使なんかじゃない。むしろ悪魔的な何かだ』――と」
44 :
あとでよむほ
45 = 1 :
菫「大阪府どころか、西日本最強と言っても過言ではないですよね」
純「だな。全国一万人の頂点にもっとも近い存在……来年の日本最強候補筆頭」
初瀬「二年連続全国個人戦二位――三箇牧・荒川憩選手」
すばら「おおおお!! 聞けば聞くほど大阪三強対決と呼ぶに相応しい戦いですねっ!! すばらっ!!」
純「となると……残りの一年坊が心配だな」
菫「ええ。彼女も決して弱くはありませんが、まだまだ経験不足という感が否めません」
初瀬「二条泉選手……大阪――ひいては近畿地区の一年生の中でトップクラスの打ち手です。インターミドルでも、原村選手に負けず劣らずの活躍を見せていました。
同学年の私から見れば、一年生で千里山のレギュラーになってみせた雲の上みたいな人ですが……三強が相手となると……苦戦は必死だと思います」
純「ま、今回の学年対抗戦の趣旨には合ってるんじゃねえか? 同地区の最強と呼ばれる先輩どもに、初々しいホープがどこまで食らいつけるのか。見物だな」
菫「そうですね。それに、一年生は成長の度合いが二、三年生とは段違いに速いものです。二条選手があのインターハイのときからどれだけ強くなっているのか。直に戦った私としては、非常に興味深いところです」
すばら「さあああ! 大阪三強対決であり、大阪最強学年決定戦でもある中堅戦後半っ!! 東一局、第一打が放たれようとしていますっ!!」
46 :
何でsage進行なの?
さる避け支援
47 = 13 :
ちょっと離れたらだいぶ進んでたわw
48 = 1 :
@対局室
東一局・親:憩
泉(北大阪の竜……南大阪の虎……そして、個人戦最強の悪魔……)タンッ
泉(強いのは十分知っとる。清水谷部長とは部活で何度も対戦して……直にその力の差を見せつけられてきた。そして……その清水谷部長と互角にやり合う……南大阪の愛宕洋榎さん……もとい監督の娘さん。
と……そんな洋榎さんと清水谷部長の更に上を行く……南北大阪個人戦一位……全国では二位の……荒川憩さん……)タンッ
泉(三人とも大阪屈指の化け物や……三強であり五指……大阪で麻雀打っとるやつやったらみんな知っとる。この三人に、セーラ先輩と園城寺先輩が加わって……それで大阪ドリームチームの出来上がりやってな)タンッ
泉(自分が場違いなのはわかっとる。うちかて自分が弱いとは思ってへんけど……この三人と対等に戦えるステージにはおらんっちゅうのもよくわかる。この三強相手にまともに戦えるのは……今日の一年選抜やったら大星淡か宮永咲くらいやろ。
清水谷部長は魔物と一緒にせんでって言うてたけど……うちから見れば同じや。それくらい突き抜けてんねん……この人らは……)タンッ
泉(まあ……最初から弱音ばっか吐いててもなんも始まらん。今まで見てきた対局の中で……この場が一番普通なはずなんや。神代小蒔や天江衣のような無茶苦茶な場を作る人はおらん。大星や松実姉妹みたいなツモに偏りのある人もおらん。
正真正銘……非オカルト同士の戦い。うちにやってチャンスがないわけやない。せやから……とにかくまずは……一つ和了ることや!)タンッ
六巡目
憩「おっ、ツモや。ツモドラ一……1300オールいただきですわー」カチャカチャパラララッ
泉(速い……!)
洋榎(おー……さすがうちと五分で戦える数少ないやつの一人やな……やるやんけ)
竜華(手始めに……って感じやな。まだまだ……これくらいやったら可愛いほうや)
憩「ほな、一本場いっくでーっ!」コロコロ
泉:108700(-1300) 憩:120500(3900) 洋:92800(-1300) 竜:78000(-1300)
49 = 4 :
大阪人のみか
50 = 1 :
東一局一本場・親:憩
竜華(泉……ツモ牌や場の偏りがないからゆうて……自分にもチャンスあるみたいな思っとったら……どえらい勘違いやで。この悪魔はな……憩ちゃんは……こういう普通の場で倒すんが一番しんどいんや。
まだ場に偏りがあるほうが……憩ちゃんの手が読みやすくなって楽……もちろん偏りがあろうとなかろうと憩ちゃんは悪魔的に強いけどな。全国二位っちゅうんは……そういう相手やで……泉……気ぃつけや)タンッ
竜華(憩ちゃんのツモに偏りはない……洋榎さんやセーラみたいに強い引きを持っとるわけとも違う……もちろん……怜みたいに一巡先が見えるなんて超常現象は使えへん。やのに……この子は南北大阪で個人優勝できる。
みんな最初は不思議に思ったんや……なんでこんな一見して普通の麻雀を打つ子に勝てへんのやろって……やけど……一度対戦してみれば嫌でもわかんで……本当に……勝てへんのやからな……)タンッ
竜華(高度に発達した技術は魔法と区別できひんみたいな言葉があるけど……憩ちゃんの麻雀はまさにそれや。宮永照の麻雀が殺人的なんやとしたら……憩ちゃんの麻雀は達人的。
純粋な技術力で言えば……憩ちゃんは宮永照の上やとうちは思う。その特徴は……一目じゃ気付きにくい。けど……気付いた瞬間に背筋が凍る……憩ちゃんは……半端やなく目がいいねん……)タンッ
竜華(泉……さっきの憩ちゃんの和了り……ちゃんと気付いとるか……? 二巡目に手から六筒を落として……ペンチャンの三萬待ちで和了った憩ちゃんの打牌の不自然さに気付いとるか?
まあ……最初から手がよくて一萬と二萬があったんやったら話は別やけど……憩ちゃんは一巡目からずっとツモ切りをしとらん。
しかもあの安い和了りや……別に手を高めるために手出しを続けてたわけやない。憩ちゃんは単純に配牌が悪かったんや。たぶん……一萬と二萬……どっちか片方しか配牌になかったやろな。
やのに……憩ちゃんは受けの多い六筒を早々に落とした。染め手やチャンタを狙うでもなく、や)タンッ
竜華(まあ……これだけで気付けっちゅうのもさすがに無茶やろか。もう二、三回見れば……たぶん思い知るやろ。大阪最強……全国二位の荒川憩……その悪魔的な闘牌。
うちも気付いたときはぞっとしたで……なんたって……憩ちゃんは絶対に裏目らへんのやからな……!)タンッ
みんなの評価 : ★★
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