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    元スレ咲「え? どの学年が一番強いかって?」

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    みんなの評価 : ★★★×4
    タグ : - 全国選抜学年対抗戦 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    501 = 497 :

    (そうだよ……私は……こんなところで負けてられないんだ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    (永水の四喜和使い……菫先輩とやりあった清澄の眼鏡……亦野先輩をボコボコにした千里山の眼鏡……この人たちが弱くないことは知ってる……けど……それでも……!
     私はテルみたいに強くならなくちゃいけないんだ……!! 誰が相手だろうと蹴散らす……あんな風に負けて泣くのは……もう二度とゴメンだよ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    (さあ……この世の天国を見せてやる……!!)ゴゴゴゴゴ

     淡配牌:二三①①⑦3東南西北白發中:ドラ⑦

     淡、通常なら九種九牌で流してもおかしくはない配牌ッ!!

     しかし……配牌時に手にある字牌を引き寄せる淡にとって、七種全ての字牌が手の内にあるこの配牌は、自身が最も好きな役満への六向聴ッ!!

     七巡目で必ず役満を和了れる……絶好の配牌ッ!!!

    (流すわけがないよね……!! ほら、これが天国への一段目だ……!!)ツモッ

     淡、東、ツモッ!

     打、三索ッ!!

    (あと……六段……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    502 :

    あ、そうか
    照&淡相手に他の人が一瞬でもトップに立つ可能性を除外してしまっていた

    503 = 497 :

     一方、対面のまこ、この最終局面に来て、淡の放つ何かが膨れ上がるのを察知ッ!

     それは、同じ魔物・宮永咲をチームメイトに持つまこにとって、馴染み深い感覚ッ!!

    まこ(とうとう来たのう。春……咲が西カンからの四暗刻を決めたときみたいな……あの感じじゃ。大星の支配っちゅうのが……一層強くなったような気がする。こりゃあ……鳴いても無意味じゃろうな……)

     まこ、迷いなく三索を切り出した対面を見て、溜息。

    まこ(十中八九……例の役満じゃろな。別にわざわざ見せてくれんでも知っとるっちゅうんじゃ。大星淡――七種の字牌を支配する魔物……その魔物が引き寄せる七つの星――その全てを手に含んで和了れる役は……国士無双を除けば、ただ一つじゃ)

     字一色七対子……またの名を――大七星ッ!! 

    まこ(大星の配牌に七つの星が一つずつ揃ったとき……この魔物は必ず七巡目に大七星を和了る。役満ツモじゃと……点数状況的には前局安めに振り込んどったほうがマシじゃったろうか。
     どうじゃろう……微妙なとこじゃな。しかし……まさか本当にこの半荘で大星が大七星のチャンスを掴むとはのう……)

     まこ、思わず、苦笑。

    まこ(まあ……もちろん……そういうこともあるじゃろうと……削られながらも温存しとった甲斐が……あったってもんじゃ……!!)

     まこ、脱、眼鏡ッ!!

    まこ(さあ……こっからが本番じゃあ……! わりゃあ字牌をごっそり集めるけぇ……わしゃあ大好きな染め手を一度も和了れんかった……!
     そのせいで大分点は取られてしもうたが……最後くらいは一矢報いんとのう。七巡目で和了るつもり満々みたいじゃが……そうそう思い通りに大七星なんぞ和了らせんぞ……!!)ゴッ

     まこ、本気モードッ!!

    504 = 498 :

    アカン・・・キンクリ発動するんやないやろな

    505 = 497 :

     他方、フナQと薄墨初美は――!

    (えらいこっちゃ……大星がめっちゃ嬉しそうやん……これ絶対例のやつやろ……親っ被りとか死んでも食らわんで……!)

    初美(んー……まあ役満食らったら食らったで霞になんとかしてもらうですよー。もちろんできることはしますけどー……私のこの手じゃ厳しい感じですねー。魔物退治は清澄か千里山に任せるですよー)

     二巡目。

    (南……とっ!)タンッ

     淡、ツモ、南、打、三萬ッ!

    まこ(ありったけのイメージを引き出すんじゃ……! 千里山も薄墨も大星も全国の上位ランカー……牌譜は片っ端から並べた……! 三人とも……捨て牌のクセっちゅうのか……よく見せる顔がそれぞれにある……!!
     それらを重ね合わせて……混ぜ合わせて……現状を把握……!! その上で……わしに都合のいい顔に歪ませるんじゃ……!!!)タンッ

     順調に字牌の対子を連ねていく、魔物・大星淡ッ!!

     イメージを繋ぎ合わせ、細い綱を渡るように一打一打それを追いかけるまこッ!!

     場が動いたのは――五巡目ッ!!

    まこ「ほいじゃ……リーチじゃ!!」スチャ

     まこ、大七星一向聴の淡に対し、意地の先制リーチッ!!

     場の緊張が一気に高まる……!!

    507 = 497 :

    (清澄がリーチ……!?  この半荘で二度目……成立したのは初めてのリーチが……このタイミング……! なんや秘策があるんかいな……!?)

    まこ(策やら意味やらあればいいんじゃろうけどのう……! こんなのはハッタリ……ただ役がないからリーチしただけじゃ……!!)

    (ふん……! 一丁前にテルと似たようなことしちゃって……!! いいさ……止められるもんなら止めてみろ……!!
     私だって……あれから成長してないわけじゃない……テルが相手のときは……左端から切るなんて間抜けなことをして手牌を読まれた……けど……今の私は……もうあの頃の私とは違う……!!)

    初美「それカンですよー!」

    Q・まこ・淡(!!!?)

    初美(ま、カン自体に意味はないんですけどねー……こんな鳴きで大星淡の大七星を止められるなんて思ってはいないですよー。
     ただ……大星がどうとか清澄がどうとかそういうことじゃなくてですねー……私の個人的なプライドってやつですかー……このまま役満を和了っただけの三年みたいに思われるのは嫌ですからねー……一応私なりに三年生の威厳ってやつを見せとくですよー……!)タンッ

    まこ(今のカンはまったく予想できんかったの……っちゅうか……なんのつもりかと思ったらそういうことか……薄墨初美……なんじゃ……見た目通り子供みたいなやつじゃの……カンドラのこととか何も考えとらん……どんだけ負けず嫌いなんじゃ……)

    「(わけわからへん……! けど……とりあえずカンドラいただきや……!)……それ、ポンやっ!」タンッ

    まこ(おっと……ツモ飛ばされてもうたのう……)

    初美(千里山……この大星と清澄の一騎打ちみたいな状況で貪欲にカンドラを鳴いてくる……その図太さだけは魔物級ですねー)

     そして……淡に六度目のツモが回ってくる……!!

    511 = 497 :

    「リーチだのカンだのポンだの……さっきから煩いなぁ……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

     淡手牌:①東東南南西西北北發發白中:ツモ中:ドラ⑦・五

    「そんなことで私を止められると思ってるの……?」

    初美(思ってませんよー)

    (ちょっとやけど思っとる)

    まこ「もちろん……止めるつもりじゃあ……!!」

    「あっそう……! 止まらないけどね――!!」タンッ

     淡、打、一筒ッ!!

    「清澄……約束通りあと一巡で見せてあげるよ。私の一番好きな役満をね……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    513 = 497 :

    まこ「ほうか……そりゃあ……残念じゃが、また次の機会にしてくれんか?」

    「……はぁ?」

    まこ「大星淡……わりゃあ強い。能力もそうじゃし、打ち方の柔軟さも、打牌のセンスも……ピカ一じゃと思う」

    「そうだよ……私は最強なんだから」

    まこ「じゃが……強過ぎることが弱点になることを……わりゃあまだ知らんようじゃのう……」

    「なに言ってんの……?」

    まこ「その捨て牌……三索、三萬、二萬、ドラの七筒に……一筒」

    「そうだよ。見ればわかる」

    まこ「わりゃあ強い……何が強いって……必ず字牌が寄ってくる己の能力を決して過信せんのが強い。白糸台でよう鍛えられとるんじゃろうな。わりゃあいつだって……万が一何かの不都合があったときに対応できるよう……きっちり保険をかけて捨て牌を選んどる。
     それはこの半荘ずっとそうじゃった。例えば最初の東一局。わりゃあ染め手を狙いつつ……ドラをぎりぎりまで抱えとった。ドラを手に残しておいたほうが何かと応用が利いていいと思ったんじゃろう。じゃが……そういう周到さが……今回はアダになったのう……」

    「何が……言いたいの……?」

    まこ「その……使い勝手のいいドラよりも後に残した一筒……そりゃあ配牌のときに対子じゃったんじゃろ……? もしも他家が速そうなとき……字牌を捨てて一巡早く七対子混一混老頭を和了れるように最後まで取っておいたんじゃろ……? 違うか……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

     淡、動揺ッ!!!

    「そ……んな……!? でも……一筒は――!!?」

    514 = 502 :

    何このアカギ対浦部みたいな

    515 = 497 :

    まこ「ほうじゃな。千里山が二巡目に一枚捨てていて……しかも薄墨の二筒カンが壁になっとるから……完全に地獄単騎じゃのう……」

    「地獄単騎って……そんな……それは清澄の中堅の得意技……!!」

    まこ「安心せえ……久の悪待ちと違うて……わしの地獄単騎じゃどうせ裏も乗らん……!!」

     まこ、手牌を倒すッ!!

    まこ「ロンじゃ……ッ!! リーのみ……裏乗らず……!! 1300は1600じゃ!!」ゴッ

    「う……嘘だよっ……!!? 私の七星が……そんな……!!!?」プルプル

    まこ「そういうこともあるのが麻雀じゃ。初心者相手に役満の親っ被りを食らったりの……勝負なんてままならんことばかりじゃて」

     勝負を終え、まこ、眼鏡を掛けなおす。

     クリアになった視界で真っ先に見えたのが、顔を真っ赤にして震えている大星淡の姿。

    「う……ううう…………!」ウルウル

    まこ「え……? ど、どうしたんじゃ……?」アセアセ

     淡、堰、決壊ッ!!

    「うう……うわあああああああああああん!!」ボロボロ

    516 = 497 :

    まこ(えええー!? 泣きよった!?)

    (いきなりどないしたん……!?)

    初美(びっくりですよー……!)

     淡、目に涙を溜めて、しゃくり上げながら三人を睨みつける。

    「みんな……みんなして私を狙い撃って……ひっく……雑魚のくせに……!! でもでもっ! それでもトップは……ひっく……私だもんね……!! ザマーみろっ!! くや……悔しくなんか……ないもんっ!!!」ダッ

     淡、逃走ッ!!

     対局室に残された三人、バツが悪そうな顔で互いを見やる。

    まこ「ま、お疲れじゃ」

    「お疲れさんですわ」

    初美「お疲れですよー」

    まこ・Q・初美「………………(なんか気まずいっ!!)」

     次鋒戦前半、微妙な空気のまま……終了ッ!!

    <結果>
    一位:大星淡+8600(106500)
    二位:薄墨初美+7000(101600)
    三位:船久保浩子-4800(105100)
    四位:染谷まこ-10800(86800)

    517 :

    全員格好良すぎるだろwww

    518 :

    あわあわ

    519 = 502 :

    凡人がよくしのいだ、といったところか

    520 :

    このスレしか見れないから試演

    521 = 497 :

    @会場某所

     トップを取ったものの、自分の目指す麻雀とは程遠い結果に、泣きながら会場をさ迷う、魔物・大星淡。

    (うう……大七星が和了れなかったよ……数え役満なんて食らっちゃったよ……字牌単騎に二度も振り込んじゃったよ……ううううう……!!)フラフラ

     大星淡、純粋得点、62200点ッ!

     純粋失点、53600点ッ!!

    (こんなんじゃ……何も変わってない……!! 白糸台に入ったときから全然進歩ない……こんな弱っちい私なんかじゃ……テルに笑われちゃう……!!)ポロポロ

     敬愛する先輩の普段はあまり笑わない顔を思い出して、更に涙がこみ上げる。

     と、そこへ――。

    522 :

    割り食うやられ役がいなくてみんな頑張ってるのがとてもいい

    523 :

    ようやく追いついた
    面白いぞ

    524 = 512 :

    さすがあれだけ役満上がる宣言したら狙われるだろw

    525 = 497 :

    「淡……」

    「えっ……? テルー……?」

     廊下の角から紙袋を片手に現れる、宮永照。更に後方から、

    「なんだ……こんなところにいたのか」

    「菫先輩……」

     実況室から駆けつけた弘世菫。続いて、

    尭深「…………」

    「尭深先輩……」

     二年選抜の控え室を抜け出してきた渋谷尭深。ついでに、

    誠子「お疲れサマ」

    「選抜漏れした亦野先輩……」

    誠子「頬っぺたつねってやろうかお前」

     観戦室から走ってきた亦野が合流し、全員集合する白糸台レギュラー陣。

    527 = 512 :

    そしてオチ担当のマタンゴ先輩

    528 :

    あわあわが可愛すぎる

    529 :

    フィッシュ亦野さん!

    531 = 497 :

    「どうして……みんな……私が負けたから……?」

    誠子「いや……どう見ても勝ってただろ」

    「くれぐれも他校の皆さんの前ではそういうこと言うなよ」

    「じゃあ……なんで……?」

    尭深「……心配した……」

    誠子「そうそう。様子見に来ただけ」

    「後輩が泣いてるんだ。駆けつけない先輩がどこにいる」

    「……よけーなお世話……」

    誠子「弘世先輩、こいつやっぱシメていいっスか?」

    「ああ、構わん」

    「えええー!? 暴力反対っ!! 麻雀で私に敵わないからって!!」

    誠子「なんか言ったかー!? お前の弱点は知ってるんだぞー? 脇腹だろー……? ここが弱いんだろー!!?」モミモミ

    「ちょっ……!! もうううう……いやあああああ……!!」ジタバタ

     じゃれ合う淡、誠子。傍観する菫、尭深。チームメイトに囲まれて、笑顔を取り戻しつつある、淡。

     そんな淡に声を掛ける、宮永照。

    532 = 502 :

    面白くて長いスレは寝るタイミング見失うから困る

    533 = 497 :

    「淡……」

    「ん……なに?」

     振り返った淡の頭に、優しく手を乗せる、照。

    「あのね……淡」

    「うん……」

    「淡は、私じゃない。私の真似は……しなくていいから……」

     淡、俯いて、唇を噛む。 

    「で、でも……! テルは私の目標だから……! 私もテルみたいに強くなりたい……! テルと同じ場所で麻雀をしてみたい……!!」

     淡、恐る恐る、上目遣いに照の顔を伺う。

    「それも……ダメ……?」

     照、なるべく柔らかい表情で、首を振る。 

    「もちろんダメじゃない。でも、淡には、淡らしく、淡のままで強くなってほしい。私のことを目指しても私には届かないし、私を超えることだって……できないよ?」

     淡の目が、きゅうっと小さくなる。

    「照を……超える……?」

    534 = 497 :

    「うん……目標にしてくれるのは嬉しい。けど……私みたいに強くなりたいって……それじゃ私には勝てないんじゃないかな。私に勝てない人に白糸台は任せられないなぁ……なんて……ハハハ……」

     照、らしくないことを言っているせいか、若干うまく笑えていない。

    「とにかく……淡は私にないものいっぱい持ってるから。淡は淡の麻雀を打って……それで来年……全国で……団体戦でも個人戦でも一位になってみせて。それだったら……私の持ってる個人戦の優勝カップ……安心して……淡に渡せる……」

    「…………うんっ!! 頑張るっ!!!」

    「よかった。じゃあ……指切り」

     小指と小指を絡める、淡と照。それを微笑ましく見守る、菫、尭深、誠子。

    「ところでテルー、その紙袋はなに?」

    「ああ……これ。小走さんの持ってきた大仏サブレと、加治木さんのリンゴクッキーと、末原さんのたこ焼きせんべい。美味しかったから……頑張った淡にあげようと思って」

    「わあああ!!? いいの!? やったー!!!」

     全国屈指の魔物・大星淡。

     しかしてその実体は、チームで唯一の、一年生レギュラー。

     対局が終われば、その姿はどこの高校にでもいる、平凡な麻雀部員と変わりない。

     良き先輩たちに愛されて、甘やかされて、あやされて。

     すくすくと、ひたむきに天頂を目指すのだった。

    535 = 518 :

    あわあわはすくすく成長

    536 = 497 :

    @会場某所

    かじゅ「お疲れ」

    まこ「ほうじゃな……最後までえろう疲れたわ」

    かじゅ「まあ……相手が相手だったからな」

    まこ「すまんの、大分削られてしもうた」

    かじゅ「すぐに取り返す――と言いたいところだが、あいにくこちらも余裕はない」

    まこ「じゃが、あんたなら消える後輩が見えるんじゃろ? その分だけマシじゃろうて」

    かじゅ「いや……どうだかな」

    まこ「ん?」

    かじゅ「いつもならぼんやりと見えている……というより見せてくるのだが……今日はそうではないようだ。同じ会場にいるのにまだ挨拶も交わしていない。特別観戦室にも来なかったしな。
     チームが別々である以上、馴れ合うつもりはない……ということなのだろうか。なんにせよ……いつものようにはいかないだろう」

    まこ「弱気じゃのう。ま、あんたのおかげで混成チームはここまで来れたけえ、どういう結果だろうと誰も文句は言わん。好きなように打ってくれりゃええ」

    かじゅ「そんな風に言ってもらえると気が楽だよ。そうだな。せっかくの機会だ。全国レベルの麻雀を肌で感じてくるとしよう」

    まこ「おう、その意気じゃあ!」

    かじゅ「うむ……行ってくる!」

    537 :

    あわあわかわいい

    538 = 497 :

    @会場某所

    「お疲れ様。随分苦戦したみたいね」

    初美「字牌使いにあと一歩届かなかったですねー。後は任せるですよー」

    「そうねぇ……さすがに次鋒戦で守ってばかりじゃ、みんなに怒られちゃうかしら」

    初美「頼んだですよー。二年選抜はまだ姫様を温存してるんですからねー。こないだ天江衣と龍門渕透華がうちで暴れたせいで……今日の姫様は最高にヤバい状態ですー。取れるときに取っておかないとですよー」

    「ええ。姫様ったら、この次鋒戦が始まったときに一度寝に入ったみたいだから……きっと対局のときには二度寝状態になるでしょうしね」

    初美「よろしくですよー」

    「ふふ。苦手分野、いかせてもらうわ」

    初美(めちゃめちゃ楽しそうですよー……本当に苦手なんですかねー?)

    539 = 497 :

    @会場某所

    絹恵「お疲れ~」

    「ごっつい疲れたでー。絹ちゃんもガンバってなー」

    絹恵「ハハ……まあできるだけやってみるわ」

    「なんや、絹ちゃんは洋ちゃんと違うて謙虚やなぁ。うちらの仲やん。隠さんで教えてな。なんや、秘策があるんちゃう?」

    絹恵「ええっ!? なんでわかったん!?」

    「長い付き合いやからな。で、何を狙っとん?」

    絹恵「そんなん見てのお楽しみや。別に秘策とか、必殺技とか、そんなんやないし、期待せんといて。うちは浩ちゃんみたいに上手くできる自信ないしな」

    「なんやーやる前から言い訳並べてたら勝てるもんも勝てへんで。洋ちゃんも見てるやろから、気張ってなー!」

    絹恵「おねーちゃん…………せやなっ!」

    540 = 497 :

    @会場某所

     チームメンバー同士、激励を交わして対局に臨む面々。

     そんな中、一年選抜・東横桃子は、一人、集中を高めていた。

    モモ(先輩……先輩は……私がほしいって言ってくれたっすよね。あれは……どういう意味だったっすか……? 団体戦のメンバーがほしかったっすか……? 強い仲間がほしかったっすか……? 誰でも……よかったっすか……?)

     インターハイ決勝を終え、引退するかに思えた、加治木ゆみ。

     しかし、その決勝での打ち回しや、後の四校合同合宿において、かじゅはその力を認められ、少しずつモモを――鶴賀の枠を飛び出して麻雀をするようになった。

     今回の対抗戦も、モモや香織の敵として、混成チームを率いている。

     その中には、宮永照を筆頭に、全国のトップランカーがちらほらと。

     憧れの先輩がどんどん遠くにいってしまいそうで、モモは、不安だった。

    542 = 497 :

    モモ(私は先輩の特別なんだって……何があってもそれは変わらないんだって……ずっと思ってたっす。でも……それは私の勘違いだったんすね。先輩はもう……インターハイ決勝の頃の……鶴賀を引っ張っていた先輩とは違う。
     あのときは……先輩にとって鶴賀が全てだったっすけど……今の先輩の周りにはたくさんの人がいる。私たちだけが知っていた先輩のすごさが……みんなに認められるようになった。それは嬉しいことっすけど……それ以上に……寂しいっす……)

    モモ(私はこれからも……先輩の傍にいたいっす。先輩と一緒に麻雀を打っていたいっす。先輩が……全国レベルの人たちや……プロの人たちと麻雀を打つようになっても……先輩の特別だけは誰にも譲りたくないっす。
     私はいつまでも……共に戦う仲間として……先輩に『ほしい』って言われていたいっす。でも……きっと今のままの私じゃ……宮永照みたいな強い人たちに囲まれた先輩に……前みたいに見つけてもらえるかどうか……わからないっすよね……)

    モモ(だから……私は今日先輩に勝つっすよ……! 先輩だけじゃない……全国の強い人が相手でもトップを取るっす……!
     同じ学校の後輩だからじゃなくて……他にメンバーがいないからじゃなくて……私だから『ほしい』って言ってもらえるような……そんな強い私に……なってみせるっす……!!)

    モモ(先輩……見ていてください……! 世界中の誰にも見つけてもらえなくていい……先輩にだけはずっと見ていてもらえるような……そんな私に……私はなってみせるっす……! そして……堂々と……先輩の前に立ってみせるっす……!!)

    モモ(そのときは……また……初めて会ったときみたいに……私を求めてくれるっすよね……先輩……?)

     ステルスモモ、かじゅへの熱い思いを胸に、人知れず発進ッ!!

    543 = 497 :

    @実況室

    すばら「おっと、弘世さん、お帰りなさいですっ!!」

    「お待たせしました」

    「ったく、大星が泣き出した途端に走って出ていくとは、なんだかんだ言って後輩想いのいい先輩じゃねえか」

    「三年として、一年の面倒を見ないわけにはいかないってだけですよ。まあそれに、あんなんでもうちの大事な次期エース候補ですからね」

    初瀬「先輩後輩といえば、この次鋒戦後半、長野の鶴賀学園同士の対決が見られますね」

    すばら「三年の加治木選手と、一年の東横選手ですねっ!!」

    「長野の個人戦を見る限りだと、加治木のほうが一枚上手って感じがするけどな」

    「対決……或いは、協力も可能ですよね。この対抗戦、今後も同じ高校の選手同士が重なることが出てくるでしょうが、その最初の例として、この二人がどういう戦い方をするのか、興味深いところです」

    すばら「さあ!! 場決めも終わり、各選手席に着きましたっ!! 次鋒戦後半……スタートですっ!!」

    544 = 497 :

    @対局室

    東家:愛宕絹恵(二年選抜・姫松)

    絹恵「(鶴賀の二人はあんまりデータがあらへんかったけど……さすがに宮永咲や天江衣レベルってことはないやろ。とりあえず……当面のうちの敵は永水のおっぱいお化けや)よろしくです」

    西家:加治木ゆみ(混成チーム・鶴賀学園)

    かじゅ「(姫松の愛宕絹恵、永水の石戸霞……どちらも清澄と戦ったところを見ていた。
     そのとき……私ならどう打つか……色々と戦略は立ててみたが、まさかこういう形で対局することになるとはな。あとは何より……モモのことが気になる……)よろしく」

    南家:東横桃子(一年選抜・鶴賀学園)

    モモ「(先輩……こうやって真っ向から敵として戦うのは……初めてかもしれないっすね。私……先輩に見てもらえるよう……最初から飛ばしていくっすよ……!!)よろしくっす」

    北家:石戸霞(三年選抜・永水女子)

    「(長野のお二人は……清澄や龍門渕の方々ほど異彩な感じはしないけれど……一筋縄ではいかなそうね。姫松さんのほうも……初美相手にしっかり打っていた人だし、要注意と。まあ……できることをやりましょう)よろしくお願いします」

     次鋒戦後半――開始ッ!!!

    545 = 522 :

    モモ重いなー
    可愛いけど

    546 = 497 :

    >>1です。三時には眠れたらいいなと思っています。まだ半分も終わってませんが、それまでどうぞお付き合いください。

    547 = 497 :

    東一局・親:絹恵

    絹恵(浩ちゃんの言う通りや……やる前から弱気やったら……勝てるもんも勝てへん)タンッ

    絹恵(今日のうちのターゲットは決まっとる……永水の石戸霞……末原先輩がてこずった……一色独占のおっぱいお化け……)タンッ

    絹恵(おねーちゃんに認めてもらうには……麻雀で強くならへんとあかん。麻雀で勝たなあかんねん。言うても……さすがにおねーちゃんと戦うことになったらどうしようかと思うてたけど……この石戸霞ならちょうどええわ。
     全国でもトップクラスの化け物……あの末原先輩が……おねーちゃんに認められてる末原先輩が……苦労してやっつけた魔物を……うちが倒す……!)タンッ

    絹恵(あのインターハイのあと……石戸霞や姉帯豊音の研究は末原先輩と一緒にやった……その成果を……今日は見せたるで……)タンッ

    絹恵(テンパイ……石戸霞……まだ動いてくる気配はない感じやな……なら……この親で稼がせてもらうで……!!)

    絹恵「リーチやっ!」

     愛宕絹恵、打倒・石戸霞に向けて強気のリーチッ!

     姉に認められたい――その思いを、一打に込める!!

     しかし、本人の思惑とは裏腹に、控え室で見守る愛宕洋榎や末原恭子からは、絹恵のリーチはあまりに不用意に映った。

     なぜなら、既に二巡前に下家がリーチをかけていて、絹恵はまるでそれが見えていないかのように、明らかな危険牌でリーチを放ったのだから……!!

    548 = 502 :

    gnskすべきか猿退治すべきか悩ましい

    549 = 512 :

    もう消えてんねんか、早いなー

    550 = 497 :

    モモ「いいんすか……それ、ドラっすよ?」ユラッ

     ゆらり……と影がその姿を現す――!!

    絹恵(え……!? なんや……これ……どういうことや……!?)

     気付けば、絹恵の目に、初めて下家の捨て牌が見える。否、露になったのは、捨て牌だけでなく……!!

    モモ「ロンっす……リーピンドラ一……3900っす」

     絹恵、動揺ッ!!

    絹恵「ちょ……! 嘘やろ……あんた、リーチ宣言はっ!?」

    モモ「したっすよ」

    絹恵「そんな……」

     絹恵、混乱ッ!!

    絹恵(わ……わけがわからへん……! リーチしたとか絶対嘘やろ……いや……やけど嘘やったら審判が止めるか……?
     いやいや……落ち着け、うち。仮にこいつが言う通りにリーチ宣言してたとしてや……うちの耳がそれを聞き逃したんだとしてや……それにしたって捨て牌が曲がれば……リー棒が見えれば……なんぼなんでもリーチには気付くはずや。
     やのに……こいつの捨て牌は……今の今までずっと見えへんかった。それとも……見てへんかった……? いや……まさか……見られへんのか……? これからずっと……?)

     絹恵、今一度、対戦者の情報を記憶の底から引っ張り出す。

     長野・鶴賀学園・東横桃子。

     奇しくもモモもまた、絹恵と同じ副将で――。


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