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    元スレ咲「え? どの学年が一番強いかって?」

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    152 = 1 :

    優希「ははーん、わかったじょ。さては貴様……今頃になってやっとテンパったな?」

    シロ「対局中にそういうこと言うのはどうかと思う」

    優希「対局なら――もう終わりだじぇ!」

    シロ「は……?」

     優希、ツモ牌を卓に叩きつけ、手牌を倒すッ!!

    優希「ツモ!! ツモ、東、赤二っ! 2000・3900は2100・4000だじょ!!」

     シロ、晒された優希の手牌を見て、前局とは別種の、感嘆に似た溜息を漏らす。

    シロ(ああ……同じ待ち、か。確かにこりゃ……一歩遅かったなぁ)

     優希手牌:五六六六七[⑤]⑥[5]67東東東・ツモ④・ドラ一

    優希「ほれ見たことかだじぇ。東場の主役たる私が、お前みたいな手抜き眉毛にやられるわけがないんだじょ」

    シロ「私の眉毛は手抜きじゃない」

    優希「眉毛は手抜きじゃなくても麻雀は手抜きだったじぇ。そんなやつに負けるほど、私は安くないんだじょっ!!」

    シロ「ま、それはごもっとも」

     シロ、手牌を伏せて、ふうっと気持ちを切り替えるように息を吐く。

    シロ「けど、清澄の。ここからはこっちも本気だ。そっちの苦手な南場で稼がせてもらうよ。せいぜい、インターハイのときみたいな不用意な振り込みには気をつけるといいさ」

    153 :

    3年生チームを応援する。しえん

    154 :

    貴重な咲SSの闘牌シーン

    155 = 1 :

    優希「ふふふ……だからお前は二流なのだ、手抜き眉毛!」

    シロ「はあ……?」

    優希「さっき言ったはずだじょ。お前と私の対局はこれで終わりだじぇ。なぜなら……南場の主役は――私じゃないからだじょ!!」

     優希の掛け声とともに、開く対局室の扉!

     瞬間、吹き抜ける、一陣の風ッ!!

    シロ(なんだ……? 暖かい……風……?)

     シロ、風上――優希の後方に目を向ける。

     そこに立っていたのは――、

    南浦「さあ……南場を始めましょう」

    タ:120900 透:97200 白:89600 池:92300

    156 = 1 :

    @実況室

    すばら「これはまさかのおおお!!? ここで南浦選手が片岡選手との交代を要求っ!!! これはルール的には問題ないのでしょうか!!?」

    「『先鋒戦から大将戦までの各対局を、二名で半分ずつ行う』――我々は半分の切れ目を前後半で考えていましたが……例えば二度の東場と二度の南場、これもある意味半分です。
     東南戦中に交代してはいけないというルールは明言されていないので、アリといわざるを得ないでしょう」

    「このルールを作ったのってあの清澄の部長だよな……この状況……あいつの狙い通りなんじゃないか?」

    初瀬「わ、私、ちょっと竹井選手を呼んできます!」

    「もう来てるわよ」

    初瀬「うわっ!!? こ、こんにちは!!」

    「こんにちは」

    157 = 1 :

    すばら「竹井選手っ!! ずばりこれは計画通りですかっ!?」

    「まさか。こんな奇策は想定の範囲外よ。びっくりして飛んできたの」

    (嘘つけ……このタイミング、明らかにこいつ南浦が出てくる前から控え室を出てたろ)

    すばら「そ、それで、どうするんですか!? この選手交代は認められるんでしょうか!?」

    「ルール上は問題ないわけだから、この先鋒戦だけ認めてあげたら?
     ただ、あんまりほいほい対局者が変わるのは気が散っちゃうだろうから、今後は普通に前後半で分けることにしましょう。いかがかしら?」

    すばら「そ……それで他の方が納得できればいいですが……おおっと!! やっぱりというかなんというか、対局室が揉めておりますっ!!」

    「ま、そうなるでしょうね」

    158 = 34 :

    ずるいなおい

    159 = 134 :

    麻雀みたいな多人数対戦ゲームでいちいち禁止事項書いてたら切りないわな

    160 = 1 :

    @対局室

    透華「あなたたちっ! 卑怯ですわよ!! そんな……ルールの穴をつくようなこと!!」

    池田「東南戦は東南戦で一つだろ!? 切り離してやっていいわけがないし!!」

    優希「別にそんなことないと思うじょー」

    南浦「途中交代を禁止する、というルールはないわけですし」

    シロ(この南浦って人は知らないけど……まあ清澄は南場が苦手なんだし……こういう交代も作戦的にアリな気がするけど……。
     なんか龍門さんと風越さんの反応を見る限りそれだけじゃない気がするなぁ……さっきの『風』のこともあるし……)

     シロ、騒がしく子供っぽい優希と、落ち着いて大人らしい南浦の、どこか正反対な雰囲気を見て取って、合点がいく。

    シロ(ああ……そういうことか。この南浦さんって人は……本当に清澄と逆なのか……)

     東風戦限定で長野最強の打ち手――片岡優希。

     県大会の個人戦の結果から、それは誰もが認めるところである。

     しかし、そんな優希が、東南戦になった途端に土をつけられた相手。

     それが――南浦数絵。

     彼女の牌譜を見た者なら、一目でその特異性に気付くだろう。

    161 :

    小走先輩は事前知識ない状態で玄と戦ってプラスだから普通に強いはず
    小走無双が楽しみだわしえん

    162 = 1 :

    シロ(彼女は南場に強いのか。話では、長野の個人戦で五位だったってことだけど……もし南風戦なんてものがあれば……たぶん一位になるような選手なんだろうな。
     なるほど。それで龍門さんと風越さんはあんなに突っかかるのか……)

     収集のつきそうにない言い合いを続ける長野勢。

     と、傍観していたシロが、不意に口を開く。

    シロ「私は長野県民じゃないからさ……正直、長野の面子なんて清澄の五人と長野一位の福路さんしかまともに知らない……。
     その、南浦さんって人も、なんかすごいのか知らないけど……全国から見ればまったく無名なわけだ。そんな選手が南場だけ出てきたところで……何かが変わるとは思えないんだけどな……」

     わかりやすいシロの挑発に、優希と南浦は微笑み、透華と池田は絶句するッ!

    シロ「だからさぁ……いくらでも交代すればいいんじゃない? なーんか見ててダルいんだよね。上級生が揃いも揃ってバタバタと……別に騒ぐようなことじゃないでしょ。一年の小細工くらい認めてあげようよ。
     東南戦を二人で戦うなんて……二人で一人前の……一人じゃ半人前の一年のやることだろう? それともあれかな……龍門さんと風越さんは、南場の南浦さんがそんなに恐いわけ?」

     シロの言葉に、いとも簡単に臨界突破する透華と池田。

    透華「上等ですわ!!! やってやろうじゃありませんかっ!!」

    池田「暫定ラスのやつが何を偉そうなこと言ってんだし!! お前に言われなくたってそんなことわかってたんだしっ!!!」

    163 = 1 :

     荒々しく席に戻る透華と池田。

     シロは悠然と背もたれに身体を預けて、正面に立つ優希にだらだらと手を振る。

    シロ「清澄、これで私らは一勝一敗ってことにしとく。続きはまたどっかでやろう」

    優希「ふん、いつでも相手になってやるじぇ!」

     火花を散らすようにぶつかる二人の視線ッ!

     その間に割って入る――南浦数絵ッ!!

    南浦「宮守の三年生……もう次の戦いのことを考えているんですか?」

    シロ「んー。そんなことはないよ? 実は、今けっこう楽しんでる」

    南浦「そうですか……それはよかったです。手抜きの相手に勝っても、私の目的は果たせませんから」

    シロ「へえ……大した自信だなぁ」

    南浦「あなたの言う通り、私はまだまだ全国から見れば無名です。だからこそ、今日は名を上げるためにここに来ました」

     南浦、睨むようにシロを見つめる。

    南浦「宮守の三年生……あなたを倒せば、私の名前はどれだけ上がりますか?」

     先鋒戦前半、南入――ッ!!!

    164 = 154 :

    シロ男前すぎだろ

    165 = 1 :

    南一局・親:南浦

     五巡目

    南浦「……リーチ」チャ

    池田(こいつ……いくら南場に強いからって速過ぎだし……!)タンッ

    シロ(速いだけで済めばいいけど……たぶんそうじゃないんだろうなぁ……。なら……試しにちょっと揺さぶってみるか……)

    シロ「……リーチ」スチャ

    透華(宮守もリーチですの!? 親リー含めた二家同時リーチを相手に突っ張るのはいくらわたくしでも厳しいですわ。なのに……なんですの!? この安牌のなさっ!?)タンッ

    南浦「それ、ロンです。リーチ一発……裏二。12000」パララ

    透華「」プスプス

    シロ(あちゃあ……リー棒が無駄になったか。それにしても……本来ならただ速いだけのリーのみが一発と裏で親満かぁ。
     どんな打ち方をしても南の風が味方してくれる……だから強気の打牌ができるって感じかな。呆れるほどの好循環だ……)

    池田(南浦数絵……個人戦ではうちのみはるんがお世話になった……その借りはきっちり返すし!)

    南:133900 透:85200 白:88600 池:92300

    166 = 1 :

    南一局一本場・親:南浦

     八巡目

    南浦(生牌の中……鳴きたければ鳴けばいい)タンッ

    池田「それ、ポンだし!」タンッ

    南浦(これくらいは想定内。こちらも形は悪くない。十分に勝負できる)

    シロ(風越さん……役牌か。点差とこの人の打ち筋を考えれば、役牌のみなんてことはまずないはず。なら……ここは少し働いてもらおうかな)タンッ

    透華(落ち着くのですわ、龍門渕透華! これくらいの劣勢……はねのけて見せますの……!)タンッ

    シロ「ポン」タンッ

    透華(宮守の鳴き……食いタン狙いですの? さすがに食いタンのみとは思えませんが……ドラは九索だから使えない……赤が固まっているとか? なんにせよ、ツモが二連続で回ってくるのは助かりますわ!)ツモッ

    透華(来ましたわ……! 混一ドラ一テンパイ! ただ……捨て牌からして染め手とバレバレ……ここはヤミで通したほうが無難かもしれませんわね……)タンッ

    167 = 1 :

    南浦(龍門渕の手が進んだ……? 宮守の鳴き……あれで多少風が乱れましたか。ここで筒子は切れない……)タンッ

    池田「それロンだし。中ドラ三、8000は8300」パラッ

    南浦(む、安めかと思ったらドラを固めていましたか……)

    池田「注意散漫だな、南浦数絵。名を上げたいなんてほざくなら、まずはこのあたしを倒してからにしろし!」

    シロ(なんかそれっぽいこと言ってカッコつけてるけど……それってつまり自分は三下ですって言ってるようなもんじゃ……?
     あと、注意散漫って、三萬で和了ったっていう駄洒落? まぁ……ツモ順をズラした甲斐はあったかな。予想通りドラを抱えていた……そんなんツモられるのは勘弁だしね)パタッ

    透華(風越・池田……地味に強いですわね。ずっと冗談で大将をやってるんだと思ってましたわ!)

    南:125600 透:85200 白:88600 池:100600

    168 = 1 :

    南二局・親:池田

     十二巡目

    池田「リーチだしっ!」スチャ

    南浦(風越……またですか。東場南場関係なく攻めてきますね)

    透華(これは……今度こそオリですわね)

    シロ(走ってるなぁ……この感じ……放っておくと手がつけられなくなるか……)

     次巡

    シロ「それ、ロン」パラッ

    池田「にゃーー!?」

    シロ「タンピンドラ一……3900」

    シロ(勢いに乗れば強いタイプ……。けど、周囲を見ずに走り過ぎだな。そのへんが付け入る隙ってことで)

    南:125600 透:85200 白:93500 池:95700

    169 = 113 :

    透華ひでぇwwww

    170 = 154 :

    ほんと池田の評価低いよな

    171 = 1 :

    南三局・親:シロ

     五巡目

    シロ(オーラスも近い……今のままじゃ原点回帰も危ういかもなぁ。さすがにマイナスで豊音に回すのは忍びない。できれば連荘したいとこだけど……うーん……これ……何切ろう……)タンッ

     十巡目

    南浦「リーチ……」スチャ

    池田(にゃ……イーシャンテンなのに……! 仕方ない、一旦回るし)タンッ

    シロ(みんな本当に打ち合いが好きだなぁ……リーチした数で競ってるんじゃないんだから……先制リーチに拘らず……慌てず騒がず手を作るのも大事だって言ってやりたい……)タンッ

    透華(く~……ままなりませんわねぇ……去年の全国を思い出しますわ……!)タンッ

     十七巡目

    シロ「っと……これはまた……随分と深いところに埋まってたな」パラララッ

    南・池・透(なっ……宮守……!?)

    シロ「ツモ……三色三暗刻……4000オール」

    南:120600 透:81200 白:106500 池:91700

    172 = 1 :

    @実況室

    すばら「決まったあああ!! 三年選抜・小瀬川選手!! これまでの分を取り戻すような二連荘! ラス親で二位浮上ですっ!! すばらっ!!」

    初瀬「捨て牌がまたわけのわからないことになってます……。序盤、私なら平和三色を狙うかなと思って見てたら……五巡目でいきなり方向を変えました。
     まさか、あの平和手から……三暗刻にシフトするとは」

    「分かれ道はいくつもありました。平和三色に行く道、鳴いて食いタンを狙う道、対々を目指す道……捨て牌を見る限り、そのどれもがよくてイーシャンテン止まりです。
     最悪、溢れた牌で南浦選手に振っていた可能性もありました。小瀬川選手は、数ある道の中から、最も安全で、最も高い手をものにした……拍手を送りたいですね」

    「あの和了りは真似できる気がしねえな。マヨヒガじゃないが……小瀬川だって狙ってやってるとは思えねえ。迷っているうちに宝の山にたどり着いた……そんな打ち方だった」

    すばら「さあ、ここから小瀬川選手の連荘となるのか!! それとも南浦選手がリードを守りきるのか!! 他家の巻き返しはあるのか!! 注目ですっ!!」

    (透華がラスか。この状況……さすがに小瀬川や南浦を出し抜くのはきついか……? いや……それでも透華なら……)

    173 = 1 :

    @特別観戦室

    優希「こらー数絵! あんな手抜き眉毛に負けるんじゃないじょっ!! さっさと突き放すじぇ!!」

    豊音「いやー片岡さん、うちのシロはそんな簡単じゃないよー?」

    小走「同感だな。ニワカにはわからんだろうが、あの打牌……ありゃ相当打ってる。あいつを攻略するのは私でも骨が折れそうだ。池田も頑張ってるが、ま、厳しいだろう」

    「お前たちの目は節穴か? これまでの戦いなど、あの場に龍を呼び込むための誘い水でしかなかったというのに……」ゴゴゴゴゴゴ

    小走(こいつ……このプレッシャー……本当に人間か……?)ゾッ

    「お前たちは感じないか? 大河の底に巣食う龍が……水面から顔を出そうとしているのを……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    174 = 1 :

    @対局室

    南三局一本場・親:シロ

    シロ(なんか……今局は場が落ち着いてるな。それに……なんだろう……この背筋が凍りつきそうな悪寒……神代が何かを降ろしたときにも似てるような……)タンッ

    透華(…………)タンッ

    南浦(おかしい……風が凪いでいる? それに……寒い? 身体の震えが止まらない……清澄の嶺上使いと対峙したときも……これほどではなかったはずだが……)タンッ

    池田(みんな急に大人しくなったな……お腹でも壊したか?)タンッ

    シロ(来た……テンパイ。さっきと矛盾するようだけど、ここは素直にリーチかな。これで……トップをまくる……)

     シロ、捨て牌を掴み、リーチと発声しようと、口を開く。 その――刹那ッ!

    シロ(っ――!?)

     鉄砲水にでも飲まれたような衝撃が、シロの身体を突き抜けるッ!

     シロ、思わず、振り返るッ!!

     そのプレッシャーを放つ『主』――龍門渕透華のほうを……ッ!!

    透華()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    シロ(今のは……なんだ……? なんというか……龍に喰われるみたいな……)

     シロ、対面に目を向ける。南浦も異常に気付いた様子。目を見張って透華を見ている。

    175 = 1 :

    シロ(他のやつも気付いてるのか……? 豊音や清澄の宮永咲、永水の石戸も大概化け物だと思うけど……こいつは……或いはあいつら以上かもしれない)

    南浦(冷たい……深い川底に引き込まれたような……芯から凍る冷たさ。静かな水面ほど……深いところは激流になっているというが……ちょうどそんな感じだ。
     この落ち着いた河の底には……龍がひそんでいたというのか……?)

    池田「? おい、なにしてんだし、切るなら早く切れよ」

     池田、鈍感ッ!!

    シロ(こいつ……! このレベルのプレッシャーになんも感じてないのか? 実はけっこう大物なんじゃ……。いや、まぁ冗談はさておき……)

     シロ、透華を横目で観察するも、正体見えず。

    シロ(……ここは……少し様子を見たほうがよさそうだな……)

     シロ、川の温度を指先で確認するように、ゆっくりと河に牌を捨てる。

     その――直後ッ!!!

    透華「ツモ……断ヤオ赤一ツモ……1000・2000は……1100・2100」

    シロ(やっぱり……あのまま普通にリーチを掛けていたら振り込んでいた。にしても不気味なくらい地味な和了りだな。
     とりあえず親っ被りの被害は小さくて助かったけど……それとも……ここからチャンピオンよろしく地獄が始まるとか……?)

    南浦(龍門渕透華……私の支配をまるで受け付けていない。ラス親……連荘はさせない。先に和了って断ち切る……!)

    池田(ん? 二人ともなんで龍門渕のこと見てんだし)

    南:119500 透:85500 白:104400 池:90600

    176 = 1 :

    @実況室

    すばら「小瀬川選手! リーチするかに思えましたが……なぜか面子を崩して放銃を回避しました!!」

    初瀬「最初は普通にリーチって言おうとしてましたよね。それから、龍門渕選手のほうを見て……なにか驚いたような表情をしていました。
     なんにせよ、あそこでテンパイを崩すのは意味不明です」

    「さすがに小瀬川はいいカンしてやがる。しかし……まさかここで目覚めちまうとはな。確かに、今日は強えやつがわんさか集まってるから……ありえるかもとは思っちゃいたが……」

    「目覚めた……というのは龍門渕選手の変化のことですか? なにか心当たりが?」

    「あぁ……オレたちは『アレ』を、便宜的に『冷たい透華』と呼んでいる」

    初瀬「冷たい……?」

    「そうだ。雪解け水が流れる春の川のような……日の当たらない地下を伝わる水無し川のような……触れるものを凍てつかせる冷たさだ」

    すばら「よ、よくわかりませんが!!! 何やら不穏なことになっているようです!! が、場はあくまで穏やか進行していますっ!!!」

    178 = 1 :

    @対局室

    南四局・親:透華

    南浦(なんだこれは……東場でもないのに配牌がバラバラ……? ツモも最悪……まるでテンパイに持っていけない……)タンッ

    南浦(優希に聞いた話では……確か天江衣がこういった重たい場を作るという話だったが……龍門渕透華……これもまた人外の何かなのか……?)タンッ

    南浦(テンパイに持っていけない上に……鳴くチャンスもない……ありえない……南場の私と……先ほどまで好調だった岩手の小瀬川白望……それに場に関係なく勢いのある風越の池田華菜……私たち三人を同時に押さえ込むなど……不可能なはず……)タンッ

    南浦(よ……よし……!! なんとかテンパイまで持っていくことができた……!! 相変わらず鳴きも何もなく静かな場だが……私なら……この凪いだ場でも風を起こすことができる……!!)

    南浦「リー……」

    透華「ロン……」パラララ

    南浦(なあっ……!? 直前で待ちを切り替えている……!? 不自然過ぎる……まさか……私への直撃を狙って……!!?)

    透華「發ドラ一……3900」

    南浦「……はい」

    シロ(不自然な待ちの切り替え……さっきの私のときも……普通にリーチをかけていれば振り込んでいた……リーチ宣言牌で和了るとか……そういう感じの……豊音の背向と似たような能力……?
     けど……それだけではこの重たい場を説明できない……鳴くこともできないし……一体この人はなんなんだか……)

    南浦(わけがわからない……しかし……このまま終わるわけにはいかない……!!)

    池田(んー……? この手の重さ……なんかデジャヴだし……)

    南:115600 透:89400 白:104400 池:90600

    179 = 154 :

    純君と菫さんがかっこよくて何よりです

    182 = 116 :

    池田は覚醒するのか?

    183 = 1 :

    南四局二本場・親:透華

    シロ(そっか……少し……見方が違ったみたいだな……この人は豊音じゃない……条件付きで支配力を発揮するタイプじゃなくて……常時発動型の能力……リーチ宣言牌で和了るとか……そういう発想ではこの場の謎を紐解くことはできない……)タンッ

    シロ(さっきの……私の捨て牌を見逃して……直後にツモ和了……あれで……少しだけど見えた……この人……リーチ宣言牌で和了る能力じゃない……リーチできない場を作る能力なんだ……。
     そう考えると……このやけに静かな河も頷ける……となると……たぶん……リーチだけじゃない……もし……この穏かな河を生み出すことがこの人の力なら……恐らく……)タンッ

    透華()タンッ

    南浦()タンッ

    池田()タンッ

    シロ「チ……」

    透華「ロン……三暗刻……4800は……5400」パラララ

    池田「にゃっ!?」

    シロ(やっぱり……そういうことか……この人が何を支配しているのか……これでおおよそ把握できた……けど……もし私の考えが正解だとして……一体どうやって止めればいいのやら……)

    南浦(これといった特徴のない安手で四連荘……!? わからない……宮永咲のときはカンを封じればいいという対応ができたが……私には……これが能力なのかそうでないのかも区別ができない……どうする……どうすれば……!)

    池田(龍門渕……連荘で巻き返してきたな。それに比べて華菜ちゃんは……一人沈み!? そんなの絶対嫌だし!!)

    南:113500 透:101100 白:102300 池:83100

    184 = 1 :

    @実況室

    すばら「またまた和了りましたあああ!! 龍門渕選手!! オーラスで猛ラッシュです!!」

    「このまま他家が何もできなけりゃ、この対抗戦もこれで終了かもな」

    初瀬「それは……この先も龍門渕選手が和了り続けるってことですか? そんな無茶苦茶な」

    「いや、龍門渕選手はあの天江選手の親族だと聞いています。初瀬さんも、全国で三校を同時にトバすなんてことをやらかした天江選手の無茶苦茶さは知っているでしょう?
     それと似たようなことを、龍門渕選手もできるとしたら?」

    初瀬「……いったい龍門渕選手は何をしているんですか?」

    すばら「井上さん、できれば解説をっ!!」

    「まあ……詳しいことはオレもわからんが……透華のあれは、衣の『場の支配』ってやつと似てるとこがあるな」

    初瀬(天江選手の『場の支配』ってのが私は初耳なんですが……ま、まずは話を聞きますか……)

    「『治水』とでも言えばいいのか。透華は……川を支配してるんだよ」

    「川……『河』ですか」

    「そうだ。なんつーか、きちんと整備された川ってのは、決まってるルートを淡々と海へ向かうだけだろう? 透華はその『流れ』を支配してるんだ。『河』の有り様を決定してるっつーのか。
     たとえその流れに逆らおうとしても、その流れを乱そうとしても、河の主――『龍』の支配がそれを許さない。透華以外の何人も……『河』に『手出し』ができなくなる」

    初瀬「『河』に手が出せないって……鳴けないってことですか?」

    「鳴けないで済めばまだいいんだがな。あの『龍』は……『河』から牌を掬うことすら許さない」

    185 = 1 :

    「ロン和了りができない……と?」

    「そういうことだ。『河』を支配する『龍』は頑固でな。鳴くことも、和了ることも許さない。リーチや暗槓すら、『河』を乱すこととして押さえつける。
     他家は、ただ静かに……河の流れが終着の海に行き着くのを見ていることしかできない」

    初瀬「鳴けないしリーチも無理でロンできないって……。で、龍門渕選手だけは河に出た牌で自由に和了れるんですよね。あまりに一方的な状況……どうやって攻略すればいいんですか?」

    「例えばだが、うちの衣みたく『河』ではなく『海底』から牌を掬えるやつは、あの支配の中でも和了れる。
     あとは……永水の石戸なんかがそうだと思うんだが……『山』を支配できるなら、牌を『河』に流れる前に掘り出せるわけだから、普通に対抗できるはずだぜ。
     と、ま、決して無敵ではないんだよ。透華自身だって無限に和了れるってわけじゃないから、案外プラス五万くらいで『龍』が引っ込むかもしれねえし」

    初瀬「五万って……。というか……今の話だと、なんのオカルトも使わないで和了るのはどうやっても無理ってことになりません?」

    「どうだろな。たとえオカルトに頼らなくても、相当の豪運と、龍の支配を逆手にとるような奇策でもあれば……なんとかなるのかもしれん。
     去年のインターハイでは、透華がロンする一瞬の隙を突いて、強引に頭ハネで他家をトバしてたやつがいたな」

    すばら「聞けば聞くほど大変な状況のようです!! 果たして龍門渕選手は止められるのでしょうか!? 止めるとしたら、それは一体誰なのでしょうか!?
     先鋒戦前半オーラス!! 引き続き目が離せません!!」

    186 = 1 :

    @対局室

    南四局三本場・親:透華

    シロ(まずいな……もし仮に……龍門さんが河を支配する能力を持っていたとすると……こちらはリーチができない……さらには鳴けない……恐らくはロン和了りすらできない。
     ということは……この重たい場で龍門さんを止めるには……龍門さんより早くツモる以外に方法がない……)タンッ

    シロ(けど……河を支配するということは……こちらの捨て牌を支配するということで……捨て牌を支配されてるということは……手牌を支配されているのと同じだ……そんな状況で龍門さんより早く和了れるとは思えない。
     敢えて逆らっても手が遅くなるだけ……無理に崩して誰かに差し込んだり鳴かせたりとかしようとすると……たぶんそれこそ龍門さんの思う壺……さっきの風越さんがそうだったように……その瞬間に出和了りされる。
     参ったな……これはダルいじゃ済まされない……)タンッ

     一方、南浦。

    南浦(く……南場だというのに……! せめて鳴くことができれば……再び風が私に吹くはずなのに……!!)タンッ

    南浦(上家が龍門渕透華だからだろうか……さっきから鳴くこともできない……かといって門前で進めても一向聴から抜け出せない……この場を意図的に作り出しているのか……化け物め……!)

     一方、池田。

    池田(この感じ……もう何度も体験した……あの最悪の地獄だ……さっき……どうにか場を乱そうとして……宮守の手が進みそうなところを出してみたけど……それを狙われた。
     どういう理屈で何が起こってるのかはよくわからないけれど……わかるのは……普通に打ったら……また負ける……!!!)タンッ

     池田、辛酸ッ!

    池田(負けるのか……また負けるのか……あたしは……! 去年も今年も天江に負けて……個人戦では結果を残せなくて……何が風越のナンバーツーだ……! あたしは……弱い……!!)タンッ

    池田(キャプテン……あたし……どうしたらいいんですか……キャプテン……!!)

    187 = 1 :

     ――回想・風越女子麻雀部・インターハイ県予選後――

    久保「ああ……? 今なんつった、池田ァ!」

    池田「ひっ……いや……その……次期キャプテンの話は……光栄なことなんですけど……あたしに務まるか自信がなくて……」

    久保「自信がないだァ……? 何を甘えたこと言ってんだ、池田ァ!!」パァン

    池田「っ……!! すいません……!!」

    久保「テメェがなんと言おうと……次期キャプテンはテメェ以外にありえねえんだよ! 自信がねェ? バカかお前。福路は自信を持ってキャプテンになったとでも思ってんのか?
     テメェはこの一年あいつから何を学んできた!?」

    池田「キャプテンから……学んだこと……」

    久保「いいか? 福路の全国個人戦が終わったら問答無用でテメェが新キャプテンだからな。それまでに……その根性を叩き直してこい。拒否することは許されねえ」

    池田「は……はい……」

     *

    美穂子「あら……華菜……どうしたの?」

    池田「あ……キャプテン……あの……その……」

    美穂子「?」

    池田「えっと……なんでもないです……!」ダッ

     ――――――

    189 = 116 :

    池田ァ

    190 = 63 :

    ちゃんとみんなに見せ場があるっていいね

    191 = 1 :

    池田(さあ……海の底が近い……これで海底なんて和了られたらトラウマフラッシュバックだし……! けど……そうじゃなければ……!!)ツモッ

     池田、十七巡目、ラスツモは手牌にまったく絡まない字牌ッ!!

    池田(そうじゃなければ……違う未来がある……! もちろん……これで……あたしの負けは確定なんだけど……! 本当に……やってらんないし……!!)タンッ

     池田、前進ッ!!

     一方、シロ、南浦、苦戦ッ!!

    シロ(んー……この一枚だけある南…たぶん……南浦さんが鳴けるんだろうけどなぁ……間違いなく龍門さんの待ちだろうしなぁ……)タンッ

    透華(…………)タンッ

    南浦(ダメだ……また……手ができなかった……! これでは……ずるずると……静かな水面の下……冷たい激流に……溺れてしまう……!!)

     静かに流れゆく川の水は、やがて、海の底へと辿り着く。

     海底牌を手にする南浦、しかし、どうにもならず。安牌を龍が支配する河へ流す。

     龍、不動。

     和了りの出なかったことにひとまず安堵の溜息を漏らす、南浦とシロ。

    透華「テンパイ……」

    シロ「ノーテン(やっぱり……七対子南待ち……困ったな……)」

    南浦「……ノーテンです(く……こんなことが……!!)」

    192 :

    国士か
    流石やで池田ァ!

    193 = 1 :

     手牌を晒す三人。

     親のテンパイ流局で、連荘は確定。

     各人、南四局四本場の戦いへと、思考を切り替える。

    シロ(龍門さんに隙がなさ過ぎる。回り道すれば先にツモられる……無茶をすればロンされる……普通に進めても手の平の上……しかも……今みたいに出したらそこで終了みたいな不要牌を掴まされたら……完全に身動きが取れなくなる。
     ぎりぎり思いつく範囲で頭ハネならロンできそうだけど……今回のルールだと……頭ハネは採用してないからなぁ……どーすんだろこれ……ダル……)

    南浦(落ち着け……私。この場は龍門渕に支配されている……そう考えて打ったほうがいい。
     けれど……そういう相手は個人戦にはいなかった……団体戦に出れなかったことがこんな形で響いてくるとは……ここは……宮守が何かを掴んでいる風に見える……彼女の意図を読み取って協力するのが一番か……)

     しかし、そうではない者が――場に一人だけ残っていた……ッ!!

    池田「だから……お前らは一体どこ見て麻雀やってんだし。どうして再重要危険人物である華菜ちゃんを無視して場を進めてるんだしっ!!」

    透華(………………)

    南浦(風越……何をぐだぐだと言っている?)

    シロ(無視するとかしないとかじゃなくて……海底を誰も和了らなかったんならそれで対局は終わりでしょうに……)

     池田『それ』に気づく様子のない三人を見かねて、立ち上がる。

    194 = 1 :

    池田「とにかく……先鋒戦前半はこれで終わりだし!」

    シロ「いや、いつ先鋒戦の前半が終わったんだって……」

    池田「ちっ、ちっ、ちっ。宮守の三年、観察力が足りないし。河をよく見てみろよっ」

     池田に促され、河を眺めるシロと南浦。

     鳴きもリーチもなく、静かに流れた河。

     最初に気づいたのは、シロ。

     続いて、南浦が息を飲む。

    池田「本当は九種九牌で流そうと思ったんだけどな。さっきから誰も鳴きを入れないから、モロバレ国士よりはマシかと思ってやってみたら、まさかの大成功だし!!
     つーか、お前ら河くらいちゃんと見とけよ。終盤のほう、華菜ちゃんずっと鳴かれるんじゃないかってひやひやしてたのに」

    シロ(いや……たぶん気付いたとしても鳴けなかっただろうけど……まさかそれを逆手に取るとはね……!)

    南浦(そもそも鳴きがどうこうではなく……こんなの……やってみようと思ってできる役ではないはず……なんという強運……!!)

     池田の河から浮かび上がってきたのは、さながら燈篭流しの如く、龍の支配を逆手にとって紡がれた、十七の光――!!

    池田「流し満貫……!! 2000・4000の三本場は、2300・4300だしっ!!」

     流し満貫――その成立条件は、以下の二つ!!

     流局時の捨て牌を全てヤオ九牌で構成することッ!!

     そして――自身の捨て牌を一度も鳴かれないことッ!!!

    195 :

    池田ァ!!!!!

    196 = 116 :

    よくやったぞ池田ァ!

    197 = 154 :

    池田ァ!!!!!

    198 = 1 :

    池田「ま、なかなか楽しい麻雀だったし。また次打つときがあったら、今度は負けないから覚悟しろしっ!!」

     点棒を受け取って、笑顔で対局室を後にする、池田。

     シロと南浦は、溜息でその背中を見送る。

     透華はといえば――予期せぬ反撃に龍が鎮まり、池田の点数申告を受けて元の透華に戻っていた。

    透華(あれ……わたくしは何を……? って!? 先鋒戦前半が終わり!? なにがどうなってるんですの!!? なんか点棒が勝手に増えてますわ!?)

    シロ(いやいやいや……まさか本当に原点で豊音に回すことになるとは。本音を言うと……どんな打ち方をしようとプラスで終われると思ってたんだけど……それだけ手強い面子だったってことか。
     ホント……ダルい。ま、少しは楽しめたからいいけどさ)

    南浦(一応優希のリードを守った形ではあるけれど……私自身はマイナス。悔やんでも悔やみきれない。これではいい道化だ。次こそ……誰が相手だろうと勝ってみせる……!)

     全国選抜学年対抗戦・先鋒戦前半――終了ッ!!

    <結果>
    一位:優希・南浦+11200(111200)
     >優希(+20900)・南浦(-9700)
    二位:小瀬川白望+0(100000)
    三位:龍門渕透華-3200(96800)
    四位:池田華菜-8000(92000)

    199 = 1 :

    @会場某所

     流し満貫で先鋒戦前半に幕を引き、笑顔で対局室をあとにした、池田。

     しかし、対局室を出るやいなや、池田は控え室ではなく、トイレのほうに走った。

     その目には――涙。

    池田(負けた……! また負けたし……!!)

     脳裏に過ぎるのは、先の県大会。

     団体戦も個人戦も、池田の成績は、決して満足できるものではなかった。

     池田は、ただ美穂子の背中を遠くから眺めているだけだった。

     自他共に認める風越のナンバー2。

     しかし、ナンバー1との差は、あまりに大きい。

    池田(あたしが……! 新キャプテンのあたしがもっと強くならないと……キャプテンが安心して引退できないのに……!! どうしてあたしは……こんなに弱いんだ……!!)

     池田、トイレの鏡の前に立って、情けない自分の泣き顔を見る。

     手など抜いていない。決して恥ずかしい打ち方などではなかった。最大限の力で、真正面から敵を倒しにいった。

     例えば、美穂子なら、或いは久保でさえも、池田の成長と健闘を称えてくれるかもしれない。

     それでも――負けは負け。

    200 :

    なんぽさん出てて嬉支援


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