元スレ妹「兄さんって呼ばせて下さい」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
701 = 662 :
──車内
男「さて、月に一度の病院での検査だ」
妹「はぁ……」
男「気乗りしないか?」
妹「……そうですね」
男「いつも言っているが、やはり万全を期さないとな」
男「それは、お前も分かってるはずだろ?」
妹「はい……」
男「ん、ならいい」
妹「……お兄ちゃんは嫌になりませんか?」
男「嫌になる?」
妹「わたしは、この日が来る度に……」
妹「自分が未だ病気のままなんだって、再確認させられます」
男「…………」
702 = 662 :
妹「普段は何の支障もなく、それこそ、楽しい生活を送っていて」
妹「だけど、やっぱり、今のわたしは本来の自分じゃなくて」
妹「……何年ぐらいになるんですか?」
男「ん?」
妹「わたしが昔の記憶を失ってから……合わせてどれくらいに?」
男「……約六年だ」
妹「六年……もですか」
男「…………」
妹「そんな長い事、思い出せなかった」
妹「何度繰り返しても、また、同じことの繰り返し」
妹「同じ場所を行ったり来たり……ただそれを永遠と」
男「違う。少しずつだけど、前進してる」
妹「そう思いますか?」
男「ああ」
703 = 662 :
妹「わたしは今回も駄目な気がしちゃうんですよね」
妹「以前と確かに状況は違うみたいですけど」
妹「急激な変化があったわけでもないですし……それこそ」
男「考えすぎても駄目だぞ?」
妹「でも……」
男「ほら、俺があげた指輪」
妹「え?」
男「形にしたプレゼントを送ったのは初めてだ」
妹「…………」
男「そうやって、些細な変化が積み重ねって」
704 :
ほしんぬ
705 = 662 :
男「いつの日か、きっと前に進める日が来るはずだ」
妹「……そう願ってます」
男「ん……」
妹「…………」
妹「最後に一つだけ」
男「……何だ?」
妹「わたしが今感じてる感情は……」
妹「……昔のわたしも抱いていたんでしょうか……?」
男「…………」
男「……すまん」
男「……俺には分からない……」
708 = 687 :
しえん
709 :
>>674てコピペミスかな
>>671と同じだし>>675の内緒です発言がなんのことなのかわからない
710 = 662 :
──親友の部屋
男「…………」
男「……なぁ、親友」
男「お前に語りかけるのは、久しぶりだな」
男「とっくの昔にお前は死んじまってるっていうのに」
男「形見のカメラに向かって、こうやって語りかけている」
男「未練がましいというより……」
男「正直、端から見ると異常だな」
男「……でも、少しだけ」
男「自分でも分からなくなったんだ……」
男「俺の前回の選択は、明らかに間違いだったのかもしれない」
男「仕方ないと言えば、それで話は終わりなんだが……」
711 = 662 :
男「あいつに……無駄な心配をさせてしまっている自分が嫌になるんだ」
男「妹がどんなに苦しくても、辛くても、悲しくても」
男「俺は、あの子の代わりをしてやることが出来ない……」
男「想像は出来ても、実際、どんなことを考えているのかは分からない……」
男「昔の、無駄に悩む癖に、決断はできなかった自分はとうに捨てたよ」
男「これが正しいと、例え、誤りでも前に進もうって」
男「この5年間、そう常に言い聞かせてきた」
男「けれど……」
712 = 662 :
男「今回はやってしまったのかもしれない」
男「……俺だけが苦しむだけなら、幾らでも構わないんだ」
男「けど、アイツが……」
男「…………」
男「……やめた」
男「こんなことやっていても、どうにもならない」
男「親友は……もう、死んだんだ」
男「この世界に、心を委ねられる友は……」
男「一人もいない」
713 = 662 :
>>709
ほんとだ……完全にミスってる。
以下を脳内補完して下さると助かります。
714 = 662 :
【>>674の置き換え部分】
男「……ありがとうございます」
男性「……ん、話を変えよう」
男性「それで、君は何を買った?」
男「え?」
男性「ほら、分かるだろ?」
男「あー、はい」
男性「高価なものか? 今なら十分な給与もあるしな」
男「はは、全てお見通しですね」
男性「会社の社長は私なんだぞ?」
男性「部下がどれだけ稼いでいるかは、大体、把握しているよ」
男性「特に君の場合は浪費癖もないし」
男性「口座の残高は見るときは笑いが止まらないだろう」
男「そんなことはないですよ」
男性「またまた……で、何を買った?」
715 = 662 :
幸いにも話の重要な展開には関係のない部分でしたが、
今後も、そういったミスがあるかもしれません。
その都度、指摘して下さるとありがたいです。
よろしくお願いします。
>>>>709さん、ありがとう。
716 :
しえん
717 :
>>498でどうなったのか
719 :
しえーん
しかし一日見れないから、皆保守よろしくノ
720 = 662 :
──部長室
男「……ふー」
コンコン……。
女「入ってもよろしいですか?」
男「ああ」
……ガチャ。
女「お茶を持ってきました」
男「気が利くね。ありがとう」
女「実はお茶とコーヒーで迷ったんです」
女「もしかして、後者の方が良かったですか?」
男「あー……うん、今度はそうして貰った方が嬉しいかな」
女「分かりました。お砂糖はいくつで?」
男「いらない。ブラックでいい」
女「了解です」
721 = 662 :
男「……どうだ? 仕事には慣れたか?」
女「おかげさまで、一通りのことは何とか」
女「同僚の方もみなさん良い人たちばかりで、感謝してます」
男「そうか、それは良かった」
女「お仕事、大変そうですね」
男「ん……まあな」
女「今日、お昼休み取ってませんよね? 部屋から出てきませんでしたし」
男「ちょっと仕事の進行が遅れててな」
男「今後に支障をきたすから、早めにこなしておかないと」
女「そうですか? 部長は仕事が早いと、もっぱら噂ですよ?」
男「はは、これまた誰が持ち上げてくれたんだ?」
女「みんなです」
女「上が出来ると俺たち部下は大変だって」
男「そんなことも言ってるのか」
722 = 662 :
女「ここだけの内緒の話ですよ」
女「だから、聞かなかったことにして下さいね?」
男「ふむ……内緒の話なら仕方ない」
女「ふふっ」
男「……そうだ、少し時間をもらってもいいか」
女「何でしょうか? 仕事の話?」
男「いや、ものすごく私事の話」
女「私事……」
男「少し女性の意見が聞きたくてな」
男「もしもだぞ、本当に仮の話なんだが……」
女「はい」
男「理由は分からないが、落ち込んでいる女性がいる」
女「……へ?」
723 = 662 :
男「そんな女性を励ます時、一番、効果的なのはどんな手段だ?」
女「何かと思えば……ふふ、そうですねぇ……」
男「あくまでも、仮の話だからなっ」
女「その女性は部長とどんな関係なんですか?」
男「……まぁ、近しい関係であることは確かだ」
女「なら、何でもいいと思います」
男「おいおい、適当に流さないでくれ」
女「いや、本気で言ってますよ」
女「部長自身が励ましてやりたいって、元気にしてあげたいって」
女「そう思ってした行動なら、きっと」
女「彼女さんは、分かってくれるはずですから」
男「……そうなのか?」
女「女っていうのは、意外と単純なんですよ?」
女「男性の方の多くは、余り分かっていないようですけど」
男「…………」
724 = 662 :
女「人と人の付き合いだからこそ、想いが大事なんです」
女「それは、異性同性問わず一緒のことだと思いますよ」
男「……そうか」
女「少しでも参考になりましたか?」
男「ああ、胸の中の靄が消えたようだ」
女「それは良かったです。じゃあ、これで」
男「ん、ありがとう」
女「はい。では失礼します」
男「……あ、そうだ」
女「何ですか?」
男「『彼女さん』じゃないからな」
女「……ふふっ」
725 = 716 :
しえん
727 = 638 :
あれ?本当の兄じゃないって妹にばれたんじゃなかったっけ?
728 = 716 :
予想はつくけど黙ってるのがよろしくてよ?
729 :
そこまでいったのか?
730 = 687 :
ほす
731 = 662 :
──妹の部屋前
男「…………」
男「……よし」
コンコン……。
妹「はーい」
男「俺だけど、入ってもいいか?」
妹「お、お兄ちゃん? 何の用ですか?」
男「ちょっと二人で話をしたいなって思ってな」
妹「え、ええと……」
男「それとも今日はやめた方がいいか?」
732 = 662 :
妹「い、いやっ! そんなことないですっ!」
妹「でも、ちょっとだけ待ってて下さいねっ!」
男「それはいいけど……」
妹「すぐに終わりますからっ!」
ガサゴソッ!ガタンッ!バタンッ!
男「…………」
……………。
733 = 662 :
ガチャ……。
妹「はぁ……はぁ……」
妹「もう入ってもいいですよ……」
男「う、うん」
妹「どうかしました……?」
男「凄くげっそりしてるけど、大丈夫か?」
妹「……色々、片付けたいものもありましたし」
妹「この際、良い機会でした」
男「そ、そうか……」
妹「はい。そこのベット座っていいですよ」
男「ありがとう」
妹「……で、話って何ですか?」
男「いや、特に決まった話題があるわけじゃないんだが」
男「少しお前と雑談でもしたいなぁって思ってさ」
734 = 662 :
妹「でも、夕飯の時もしましたよね?」
男「二人だけじゃなかっただろ?」
妹「あ……はい」
男「どうだ、身体の調子は?」
妹「いたって健康です。お兄ちゃんも仕事の方はどうですか?」
男「順調……って、わけにはいかないなぁ」
妹「もしかしていじめられてたり……?」
男「はは、そんな学生時代じゃあるまいし」
男「ただここ最近は、仕事の量がいつになく多くてな」
妹「……大変そうですね」
男「楽しくはあるよ。充実してるっていう実感もある」
妹「流石、お兄ちゃんです」
735 = 662 :
妹「あっ、そうだ」
男「ん、どうした?」
妹「お兄ちゃんに、わたしからも話がありました」
男「というと?」
妹「実は今日、久しぶりに服でも買いたいなって思って」
妹「日中、買い物をしに外に出てたんですけど」
男「ほう、いいじゃないか」
妹「それで、気に入った服が一つ見つかって」
妹「お店の方に『試着をなさいますか?』って聞かれたんです」
男「ああ」
妹「……その、この前の誕生日にお兄ちゃんから指輪貰いましたよね」
妹「だから、わたし、最近、いつも指輪をはめているんですけど」
妹「その時に、店員さんがわたしの指輪を見つけて……」
妹「『とても綺麗な指輪ですね。お似合いですよ』って」
736 = 662 :
男「……うん」
妹「とっても、嬉しかったです」
妹「なんかここ最近、一番、幸せだった気がします」
男「そんなに喜んでもらえるとは、贈った俺も嬉しいよ」
妹「……お兄ちゃんは」
男「ん?」
妹「多分、わたしを励ましにきてくれたんですよね?」
男「……え?」
妹「大丈夫ですよ。わたしは、落ち込んだりしてませんから」
妹「今も毎日が、幸せですから」
男「お前……」
妹「『些細な変化が積み重なって』」
妹「『いつの日か、きっと前に進める日が来るはず』」
737 = 662 :
妹「お兄ちゃんの言った通りです」
男「……そうなのか?」
妹「…………」
男「本当に、全く心配がないって言い切れるんだな?」
妹「……それは」
男「お前を見てるとさ、いつも頑張りすぎているような気がするんだ」
男「弱音を吐かずに、他人を心配させまいと必死になって」
男「端からは、何の問題もなく過ごしているようだけど」
男「でも……そんなわけ、ないじゃないか」
妹「……っ」
男「他の家族に言えない事でも」
男「俺は、お前の全てを受け入れてやりたい」
男「…………」
男「……そうだな」
妹「お兄ちゃん……?」
738 = 662 :
男「『どんなに辛くても、苦しくても……』」
男「『悲しい時は、一緒に悲しんでやる』」
男「『泣きたい時は、一緒に泣いてやる』」
男「だから」
妹「……うん」
男「俺の前では隠さなくてもいいんだ。我慢しなくていいんだ」
男「……言うだけでも、少しは楽になるぞ?」
妹「……う……」
妹「…………」
妹「……あ、あのね……」
男「ああ」
妹「……本当は……怖い……」
739 = 662 :
妹「怖くて、怖くて……」
妹「時には、気が狂っちゃうぐらい、恐ろしい」
男「……やはり……か」
妹「その中でも、寝る時が一番怖いかな?」
妹「朝起きて、もしもまた記憶を失ってたら……」
妹「そう考えたら、夜も眠れない……」
男「…………」
妹「ねぇ、お兄ちゃん……」
男「……ん?」
妹「もしも、明日」
妹「或いは、これから先」
妹「……記憶を失ったら、今のわたしはどうなるんですか?」
男「…………」
妹「死んじゃうの? 消えちゃうの?」
740 = 662 :
男「……それは」
妹「怖いよ……本当に怖い……」
妹「今の自分がなくなっちゃうって……嫌だよ……」
妹「せっかく、指輪も貰ったのに……」
妹「こんなに毎日が楽しくて幸せなのに……」
妹「そうやって抱いた記憶も、感情も……」
妹「想いも……」
妹「全部、なくなっちゃうの……?」
男「……っ」
ぎゅっ……。
妹「お兄ちゃん……」
妹「明日が怖いよぉ……」
741 = 662 :
妹「……失うのが怖いの……」
男「分かってるっ」
男「俺が側にいるからっ、守るからっ」
男「だから、だからっ!」
妹「……うん」
妹「……ありがとう、お兄ちゃん」
妹「…………」
妹「でも……」
妹「何となく、分かってる」
妹「……今回は、長く持った方だよね……」
男「……え……」
妹「わたしは……」
妹「もう……」
742 = 662 :
男「……あ」
男「ああ……」
妹「…………」
男「……妹……?」
妹「……え?」
ぎゅっ!
妹「あの……」
男「いいんだ……」
男「……何も言わなくていいんだ……」
妹「……えっと……」
743 = 662 :
男「…………」
妹「すみません……」
妹「こんなこと、失礼かもしれませんが……」
妹「──あなた、誰ですか……?」
744 = 687 :
え
745 :
きついな
747 :
博士の愛した数式と同じパターン?
つらいな
748 :
まじかよ...
749 :
記憶喪失モノって結末で評価変わるよな。
まあこの>>1はデキるから期待。
750 :
ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁおぉぁぁ。
支援保守。
みんなの評価 : ★★★×4
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