元スレ妹「兄さんって呼ばせて下さい」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
401 = 293 :
男『申し訳ないな……いつも、迷惑かけて』
親友『いいよ、気にすんな』
男『はは、持つべきものはやっぱり友だ』
親友『だなっ』
男『そうだ、この後どうする?』
親友『ん? どっか遊びにでも行くか?』
男『隣街のゲーセン行ってみないか? 新型色々入ってるらしいぞ』
親友『ただ、今月厳しいからなぁ』
男『それだと、無理そうだな……』
親友『……そうだ』
男『ん?』
親友『久しぶりに俺ん家来ないか?』
402 = 293 :
男『……お前ん家?』
親友『ああ、そこなら金もかからないし』
親友『古いゲームしかないけど、昔みたいに盛り上がろうぜ』
男『あ、うん……』
親友『それにさ……』
親友『妹のやつも、最近、お前と会ってないし』
親友『この前、『兄さんはもう家来ないの……?』って、半泣きだったぞ?』
男『……いや』
親友『どうしたんだ? 何が問題だ?』
男『別に、何かあるってわけじゃないんだが……』
親友『なら、いいだろ?』
男『……気乗りしない』
親友『…………』
男『やっぱり、今日はやめとこう』
403 = 293 :
男『俺も、家でやることあるしな』
親友『……なぁ』
男『ん?』
親友『お前、避けてるだろ?』
男『……何の話だ』
親友『しらばっくれるなよ。こっちは分かってんだぞ?』
男『聞きたくないな、その話は』
トコトコトコ……。
親友『お、おいっ』
男『じゃあな、また明日』
親友『…………』
親友『……何でなんだよ』
親友「何で……』
親友『…………』
404 = 293 :
ここから少し長めに時間を貰いまふ。
次以降は一気に投下したいんで、申し訳ない。
405 :
ここまで待ったからもっと待とう
406 = 265 :
待つのには慣れた
いいのを期待してる
407 = 281 :
明日の夜まで残っていてほしい
なんで学校なんかあるんだよ
408 = 240 :
とりあえず保守
明日、学校だから寝る後は頼んだ
412 :
──リビング
男性「ふぅ、今日も疲れた」
女性「いつもご苦労様です。仕事の方は順調?」
男性「ああ、今のところはな」
女性「そう、それは良かったですね」
男性「ふむ。で、どうだ。最近、お前の方は」
男「…………」
男性「……ん?」
男「…………」
妹「……お兄ちゃん」
ゆさゆさ……。
男「あっ……な、なに?」
413 = 412 :
男性「いや、最近どうだと聞こうと思ったんだが……」
男性「どうした? 疲れてるのか?」
男「いや、大丈夫だよ。ちょっと……考え事を、ね」
女性「……ご飯もまだ全然食べてない」
女性「もしかして、口に合わなかったかしら?」
男「……違うんだ。いつも通り、おいしいから安心して」
妹「…………」
男「もぐもぐ……うん、やっぱり、母さんは料理上手だな」
男性「はは、そりゃそうだ」
男性「私が何度も何度も、アタックしたというのに」
男性「そうそう首を縦に振らなかったからなあ」
414 = 412 :
女性「だって、あの頃のあなたは、今みたいにお金なかったじゃないですか」
女性「やはり、家庭を築くなら、少ないよりあったほうがいいですし」
男性「でも、結局は、貧乏な私と結婚してくれたんだぞ?」
女性「あまりにもしつこいから、仕方なしです」
男性「はは、そりゃ困ったなぁ」
妹「仲いいんですね」
男性「ん?」
妹「両親が二人とも仲いいって、見てて幸せになります」
女性「そ、そう?」
妹「はい。ねっ、お兄ちゃん」
男「…………」
415 = 412 :
妹「……お兄ちゃん?」
男「……聞いてるよ。いいなぁ、仲良くて」
妹「う、うん……」
男「妹がそう言う訳も分かるよ」
男「家庭の幸せってこういうものなんだなって、つくづく実感する」
女性「あら、お父さん。息子が嬉しいこと言ってくれますね」
男性「……あ、ああ……」
男「もし仮に、ここに不幸な家庭しか見てこなかった子供がいたとしたら」
男「羨ましく……いや、妬ましく思う程、幸せな光景だよね」
女性「……え?」
男性「……ちょっと、席を外すぞ」
ガタン……。
416 = 412 :
男「大丈夫だよ、お父さん。僕は、正気だから」
男性「本当か? やれるのか?」
男「心配しないで。これでも、人一倍の親思いなんですから」
男「今までの人生をかけてきた、実績もありますよ」
男性「…………」
妹「……え、ちょっと、どういう……」
男「いいから、お父さん、座って下さい」
女性「あ、ええと……」
男性「……駄目だな……こっちに来──」
男「どうしたんですか? 何か、問題でも?」
男性「自分でも分からないのか?」
男「何がです?」
男「……これはもう無理だな」
女性「…………」
417 = 412 :
男性「すまんな……気づけなかった私が悪い」
男「ちょっと待って下さい。みんなも、何か変だと思いますか?」
男性「……………」
女性「……え、えっと」
妹「お、お兄ちゃん……」
男「どうしたんだよ、妹」
男「そんな、異常者を見るような目つきで……もう困るなぁ」
妹「……うぅ」
男「お父さん、いい加減にして下さい」
男「冗談だと言っても、からかわれ続けるのはいい気分がしません」
男性「……………」
妹「……く、口調」
418 = 412 :
男「ん?」
妹「お、お兄ちゃん……喋り方が……」
男「なに? 喋り方?」
妹「……お父さんに、敬語使ってますよ……?」
男「は、はは……そんなことない──」
男「です、よね……お父さん?」
419 = 412 :
男性「…………」
男「……っ」
男「ごめん、席を外す」
ガタン……。
男性「すまん、仕事で疲れていたみたいだ」
男性「会社での会話が、こっちまで入りこんでしまったんだろう」
男性「気にせず、食事を続けてくれ。なっ?」
女性「は、はい……」
妹「……お兄ちゃん……」
妹「……一体……」
420 = 412 :
──親友の部屋
男「……くそっ!」
男「なんて失態だっ! 何をやってるっ!」
男「馬鹿なことを一人で考えてるから……」
男「……こんな些細なミスを置かすんだっ!」
男「……くっ……」
バタッ!
男「……何が、何が不満なんだ……?」
男「いや……」
男「……俺は、一体、何を恐れてる?」
男「…………」
男「……あ……」
421 = 412 :
男「カメラ……」
男「……あいつの、大好きだった写真撮影」
男「でも……」
男「別に……好きじゃない……」
男「……親友……」
男「ああ……」
男「俺は……」
男「──一体、誰、なんだ……?」
男「…………」
422 :
限界近いのか…
423 = 412 :
男「……は、はは……」
男「なんてことだ……」
男「……そんな、自分を見失うなんて……」
男「……親友を演じる事で……自分が分からなくなるなんて……」
男「……はは、はははっ」
男「……うぅ」
男「なんて……滑稽なんだ……」
男「……幸せな家庭」
男「違う、違うっ」
男「俺の家には……そんなものはなかった……」
男「……なら、今は?」
男「今は……」
男「…………」
424 = 412 :
男「分からない……」
男「駄目だ……自分が自分でないようで」
男「頭がおかしくなりそうだ……」
男「……助けてくれ」
男「おい、親友……」
男「……近くにいるなら、狂った俺を助けてくれよ」
男「もう、俺は……」
男「壊れかけているみたいんだ……」
男「…………」
男「…………」
男「……母さん」
425 = 412 :
男「母さんしか、いない……」
男「今の俺を……正気に戻してくれるのは……」
男「……俺の、たった一人の母さんしかっ──」
……ピピピピピッ!
男「……へ?」
男「か、母さん……?」
……ガバッ!
男「…………」
男「……違う」
男「……何だ? 知らない番号?」
……………。
………。
426 = 412 :
親友『少し話がある』
男『なんだよ、朝っぱらから』
親友『……重要な話だ。来てくれ』
男『ここじゃ、出来ない話なのか?』
親友『ああ……ここじゃ無理だ』
男『……分かったよ』
男『お前に付いて行けばいいんだろ?』
親友『助かるな……』
男『いいさ、まだ朝礼までには時間がある』
親友『ああ、それまでには終わらせるよ』
男『…………』
……………。
427 = 412 :
男『……さて』
親友『…………』
男『まさか、屋上が開いてるなんてな』
男『確かに、内密な話をするには絶好の場所だが……』
男『お前、このためだけに錠を壊しただなんて言うなよ?』
親友『……だったらどうする?』
男『……え?』
親友『話をしよう』
男『ちょっと待てって』
男『本当にお前が……』
親友『今は、そんなことどうだっていいさ』
男『……でも』
親友『お前に、聞きたいことがあるんだ』
428 = 412 :
男『……何だよ』
親友『俺の……妹のことだ』
男『…………』
親友『こないだは、うまく逃げられたからな』
男『今日だって、走って逃げるかもしれないぞ?』
親友『残念だったな。扉に近いのは俺の方だ』
親友『そこまで話したくないっていうなら』
親友『俺を殴り倒していけよ』
男『……そんなことするわけないじゃないか』
親友『そうか? よっぽど、話したくないことだと俺は考えてるけどな』
男『…………』
親友『どうして、あいつを避ける』
430 = 412 :
男『……避けてないさ』
親友『分かりきった嘘をつくなよ』
男『嘘じゃない。ただ、巡り合わせが悪いだけだ』
親友『違うな。あまりにも、不自然さが臭う』
男『……お前がそう思ってるだけだろ?』
親友『待て。そう、過剰に反発しないでくれ』
親友『ただ、俺は理由を聞いてるだけだ』
男『別に……怒ってないさ……』
親友『そうか? 俺には凄く、感情的に見えるが』
男『いいから、早く聞けよ』
親友『だから、避けている理由を聞いてるんだ』
親友『はぐらかしたら、また同じ質問を繰り返すからな?』
男『……ちっ』
431 = 412 :
男『……簡単だよ』
親友『ん?』
男『もう、幼い女の子と遊ぶ気になれないんだよ』
男『ああ……そういうことだ』
親友『……あんなにアイツに優しかったお前がか?』
男『人は変わるよ』
親友『……違うな』
男『違わない』
親友『いいか、小さい頃からの友達だった俺に嘘をつくな』
男『……別に嘘なんて……』
親友『なら、はっきりと言ってやろうか?』
男『……何を』
432 = 412 :
親友『お前が、妹を避けるようになった理由だよ』
男『なっ……』
親友『俺が分からないとでも、思ったか?』
親友『そうだったとしたら、お前は、相当な大バカ者だ』
男『……くっ』
親友『いいか、お前は……』
男『や、やめろっ!』
親友『妹のことが好──』
男『……ッ』
433 :
おお来てた
434 = 412 :
バゴッ!!
親友『……くっ』
男『それ以上、言うなっ』
男『分かっていても、言うんじゃないっ!』
親友『……何でだよ……何が問題……なんだ?』
男『いいから、止めろ』
男『頼むから、やめてくれよ……』
親友『……お前……』
男『……っ』
たったったった……。
親友『…………』
435 :
いいなぁ
支援
436 :
しえん
437 :
しえん
438 :
私怨しとかないとさるさんくらいそうなペースだな
439 :
なんだろう……
家族計画思い出して泣いた
441 = 412 :
──書斎
ドンドンドンッ!!
男性「……な」
ガチャ……。
男「…………」
男性「……君か……」
男「…………」
男性「ど、どうした? まだ、気分が悪いのか?」
男性「もしそうなら、数日間、仕事を休んでも──」
男「……終わら、せましょう……」
男性「……は?」
男「……もう、こんな芝居」
男「……やめてしまいましょうよ……」
男性「ま、まて……」
442 = 412 :
男性「……君には言ったはずだと思うが」
男性「今のあの子には、君という兄が必要で……」
男性「それに、途中でやめる事は……」
男「……昔」
男性「……ん?」
男「……酒を飲んでは溺れて」
男「暇さえあれば、煙草を吸っているような男がいましてね……」
男性「……な、何の話だ?」
男「ヘビースモーカーっていうんですか……?」
男「僕は煙草を吸わない事にしてるんで、よく分かりませんが」
男「そんな骨の髄まで腐り切った、駄目人間がいたわけですよ……」
男性「……男君」
男性「もしかしたら、私が思っている以上に、君は……」
443 = 412 :
男「でも、父親だったんです……」
男性「……え?」
男「そんな駄目人間でしたけど、間違いなく、僕の父でした」
男「……愛すべき、家族だったんです」
男性「…………」
男「でも、そんな男ですから、家庭に幸せは訪れなくて……」
男「気がついた時には、遅かったんです……」
男「……既に、何もかも歯車が狂い始めていて……」
男「不思議に思いませんでしたか……?」
男性「……何を?」
男「どうして、僕が……この街に再びやってきたのか……」
男性「それは、知らない……」
男「実はですね……」
男「……仕事のあてを探しにきたんです」
444 = 412 :
男「それも、ある程度、お金になる仕事をね……」
男性「……どういうことだ?」
男「最後に頼むのは、親友っていうでしょ?」
男「だから、何年も訪れていないこの街に……」
男「……かつての友人を頼ってきたわけです……」
男性「…………」
男「そしたらびっくり……まさか、ソイツが死んじまってて……」
男「……妹は、記憶喪失……」
男「……は、ははっ……」
男「笑っちゃいますよね……どんなタイミングだよって……」
男性「……っ」
男「でも、あなたは僕に提案した」
445 = 412 :
男「……『息子の代わりをしてくれ』と」
男「『妹の兄になってくれ』と」
男「この際だから、はっきり言いますね……」
男「……そんな大役、僕に務まるわけないんです」
男「一人でさえ精一杯になのに……どうして、そんな余裕が?」
男性「……けれど、君は承諾したぞ」
男「……その通りです」
男「……だって、仕事が貰えたから」
男「かなりの金が入る仕事が、得られたから……」
男性「いったい……どういう……」
男「僕にはいるんですよ、お金が」
男「……それも少しじゃなくて、大量に」
446 = 412 :
男性「……何のために?」
男「……手術費用です……」
男性「手術費用……?」
男「……父の話はしましたよね?」
男「ヘビースモーカーの、煙草吸ってばかりの父がいたって話」
男「それが、最悪なことに、母の病気を生みまして……」
男「医者の話によると、副流煙は非常に身体に悪いそうです……」
男「……で、それを大量に吸っていた母は……」
男「──肺ガンになった」
男性「……そうだった、のか……」
男「まあ、月々の医療費ぐらいならなんとかなったんですが」
男「……有名どころの先生に手術を頼むとなると、相当かかるらしくて……」
男「でも、母さんの残された命は僅かで……」
447 = 412 :
男「……たった一人の守るべき家族なんです」
男「かつて、僕は誓いました……けど、その母を救うことができない……」
男「……そんな時に舞い込んできた、不幸の中の幸運だったからこそ」
男「かつての……友人、妹のためになるという頼みだったから」
男「今まで、精一杯、頑張れた……」
男「……自分には不可能だと思える事も、やり通せた」
男性「……なら、これからも……」
男「でも、もう意味ないんです……」
男性「……どうしてだ?」
男「……さきほど電話がかかってきました」
男「母が……」
男「──死んだそうです」
448 = 412 :
男性「…………」
男性「……なっ……」
男「もう……僕には無理ですよ……」
男「こんな……自分の生きる方向性を見失った人間に……」
男「守ると約束した人を救えない、裏切り者に……」
男「……親友を演じて、その妹を救うなんて……」
男「そんな、大役……無理なんです……」
男性「…………」
449 = 412 :
男「そもそも、これからの人生……」
男「一体、どうしていいのか……」
男「……でも、まずは」
男性「帰るのか?」
男性「母親のいる故郷の病院に帰るんだな?」
男「…………」
男「……はいっ」
男「……ごめん……なさい……」
男性「…………」
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