元スレ妹「兄さんって呼ばせて下さい」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
301 = 293 :
女性「本当におめでとう……こっちに来て頂戴」
妹「は、はい」
ギュッ……。
妹「お、お母さん?」
女性「…………」
妹「あの……」
男性「お前が、どんなことになろうとも」
男性「決して、私たちの絆が切れることはない」
妹「…………」
男性「安心しろ」
男性「ここが、お前の居場所だから」
男性「家族四人で乗り切ろうな……」
妹「……っ」
妹「……は、はい……」
男「…………」
302 = 293 :
──リビング
女性「さーて、準備は整ったかしら」
男性「おー、今日はいつに増して豪華な夕飯だなっ」
女性「お祝いの日だからね。かなり奮発しました」
男「確かに、これはご馳走だなぁ」
妹「食べきれるかなぁ……」
男「なんだ? みんなの分も全部、食うつもりか?」
妹「は……?」
男「こりゃまた、凄い食欲だな」
妹「ち、違いますっ!」
男性「確かに、昔から食いっぷりは良かった」
妹「お、お父さんまで!」
303 = 293 :
男「はは、やっぱりそうじゃん」
妹「お兄ちゃんっ!」
女性「そろそろ、可愛い妹弄りはその辺にしときなさい」
女性「ほら、温かいうちに食べましょ?」
女性「お父さん、いつものお願いしますね」
男性「分かった」
男性「じゃあ、みんな、手を合わせて」
男「よし」
妹「は、はい」
男性「頂きます」
男・妹「「いただきまーすっ」」
……………。
304 = 293 :
男「いやぁ……食った食った……」
妹「もう何も食べられないです……」
女性「ありがとうね。綺麗に完食してくれて」
男性「ふぅー、やっぱり母さんの作る飯はうまいな」
男性「さて……食後の一服を」
女性「お父さん、煙草はベランダで吸って下さい」
男性「まあ、そう堅い事は言わずにな」
男性「どうだ、お前も吸うか?」
男「……ええと、止めとくよ」
女性「あら? いつ頃から吸うの止め……」
男性「母さん」
女性「……あっ」
妹「?」
305 = 293 :
女性「で、でも、いい傾向ですよ」
女性「やっぱり、このご時世、煙草を吸う男性はだめよね?」
妹「え? いや、どうでしょうか……」
男「最近は、嫌いな人多いからね」
男「父さんも早くやめないと、秘書の人たちに嫌われるよ?」
男性「今更止めたところで、好感度は上がらないさ」
男「はは、そりゃそうか」
妹「あの、昔は、お兄ちゃんも吸ってたんですか?」
男「……うん、そこそこね」
妹「へー意外」
男「そうか?」
妹「なんか、そういうの吸う感じの人には見えないですね」
女性「顔が童顔だからね」
306 = 293 :
妹「ふふ、分かります。少し、男らしさには欠けてるかも」
男「止めてくれよ、気にしてるんだから」
妹「今日の意地悪のお返しですよーだっ」
男「根に持つ奴だなぁ……」
男性「…………」
男性「……本当に仲がいいな」
女性「そうですね」
妹「え?」
女性「こんなこと言うと、あなたは傷つくかもしれないけど」
女性「記憶を失ったとは、到底、思えないぐらい」
妹「そ、そう見えますか……?」
男「…………」
男性「……ああ」
307 = 293 :
男性「かつての頃のままだ……」
男性「何もかも……」
女性「…………」
妹「……ええと」
男「…………」
男「……つまり、だ」
妹「え?」
男「俺たち兄妹には、次元を超えた見えない絆があるわけさっ」
ぎゅっ。
妹「ちょ、ちょっと兄さんっ!?」
男「過去なんて関係ないぞーっ」
男「昔から大好きだー、妹よっ!」
妹「抱きつくの、止めてっ。禁止ーっ!」
308 = 293 :
男「はは、顔真っ赤にしてやんの」
妹「はぁー……はぁー……」
妹「もう急になんてことするんですか……心臓に悪いです……」
男「心の準備が必要だったか?」
妹「そうです。これから、抱きつく時には事前に言って下さいよ」
男「いや、兄妹で抱きつくシーンなんてそうそうないから」
妹「あっ……そうでした」
男「でも、お前が良いっていうなら──」
妹「へ?」
ぎゅうっ!
男「何度だって抱きしめてやるぞーっ!」
妹「ちょっ、心臓がっ! 事前にっ! 約束違うーっ!」
309 = 293 :
──親友の部屋
男「…………」
男「……今日は、疲れたな」
バタン……。
男「はー……」
男「いいのかな……」
男「……本当にこれで間違ってないんだろうか……」
男「…………」
男「……ええと、カメラはどこに……」
男「ん、あった」
男「……よし、これで」
男「…………」
男「……なあ、親友」
311 = 293 :
男「もしかしたら、俺は、最低なことをしてるのかもしれない」
男「アイツを騙して、お前に成り代わって」
男「……うん」
男「やっぱり、俺は最低だよ」
男「…………」
男「……お前の両親に頼まれた時な」
男「正直、本当は困った」
男「だって、ずっと前から、早くこの関係が終わればいいと思ってたから」
男「他人だったお前を演じるのは、難しいし」
男「それに……お前との友情を踏みにじってる気がするから」
男「なぁ……?」
男「お前……怒ってないか?」
男「本来なら、この日常は、決して俺のもの何かじゃない」
313 = 293 :
男「お前は死んじまったけど、俺が成り代わっていいものじゃないはずだ」
男「結局、俺はさ……」
男「土下座して頼み込んだ二人の願いを渋々聞いてやって」
男「妹のためだから、見殺しにはできないから、なんて理由つけて」
男「そんな体裁を守れないと、踏み出せないちっぽけな人間なんだ……」
男「……多分、お前は言うと思う……」
男「『やるなら、やりきれ』『迷うな』って」
男「……でも、俺は」
男「こうしている間も、この行動の善悪を決めかねてる」
男「ぐだぐだと、正解のない問いを悩み続けてる」
男「……そのくせ」
314 = 293 :
男「俺が、とうの昔に失った……」
男「家族っていう幸せの形を、楽しんでる……」
男「……どうだ? 最低だろ?」
男「……なあ、親友」
男「……頼むからさ……」
男「返事してくれよ……」
男「……俺を……罵ってくれよ……」
男「…………」
男「……はぁ」
男「…………」
男「ん?」
315 = 293 :
ピピピピッ……。
男「……え? 電話?」
男「ええと……このタイミング……」
男「いや、違う。そんなことある訳がない……」
男「……母さんだ」
男「そういえば、最近電話してなかったからなぁ……」
ピピピピピッ……。
男「…………」
男「…………」
ピピピピピピッ……。
男「…………」
316 = 293 :
ピピッ……ピッ……。
男「…………」
…………。
男「……ふぅ……」
男「…………」
男「……出れるわけ、ないよな……」
……………。
………。
317 = 266 :
しえん
何か怖いヨカーン
318 = 266 :
さるった?
319 = 258 :
しえん
323 :
今北。
この手のSSはすごい好きだ。
考えて読む感じの。
とりあえず④
324 = 293 :
男『…………』
男『……すぅ……すぅ……』
──■■□ッ!
男『……ん?』
男『あれ……今、なんか音がしたような……』
男『……一階?』
男『…………』
男『まだ父さんと母さん、起きてるのかな……?』
ガバッ……。
男『……行ってみよう』
トコトコ……ガチャ。
……………。
325 = 293 :
トコトコトコ……。
男『…………』
男『……ん?』
男『…………』
男『……あっ』
?『一体、こ……から……のよっ!』
?『まだ家の……も、あなたっ……分……てるの!?』
男「これは……』
男『……母さんの声……?』
男『もしかして……』
326 = 293 :
父親『うるせぇっ! 言われなくてもそんなこと分かってる!』
母親『だったらどうして!?』
父親『仕方ねぇだろ、クビになっちまったんだからさっ』
母親『いい加減にしてよっ! また酔って帰ってきたと思ったら』
母親『急に、会社を辞めさせられたじゃ、こっちも納得できないわっ!』
父親『何を聞きたいんだっ』
母親『辞めさせられた理由よっ!』
父親『……それは』
母親『いいから言って! あなた、一体、何したっていうのっ!?』
父親『……った』
母親『聞こえないわっ。もっと大きな声で言って!』
父親『あーもうっ! 殴ったんだよっ!』
327 = 293 :
母親『……殴った? だ、誰を?』
父親『前から言ってた、いけ好かない上司だよ……』
母親『……どこで』
父親『昼間、会社の中でだ』
母親『……そ、そんな……』
父親『腹が立ったんだ。いつも俺に雑用ばっかり押し付けて』
父親『その割に、何かあると責任は俺にあるとほざく』
母親『…………』
父親『それでも、俺は我慢した方だ』
父親『けど、結局、こうなる運命だったんだよ』
母親『……ああ……』
母親『…………』
父親『ふんっ……』
328 = 293 :
母親『…………』
母親『……ねぇ』
父親『あっ? まだ、文句あんのか?』
母親『……もしかして、あなた』
父親『何だよ』
母親『そのときも、酔ってたんじゃないでしょうね?』
父親『…………』
母親『質問に答えて』
父親『……だからさ』
母親『アルコール中毒のあなただけど』
母親『会社に酒を持ち込んでたりしないわよね?』
父親『…………』
329 = 293 :
母親『……なんで、黙ってるの?』
母親『何か、言ってよ』
父親『……それは……』
母親『なに?』
父親『……つい、な……』
母親『……なっ……』
父親『…………』
母親『最低よっ! あなたは本当に人間の屑っ!』
父親『……そこまで──』
ガシャーンっ!
父親『いてっ……』
331 = 293 :
母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』
父親『な、なにすんだっ!』
母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』
母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』
母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』
母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』
父親『……っ』
ガタンッ……。
母親『な、何をっ……』
332 = 293 :
母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』
父親『な、なにすんだっ!』
母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』
母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』
母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』
母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』
父親『……っ』
ガタンッ……。
母親『な、何をっ……』
333 = 293 :
バチッ!
母親『きゃっ……』
父親『言いたいことを言わせておけばっ!』
父親『くそっ! なんで、お前に、そこまで言われなきゃいけない!』
母親『……叩いたわね……』
父親『あっ?』
母親『……もう嫌……もう、いやよ……』
母親『これ以上は耐えられない……』
父親『何だと?』
母親『……私と、別れて下さい』
父親『……あ?』
母親『お願いですから……もう、別れて下さい』
父親『なっ……』
父親『こ、この……糞女が……』
334 = 293 :
母親『……お願いです……』
父親『うるせぇっ!』
バンッ!
母親『……うっ』
父親『別れないぞっ! 絶対に別れてやるもんかっ!』
バゴッ!
母親『……くふっ……』
父親『お前だけいい思いをするなんて、そんなこと……』
たたたたたっ!
父親『あ……』
男『やめてっ!』
ガバッ……。
母親『……男……?』
335 = 293 :
男『もう母さんに乱暴するなっ!』
父親『ち、違うんだ……』
男『殴るなら俺を殴れっ。それで気が済むなら、我慢するからっ!』
父親『……あ、ああ……』
男『母さん……母さん……』
母親『……う……うぅ……』
男『もう大丈夫だから……大丈夫だからさ』
母親『……うぅ……ああ……うあああ……』
男『うん……僕が、母さんを守るよ……』
父親『…………』
父親『……俺は』
336 = 293 :
父親『な、なんてことを……』
父親『………ああ』
父親『…………』
父親『……手が震える』
父親『……駄目だ……』
父親『……もう……』
父親『俺は……』
父親『…………』
337 = 330 :
親爺
339 = 242 :
一気に来るなぁ
340 = 237 :
いい感じに進んできたな
保守
342 = 293 :
……………。
………。
男「…………」
……ン……ン。
男「…………」
コンコンっ!
男「あっ……」
……ガチャ。
妹「……お兄ちゃん?」
男「な、何だ……?」
妹「結構、扉をノックしたんですよ」
男「あ、ああ……気づかなかったみたいだ……」
343 = 293 :
妹「その、大丈夫……?」
男「……何がだ?」
妹「顔、真っ青です……」
男「……え」
妹「体調が悪いなら、また明日にしますよ?」
男「いや、いいんだ……」
妹「で、でも……」
男「ほら、入って入って」
妹「……お兄ちゃんがそう言うなら」
男「よし」
男「でも……ちょっとだけ、時間くれ」
妹「はい……」
344 = 293 :
男「…………」
妹「…………」
男「……ふぅー……」
妹「お兄ちゃん……?」
男「いや、少し嫌な記憶を思い出してな」
妹「嫌な記憶?」
男「まぁ、なんていうか……」
男「思い出したくない過去って、誰にも一つや二つあるだろ?」
妹「……その」
男「ん?」
妹「わたしは昔のこと覚えてないので……」
男「……あっ、ごめん……」
345 = 293 :
妹「いや、いいんです」
男「くそっ……何やってんだ俺」
妹「余り気にしないで下さいね?」
男「本当に悪い……まだ頭がうまく切り替わってないみたいだ」
妹「……あの──」
妹「聞いてもいいですか?」
男「ん? 今、思い出した過去をか?」
妹「そうじゃなくて……その」
男「うん」
妹「昔の記憶があるって、どんな感じなんですか?」
男「……それは」
妹「やっぱり、唐突にぱっと思い浮かんだりするんですか?」
男「……たまにだけどね」
346 = 293 :
妹「それは楽しかった記憶も?」
男「もちろんだ……というより」
男「嫌な記憶を思い出すなんてことはめったにない」
妹「でも、時にはある……」
男「……稀にだけど」
妹「そういう時、お兄ちゃんはどうしてます?」
男「どうするっていうのは?」
妹「辛くて苦しくて、とっても悲しいような、嫌な思い出が沸き起こった時」
妹「お兄ちゃんは、それをどうやって対処してるんですか?」
男「……そうだな」
妹「…………」
347 = 293 :
男「受け入れる」
妹「『受け入れる』?」
男「……どう足掻いたって、過去は変えられない」
妹「……はい」
男「どんなにやるせなくて、なんとかしたくても」
男「過ぎてしまった日々は、もうやり直すことは出来ないんだ」
妹「…………」
男「だから、受け入れる」
男「前へと進む」
妹「……ん」
男「そうしないといけない」
男「いや、そうするしか方法がない」
348 = 293 :
妹「……そうですか」
男「俺もさ、昔やったヘマを今でも思い出す」
男「何で、あの時、ああしてなかったんだろうって」
男「悔しくて、でも、どうしようもなくて」
妹「…………」
男「苦しいし、もがき続けてしまうこともあるよ」
男「でも、それに意味はないんだ」
妹「本当に?」
男「うん」
男「後悔をし続けても、その先には何もない」
男「終わり無き道が永遠と続いているだけなんだ」
妹「…………」
男「だからこそ、時には振り返ってしまうかもしれないけど」
男「ひたすらに、必死に、前へと足を進める」
349 = 293 :
男「結局、それが一番なんだ」
妹「……凄いですね」
男「……そう思うか?」
妹「はい、凄く強いと思います」
男「……強くなんかないよ」
妹「でも、そうやって過去を乗り越えられるって」
妹「そう容易くできない気がするんです」
男「……俺は、ただ」
男「『今』に必死なんだと思う」
妹「……今……」
男「だから、後ろを振り返る余裕がないだけなんだ」
男「強くなんかないし、凄いわけでもない」
男「ただ、がむしゃらに生きてるだけ」
350 = 293 :
妹「……それでも」
妹「わたしは、お兄ちゃんを立派だと思いますよ」
男「…………」
妹「いつか、わたしも」
男「……ん?」
妹「これから、仮に記憶が戻ったとしても」
妹「そうやって、前へと進むような強い意志があるといいです」
男「…………」
妹「わたしが記憶を失った理由。自らで、自分の命を断とうと思った訳」
妹「お兄ちゃんは事情を知っていると思いますが」
妹「それを、わたしは何ひとつ知りません」
男「……うん」
妹「相当、辛い過去なんだと思います」
みんなの評価 : ★★★×4
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