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    元スレ妹「兄さんって呼ばせて下さい」

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    301 = 293 :

    「本当におめでとう……こっちに来て頂戴」

    「は、はい」

    ギュッ……。

    「お、お母さん?」

    「…………」

    「あの……」

    「お前が、どんなことになろうとも」

    「決して、私たちの絆が切れることはない」

    「…………」

    「安心しろ」

    「ここが、お前の居場所だから」

    「家族四人で乗り切ろうな……」

    「……っ」

    「……は、はい……」

    「…………」

    302 = 293 :

    ──リビング

    「さーて、準備は整ったかしら」

    「おー、今日はいつに増して豪華な夕飯だなっ」

    「お祝いの日だからね。かなり奮発しました」

    「確かに、これはご馳走だなぁ」

    「食べきれるかなぁ……」

    「なんだ? みんなの分も全部、食うつもりか?」

    「は……?」

    「こりゃまた、凄い食欲だな」

    「ち、違いますっ!」

    「確かに、昔から食いっぷりは良かった」

    「お、お父さんまで!」

    303 = 293 :

    「はは、やっぱりそうじゃん」

    「お兄ちゃんっ!」

    「そろそろ、可愛い妹弄りはその辺にしときなさい」

    「ほら、温かいうちに食べましょ?」

    「お父さん、いつものお願いしますね」

    「分かった」

    「じゃあ、みんな、手を合わせて」

    「よし」

    「は、はい」

    「頂きます」

    「「いただきまーすっ」」

    ……………。

    304 = 293 :

    「いやぁ……食った食った……」

    「もう何も食べられないです……」

    「ありがとうね。綺麗に完食してくれて」

    「ふぅー、やっぱり母さんの作る飯はうまいな」

    「さて……食後の一服を」

    「お父さん、煙草はベランダで吸って下さい」

    「まあ、そう堅い事は言わずにな」

    「どうだ、お前も吸うか?」

    「……ええと、止めとくよ」

    「あら? いつ頃から吸うの止め……」

    「母さん」

    「……あっ」

    「?」

    305 = 293 :

    「で、でも、いい傾向ですよ」

    「やっぱり、このご時世、煙草を吸う男性はだめよね?」

    「え? いや、どうでしょうか……」

    「最近は、嫌いな人多いからね」

    「父さんも早くやめないと、秘書の人たちに嫌われるよ?」

    「今更止めたところで、好感度は上がらないさ」

    「はは、そりゃそうか」

    「あの、昔は、お兄ちゃんも吸ってたんですか?」

    「……うん、そこそこね」

    「へー意外」

    「そうか?」

    「なんか、そういうの吸う感じの人には見えないですね」

    「顔が童顔だからね」

    306 = 293 :

    「ふふ、分かります。少し、男らしさには欠けてるかも」

    「止めてくれよ、気にしてるんだから」

    「今日の意地悪のお返しですよーだっ」

    「根に持つ奴だなぁ……」

    「…………」

    「……本当に仲がいいな」

    「そうですね」

    「え?」

    「こんなこと言うと、あなたは傷つくかもしれないけど」

    「記憶を失ったとは、到底、思えないぐらい」

    「そ、そう見えますか……?」

    「…………」

    「……ああ」

    307 = 293 :

    「かつての頃のままだ……」

    「何もかも……」

    「…………」

    「……ええと」

    「…………」

    「……つまり、だ」

    「え?」

    「俺たち兄妹には、次元を超えた見えない絆があるわけさっ」

    ぎゅっ。

    「ちょ、ちょっと兄さんっ!?」

    「過去なんて関係ないぞーっ」

    「昔から大好きだー、妹よっ!」

    「抱きつくの、止めてっ。禁止ーっ!」

    308 = 293 :

    「はは、顔真っ赤にしてやんの」

    「はぁー……はぁー……」

    「もう急になんてことするんですか……心臓に悪いです……」

    「心の準備が必要だったか?」

    「そうです。これから、抱きつく時には事前に言って下さいよ」

    「いや、兄妹で抱きつくシーンなんてそうそうないから」

    「あっ……そうでした」

    「でも、お前が良いっていうなら──」

    「へ?」

    ぎゅうっ!

    「何度だって抱きしめてやるぞーっ!」

    「ちょっ、心臓がっ! 事前にっ! 約束違うーっ!」

    309 = 293 :

    ──親友の部屋

    「…………」

    「……今日は、疲れたな」

    バタン……。

    「はー……」

    「いいのかな……」

    「……本当にこれで間違ってないんだろうか……」

    「…………」

    「……ええと、カメラはどこに……」

    「ん、あった」

    「……よし、これで」

    「…………」

    「……なあ、親友」

    311 = 293 :

    「もしかしたら、俺は、最低なことをしてるのかもしれない」

    「アイツを騙して、お前に成り代わって」

    「……うん」

    「やっぱり、俺は最低だよ」

    「…………」

    「……お前の両親に頼まれた時な」

    「正直、本当は困った」

    「だって、ずっと前から、早くこの関係が終わればいいと思ってたから」

    「他人だったお前を演じるのは、難しいし」

    「それに……お前との友情を踏みにじってる気がするから」

    「なぁ……?」

    「お前……怒ってないか?」

    「本来なら、この日常は、決して俺のもの何かじゃない」

    313 = 293 :

    「お前は死んじまったけど、俺が成り代わっていいものじゃないはずだ」

    「結局、俺はさ……」

    「土下座して頼み込んだ二人の願いを渋々聞いてやって」

    「妹のためだから、見殺しにはできないから、なんて理由つけて」

    「そんな体裁を守れないと、踏み出せないちっぽけな人間なんだ……」

    「……多分、お前は言うと思う……」

    「『やるなら、やりきれ』『迷うな』って」

    「……でも、俺は」

    「こうしている間も、この行動の善悪を決めかねてる」

    「ぐだぐだと、正解のない問いを悩み続けてる」

    「……そのくせ」

    314 = 293 :

    「俺が、とうの昔に失った……」

    「家族っていう幸せの形を、楽しんでる……」

    「……どうだ? 最低だろ?」

    「……なあ、親友」

    「……頼むからさ……」

    「返事してくれよ……」

    「……俺を……罵ってくれよ……」

    「…………」

    「……はぁ」

    「…………」

    「ん?」

    315 = 293 :

    ピピピピッ……。

    「……え? 電話?」

    「ええと……このタイミング……」

    「いや、違う。そんなことある訳がない……」

    「……母さんだ」

    「そういえば、最近電話してなかったからなぁ……」

    ピピピピピッ……。

    「…………」

    「…………」

    ピピピピピピッ……。

    「…………」

    316 = 293 :

    ピピッ……ピッ……。

    「…………」

    …………。

    「……ふぅ……」

    「…………」

    「……出れるわけ、ないよな……」

    ……………。
    ………。

    317 = 266 :

    しえん

    何か怖いヨカーン

    318 = 266 :

    さるった?

    319 = 258 :

    しえん

    323 :

    今北。
    この手のSSはすごい好きだ。
    考えて読む感じの。

    とりあえず④

    324 = 293 :

    『…………』

    『……すぅ……すぅ……』

    ──■■□ッ!

    『……ん?』

    『あれ……今、なんか音がしたような……』

    『……一階?』

    『…………』

    『まだ父さんと母さん、起きてるのかな……?』

    ガバッ……。

    『……行ってみよう』

    トコトコ……ガチャ。

    ……………。

    325 = 293 :

    トコトコトコ……。

    『…………』

    『……ん?』

    『…………』

    『……あっ』

    『一体、こ……から……のよっ!』

    『まだ家の……も、あなたっ……分……てるの!?』

    「これは……』

    『……母さんの声……?』

    『もしかして……』

    326 = 293 :

    父親『うるせぇっ! 言われなくてもそんなこと分かってる!』

    母親『だったらどうして!?』

    父親『仕方ねぇだろ、クビになっちまったんだからさっ』

    母親『いい加減にしてよっ! また酔って帰ってきたと思ったら』

    母親『急に、会社を辞めさせられたじゃ、こっちも納得できないわっ!』

    父親『何を聞きたいんだっ』

    母親『辞めさせられた理由よっ!』

    父親『……それは』

    母親『いいから言って! あなた、一体、何したっていうのっ!?』

    父親『……った』

    母親『聞こえないわっ。もっと大きな声で言って!』

    父親『あーもうっ! 殴ったんだよっ!』

    327 = 293 :

    母親『……殴った? だ、誰を?』

    父親『前から言ってた、いけ好かない上司だよ……』

    母親『……どこで』

    父親『昼間、会社の中でだ』

    母親『……そ、そんな……』

    父親『腹が立ったんだ。いつも俺に雑用ばっかり押し付けて』

    父親『その割に、何かあると責任は俺にあるとほざく』

    母親『…………』

    父親『それでも、俺は我慢した方だ』

    父親『けど、結局、こうなる運命だったんだよ』

    母親『……ああ……』

    母親『…………』

    父親『ふんっ……』

    328 = 293 :

    母親『…………』

    母親『……ねぇ』

    父親『あっ? まだ、文句あんのか?』

    母親『……もしかして、あなた』

    父親『何だよ』

    母親『そのときも、酔ってたんじゃないでしょうね?』

    父親『…………』

    母親『質問に答えて』

    父親『……だからさ』

    母親『アルコール中毒のあなただけど』

    母親『会社に酒を持ち込んでたりしないわよね?』

    父親『…………』

    329 = 293 :

    母親『……なんで、黙ってるの?』

    母親『何か、言ってよ』

    父親『……それは……』

    母親『なに?』

    父親『……つい、な……』

    母親『……なっ……』

    父親『…………』

    母親『最低よっ! あなたは本当に人間の屑っ!』

    父親『……そこまで──』

    ガシャーンっ!

    父親『いてっ……』

    331 = 293 :

    母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』

    父親『な、なにすんだっ!』

    母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』

    母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』

    母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』

    母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』

    父親『……っ』

    ガタンッ……。

    母親『な、何をっ……』

    332 = 293 :

    母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』

    父親『な、なにすんだっ!』

    母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』

    母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』

    母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』

    母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』

    父親『……っ』

    ガタンッ……。

    母親『な、何をっ……』

    333 = 293 :

    バチッ!

    母親『きゃっ……』

    父親『言いたいことを言わせておけばっ!』

    父親『くそっ! なんで、お前に、そこまで言われなきゃいけない!』

    母親『……叩いたわね……』

    父親『あっ?』

    母親『……もう嫌……もう、いやよ……』

    母親『これ以上は耐えられない……』

    父親『何だと?』

    母親『……私と、別れて下さい』

    父親『……あ?』

    母親『お願いですから……もう、別れて下さい』

    父親『なっ……』

    父親『こ、この……糞女が……』

    334 = 293 :

    母親『……お願いです……』

    父親『うるせぇっ!』

    バンッ!

    母親『……うっ』

    父親『別れないぞっ! 絶対に別れてやるもんかっ!』

    バゴッ!

    母親『……くふっ……』

    父親『お前だけいい思いをするなんて、そんなこと……』

    たたたたたっ!

    父親『あ……』

    『やめてっ!』

    ガバッ……。

    母親『……男……?』

    335 = 293 :

    『もう母さんに乱暴するなっ!』

    父親『ち、違うんだ……』

    『殴るなら俺を殴れっ。それで気が済むなら、我慢するからっ!』

    父親『……あ、ああ……』

    『母さん……母さん……』

    母親『……う……うぅ……』

    『もう大丈夫だから……大丈夫だからさ』

    母親『……うぅ……ああ……うあああ……』

    『うん……僕が、母さんを守るよ……』

    父親『…………』

    父親『……俺は』

    336 = 293 :

    父親『な、なんてことを……』

    父親『………ああ』

    父親『…………』

    父親『……手が震える』

    父親『……駄目だ……』

    父親『……もう……』

    父親『俺は……』

    父親『…………』

    337 = 330 :

    親爺

    339 = 242 :

    一気に来るなぁ

    340 = 237 :

    いい感じに進んできたな

    保守

    342 = 293 :

    ……………。
    ………。

    「…………」

    ……ン……ン。

    「…………」

    コンコンっ!

    「あっ……」

    ……ガチャ。

    「……お兄ちゃん?」

    「な、何だ……?」

    「結構、扉をノックしたんですよ」

    「あ、ああ……気づかなかったみたいだ……」

    343 = 293 :

    「その、大丈夫……?」

    「……何がだ?」

    「顔、真っ青です……」

    「……え」

    「体調が悪いなら、また明日にしますよ?」

    「いや、いいんだ……」

    「で、でも……」

    「ほら、入って入って」

    「……お兄ちゃんがそう言うなら」

    「よし」

    「でも……ちょっとだけ、時間くれ」

    「はい……」

    344 = 293 :

    「…………」

    「…………」

    「……ふぅー……」

    「お兄ちゃん……?」

    「いや、少し嫌な記憶を思い出してな」

    「嫌な記憶?」

    「まぁ、なんていうか……」

    「思い出したくない過去って、誰にも一つや二つあるだろ?」

    「……その」

    「ん?」

    「わたしは昔のこと覚えてないので……」

    「……あっ、ごめん……」

    345 = 293 :

    「いや、いいんです」

    「くそっ……何やってんだ俺」

    「余り気にしないで下さいね?」

    「本当に悪い……まだ頭がうまく切り替わってないみたいだ」

    「……あの──」

    「聞いてもいいですか?」

    「ん? 今、思い出した過去をか?」

    「そうじゃなくて……その」

    「うん」

    「昔の記憶があるって、どんな感じなんですか?」

    「……それは」

    「やっぱり、唐突にぱっと思い浮かんだりするんですか?」

    「……たまにだけどね」

    346 = 293 :

    「それは楽しかった記憶も?」

    「もちろんだ……というより」

    「嫌な記憶を思い出すなんてことはめったにない」

    「でも、時にはある……」

    「……稀にだけど」

    「そういう時、お兄ちゃんはどうしてます?」

    「どうするっていうのは?」

    「辛くて苦しくて、とっても悲しいような、嫌な思い出が沸き起こった時」

    「お兄ちゃんは、それをどうやって対処してるんですか?」

    「……そうだな」

    「…………」

    347 = 293 :

    「受け入れる」

    「『受け入れる』?」

    「……どう足掻いたって、過去は変えられない」

    「……はい」

    「どんなにやるせなくて、なんとかしたくても」

    「過ぎてしまった日々は、もうやり直すことは出来ないんだ」

    「…………」

    「だから、受け入れる」

    「前へと進む」

    「……ん」

    「そうしないといけない」

    「いや、そうするしか方法がない」

    348 = 293 :

    「……そうですか」

    「俺もさ、昔やったヘマを今でも思い出す」

    「何で、あの時、ああしてなかったんだろうって」

    「悔しくて、でも、どうしようもなくて」

    「…………」

    「苦しいし、もがき続けてしまうこともあるよ」

    「でも、それに意味はないんだ」

    「本当に?」

    「うん」

    「後悔をし続けても、その先には何もない」

    「終わり無き道が永遠と続いているだけなんだ」

    「…………」

    「だからこそ、時には振り返ってしまうかもしれないけど」

    「ひたすらに、必死に、前へと足を進める」

    349 = 293 :

    「結局、それが一番なんだ」

    「……凄いですね」

    「……そう思うか?」

    「はい、凄く強いと思います」

    「……強くなんかないよ」

    「でも、そうやって過去を乗り越えられるって」

    「そう容易くできない気がするんです」

    「……俺は、ただ」

    「『今』に必死なんだと思う」

    「……今……」

    「だから、後ろを振り返る余裕がないだけなんだ」

    「強くなんかないし、凄いわけでもない」

    「ただ、がむしゃらに生きてるだけ」

    350 = 293 :

    「……それでも」

    「わたしは、お兄ちゃんを立派だと思いますよ」

    「…………」

    「いつか、わたしも」

    「……ん?」

    「これから、仮に記憶が戻ったとしても」

    「そうやって、前へと進むような強い意志があるといいです」

    「…………」

    「わたしが記憶を失った理由。自らで、自分の命を断とうと思った訳」

    「お兄ちゃんは事情を知っていると思いますが」

    「それを、わたしは何ひとつ知りません」

    「……うん」

    「相当、辛い過去なんだと思います」


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