元スレ妹「兄さんって呼ばせて下さい」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
101 = 90 :
まだ下準備、仕込みが終わってないんだろ察せよ
102 = 1 :
──病院
妹「ちょっと質問してもいいですか?」
男「ん? なに?」
妹「お兄ちゃんは……お父さんの会社で働いてるんですよね?」
男「あ、うん」
妹「いつぐらいから?」
男「そうだな……ぶっちゃけの話でもいいか?」
妹「はい」
男「実は、今年に入ってからなんだ」
妹「ええと……じゃあ、その前は」
男「んと……まあ、フリーターみたいなことをしてた」
妹「じゃあ、どうしてまた急に?」
男「やっぱり、今のままじゃ駄目かなって」
103 = 1 :
男「長い目で、将来のことも考えて……でも、そうだな」
男「自分の限界を知ったというか、ある意味、逃げてきたのかもしれない」
男「うん……そんなところだ」
妹「その実は……」
男「ん?」
妹「昨日、初めてお母さんに会ったんです」
男「あ、うん」
妹「その、今までは記憶を失ってるわたしと会う覚悟がなくて」
妹「でも、勇気を振り絞って会いにきたって、そう正直に話してくれました」
男「……そうか」
妹「嬉しかったです」
妹「優しそうな方で、どことなく顔立ちも自分と似てて」
104 = 1 :
妹「本当にわたしはこの方の娘なんだなって……そう実感できました」
男「それは良かった」
妹「それで、その時にこれ……」
男「なんだろ? ええと……写真?」
妹「はい」
男「映ってるのはお前だな。大学の入学式か?」
妹「そうです。お兄ちゃんも覚えてます?」
男「……ああ」
妹「お母さんは、他にもいっぱい思い出の写真を持ってきてくれたんですけど」
妹「これだけは唯一、ちょっと違って」
男「どういうことだ?」
105 = 1 :
妹「……お兄ちゃんが」
男「俺が?」
妹「撮ってくれたんですよね」
男「…………」
妹「お母さんが言ってました」
妹「『お兄ちゃんは写真家を目指してた』って」
男「……それは」
妹「そう言った後、お母さんは……」
妹「少し、まずいこと言ってしまったような顔をしてました」
男「……そうか」
妹「目指してたんですよね、写真家」
男「うん」
妹「でも、どうしてやめちゃったんですか……?」
男「…………」
106 = 1 :
妹「すみません、人の傷口をえぐるみたいな真似をして」
妹「でも、その話を聞いた時に何か胸の奥で、ひっかかるものがあって」
妹「きっとそれは、自分の記憶を取り戻すきっかけになるんじゃないかなって」
妹「本当に、ごめんなさい……でも、無理なら」
男「……そうだな」
妹「お兄ちゃん?」
男「俺は小さい頃から、写真の魅力に取り付かれてた」
男「人の一瞬、物事の一瞬」
男「その場面で一番最高な瞬間を、写真という形で後世に残す」
男「そんな仕事をする写真家に、憧れていたんだ」
……………。
………。
107 :
俺だったらここで少し動揺するわ
支援
111 :
もう書き溜め終わったんすか…
112 = 1 :
親友『…………』
男『あーつまんねーな……』
親友『そういえば、もうすぐ小学生卒業だな』
男『うん、あっという間だった』
親友『中学生かー』
男『正直、心配だよな』
親友『何が?』
男『ほら、お前の妹』
親友『ああ……』
男『俺たちがいなくなっても、ちゃんとやってけるかな』
親友『大丈夫だろ? 見てくれはいい方だしさ』
113 = 1 :
男『どうすんだよ、逆に好きで意地悪するみたいな男子がいたら』
親友『はは、お前、そんなこと心配してんのか』
男『……ちょっとだけね』
親友『大丈夫。もし、そんなことがあったら』
男『どうする?』
親友『妹が必ず、俺たちに相談してくるはずだから』
男『つまり、その時に──』
男・親友『『そいつをボッコボッコにしてやろうっ!』』
男『ぷっ』
親友『くっ』
男・親友『『はははっ!』』
114 = 1 :
男『やっぱり、お前とは気が合うよっ』
親友『俺も今、同じこと考えてた』
男『このまま、二人で仲良くやっていければいいよな』
親友『それこそ、妹もいれて三人でな』
男『ああ……』
親友『なんだ? どうかしたか?』
男『いや、もしあいつが男の子だったらなって思ってさ』
親友『ああ、そしたらもっと楽しかっただろうな』
男『うん……余計なこと考えなくても済むし』
親友『……余計なこと?』
男『……察してくれ』
親友『まあ、もう少ししたら俺たちからは離れていくかもな』
115 = 1 :
男『四年違いか』
親友『そういうこと』
男『……で、さっきからお前、何見てんだ』
親友『これのこと?』
男『うん』
親友『いや、世界を旅してる写真家の本』
男『そんな本見て、楽しいか?』
親友『めっちゃ楽しい』
男『ふーん……それはよく分かんないわ、俺』
親友『すごいんだけどなぁ……』
116 = 1 :
──親友宅
女性「今日は、よく来てくださいました」
男「いえ、こちらこそ……」
男「本来なら、もっと早く、お伺いすべきでした」
女性「いいですよ。その辺の事情は聞いていますから」
男「申し訳ありません……」
女性「どうぞ、線香をあげていって下さい」
女性「きっと、あの子も」
女性「長いこと、あなたに会いたがっていたはずですから」
男「…………」
117 :
既に感動の予感
涙目で支援
118 = 1 :
女性「久しぶりに親友同士が対面するんですね」
女性「きっと話したいこと、考えたいことがあると思いますので」
女性「私はリビングの方で待っております」
女性「全てが終わったら……そちらの方で、お話しましょうね」
男「ご配慮ありがとうございます」
女性「気を使わず、ゆっくりとなさっていって下さい」
女性「こうやって遺灰をまだお墓に入れないのも、あなたのためでしたので」
男「…………」
女性「では、また」
ガチャ……。
120 :
男「…………」
男「…………」
男「……っ」
男「……は、はは……」
男「久しぶりに会ったと思ったら……」
男「こんな小さな壷に入っちゃうって……」
男「……何してんだよ……お前」
男「どうしてこんなことに……なっちゃったんだよ……」
男「ああ……」
男「…………」
男「……昔のこと、お前は覚えてるか?」
男「確か、あれは俺たちが中学生だった頃」
121 = 120 :
男「漫画の巻頭グラビアにあるアイドルに俺が目を離せなくて」
男「そんで、お前にも共感して欲しくて見せたらさ」
男「いちいち、アイドルのポーズについての批判しまっくって」
男「そんなの誰も聞いてないって言うんだっ」
男「そんで、俺が言った」
男「『だったら、お前の言う最高のポーズはどれだよ』って」
男「そしたらお前、嬉しそうに鞄からどこぞの写真集持ち出してきてさ」
男「『このシーンはここが凄い』『このアングルはこの場面だから生きる』とかさ」
男「でも俺からすれば、その写真は全部、白黒だったから」
男「はっきり言って、微妙だったんだよ」
男「そしたら、そんな俺を見かねて、お前はこう言ったよな」
122 = 120 :
男「『なら、この本の中でお前が一番好きな写真はなんだ?』ってさ」
男「…………」
男「分かったよ、もちろん、分かってる」
男「本当、お前ってやつはさ……死んでもなお、厄介な奴だ……」
男「でも……今は無理なんだよ」
男「それよりも、大切なことがある」
男「お前なら、全て成し遂げろって言うと思うけど」
男「不器用な俺は、どうやったって器用にはできないんだ」
男「結局、何かを為すためには、何かを犠牲にしなきゃいけない」
123 = 120 :
男「だから、分かってくれ」
男「お前の気持ちは分かる……でも、それでも」
男「本当に……ごめんな……」
男「……要するに、俺は──」
男「敗者になっちまったんだよ……」
126 = 120 :
──病院
男「……結局、あいつの形見を渡されちゃったな」
男「カメラ……」
男「……まだこれ、使ってたのか……」
男「…………」
男「よし、切り替えないと」
男「ふー……」
コンコン。
ガラガラ……。
妹「あっ、お兄ちゃん」
男「よっ!」
妹「今日も、来てくれたんですね」
127 = 120 :
男「そりゃ、愛しの妹のためだからな」
妹「ふふ。今日は一段と機嫌がいいみたい」
妹「何か、良いことでもありました?」
男「そうだなぁ……」
男「……久しぶりに、大切な人に会えたかな」
妹「……大切な人、ですか」
男「深い意味はないよ。ただ、懐かしかったんだ」
妹「懐かしい?」
男「今まで、無駄に逃げ回ってたんだけど」
男「会ってみると意外と気楽に話ができた」
妹「……いいですね、そういうの」
男「もっと早く、それこそな……」
128 = 120 :
男「色々、話さなきゃいけないことがあったはずなんだ」
男「はは。俺は、やっぱり、どうしても駄目人間だよ」
妹「でも、お兄ちゃん」
男「ん?」
妹「これからがあるじゃないですか」
男「…………」
妹「やっと、その人と仲直りできたのなら」
妹「これからの関係を大切に。幾ら、過去を悔やんでも仕方ないんですから」
男「……ああ」
妹「今度、また会ったら、色々話し合ってくださいね」
妹「そうすれば、今までのわだかまりもきっと……」
妹「いつかは時が解決してくれるはずですから」
男「…………」
129 = 120 :
男「……そう、だな」
男「また会ってみるよ」
妹「はいっ」
男「それこそ、かなり時間がかかっちゃうかもしれないけど」
男「いつか、きっと。また、会える日が来るはずだからさ」
妹「……?」
男「気付かせてくれて、ありがとう」
妹「……あの」
男「ん?」
妹「わたし、もしかして、見当違いなこと言っちゃいました?」
男「そんなことないって」
130 = 120 :
妹「……でも」
男「それよりっ」
妹「え?」
男「ほら、これ」
妹「……あっ、カメラ?」
男「今から撮るぞ? 最高の表情してくれよ?」
妹「え、ええとっ、そんな急に……っ」
男「ハイチーズ」
妹「あっ……」
……………。
………。
131 :
兄さん…
132 :
本日の志貴スレ
133 :
おもしろい
134 :
いもスレは文化知産
135 :
>>1は脚本家か
136 :
三点リーダー見るに普段から書いてるっぽいな
138 :
こういう雰囲気は結構好きだ
139 :
ほっほー
140 :
おいまだか
141 :
妹がシャムワオで体拭いたらミイラになった
144 :
もう朝か
145 :
最後に保守して寝る
後は任せた
149 :
むう
みんなの評価 : ★★★×4
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