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    元スレ妹「温もりがほしい笑いかけてほしい受け入れてほしい。寂しい。」

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    551 :

    さて何回かな

    552 :

    おおおおおおん

    554 :

    おもすれ

    555 :

     どれくらい、待ったろう。
     怖くて時計は見ていない。

     嫌な想像が働いたのは、一度や二度なんてものじゃない。
     事故や事件の可能性が頭に浮かんでは消え、消えては浮かんだ。


     永遠とも思える時間。
     過ぎる感覚の無い時間。


     このまま朝が来ずに、私は夜に飲まれていくかもしれない。
     そんな錯覚さえ覚えた。

     その度、兄さんの布団を握り締めて、心の中で何度も祈り続けた。

     ……なんてことはない。
     ずっと、待ってきたんだ。耐えてきたんだ。
     大丈夫だよ、兄さん。私、がんばれるよ。

     でも、ほんの少し心配だから……はやく、帰ってきてね―――

     


     ―――まどろみの中に在って、ドアが開く音を聞いた。

     その数秒後、私はやっと、本物の温もりを感じる事が出来た。

    556 :

    >>555

    >どれくらい、待ったろう。

    まったくだ

    557 = 555 :

     服を、脱いで、いく。

     ゆっくりと、丁寧に、厳かに。

     体を覆う布が消えるたび、鼓動が早く強くなっていく。


     兄さんの目の前で服を脱いだ事などたくさんあった。
     けれど、今は目的が違う。
     私も兄さんも、お互いの求めに応えるようにして、生まれた時の姿に帰ろうとしていた。

     ……あの、無邪気だった頃に、無意識の内に帰ろうとしていた。
     せめて、姿だけでも。

    「綺麗だ」

    「今さら気づいた?」

    「いや。ずっと、言いたかった」

    「……ぅ」

     それから兄さんは、私の体中にキスをし始めた。
     兄さんの熱いその部分に触れるたび、私の皮膚が悦んでいく。

    「待たせて、ごめん」

     ごめんな、と何度も謝りながら、兄さんはやさしく口付けをしていった。

    559 :

    しえーん

    560 = 555 :

     そうしているうちに、私の体はすっかりとろけてしまった。
     恥ずかしさと喜びとが、何度も交互にやってきて、もうどっちがどっちなのか分からなくなった時間だった。

     ぼんやりとした意識。
     なぜか、友さんの事が頭に浮かんだ。

     ……友さん、今、何してる?
     
     私は……

    「にぃ、さん」

    「ん?」

    「わたし、からも……」

     私は初めて、自分から兄さんにキスをした。
     求めるキスも、気持ちがよかった。

     あぁ……はやく、兄さんだけしか考えられないようにしてほしい。

    「……き、て」

     そうして、私は初めて兄さんに傷つけられた。

    562 = 555 :

     お腹の中に、不思議な感覚が残っている。
     傷つけられて、穿たれたにしては、心地がいい。
     
     ……ここに、兄さんの想いが残ってるんだ。

    「ん……」

     愛しくなって、兄さんを抱きしめる手に力を入れた。
     温かい。
     もう、兄さんをずっと待っていた時の様な、寒さはない。
     この温かさが幸せの象徴のようにも思える。

    「ねぇ、兄さん」
    「さっき、欲しいもの、言っていいっていったよね?」

    「うん。何か思いついた?」

    「子供」
    「……なんちゃって」

    563 = 555 :

    「なんちゃって?」

    「ごめん、冗談じゃなくて、冗談じゃないっていうか……」

    「俺は、欲しいよ」
    「妹と俺の子供」

    「……」

     昼間に夢想した事を思い出す。
     私と、子供と、その隣にいる兄さん。
     あの時は夢物語に近い想像だった。

     それが今は、とてもリアルを帯びている。

    「今したのって、さ」
    「そういう事だろ?」

    「……うん」

     そう。
     だから、私も兄さんを求めた。
     私と兄さんをつなぐものを手に入れたかった。

    564 = 555 :

    「兄さんに、欲しいものを言っていい、って言われたとき」
    「私、そういう事しか思い浮かばなかった」
    「たぶん、これからも、そんなに欲しいものは出てこないと思う」

    「そうか……」

    「もちろん、本当に必要なものは遠慮しないで言おうと思うよ」
    「でも、そうじゃなくて」
    「本当の本当に必要なのは……私にとって、『もの』じゃない様な気がして」

     ただ、それが具体的になんなのか、漠然としていてうまくつかめない。
     けれど、ひとつだけ分かることがある。

     独りでいたくない。

     もう、無限の夜を独りで待つのは、きっと耐えられないから。

    「……今日ね、母さんが、言ってた」

    「会えたんだ。……なんて?」

    「兄さんは、不器用だって」

    「なんだそれ」

    565 = 555 :

    「決めるまでに、迷うんだって」

    「……」

    「私の事も、ずっと迷っててくれたよね」

    「……その分、待たせて、つらい思いをさせちまった」

    「だから、母さんこうも言ってた。やり通すことが大事なんだって」

    「やり通す……」

    「私は」
    「兄さんを選んだ事、後悔しないよ」

     友さんという存在を捨てた。
     兄さんを手に入れるために。
     これは、悲しい事だけど、必要なこと。
     だから、私はやり通す。

    「俺は、死ぬまで妹の側にいるよ」
    「約束だ」

     ……やり通すんだ。
     

    566 = 555 :

      次の日。

    「じゃあ、行ってくる」

    「うん」

     いつもこの時、頭を撫でてくれる。
     でも、今日は違った。

    「……んっ」

     唇が、兄さんの柔らかい唇に優しく触れて、熱を帯びた。
     まだ、慣れない。
     そのうち、キスひとつするにもドキドキしない日がくるのかな。

    「妹も学校、がんばって」

    「うん」
     

     その日。

     私は学校へ行かなかった。

    567 = 559 :

    しえーん

    568 = 555 :

     制服を着て、お弁当を持って、かばんを下げて。

    「いってきます」

     寝ている母に向かって、小さく挨拶。
     扉を開けて、出発。

     いつもの朝、いつもの風景。

     ……ただ、今日は目的地が違った。

     歩いて向かうのは、学校ではない。
     
     駅の方角。

    569 :

    このssすきだ

    570 = 555 :

     駅前の公園のベンチ。
     そこに私は腰掛けた。

     小さな公園。
     茂みに囲まれている。

     その、茂みの向こう。
     公園の対面に、コンビニがある。

     レジの方を見ると、見覚えのある顔がいた。

    「……兄さん」

     遠くて、よく見えない。
     けれど、近くに行ったら兄さんに見つかってしまう。

     でも、このままで、よかった。

    571 = 559 :

    支援!!昔のと比べると色々上手くなったなと思う

    572 = 555 :

     兄さんがそこにいると分かっているだけで、よかった。
     それだけで、十分だった。

    「……」

     じっと、兄さんの動きを見る。
     
     レジが混んできた。
     大変そうだな。

     あぁ……でも、兄さん笑ってる。
     あの笑い方、見たことないな。
     接客用のスマイルかな。
     あの笑顔で、勘違いする女の人とかいなのかな。

     私だったら、一目惚れしちゃうな。
     毎日通っちゃうな、このコンビニ。

     あ……謝ってる。
     お客さんに怒られたのかな。
     朝だもんね。イライラしてるお客さん、多いって言ってたもんね。
     
     ……えらいなぁ、兄さん。

    573 = 555 :

     ぐー。

     ……あれ。

    「お腹の音かな」

     ぐー。

    「お腹の音だ」

     時計を見ると、もうすぐ1時になるところだった。
     学校だったら、とっくに昼休みが始まっている。

    「やっぱり、ご飯をいつも食べてる時間に、お腹が空くんだなぁ」

     カバンの中から、お弁当を取り出した。
     昨日の夜はご飯作らなかったから、朝の残り物だけ詰めた。
     卵焼きとか、焼き魚とか。

    「いただきます」

    574 = 559 :

    しえーん

    575 :

    なんてええ兄妹なんや・・・

    576 = 555 :

    「今日は、シンプルなんだね」

    「え……」

     そばから、声がした。
     友さんだった。

    「座るね」

     友さんはベンチの私の隣に座った。
     私は返事もしていないのに。

    「……」

     無視して、お弁当を口に入れていく。
     ……味が、しない。

    「ここから、よく見えるね」
    「妹のお兄さん」

    「っ?」

    577 = 559 :

    しえーん

    578 = 555 :

    「なんで、って顔してるね」

    「……」

     意味が分からない。
     友さんに、兄さんの事を紹介した覚えが無い。

     そもそも、なんで友さんが、ここに。

     今日は学校が普通にある日だったはずだ。

    「私もお弁当、食べようかな」

     友さんは、カバンの中からお弁当を取り出して、包みを広げた。

     ……あれ。
     いつもの友さんのお弁当の中身は、一見小奇麗だけど、冷凍食品みたいなものが多かった。
     けれど、今日のはお弁当は、彩りが悪いし、おかずの包みもろくに出来てない。

    「ふふ、ひどいでしょ」
    「……私もね、お弁当作って見たんだ」

    579 = 559 :

    しえーん

    580 = 555 :

    「さ、食べよ?」

     そう言って、友さんは自分のお弁当を口に入れていく。
     
     ……おかしい。こんなの。
     これじゃ、いつもと同じ昼休み。

    「なんなの……?」
    「どういうつもり?」

    「妹さんと、お弁当が食べたかったの」

    「もう、関わらないで、って言った」

    「私は頷いてない」

    「……」

     屁理屈だ。
     私が、あの言葉を言うのがどれだけ大変だったか。

    「関わらないで」
    「……もう、会いたくない」

    「……」

    581 = 555 :

    「昨日、ね」
    「お兄さんに、会ったの」

    「……いつ」
     
     ……昨日。
     兄さんの、帰りが遅かった。
     理由は、まだ、聞いてない。
     はぐらかされた。
     もしかしたら、友さんが関わってる……?

    「気になる?」

    「はやく答えてよ!」

    「……そんなに、私の事、嫌い?」

    「兄さんに何したの?」

    「お兄さんの事、好きなんだね」

    「……っ」

    583 = 559 :

    しえーん

    586 = 549 :

    あとどれくらいで終わるんだ?

    589 = 556 :

    また中途半端になるのか?

    590 :

    落ちる前に終わってくれよ

    591 = 555 :

    「妹さんを探しに行ったの。あれから」
    「前に、うちに来たとき、窓から指さしてくれたでしょ?」
    「その方向だけを頼りに、がむしゃらにさ」
    「見つかりっこないのにね……」

    「……」

    「……夜になって。それでもムキになって探してた」
    「そしたら、怖い人たちに襲われちゃって」
    「お兄さんにたすけられた」

     なるほど。
     それで兄さんは帰ってくるのが遅かったんだ。
     
     友さんを、守るために。

    「友さんなんか」

    「友さんなんか、居なければよかった」

    「友さんとなんか、会わなきゃよかった……!」

    592 = 555 :

    「……ほんと?」

    「なんで、私と兄さんの、邪魔するのっ!?」
    「友さんと居るとっ、私、苦しい思いばっかりする……っ」

     友さんといることで、ずっと兄さんへの後ろめたい気持ちに苛まれてきた。
     そんな友さんが、私の決意を邪魔しようとしている。
     許せない。
     昨日、あんなに苦しい思いをした。
     そのすべてが、友さんのせい。

    「ごめん。……そんなつもりは、なかったんだ」
    「純粋に、妹さんと仲良くなれるのが、嬉しくて……」

     分かってる。
     私の独りよがりだって。
     ……でも、それでも。
     私はもう決めたから。選んだから。

     兄さんを。

    「もう何も言わないでよ……っ!」
    「はやく、居なくなって……お願い」

    593 = 555 :

    「うん……でも、学校は、来てほしい」

    「……」

     友さんに、見抜かれていた。
     私はもう、学校には行くつもりはなかった。
     兄さんと一緒に居ることを選んだ今、もう学校で勉強する意味も見出せない。
     早くどこかで働いて、お金を貯めて、いつか兄さんと家庭を築くんだ。
     
     そしてなにより。
     ……学校には、友さんが居る。

    「行かないよ」
    「行ける、はず、ない……っ」

     きっと、友さんと会う度、私は苦しむ。
     決意が、揺らぐ。

     だってそれほど、私にとって友さんは、かけがえの無い人だから……

    「そ、っか……」 

    595 = 555 :

    「朝、学校に居ないのが分かって」
    「もかして、って思って」
    「昨日お兄さんに教えてもらったコンビニに来てみた」
    「でも……おせっかいだったみたい。

    「もう、妹さんにとって」
    「私は、いらないんだね」

     最後の一言は、悲しい声だった。
     私が拒否の言葉を何度発しても、友さんはあきらめなかった。
     それなのに……

    「じゃあ、これが、一緒に食べる最後のお昼かな」

    「う、……、ぁ、ぁ」

     苦しい。
     切ない。
     ……だから、会いたくなかった。
     
     涙が出てきた。
     ポタポタ、お弁当の上に粒が落ちていく。
     これじゃあ、お別れが嫌だって言ってるみたいじゃないか。

    「っ……うっ、……ぐすっ」

    596 = 555 :

    「ごめんっ、……ごめん、なさっ……」
    「私、……友さんのこと、」
    「すきっ……大好きっ」
    「でも、兄さんが、いる、からっ……だからぁっ……!」

    「……大丈夫、分かってる」
    「分かってる、から」

    「ずっと、うらやまし、かった」
    「私と、あまりにも、違って、……全部、ちがってっ」
    「友さんはっ、私が、もってないもの、全部、持ってて」

    「一緒にいると……私も、友さんが見ている景色、見ていられるみたい、でっ」
    「すごく、たのしかっ、たっ!」

    「でも、やっぱり、違うよ……私と、友さん……違う、よぉっ」

     忘れない。
     奢ってもらったクレープの事。
     一緒に見た、友さんの部屋の窓からの景色。
     お弁当を食べた、昼休みの時間。

     全部、私ひとりじゃ手に入れられないものばかりだった。

    「ありがと……、いっぱい、いっぱい、いっぱいくれて、ありがとう……!」

    597 = 555 :

    「うれしい……うれしい、よ」
    「ありがと……」

     友さんも、静かに涙を流した。
     二人して、ベンチに座って。
     お弁当にも手をつけないで。
     最後の時間を、慈しんでいる。

    「……朝、自分で、お弁当作った」
    「それで、分かった」
    「やっぱり、妹さんって凄いんだな、って」

    「……ぇ」

    「私も、妹さん、……うらやましかったよ」
    「こんな事いうと、見下してるみたいに思われるかもしれないけど」
    「私は、ずっと……自分が幸せなことに疑問を持ってて」
    「でも、疑問なだけで、戦ってなかった」

    「……私と同い年の妹さんは、もうずっと前から運命みたいなものと戦ってた」
    「だから、ただ……私も、一緒に……」
    「でも、もう」

    「……もう」

    598 = 555 :

     世界は、多くの理不尽が、当然の様に存在する。
     ひとつを選べば、もうひとつが手に入らない。
     そんなことは、幾らだって起こっている。

     ……私たちは、そんな理不尽の犠牲者なのかもしれない。

    「元気で、ね」

    「……妹さんも」

     いつか、そんな理不尽の無い世界が、来る日が。
     ……いつか。

    「お弁当、最後に……食べてこうよ」
    「交換、しない?」

    「いいの?」
    「……いただきます」

     お弁当には、私と友さん、それぞれの世界が詰まってる。
     そして私たちは、最後にお互いの世界を噛みしめる。
     
     決して上手とは言えない、でも、精一杯作った、友さんのお弁当。

     こんなお弁当を作る女の子に、……私はなりたかった。



     第3章 おわり

    599 = 549 :

    うむ、やはり同性愛はキモイな

    ところで第何章まであるの?

    600 :

    >>599
    思っても口に出さんでよろしい


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