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    元スレ妹「温もりがほしい笑いかけてほしい受け入れてほしい。寂しい。」

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    タグ : - 次スレ→1297841274 + - ちぢれ + - + - 本編は648まで + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    451 :

    こんなスレを支援・保守してる奴が居るから
    俺が就職できないんだ

    452 = 442 :

    「ただいま」

     返事がない。
     まだ兄さんは帰っていないみたいだ。

    「……は、ぅ」

     玄関のドアを閉めると、心と体が緩んで、ため息が出た。
     この瞬間が、私にとっての一日の終わりな気がする。

    「兄さん、早く帰ってこないかな……」

     家にあがって、朝干した洗濯物を取り込んだ。
     それからカーテンを閉めて、制服を脱いで部屋着に着替える。

    「……やっぱり、最近ちょっと苦しいな」

     怖いから計っていないけど、ここしばらく胸がとても窮屈に感じる。
     そういえば一年以上新しい下着を買っていない。

    「なんで、大きくなっちゃうかなあ」

     兄さんは大きいほうが好きだろうか。
     前に何回かふざけて聞いたことがあったけど、一度も答えてくれなかった。
     ブラが合っていないと形が崩れると聞いたことがある。
     大きさはともかく、兄が形の崩れた乳房を好き……なんてことはないよね。 

    453 = 442 :

    「昨日のも美味しかったけど、今日の煮物もうまいな」

    「ほんと? かぼちゃ、頑張って切ったんだ」

     夕食の時間。
     私は、この時間が一日の中で一番好きかもしれない。
     頑張って作った料理を、兄さんが食べてくれる。褒めてくれる。
     朝も食べてくれるけど、お母さんを起こしちゃうからあまり話せないし。

    「最近、いつにも増して料理頑張ってないか?」

    「え? そ、そう……かな」

    「気のせいかな。なんかお弁当も前より見栄えとか気にする様になった気がする」

    「料理って味より見栄え、って言う事でしょ?」
    「出来が悪くても、見た目がよければなんとなく美味しく感じたりするって気付いたから」

    「そっか」

    「う、うん」

    454 = 442 :

     変だな。
     これじゃあ、私が隠し事をしているみたいだ。

     うぅん、実際、隠し事してるんだった。
     ……友さんのこと。
     友さんと一緒に居るようになって、もう一ヶ月ぐらいになってしまう。
     きっと兄さんは、友さんの事を話しても嫌な顔なんかしないだろう。
     むしろ、私に友達が出来たと笑顔で喜んでくれると思う。

     でも、違う。
     そういう問題じゃない。
     
     私たちはお互いに、唯一で最大の理解者じゃないと、駄目なんだ。

    「……」

    「大丈夫か?」

    「えっ。う、うん。ちょっと考え事してて」

    「……何か、悩みでもあるのか?」

    「悩みとか、そういうんじゃないから、大丈夫。大丈夫」

    「そうか……」

     あ……しまった。
     これじゃあブラがきつくなった事が話せないよ……

    456 = 442 :

     ご飯を食べてから寝るまでの間に、少しだけ授業の復習をした。
     今日は、古典。
     清少納言の書いた枕草子が今やっている範囲だ。
     教科書を使わずに、古典の先生が枕草子から好きなところを抜粋したプリントを使っている。

    「……あ、ここ、授業中に私が読んだとこ」

     『御かたがた公達上人など、御前に人多く侍へば、廂の柱によりかかりて、
     女房と物語してゐたるに、物をなげ賜はせたる。
     あけて見れば、「思ふべしやいなや、第一ならずばいかが」と問はせ給へり。』

    「……」

     枕草子の九十七段。
     清少納言と、清少納言が使えている藤原定子のやりとりだ。
     簡単に現代語訳すると、こうだった。

     藤原定子が高貴な方を回りに侍らせていたので、清少納言は柱に寄りかかって他の人と話をしていた。
     そんな定子の姿を眺めていた清少納言に向かって、定子が何かを投げた。
     その何かをあけてみると、こう書いてあった。
     「あなたを可愛がってもいい。でも、それが一番じゃなかったらどう思う?」

    457 :

    追いついた
    しえん

    458 = 442 :

    「……一番じゃなきゃ、やだよね」
    「私は、一番じゃないとやだな」

     千年も前の人が、私と同じ様な悩みを持っている事に、少し愛着がわいた。
     ただ、この語訳には、少し語弊がある気がする。

    「なんだか、これじゃあ藤原定子と清少納言が同性愛者みたい」

     現代語訳を書いたノートから、「あなたを」という部分を消しゴムで消した。

    「風呂、あいたよ」

     消し終わったところで、兄が部屋に入ってきた。

    「うん。ありがと」

    「もしかして、テスト近い?」

    「んー、まだ。ひと月くらい先かな」

    「だったら、早く風呂入って、寝ちゃいな。今からやってると体力もたないよ」

    「うん、……ありがと」

    459 = 442 :

    ちょっとご飯行ってきます。
    語訳に間違い発見伝
    「定子の姿を眺めていた」とか完全に脳内俺訳
    うん、ありがとorz

    462 = 417 :

    今日、最後の支援保守

    464 :

    「妹さんって、何カップ?」

    「え゛ぅっ」

     いつもの要にお昼を食べていると、友さんがいきなり変な事を聞いてきた。
     思わずオカシイ声がでちゃったじゃない……。

    「ぷはっ、変な声ー」

    「と、友さんこそ。突然……」

    「ごめんごめん。ふふっ」
    「ほら……思春期だから、そういうの気になる年頃なんだ」

     いまいち理由になってないのは、きっと気のせいじゃない。

    「……セクハラだよぅ」

    「女の子同士にセクハラはないんだよぉ」

    「そんな事言っても、教えない」

    「けちー」

    465 :

    ネカフェ難民なのか?

    466 :

    私怨

    467 = 464 :

    「あのね、私の予想ではね、妹さんって結構大きいよね?」
    「足も腰も顔も細いのに、出るとこでてる、みたいな」

    「……」

     しつこいので、もう無視することにした。

    「セーラー服の妹さんも可愛いけど、おしゃれしてるとこ見てみたいな」
    「それで横浜駅にでも行ってみなよ。きっといっぱいナンパされるよ」

    「……」

    「こう、胸が目立つ様な格好して……くびれのラインも見せ付けちゃって」
    「もちろん直視できないくらい眩しい生足で……」
    「でもやっぱり妹さんが人目にさらされるのはやだなぁ」

    「……」

    「ねぇ、……もしかして、ブラのサイズ合って……ない?」

    「……」
    「……えっ?」

    468 :

    追いついた
    スレを見てるとエロ無いほうが良いと思う俺は少数派のようだな

    469 = 464 :

    「ごめん、体育の時まじまじと見ちゃった」

    「……えー」

    「げ、幻滅しないで欲しいよ。胸がキツそうだな、って思っただけなんだから」

    「う、うん……」

     しょうがないなぁ。
     この際、疑わしきは罰せずにしてあげよう。

    「実は、ちょっと、今も苦しい」

    「だよ、ね……」
    「ほかのサイズは持ってないの?」

    「うん。なんだか急に苦しくなったから」

    「それじゃあ、まだまだ膨らみそうだね」

    「なんだか今日の友さん親父くさい……」

    「て、照れ隠しだよっ!」
    「真面目に……こういうの聞いたりとか、なんて、ちょっと私には難易度高い」 

    470 :

    兄と妹のイチャイチャが足りない・・・

    471 :

    はげど

    472 = 464 :

    「ふぅん」

    「ニヤニヤしないでよぅ」

    「そうじゃないよ。……ちょっと、うれしくて」
    「見ててくれてるんだと思って」

    「え? ほんと?」

     う……。
     柄にもない事を言って、自分も恥ずかしくなってきた。
     
    「や、やっぱり、うそ」

    「聞いちゃったよ。聞いちゃったー」

     こういう事になるんだったら、前みたいに黙ってれば良かった。
     そうすれば、余計な事も恥ずかしい事も言わないで済むのに。
     ……でも、友さんの前だと不思議と口が滑ってしまう。
     
    「じゃあ、さ。今度一緒に、下着見にに行こうよ」

    「えっと。見る、だけなら……」

    473 :

    474 :

    ほっしゅ

    476 :

    なんかちぢれに昔の勢いがない気がする

    477 = 464 :

    「そ、っか……」

    「うん」

    「……」

    「……」

     そこで、なぜか私も友さんも、黙ってしまった。
     お弁当を食べる手も、二人とも止まってしまった。
     
     ……今日も、屋上に来ている。
     前に来てから、ここは私のお気に入りの場所になっていた。
     バカと猿は高いところが好き、っていうけれど。
     私って単純だから。

    「くやしい」

     友さんが、小声でつぶやいた。
     きっと私にではなく、自分に言っている。
     つい口にでてしまったんだろう。

    「……ごめん」

    「あ、やだ……。ごめん。ごめんは、私の……方だよ」
    「はは。空気、読めって感じ」

    478 :

    シエン
    終盤の兄妹イチャイチャに期待

    479 = 464 :

    「そんなこと……」

     そんなこと、ない。
     友さんはいつも、私に良くしようとしてくれてる。
     不思議な位、私の事を思ってくれてる。
     そんな友さんに謝らせる私が、悪いんだ。

    「理不尽、ばっかり」
    「こんな世界、なんで、あるんだろ」

     友さんが、遠くを見てそう言った。
     そうして、ゆっくり立ち上がると、屋上のフェンスへと歩いていった。
     私もそれに続く。

    「いつだって、私たちはかごの中」
    「自由だ、自由だ、って……ちっとも、そんなの感じない」
    「全部の理不尽と戦うには、結局はかごの外に出なきゃいけない」
    「でも、そんなことしたら、世界に見放されちゃうんだ」

     フェンスの網を、友さんは強く握る。
     ギギ、と金属のこすれる嫌な音がした。

    「……この学校にいるのも、あと、一年と、ちょっとだね」

    「……うん」

    480 = 464 :

    「あのね、妹さん」

    「……なに?」

    「あのね……」
    「……」
    「……」

     長い沈黙。
     でも、その間、友さんは口を開けたり閉じたりして、何か言いたげだった。
     私はそれを、じっくりと待った。

    「……なんでも、ない」

    「いいの? ほんと……?」

    「よくない」
    「でも、言いたく、ない」

    「そ、っか」

    「言いたくないけど、……言う」

    「……うん」

    482 = 464 :

     それまで見ていたフェンスの向こう側から、私に視線をうつしてから、友さんの口が動いた。

    「卒業したら、さ」
    「一緒に暮らしませんか」

     ……え?
     一緒に?
     友さん、と?

    「……どうい、う、こと?」

     言葉だけが頭を滑って、理解に行き着かない。
     想像が働かない。
     それくらい、友さんが言ってる事は私の予想を超えていて、唐突だった。
     
    「卒業したら家を出る、って言ってたの、覚えてる?」

    「……」

    「私、たぶん……ううん、絶対、妹さんの為なら、どんなことでも頑張れると思う」

    「私……わた、し……っ」

    「妹さんのために、生きたい」

    483 = 464 :

    「……よく、分からない」

    「急に変な事言ってるって、分かってる」
    「まだまだ、時間はあるし……」
    「ただ、私の今の気持ちを、伝えたかっただけだから」

    「どうして、友さんは……」
    「どうして、私なんかに、そんな、どうして」

     混乱していて、うまく言葉が紡げない。
     友さんの気持ちはうれしいはずなのに、……はずなのに。
     釈然としない、納得できない気持ちがどんどん沸き上がってくる。

    「私だって、教えて欲しいぐらいだよ!」
    「……どうして、こんなに妹さんに惹かれるのか」

     「惹かれる」。
     まるで、恋をしてる人が使う単語みたいだ。
     
    「私の家に、来てくれた時、あったよね」
    「あれから私、考えたんだ。ずっと」

    「妹さんと、友達以外の何かに、どうやったなれるかを」

    484 = 464 :

    「ずっとね、ずっと、考えた」
    「妹さんとはもうお別れした方がいいんじゃないかって」
    「何度考えたか分からないよ」

    「でも、妹さんと話して、仲良くなって、打ち解けていくうちに」
    「どんどん、妹さん、喋るようになってくれて」
    「妹さんとの壁が低くなっていくのが、すごく、うれしくって」
    「もっともっと、一緒にいたら、もっともっと、妹さんと私を遮るものがなくなっちゃうんじゃないかって」
    「そう、思えて」

    「あの時……私の家で、抱き合った時みたいに」
    「うぅん、それ以上に」
    「もっと、……もっと……妹さんを、近くに感じたくて」

    「要するに、そのっ……」
    「その……」
    「……」

    「好き、……なの」

    486 = 464 :

    「友さんは、おかしいよ」

    「……」

    「好きとか、そういうの、おかしいよ……」

    「ねぇ、好きな人居るって、前に言ってたよね?」

    「……」

    「まだ、妹さんが誰の事を想っているのか、知らない」
    「でも、こう言ってたよね」
    「生まれた時から一緒で、妹さんを受け入れてくれた人、って」

    「……だったら、変だよ」
    「ずっと一緒で、妹さんと受容しあってる人と居るのに」
    「どうして妹さんは、頑張ってるの?」
    「どうしてそんなに、縛られてるの?」
     
    「歯がゆいの……っ、妹さんを見てて、私ならっていつも思ってた」

    「私なら、……私がその、妹さんの『好きな人』と同じ距離にいたら」

    「もっと妹さんを幸せにしてみせる……!」

    487 :

    いいね、支援

    488 = 464 :

    「う、ぁ……」

    「うあああああああああああああ!!!」

     叫んだ。
     腕が上がって、振り下ろした。
     全力で。

    「―――っ!」

     煮えくり返って沸騰しきった何かをぶつけた。
     吹きこぼれたヤカンごと、叩き割った気分。
     その中身はぶちまけられただけで、決して消えない。

    「知らない癖に」
    「何も知らないくせに!」

    「ごめんっ、私はただ―――」

     返す手で、振り上げる。

    「―――っぅ!」

    「違うんだよ!!」
    「世界が……場所が……っ!」
    「知ったふうに……そんな……っ、勝手にっ!!」

    489 = 464 :

    「全部、幻想っ」
    「私に、友さんの勝手な私を重ねないで!」

    「……え」

    「……分かる、もんか……」
    「生まれてからずっと、窓から私を見下ろしてた友さんとなんか」
    「絶対に、暮らせない」

    「や、だ……うそ……やだぁ……っ」

     ボロボロ涙を流して、友さんが私に抱きついてくる。
     ずっと前に抱きしめてもらった時の温もりは、感じなかった。

    「やめてっ……離してっ!!」

    「離さない……絶対離さないっ!」
    「妹さんとこれっきりなんてやだっ、嫌だっ、いやだああっ!!」

    「いつかこうなってた! ずっとこうなるって分かってた」
    「友さんみたいに言わせてもらえば」
    「これも、ずっとずっと前から『用意されて』いたのっ!」

    491 = 464 :

    「ごめんっ、分からなくて、ごめんっ!」
    「妹さんの事何も知らないのに、独りよがりな事言って、ごめんっ!」
    「でも、だって、でもっ! 妹さん何も言ってくれないからっ」
    「私に話してくれないから……っ」
    「きっと、話せないような辛いことなんだろうって、だから、」

    「それが、幻想なのっ!!」

    「じゃあ話してよぉっ」
    「もっと知りたいの! 妹さんのこと、妹さんの、全部っ」

    「言っても分からないよ!」

    「それじゃ、何も進まない」
    「私たちのこのひと月は、何だったのっ?」
    「少しは妹さんに心を開いてもらってるって思ってたのは、自惚れだったの?」

    「知らないっ……知らないっっ!!」

     振り払って、突き飛ばす。
     友さんは地面に倒れこんだ。

    「……んっぅ」

    「はぁっ……はぁぁっ……」

    493 = 464 :

    「もう……」
    「私に、かかわら、ない、で」

     言った。
     言ってやった。
     ずっと堪えてきた言葉。
     何度も喉まで出掛かった言葉。
     今、言えた。

    「……ずっと、ずっと、疑問に思ってた」
    「私は、幸せすぎるって」

    「……」

    「海に水が流れ込んでいる間に、どこかの山で雨が降ってる様に」
    「誰かが幸せでいると、誰かが不幸になる」

    「私は……不幸じゃ、ないっ」

    「みんな、『用意された』世界で、生きてる」
    「でも、そんなの、おかしいって、思った」
    「疑問に、感じてた」

    「私は……わたし、はっ……」
    「妹さんと、いっしょに」
    「世界を作りたかったよ……!」

    494 = 464 :

     駆けてから気付いた。
     私の顔は、ぐちゃぐちゃに濡れていた。

     悲しいからなのか、よく分からない。

     ただ世界は、無慈悲で、理不尽で
     私に手を差し伸べてくれる人にさえ、拒絶を強いる。


     ……兄さん。

     …………兄さん!!

     今すぐ会いたい。

     会って、抱きしめて、抱きしめられて、そのまま、ぐちゃぐちゃにして欲しい。

     こんな私も、世界も、兄さんになら壊されたって構わない―――

    495 :

    おもすれ

    496 = 464 :

     教室へ荷物を取りにすら行かず、ただ夢中で走って、家についた。

    「兄さんっ!!」

     玄関を開けてすぐ叫んだ。

     ……返事はない。

    「兄さん……早く、帰ってきて……」

     玄関に、ペタリと座り込む。
     まだ、昼が過ぎたばかりだ。
     兄さんが帰ってくるまであと3時間はある。

    「……辛いよ」
    「……怖いよ」

     もう、迷わないよ……兄さん、だけだよ。
     だから、早く帰ってきて。

     一人で生きていたら埋まらないものを、早く兄さんで満たして欲しいよ。

    「兄さんの温もりが欲しい。優しく笑いかけて欲しい。私を受け入れて欲しい」
    「……兄さん」

    「寂しい、よぉ……」

    497 = 495 :

    しえーん

    498 :

    なんか変な気分

    499 = 464 :

     「ん……誰か、帰ってきたの?」

     奥の居間から、声が聞こえた。

    「え……」

    「……あら」

    「おかあ、さん」

     出てきたのは、お母さんだった。
     そうだ。
     もうすぐお母さんの、出勤の時間だ。

    「つらいこと、あった?」

     いつも、寝ている姿しか見れないお母さん。
     久しぶりに聞いたお母さんの声は、優しかった。

    「……あ」

     枯れかけていた涙が、また溢れてきた。
     こんなタイミングで……卑怯だよ、お母さん……。

    500 = 464 :

     近づいてきた母に、わっ、と抱きついた。
     たまらなくなって、声が出てしまう。

    「あぁ……う、ぁぁっ……っ、っ」

    「妹は、少し大きくなったと思ったけど」
    「甘えん坊なのは、変わらないね」

    「うん、……ごめんっ、でも……私っ、……わたし……っ」

    「普段甘えさせてあげれてないからね……」
    「こういう時に甘えてくれるのは、冥利に尽きるわ」

     そういって、お母さんはわたしの頭をなでてくれる。
     兄さんの手より、すこし、ふあふあしてると思った。

    「何があったか、話せる?」

    「大切な、人を……裏切っちゃった……」
    「辛く、当たっちゃった」
    「悲しませちゃった」
    「もう、元には……戻れないの……っ」

     不思議だった。
     私はお母さんの前で、すらすらと溜まったものを吐き出していった。


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