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    元スレ妹「温もりがほしい笑いかけてほしい受け入れてほしい。寂しい。」

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    351 = 282 :

    「あ、見て」

    「……?」

     友さんが指さした方向に、船がとまっていた。
     白くて、大きい船。

    「あれね、氷川丸。もうずっと昔の船なの」

    「昔……」

    「私のおじいちゃんよりも、年とってるんじゃないかな」
    「もう引退しててね。確か中を見学できたはずだよ」

     そんなに前からある船なんだ。
     船の事なんかぜんぜん知らない私にとって、今の船とどこが違うのか分からない。
     
    「入ってみる?」

     返事を待たずに、友さんは私の手をとって氷川丸に向かって歩き出した。
     ……やっぱり、友さんのペース。
     嫌じゃないけど。

    352 = 282 :

    「いいよ、私だすよ」

    「あ、……大丈夫、だから」

    「でも、せっかく来たんだし」

     船の中を見学するには入場料がいるみたいで、また友さんは奢ってくれようとしてくれた。
     気持ちはうれしいけど、……なんだろう、どうしても受け付けない。

     兄さんもよく私の好きなものを買ってくれようとする。
     兄さんが私の事を想って、お金を出そうとしてくれるって、分かってる。
     でも……そうじゃ、ないんだ。

    「……」

    「ご、ごめん。そうだよね」
    「私、ごめんね。妹さんの気持ちも考えず……」

     知らず知らずのうちに、不機嫌な顔をしてしまっていたらしい。
     謝らなくていいのに。
     私は、自分でも良く分かってない意地を張ってるだけだから。

    353 = 282 :

    「……うう、ん」

     私はそう言って、首を横に振った。
     ……もっとしっかり意思を伝えられたらいいのに。

    「私が誘ったから、さ……。妹さんに楽しんで欲しくて」

    「……うん」

    「でも、今度また来ようね。一緒に」

    「……」

     返事はかえさない。
     嫌、とは言えなかった。

    「私ね、こういう……昔からあるもの、好きなの」
    「妹さんは?」

    354 :

    「……どうだろ」

     友さんは歴史が好きなのかな。
     私はべつに嫌ってわけじゃない。
     歴史のテストは覚えたところがそのままでやすいから、楽でいいけど。

    「妹さんは、この世界が『用意されたもの』とか、思うことない?」

    「……?」

     友さんは、ちょっと変わった事を言う癖がある。
     私は友さんのこういう面が、嫌いじゃない。
     むしろ、好きかもしれない。
     テレビの話とか、アイドルの話なんかよりも、私にとってはよっぽど興味深いから。
     なんとなく感じていた日々の疑問に、友さんの言うことがぴったり当てはまる時だってある。

    「もし、私っていう意識を生かすために、歴史があったとしたら……」
    「ありえない事なんだけどね、考え方によっては、正しい気がするの」

    355 :

    妹×友っていうのもアリかもしれん

    356 :

    舞台は横浜か

    358 = 354 :

     ……なるほど。
     これまでの歴史が、友さん一人を生み出す為に『用意された』のだったとしたら。
     そういう仮説の話を、友さんは言っているのだ。
     確かにそれは誰にも証明や否定ができない。

     そして友さんは、歴史の末端にいる。
     「歴史の歯車が友さんを生み出した」とも、それは言い換えられるだろう。

    「だからね。私は生まれながらにして、歴史を与えられてる」
    「用意された世界に、生きている」

    「……」

    「私だけじゃないよね」
    「みんな、生まれた時から、何かを与えられている」
    「用意されている」

    「それって……」
    「……」

    359 = 354 :

     ひとしきり話すと、友さんは海の方に視線を向けた。
     波のおだやかな港。

     遠くの方で、白いかもめが2羽飛んでいる。
     つがいだろうか。

     ……きっと、友さんは「運命」とかそういう類のものを「用意された」と言っている。
     自分の置かれた境遇や立場は、振り返ってみないと分からない。
     私だって、兄さんと二人寄り添って生きている現実が、「用意された」ものだなんて、これまで思ったことは無かった。

    「氷川丸はね、太平洋戦争を生き残った、数少ない貨客船らしいの」
    「そして今日この時、私は妹さんと氷川丸を見れた」

    「……そう思うと、なんだか面白いよね!」

     海を見ていた友さんが、私の方に振り返って明るい声でそう言った。
     ……一瞬見えた悲哀は、多分、私の勘違いじゃない。
     きっと、友さんは何かを抱えている。

     その「何か」を知りたい欲求が、この時、私の心に芽生えた。

    361 = 354 :

     それからしばらく友さんと海沿いの散歩を続けた。
     友さんに先導されて歩いていたら、いつの間にか桜木町に着いていた。
     気がつけば、日はとっくに傾いている。

    「せっかくだから、観覧車乗っていこうよ」

     遊園地にたどり着いて友さんがそう誘ってきたが、私は今度も断った。
     観覧車は、ちょうどライトアップをし始めたところだった。
     虹色に光る大きな円。
     あの高さから横浜の街を見下ろしたら、きっと気持ちがいいだろうなぁ……。

     私の家は、海に程近い低地にあるから、景色を見下ろす事なんて殆どなかった。
     丘の上にある高校からの景色は、入学当初すごく新鮮だったのを覚えている。

    「じゃあ今度、絶対乗ろうね」

    「……」

     やっぱり、私は嫌ともウンともいえない。
     ……友さんと乗りたくないなんて言ったら、うそになる。
     でも、私は普通の女の子みたいに、遊んだりできないから……

    363 = 354 :

     桜木町から家に帰るのは、大変だった。
     そんなに長い間一緒にいた感じがしなかったから、すっかり油断しちゃってた。
     
    「ごめんね、ほんと、遅くまでつき合わせちゃって」

     何度かこうやって謝られたけれど、私は首を振って返事をした。

     謝らないで。今日は、楽しかったよ。
     ……そうやって、口に出して言ってあげたい。
     タイミングが分からないし、気恥ずかしいから言えないけど。

     
    「あ、私、道こっちだ」

    「……そう」

    「今日はありがとね。こんな遅くなっちゃったけど……妹さんと一緒に遊べてよかった」
    「すごく、楽しかった」

     私が言いたいことを、友さんは当たり前のように言ってのける。
     ……いいな。うらやましいな。

    364 :

    しえん

    365 = 354 :

    「……じゃ」

    「うん。また、明日」

    「う、……ん」

    「にひっ」

     私がなんとか返事をすると、友さんは笑顔を見せてくれた。
     そしたらなんだか、その笑顔に答えたい義務感が溢れてきて、気がついたら口が動いていた。

    「今日は、ありが、と。えっと……クレープ、とか」

    「美味しかった?」

    「……ん」

    「あの時、妹さんの笑顔見れて、……嬉しかった」

    「え、……?」

    「なーんって。じゃ、ね! 気をつけて!!」

     ほおける私を置いていく様に、友さんは家路に向かっていった。
     ……ほんとに、もう……どうしてあの人は恥ずかしい事を平気で言えるんだろ。

    369 = 367 :

    誰かほしゅしといて

    370 = 360 :

    371 = 360 :

    寝る前の保守

    372 :

    ねるほ

    373 = 354 :

    ちょ
    意識飛んでた……orz
    せっかくネカフェ入ったのに死にたい

    374 = 354 :

     その日、兄は少し不機嫌だった。
     
     学校からまっすぐ帰る暗黙の了解を、私が破ってしまったからだろうか。
     それとも、私が誰かと一緒にいた事を気にしてくれているのだろうか。

     ……後者だったらいいな、と思う。


    「兄さんのバイト先には、どんな人がいるの?」

    「え、何。突然」

     夜。
     夕食と寝る準備をお互い済ませた頃、私は聞いてみた。

    「……ちょっと、気になって」

     思えば、兄は自分の事をあまり話してくれない。
     それは私もだけど。

    375 = 354 :

    「コンビニだからさ、人がしょっちゅう出たり入ったりするよ」

    「うん」

    「俺はあそこで働いて結構経つけど、俺みたいなのは珍しいんじゃないかな」
    「みんな1年経たないでやめてくから。2年持てばいいほう」
    「半分くらいが大学生で、あとは俺含めてフリーターとか、主婦の人とか」
    「シフトは被った事ないけど、高校生も居るらしいよ」

    「ほんと? どんな人?」

    「さぁ……。会った事無いから」

     私と同じ年くらいの人が、お金を稼いでいる。
     うらやましい。
     奨学金が貰えて、学費も殆ど免除になるからと今の学校に決めた。
     今思えば、普通の公立高校に通って、バイトをするのも良かったかもしれない。

    376 = 354 :

     どうしてバイト禁止の学校なんか、選んでしまったんだろう。

    「あんまり、お金の事考えるなよ」

    「う、うん……、でも」

     私の気持ちを読み取ったのか、兄が私の頭を優しく撫でてくれた。

     でも、考えない訳には行かない。
     だって、兄さんは私と違って、高校へ行く選択肢すらなかったじゃない。

    「くやしいな」

     今日、友さんが話してくれた事が、頭に浮かぶ。
     『用意された世界』。
     兄さんが私と同じ年の頃から、毎日働きに出なければいけない事や
     私が兄さんの荷物になっている事は
     あらかじめ決まって居たのだろうか。

    「妹は十分がんばってくれてるよ」
    「妹が一生懸命に勉強とかしてくれてるとさ……俺も、働いてる甲斐とか、あるからさ」

    「……うん」

    377 = 354 :

    すいませんナイトパックの時間切れるので失礼します……
    寝てる間に保守して下さって、本当にありがとうございます
    また続きを書かせてくれると嬉しいです

    378 :

    おつおつ

    383 :

    保守 ところで、あと何章くらいあるんだろうか?
    確か今って8日くらいで落ちちゃうんじゃなかったっけ

    387 = 360 :

    389 :

    良いストーリー練り上げて下さいな

    390 = 354 :

    「出来のいい妹で、俺も鼻が高いよ」

    「兄さんこそ。高校行ってたら、きっと私なんかより凄かったよ」

    「そんなことないさ。昔から俺は勉強嫌いだから」

     私が今がんばれてるのも、兄さんが昔勉強教えてくれたからだよ。
     そう言いたいけれど、今は兄さんの優しさに甘えたい。
     ……撫でてくれるだけじゃ、足りないよ。

    「……んー」

     兄さんの胸板に、頭をこすり付ける。
     猫になってじゃれついている気分で、不思議と落ち着く。
     要は、私が甘えん坊だってこと。

    「寝るか?」

    「……もうちょっと」

     まだ話したりないし、兄さんの温もりも感じたりない。

    391 = 354 :

    「じゃあ、……もうちょっと」

     胸の中の私を、兄さんは両腕で包み込んでくれた。
     甘えてもいいよ、と体で言ってくれているのだ。

     なら……心も甘えちゃおうかな……

    「……仲のいい人とか、いるの?」

    「え?」
    「あ、あぁ……バイトの話か」

    「気になってる人とか」

    「ぶふっ、……ど、どういう意味」

     あれ。
     思ったよりも兄さんが動揺してる。

    「あやしい」

    「あ、怪しいって。決め付けはよくない。冤罪だ」

    392 = 354 :

    「なら正直に話してほしいな」

    「う、うーん。困ったな。正直なところ、仲のいい人なんて居ない」

    「……そうなの?」

    「俺バイト先では浮いてるから」

     私も、クラスの中では浮いている。
     もしかしたら、沈んでるって表現した方が正しいかも。
     テストの成績関係以外で、目立ったことなんてないし。

    「バイト中、話したりはしないの?」

    「それはする、かな……」

    「お話できるのに、浮いてるの?」

    「俺、趣味とかないし。あんまりほかの人と話合わないんだよね」

    394 :

    ホッシュ

    398 = 383 :

    バレンタインの読み返したがやっぱり良いな 保守

    399 = 354 :

    仮眠とってご飯を食べさせていただきました。
    何度も保守スレにしてしまって申し訳ないです。

    そういえばバレンタインのやつをかいてから、もう一年経つんですね
    成長してない感ハンパねぇっす

    400 :

    バレンタインのやつのスレタイおせーて


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