元スレ妹「温もりがほしい笑いかけてほしい受け入れてほしい。寂しい。」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
351 = 282 :
友「あ、見て」
妹「……?」
友さんが指さした方向に、船がとまっていた。
白くて、大きい船。
友「あれね、氷川丸。もうずっと昔の船なの」
妹「昔……」
友「私のおじいちゃんよりも、年とってるんじゃないかな」
友「もう引退しててね。確か中を見学できたはずだよ」
そんなに前からある船なんだ。
船の事なんかぜんぜん知らない私にとって、今の船とどこが違うのか分からない。
友「入ってみる?」
返事を待たずに、友さんは私の手をとって氷川丸に向かって歩き出した。
……やっぱり、友さんのペース。
嫌じゃないけど。
352 = 282 :
友「いいよ、私だすよ」
妹「あ、……大丈夫、だから」
友「でも、せっかく来たんだし」
船の中を見学するには入場料がいるみたいで、また友さんは奢ってくれようとしてくれた。
気持ちはうれしいけど、……なんだろう、どうしても受け付けない。
兄さんもよく私の好きなものを買ってくれようとする。
兄さんが私の事を想って、お金を出そうとしてくれるって、分かってる。
でも……そうじゃ、ないんだ。
妹「……」
友「ご、ごめん。そうだよね」
友「私、ごめんね。妹さんの気持ちも考えず……」
知らず知らずのうちに、不機嫌な顔をしてしまっていたらしい。
謝らなくていいのに。
私は、自分でも良く分かってない意地を張ってるだけだから。
353 = 282 :
妹「……うう、ん」
私はそう言って、首を横に振った。
……もっとしっかり意思を伝えられたらいいのに。
友「私が誘ったから、さ……。妹さんに楽しんで欲しくて」
妹「……うん」
友「でも、今度また来ようね。一緒に」
妹「……」
返事はかえさない。
嫌、とは言えなかった。
友「私ね、こういう……昔からあるもの、好きなの」
友「妹さんは?」
354 :
妹「……どうだろ」
友さんは歴史が好きなのかな。
私はべつに嫌ってわけじゃない。
歴史のテストは覚えたところがそのままでやすいから、楽でいいけど。
友「妹さんは、この世界が『用意されたもの』とか、思うことない?」
妹「……?」
友さんは、ちょっと変わった事を言う癖がある。
私は友さんのこういう面が、嫌いじゃない。
むしろ、好きかもしれない。
テレビの話とか、アイドルの話なんかよりも、私にとってはよっぽど興味深いから。
なんとなく感じていた日々の疑問に、友さんの言うことがぴったり当てはまる時だってある。
友「もし、私っていう意識を生かすために、歴史があったとしたら……」
友「ありえない事なんだけどね、考え方によっては、正しい気がするの」
355 :
妹×友っていうのもアリかもしれん
356 :
舞台は横浜か
358 = 354 :
……なるほど。
これまでの歴史が、友さん一人を生み出す為に『用意された』のだったとしたら。
そういう仮説の話を、友さんは言っているのだ。
確かにそれは誰にも証明や否定ができない。
そして友さんは、歴史の末端にいる。
「歴史の歯車が友さんを生み出した」とも、それは言い換えられるだろう。
友「だからね。私は生まれながらにして、歴史を与えられてる」
友「用意された世界に、生きている」
妹「……」
友「私だけじゃないよね」
友「みんな、生まれた時から、何かを与えられている」
友「用意されている」
友「それって……」
友「……」
359 = 354 :
ひとしきり話すと、友さんは海の方に視線を向けた。
波のおだやかな港。
遠くの方で、白いかもめが2羽飛んでいる。
つがいだろうか。
……きっと、友さんは「運命」とかそういう類のものを「用意された」と言っている。
自分の置かれた境遇や立場は、振り返ってみないと分からない。
私だって、兄さんと二人寄り添って生きている現実が、「用意された」ものだなんて、これまで思ったことは無かった。
友「氷川丸はね、太平洋戦争を生き残った、数少ない貨客船らしいの」
友「そして今日この時、私は妹さんと氷川丸を見れた」
友「……そう思うと、なんだか面白いよね!」
海を見ていた友さんが、私の方に振り返って明るい声でそう言った。
……一瞬見えた悲哀は、多分、私の勘違いじゃない。
きっと、友さんは何かを抱えている。
その「何か」を知りたい欲求が、この時、私の心に芽生えた。
361 = 354 :
それからしばらく友さんと海沿いの散歩を続けた。
友さんに先導されて歩いていたら、いつの間にか桜木町に着いていた。
気がつけば、日はとっくに傾いている。
友「せっかくだから、観覧車乗っていこうよ」
遊園地にたどり着いて友さんがそう誘ってきたが、私は今度も断った。
観覧車は、ちょうどライトアップをし始めたところだった。
虹色に光る大きな円。
あの高さから横浜の街を見下ろしたら、きっと気持ちがいいだろうなぁ……。
私の家は、海に程近い低地にあるから、景色を見下ろす事なんて殆どなかった。
丘の上にある高校からの景色は、入学当初すごく新鮮だったのを覚えている。
友「じゃあ今度、絶対乗ろうね」
妹「……」
やっぱり、私は嫌ともウンともいえない。
……友さんと乗りたくないなんて言ったら、うそになる。
でも、私は普通の女の子みたいに、遊んだりできないから……
363 = 354 :
桜木町から家に帰るのは、大変だった。
そんなに長い間一緒にいた感じがしなかったから、すっかり油断しちゃってた。
友「ごめんね、ほんと、遅くまでつき合わせちゃって」
何度かこうやって謝られたけれど、私は首を振って返事をした。
謝らないで。今日は、楽しかったよ。
……そうやって、口に出して言ってあげたい。
タイミングが分からないし、気恥ずかしいから言えないけど。
友「あ、私、道こっちだ」
妹「……そう」
友「今日はありがとね。こんな遅くなっちゃったけど……妹さんと一緒に遊べてよかった」
友「すごく、楽しかった」
私が言いたいことを、友さんは当たり前のように言ってのける。
……いいな。うらやましいな。
364 :
しえん
365 = 354 :
妹「……じゃ」
友「うん。また、明日」
妹「う、……ん」
友「にひっ」
私がなんとか返事をすると、友さんは笑顔を見せてくれた。
そしたらなんだか、その笑顔に答えたい義務感が溢れてきて、気がついたら口が動いていた。
妹「今日は、ありが、と。えっと……クレープ、とか」
友「美味しかった?」
妹「……ん」
友「あの時、妹さんの笑顔見れて、……嬉しかった」
妹「え、……?」
友「なーんって。じゃ、ね! 気をつけて!!」
ほおける私を置いていく様に、友さんは家路に向かっていった。
……ほんとに、もう……どうしてあの人は恥ずかしい事を平気で言えるんだろ。
369 = 367 :
誰かほしゅしといて
370 = 360 :
ほ
371 = 360 :
寝る前の保守
372 :
ねるほ
373 = 354 :
ちょ
意識飛んでた……orz
せっかくネカフェ入ったのに死にたい
374 = 354 :
その日、兄は少し不機嫌だった。
学校からまっすぐ帰る暗黙の了解を、私が破ってしまったからだろうか。
それとも、私が誰かと一緒にいた事を気にしてくれているのだろうか。
……後者だったらいいな、と思う。
妹「兄さんのバイト先には、どんな人がいるの?」
兄「え、何。突然」
夜。
夕食と寝る準備をお互い済ませた頃、私は聞いてみた。
妹「……ちょっと、気になって」
思えば、兄は自分の事をあまり話してくれない。
それは私もだけど。
375 = 354 :
兄「コンビニだからさ、人がしょっちゅう出たり入ったりするよ」
妹「うん」
兄「俺はあそこで働いて結構経つけど、俺みたいなのは珍しいんじゃないかな」
兄「みんな1年経たないでやめてくから。2年持てばいいほう」
兄「半分くらいが大学生で、あとは俺含めてフリーターとか、主婦の人とか」
兄「シフトは被った事ないけど、高校生も居るらしいよ」
妹「ほんと? どんな人?」
兄「さぁ……。会った事無いから」
私と同じ年くらいの人が、お金を稼いでいる。
うらやましい。
奨学金が貰えて、学費も殆ど免除になるからと今の学校に決めた。
今思えば、普通の公立高校に通って、バイトをするのも良かったかもしれない。
376 = 354 :
どうしてバイト禁止の学校なんか、選んでしまったんだろう。
兄「あんまり、お金の事考えるなよ」
妹「う、うん……、でも」
私の気持ちを読み取ったのか、兄が私の頭を優しく撫でてくれた。
でも、考えない訳には行かない。
だって、兄さんは私と違って、高校へ行く選択肢すらなかったじゃない。
妹「くやしいな」
今日、友さんが話してくれた事が、頭に浮かぶ。
『用意された世界』。
兄さんが私と同じ年の頃から、毎日働きに出なければいけない事や
私が兄さんの荷物になっている事は
あらかじめ決まって居たのだろうか。
兄「妹は十分がんばってくれてるよ」
兄「妹が一生懸命に勉強とかしてくれてるとさ……俺も、働いてる甲斐とか、あるからさ」
妹「……うん」
377 = 354 :
すいませんナイトパックの時間切れるので失礼します……
寝てる間に保守して下さって、本当にありがとうございます
また続きを書かせてくれると嬉しいです
378 :
おつおつ
383 :
保守 ところで、あと何章くらいあるんだろうか?
確か今って8日くらいで落ちちゃうんじゃなかったっけ
387 = 360 :
ほ
389 :
良いストーリー練り上げて下さいな
390 = 354 :
兄「出来のいい妹で、俺も鼻が高いよ」
妹「兄さんこそ。高校行ってたら、きっと私なんかより凄かったよ」
兄「そんなことないさ。昔から俺は勉強嫌いだから」
私が今がんばれてるのも、兄さんが昔勉強教えてくれたからだよ。
そう言いたいけれど、今は兄さんの優しさに甘えたい。
……撫でてくれるだけじゃ、足りないよ。
妹「……んー」
兄さんの胸板に、頭をこすり付ける。
猫になってじゃれついている気分で、不思議と落ち着く。
要は、私が甘えん坊だってこと。
兄「寝るか?」
妹「……もうちょっと」
まだ話したりないし、兄さんの温もりも感じたりない。
391 = 354 :
兄「じゃあ、……もうちょっと」
胸の中の私を、兄さんは両腕で包み込んでくれた。
甘えてもいいよ、と体で言ってくれているのだ。
なら……心も甘えちゃおうかな……
妹「……仲のいい人とか、いるの?」
兄「え?」
兄「あ、あぁ……バイトの話か」
妹「気になってる人とか」
兄「ぶふっ、……ど、どういう意味」
あれ。
思ったよりも兄さんが動揺してる。
妹「あやしい」
兄「あ、怪しいって。決め付けはよくない。冤罪だ」
392 = 354 :
妹「なら正直に話してほしいな」
兄「う、うーん。困ったな。正直なところ、仲のいい人なんて居ない」
妹「……そうなの?」
兄「俺バイト先では浮いてるから」
私も、クラスの中では浮いている。
もしかしたら、沈んでるって表現した方が正しいかも。
テストの成績関係以外で、目立ったことなんてないし。
妹「バイト中、話したりはしないの?」
兄「それはする、かな……」
妹「お話できるのに、浮いてるの?」
兄「俺、趣味とかないし。あんまりほかの人と話合わないんだよね」
394 :
ホッシュ
398 = 383 :
バレンタインの読み返したがやっぱり良いな 保守
399 = 354 :
仮眠とってご飯を食べさせていただきました。
何度も保守スレにしてしまって申し訳ないです。
そういえばバレンタインのやつをかいてから、もう一年経つんですね
成長してない感ハンパねぇっす
400 :
バレンタインのやつのスレタイおせーて
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