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    元スレ武内P「大人の魅力、ですか」

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    351 = 291 :

      ・  ・  ・

    武内P「……結局、社内の遺失物係に届けるしかありませんでしたね」

    「白い星を使うアイドルは多いから……」

    美嘉「まあでも、アタシのカリスマは戻ったじゃん★」

    武内P「……そうですね、本当に、良かったと思います」

    美嘉「チョーイケてるっしょ★」

    未央「ふーん。まあ、悪くないかな」

    「!?」

    未央「どうしたの?」

    「ねえ……未央?」


    未央「ほら、行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように!」


    「もう良いよ!」



    おわり

    352 = 291 :

    ネット回線の調子が悪いので一旦締めます

    353 :

    乙 
    すべてのオチの後にありがとうございましたつけたら完全に漫才

    354 :



    ネタふりですけど
    闇落ちした楓さんがマスコミやらテレビやら、ありとあらゆる手段を使ってプロデューサーの外堀を埋め、自分と身を固めさせる話とか読んでみたいですね

    355 :


    闇堕ちしたアイドルほど恐ろしい物はない
    今更だけど東方不敗マスターアジアは爆笑しかないな

    356 :

    かな子のダイエットに励む話読みたいです

    357 :

    先に>>356書きます


    武内P「三村さん、間食をやめましょう」

    358 = 357 :

    武内P「以前、それで問題が起こりましたが……もう限界のようです」

    かな子「……」

    武内P「カロリー計算云々の次元を越えてしまっている、私はそう考えます」

    かな子「……」

    ガサゴソ…

    かな子「マシュマロ美味しい~」

    武内P「話を聞いていますか、三村さん?」

    359 = 357 :

    武内P「マシュマロを置いてください」

    かな子「……」モタモタ

    武内P「名残惜しそうにしないでください」

    かな子「……」

    武内P「はい、ありがとうございます」

    かな子「……」

    スッ…

    武内P「置いてすぐに取ろうとしないでください」

    360 = 357 :

    武内P「三村さん、私は以前カロリー計算とレッスンの内容で対応すると言いましたね」

    かな子「……」コクリ

    武内P「結果的にそれは成功し、一時期三村さんの体重は減っていました」

    かな子「……」コクリ

    武内P「しかし、減少していった体重は元に戻り、一向に減る気配が無くなりました」

    かな子「……」

    361 = 357 :

    武内P「三村さん、こちらを御覧ください」

    かな子「……」

    武内P「これが今の貴女のレッスン――いえ、最早トレーニング内容です」

    かな子「……」

    武内P「一つお聞きしますが、今、貴女はベンチプレスで何キロを?」

    かな子「120」

    武内P「お菓子を食べるためにパワーキャラになるなど、聞いたことがありません」

    363 = 357 :

    武内P「確かに、筋肉を鍛えれば基礎代謝が上がります」

    かな子「……」

    武内P「ですが、どう考えても鍛えすぎです」

    かな子「……」

    武内P「トレーナーの皆さんが口を揃えて言っていました」

    かな子「……」

    武内P「『あの子の肉体には神が宿っている』と」

    かな子「えへへ♪」

    武内P「あまり、おかしな物を宿さないでください」

    かな子「お菓子?」

    武内P「違います」

    364 = 357 :

    武内P「見た目が変わっていないのが不思議でなりません」

    かな子「……」

    武内P「その……失礼ですが、二の腕を触っても宜しいでしょうか?」

    かな子「はい、良いですよ」

    武内P「ありがとうございます。では、失礼します」

    ふにふに

    かな子「……」

    武内P「……少しふっくらしている、普通の腕ですね」

    365 = 357 :

    武内P「では、少し力を入れてみていただけますか?」

    かな子「わかりました」

    武内P「よろしくお願いします」

    かな子「えいっ!」

    メキメキィッ!

    武内P「……突然、腕が丸太にすり替わったかと思いました」

    かな子「お菓子作りって、結構力を使うんですよー」

    武内P「お菓子どころか、色々粉々になりますよ」

    366 = 357 :

    武内P「……ありがとうございました」

    かな子「……」

    武内P「三村さん、やはり間食は控えましょう」

    かな子「……」

    スッ…

    武内P「話の途中でマシュマロに手を伸ばさないでください」

    かな子「……」

    367 = 357 :

    武内P「間食を控え、トレーニングをレッスンにしていきましょう」

    かな子「……」

    武内P「確かに、現状でも問題が無いと不満に思うかもしれません」

    かな子「……」

    武内P「ですが、今の三村さんはアイドルの皮を被った別の何かになろうとしています」

    かな子「!?」

    武内P「……お気づきいただけた様で幸いです」

    368 = 357 :

    武内P「事務所内にも、小さくですが波紋が広がっています」

    かな子「……」

    武内P「『地面に根が生えているかのように、微動だにしなかった』」

    かな子「……」

    武内P「これは、日野さんからの証言です」

    かな子「体幹も、鍛えてます」

    武内P「はい、どちらもアイドルの発言とは少し違いますね」

    369 = 357 :

    武内P「緒方さんからも、証言があがっています」

    かな子「!?」

    武内P「『一緒に四葉のクローバーを探していたら、手が緑色の汁まみれだった』」

    かな子「……」

    武内P「力を制御できず、葉をすりつぶしてしまっているじゃないですか」

    かな子「……」

    370 = 357 :

    武内P「双葉さんからも、証言があがっています」

    かな子「!?」

    武内P「『ハイタッチしたら5m吹っ飛んだ』」

    かな子「……」

    スッ…

    武内P「心を落ち着けるためにマシュマロを食べようとしないでください」

    371 = 357 :

    武内P「三村さん、もう、選択肢は二つに一つです」

    かな子「……」

    武内P「お菓子を我慢し、アイドルの道を進むのか」

    かな子「……」

    武内P「お菓子を我慢せず、力を追い求めるのか」

    かな子「……」

    武内P「決めましょう、三村さん」

    372 = 357 :

    かな子「私は……」

    武内P「……」

    かな子「これからも、アイドルを続けていきたいです」

    武内P「……」

    かな子「だけど……お菓子を我慢出来るかわからないんです」

    武内P「……」

    かな子「もしも私がお菓子に手を出しそうになった時、止めて貰えますか?」

    スッ…

    武内P「早速手が出ていますよ」

    373 = 357 :

    武内P「三村さん、最早それは禁断症状かと」

    かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」

    武内P「!? 止まってください!」

    かな子「最後にこれだけ~」

    武内P「ダイエットに失敗する人の常套句じゃないですか!」

    かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」

    武内P「くっ……!」

    ガシッ!

    かな子「マシュマロ食べた~い」

    武内P「なんてパワーだ……!」

    374 = 357 :

    武内P「三村さん! 正気に戻ってください!」

    かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」

    武内P「止まらない……!」

    かな子「うふふっ♪」

    武内P「くっ……!」


    武内P「――ショコラ・ティアラ!ショコラ・ティアラ!」


    かな子「……Ready Ready Step!」

    武内P「……止まった……!」

    375 = 357 :

      ・  ・  ・

    かな子「……止めてくれて、ありがとうございました」

    武内P「いえ、私は手助けをしただけです」

    かな子「えっ?」

    武内P「止まったのは貴女の、アイドルを続けたいという意思です」

    かな子「……」

    武内P「しかし、間食をやめるというのは難しそうですね」

    かな子「……」

    376 = 357 :

    武内P「そうですね……では、今後も間食は続ける方向でいきましょう」

    かな子「!」

    武内P「しかし、食べるお菓子はこちらで用意した物になります」

    かな子「……」

    武内P「お菓子作りも、味見をする危険性が大きいので全面的に禁止に」

    かな子「!?」

    武内P「こちらは……そうですね、日曜大工等の、他のモノ作りで対応していきましょう」

    かな子「……」

    377 = 357 :

    武内P「三村さん、貴女はとても魅力的なアイドルです」

    かな子「……」

    武内P「しかし、今の貴女はパワーオブパワー、筋肉の塊です」

    かな子「……」

    武内P「ですが、貴女ならばきっと昔の自分を取り戻せる」

    武内P「……私は、そう確信しています」

    かな子「……」

    スッ…

    武内P「マシュマロに手を伸ばさないでください」

    378 = 357 :

      ・  ・  ・

    武内P「今回は、私も驚きました」

    かな子「プロデューサーさんのおかげで、すっかり元通りです♪」

    武内P「まさか、三日足らずで元通りとは……」

    かな子「うふふっ、頑張りました♪」

    武内P「……」

    かな子「それで……この前のマシュマロって、まだ残ってますか?」

    武内P「残っていますが……あの、まさかそのために?」

    かな子「マシュマロ食べた~い♪」

    武内P「いえ、ですが……」



    かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」



    おわり

    379 = 357 :

    一服したら>>354書きます

    380 :

    おつ
    かな子の食い煩いで事務所がヤベェことになるかと思った

    381 = 357 :


     私は今、怒っている。


    「この度は誤解を招く行動をしてしまい、ファンの皆様や関係者の方達には、大変ご迷惑をおかけしました」


     それは、パシャリパシャリと私と彼に降り注ぐシャッターの光と音にではない。
     今日は休日の予定だったと言うのに、この様な記者会見の場に出なければならなくなったからでも、
    ましてや、このような場でもいつもと変わらない無表情の彼にでもない。


    「高垣さんとは、どういったご関係でしょうか!?」


    「私は彼女が所属する事務所のプロデューサーというだけであり、特別な関係はありません」


     勿論、今の彼の答えはわかっていたもので、それに関しての怒りもない。
     と言うか、今の質問が私に飛んできたものだとしても、私は全く同じ答えを返すだろう。


    「ですが、この写真を見る限りでは、とても親しそうに感じるのですが!?」


     そう言った記者さんの手には、ここ数日世間を騒がせている週刊誌の、あるページが開かれている。
     載せられている写真に写っているのは、彼の腕にしがみついている私。


     ハッキリ言ってしまうと、酔っていて全然覚えてないのよね。

    382 :


    マシュマロを死守する武内Pが丸太のような腕でブン殴られるんじゃないかとハラハラしたわ

    383 = 357 :


     だから、私は今、怒っている。


    「高垣さんは、その時泥酔しており、意識的にやった事ではないと言っています」


     その通りなんです!
     確かに、酔っていたとは言え私の行動はアイドルとして軽率だったかもしれない。
     けれど、酔ってふらついた時に、異性とは言え腕にしがみつく事までダメなのかしら。
     そのまま転んで怪我をすれば良かったとでも言うつもり?


    「貴方は、何故その時その場に居たのでしょうか!?」


    「彼女と一緒に居た同僚の方に連絡を受け、自宅まで送り届けるようにと頼まれたからです」


    「泥酔した女性をというのは、問題があるのでは!?」


    「はい、確かにおっしゃる通りだと思います」


     強くなるフラッシュとシャッター音。


    「ですが――、」


     彼は言葉を少し区切り、ハッキリと、


    「――私はプロデューサーであり、アイドルに手をだす事は絶対に有り得ません」


     そう、告げた。
     会場中が息を呑むように一瞬静まり返ったのは、彼の気迫か、はたまた容姿によるものか。
     それは、私にもわからない。

    384 = 357 :


     だからこそ、私は今、怒っている。


    「彼女の周囲の方達も、それを理解した上で、私に高垣さんを送る様に頼んだのだと思います」


     信頼出来る人間に任せる、というのは正しい判断ではないか。
     だからええと……うん、瑞樹さんと早苗さんが一緒に呑んでたのよね?
     だから、二人は悪くないわ。


    「ですが……それは私と、当人達にしかわからない事であり、軽率な行動でした」


     悪かったのは、タイミングだけ。
     誰も、何も悪いことなんてしてないもの!
     なのに、


    「なので、今回の件の釈明と、今後の反省のために……この場を設けさせて頂きました」


     嗚呼、なのに!


     どうして禁酒しなければいけないの!

    385 = 357 :


     私の怒りは、留まることを知らない。


    「それでは、高垣さんに質問です!」


    「はい、何でしょうか?」


     少し飲みすぎて、たまたま近くに居た男性にしがみついただけなのよ。
     それだけのに、大好きなお酒を禁止された上に、こんな場に引っ張り出されて。


    「今回の件に関して、どうお考えでしょうか!?」


    「そうですね……私も、とてもビックリしています」


     週刊誌が発売されて、すぐに連絡があった。
     そこからずっとお酒を飲むのを禁止されて、今までの行動を注意されて。
     挙句の果てには、アイドルなんだから普段の言動にも注意しなさいだなんて!


    「記憶をなくす程飲んだなんて……本当に久々でしたから」


     そう言ったら、何故か会場中がどう反応したものかと静まり返った。
     ……どうしてかしら?

    386 = 357 :


     こんなに怒るのだって、本当に久々。


    「だから、きっと楽しいお酒だったんでしょうね」


     だからこそ、その結果がこれではあまりにもあんまりではないか。
     悲しみを通り越して、怒りを覚えるのも当然の権利。


    「し、しかし! 今回の行動はファンを裏切る事になるのでは!?」


    「それは有り得ません」


     断じて言える。


    「彼も言った通り、今回の件は転ばないようにしがみついただけです」


     私は、ファンを絶対に裏切らない。


    「相手がどうこうの話ではなく、ただ、支えになるものに手を伸ばしただけ」


     それに、


    「それに、私のファンの方達は、私がお酒が大好きだと知ってくれているでしょうから」


     だから、今回の件では私のファンの方達はまるで騒いでいない。
     面白おかしく騒ぎたい人達の声で禁酒しなければいけないなんて、アイドルの道は厳しい。

    387 = 357 :


     前に怒った時は、どうだったかしら。


    「……では、二人の間に特別な感情は一切無い、と?」


     随分と散発的になったフラッシュとシャッター音。
     会見の時間も長いものではなく、この質問が最後になるだろう。
     それもそのはず。


    「はい。私はプロデューサーであり、彼女はアイドルですから」


     仕事人間である彼と私の間に、そんな甘い感情があるはずもないのだから。
     お互いがそう思っていると、少なくとも私は信じている。
     それがこんな事になってしまうだなんて、本当に怒りが込み上げて仕方ない!


    「……」



     ――彼の、プロデュースに対する情熱を馬鹿にしないで!



     ――私の、アイドルに対する想いを甘く見ないで!



    「うっ……ぐすっ……!」


     ……思い出した。


     私は、怒ると泣いてしまうのだった。

    388 = 357 :


     まずい!

     まずい、まずい、まずい、まずい!


    「っ……!」


     雪崩のように降り注ぐ光と音から逃げるように下を向く。
     今のこの私の顔を撮られる訳にはいかない。
     涙が止まったとしても、メイクを崩した表情を見せる訳にはいかない。


    「うっ……ふうぅ……!」


     あともう少し、ほんのちょっとで終わったのに。
     皆、絶対に誤解してるわ。
     この涙の正体が怒り涙だなんて、誰が信じてくれるっていうの。
     けれど駄目、止まらない。


    「……うぅ……っぐすっ……!」


     顔をこすらないように握りしめた手は真っ白に。
     会見のために用意された衣装には、怒りの雫の跡がどんどん増えていく。
     まるで止まらない。
     怒りも、涙も、シャッターも、何一つ。

    389 = 357 :


    「……っく……ひっく……!」


     私の名前を呼ぶ声が、そこかしこから聞こえてくる。
     アイドルとしてそれに答えなければならないのに、出来ない。
     だって、今の私の表情はとても歪んでいて、見せられたものではないから。
     だから、早く、早く――


    「高垣さん」
    「……ひぐっ……うっ……!」


     とても、とても近くから彼の声が聞こえる。
     顔を上げて確認は出来ない。
     だけど、この低く響いてくる声は間違いなく彼のものだ。


    「こちらを使ってください」
    「……っく……ふぐぅ……!」


     俯いた顔と、涙の跡を遮るように差し出された、青いハンカチ。
     きっと彼はこれで涙を拭けと言っているのだろうけど、今の私にそれは出来ない。
     だって、手が震えてしまってるんですもの。
     禁酒なんてされてなければ、手が震えるなんてなかったかもしれないのに!


     駄々をこねるように、私は首を横に振った。

    390 = 357 :


    「……」
    「うぅ……ふぅっ……!」


     気配で、彼がハンカチを差し出した逆の手を首筋にやったのがわかる。
     きっと、彼は今とても困っているのだろう。
     けれど、しょうがないじゃない! 私だって、出来ないものは出来ないの!


    「高垣さん――目元、失礼します」
    「う……?」


     ゆっくりと、青いハンカチが顔に近づけられ、優しく、そっと目に当てられた。


     それだけ……そう、本当にそれだけなのに。


    「……」
    「……」


     私の涙は、怒りは、まるでハンカチに吸い込まれるように、嘘の様に止まった。
     優しく添えられたハンカチは柔らかく、これならメイクの崩れも最小限で済むだろう。
     柔軟剤、使ってるのかしら。

    391 = 357 :


    「……」


     もう、涙は止まった。
     あとは顔を上げるだけだけど、今は、それがとても怖い。
     こんな会見の場で突然泣き出した女に向けられる視線はどんなものだろうか?
     想像するだけで足がすくみそうになるが、逃げることは許されない。


     プロデューサーの彼が涙を止めてくれたのだ。
     ここからは、アイドルである、私の仕事だ。


    「……」


     やさしく涙を受け止めてくれていたハンカチから、彼の手から離れ顔をゆっくりあげる。
     降り注ぐシャッターの光と音はすさまじかったが、まずはやることがある。
     助けてくれた彼に、お礼を言わなくちゃ。


    「……あびがどうございま゙ず」
    「……」


     その顔は何ですか?
     あれだけ泣いたらね、鼻水だって出ますよ!

    392 = 357 :


    「……失礼します」
    「……ずずっ!」


     今の、呆れるような顔以上に、何か失礼な事をしようというの?
     私だってね、怒る時は怒るんですからね!
     ……泣いちゃいますけど。


    「……」
    「っ!?」


     彼のとった行動は、私がまるで予想していないもの。
     あろう事か、この男は、ハンカチを私の鼻に当てて、


    「ちーん」


     こう、言った。


     25歳にもなって、アイドルなのに、衆人環視の中、鼻をかませる姿を晒せと!?


    「……」
    「……ずずっ」


     ……良いですよ、覚悟してください。
     アイドルだって、全部が全部綺麗なものじゃないんですから!


     会場に、プピーと、私の鼻をかむ音が響き渡った。


     ……マイクが音を拾うなんて思ってなかったわ。

    393 = 357 :


    「……」
    「……」


     彼は、無言で私の状態をチェックしている。
     泣いている私にハンカチを差し出したのも、プロデューサーとしての性だったのだろう。
     けれど、今気になっているのはポケットにしまったハンカチの処遇です。
     代わりのものを買ってお渡しするので捨ててください……その、流石に恥ずかしいので。


    「……」


     チェックが終わったのか、彼は膝立ちの状態から立ち上がり、中腰になった。
     泣いてしまったのは私の自業自得だけど、鼻をかむ必要は無かったと思うの。
     だから、そこに関しては文句を言っておかなくちゃ。


    「……柔軟剤」
    「? 高垣さん?」


     私のつぶやきに、彼の動きが止まる。


    「柔軟剤入りのハンカチを使う、自由なんざ要りません」
    「……」


     あっ、違う。
     前から考えてた駄洒落を言えるタイミングだと思って、間違えちゃった。

    394 :

    「……」
    「……ふふっ」


     無表情な彼が呆気にとられているのがおかしくて。
     あんなにも荒れ狂っていた私の心が穏やかで。
     自然と、笑みが零れた。


    「……くくっ! 何故、今それを……っくく!」
    「ふふっ……だ、だって、チャンスかなと思って……ふふっ!」


     ああ、おかしい!
     駄洒落が会心の出来だったからか、彼も声を上げて笑っている。
     こんな姿は初めて見たし、それがまたおかしくて笑いが止まらない。


    「ふふっ……うふふっ」
    「……」


     笑い続ける私を見て、彼は一言、こう言った。


    「良い、笑顔です」


     降り注ぐシャッター音が、まるで拍手のように感じる。
     気の所為だろうか、記者の方達も皆笑っているように見える。


     だったら、それに笑顔で応えなければ。


    「はい――私は、アイドルですから」

    395 = 394 :

      ・  ・  ・

     結論から言えば、私が禁酒される事は無かった。


    「高垣さん、しっかり歩いてください」
    「ステップの練習で~す♪」


     会見の時のやり取りは、テレビや新聞だけでなく、インターネットの動画サイトにもアップされた。
     その反響は、当初のものとはまるで違う、とても大きなもの。
     海外のニュースでも取り上げられ、一時期は彼もその対応に追われていた程だ。


    「ほら、貴方も一緒に踊りましょう?」
    「……」


     いつもの、右手を首筋にやる彼の癖。
     そして、彼は私の手を取った。


    「あら、付き合ってくれるだなんて、『王子様』は今日は酔ってるんですね?」
    「……その呼び方は、ご勘弁を」


     反響はとても大きかった。
     それも、とても好意的にだ。
     今の彼は、『鼻かみ王子』として、世間に認識されている。

    396 = 394 :


    「うふふっ♪ やっぱり、お酒は最高ですね♪」
    「……程々にしてくださいね」


     ステップからのターン。
     曲も歌もない、気の向くまま、自由に。
     今日のお酒は、とても楽しい。


    「お二人さん! いつ結婚するんですかー!」


     突然声がかけられたが、それがどこからかはわからない。
     わからないから、大声で答える。


    「「しませーん!」」


     図らずも、彼と返事がかぶった。
     それがまたおかしくて、顔を見合わせて笑い合う。


     私はアイドル。


     彼はプロデューサー。


     他の誰が何と言おうと、私達の間にあるのは恋や愛という甘い感情ではない。
     私達がそう言うと……皆口を揃えて「頑固」と言うか、閉口してしまうのだけれど。



     私達の関係を一言で表すなら……ふふっ、今は飲み友達かしら♪



    (ED曲:『LIVE PARTY!!』)



    おわり

    397 = 394 :

    次は下品なの書きます
    おやすみなさい

    399 :

    ネタの捌き方がうまいなあ

    400 :

    次は下品なの書きます宣言ほんと好き


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