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    元スレ巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」

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    101 = 1 :

    天海「この写真、そもそも『連射』の設定されてないんすよね。だったら確実に犯行の瞬間が捉えられてるはずっす」

    入間「ああ! ダサイ原に渡したカメラには、切った後に三十秒のインターバルがあるからな!」

    赤松「え。初耳だよ、それ」

    最原「あれ? 言ってなかったっけ……?」

    赤松「……最原くんって大事なところで抜けてるよね」

    天海「なるほど。入間さんの証言を得て、なお確信したっす」

    天海「犯人は間違いなく、このコロシアイの首謀者だとね」ズギャァァァンッ!

    巌窟王「ほう……? 根拠を聞こうか」

    天海「お言葉に甘えて」

    天海「この本棚に近づく巌窟王さんの写真をよく見て欲しいんすけど……」

    天海「不自然に明るくないっすか?」

    天海「ほら。開きっぱなしの本棚に、巌窟王さんの影までできているっす」

    アンジー「あ。本当だ。なんか光源がおかしいねー。これじゃあまるで、神様が向かっている本棚が光っているような……」

    天海「実際間違いなく光ってたんすよ」

    天海「……巌窟王さんが本棚に向かった理由がまさにこれっす」

    102 = 1 :

    天海「赤松さん。隠しカメラがフラッシュなんて焚いたりしたらカメラの意味がなくなるっすよね」

    天海「つまり、このカメラはフラッシュが焚かれない設定になっていたはずっす」

    赤松「う、うん。間違いなく切ったはずだよ。最原くんに言われたもん」

    天海「それにも関わらず本棚は……いや、カメラはフラッシュを焚いた」

    天海「ということはつまり、カメラの方に何らかの仕掛けがされていたってことっす」

    天海「そうっすよね! 入間さん!」ズガァァァンッ!

    入間「……」

    入間「はい?」

    天海「キミがこのコロシアイの首謀者……俺はそう主張するっす」

    入間「えっ」

    最原「えっ」

    巌窟王「えっ」

    モノクマ「えっ」

    赤松「えっ」


    ……


    巌窟王&最原(いや、ないだろ……)

    103 = 1 :

    王馬「そっかー。入間ちゃんが犯人だったのかー。よし、じゃあ投票しようか」

    王馬「仮に犯人じゃなかったとしても口汚いメス豚女がこの世界から消えるのなら! 俺は喜んで投票するッ!」

    入間「え? え? え? 何? なんて?」オロオロ

    入間「ま、待て待て待て! 待って! お願い! 何が何だかわけわかんねーって!」アタフタ

    天海「言い逃れはできないはずっすよ」

    天海「赤松さんは上の階にいて、しかも最原くんとほぼ行動を共にしていたから犯行は不可能」

    天海「下の階にいた人たちのアリバイは、俺が証明するっす。ゴン太くんは別室にちょっとだけいたっすけど」

    天海「やっぱり犯行がほぼ不可能っすからね。AVルームから出るにはゲームルームを通るしかないんすから」

    茶柱「あれ? AVルーム側にも扉があったはずじゃ……」

    天海「忘れたんすか? あの扉、建付けが悪かったのか、ほとんど開かなかったんすよ」

    茶柱「あ、そうでした。大爆音騒ぎのときに外側からガタガタしてましたね」

    最原(……天海くんが吹っ飛んだ表紙に壊れた、あの扉のことかな?)

    104 = 1 :

    天海「さて。入間さんのアリバイは?」

    入間「え、えーと俺様は……地下にいたぜ……?」

    百田「あ? 何言ってんだ。作戦会議に来なかっただろ、テメェ」

    入間「そっちじゃねぇ! 別の地下だ!」

    最原(別の? ……って、もしかして)

    最原「まさか……裏庭のマンホールの中のこと言ってるの? デスロードに通じてる」

    入間「そう! それだ! 巌窟王が外からやってきた魔法陣はそっくりそのまま残ってたからよ!」

    入間「それを開けて、俺様たちが向こう側に行けないかどうかの実験をしてたんだ!」

    巌窟王「間が悪すぎるぞ発明家……カッドルス級か」

    天海「それを証明する人は?」

    入間「……」

    入間「お空のお星さま?」

    天海「決まりっすね」

    入間「わーーー! わーーー! 待て! 待ってくれーーー!」アタフタ

    105 = 1 :

    最原「待ってよ天海くん。アリバイがないのと、カメラに細工できたのと……それだけしか根拠がないじゃないか」

    赤松「そうだよ! 何より、私たちは巌窟王さんの死体を発見するまで入間さんが地下に降りるのを見てないんだよ?」

    王馬「どころか、入間ちゃんは事件の後、間違いなく階段を通って地下に降りてきてたしね」

    入間「そ、そうだ! モノクマにコロシアイが起こったって呼ばれて、裏庭から校舎に向かったんだぞ、俺は!」

    入間「その途中で、俺様の姿を見たヤツが何人かいたはずだ! そうだろ!?」

    「……ああ。確かに、一人で地下に降りるのにまごついていた入間を、階段脇で見かけたが……」

    キーボ「ボクと星くんと王馬くんを見て、微妙にホッとした顔をした後、悪態をついた彼女と合流して地下に向かいましたが……」

    天海「ふむ。なるほど……」

    入間「どうだチャラチャラヤリチン野郎! 俺様が犯人ってのは大間違いなんだよ! 今! 発言を撤回したら許してやるぜ! 半殺しで!」

    天海「撤回……す……す……しないっす!」バァーンッ!

    入間「何故ェ!?」ガビーンッ!

    白銀「本当にね。なんで無駄にフェイント入れたのかな」

    106 = 1 :

    天海「……赤松さん。最原くん。地下に向かう通路が一つだけ……どうしてそう言えるんすか?」

    天海「俺たちは地下のすべてを捜査することは不可能だったんすよ?」

    最原「……そうか。天海くんは、隠し扉の向こうに『地下に繋がる別の通路』の可能性を考えてるんだね?」

    天海「まず間違いなくあったはずっすよ。そうでなければどうやって説明するって言うんすか?」

    天海「巌窟王さんが本棚をいじくってない以上、あれは間違いなく首謀者が開けたとしか考えられない」

    天海「そして、本棚が開けられたのをトリガーにして、カメラがフラッシュを焚き、巌窟王さんの注意を扉から逸らし」

    天海「カメラのインターバルを縫って、隠し扉から入間さんが堂々登場!」

    天海「巌窟王さんを真後ろから襲撃して、そのまま隠し扉に戻って逃走」

    天海「これが事件の真実っす!」

    最原(……あるいはそういう真相もあったのかもしれないけど……)

    最原(いや、入間さんが首謀者。そういう可能性も確かに消えないんだけど)

    最原(今回に限っては、違う。犯人=首謀者という図式は成り立たないんだ)

    最原(でもどうやって納得してもらおう。可能性自体は間違いなくあるわけだし……)

    最原(最大の証拠品だった砲丸は巌窟王さんが燃やしちゃったしなぁ……)

    107 = 1 :

    アンジー「ねえー美兎ー。一つ聞きたいんだけどさー」

    アンジー「終一と楓がカメラの作成を依頼したとき、その用途を聞いたりしたー?」

    入間「あっ! そ、そうだ! 聞いてねぇ! この腐れアベックども、そこら辺はボカしてやがったんだ! な!」

    赤松「腐れアベック……確かに言ってないけどさ」

    天海「首謀者は何らかの方法を使って俺たちを、学園全体を監視しているはずっす」

    天海「それで疑いを外すのは無理っすよ」

    入間「ひ、ひいいいい……!」ガタガタ

    巌窟王「……」

    巌窟王「クハハハハハ! それはないぞ天海! 残念だったな!」

    天海「えっ?」

    巌窟王「実はな。視界の端でチラッと見ただけだが、あの本棚はすぐに閉まったのだ」

    巌窟王「おそらく、俺が隠しカメラの仕掛けられた本棚の方に寄る、その写真のすぐ後にな」

    最原&赤松「!」

    天海「えっ?」

    巌窟王「そうだな? 最原。赤松」

    巌窟王「お前たちが図書室に入ったとき、既に本棚は『完全に閉まった後』だったのでは?」

    最原&赤松「……」

    赤松「うん! 確かにしっかり閉まってたよ!」

    最原「ピクリともしてなかったよね! うん! うん!」

    108 = 1 :

    茶柱「まあ『隠し扉』ですからね。何もしなければ自動的に閉まるのは道理ですけど」

    茶柱「……見たのは『本棚が閉まった瞬間』だけですよね? その向こうの扉から誰かが出てきたのを見逃した可能性は?」

    天海「いや……今の巌窟王さんの発言ですべてがひっくり返ったっす」

    天海「もしも茶柱さんの言う通りの順序で殺人が行われたとしたらおかしいことが一つどころじゃすまないっすからね」

    春川「①巌窟王が隠し扉に背を向ける。②犯人が隠し扉から出てくる。③隠し扉が閉まる。④犯人が巌窟王を殺害……確かにおかしいね」

    百田「あ? それで⑤犯人が隠し扉に入って全部お終い、だろ?」

    最原「いや。ダメだ。時間が足りなさすぎる。何よりも非効率すぎるんだ」

    最原「犯人が首謀者だった場合、③の工程が無駄すぎるんだよ」

    春川「①巌窟王が隠し扉に背を向けて②犯人が隠し扉から出てきて③巌窟王を殺害し④犯人は隠し扉に戻り⑤本棚が閉まって終了」

    春川「この③と④の間は、本棚と扉は開けっ放しじゃないとおかしいよ。すぐに赤松と最原が来ることすら首謀者はわかってるんだからさ」

    春川「⑤の時点で最原か赤松が、本棚が閉まる瞬間とかを見てれば全然不自然じゃなかった」

    春川「あるいは、隠し扉以外の方法で逃げる途中の犯人を見かけていれば、ね」

    獄原「それはもう逃げた後だったんじゃ……」

    天海「それはないっすよ。だって、図書室の二つの出入り口は隠しカメラで撮影されてましたし」

    天海「仮にそれを何らかの方法でクリアできたとしても、誰にも目撃されずに出ることは、やっぱり不可能っす」

    最原「階段から見て正面の出入り口は僕と赤松さんが使うからノーカウント」

    最原「もう一つの方の出入り口も、天海くんがAVルームの扉を壊して廊下に転げ出た時点で、やっぱりアウト」

    宮寺「最原くんと赤松さんが扉から入った後、扉の影に隠れていた犯人が入れ替わり外へ……とかは?」

    最原「ないよ。巌窟王さんの死体を見つけた後は混乱しっぱなしだったけどさ。それ以前の見落としはない」

    天海「超高校級の探偵の名にかけて、断言できるんすか?」

    最原「……」

    最原(ここはハッタリを利かせた方がいい、か)

    最原「うん。断言するよ」

    巌窟王(それでいい)ニヤリ

    109 = 1 :

    休憩します!

    110 = 1 :

    最原(……)

    最原(それにしても、やっぱりか。僕はともかく赤松さんには、巌窟王さんの嘘に乗る意味がない)

    最原(このやり取りで完璧にわかったよ。犯人がわかっている人間は、現時点で砲丸を調べた僕と、巌窟王さんと、犯人自身のみ)




    最原(やっぱり、砲丸を投げたのはキミだったんだね。赤松さん)

    入間「ば、バカ松~~~! ダサイ原ぁーーー! もっと早くに言えよ、そういうことはよぉーーー!」

    赤松「入間さんがそういう人柄でなかったら言ってたかもね……」

    入間「ひ、ひでぇ!」ガビーンッ

    赤松「よくそこまで自分を棚上げできるなって感心するよ……」

    入間「……」

    入間「あ、なんか気持ちよくなってきたかも……」ハァハァ

    赤松「!?」ガビーンッ

    111 = 1 :

    最原(……どうすればいい。教室の通気口と、図書室の通気口が繋がっていることを指摘できるのは僕だけだ)

    最原(そこから砲丸を放り投げれば、あとは自動的に砲丸が転がって、巌窟王さんの頭上に直撃する)

    最原(……転がるときの音は、どうにでもできる。そしてそのトリックこそが、彼女を追い詰める最後の証拠を指し示すはずだ)

    最原(巌窟王さんは何かをするつもりだ。その計画に僕は乗れるのか……?)

    最原(……信じるとは言った。ああ、そうだ。僕は巌窟王さんを信じることは辛うじてできる)

    最原(今の僕が信じることができていないのは……紛れもなく僕自身だ……!)

    巌窟王「……」

    巌窟王(最原は黙ることを選んだか? ……それもいいだろう)

    巌窟王(所詮はその程度だった、ということだ。成長性はあるかもしれないが、今は興味を向ける価値がない)

    巌窟王(逆に赤松はまだ見どころがあるな。さて……何故自分の首を絞めるようなことを言った?)ニヤリ

    巌窟王(このまま入間にすべてを被せる道もあったはずだぞ?)

    赤松「……」

    112 = 1 :

    赤松「とにかく、議論を続けてみようよ。そうしたら他の可能性が見えてくるかもしれないから」

    天海「……結局、なんで本棚は動いたんすかね? こんなことをしたところで、首謀者に何の得が?」

    赤松「……」

    東条「そこは後回しにしましょう。現時点では突破口が見えないわ」

    東条「他に何か、おかしいことは起こらなかったのかしら?」

    夢野「まあ起こったのう。どう考えてもおかしいことが」

    アンジー「ゴン太の大爆音ロードショー事件だねー! あれは本当に驚いたよー!」

    宮寺「聞かせてもらえるかな? 僕たちは一つでも情報が欲しいからネ」

    獄原「うん! と、言っても本当に意味がわからないんだけど」

    獄原「あのね。ゴン太がAVルームに入ったとき、映写機からトレイ、ブルーレイに至るまで全部用意された状態だったんだ」

    獄原「電源はついてたし、トレイの上にブルーレイは乗ってたし、そのトレイを親指で押せばすぐにでも自動再生されるような状態でね?」

    獄原「リモコンはなかったけど、まあ別にいいかって思って、ゴン太がトレイを親指で押して、映像が再生されたんだけど」

    茶柱「……何故か大音量の設定になってたんですよ。お陰で耳が壊れるかと思いました」

    アンジー「神った大爆音だったよねー! 音で平衡感覚を崩すって感覚を初めて味わったよー!」

    113 = 1 :

    茶柱「実はその大爆音が響く直前に、天海さんが『ちょっと用事がある』ってゲームルームを出て行ったんですが」

    茶柱「天海さん。元は一体何をするつもりだったんですか?」

    茶柱「転子が驚いてゲームルームを飛び出して、廊下側からAVルームに入ろうとしたときに鉢合わせしましたけど」

    天海「……図書室に行こうとしただけっすよ。兵法書でも置いてあるかと思って。その途中であの大爆音っす」

    天海「首謀者が何かしかけてきたのか、と考えて行動を一旦中止して、音源を意識してみたらAVルームからの音だと気づいて……」

    天海「で、AVルームのドアを開けようとしたら開かなかったので、急いでゲームルーム側からAVルームに入ろうと引き返したってわけっす」

    赤松「私たちが地下に行ったとき、確かに凄い音がしてたよね……」

    春川「止めるのに随分と手こずったからね」

    春川「電源ボタン、音量操作のツマミ、取り出しのスイッチのすべてが壊されてたから」

    百田「電源コードを抜くのにも、機材の後ろのなんかゴチャッとした部分に隠れてる上に、手が届かないほど狭くってよ」

    百田「コードを抜くにしても、機材を大胆に動かさないといけないって話になりかけてたよな」

    天海「そのゴタゴタの中、俺が茶柱さんに理不尽に殴られて、AVルームと廊下を繋げるドアが派手にぶっ壊れたんす」

    天海「痛みに悶絶している内に、最原くんの叫び声が図書室から聞こえてきて……」

    赤松「……で、血塗れの天海くんが私たちに合流した、ってことね」

    赤松「ビックリしすぎて凄い悲鳴出しちゃったよ……」

    天海「その節は本当にすみませんでした……」

    114 = 1 :

    東条「……」

    東条「待って。今、聞き逃せない情報が出たのだけど」

    獄原「え?」

    東条「天海くんはずっとあなたたちと一緒だったわけではなかったの?」

    天海「……」

    天海「あっ」ダラダラダラ

    王馬「あれ。あれあれあれ? どうしたの天海ちゃん。凄い汗だよ?」ニヤニヤ

    百田「あ、天海……まさかテメェ……!」

    茶柱「天海さんが、犯人だったんですかッ!?」ガビーンッ!

    巌窟王(クハハ。それみろ。最原。お前が口を開かないから愉快なことになってきたぞ?)

    巌窟王(まあ、すぐに天海の容疑は晴れるだろうがな)

    巌窟王(あのドアを開けるだけなら入口の隠しカメラは作動しない上に、砲丸を全力で投げれば俺を殺せるだろうが)

    巌窟王(そのとき、隠し扉の本棚が障害物になって、天海が砲丸を投げたとしても俺に届かない……)

    巌窟王(……)

    巌窟王(あっ)

    赤松「え? それは無理じゃない? だって……」

    赤松「あっ」

    最原「……」

    最原「あっ」





    三人(本棚は"なかったことになった"んだったーーー!)ガビーンッ!

    115 = 1 :

    休憩します!

    116 = 1 :

    天海「は、ははははは……何を根拠に……」アタフタ

    天海「そもそも! 俺が図書室に入って巌窟王さんの頭をカチ割ろうとしたら、図書室の中に入らないといけないっすよね!?」

    天海「そうなったら図書室の出入り口の隠しカメラが作動して……!」

    東条「待って。ドアを開ける必要はあるけど、中に入る必要はないわ」

    東条「ドアを開けるだけなら隠しカメラは作動しないはずよ」

    天海「いや、それは……!」

    東条「そして、砲丸は本来投げるもの。巌窟王さんとあなたの距離が離れていることは大した問題にならないわ」

    東条「ついでに、巌窟王さんの頭に砲丸が直撃する前に隠し扉の本棚は閉じている」

    東条「これは第一発見者の最原くんと赤松さん、そして被害者である巌窟王さん本人が証言しているわ」ズバァァンッ!

    天海「……」

    天海「ぬがっは!?」ガビーンッ!

    赤松「ま、待って! 天海くんは犯人じゃないよ! ね! 最原くん!」

    最原「えっ、それは……!」

    最原「……」

    赤松「……最原くん?」

    117 = 1 :

    最原(……天海くんを助けることは当然できる。しかも本棚が閉じていたという嘘を撤回せずに)

    最原(そして、僕には助ける理由がある。天海くんは僕たちの仲間だからだ)

    最原(……でも、僕は……!)

    巌窟王「……」

    巌窟王「迷うな、最原終一!」

    最原「ッ!」

    巌窟王「最後まで口を閉ざしていようかと思ったが、事がこう転んだ以上、仕方あるまい」

    巌窟王「お前の力は確かに人を不幸にする。それをお前は恐れているのだろう」

    巌窟王「だが、それがどうした! 悪のままでも正義は成せるぞ!」

    巌窟王「……違う。訂正する。勝たなければ、歩みを止めたら正義になれない!」

    最原「……巌窟王さん」

    巌窟王「この状況はあまりにもおあつらえ向きだ」

    巌窟王「天海を助けることを大義名分にして、真の犯人をお前は指摘できる!」

    巌窟王「至極愉快。至極愉悦だろう! 何を迷うことがある!」ギンッ

    アンジー「……さっきから何を言っているの? 神様」

    百田「わかるように言え、巌窟王!」

    巌窟王「いいだろう! つまりこういうことだ!」

    巌窟王「真実から目を逸らすな! お前の戦いに手を貸すつもりはないが」

    巌窟王「それ以外の部分では、俺がカタをつけてやる!」

    最原「……」

    最原「……東条さん」

    東条「……?」





    最原「それは違うぞ!」論破!

    118 = 1 :

    最原「……そもそもの話、巌窟王さんが地下に降りたことを知ってたのは、赤松さんと僕だけだよ」

    最原「だって、巌窟王さんと別れたとき、ゲームルームからは誰も出てこなかったからね」

    最原「いや、そもそも巌窟王さんが図書室を訪れたこと自体、僕たちには予想のできない『気まぐれ』のようなものだったはずだよ!」

    最原「だって! まさかわざわざ巌窟王さんが卒業アルバムのために写真術を習おうとするなんて、誰が予測できるの?」

    巌窟王「!?」ガビーンッ

    最原「あ、ごめん。秘密にしておきたかった……? 本棚から一つだけ飛び出てたからわかったんだけど……」

    巌窟王「振り返るな……ただの致命傷だ……!」ガタガタ

    最原「ほ、本当にごめん……」

    東条「それすら首謀者なら、監視を通じてわかったかもしれないわ」

    最原「仮にわかったとしよう。でも、そんな素振りを天海くんは見せたの?」

    最原「僕たちが持ってた防犯ブザーみたいに、本棚に誰かが近づくことを知らせる機械を天海くんは持ってた?」

    最原「百歩譲って、タイムリミット寸前に扉に近づく人間を仕留めようと首謀者が考えたとしても」

    最原「それなら百田くんの作戦会議に同行しようなんて考えないよ!」

    最原「だって、行動が全部バレちゃうんだからさ! 適当な理由つけて断って、さっき天海くんが言ってたような……」

    最原「地下に通じる別の入口を経由して、素直に隠し扉から出てきて、こっそり巌窟王さんを仕留めるよ!」

    東条「それじゃあ、天海くんは首謀者ではない、ただの殺人を計画した一般生徒だったとしたら?」

    最原「猶更ダメだ。本棚が勝手に開くことと、隠しカメラの位置を知らない」

    最原「隠しカメラを前提とした計画を立てられないよ」

    東条「……なるほど。納得したわ」

    119 = 1 :

    夢野「それ以前に、首謀者は隠し扉の中から本棚を操作した、という話ではなかったのか?」

    宮寺「いや。僕たちは向こう側を調べることができなかったからネ。他に可能性はいくらでもあるヨ」

    宮寺「遠隔操作説。センサー説。中から開けた説……本当にいくらでもネ」

    最原「……本棚を動かしたのは間違いなく首謀者だよ。巌窟王さんが本棚を操作してないから」

    最原「方法はわからない。真宮寺くんの言う通りだ」

    最原「……でも今回はそれを考える必要はないよ」

    最原「だって、首謀者と今回の犯人は完全に別人なんだから」

    百田「……まさか、最原。お前……!」

    キーボ「その口ぶり、犯人がわかったんですか!?」

    最原(喉が渇く。唇が裂ける。目の焦点が定まらないし、運動しているわけじゃないのに呼吸が荒くなってきた)

    最原(……それでも、もうこのまま慣性に任せて突っ走るしかない。巌窟王さんに背中を押された勢いが消える前に!)

    最原「……巌窟王さんは、どうしてそんな大爆音の中、AVルームに顔を出さなかったのかな?」

    天海「それは、そのときには既に巌窟王さんが死んでいたからでは?」

    最原「違うんだ……そうじゃない。巌窟王さんにとって、その大爆音が『都合がよかった』からだよ」

    アンジー「……都合がいい?」

    120 = 1 :

    最原「巌窟王さんは、出来る限り秘密裏に写真術の本を手に入れようとしてた」

    最原「だから、あの大爆音騒ぎは都合がよかったんだ。他の生徒たちが全員そっちに向かうからね」

    最原「あと、巌窟王さんの用事はつまるところ『本を回収する』。それだけだ。回収した後でゆっくりと顔を出せばいい」

    王馬「なるほどねー。そういうことか。本気であの本が欲しかったんだね、巌窟王ちゃん!」ニコニコ

    巌窟王「……」

    最原「……ねえ。天海くん。フラッシュの件で、無意識に可能性を除外したんだろうけどさ」

    最原「そもそも、隠しカメラのフラッシュをONに出来る人間が、もう一人いたよね」

    最原「入間さん以外に」

    天海「……」

    天海「ははは……まさか。だって、その人のアリバイは最原くんが……」

    最原「証明できないよ。ずっと目を離さなかったわけじゃないから」

    赤松「……ふふっ」

    最原「……」

    最原「赤松さん。キミがこの事件の犯人だ」

    121 = 1 :

    休憩します!

    122 :

    強烈な異物が混じっても裏ルート程度の違いしかでないところが実にダンロン

    123 = 1 :

    赤松「……あははっ! そんなのおかしいよ」

    赤松「確かに最原くんとずっと一緒にいたわけじゃないけどさ」

    赤松「巌窟王さんの死体が発見されるまで、私は地下に行ってないんだよ? それでどうやって巌窟王さんを殺すの?」

    最原「凶器が砲丸単体だけじゃなかったとしたらどう?」

    赤松「……何のこと?」

    最原「あの図書室全体が凶器だった。そう考えられるはずだよ」

    入間「図書室全体が凶器だぁ……?」

    入間「どういうことだ? 俺様はまさに全身が男子に対して特攻宝具だけどよ」

    巌窟王「黙っていろ! 今は最原の見せ場だッ!」ギンッ

    入間「ぎひい!」ビクウッ

    アンジー(あ、なんか神様がめっちゃワクワクしてる……黙っとこ)

    124 = 1 :

    最原「さっき入間さんのドローンの空撮でわかったことだけど、あの図書室の本棚、僕たちには見えないところが階段状になってたんだ」

    最原「そしてその階段の頂上は、図書室の通気口に通じていた」

    最原「……図書室の通気口は、教室の通気口に通じてるんだよ。そこから砲丸を投げれば……!」

    天海「まさか、巌窟王さんがいる場所まで砲丸が転がっていくっていうんすか?」

    最原「うん。そうやって犯人は現場に近づくことなく巌窟王さんを殺害したんだ」

    百田「んなバカな! そんな都合よく行くわけねーだろ!」

    キーボ「確かに。条件が厳しすぎますね」

    キーボ「まず①巌窟王さんが本棚に近づいていること。次に②そのタイミングを見計らって砲丸を投げること。最後に③砲丸の存在が殺害対象にバレないこと」

    キーボ「……ざっと上げただけでもかなりの難易度です。砲丸と図書室の二つの凶器だけではどうにも」

    最原「なるよ。凶器はまだある」

    最原「……まず前提がおかしかったんだけど、犯人は本当に巌窟王さんを殺す気だったのかな?」

    百田「あ? 実際巌窟王が死んでたんだから、そうに決まってるんじゃねーのか?」

    最原「そうじゃない。僕はそう考えるよ」

    最原「この殺人事件のテーマは『殺意の行方』だ。砲丸の先に、本当は誰がいるべきだったのか……」

    最原「……突き止めて見せるよ。巌窟王さん」

    巌窟王「やってみろ」ニヤァ

    125 = 1 :

    最原「まず第一のファクター。巌窟王さんを本棚に近づける方法だけど」

    最原「これは赤松さんの仕掛けた『フラッシュをオフにしていない隠しカメラ』で可能だ」

    最原「第二のファクター。そのタイミングを見計らう方法だけど……」

    最原「これは赤松さんなら可能だよ。本棚が動いたタイミングで、僕の持ってた防犯ブザーが鳴るようになってたからね」

    キーボ「……あれ? でも本棚が動いたのは首謀者が動かしたからで……巌窟王さんの意思とは無関係ですよね?」

    最原「そこが問題だよ。『本棚が動くこと』がすべての始まりなのに、巌窟王さんは隠し扉を開ける術がない」

    最原「この齟齬の正体は、巌窟王さんが首謀者ではなかったからなんだ」

    最原「一体あそこには本当は誰がいるべきだったのか。ここまで来ればもう自明だよね?」

    宮寺「……ああ、そうか! そうか! 赤松さんは『首謀者を殺害したかった』んだネ!」

    宮寺「だからトリックの起点が隠し扉に集中してたんだヨ!」バァーーンッ!

    巌窟王「……」ワクワク

    モノクマ「あ。ポップコーンとコーラ用意してるけど、いる?」

    巌窟王「頂こう!」

    巌窟王「美味い!」テーレッテレー!

    百田「おい。なんか巌窟王が超エンジョイし始めたぞ」

    春川「自分の殺人事件なのに……」

    126 = 1 :

    夢野「なるほどじゃのう。首謀者は監視によって赤松の殺人計画の乗っ取りを思いつき」

    夢野「巌窟王が図書室を訪れ、いい感じの位置に来たときに本棚を動かし、赤松の殺人計画を始動させた……」

    夢野「んあー……こうなってくると、果たしてクロを赤松として考えていいか微妙ではないか?」

    夢野「首謀者が本棚を動かしたりしなければ、赤松はそんなことしなかったはずじゃぞ?」

    巌窟王「それに関しては後でモノクマに問い合わせるといい。ゲームの処理がわからなくなったときこそゲームマスターの出番だろう?」ボリボリ

    入間「顔が変形するほどポップコーンを食ってやがる……」

    アンジー「でも問題はまだ残ってるよねー。第三のファクター、砲丸の存在の隠蔽がまだだよー」ボリボリ

    アンジー「砲丸を転がしたとなると、本棚の上の部分からゴロンゴロンと音が出て、うわ何このポップコーン神ってるうっま」ボリボリ

    茶柱「いつの間にかアンジーさんも食べてますしッ!」

    巌窟王「俺が分けた」

    アンジー「神様ありがとー!」

    キーボ「ちょっとは空気を読んでくれませんか!?」ガビーンッ!

    127 = 1 :

    獄原「待って。音なら大丈夫だよ。だってそのときはゴン太の大爆音騒ぎの最中だったんだからさ!」

    茶柱「それです! ゴン太さんの見ていた映像が偶然、赤松さんの砲丸の音をかき消したんです!」

    最原「……偶然? そんなものが存在するとしたら、そのときたまたま図書室を訪れた巌窟王さんだけだよ」

    最原「あの大爆音騒ぎに関しても、赤松さんの計画の内だ」

    赤松「ふーん」

    アンジー「……」

    アンジー「喉が渇いてきた……」

    巌窟王「コーラもわけてやろう」シュンッ

    アンジー「わーい!」

    百田「もういい加減エンジョイするのやめろッ!」ガビーンッ!

    「ポップコーンのバター臭がひでぇ……」ゲンナリ

    128 = 1 :

    最原「ちょっと話は逸れるかもしれないんだけど、ひとまずこう仮定してみて?」

    最原「赤松さんの手にAVルームの映写機を自由自在に操れる方法があるとする」

    最原「次に、赤松さんは首謀者を殺したい。それも一部の隙もなく完璧に」

    最原「赤松さんの中の首謀者の行動予測は……最悪なことだけど、僕が言ったことそっくりそのままのはずだ」

    最原「『リミット直前に、人目を憚って隠し扉に向かうはず』。これを念頭に置いてトリックを構築したからこそ巌窟王さんへと殺意が向かったんだ」

    天海「……」

    天海「そうか。そういうことっすね! あの大爆音は砲丸の音を消す物理トリックであると同時に……!」

    最原「『人目を憚って図書室に向かっている人間のみを選別する心理トリック』としての意味もあったはずだよ」

    最原「そして、僕たちの考えた首謀者のプロファイルと、現実の巌窟王さんの行動の方向が奇しくも重なったから」

    最原「……あんなことになったんだ」

    王馬「超高校級の探偵である最原ちゃんはともかくとして、天海ちゃんまでそこに気付くなんて」

    王馬「もしかしてキミも『人目をはばかる必要のある秘密』の持ち主だったりして……?」

    天海「……深読みっすよ」

    130 = 1 :

    東条「……あら? 夜長さんが消えてるわね?」

    春川「お腹いっぱいになったら眠くなったって言って、ほら」

    アンジー「すぴー」スヤァ

    巌窟王「……(静かにしろ、のポーズ)」

    春川「巌窟王の膝の上に座って寝てる」

    東条「……」





    モノクマー椅子「お、重い……!」プルプル

    巌窟王「耐えろ」

    131 = 1 :

    夕飯の休憩!

    132 = 1 :

    最原「みんながモノクマの現像した写真を受け取りに倉庫に行ったとき、僕は実験してたんだ」

    最原「あの大爆音はどの程度、上の階まで響くのか。気になってさ」

    最原「……僕も耳は良い方なんだ。かなり時間はかかったけど、ちゃんと聞こえたよ」

    最原「下の階から響く、AVルームの大爆音がさ!」

    赤松「……」

    最原「あと、モノクマの持っていたAVルームの予備のリモコンも操作してみたよ」

    最原「直線距離だとそんなに離れていない上に、モノクマが無駄に機能を高性能にしていたからか、教室からでもギリギリ指示が通った」

    最原「ゴン太くんがトレイを押して、映写機を起動させたことこそが偶然だったんだよ! 本当は……!」

    赤松「私が隠し持っていたリモコンで、AVルームの映写機を操作するはずだった、かな?」

    赤松「うーん、それもやっぱり無理がないかな?」

    白銀「え? 無理があるって、どこに?」

    赤松「あのさ。そもそも犯人が、その発想に至ることができたのかなって」

    赤松「普通教室からリモコンの指示が、地下のAVルームに通るなんて思わないよね?」

    百田「……た、確かにそうだ。まさかモノクマに聞くわけにもいかねーしな」

    百田「だって、今までの前提だと『赤松が殺したがってたのは首謀者』なんだろ?」

    百田「モノクマにリモコンの有効範囲を聞くわけにはいかない。なら……!」

    最原「赤松さんがリモコンの有効範囲や、そもそも大爆音が教室から聞けるってことを知る機会がない……か」

    最原「……僕みたいに実験すればいいだけの話だよ。事件の前にね」

    赤松「それ、いつのこと?」

    最原「アンジーさんに聞いてみればわかるよ。アンジーさん!」

    最原「あれ? 席にいない」

    春川「最原。あっちあっち」

    最原「……」

    最原「寝てる!」ガーンッ

    133 = 1 :

    巌窟王「……アンジー。起きろ。我がマスター、夜長アンジーよ。出番だぞ?」ユサユサ

    アンジー「むにゃ……眠いー」ウトウト

    最原「え、えーと。アンジーさん。昨日のことを話してほしいんだ」

    最原「モノクマと鬼ごっこをしてた、あのときのことをさ」

    アンジー「うー……」

    アンジー「えっとねー……神様がタバコを欲しがってるってねー……聞いてねー……」ウツラウツラ

    アンジー「でねー……モノクマに頼めばもしかしたらくれるかもーって……言われてねー……」ウトウト

    アンジー「……」スピー

    巌窟王「これだけ聞ければもう充分だろう?」ニヤァ

    獄原「聞いた? 言われた?」

    キーボ「それって、誰に。まさか……!」

    最原「……赤松さん。キミだったりしない? アンジーさんをモノクマに焚きつけたのってさ」

    赤松「あー……確かにアンジーさんにそんなことを言った気がするなー……まあ世間話の一環だけどさ」

    赤松「で? それがどうかしたの?」ニコニコ

    最原「この後、モノクマとアンジーさんは三時間も鬼ごっこしてたんだ」

    最原「その三時間があれば、実験はいくらでも可能なはずだよ!」

    最原「……どころか、隠し扉とモノクマの因果関係を調べることすら可能かもしれない!」

    赤松「アンジーさんにかかりっきりだったモノクマが、実験中に急に私のところに来たら作戦はそもそもアウト」

    赤松「もしかしたら隠しカメラの計画も、もっと早い段階でバレていたかもしれない。それを調べる意味も含めた実験」

    赤松「……そういうこと?」

    134 = 1 :

    赤松「は、はは……あはははははは!」

    赤松「弱い……弱い弱い弱い弱いよ! ピアニッシモより更に弱く!」

    赤松「ピアノ・ピアニッシモ級に本当に弱い!」

    赤松「全部状況証拠じゃん! 何一つとして物的証拠がないでしょ!?」ゲラゲラゲラ

    百田「お、おい。赤松?」

    巌窟王「赤松、貴様……!」

    巌窟王「アンジーが起きる。もうちょっと静かにしろ……!」

    赤松「あ、ごめん」スンッ

    茶柱「赤松さんも……大概弱いですね……」

    135 = 1 :

    最原「赤松さん。キミが何を言おうと、もう僕は真実から目を逸らさない」

    最原「……まだ僕は僕自身を信じることはできないけど……」

    最原「それでも、巌窟王さんを信じることはできる。彼に背中を押された以上は、止まることはできないんだ!」

    赤松「……」

    赤松「……また巌窟王さん、か……寂しいな」

    最原「えっ?」

    赤松「いいよ。そこまで言うのなら証拠を出してみて」

    赤松「それで決着を付けよう。そして終わりにしよう」

    赤松「……全部ね」

    最原「……赤松さん、キミは……!」

    巌窟王「最原。望み通りにしてやれ」

    最原「!」

    巌窟王「……それが彼女のためだ」

    最原「……うん。わかった」

    最原「決着を付ける。この事件に、決定的な終止記号を刻む」

    最原「それが僕の戦いだ! 巌窟王さん!」

    136 = 1 :

    赤松「教えて。私が首謀者を殺す計画を立てた、その決定的な証拠って何?」

    最原「……リモコンだ」

    赤松「……」

    獄原「それって、AVルームのリモコンのこと?」

    王馬「そうか! 最原ちゃんはそれを、どこか重要な場所で見つけたんだね! 赤松ちゃんの部屋とか!」

    王馬「だとしたらそれは重要で、決定的な証拠になるよ! 確かに!」

    最原「いや? 見つかってないけど」

    王馬「カーッ、ペッ」

    百田「急にどうでもいい態度取るなよ! 最後まで聞け!」

    最原「見つかってない、っていうのが重要でさ。さっきも言ったけど、赤松さんが犯人の場合はAVルームから大爆音が響かないとダメでしょ?」

    最原「だとしたらリモコンは、砲丸を投げたその時点では確実に持ってたはずだ」

    最原「その後は?」

    東条「……処分するか……または……」

    東条「ああ、そう。そういうこと、ね」

    茶柱「えっ? 何? なんです?」オタオタ




    最原「……すべてが終わるまで、ずっと肌身離さず持ち歩いているか、だ」

    137 = 1 :

    天海「……」

    天海「赤松さん。さっきからの態度を見る限り、正直もうまともに反論する気すらなくなってるっすよね?」

    天海「……見せてくれるんすよね。バッグの中身」

    赤松「……はあ」


    バサッ


    最原(赤松さんが無造作にバッグを脱ぎ、それをおもむろにひっくり返す)

    最原(何度か上下に振った後、それはゴロリと外へ出てきた)


    ゴトンッ


    獄原「……ッ!」

    宮寺「これが?」

    獄原「うん……ゴン太は何回かAVルームで虫さんの映像を見てたから……間違いないよ……!」

    獄原「AVルームの……リモコンだ……!」

    138 = 1 :

    巌窟王「……これで終わり、のようだな」

    最原「うん。最後に僕が事件のすべてを振り返って……全部を明らかにして……」

    最原「そうしたら、後は全部巌窟王さんに任せるよ」

    最原「……そこから先は、巌窟王さんの戦いだ」

    巌窟王「いいだろう。少なくとも、お前たちは合格だ」

    巌窟王「……有終の美を飾れ。最原。それが勝者の権利だろう」

    最原「うん」

    赤松「……」

    赤松(気に入らない。でも……仕方ない、か)ハァ

    139 = 1 :

    休憩します!

    140 = 1 :

    クライマックス推理

    最原「まずは事件を最初から振り返ってみよう」

    最原「モノクマからの動機としてタイムリミットを告げられた僕と『ある人物』は、首謀者を確保するために一計を案じることにした」

    最原「そのある人物こそが、今回の事件の犯人だよ」

    最原「まず図書室に隠しカメラをいくつかセット。そのとき、隠し扉に向いたカメラのみは犯人がセットしたんだけど」

    最原「そのとき、あえてカメラのフラッシュが焚かれるようにしたんだ」

    最原「後で首謀者を隠しカメラに誘引するためにね」

    最原「でも首謀者確保計画は、どの時点でかはわからないけど結果的に失敗することになる」

    最原「首謀者が犯人の殺人計画に気付き、それを利用してコロシアイを発生させるように仕向けたからね」

    141 = 1 :

    最原「次に、犯人は僕と別れた後、モノクマの気を引き付けて、更に殺人計画の精度を上げることにした」

    最原「まずアンジーさんをモノクマに焚きつけて、その注意を逸らした後で……」

    最原「地下のAVルームを使った実験を開始した」

    最原「そのときにリモコンの有効範囲と、大爆音なら教室へと微かに音が届くことに気付き……」

    最原「AVルームの機械一式に工作を仕掛けた後で、実験を終了したんだ」

    最原「多分この時点で犯人は『首謀者は何かと理由を付けて、多くの人間を巻き込んで地下に行き、隙を見つけて隠し扉に行く』と想定してたんだろうね」

    最原「そうでなかったら、こんな心理トリックは思いつかない」

    最原「『地下に多数の人間が集まっていることが前提になった心理トリック』だからね」

    最原「さて……ここから先は、犯人以外にも二人の人間の思惑が複雑に絡み合うことになる」

    最原「それは首謀者と、被害者である巌窟王さんだ」

    142 = 1 :

    最原「作戦会議に参加するため、七人の生徒が地下に降りて行った後、僕はそれの様子を見に下へ向かった」

    最原「その後で降りてきた巌窟王さんとは、僕が鉢合わせしてる」

    最原「彼は卒業アルバムの制作のために、写真術の本をこっそり図書室から持ち出そうと考えていたわけだけど……」

    最原「このとき、彼は僕たちが予測していた首謀者のプロファイルと同じ特徴、『人目を憚って図書室へと向かう人間』の条件に偶然一致してしまっていた」

    最原「これが最大の不幸だよ。その点を首謀者に利用されてしまったんだ」

    最原「僕が巌窟王さんと別れて上の階へと戻った後、巌窟王さんは図書室へと入り……」

    最原「犯人が起動させる前にゴン太くんが映像を再生させてしまった」

    最原「当然、巌窟王さんもその音を聞いていただろうけど、用事が済んでいなかったから後回しにしようと考えたんだろうね」

    最原「何より、彼にとって好都合だった。秘密裏に本を持ち出そうと考えていた巌窟王さんは、このとき『ラッキー』だとすら思ったかもしれない」

    最原「でも実際のところ、それはすべて自分の身に降りかかる悲劇の序曲にしか過ぎなかった……」

    143 = 1 :

    最原「巌窟王さんが図書室の奥のあたりまで本を探しに来たタイミングで、首謀者は隠し扉の本棚を開放した」

    最原「その時点で、僕の手にあった防犯ブザーが鳴り始め、そして巌窟王さんに向かってカメラが切られ、フラッシュ」

    最原「事件が大きく動き出すのはそこからだ」

    最原「まずカメラの方に向かって……というより偶然そこにあった写真術の本に向かって巌窟王さんが接近」

    最原「次に、僕が教室を急いで飛び出した後、犯人は地下から聞こえてくる微かな音を聞き取り、仕込みが既に終わっていることを確認した後……」

    最原「教室の通気口に向かって砲丸を投げたんだ」

    最原「砲丸は本棚の上に作られた階段を転がり、最終的に巌窟王さんの頭上へと落下」

    最原「彼の命を無残に奪った……!」

    最原「そして、大爆音騒ぎで右往左往している天海くんたちを後目に、僕たちは図書室へと直行」

    最原「そこで事切れた巌窟王さんを目撃したとき、犯人が何を思ったのか……それはまだわからない」

    最原「……でも、絶対に答えてもらうよ。最後の最後まで、僕は僕の戦いを貫く必要があるから」

    最原「そうでなければ、僕は何も納得できないから……!」

    144 = 1 :

    最原「ここがキミの殺意の行方……その果てだ」

    最原「超高校級のピアニスト、赤松楓さん!」


    バキバキバキッ ガシャァァァァンッ!

    COMPLETE!

    145 = 1 :

    今日のところはここまで!
    ……マチアソビのなんやかんやで石貰えないかなー

    146 :

    天海「それが……真相?」

    天海「……いえ。そうとは限らないはずっすよ。やっぱり首謀者が巌窟王さんを殺したのでは?」

    天海「例えばそう、赤松さんの殺人計画を利用するつもりなら、首謀者が自分で……!」

    最原「ごめん。実はもうその可能性はとっくに消えてたんだ」

    巌窟王「天海。お前のその推測はおそらく『首謀者が似たような砲丸を持って背後から襲撃』のようなものだろう」

    巌窟王「だがその方法は前提として、赤松の砲丸が俺に直撃せずに外れる必要がある」

    巌窟王「既に死んでいる人間を更に殺すことなどできないからな」

    天海「……」

    巌窟王「赤松が投げた砲丸は間違いなく俺に当たった。外れていない」

    巌窟王「砲丸が外れていたとしたら、流石に俺も口を挟んでいるぞ」

    最原(それに、巌窟王さんが燃やしちゃったけど、あの砲丸には一つの決定的な証拠が付いてた)

    最原(赤松さんのベストと同じ色合いのピンク色の繊維。多分、彼女は替えのベストに砲丸を包んでたんだろうね)

    147 = 1 :

    赤松「あーあ。バレちゃったか」

    赤松「……」

    赤松「本当に気に入らないなぁ。こんなの私が望んでた最良の結末とはかけ離れてる」

    茶柱「赤松……さん?」

    巌窟王「見事なトリックだったぞ、赤松」

    巌窟王「図書室全体に本で作った階段を仕込んだことではない」

    巌窟王「図書室に一切足を踏み入れずに殺人を犯したことでもない」

    巌窟王「お前のトリックの一番のキモは、あの大爆音を利用した物理、心理両用トリック」

    巌窟王「……ククク。殺人の一番厄介な性質を教えてやろう」

    巌窟王「人はな。人を殺すとどうしても自慢したくなるのだ。例えそれで不利に陥ろうとな」

    巌窟王「一応言っておくが、最原が教室から大爆音を聞けたのは『探偵だったから』だ」

    巌窟王「それを犯行に転用しようと思ってもできん」

    巌窟王「……ピアニストたる優秀な聴覚を持っているお前でなければ、あのトリックは成立しえないのだよ」

    赤松「……被害者が犯人を褒めるってどうなの」

    148 = 1 :

    モノクマ「議論の結果が出たようなら、投票タイムに行っちゃってもいいっすか!?」

    赤松「そうだね。これ以上話すことは特にはないし」

    最原「いや。まだあるはずだよ」

    最原「……なんで初回特典を蹴ったの?」

    赤松「……」

    最原「罪悪感……なんておかしいよね。だってあのときモノクマ以外の全員は巌窟王さんが死んでないことに気付いてたんだ」

    巌窟王「我が宝具の力が多少なりとも働いていたのかもしれんな。情報隠蔽、偽情報の開示など、その効果は多岐に渡る」

    巌窟王「だが生徒一同にその力は向いていないぞ? よもや気付かなかったなどと言わないだろうな?」

    赤松「……私もさ。ちょっとは役に立ちたかったんだ。巌窟王さんみたいに」

    最原「えっ。それって……」

    モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰なのか」

    モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーーーッ!」

    モノクマ「さあ! どうなんだーーー!?」

    149 = 1 :

    赤松楓:十七票

    モノクマ「だーいせーいかーーーいっ! 巌窟王さんを殺した今回の事件の犯人は……」

    モノクマ「超高校級のピアニスト、赤松楓さんだったのでしたーーーッ!」

    百田「くっ……なんでだよ……!」

    百田「首謀者を殺したかったっていうのはわかった。実際、俺たちもそのせいで随分苦しめられてるけどよ」

    百田「テメェをそこまで駆り立てたものは、一体なんだったんだ?」

    王馬「巌窟王ちゃんと最原ちゃんはずっと『殺意』って呼んでたものの正体って、要は『計画性』のことだよね?」

    王馬「まあ確かに、相当な殺意に裏打ちされた集中力がないと、あそこまではできなかっただろうけどさ」

    王馬「その殺意の源泉がなんだったのか。俺もちょーっと興味あるかな!」

    白銀「……赤松さん。答えてよ。じゃないと私たち、何も納得できない……!」

    赤松「……」

    赤松「ずっと気に入らなかったんだ。急に学園にやってきて、デスロードをあっさり攻略されたときから」

    最原「……!」

    150 = 1 :

    赤松「巌窟王さんはさ、凄いよね。本当に凄い」

    赤松「本当に凄すぎてさ……私、バカなこと考えちゃったんだ」

    赤松「『頑張ってきたことを否定された』ってさ」

    春川「実際そうでしょ。私たちの頑張りなんて巌窟王の小さじ一杯分の苦労にも満たない」

    春川「人間とはほとんど違う存在相手なんだからさ」

    赤松「私はそこまで割り切れなくってさ……だから最原くんの計画を持ち掛けられたとき、思ったんだよ」

    赤松「私にだって、できることがあるって」

    最原「……だから、あんな計画を?」

    宮寺「嫉妬心、ってこと? まあ、わかるけどネ。あの時点までは赤松さんは僕たちの中心だったから」

    宮寺「その立場が突然揺らいだとしたら……多少は動揺するヨ。それは」

    巌窟王「すべては俺のせいだ、とでも言うつもりか?」

    巌窟王「クハハハハハハ! これは滑稽だな! コロシアイの渦中において、聖女のごとき清らかさを持っていた乙女が!」

    巌窟王「よりによって俺の恩讐の炎によって心を、身を焦がされていたというのだから!」

    巌窟王「これは傑作だ! なんという悲劇だ! 誰も彼もがお前に同情するだろうよ!」

    百田「わかるように言え! 巌窟王!」

    巌窟王「ごめんなさい!」ギンッ

    茶柱「そ、それだけェ!?」ガビーンッ!

    夢野「思わせぶりな長文が一言に纏まってしまったぞ」

    白銀「台無しだよ。いろんな情緒が」


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