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    元スレ足柄「鎮守府近くの食堂へ」

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    851 = 1 :






    「わぁ~…」

    店主「?…なぁ、あれどうしたんだ?」

    深海「さしずめ街並みに見とれてるんでしょ。鎮守府の通りとはわけが違うからね」

    店主「なるほど」

    「ご飯…」

    店主「ん?」

    「ご飯どこにするの?!」ハヤクキメナサイッタラ!!

    店主「ああ~…そうだなぁ~…」

    俺たち3人は今、栄の方に足を運んでいる。

    名古屋で一番華やかな街だろう。

    三○に○栄、松○屋、パ○コ。色んな商業施設が集中している愛知の中心部だ。

    名駅の方まで行けば高○屋とか、まだまだ色々あるが…

    今回は急遽夕飯を外で食べなければならないため近場になった。

    理由は親父の一言だ。

    寿史「悪い、夕飯の材料を買い忘れた…」

    この後俺たちが買ってこようか?と言ったんだが…

    寿史「いや、構わん。俺は残り物でいいから、お前たちは外で食って来い」

    なら、一緒にどうだ?って聞いたんだが、昔っから頑固だから聞きゃあしない。

    まぁ、多少は気を使ってるのかもしれないが…

    852 = 1 :


    深海「で、どうしようか」

    店主「そうだなぁ…ここまで来れば基本何でも食えるからなぁ」

    深海「いざとなればデパートで…」

    店主「まぁ、気を急くな。それは最終手段だ」

    初日から財布に大きなダメージは追わせたくはないからな…

    店主「何か食いたいものあるかい?」

    「…なんだろう」

    無理もない。いきなり外食だからな…。

    深海「はい!」

    店主「ん?なに」

    深海「中華が良いと思います!」

    店主「お」

    悪くない選択だ。

    そういや矢場町の所に味仙があったな…久々に

    853 = 1 :


    深海「銀座ア○ターとかどうでしょう!」

    店主「却っっ下!!」

    深海「えぇ~!!」

    えぇ~!!じゃないっ!!

    いきなりなんてことを言い出すんだ!全く!

    よりにもよって銀座ア○ターとか…

    店主「中華路線は却下だな」

    深海「うそ!」

    「中華はあっちでも食べられるじゃない」

    深海「うぅ…ア○ター…」

    「そこって美味しいの?」

    店主「おいしい…うーん、まぁ、あれだ、高級中華の代名詞の一つ…かな?」

    「へぇ」

    854 = 1 :


    店主「まぁ、それはまた今度でいいだろ。休みは始まったばっかだ。いつか連れてってやるよ」

    深海「言質取ったからね!」

    えらい執着…

    店主「と、本当にどうするかね?」

    「ねぇ」

    店主「?」

    「あの建物…『ラ○ック』?あっちじゃ見ない施設じゃない?」

    店主「ああ、あれは…」

    深海「ここはね、そこにある名古屋三越が運営している複合商業施設でね。ここと福岡の2件しかないの」

    「へぇ」

    店主「あれ?モクモクってここだっけ?」

    深海「そうだよ。そこにする?」

    店主「ありだな」

    「何のお店なのよ?」

    店主・深海「野菜食べ放題のお店」

    「サラダバー主体の店…って事?」

    855 = 1 :


    深海「いやいや、そうじゃなくて直営農場や契約農家で取れたお野菜をたっぷりと使った料理が食べ放題って事」

    店主「ああ、だからハムやソーセージなんてものもあったぞ」

    深海「でもいつも混んでるよね…」

    店主「ここ何年か行ってないもんな…」

    「とりあえずそこにしない?」

    店主「いいのか?」

    「…そこがダメなら別の場所でもいいでしょ。ここ、他にもありそうだし」

    深海「そうだね。確か一杯お店あったよ。お寿司とか」

    決めるのはいいけど…かおるちゃん、なんでそんな高そうなところばかりチョイスすんのさ…

    「ぶっちゃけお腹空いた…」

    店主「そうだな。じゃあ行ってみるか」

    深海「おー!」


    856 = 1 :





    深海「何見てんの?」

    「フロアガイド」

    店主「他なんかあったっけ?」

    深海「店?」

    店主「ああ。あそこの混んでるはいつも異常だからな」

    何時間待ちだからな…

    よくテレビで効率のいい並び方みたいなのをやってるっけ…

    「…」

    深海「一杯あった記憶はあったけど、お店こんなにあったんだ…」

    「あれ?」

    深海「どうしたのさ?」

    「…この店テレビで何回か…」


    857 = 1 :




    店主「うわっちゃあ…」

    深海「げっ」

    「うわぁ…」

    案の定人がいるな…ここは名前を書いて待つ形式だから行列はできない。

    でもその前の広場に明らかに待ってますって人が大勢見受けられる。

    深海「紙見てくるよ」

    店主「よろしく」

    待つのはいいけど流石にこの人数は…

    お盆だしなぁ…

    深海「20組以上…」

    店主「お嬢様、いかがなさいます?」

    「…ねぇ」

    店主「?」

    「この2つって有名なお店じゃない?」

    小さい指がさすのは…

    店主「"矢場○ん"に"ま○は食堂"か…」

    858 = 1 :


    矢場○んは言わずと知れた"味噌カツ"の名店だ。

    県外にも数店舗出してる名古屋を代表する有名店でもある。

    本店は今でも大行列を作っているが、他はどうなんだろう?

    一番有名なのはワラジとんかつ!

    特製みそをかけていただくのがなんとも。

    でも…

    店主「矢場○んなら矢場町んとこに本店があるな」

    「え?」

    店主「いや、すぐそこ」

    ここからなら歩いていける距離ではあるが…

    深海「流石に今から大須の方に行くのは…」

    だわな。

    店主「まぁ、矢場○んならこのお盆期間中にいくらでも行けるな…」

    859 = 1 :


    「こっちのま○は食堂は?」

    深海「うーん?」

    ま○は食堂は愛知県の知多の方に本店を構えるお店だ。

    元々は魚屋だったところが、食堂や旅館を初めてどんどん大きくなっていったと聞いた事がある。

    今も本店では旅館はやっているらしいけど。

    ここの売りは「でっかいエビフライ」!

    冷凍ではなく地元で水揚げされたエビを使ってるってんだから驚きだ。

    「ここってエビフライが有名なんでしょ?」

    深海「そう!」

    店主「じゃあ、ここ空いてたらここにしようか?」

    深海「そうだね」

    後は並んでないことを祈るだけ…



    860 = 1 :





    深海「数組だけだよ!」

    店主「おっマジか。じゃあここにするか」

    「やっと決まった」

    深海「お疲れさん」

    店主「まぁ好きなの選んでくれよ」

    「勿論奢りよね?」

    店主「当たり前だろ」

    逆にその身なりの子に奢ってもらう俺って、ここだとどう見えるんだろう?

    店員「3名でお待ちの梅村様」

    深海「おっ呼ばれたよ」

    店主「意外に早かったな」



    861 = 1 :





    店員「お待ちくださいませ」

    なんていうか有名店なだけはあるな、姿勢がきちんとしていた。

    俺らも見習わなきゃいけないんだろうけど…

    深海「ビール頼まなくて良かったの?」

    店主「そんなホイホイ飲むもんでもないだろ。それに家にあるし」

    「!」

    店員「お待たせしました。ま○は定食です」

    「ああ、こっちこっち」

    「…」ジーッ

    深海「どったの?」

    「良く見えない」

    深海「もうじきこっちにも来るんだから、他所さんのをジーッと見ないの」

    「うっつい…」

    店主「まぁ、でっかいっていうのはテレビでもやっていたことだし、気になるのは仕方ねぇだろ」

    862 = 1 :


    深海「まぁねぇ…よく考えたらここの本店行ったことなかったよね?」

    店主「そうだなぁ…一回行ってみるのもありだな」

    深海「霞ちゃんもせっかくいるんだし」

    「え?」

    店主「そうだな。久々に愛車の『エスクード』を乗り回すのもいいだろう」

    「おじさんの愛車って『エブリィ』じゃないの?」

    店主「馬鹿言え、あれは仕事用だよ。愛車は実家であるここに置いて来てるの」

    「へぇ」

    店主「まぁ、今度それに乗ってドライブがてらに本店に行ってみるかって話だ」

    深海「一緒にね」

    「そっか…」エヘヘ

    店員「お待たせしました。ま○は定食2つ…」

    深海「はいはいはい!こことここ」

    店員「Wま○は定食をご注文のお客様は」

    店主「こっちかな」

    863 = 1 :


    深海「きたきた!…って自分だけ高いの」

    店主「いいじゃないか俺が金を払うんだし」

    深海「だったらア○ターでも良かったじゃん」ブー

    店主「あのな、ここは最高ランクでこの値段だぞ?向こうの最高ランクは…」

    「もういいから食べましょ」

    深海「そうだねぇ」

    店主「そのうち連れてくって言っただろ」

    深海「まぁね」

    「本当に大きいわね」

    深海「でしょう」

    なんでかおるちゃんが誇らしげなんだ?

    「……あぐっ」

    深海「おお、噛り付いた!」

    店主「実況しなくていいから」

    864 = 1 :


    「…っ!」

    「本当に大きいエビを使ってるんだ」

    深海「え?」

    「ちょっと半信半疑だった。小さいエビに何回も衣付けてるんじゃないかって。」

    「でも、食べたらしっかりエビが大きくて、しかもプリプリで」

    深海「おいしい?」

    「うん。おいしい」

    深海「おやっさんもこれぐらい作れるといいね」

    店主「流石にこれは真似ができないよ」

    一回真似して揚げたことがあるが、ここまで身がプリプリの状態にすることが出来なかったからな…

    やはり新鮮さなのだろうか…

    深海「まぁ、ウチはうちのペースでやっていけばいいんじゃない?」モグモグ

    865 = 1 :


    店主「まぁな…ってあれ?かおるちゃん今エビフライ食べ終わって…ああああ!!俺のエビフライが一匹減ってる!!」

    深海「まぁいいじゃん減るもんじゃないんだし」

    店主「いや、現に減ってるから!」

    深海「はい、霞ちゃん。半分こ」

    「あっありがとう」

    店主「くっそーこうなったら。すみませぇ~ん!」

    深海「え?」

    店員「お待たせいたしました」

    店主「"ゆでしゃこ"ください」

    深海「ああ!ずるい!」

    店主「ズルくない!写真を見ろ!ちゃんとシェアできる量だ」

    深海「おやっさん…アンタって人は…」ジーン

    店主「まぁ俺一人で食うけどな」

    深海「言うと思った。良いもん私には霞ちゃんと言う心強い仲間がいるから」

    「ふふん」

    店主「あれ?結構ノリ気?」

    深海・霞「ふふん」ドヤァ




    866 = 1 :













    寿史「ふぅ~…」

    寿史「…」

    寿史「…もうじき盆か」

    寿史「…」

    寿史「お前が居なくなって27回目の夏か…」

    寿史「…ななこ」










    867 = 1 :











    ここは食堂「街角や」。

    大変申し訳ございません。

    お盆期間中はお休みとさせていただきます。







    868 = 1 :






    深雪「がーん!」

    吹雪「リアルで口でがーんって言ってるの初めて見たかも…」

    深雪「どうするよ吹雪!街角や休みだぞ!お盆期間中お休みだぞ!」

    吹雪「毎年そうじゃん」

    深雪「ああ、私の甘味分が…この期間中どうすれば…」

    吹雪(このやり取りも毎年の様な…)

    吹雪「噂で聞いたんだけど、お盆中は間宮さんが似たようなメニュー作ってくれるんだって」

    深雪「そうなの?」

    吹雪「まぁ期間中だけね」

    深雪「…裏取引?」

    吹雪「それ、この場面じゃ使わない言葉だよ。…たぶん気を使ってくれてるんだよ」

    深雪「…」

    吹雪「…?」

    深雪「……じゃあ、間宮行こ」

    吹雪「そうしよう」


    869 = 1 :


    1年以上のブランクを得て久々の投下でした。

    これからお盆期間に入るので、また時間が空くかもしれません。

    でも、今回からは一応報告だけはしっかりしようと思います。

    これからもよろしくお願いします!

    870 :


    車バッテリー上がってんだろうな

    872 :

    おつおつ
    地元に帰省してぶらぶらと食べ歩きの旅とか、足柄さんが聞いたらどんな反応になるやらw

    873 :

    乙でち 大きいえびふりゃー イイネ!

    876 :

    (特Ⅲ型四番艦)の姉で同姓と言う事は……これはつまり実の姉も同然なのでは?

    877 = 876 :

    すいません誤爆しました

    879 :

    乙です。
    久しぶりの更新来てたのね、とりあえずお盆明け七人で予約入れられますか?

    880 :

    SS書いていなかった時期を、>>842 の様にフォローするのは上手いと思った

    881 :


    お久しぶりです。

    何だかんだで時間が出来てきて少しづつペースが上がってきました。

    1週間以上たってしまいましたが1話分完成したんで投下していこうと思います。

    >>870
    その可能性が一番怖い!
    >>872
    悔しがりはしないだろうけど羨ましがりはする?…かな
    >>879
    お盆明けは混雑が予想されるため予約は一時的に取りやめます。ご了承を
    >>880
    苦肉の柵なんで褒めていただくと大変助かります

    882 = 1 :


    ちなみに今回は飯テロ「ない」です。

    883 = 1 :




    ~店主の実家にて…~



    AM2:10

    「…」

    (どうしよう…すごくトイレに行きたい…)

    (でも…)

    時を遡ること7時間前…

    PM19:00

    ナレーション『背筋の凍る真夏の心霊特集!』

    深海「この季節っていえばこれ!よねぇ~…」

    店主「おいおい、そんなの観て夜トイレに行けなくても知らねぇぞ」

    深海「私そんな子供じゃありません~!」ブー

    深海「むしろ霞ちゃんの方がドンピシャじゃない?」

    「はぁ~?こんな子供だまし誰が信じるものですか!」

    884 = 1 :


    「だいたい、私は元艦娘よ?もし幽霊が居たとしても、問題ないわ!」

    深海「…艦娘関係ある?」

    「だって深海棲艦が似たようなモノじゃない」フフン

    深海「え?それって…私見ても同じこと言える?」

    「え?」

    深海「え?」

    1時間後

    ナレーション『おわかりいただけただろうか?』

    ナレーション『撮影者の彼女が移動した瞬間、部屋の奥で…』

    番組のガヤ『うわっ!きゃあああ!!映ってる映ってる!』

    「…」

    深海「大丈夫?」

    「ぜっ全然平気よ!」

    885 = 1 :


    ナレーション『この部屋では数年前に首を吊った女性の死体が見つかったというが…この部屋の隅でうずくまっている女性はもしかして…』

    テレビの効果音『バァン!』

    「っ!?」ビクゥッ!!

    深海「最後なんで幽霊ドアップで大きな効果音で驚かそうと思うかね?」

    「っ!っ!」

    深海「霞ちゃん?」

    「えっ!?」

    店主「おう、桃が切れたぞ!」

    「ぎゃっ!」ビクゥッ!

    店主「えっ!?」ギョッ!

    886 = 1 :



    そして今…


    (今は薫が気を利かせて一緒に寝てくれてるけど…)

    深海「ぐお~…」zzz…ボリボリ

    「…」

    (こいつこんなに寝相悪いわけ?)オナカマデダシテ…

    (っていうかアンタの所為でこわっ…気味が悪くなったんでしょ!何呑気に寝てるのよ!)

    深海『え?それって…私見ても同じこと言える?』

    (盲点だったわ……こいつも深海棲艦…まぁ元だけど…だったわね。ってことはアイツらは生き物…)

    (じゃあ、テレビに映っていたあいつ等とは別物…)

    「…っ!」ブルッ

    (いけない…限界が…)

    887 = 1 :


    「ねぇ…起きて…起きてよ」

    深海「ぐが~!」zzz

    「…嘘でしょ?」



    ジャー…

    「薫の奴…覚えていなさいよ…」

    リーンリーン…リーンリーン…

    「あの虫の声って…鈴虫だったかしら?」

    「なんだか…本当に戦闘から身を引いてるわね私」

    (昔は虫の声さえ聞いてる暇なんかなかったのに…)

    「ん?」


    フワリ…


    「んん?」

    (今廊下の突き当りで何か白いものが横切ったような…)

    888 = 1 :


    (気のせい…よね?)

    「部屋…戻ろう」

    「っ!」ゾクッ

    (…やっぱり何かいる!)

    (まだすぐ背後ではない…でも確実に何かいるわ!そう昔の勘が告げている)

    「…だっだれ?」

    ??「…」

    (何か言いなさいよ~!)

    ??「…」

    「…ふっ振り向くわよ?」

    ??「…」

    (薫の奴かしら?…それともおじさん?どっちかだったらとっちめて…)

    「振り向くわよ?3」

    ??「…」

    「2」

    ??「…」

    (なんてね)クルッ

    「さぁ、かく…ご…?」

    シー……ン

    「え?」

    889 = 1 :




    フワッ…



    (誰も居な…いや、また白いのが突き当りの廊下を…あれ?あっちって…)

    「…」ゴクリッ

    (人のうちのプライベートを盗み見するのは悪いとは思うけど、不審者なら…捕まえないと)

    (…でも、違ったらどうしよう…まさか幽…)

    ナレーション『お分かりいただけただろうか?』

    (ダメよ!今思い出したら!)ブンブン

    (とにかく確認!そうよ霞、確認しなきゃ!)

    「とっ…ここよね?」

    (そういえばこの部屋…まだ見てない)

    (…でも、それっぽい部屋ってここしか)

    「…」

    (…よし!)

    890 = 1 :


    スススー…

    「お邪魔しまーす」

    (物置?…)

    「ん?…これって」

    (まさか…仏)

    ??「何やってんだ?」

    「きゃっ…ぐむごもっ」ジタバタ

    寿史「俺だ俺だ。大声出すな、2人とも起きちまう」

    「ぷはっ…寿史さん」

    寿史「どうしたこんなところで?」

    「いや、こっちに誰か来たみたいだから…」

    寿史「うん?誰も居ないみたいだが?」

    「どこへ行ったのかしら?」

    891 = 1 :


    「ところで…」

    寿史「なんだい?」

    「この部屋って…」

    寿史「見ての通り仏間だ」

    「仏…」

    寿史「ほれ、そこに仏壇があるだろ」

    「ええ…」

    寿史「私の妻のモノだ…アイツの母親になるな」

    「え?おじさんのお母さん…」

    寿史「そうか…迎え盆か」

    「え?」

    寿史「帰ってきてるのかもしれんな」

    「あの…誰が?」

    寿史「ふふふ、そりゃあなぁ」

    「うぅ…」

    892 = 1 :


    寿史「怖がる必要はねぇよ」

    寿史「まぁ、信二はどうだかなぁ…お前さんに似て結構気は強いほうだったからな」

    「私に似て?」

    寿史「…妻の名前は…『ななこ』だ。俺がつけた」

    「俺がつけた?」

    寿史「お前さんも『梅村 霞』って付けてもらっただろ?」

    「…ってまさか」

    寿史「結婚する前は『曙 ななこ』って名前だ」

    「あっ…あっ…」



    「あけぼのぉ!?」


    893 = 1 :


    寿史「馬鹿っ!声が大きい!」

    「ごめんなさい…でも…曙って…」

    寿史「意外か?」

    「…かなり」

    「もしかして『ななこ』っていうのは…」

    寿史「なんだっけ?第七駆逐隊だっけか?」

    「やっぱりかぁ」

    寿史「まぁ、最初はボロクソに言われたけどな」

    「でしょうね」

    寿史「まだ眠くなんねぇか?」

    「おかげさまで」

    寿史「なら一杯付き合え」

    894 = 1 :



    ~縁側にて~

    寿史「アイツとの出会いは、俺が20の頃まで遡る」

    「結構昔なのね」

    寿史「当時はまだ深海棲艦との戦争は激化の一途をたどっていた。だが、それは海での話であり陸地はまだ平和なもんだったさ」

    寿史「二十歳の夏休み、ふと海が見たくなって常滑の方に遊びに行ったんだ」

    「一人で?」

    寿史「軽い一人旅と思って行ったな」

    寿史「今では商業施設や観光施設が出来て賑わっているが、昔は何もない…あるとすれば浜辺ぐらいなもんだった」

    寿史「そんな浜辺を歩いていたとき、視界にあるものが入ったんだ」

    寿史「…人だった。人が倒れてたんだ」

    寿史「慌てて駆け寄っていくと小さな少女だった。すぐに警察と救急車を呼んで保護してもらったんだ」

    「もしかしてその少女が…」

    寿史「ああ、『曙』だったよ。今思えば周りに艤装らしきものが散らばっていたようにも見えたが、当時はそれどころじゃなかったからな…」

    895 = 1 :


    寿史「それで数日後、彼女が俺のとこまでお礼を言いにやってきた。聞けば彼女は○○鎮守府の艦娘で近くの海域での戦闘で被弾してあそこの浜辺に打ち寄せられたんだそうだ」

    「それを偶然貴方が通りかかったんだ…」

    寿史「ただ、その当時の提督も一緒でな…ある話を持ち掛けられたんだ」

    「?」








    896 = 1 :








    寿史「はぁ?彼女はもう戦えない?」

    提督「ええ、先の戦闘で艤装を破壊してしまい、彼女は戦場にはもう立てないのです」

    寿史「でも、彼女はぴんぴん…」

    「…」

    大淀(先代)「私たちにとって艤装は命の次に…いや、命よりも大切なもの。この世に同じ艤装は無く、同じ艦種であっても別の艦娘が着用することは不可能…もし破壊してしまえば私たちは戦う力をすべて失ってしまうのです」

    提督「艤装を失ってしまえば彼女たちはただの少女…戦場で生き残ることは不可能なんです」

    寿史「そんな…じゃあ彼女はどうなるんです?」

    大淀「解体処分となります」

    寿史「はぁ!?助かった命を自らの手で殺すのかよ!!」

    提督「落ち着いて。解体と言っても殺すわけではなく彼女たちを人間に近い状態にすることを指します」

    寿史「なにそれ…」

    大淀「詳しくは軍規に触れるため話せませんが、我々の持っている特殊な技術で艦娘から人間に近い状態にし世に放つことを言います」

    提督「要するに人間における『クビ』もしくは『解雇』ですね」

    寿史「なんだそんな事か」

    「…そんな事じゃないわ」

    897 = 1 :


    寿史「?」

    「解体は私たち艦娘にとって死より恐ろしい事…戦うために生まれたこの命を…一気に否定されるのよ…」

    「だから…今解体処分を待つこの命も…私たち艦娘にとっては『恥』なのよ」

    寿史「馬鹿言ってんじゃないよ」

    「なっ!」

    寿史「救われて恥なんて命はねぇ!むしろ感謝して次に生かせばいい」

    「私たちは艦娘なのよ?!戦う以外に何もないの!」

    寿史「何も命を取り合うことが戦争じゃねぇ!」

    「何言ってんのよ…」

    寿史「平和な戦争っていうのもあるんだよ」

    「矛盾しまくりじゃない…」

    寿史「なら見せてやるよ」

    「え?」

    寿史「論より証拠。見せてやるって言ってんだ」

    寿史「その矛盾しまくりな戦争をな!」

    「いいじゃない…面白いこと言うじゃない…見せてもらおうじゃない!!」

    寿史「おう。だから付いてこい!」




    898 = 1 :





    「え?もうプロポーズ?」

    寿史「今思い出すとかなり痛いな…なんだ矛盾しまくりな戦争って…」

    寿史「まぁ、この記憶の一部は忘れてくれ。たぶん当時の俺は"商売"の事を言いたかったんだろう…」

    「まぁ、商売も立派な戦争よね」

    「それで?」

    寿史「ああ。それで両親に相談したんだ。」

    寿史「理由を話したらすんなり受け入れてくれたよ」

    「へぇ」

    寿史「当時は名古屋に店を構えてたからな。あっちにあるのは俺が大学卒業とともにななこと結婚して設けた2号店だ」

    「そうなの!?」

    寿史「ああ。最初はこっちでと思ったんだが、曙が○○鎮守府に恩返しがしたいって言ったのと、俺の親父がどうせならと新しい店を開いた方がいいと勧められたっていうのがあるが…」

    寿史「決定打は前者だな」

    「初めて知った…」

    899 = 1 :


    寿史「俺が大学卒業するときにななこと結婚したいと両親に言ったら『ロリコンか?』なんて聞かれたよ」

    「まだ解体後の背格好が成長してなかったのね…」

    寿史「…」コクリ

    寿史「でもまぁ、それでも両親は許してくれてななこもOKをくれた。だから信二もいるし、あの店もある」

    (今度、曙を見かけたらまともに見れないわね)

    「そういえば、死因は何だったの?」

    寿史「…」

    「あっいや、ごめんなさい…」

    寿史「いやいい。知りたいのは人としての性だからな…お前さんも立派な人だって証拠だよ」

    「…うん」

    900 = 1 :


    寿史「アイツが…ななこが死んだのは、信二が十歳の頃だった」

    「…十歳!?」

    寿史「ああ。今から27年前の盆の頃の話だ」

    「…」

    寿史「盆期間の初日の日、俺はまだあっちの方で用事があったから先にななこと信二の奴がこっちの実家に向かっていったんだ」

    寿史「いつもは新幹線で帰っていたんだが、その年は珍しくミスをしちまってな…切符を事前に取らなかったんだ」

    寿史「だから当日でも席が取れず、仕方なく在来線の方で帰ることになったんだ」

    寿史「だが、その選択が間違っていたんだ…」

    「え?」

    寿史「あの二人の乗った電車が脱線事故を起こして…」

    「…」

    寿史「ななこはとっさに信二の事をかばったんだろうな、見つかった時信二を腕に抱く形で息を引き取っていた」


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