元スレP「伊織か?」伊織「お兄様!?」
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301 = 1 :
そしてスタンバイ、脇にいる司会のアナウンスが入りすぐにジュピター以外のアイドル達がステージに上がる。
この日のために来たであろう人たちも偶然居合わせた人たちも、わぁっと歓声を上げる。
『本日、参加いたしますアイドルのみなさん!それぞれ自己紹介をお願いします!』
とアナウンス。
最初にマイクを握ったのはサイネリア。
『私たちサイネリアです!』
彩音「鈴木彩音!一応サイネリアのリーダーやってます!今日は来てくれてありがとう!私のチョコ、ぜひ受け取ってくださいね!」
大変な盛り上がりで、彩音さんを呼ぶ声が途切れない。
それは他二人のメンバーも同様で歓声は続く。
302 = 1 :
二組目は新幹少女。
ひかり「みんなこんにちは!こだまプロ所属、新幹少女のひかりです!今日はバレンタイン、すべての女の子にとってハッピーな1日になりますように…!」
つばめ「おなじくつばめ!男の子のみんなにも幸せを届けるわ!」
のぞみ「のぞみです!みなさんぜひ楽しんでいってください!」
さすがに注目株だけはある。
新幹少女ははち切れんばかりの歓声を浴びていた。
そしてこの流れで…。
雪歩「は、初めましてっ!!」
無名の雪歩の自己紹介に移る。
力んで声が大きすぎたためスピーカーがキーンとハウリングしてる。
雪歩「ひいぃっ!!」
しかもそれにビビりまくる雪歩。
303 = 1 :
会場にいる誰もが呆然としていたが、やがて笑いに変わった。
雪歩は恥ずかしさでかぁーっと赤くなってしまう。
これは…。嫌な予感がした。
雪歩「こんなダメダメな私は穴掘って埋まってますぅ!!」
どこからともなく取り出したスコップでステージの端を掘り始める雪歩。
もはや材質とか関係ないのが雪歩の穴掘りだ。
P「ちょちょちょっ!!誰か止めてくださーい!!」
慌ててみんなで止めに入る。
会場は再び呆然。静まり返る。
アイドル達も顔面蒼白だった。
304 = 1 :
『お、お騒がせしました…』
不測過ぎる事態にとまどいながらも、なんとか仕切りなおす司会。
ひかり「本当、びっくりしたわ…」
つばめ「おお落ち着いて…?ね、雪歩?」
のぞみ「つばめも落ち着いて…」
周りのフォローを受けて雪歩はなんとか踏みとどまったようだ。
彩音「ほら、今度はリラックスして…。普通の声量で喋ればいいのよ?」
すーはーと大きく深呼吸する。
雪歩「…初めまして、765プロ所属の萩原雪歩です…。さっきは緊張して取り乱してしまってすみません…」
305 = 1 :
『萩原さん、ステージに立つのは?』
さらに緊張をほぐそうと司会が質問もかけてくれた。
雪歩「はい、今回が初めてです」
お客さんから、おぉ、と感嘆の声が漏れる。
ちらほらと応援の声も聞こえる。
みんな優しいなぁ。
雪歩「私からは皆さんに抹茶チョコをプレゼントしますので…よかったら受け取ってください!」
最後の部分、さながら告白する子のように言うもんだから。
『いやー、可愛いなあの子』
『名前なんて言ったっけ?』
『萩原雪歩じゃなかった?』
『雪歩ちゃんね…私ファンになっちゃった』
新幹少女やサイネリアほどではないが、会場は再びざわつき始める。
306 = 1 :
『えー、それでは!お待たせしました!本日彼女たちがバレンタインチョコを渡すお相手は…。この方たちです!どうぞ!』
笑顔を振りまき、ファンに応えながら颯爽と登場するジュピター。
女性客の甲高い声が響く。
冬馬「961プロ所属、ジュピターの天ケ瀬冬馬だ!チョコなんざ甘ったるいもん俺には似合わねーがな!」
翔太「御手洗翔太です!…ああ言ってるけど冬馬くんは甘いものがすっごい好きだから、本当は楽しみでしょうがないんだよ?今日、チョコ持ってきてくれたみんなは気兼ねなく冬馬くんに渡してあげてね!」
北斗「こんにちは、俺は伊集院北斗です。今日はこんな素敵な女性たちからプレゼントをいただけるなんて、男冥利に尽きるよ。よろしくね」
ジュピターのおかげで実は女性客も多い。
961プロの企画なのでジュピターメインなのは当然である。
307 = 1 :
『では皆さん揃いましたので早速プレゼントしちゃってください!』
女性アイドル陣がそれぞれ用意していた紙袋をスタッフから受け取る。
この紙袋にみんなが作ってきたチョコがラッピングされて入っている。
そしてジュピターへ贈る。
冬馬「サンキュー!」
翔太「ありがとう!」
北斗「ありがとう」
お客さんからは大きな拍手。
冬馬くんがやけに嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないんだろうな。
『それではジュピターの皆さんもお返しをどうぞ!』
司会がそう言うと、今度はジュピター側に紙袋が渡される。
308 = 1 :
冬馬「借りっぱなしってのは性に合わないんでな。今すぐ返すぜ」
翔太「とか言いつつ冬馬くんすっごいこだわってたよね」
冬馬「翔太はいらねーことをいちいち言うんじゃねーっての!」
北斗「まあいいじゃないか冬馬。俺だって楽しかったさ」
あれこれ言い合いながら今度は彼らが女の子たちにチョコを贈る。
お客さんからは大きな拍手。
世間が羨むようなバレンタイン。
しかしイベントはこれだけではない。
『それではここで、アイドル達による生歌の披露です!』
会場はさらに盛り上がる。
トップバッターはもちろん無名の雪歩。
いったんステージ裏へと戻り、音響を調整する。
歌う曲は『Kosmos, Cosmos』
まだ持ち歌がこれしかない。
309 = 1 :
P「行けるか?」
雪歩「緊張するけど、なんとか…」
P「それでいい。ステージに立ってマイク握りしめて音楽が流れてきたら必ず歌える。レッスン終わった後も休みの日も練習したもんな」
雪歩「プロデューサー、どうして?」
なんで知ってるんですか?とでも言いたげだ。
レッスン終わった後や、休みの日に練習してるなんてのはさすがに口から出まかせだ。
けれども、自主練してたことは明らかにわかる。
そうでもしないと、一回のレッスンであんなに上達しない。
P「雪歩の努力はちゃんとわかってるつもりだから。もっと自信持ちなよ」
雪歩「………はい!」
雪歩は今までで一番いい顔で壇上に上がって行った。
『それでは萩原雪歩さんで、Kosmos, Cosmos、どうぞ!』
310 = 1 :
最後にみんなでバレンタインソングを歌って生歌は幕を閉じる。
雪歩は初ライブとは思えないほど安定して歌えていた。
新幹少女やサイネリアは、本当に初めて?と驚いていた。
『それでは最後に、今仕切りの内側にいるファンの皆様にアイドル達からチョコの受け渡しです!ではスタッフの指示に従ってお並びくださーい!それと、チョコを持参してきた方はアイドルにプレゼントするチャンスですよ!』
ファンの人たちはスタッフからやや小さめの紙袋を受け取る。
渡されたチョコを入れておくためのものだ。
961プロは経済的にも余裕があるし、気が利く。
何事もなく終わるかに見えたが…。
ファンの方がアイドルから渡されたプレゼントを落としてしまった。
しかもそれに気づいてないのか、嬉しそうな表情で行ってしまう。
気づいたのは俺と新幹少女のひかりちゃん。
311 = 1 :
ひかりちゃんは次のファンに一言断って、壇上に落ちたプレゼントを拾おうとする。
俺も落としたファンの方に駆け寄り、引き留める。
すぐ、ひかりちゃんの方に視線を戻すと、危なっかしい体勢になっていた。
俺は何か嫌な予感がして、次のときには体が勝手に走り出していた。
直後ひかりちゃんは躓き、ステージからふらりと…。
ダメだっ…!
周りから悲鳴が上がる。
ファンの人たちも咄嗟に手を伸ばすがもう遅かった。
そして…。
ひかり「…」
ひかりちゃんは唖然としていた。いや、むしろ放心状態だった。
P「あっぶねー!」
俺は外面が剥がれていた。
312 = 1 :
周りからは、おお!と声が上がり、拍手喝采。
ひかりちゃんが落ち、間一髪で俺が滑り込み、体で受け止めたのであった。
P「ひかりちゃん、大丈夫?」
ひかり「…765プロの…うぅ…ひぅっ…」
ひかりちゃんは怖かったのか、嗚咽をあげて泣き始めてしまった。
俺はひかりちゃんを立たせて自分も体を起こした。
新幹P「これはみなさまお騒がせしました。しばらくの間お待ちください」
新幹Pさんが慌てて駆け寄り、簡単にファンの方たちに呼びかける。
新幹P「Pくんありがとう。…さ、行くよ、ひかり」
その後ひかりちゃんを連れていったんステージ裏に引っ込んだ。
俺はファンの方たちから英雄みたいな扱いを受けていた。そんな大したことはしてませんよ?
313 = 1 :
しばらくして、泣き止んだひかりちゃんが姿を見せる。
ひかり「すみません。ご迷惑をおかけしました。先ほどは驚いてしまい見苦しい姿を…。痛むところもありませんので、私は大丈夫です」
そして俺の引き留めたファンに落としたプレゼントを渡していた。
落とした人は何度も謝っていたのだが。
ひかり「私たちはファンの方に笑顔をお届けするために活動しているので、謝っていただくなんてとんでもないです」
などと対応をしていた。
その後もみんなに心配されながらもイベントは再開し、終了した。
『トラブルもありましたがこれにて無事にバレンタインイベントは終了です!アイドルの皆さんありがとうございました!』
アイドルの退場。
もう何にもないだろうと誰もが思っていたのだが、やっぱりというべきだろうか…。
冬馬「ありがとなー!………ぬばぁっ!!」
314 = 1 :
ファンに手を振っていた彼が奇声を放ちながらステージから消えた。…と思いきや。
冬馬「何だよこの落とし穴!…おい、萩原!ちゃんと塞いどけよ!なんで落とし穴仕様にしちゃったんだよ!」
北斗「いや、引っかかる冬馬が悪い。みんなそこは避けてただろ?」
翔太「冬馬くん、わざとじゃないの?」
冬馬「んなわけあるか!」
雪歩「ごめんなさいぃ!!私、穴掘って埋まってますぅ!!」
つばめ「雪歩!落ち着いてってば!」
最後はみんな笑って終えることができました。
315 = 1 :
今日はここまでにしよう!おちまい!
ご意見ご感想ご質問、批判ダメ出し等あれば仰ってください!
316 :
あまとうがおいしい位置にいるのがいいよな
このままバラドル手前まで堕ちてほしい
317 :
乙
よいよい
318 :
乙! 信じろの会話の所カミナのアニキ思い出したね
319 :
こんばんは、投下します。
320 = 1 :
P「お疲れ様」
雪歩「今日はたくさん失敗しちゃいました…。冬馬くんごめんなさい…」
冬馬「いやもういいって…。引っかかった俺が悪いんだしよ」
翔太「そうだよ雪歩お姉ちゃん。冬馬くん笑いが取れて大満足だから」
冬馬「芸人じゃねえよっ!」
北斗「誰もそんなこと言ってないだろ」
始まりました961プロ劇場。
などと考えてると不意に後ろから女の子の声がする。
ひかり「あの…」
P「あ、大丈夫でしたか?本当に怪我とかありませんか?」
ひかり「はい。おかげさまで…」
P「それならよかった」
もじもじと落ち着かない様子のひかりちゃん。
321 = 1 :
雪歩「あの、あっちでお話しませんか?」
冬馬「なんでだよ」
北斗「ったく、冬馬、お前ってやつは」
翔太「いいから行くよ!」
取り残される俺とひかりちゃん。
みんな気遣いができる子だ。一人を除いて。
ひかり「お名前…まだお聞きしてなかったのですが」
P「私ですか?」
ひかりちゃんはこくりと頷く。
P「Pと申します。名刺もどうぞ」
ひかり「P…さん。……あ、ありがとうございます。あの、敬語じゃなくてさっきみたいなフランクな口調でも私は気にしませんけど」
P「そうですか。でも急には難しいです。慣れてきたらでいいですか?」
ひかり「…はい」
P「それで、どうかしましたか?」
322 = 1 :
ひかり「助けていただいたお礼に、これ!受け取ってください!」
そうして渡されたのはチョコだった。ファンに配ったものとは包装が違う。
P「大したことをしたつもりはないんですけど、せっかくなんでいただきます。ありがとうございます」
ひかりちゃんは安堵の表情を浮かべる。
ひかり「あ、あの、Pさんはお怪我ありませんか?もしあるとしたら私のせいで…」
P「大丈夫です。私、生まれてこの方一回も骨折ったことありませんから」
ひかりちゃんは俺が何を言ってるかわからないって表情だったが、すぐに笑った。
ひかり「私も折ったことありませんよ?」
そうだったのか。なんか世間一般的には骨折る人の方が多く感じるよね。
P「えーと、まあ丈夫ですから」
訂正してみる。
ひかり「ふふっ…!そうですか…よかった」
なんだかむず痒い空気が漂う。ちょっとばかり緊張してきたかも。
ひかり「今日はありがとうございました。Pさんかっこよかったです」
323 = 1 :
P「そんなことありませんって…」
ストレートな言葉にどう対応していいのか、処理が鈍くなってしまう。
ひかり「Pさん謙遜ばっかりですね」
ひかりちゃんは俯きがちで、時たま視線をあげたり、横にずらしたりしていたが、やがて口を開く。
ひかり「…では私はそろそろ失礼します。またお会いできるのを楽しみにしてます」
顔に笑顔を張り付けて行ってしまった。
P「ひかりちゃん!」
ひかりちゃんは立ち止まって振り返る。
あんな顔されたら、引き止めないわけにはいかない。
P「俺も次に会うの楽しみにしてるから!」
どうしてこの口調で言ってしまったのかわからない。
けれど俺はそれでよかったと思う。
彼女の笑顔を引っぺがしてその下に隠れてたとても素敵な表情を見せてくれたのだから。
そして会釈して彼女は今度こそ戻っていった。
324 = 1 :
P「はは…ダメだな俺」
彼女のアイドルとしてではなく女の子としての魅力を感じてしまって、心の中で自分に毒づく。
彼女はアイドル…。彼女はアイドル…。邪な気持ちを持つんじゃない。
まあ俺だって男だし…。そういうのは多少しょうがないことで…。
この仕事はじめてから処理してないし…。
言い訳はよくない。最初にそう決めたんだし…。
女P「Pさーん…」
P「うわっ!」
煩悩に思考を振り回されながらうんうんと唸っているときに話しかけられるもんだから盛大に驚いた。
女P「なんですか、その反応!?傷付きますよぉ…」
P「すみません。その、そんなつもりでは…」
女P「ふふっ…いいですよ。それより聞きたいことが…」
P「聞きたいことですか…私に答えられることなら何でもどうぞ?」
325 = 1 :
ぐっと近寄る女Pさん。ふわっと漂ってきた女性特有の香りがまだ悶々としてる俺の鼻腔をくすぐる。
女P「なんで今日会ったばかりのひかりちゃんにはフランクで私はまだ敬語なんですかー!?」
わっと喚きだす。
えー……。くだらないと思ってしまった。
P「というかあなたも敬語じゃないですか」
そう指摘すると女Pさんはハッと我に返る。
女P「でもひかりちゃんだって敬語でした」
P「それはなんというか…ノリで…」
我ながら苦しい。
女P「私の方が付き合い長いのになぁ…」
なんだ…この人やきもちやいてんのか。
確かにずっと友達だったやつが急に他の友人と仲良くなってるの見ると虚しくなるけどさ。
それと同じなのかな?
326 = 1 :
P「まあ喋り方なんて些細なことじゃないですか」
笑ってごまかす。
女P「でも、なんだかフランクな方が距離感が…」
うーんなかなか納得してもらえない。女の人って難しいな。
P「でも私はあなたの方が近しい仲だと思ってますよ?」
そう言っても女Pさんはやっぱり訝しんでいた。
P「まあそのうち慣れますよ。また飲みに行きましょ?」
女P「…わかりました、約束です」
はいはい、約束です。
女P「あと、これを…」
手に持っていた袋を渡される。
P「これって…」
チョコだよな。
327 = 1 :
女P「いつもお世話になっているので作ってきました!」
ああ、この人の笑った顔はやっぱり…。
いけない、また悶々とさせられてしまった。
P「ありがとう」
女P「いえ、来月楽しみにしてますから!」
そういえば来月にバレンタインと姉妹みたいなイベントがあったな…。
P「あはは…期待しないでくださいね」
それでは、とお互い軽く挨拶して別れる。
雪歩もしばらくして戻ってきたようだ。
P「男の子たちといて大丈夫だったのか?」
雪歩「ちょっと怖かったですけど、前ほどじゃありません」
雪歩の男苦手も多少改善されてきたようだ。
328 = 1 :
雪歩「私に弟がいたらあんな感じなのかなぁ…?」
P「翔太くんか?」
雪歩「あ、はい、そうです…」
P「どうだろうな。でもそう思えるってことはイヤってほどじゃないんだろ?」
雪歩「そうですね」
今日発見したことは、雪歩はたまに慈愛に満ちた表情をすることがある。
そして兄弟を羨ましいと思ってること。
P「さ、帰ろうか。うちまで送っていくよ」
雪歩「ありがとうございます。…プロデューサー、どうぞ」
チョコレートを控えめに差し出す雪歩。
P「ありがとう」
俺はもちろん受け取る。
お互い笑い合って、またともに歩んでいくのだ。
329 = 1 :
今日のイベントはいろいろあったなと思い返す。
邪な気持ちが芽生えかけたのは雰囲気にあてられただけだ。
きっとそうだ。今後は気を付けよう。
俺はホモ。俺はホモ。
呪文を心で唱えて暗示をかける。
いや待て、この暗示が成功してしまったらどうなるんだ?
そんなんホモになるに決まってる。
それはいかん!
と一人でバカな考えを巡らせながら、俺ってバカだなぁと落ち着くのであった。
雪歩を家まで送り届けて765プロへと戻ってきた。
P「ただいま戻りました」
現在午後5時。
330 = 1 :
小鳥「お帰りなさいプロデューサーさん!」
やけに元気がいいというか、待ってましたとばかりの小鳥さん。
P「どうしたんです?」
小鳥「もぉ…。今日が何の日か忘れちゃったわけじゃないですよね?」
がっかりする小鳥さん。
まあ今日という日はバレンタイン以外にないと思うのだが…。
P「もしかしてチョコあるんですか?」
小鳥「その通りです!実はみんな作ってきたんですよ」
おお、全員が!嬉しいなー。けどチョコは飽きたなー…。
なんて贅沢なことを思ってみる。
小鳥「プロデューサーさんのデスクには乗りきらなかったので、向こうの休憩スペースの机に置いてあります。持って帰ってあげてください」
P「了解です」
331 = 1 :
小鳥「それと…」
小鳥さんはいったん区切ってそわそわとする。
小鳥「こここれを、私からも…」
らしくもなく緊張してるのか、どもる小鳥さん。
恥ずかしそうに包みを取り出す。
小鳥「いつも頑張ってるので、どうぞ…」
あんまりこういう経験ないんだろうなぁ。特に男性がらみには疎いみたいだし。
でもしおらしい小鳥さんってなんだか貴重な気もする。
P「ありがとうございます」
小鳥「…どういたしまして」
P「みんなは?」
小鳥「もう帰しました。すぐ暗くなっちゃいますからね」
P「そうですか…じゃあこれから一杯行きます?」
小鳥「おっ!いいですねぇ!私もここのところ一人酒ばかりだったので行きましょう!」
その反応おっさんか。と思ったが言わないでおこう。
そうして小鳥さんは帰り支度を始めた。すでに業務は終了してるらしい。
俺は机に置かれた様々な箱や袋を眺めて、もらった紙袋に丁寧に詰めていく。
バレンタインにプレゼントをもらうこと自体初めてだったのに、こんなにもらえるなんて幸せなんだろうな。
そうして次の仕事と今日のお返しのことを考え、小鳥さんと事務所を出るのだった。
332 = 1 :
翌日。
朝の情報番組でバレンタインイベントが放送されていた。
『人気アイドルのサイネリアに今話題の新幹少女、そして先日一枚目のシングルを発表して注目が集まっているジュピター!』
とまあこんな具合で、雪歩はまだまだかぁ…。と思っていたのだが。
『そして一際注目を集めたのが新人アイドルの萩原雪歩さんです!!』
雪歩の自己紹介シーンが流れる。
『このキーンという音にびっくりしてしまったり、自分が入るための穴を掘り出したりと…』
雪歩の珍プレーが長々と画面に映る。
番組スタジオ内では結構ウケてた。
『面白いですねぇ。どうやってステージを掘っているのかも気になりますね』
いやいや、面白くないよ!
『そしてこんなハプニングも…』
これはひかりちゃんが落っこちるところだ。まさか…。
番組のスタジオでは、危ない!とみんながハラハラしてる様子だったが…。
333 = 1 :
『なんと、男性がスライディングで華麗にキャッチ!その後、関係者と裏へ戻ってしまうのですが…』
場面が切り替わり、ひかりちゃんが戻ってくるところだ。
『怪我もなく無事にイベントは続行されたようです。男性は姿を消してしまったのですが、我々が新幹少女のひかりさんにお話を伺ったところ、765プロダクションの関係者だそうです』
『萩原雪歩さんも765プロダクションということでしたよね』
『そうですね』
『まさに大活躍じゃないですか!』
そして再び場面が切り替わり、退場のシーン。
『ですが最後にまたハプニングが…』
冬馬くんが穴にはまって落ちるところだった。
テレビ越しから冬馬くんのツッコミが聞こえる。スタジオ内では大笑いだった。
こんなのが全国ネットに流れていいのか…と思いながら、出勤前の俺はテレビの電源を落とした。
334 = 1 :
これにておちまい!
バレンタインにちなんだお話でした!
一応、メインアイドルは雪歩で書いております。
マイナーキャラにスポットを当てすぎてますが許してください。
ご意見ご感想ご質問、批判ダメ出し等あれば仰ってください!
次回はメインではなくサブのお話を書いたのでそちらを投下します。
期待せずに暇つぶし感覚で読んでいただければ幸いです。
335 :
あまとうが色んな意味でおいしいポジションで安心した(笑)
336 :
出社したPを取り囲むアイドル達を想像した
337 = 1 :
今から投下します
338 = 1 :
数日後。
俺はある決意をしていた。
引っ越しすることにしたのだ。
「荷物運び終わりましたよ!」
P「ありがとう!じゃあ先に引っ越し先に向かってもらえるかな」
「はい!了解しました!」
引っ越し業者お兄さんは一礼して外に出る。
荷物はもともと少ないので、トラックの中はすき間だらけでガラガラだ。
部屋を見渡すと何にもない殺伐とした風景。
こんなに広かったっけな、と考えてしまう。
このアパートともおさらばか…。
伊織にはよく押しかけられたっけ。
小鳥さんとあずさが来たときは焦ったなぁ。
物思いにふける。
P「さ、俺も行くか…」
339 = 1 :
引っ越し先は前より事務所からは離れているが、歩いて行ける距離にあるアパート。
グレードも上がってわくわくしてくる。
どのように模様替えしようか考えてると、時間がいくらあっても足りない。
大きい荷物だけを配置してもらって引っ越し業者の方々を帰らせる。
俺はこの段ボールに入ってる生活用品などの片付けを残りの時間をかけてやるつもりだったのだが…。
玄関のチャイムが鳴った。
引っ越して間もないのに誰か来るはずねーだろ。
そう思って無視、どうせ間違えちまったんだろうな。
しかし、チャイムが止まない。
それどころか勢いを増して、連打しているようだ。
なんだこの迷惑な客人は!!
340 = 1 :
しかたなく、玄関のドアを開ける。文句の一つでも言ってやろうと思ったのだが…。
伊織「なに無視してんのよ!」
亜美「遅いぞ兄ちゃん!」
真美「れでぃーを待たせちゃダメだよ兄ちゃん!」
即座にドアを閉めて鍵をロック、チェーンもかけてさようなら。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピピピピピピピピンポーン…!!
バンバンバンバンバン…!!ドンドンドンドン…!!
伊織『開ーけーなーさーいー!!』
亜美『開けるんだー!兄ちゃんはすでに包囲されている!』
真美『兄ちゃーん!真美たちのこと嫌いになっちゃったのー!?』
チャイムを連打しドアを叩き大声で騒ぎ立てる。
P「うるせぇよっ!!」
さすがに我慢できねーよこれ。
たまらずに全部のロックを解除してまたドアを開ける。
341 = 1 :
伊織「さっさと入れればいいのよ」
P「お前なぁ…ご近所迷惑も考えろっての!ブルジョアジーの甘ったれお姫様にはわかんねーだろうけどなぁ!」
伊織「なんですってー!?せっかくこんなかわいい妹がお祝いに来てあげたんだから感謝の一つもしてほしいわね!」
P「はぁー!?誰も頼んでねぇっての!わかったら帰れ!俺は暇なお前たちとは違って忙しいんだよ!」
伊織「ぜーんっぜん仕事取ってこないのはどこのどいつよ!」
亜美「ちょっといおりーん…」
真美「ちょっと兄ちゃん…」
圧倒的兄妹喧嘩に双子もたじたじだった。
こういうところは似た者兄妹なのだろうか…。
言い合ってると、隣の部屋のドアが開く。
「うっさい!!痴話喧嘩ならよそでやれ!!」
当然、怒られる。痴話喧嘩じゃないです。
出てきた男性は俺たちを見ると…。
「警察呼んだ方がいいか?」
俺たちは必死で弁解してなんとか難を逃れた。
342 = 1 :
結局、俺の方が折れて、しかたなく家に上げることになった。
伊織「初めからそうしなさいよ」
納得いかねー!
伊織「みんなー、入っていいわよー!」
なんだって?
春香「こ、こんにちは…」
やよい「こんにちはプロデューサー!」
美希「お邪魔しますなのー!」
さらにぞろぞろと集まる765プロのアイドル達。
こんの暇人どもめ…。
俺のサンクチュアリが…。引っ越して初日なのに…。
千早「本当にいいのかしら…」
あずさ「ちょっと伊織ちゃん強引すぎなんじゃ…」
良識のある組は控えめな反応だ。
伊織「入れてくれるって言ったんだからいいのよ」
このクソガキめ…。
あとで絶対デコピンしてやる。
俺も俺で大人げないのだった。
343 = 1 :
それはそうとまだまだ来る。
雪歩「これお父さんから、先日はどうもって…」
癒しの雪歩。しかも手土産まで持ってきて…。
P「ありがとう。遠かったでしょう。さ、雪歩はどうぞあがってあがって…」
伊織「なんで雪歩にはえこひいきすんのよ!」
P「はぁ?自分のその無い胸に聞いてみやがれ!」
伊織「なんですってー!?」
真「ほらほら落ち着こうよ二人とも…また怒られるよ?」
P「ぐっ…!」
伊織「ふん…!」
真「それにボクたち手ぶらで来たわけじゃないしさ」
律子「そうですよプロデューサー。ちゃんと差し入れ持ってきました」
小鳥「プロデューサーさんの新居でお祝いしましょう!」
344 = 1 :
そこで俺はあることに気づいて、小鳥さんに近づく。
P「小鳥さぁん?」
ねっとりと粘着したように言う。
小鳥「な、何ですか?」
びくっと肩を震わせる小鳥さん。
そんな小鳥さんの肩を組むと、小鳥さんは蛇ににらまれた小鳥のように震え上がった。
P「俺の引っ越し先の住所、みんなに教えたのあなたなんじゃないですかぁ?」
小鳥「いいいいえ、ぜぜ、全然教えてないでありますよっ!」
なにキャラだよ…。絶対教えてるな。
そもそもこの人くらいしか知らないだろ、俺の住所。
P「今度、駅前の高級居酒屋食べ飲み放題おごりで」
小鳥「ぴよぉ…」
小鳥さんは地に膝をつき、しくしくとうなだれた。
345 = 1 :
美希「ハニー、狭ーい」
P「なら帰れ」
美希「それはヤ!」
このわがまま娘が…。
P「あと離れろ」
美希「だって狭いんだもーん、しょうがないよね?」
伊織「んなわけないでしょ!離れなさい!」
千早「また美希はプロデューサーに迷惑かけて…」
やよい「プロデューサー!私も片付けるの手伝いまーす!」
大天使やよいはいつも出演してる番組よろしく、お手伝いする気満々で来ていた。
P「ありがとうやよい。俺も片付けやるからお前らはベッドで寝るなり買い出し行ってくるなり、とにかく俺の邪魔にならんようにしてくれ」
美希「はーい。じゃあ美希はベッドで寝るのー!」
こいつはブレねぇ…。
346 = 1 :
春香「じゃあ私もお片付け手伝います!」
P「おー、ありがとな春香」
春香「いえいえ…私もこのくらいしかできないので」
とは言うけど実際、助かる。
あずさ「私は買い出しに行こうかしら…」
律子「あずささん、私も行きますよ。亜美と真美もいらっしゃい」
亜美「何でも買っていいのー?」
真美「どっちにしても兄ちゃんの邪魔になっちゃうから行った方がいいよね」
小鳥「私も行きますよ」
5人で買出しに行くようだ。
残りは俺の手伝いということになった。
このアパート間取りは広くないが別に狭いというわけでもない。
12人はやっぱり窮屈だけどな。
347 = 1 :
真「プロデューサー、これはどこに置けばいいですか?」
P「それはやっておくから他の頼む」
千早「プロデューサー、このCDラックはやっぱりこっちの方が…」
P「ああ、それは絶対そこに置いといて。ちょっと邪魔かもしれないけどそれは譲れない」
伊織「お兄様、いかがわしい本は全部捨てておくわね?」
P「俺はそんな本一冊も持ってない!」
やよい「プロデューサー、お洋服畳んでおきますね」
P「おう。…ちょっと、やよい、その畳み方教えてくれ」
雪歩「ひぃっ!ゴキブリ!!」
P「なに!?…買い出し組にコンバット買ってきてもらおうか。見つけたやつは俺が駆除しよう」
春香「…」
P「おい春香。俺の下着がどうかしたのか?」
春香「うえぇ!?…ななな何でもありませんよ!」
そうして全部片付いた。
348 = 1 :
美希「あふぅ…。あれ?なんだかお部屋広くなった?」
P「片付けたからそう見えるだけだろう。…美希はずっと寝てたな」
美希「ハニーの邪魔しないようにしたの」
P「まあいい。…みんなが真面目にやってくれたおかげで早く綺麗になった」
春香「えへへ…。それならよかったです。最初は迷惑じゃないかなーって思ったんですけど…」
真「そうだよね。伊織たちとのやりとりを見て不安になっちゃったよ」
P「当たり前だ。引っ越し当日にこの人数で押しかけてくるやつがいるかっての」
やよい「プロデューサー、あとは細かいところの掃除しましょう?」
流石はやよい。細かいところまで気を配っている。
P「そうだな。帰ってくるまでに掃除機かけてゴミまとめておこうか」
もうちょい大きめのテーブルがあれば、みんなで食事でもできそうなもんだけど…。
時間もあるし…買ってこようかな。
P「お前らいつまでいるの?」
伊織「いつまでって…適当に帰るつもりだけど」
349 = 1 :
千早「そうね。今、大体4時くらいだから、買い出しに行った人が帰って来て少しお祝いしたらって感じじゃないですか?」
P「そうか。…みんな夕飯食べてかない?」
俺がそう言うと時間が止まったみたいにみんな硬直した。
P「あれ?俺なんか変なこと言ったか?」
真「変じゃないけど…」
雪歩「プロデューサーから言われると思ってませんでした」
美希「ミキもちょっとびっくりしたけど、ハニーの手料理食べたいな」
伊織「ていうかお兄様料理できるの?私見たことないわ…」
やよい「伊織ちゃん。プロデューサーのお昼いつもお弁当だったよ?」
春香「コンビニのじゃなくて?」
驚きすぎだろ。そもそも男でも一人暮らしなら自分で家事とかやる必要あるし、料理だって安上がりになるから自炊の方がいい。
P「…で、どうすんだ?いるんならご家族に電話しておけ、上司にごちそうしてもらうって言っとけ」
やよい「私は帰らないと…」
350 = 1 :
P「ん、どうして?できれば頑張ってくれたやよいにはいてほしかったんだけど…」
やよい「弟たちが…」
そうだった。やよいは弟たちの面倒を見なければいけないのだった。
伊織「やよい、とりあえず電話してみたら?もしかしたら弟たちもやよいに楽しんできてほしいかもしれないわ」
やよい「でも…」
やよいはきっとみんなで夕飯を食べたい。
でも自分だけ楽しい思いをするのは気が引けるのだ。
P「ほら電話してみな」
受話器を渡す。
やよいは意を決して電話をかけた。
やよい「…もしもし。…かすみ?…あのね、今日お姉ちゃん、伊織ちゃん達とお夕飯食べに行ってもいいかなーって………え?ホントにいいの?…うん、うん。ありがと、かすみ。…じゃあ切るね、うん、ばいばい」
P「よかったなやよい」
やよい「はいっ!ありがとうございます、プロデューサー!…伊織ちゃんもありがとう!」
伊織「ふんっ!やよいだって、たまにはハメを外しても許されるってことよ」
真「…伊織は素直じゃないなぁ」
春香「でも伊織らしいけどね」
千早「よかったわ高槻さん」
他の子たちも残るようだ。
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