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    元スレP「伊織か?」伊織「お兄様!?」

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    101 = 1 :

    星井のライブ当日。

    P「うーん、結局微熱までは何とか下がったな…」

    俺は今会場に来ている。先日も下見に来たり昨日もリハをやったらしい。
    らしいというのは、この計画を共有する人が現れたからだ。

    俺が早退したときに再びしばらく休むからと、引き継いでもらったのが音無さんだった。

    みんなが気を遣わないように内緒で進めてきたこのライブ計画。
    今では音無さんと共同して行ってる。もちろん社長も承諾済み。

    そしてここが星井が残るかどうかの分岐点。上手くいくかは全くわからない。

    しばらくすると、当事者の星井がやってきた。

    美希「あ、おはようプロデューサー」

    P「ああ、おはよう」

    美希「熱大丈夫なの?昨日、プロデューサーの代わりに小鳥が来て教えてくれたよ?」

    P「そっか、俺はいいんだけどさ。お前は大丈夫なの?」

    美希「ミキのことは心配いらないの。もう全部間違えないで歌って踊れるよ」

    P「本番で緊張して間違えんじゃねーぞ」

    美希「余計なお世話なの!…プロデューサーともこれで最後だし、今までお世話になりました」

    P「気が早いって、ここで失敗したらアイドル続けてもらうからな」

    美希「どーぞご勝手に?」

    …うざいなこいつ。もうやめさせてもいいんじゃない?
    というのは冗談だけど。

    102 = 1 :

    くるっと踵を返して控室に向かう星井。

    それにしても予定の1時間前から来るとは案外しっかりしてるんだな。

    そして星井は早めのリハを行いほぼ万全の状態で本番に臨んだ。

    本番直前。

    P「緊張してる?」

    美希「全然?」

    こいつめ。本当に緊張してないな…。大物なのか、ただのバカか。

    P「ひとつお願いがある」

    美希「今になって、何?」

    P「ステージの上では絶対に『やめる』とか『引退する』とか言わないでくれ」

    美希「…お客さんが悲しむから?」

    P「………そうだ」

    嘘なの。全然違うの。

    美希「ふーん。わかった。一応、約束は守るの」

    P「おう、頼んだ」

    星井はステージに上がっていった。

    103 = 1 :

    美希『みんなー!今日は来てくれてありがとうなのー!』

    初めてで物怖じしないあの態度はやはり大物と呼ぶべきだろうか。

    ていうかマジであれ初めてか?

    そしておよそ1時間に及ぶライブは終わりを迎えた。

    星井は完璧だった。控えめに言ってもこのライブは成功と言える。

    歌も良し、踊りも良し、場をつなぐトークも問題なし。

    それに彼女にはセンスがある。人を惹きつけるセンスが…。

    しかも一人で8曲の歌と踊りを披露したにもかかわらずまだ余裕がありそうだ。

    美希『じゃあねー!みんな、またねー!!』

    『ウオォォォォォーーーーーーーーー!!!!』

    すげえ盛り上がってんすけど…。ハコが大爆発する勢い。

    それにしても今の星井のセリフ…。

    星井が壇上から降りてくる。

    104 = 1 :

    P「お疲れ様、星井。…どうだった?」

    美希「あの…あのねプロデューサー…ミキね…」

    『………ール………アンコール……アンコール…!アンコール…!!』

    星井が振り返る。もちろんたった今降りてきたステージに向かって…。

    P「あらら、お呼びみたいだぞ?…でも、アイドルやめたいならここで降りてもいいよ?」

    再びこちらを向く星井。その顔はいろんな感情であふれかえったもののそれだった。

    美希「…」

    星井は何も答えない。いや、答えたくても込み上げる思いに飲まれて、言葉が喉の下でつっかえて出てこない。聞こえるのは嗚咽ばかりだ。

    だが俺を見つめるその眼差しには確かな光、美しくて希望にあふれた光が宿ってるように見えた。

    P「…言葉もいらないな。行ってらっしゃい」

    俺は星井の肩をそっと抱き、ステージにその身を向けさせた。
    そして背中を強く叩いて送り出す。

    美希「…いたっ!」

    よたよたと2,3歩前に出た星井は恨めし気にこちらを見る。

    P「声も出ないくらいに緊張してんじゃねーよ!」

    星井の目にはさっきから大粒の涙が溜まっていたが、俺ににっこりと微笑むと吹っ切れたようにそれも汗と一緒に流れていった。

    美希「…行ってきます!」

    105 = 1 :

    『ウオォォォォーーーーーー!!!!』

    星井がステージに上がった瞬間、大歓声が起こる。たかだかキャパシティ200人の小さなハコとは思えない。

    美希『みんな、お待たせなの…!』

    星井の声は涙で震えてる。
    客席のあちこちから『頑張れー!』だの『負けんなー!』だの『熱くなれよ!』だの聞こえてくる。………すまない。最後のは嘘だ。

    美希『ミキ、本当にこういうのは初めてで…嬉しくて…とにかくみんな大好きなの!』

    『俺もだー!』と、やっぱりあちこちから聞こえる。

    星井は2曲プラスしてライブを終えた。

    小鳥「ライブ、大成功ですね!」

    P「あ、音無さん」

    小鳥「それで美希ちゃんは…?」

    P「わかるでしょう?星井がアンコールを受けた意味が…」

    小鳥「それじゃあ…」

    音無さんの表情がぱぁっと輝く。

    P「おそらく星井は続投です」

    小鳥「よかったぁぁぁ……」

    P「音無さん。ライブはまだ終わってませんよ?」

    小鳥「…と言いますと?」

    P「社長にお願いして来てくれた方に特典を用意したんです。だから、スタッフの方たちと一緒に配るの手伝ってもらえますか?」

    小鳥「はい、もちろんです。プロデューサーさんも一人でよく頑張りましたよ?」

    P「あはは、恐縮です」

    それでは、と音無さんは行ってしまった。

    106 = 1 :

    P「…」

    美希「プロデューサー!」

    その声に振り返る。
    直後、ふいに視界がフェードアウトしていった。
    微かに俺を呼ぶ声が聞こえた。

    夢を見ていた気がする。
    兄貴と伊織と父さん、母さんがいて俺を笑顔で迎えてくれてる。

    けれど俺は行かないのだ。行けないのだ。

    俺は家族に背を向け走り出す。振り向くなと自分に言い聞かせる。

    あれはまやかしだ。俺は追い出されたんだ。

    妄想はもうよせ。

    俺は家族を顧みなかった。自分のことばかりだった。

    当然の報いなのだ。

    家族が俺を迎えてくれるという俺の妄想はただの幻想に過ぎない。

    目を背けろ。理想は見るな。

    兄貴も母さんも父さんも伊織だって、俺のことが嫌いだ。

    軽蔑してる。水瀬家の恥さらしだって罵っている。

    そのはずなのに…。

    立ち止まって振り返る。

    息が切れるほど走ったのに、変わらない家族との距離。

    なのにさっきまでの笑顔は消えていて。

    悲しそうな顔をしていた。

    伊織たちはそれぞれ顔を見合わせて、また俺に向き直る。

    ちょっと困った笑顔を浮かべて…。

    悲しいのが伝わってきて…。

    なんでそんな顔をするのかわからなくて…。

    俺はまた逃げてしまった。

    107 = 1 :

    P「ん…」

    知らない天井だ…。って言うのはもはやお約束だよね。

    美希「プロデューサー!?」

    P「星井?」

    音無さんもいるな。

    P「俺は何で病院に?」

    小鳥「何言ってるんですか!プロデューサーさん気絶したんじゃないですか!」

    P「俺が?…悪い冗談だろ」

    美希「ううん。ミキが呼んだら倒れたの…」

    小鳥「あれだけ無理しないでくださいって言ったのに…伊織ちゃんにも言われてたんでしょう?」

    P「そっか。…じゃなくて!ライブは!?」

    小鳥「そっちは大丈夫です。特典も配布し終えましたから」

    P「よかったぁ…」

    安心したらどっと疲れてきたかも。再び横になる。

    小鳥「でも自分の心配もしてくださいね…」

    P「ええ、わかりました。これからしばらくは休ませていただきますけど…」

    小鳥「…社長に伝えておきます」

    P「助かります」

    小鳥「しっかり寝てくださいね?…聞いたところによるとただの寝不足ってことだったんで…」

    108 = 1 :

    P「…」

    小鳥「あーあ、また伊織ちゃんに怒られますよ…」

    P「まあいいですよ」

    小鳥「じゃあ私はこれで失礼しますね」

    P「はい。わざわざありがとうございました」

    音無さんは微笑んで会釈をすると部屋から出て行った。

    P「病院なんて大げさだな…」

    美希「本当に心配したんだよ、プロデューサー?」

    P「ああ悪かったな、星井。お前は戻らないのか?」

    美希「うん、ミキまだプロデューサーに言ってないことあるの」

    P「言ってないこと?…そういや俺もあったな…」

    美希「プロデューサーも?なになに?」

    P「星井、お前のライブは大成功だ。今までお疲れ様!」

    自分でも意地悪だなぁって思う。彼女が納得するはずないこんな言い方に対して俺は星井がどんな返答をするのか気になってしまった。

    美希「あの、そのことなんだけど…」

    なんか、らしくないな…。しおらしいというか。

    109 = 1 :

    美希「キラキラしてたの…」

    P「は?」

    わけのわからない言葉に素頓狂な声をあげてしまう。

    美希「ミキのライブ見に来てくれた人たち、最初は全然そうでもなかったのにどんどんキラキラしていって、ミキにもキラキラ分けてくれて…」

    とりあえず黙って聞いておく。

    美希「お客さんもミキもみんなもっとキラキラして…歌ってて、踊っててすごく気持ちよかった」

    P「そっか。…それで?」

    美希「…ミキやっぱり続けたい!」

    P「練習もちゃんとやらなきゃダメなんだぞ?」

    美希「やるの!今さらって思うかもしれないけど、ミキもっともっとキラキラしたい!」

    P「……わかった。だったら俺は応援するし、最大限サポートしよう」

    美希「プロデューサー…」

    P「それより今日のライブだが…全然ダメだな」

    美希「ええっ!?終わったときプロデューサー、大成功って言ってたよ?」

    P「まあライブとしては成功だろ。すごい盛り上がりだったしな」

    美希「じゃあどうして?」

    P「歌も踊りもまあまあだったが、それだけだ。トークも微妙、もっと面白いネタもってこい。とにかく中途半端、俺だったら帰る」

    美希「………あんまりなの」

    星井はがっくりとうなだれた。

    110 = 1 :

    全部嘘です。ごめんね。超良かった。俺だったらファンになっちゃう。

    P「でもな、星井。まだまだこれからなんだ。お前はこれからもっと良くなる」

    美希「ほんと?」

    P「当然だ。お前はまだアイドル始めたばかりじゃないか…」

    だからまだ伸びる。経験値が圧倒的に足りてないだけ。

    P「しかしなぁ、アイドルが生き残っていくためには練習だけじゃダメなんだよ」

    美希「そうなの?じゃあ練習以外に何すればいいの?」

    P「まずは礼儀正しく。次にみんなに優しく。そしてみんなのお手本になるように」

    美希「そうすればミキ、もっとキラキラできるの?」

    キラキラはよくわからんが…。

    P「そうだな。世界中が星井美希に夢中になって、キラキラな世界の出来上がりだ」

    そういうと星井は目を輝かせた。

    美希「ありがとうプロデューサー」

    P「何だ急に?」

    美希「プロデューサーがライブやるって言わなかったら、ミキは何も知らないまま辞めてたと思うの」

    P「ふーん。こっちも辞めさせる気なかったけど」

    美希「え?」

    星井が間抜けな顔をする。何て言ったの?といったような感じだ。

    111 = 1 :

    P「だから、俺も初めから辞めさせる気なかったって」

    美希「どういうことなの…?」

    P「ライブやればまたアイドルに興味持つと思ってな。失敗しても残ることになってたし」

    美希「ミキ騙されたの?」

    P「はぁ?そんなわけないだろ。別にマジで辞めてもよかったんだから。ただ、俺は星井がアイドル辞めたくないって言うと、思ったんだ」

    美希「それってミキを信じてたってこと?」

    P「どうだろうな。でもこのライブのために頑張った甲斐はあったと思ってる」

    美希「ミキのために…」

    P「俺のためだ。俺がアイドル星井美希の活躍を見たいと思ったんだ。お前にはその素質があるとも思った。だからこれは俺の勝手な判断と行動で自己満足でしかない。結局は音無さんにも手伝ってもらっちゃったけどな」

    美希「プロデューサーって素直じゃないの!」

    P「いや素直だっただろ…」

    美希「ミキね、今日のことでとっても感謝してるよ?」

    112 = 1 :

    瞳を潤ませる星井。あまりに魅力的で言葉が出ない。

    美希「あの時、プロデューサーが背中をたたいてくれたから、みんなのアンコールに応えられたの」

    そっと目を閉じる。その時を思い出すような表情はとても綺麗だった。

    美希「ついさっきまで辞めようって思ってたミキがもう一回みんなの前に出ていいの?って…」

    俺は聞いた。彼女の想いを…。
    ていうか星井もそこまで考えてたんだ。意外、自分のことばかりだと思った。

    美希「そう考えてたミキの背中を押してくれたのはプロデューサーだよ…?」

    しっかりと目を合わせる星井。潤んだ瞳に、今にも泣き出しそうな表情に、目を逸らしそうになる。

    P「そうか…」

    やっと出てきた言葉が何とも素っ気ない一言だった。
    なんとか繋げようと次の言葉を絞り出す。

    P「あ、その、なんだ…まあ続けてくれんなら頑張れ。俺がお前のファン1号なんだから、俺をがっかりさせないでくれよ?」

    美希「あはっ!そっか、プロデューサーがミキの一番目のファンなんだ。それっていつ決まったの?」

    P「………お前がアイドルになるって言った時から」

    美希「ふーん。じゃあプロデューサーは初めっからミキの味方だったんだね…」

    別に味方ってわけじゃないんだけどさ。

    113 = 1 :

    美希「……プロデューサー、ありがとう」

    また聞くその言葉、やっぱ照れくさかったりする。
    俺はちらちらと視線をさまよわせてしまう。

    美希「これからプロデューサーのことハニーって呼ぶね!」

    P「は?なんで?」

    いきなりどうしたこいつ?わけわからん。さっきからわけわからん。

    美希「ミキにとって大切な人だから!」

    屈託なく言う星井に俺は唖然。

    美希「ねえ、ハニー?ミキのこと見てて、これから頑張るから!」

    P「それは分かったがハニーはやめろ」

    美希「ヤ!」

    反抗期、早っ!言うこと聞くんじゃなかったのか!?

    こんなのがみんなのお手本になっちゃ困る。

    114 = 1 :

    P「おま…っ!」

    『お前なぁ…』言いかけた時、星井に人差し指で口を押さえられる。
    何の真似だ?と目で伝える。伝わるかな?

    美希「『お前』じゃない、って前にも言った気がするの。お前じゃなくて『ミキ』って呼んでよ」

    星井の手を払いのける。

    逆の手の人差し指を押さえつけられる。

    俺は払いのける。負けじと星井はその逆を…。
    激しい攻防が始まった。

    しまいには星井が抱き付いてきて離れない。俺は引っぺがそうとしたがなかなか離れなくて困ってしまった。

    P「わかった。名前で呼ぶよ。離れろ星井」

    美希「『星井』じゃなくて『ミキ』!…それと人にお願いするときはどうするの?」

    何から目線なのこいつ?生意気だなぁ。

    P「わかりましたよ。美希さん、離れてくださいお願いします」

    美希「別に呼び捨てでいいのに…?」

    P「お前、離れろやコラ」

    美希「また『お前』って言ったの!ミキ離れない!」

    115 = 1 :

    だめだなこりゃ。矯正していかないといけないのか。

    P「ごめんって、美希」

    あんまやりたくないが…。
    俺は美希の耳元に口を近づけ…。

    P「…美希、離れてくれないか?」

    出来る限り甘い声で囁いた。…つもり。

    美希「………あ」

    『あ』って何!?何だその反応!!
    すると美希は案外素直に退いてくれた。

    美希「しょ、しょしょうがないのー…ハニーがそう言うのなら離れてあげる…」

    これすると、ほとんどのアイドルが割と素直に言うこと聞いてくれるんだよね。

    P「今日は帰りなよ。明日も練習あるんだしさ」

    うんうんと、素直に首を縦に振る美希。俯きがちでちょっと硬直気味なのが気になる。

    なんだか、らしくない。

    116 = 1 :

    P「居てくれてありがとな、美希。それと顔あげなよ。可愛いのにもったいねーぞ?」

    美希「…う、うん!ハニーもありがとなのー!」

    美希は赤らんだ顔をこちらに向けて、満面の笑顔を見せると、くるりと背を向け慌てて帰っていった。慌てる必要ないのに…。

    うーん。それにしても名前呼びか…。如月、いや、千早もそう呼んでって言ってたし改めるかな…。でもなんか恥ずかしいよな。…とりあえず試してみるか。

    俺はそれから1週間休暇をもらった。無給のやつを。
    余談だが、その月の給料が手取りで2万弱だった時の絶望感は半端じゃなかった。今から1か月1万円生活でも始めるんですか?ってくらい。

    休みが明け…。

    P「おはようございます」

    小鳥「おはようございます。久しぶりですね」

    P「はい、ご無沙汰です。……小鳥さん」

    小鳥「ええ、そうですねぇ………って、ええ!?」

    P「うわ!びっくりしたぁ…なんですか?」

    117 = 1 :

    小鳥「いえ、今『小鳥さん』って…」

    P「ああ、いろいろありましてみんなのこと下の名前で呼ぼうかなと思いまして…やっぱ嫌でした?」

    小鳥「とんでもないです!大好きです!…じゃなくて、むしろ嬉しいくらいですよ?…さっきは、いきなりで驚いただけですから」

    P「はぁ…そうですか」

    嫌がられてないどころか嬉しいくらいならいいか。

    律子「おはようございます」

    P「おはよう。…律子はいつも早いな」

    律子「あ、プロデューサーお久しぶりです。…って今なんて!?」

    またその反応?やっぱ嫌なんじゃ?

    P「いや、来るの早いなって…」

    律子「そっちじゃなくて…」

    小鳥「律子さん。なんかプロデューサーさん、みんなのこと下の名前で呼ぶようにするそうです」

    P「嫌だったか?」

    律子「まさか!プロデューサーに近づけたみたいで嬉しいですよ?」

    P「ならいいんだ」

    他の子はどうなるのだろうか…。

    律子「他の子もみんな嬉しがると思いますよ?」

    118 = 1 :

    P「へ?」

    律子「ちょっと不安そうにしてたので私からアドバイスです」

    P「おま……律子って優しいよな」

    『お前』って口に出ちゃうな。接頭語みたいに。

    律子「な、な、何言ってるんですか?…あー、仕事仕事っと!!」

    P「なに照れてんだよ」

    律子「別に照れてませんー!」

    小鳥「プロデューサーさんが急に褒めたりするからですよ」

    そんなものなのか?

    とりあえず、他のみんなも下の名前で呼んでみたけど、どの子も律子や小鳥さんと同じような反応だった。

    この頃からアイドル達との距離もグッと縮まったような気がする。

    千早は言い直す必要がなくなったのが嬉しいらしい。
    どうしても『如月』って呼んじゃってたから。

    こうして星井美希引退ライブの件は引退せずに終わった。

    美希は普段のマイペースはともかく、アイドルへの情熱を燃やし始めた。

    おかげでみんなとも仲良くやっているようだ。

    いろいろあったけど結果としては本当によかった。

    119 = 1 :

    さて、今回はおちまい。
    キリがいいところで終えられたと思います。

    以下反省等。
    ちょっと投稿ペース早めようか思案中。
    そこんところどうでしょうか?

    ご意見ご質問、このスレに対しての批判やダメ出し等はご遠慮なく仰ってくだちい。
    できる限り改善を試みます。

    それとレスありがとうございます。
    まさか続きを期待してくれる人がいるとは思わなかったです。(嬉しい)

    長文で失礼しました。それではまた。のし

    120 :

    おつ

    121 :

    おっつおっつ。
    これはまさかの美希エンド?

    122 :


    これはいおりん嫉妬の展開か?

    123 = 96 :


    早いと嬉しいけど無理をしてまでやるものでもないし
    やりたいようにやってほしい

    124 :

    皆さんレスありがとうございます。
    次回は1週間以内に投下します。

    125 :

    おつ、良い感じ

    126 :

    これは最終的にいおみきで取り合いの展開になる可能性が高い?
    伊織「お兄様は私のお兄様なんだからねっ!」と美希を引き剥がそうとするが美希が「ヤッ!ハニーはミキのハニーなの!」と維持でも剥がれまいとする
    やっべニヤニヤしてきた俺超キモい

    127 :

    おつ、美希かわええなぁ

    128 = 1 :

    >>126みたいな展開はあまりないんだが
    そういうのも欲しい?

    ちなみに今日21:00頃投下予定

    129 :

    まぁやりたいようにやれよ

    130 :

    着地点決めてないなら
    いちゃラブ日常パートに比重傾ける必要があるって
    それ一番言われてるから(迫真)

    131 :

    >>128
    予定の展開で

    132 = 1 :

    それから一月後。

    今日は亜美と真美がテレビ出演である。うちでは今回が初テレビ出演。

    双子アイドルっていうことで売り出したらこれが意外にウケたのだった。

    双子自体はあんまり珍しくないと思うけどね。

    P「でもよかったなー」

    真美「なにが?」

    P「こうやって真美と亜美がテレビ出演なんて…うちでは初めてだろ?」

    亜美「そういえばそうだねー。ようやく時代があみたちに追いついたよね」

    P「は、調子乗んな」

    真美「兄ちゃんのおかげだよ?ありがと…」

    P「…おお、なんか素直に言われると調子狂うな」

    真美「そんなまみの魅力に負けてしまう兄ちゃんであった…」

    P「は、調子乗んな」

    亜美真美『ぶーぶー!』

    P「うっせ、出演者の方々に迷惑の無いようにしろよ?」

    133 = 1 :

    亜美「大丈夫だよ!」

    真美「いたずらもしないって!」

    P「当たり前だ!いたずらしたら干す!」

    亜美「あみたち洗濯されちゃうの?」

    真美「これ以上綺麗になっちゃうの?」

    P「バカ言ってないであいさつしに行くぞ」

    深夜の放送ではあるけど駆け出しのアイドルを取り扱ってくれる番組だ。
    これで多少でも認知度が上がればいいけど、そうもいかんだろーな。

    スタッフの方にあいさつを済ませ、次は共演者。

    司会の方に挨拶を済ませる。
    あまり有名ではない芸人の方だが、徐々に注目を浴びている。

    他の共演者は『ジュピター』という男性の3人組ユニットだ。
    えーと、所属は961プロ!?

    へー、黒井さんのとこか…今度あいさつに行かねーとな。

    今日来てんのかな?

    134 = 1 :

    とか考えてるとジュピターの楽屋前だ。

    ノックすると、どうぞーと言う女性の声が聞こえた。

    P「失礼します」

    そう言って扉を開ける。亜美と真美も通して前に出す。

    P「本日共演させていただきます765プロダクション所属の双海亜美と双海真美です」

    ほら挨拶、と促して二人にもあいさつさせる。

    真美「双海真美です!お願いしまーす!」

    亜美「双海亜美です!よろしくね!」

    P「こらこら…そんなん失礼だろ?申し訳ありません」

    北斗「ははは…!気にしないでください。これはこれは…。かわいいエンジェルちゃん達じゃないですか。俺は伊集院北斗と申します」

    金髪の男性が笑い、立ち上がって律儀に礼をする。

    翔太「こちらこそよろしく!僕は御手洗翔太」

    3人のうちではやや幼さの残る少年も笑って答える。

    冬馬「天ケ瀬冬馬だ。よろしく」

    目つきの鋭い少年は無愛想に言い放った。

    P「冬馬ー。あんたもっと愛想よくできないのかしら?」

    女性が呆れたような目つきで冬馬くんを見ている。

    135 = 1 :

    冬馬「うっせ、これでも愛想よくしてるつもりだ!」

    翔太「ええー?冬馬くん、今ので愛想よくしてるつもりなの?」

    北斗「だとしたら冬馬は今日の収録を何度も見返すといいな」

    二人とも天ケ瀬を茶化して楽しんでた。仲は良いらしい。

    冬馬「お前らまで…」

    本人は困惑してる。どうやら愛想よく振る舞ってたらしい。

    亜美「あまとう面白ーい!」

    冬馬「あまとうって何だ!?」

    真美「今度ケーキ買ってきてあげよう!」

    冬馬「お願いしますっ!」

    P「本当に甘党なのか…。じゃなくて、おい双子、失礼なこと言うな。天ケ瀬さん本当に申し訳ない」

    冬馬「ああいや、別にいいって…。ケーキくれんなら」

    そんな食いたかったの?

    P「そうですよ。気にしないでください。あとケーキもいいですから」

    女性は笑って答える。そう言うなら、まあいいか。

    136 = 1 :

    P「あ、申し遅れました。私、こういうものです」

    ふと思い出し、やや慌てて名刺を差し出す。

    相手もそれに応じて名刺を交換する。

    P「765プロと言えば高木さんの…」

    P「へぇ、ご存知なんですね。そちらも黒井さんのとこの…」

    P「そちらもご存知なんですね。私は高木さんには学生の頃何度かお会いしたのでお世話になってるんです…。もちろん黒井社長にも」

    P「そうでしたか。実は俺もなんですよ。そちらの黒井社長にはお世話になったもので…。もうずいぶん会ってないんですけどね」

    P「私も黒井社長からお話を伺ったことがあります。高木さんについて、それと高木さんのもとで働く男性について…」

    P「それって俺のことですか?」

    P「はい。おそらく」

    P「どんな風に仰ってました?」

    言うと彼女はおかしいことを思い出した風に笑って。

    P「ふふっ!そうですねー。絶賛してるのか罵倒してるのかよくわかりませんでした。でもとっても可愛がってらっしゃるんだなぁって思いました」

    あの人らしいな。自然と笑みがこぼれてしまう。

    137 = 1 :

    P「今度、あいさつに伺いますね」

    P「ぜひいらしてください」

    世間話にちょうど花が咲き始めたころ。

    翔太「あれー?もしかしてお二人さんいい雰囲気?」

    北斗「俺たちはお邪魔でしたかね?」

    冬馬「いやいや、二人が外に出ろよ」

    好き好きに言うジュピター。

    亜美「兄ちゃん、その人とお熱い感じなのー?初対面なのにやるぅ!」

    ニヤニヤする亜美。

    真美「兄ちゃん!もう行こうよ!」

    なぜか慌てだす真美。あんまり引っ張るもんだから。

    P「わかったわかった。引っ張んな」

    女Pさんはくすくすと笑う。

    P「真美ちゃんはPさんのこと好きなのね。」

    真美「ち、ちがうもん!真美、飽きちゃっただけ!」

    ここに、なんだか子供と大人の差を感じた。

    P「…それではPさん今日はよろしくお願いします」

    P「はい。こちらこそ。そんじゃ二人とも行くぞ」

    俺たちは楽屋を後にした。

    138 = 1 :

    真美が若干、不機嫌なのが気がかりだ。

    P「どうした真美?何が気に食わないんだ?」

    真美「べつにー…」

    あからさま過ぎて逆にどうしたらいいかわからん。

    P「なあ亜美…どうにかしてくれよ」

    小声で亜美にヘルプを要請。

    亜美「亜美もなんかよくわかんない。最近になってだけど、真美ってたまにああいう感じ出したりするから…」

    P「そうかい」

    亜美もダメ。じゃあ誰ならいいの?

    P「なあ真美?」

    真美「なに?」

    やっぱり少し不機嫌そうに答える。おお、真美よ一体どうしてしまったというのだ!

    P「今日の収録の後3人でちょっとしたお祝いをしよう。初テレビ出演おめでとうって…」

    真美「…」

    P「嫌か?」

    139 = 1 :

    真美「ううん。嫌じゃない」

    そう言った真美の口調はさっきよりも穏やかだった。

    亜美「じゃあ亜美は夜景の綺麗なビルの最上階がいい!!」

    P「子供が背伸びするんじゃありません!それに俺も今月やばい」

    亜美「いいじゃんいいじゃん!そんなことで何がお祝いなの兄ちゃーん?」

    調子乗ってんなこいつ。

    P「大きめのは事務所でやるからいいんだよ。俺たちはみんなに秘密でひっそりとやるのさ」

    真美「…秘密で……」

    P「そう。まあ高そうな所は無理だが、できるだけ大人っぽいとこには連れてってやるよ」

    真美「約束だよ?」

    亜美「約束!」

    P「わかったって。だったら亜美と真美も今日はばっちり決めてくれよ?」

    真美「うん!」

    亜美「了解であります!」

    そうして迎えた本番。
    初めてにしては緊張感もなく、進行していった。

    140 = 1 :

    ジュピターとの掛け合いも割とウケていた。

    冬馬くんの路線がよからぬ方向へ進んで行ってる気がしたが、見て見ぬふりをした。

    しまいには、司会者までいじりだす始末。

    あとは亜美と真美の魅力を十分に伝えるような編集になってることを祈るだけだ。

    今から放送が楽しみだなぁ。

    P「お疲れ様。真美、亜美、二人とも良かったんじゃないか?」

    亜美「まあねー!」

    真美「手ごたえばっちりっしょ!」

    確かに、スタッフにも出演者にも好印象だったように思える。
    そして亜美と真美にはスタッフのあいさつに行かせた。

    P「あ、ジュピターのみんなもお疲れ様。とっても面白い現場だった。ありがとう」

    北斗「いえ、こちらこそ。初めてでしたが十分に楽しませてもらいました」

    翔太「一人納得いってないのがいるみたいだけどねー」

    冬馬「うっせーよ!あんなの俺のアイドル活動終了じゃねーか!」

    本当に彼は気の毒だった。

    P「あれじゃまるで芸人ね」

    141 = 1 :

    冬馬「ぐっ…!あんたは本当に優しくねぇな」

    P「でもあんなツッコみ芸人顔負けじゃないか!とてもいい武器になるよ」

    冬馬「やめろ。優しくしないでくれ」

    P「まったく。優しくしてほしいのか、ほしくないのかどっちなのよ…」

    冬馬「こうなったのも双子のせいだぞ」

    翔太「それは冬馬くんが悪いよ」

    北斗「そうだぞ冬馬。お前がバカ正直に言い返すから」

    確かに鬼ヶ島羅刹のくだりとか、ぺペン板崎のくだりの返しが鮮やかだった。

    文字数しか合ってないとか、一瞬じゃわかんねーから。

    でもこれじゃあまりにも彼がかわいそうだ。

    P「本当に申し訳ないです。天ケ瀬さん」

    冬馬「もういいって、身内がこんなだ。開き直るさ」

    意外と図太いメンタルなのな。

    冬馬「あとその呼び方はやめてくれ、冬馬でいいよ。年上に名字にさん付けで呼ばれるのはムズムズする」

    P「そうですか…。では次にこういう機会があればまたよろしく頼むよ。冬馬くん」

    俺も冬馬くんの方がしっくりくるな。

    冬馬「ああ、二度と御免だけどな」

    と言ってさっさと行ってしまった。

    142 = 1 :

    北斗「彼はああ言ってますけど別に本当に嫌なわけじゃないと思いますよ?」

    翔太「そうだよねー!なんだかんだ言っても冬馬くんすごく楽しそうだったから」

    P「そっか」

    二人は最後にあいさつをして帰って行った。

    P「失礼な子で申し訳ありません」

    P「いえ、こちらからちょっかいをかけてしまったので謝らなきゃいけないのはこちらです」

    P「…そうだ!」

    急に手のひらをパシッと合わせる女Pさん。

    P「せっかくですから、番号交換しませんか?」

    番号というのは無論、電話番号のことである。
    こちらは断る理由もないので…。

    P「そうですね」

    あっさりと承諾する。

    P「じゃあ今度連絡いれますね。相談とか乗ってもらえれば助かります」

    P「こちらこそ、まだまだ未熟なものですから頼りにさせていただきます」

    お互いにお疲れ様、と残しその場を後にした。

    本日の業務は終了。報告書を書いて後日提出だ。

    143 = 1 :

    亜美「兄ちゃーん。終わったよ」

    真美「ディナー行こ?ディナー!!」

    P「そうだな。なんか食べたいものあるか?」

    亜美「そこは兄ちゃんがエスコートするってもんでしょー!」

    P「そうか。ラーメンでいいのか?」

    亜美「えー!兄ちゃんセンスないですなー」

    P「うっせ。今どこでもいいっつったろが」

    真美「言ってないじゃーん」

    呆れた感じで真美が言う。

    真美「どこに連れていくかで男の人のうちわが決まるってスタッフのお姉さんが言ってた」

    団扇って何だ。器だろ器。

    P「…まあ任せろ。ちょっといいとこ連れてってやるから」

    俺はよく行ってた店に電話を掛ける。つまり、水瀬家がよく行くような店だ。
    ちょうど席も空いているということなので、今から行くと伝えて電話を切る。

    P「うっし、じゃあ行くぞー」

    亜美「わーい!さっすが兄ちゃん!」

    真美「期待してるかんね?」

    P「生意気言ってんじゃねぇ。さっさと乗れ」

    亜美真美『はーい』

    ぶつくさ言いながらも車に乗り、目的地へ。

    ここからでもあまり遠くない場所だ。

    144 = 1 :

    大体30分かからずに着いた場所は地上40階ほどありそうな高層ビル。

    その下でそれを見上げ驚愕する二人。

    亜美「兄ちゃん…」

    真美「これマジな感じ…?」

    P「任せろって言ったろ?まあ今日くらいは奮発してやるよ。みんなには絶対内緒な?」

    亜美「ありがとう!兄ちゃん!」

    真美「うん!約束する!」

    でもこういうのって誰かに話したくなるだろうから、内緒にしなくてもいいと俺は思っているが。

    内緒とか秘密って言うと特別感増すよね。

    P「とりあえず行くか。俺も久しぶりなんだよなぁ…」

    真美「兄ちゃん、来たことあるの?」

    P「当たり前だろ。そうでなきゃ電話もかけないし、連れてきたりもしないって」

    亜美「ふーん。前来たのはいつなの?」

    わりと質問多いな。いいんだけど。

    P「そうだな。もう3年は来てないなぁ」

    亜美「へー」

    興味ねえだろお前。

    145 = 1 :

    P「ほら、エレベーター乗って」

    真美「うわぁ!50階まであるよ!?」

    P「48階だ」

    驚く真美にそれだけ言って俺は48のボタンを押す。

    亜美「なんかドキドキすんねっ!」

    真美「うんっ!」

    二人ともみるみるテンションが上がってるようだ。

    こちらまでそのワクワク感が伝わってくる。今にも工作しそうなくらいだ。

    こういう場所のエレベーターはやけに速くて、亜美と真美が数字の光を目で追っているとあっという間に目的の48階へ着く。

    真美「はやー」

    亜美「はえー」

    こういう子供っぽいところはやはり愛嬌のある二人だった。

    エレベーターを出ると一人のウェイターが出迎えてくれた。

    P「先ほど電話を入れたPです」

    「お待ちしておりました。こちらの席へどうぞ」

    ウェイターはそれだけ言うと俺たちをカウンターの席へと案内した。

    146 = 1 :

    目の前にはシェフと鉄板。

    料理の様子を目の前で見ることができるのだ。

    さらに窓の奥には夜景が広がる。まさしく都会の絶景だった。

    真美「すごーい!」

    亜美「おしゃれっぽい!」

    まさに小並感である。というかリアル小学生でした。

    俺は椅子を引いて二人に座るように促す。

    P「ほら、座りなよ」

    亜美「サンキュー兄ちゃん!」

    真美「ありがとう」

    そうして自分も腰を掛ける。ここのシェフと目が合う。

    シェフ「お久しぶりでございます」

    P「はは、久しぶり」

    ここのシェフとは顔見知りだったりする。元常連だったもんで。

    シェフ「本日は可愛いお客様もお連れのようで…」

    P「まあね。仕事の同僚みたいなもんだよ」

    シェフ「ほう。それはご立派ですね」

    P「なに、まだまだ駆け出しのアイドルなんだ」

    シェフ「アイドルですか。それではサインの方も今のうちにいただけますか?」

    冗談っぽく言うシェフ。

    147 = 1 :

    P「あはは!まだ自分のサインなんて持ってないんじゃいかな?」

    それに全然有名じゃないのにさ。これから有名になるけど。

    亜美「あるよ?」

    P「…マジ?」

    真美「マジマジ!」

    シェフは笑うと、近くのウェイターに目くばせをする。

    シェフ「ちょうど色紙の方も用意してありますので、ぜひ書いていただけませんか?」

    亜美「もっちろん!」

    真美「いいですとも!」

    気合十分に二人はおそらく初めて他人に渡すであろうサインを書き始めた。

    可愛らしい文字で二人らしいサインが色紙を飾る。

    P「地味に練習してたんだな」

    亜美「まあねー」

    真美「ちょっと緊張しちゃったかも」

    P「まあでも上手いな」

    素直に褒めると、嬉しそうに笑う亜美と真美。

    シェフ「それではこちら飾らせていただいてもよろしいですか?」

    P「そうしてもらえると助かるな」

    一応、二人の宣伝効果にならないかな?

    シェフ「ところで、ご注文はいつものでよろしいでしょうか?」

    148 = 1 :

    P「そうだね。じゃあ、みんな同じので頼むよ」

    シェフ「かしこまりました」

    真美「いつものだって!いつもの!」

    亜美「なんかかっこいー!」

    テンションもさらに上がる二人。

    目の前で肉を焼き始めるのを凝視したり、少しお高めな雰囲気に多少緊張しながらも楽しく過ごせているようでなによりだった。

    スープ、前菜、主菜と次々に出てくるコース料理に食べ盛りの二人の瞳もキラキラと輝く。

    亜美真美『おいしー!!』

    シェフ「大変嬉しいお言葉をありがとうございます」

    シェフも満足そうにニコニコと笑顔でいる。

    シェフ「坊ちゃまはどうですか?」

    P「あはは、その呼び方はよしてくれよ。もちろん美味しい。それに、懐かしい」

    シェフは何も言わなかったが、慈しむような目をしていた。

    この人も小さい頃から俺を知っているんだと、実感させられる。

    その後、デザートをいただき、しばらく談笑して席を立つ。

    シェフ「また来てください」

    P「ええ、また来るよ。今日はサービスしてくれてありがとう」

    割引してもらった。社会人になったお祝いだそうだ。もう3年目だけどね。

    149 = 1 :

    シェフ「ご家族の方も頻繁にいらしております」

    彼は事情を知っているのだろう。

    P「お世話になってるみたいで」

    シェフ「…いえ、こちらこそ」

    彼はもう何も言及してこなかった。多分、俺の声の調子から踏み込むべき話題じゃないと思ったのか。気遣いも上手な人だ。

    シェフ「お嬢さんたちも応援しているよ」

    亜美「ありがとう、おじさん!」

    真美「真美たち絶対有名人になるからね!」

    シェフは優しく笑って俺たちを見送った。

    P「よかったな。ああして応援してもらえるなんて幸せなことだよ」

    亜美「うん!いいおじさんだった!」

    真美「真美また行きたい!」

    P「そんなホイホイ連れて行けるような場所じゃねーよ。二人とももっと頑張りなさい」

    亜美真美『はーい』

    満面の笑顔で息ピッタリに二人は返事をした。

    来た時と同じようにエレベーターに乗る。

    違うのは気持ちが若干落ち着いていたことだろうか。

    150 = 125 :

    なるほど


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