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    元スレ久「須賀君、悩みとかない?」 京太郎「はい?」

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    601 = 1 :


     熱の篭った自摸と捨て牌が繰り返されていく。

     際どい牌が河に放たれるが、和了の声が上がらず進む。

     そして。


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │三│四│五│⑥│.2 │.3 │.6 │.7 │.8 │.9 │.9 │  │  │ │⑤│
     │萬│萬│萬│筒│索│索│索│索│索│索│索│南│北│ │筒│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                              赤

     赤⑤筒自摸。

     一向聴となる形。


    京太郎(ああ……ようやく、か)

    京太郎(あの配牌から、ドラと南の生牌を抑えて、良くここまで来てくれた)


     深く思索。

     ここが岐路だ。

     そう感じたのだ。


     染谷まこと原村和の二軒立直。

     これを掻い潜り和了らなければ、須賀京太郎のトップ取りの可能性は限りなく薄い。


     進むか、退くか――そんなものは既に決まりきっている。

     この一打を選択する上で、問題となるのは。


    京太郎(――南を切るか、北を切るか)


    京太郎(どちらも生牌、しかも片方はドラ)

    京太郎(どうする? 思いだせ、考えろ)

    京太郎(この状況で、一向聴維持で打牌の後先で考慮すべきは――)

    602 = 1 :


    京太郎(手がこれ以上進む事のない二軒立直じゃなく――オリ気配が未だ無い部長)


    京太郎(部長はダマか、それとも張ってないのか)

    京太郎(……立直かダマに刺さるなら仕方ない)

    京太郎(どの道、どちらも切らなきゃ進めない牌)


    京太郎(なら――)


     ならば。

     ここで、彼が、諦めず、進む事を選択する、なら。

     自分の読みに沿い、可能性を信じ、不用な迷いを振り払い。


    京太郎(――鳴かれて役が確定する方を後に残す、切るならドラからだ)

    京太郎(部長が張ってない状態で南対子で役無し、っていう仮定だけどな)

    京太郎(北も、さいっこうに、危ないのは解ってる)

    京太郎(でも……死ぬなら――強く打って、死ね!)


     瞳に力を宿し。

     諦めず、退かず。


     生牌のドラである北を、強く。

     そう、強く、切り捨てた。

     場が一瞬凍ったような錯覚を覚えた。


    (――生牌のドラ、強い牌、ですね)


    まこ(……あの様子なら漫然と切り出したわけじゃなかろう)


    (この巡目、この場況、この点数状況……)

    (……後付けだと待ち牌が厳しくなり過ぎる)

    (場に見えていない1sから引いたら目も当てられない)

    (ドラから叩くのは、無い、わね)


    (それにしても――男の子の顔してるわね、須賀君)

    (……ちょっと格好良いわよ)

    (何時もそうなら良いんだけど)


     余計なことも考えつつ、竹井久はそう判断を下した。

    603 = 1 :



     和了の声が上がらず一巡し。

     選択の結果、須賀京太郎が手に入れることになった、後先の一巡。

     その牌は――


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │三│四│五│⑤│⑥│.2 │.3 │.6 │.7 │.8 │.9 │.9 │  │ │.1 │
     │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│南│ │索│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                   赤


     一索自摸。


     結果的にではあるが、竹井久の判断は正しく、そして、ある意味間違っていた。

     麻雀に、たられば、は無い。


     しかし。

     しかし、仮にだ。


     竹井久が鳴いていれば、須賀京太郎は一索自摸にて聴牌に辿り着けなかった。

     しかしその場合、竹井久にとっては一索自摸にて役無しフリテンとなっただろう。


     また、須賀京太郎が南から切り出していれば、結果、竹井久が副露し。

     北を切ることが無くとも、自摸にて竹井久の和了となっていた、その一索。


     彼にとって望外の聴牌となる、鳳凰が描かれた牌を手中に収め。


    京太郎「――立直!」


     打南。

     当然の如く曲げられる牌。

     ここで日和るなら、そもそもドラを手放していない。

    605 = 1 :

    寝ますー

    607 :

    あれ、この場合4000,2000じゃない?

    608 = 1 :

    >>607
    なんか違和感を感じてたけど東南西北が動いてない!
    東家~とかを変えずにコピペ→点数だけ触ってたのがおかしいっす、むしろ親表示して消しとくべきだった
    申し訳ない、南三京太郎親なので点数は合ってます



     南三局0本場(親:須賀京太郎):結果

     竹井久    37800→33800
     原村和    40800→35800
     須賀京太郎 16300→30300
     染谷まこ   25100→20100

    609 :


    本格的に咲ちゃんが空気になってて京咲でなくなるかもしれないと危惧を抱いてしまう
    悩み相談?ああそんなのも(ry

    610 :

    俺はここ最初から京久(久強め)だと思ってたんだが。

    611 :

    Q 前々回で終わるはずじゃ? なんでこんなに長いの?
    A なんもかんも近麻が悪い

    初詣も終わったのでぼちぼち

    612 :

    おかえりー
    あけおめー

    613 = 1 :


     南三局1本場。


    京太郎(……なんとか、繋がった)

    京太郎(トップまで一気に射程圏内。配牌も良い、このまま連荘出来れば……)


     そんな思いを牌が汲んだわけでないだろうが――

     順調な自摸に恵まれ、須賀京太郎は聴牌を果たす。

     これは流れが来たか、などと些かオカルト染みた考えがふと過った。


     何せよ、親で先行したなら……と、思考し。


    京太郎「立直」


     無論、点数状況や手にもよるが、先行立直に関しては強ち間違いではない。

     立直の利点、それは幾つかある。

     その内一つは先制時、他家が降りる可能性が高まるという点。

     つまり、立直後の放銃率が低くなるのだ。

     逆に、押し引きが未熟で追っかけ立直が多ければ放銃率は上がっていく。

     立直の使い方と押し引き、これが主に初級者と中級者を分ける境界線と言っても良い。


     しかし。

     『一発自摸るぜー、超自摸るぜー』

     などと須賀京太郎が思っていたかどうかは定かではないが。
      

    「自摸」


     彼の自摸は回ってくる事はなく、声が上がり手牌が晒された。


    京太郎「えっ」

    「仮聴ですいませんが」


     和了形:原村和 表ドラ:④筒
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │四│五│六│⑤│⑥│⑦│.1 │.2 │.3 │.4 │.5 │.5 │.6 │ │.5 │
     │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│ │索│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                              

     門前清自摸和のみ。

     30符一翻。


    「300、500の一本場は400、600」


     先制したとはいえ、自分一人が聴牌しているとは限らなかったり。


     南三局1本場(親:須賀京太郎):結果

     竹井久    33800→33400
     原村和    35800→38200
     須賀京太郎 30300→28700
     染谷まこ   20100→19700

    614 = 612 :

    おぅ……ゴミ……

    616 = 1 :


     ――更に。


    「吃(チー)」


     その⑦筒に食い付く竹井久。

     場に晒される⑥⑧筒、ドラ面子の嵌張。


    京太郎(まずい――部長と染谷先輩が早い)

    京太郎(染谷先輩はオタ風から仕掛けたって事はかなり手が纏まってる)

    京太郎(高い場合染め手、安くても軽く連荘を狙える手牌なのが濃厚)


    京太郎(部長も食い仕掛けで3900以上は手堅い牌姿のはず)

    京太郎(ゆっくり自分の手を面前で仕上げる時間は――)


     瞬く間に二家の仕掛けが入り、速攻戦の様相を呈した。

     そして竹井久、打⑧筒。



    京太郎(――ここで最後のドラか!?)

    京太郎(――――――ッ!!)


    京太郎「ポンッ!」


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
     │一│二│②│③│⑥│.1 │.2 │  │  │  │  │ │⑧├──┤⑧│
     │萬│萬│筒│筒│筒│索│索│発│中│東│東│ │筒│⑧筒│筒│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


     面前では間に合わぬと判断を下し副露。

     打⑥筒。


    京太郎(攻めに参加しないと――きっと追い着けない)

    京太郎(……ドラ3はこれで確定、手役は後でいい)

    京太郎(役牌を重ねるか、目指すは鳴き三色)


     その思考の直後。

     染谷まこ、手出し発。

     続いて竹井久、手出し中。

    618 = 1 :


    (須賀君が鳴き三色ですが、二索は私の手中に暗刻で三枚)

    (そして待ちが1sもしくは3sなら出和了りは全て頭跳ね)

    (1s2s3s確定面子での単騎待ちは読めないので考慮に値しない)

    (――この待ちなら立直しても良し)


    「立直」


     相変わらずの速度を以って。

     面前聴牌を果たしていた原村和から立直宣言が為された。

     曲げられ河に置かれる⑤筒。


    京太郎(やっぱり和って引きいいよな……一人面前で仕上がるのか)

    京太郎(見え見えの三色仕掛けに立直って事は――っと、安牌)

    まこ(後一枚なんじゃが――東)


     染谷まこ、打東。

     次いで竹井久、南自摸切り。


    まこ「ポンッ!」


     染谷まこが南を副露し、打赤⑤筒。


    手牌:染谷まこ
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┬─┐      
     │二│四│四│四│五│五│五│ ┌──┤  │  │ │  │  ├──┐
     │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│ │  西│西│西│ │南│南│  南│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘


    まこ(良し! 聴牌)

    まこ(もし赤五萬を自摸れば跳満まで見れる)

    まこ(が、連荘優先、当たり前じゃがどこから出ても倒す)

    620 :

    正直喰い三色でテンパイいっただけ上等だと思う

    622 = 1 :


     次巡、染谷まこ。


     手牌:染谷まこ
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐       ┌─┬─┐ ┌─┬─┐      
     │二│四│四│四│五│五│五│ │.6 │ ┌──┤  │  │ │  │  ├──┐
     │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│ │索│ │  西│西│西│ │南│南│  南│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘


     6s自摸。

     偶然にも東一局と全く同じ当たり牌を最初に掴む。

     危険牌自摸に頬を引き攣らせつつも思索。


    まこ(――久が前巡手出し8s)

    まこ(空切りでなければ待ちの変化と思っていいじゃろう……索子待ち本線)

    まこ(……ええい! こんな牌切れるか!)


     ――染谷まこ、打二萬。

     竹井久、自摸切り二萬。


     その竹井久の牌に再度染谷まこが頬を引き攣らせる。

     原村和、須賀京太郎も自摸切りと続き。

     染谷まこ――自摸1s。

     3s暗槓の為、通りそうに見える牌。


    まこ(……)

    まこ(……)


     ゆっくりと眼鏡を外す。

     目を細め、つぶさに、入念に、場を見ると共に思索。


    まこ(……一見通りそうじゃが)

    623 :

    まこのツモ運すげーな
    俺だったら確実にその日は麻雀やらんわ

    624 = 1 :


     懸念するは原村和の立直。

     役があれば彼女は立直などしないのは折込済みだ。


    まこ(染め仕掛けのわしにタンヤオ仕掛けの久)

    まこ(そして鳴き三色仕掛けの京太郎)

    まこ(和ならそれらから打ち取れる牌で待ってるじゃろう)

    まこ(2sは通っておるが、索子の下が殆ど出てない……)


     長考。

     押すか、聴牌を崩すか、その二択。

     また不聴にて親流れも終局を意味する。

     染谷まこの選択は。


    まこ(――残り少ないが索子で面子を作りつつ張り直せばいいんじゃろ!)


     方針を決め直し、打四萬。


    まこ(遠いが……当たると読んだ牌は死んでも切れん)

    (萬子の下二連……まこがオリた――というかオーラスだし回ったって事ね)

    (染谷先輩が回ってくれるなら不聴で流れても私の勝ち)

    (手役が無いであろう須賀君が見えてない白で張り直したとしても――1sで打ち取り)


     須賀京太郎の鳴き三色が成就しない事が確定し、染谷まこが回った事により、

     実質、竹井久と原村和の一騎打ちとなったと思われた状況。

    625 = 1 :


     しかし――須賀京太郎は諦めてはいなかった。

     次巡染谷まこ、九萬自摸切り。


    京太郎「ポンッ!」


     須賀京太郎、九萬副露。


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┬─┐ ┌─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
     │.1 │  │ │九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
     │索│南│ │萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
     └─┴─┘ └─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


     打南。

     1s単騎、役無し聴牌。


    (九萬!?)

    (……手中に1sがある以上、役無し聴牌濃厚)

    (何の意味が)


    (――って普通の人なら思いそうだけど……)

    (これは……)


    京太郎(……なんとかここまで来れた)

    京太郎(和の事だから俺の三色に振り込むような待ちは選択せず、かつ和了易い形)

    京太郎(更にタンヤオ濃厚の部長と染谷先輩からも出る可能性が高い牌)


    京太郎(部長の暗槓の時……和が三索を見ている時間がいつもの副露確認より長かった)

    京太郎(……で3sを注視したって事はそこに絡む待ちである事が濃厚)


    京太郎(これらから読めば――拙い推理だけど索子の下で多面)

    京太郎(3sは四枚見えてる……考えられる形は1s3sの変則二面)


    京太郎(この1sに和了の照準を合わすしかない――)

    626 = 1 :


     ――己には皆のような華は無いと須賀京太郎は考える。


     宮永咲の変幻自在、柔剛織り交ぜた靭さも。

     竹井久の華麗に打ち回し悪形すらも和了きる博徒の如き勁さも。

     原村和の鋭さと美しさを併せ持つ日本刀にも似た強さも。

     片岡優希の東場における狩猟に特化した獣のような毅さも。

     染谷まこの経験に裏打ちされた断ち切れぬ分厚さも。


     自分には無い物だ。

     理解している。

     そう、理解しているのだ。


     ――それでも。


     そんな仲間へ胸を張れるような。

     臆する事無く相対できるような。

     最後まで諦めない、そんな打ち方でいたい、と――


     それは例えるなら。

     吹雪の中でも折れず上を向き立ち続ける一本の針葉樹。


     だから、ここで、須賀京太郎が引けと願う牌はただ一つ。


     その想いは――


     次巡、須賀京太郎、自摸、九萬。


     ――果たされた。


    京太郎「――槓ッ!!」


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┐ ┌─┬─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
     │.1 │ │九│九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
     │索│ │萬│萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
     └─┘ └─┴─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘

    627 = 1 :


     須賀京太郎、彼の狙いは。

     彼が良く識る彼女の、幼馴染の、最も得意とする。


    (――嶺上開花狙い)

    まこ(――まあ、役無しじゃと和了るなら限られるしのう)

    (――でも、それは余りにも薄すぎます)


     須賀京太郎が王牌へ、ゆっくりと、手を伸ばす。


     確信なんてあるわけが無い。

     直感で和了牌の在処など知れるわけが無い。

     其れは当たり前の常人の理。


    京太郎(ここで――引けっ!)


     だから、そう願い、嶺上牌を掴み、手中へ――


     手牌:須賀京太郎
     ┌─┐ ┌─┐    ┌─┬─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
     │.1 │ │⑨│    │九│九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
     │索│ │筒│    │萬│萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
     └─┘ └─┘    └─┴─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


     ――自摸、⑨筒。


    京太郎(――いない、か)

    京太郎「……熱かったなぁ」


     呟き、⑨筒を切る。

     だが――


    京太郎(だけど――これで海底は)


     ――九萬槓により生まれた和了の機会はもう一度ある。

     副露でずれ槓二回により、海底となる牌は須賀京太郎の自摸であった。


    (……そう上手く嶺上開花は出ないですよね)

    (海底はありますが……まだ遠い、和了とすれば部長と私のどちらか)


    (……須賀君は海底も考えてたのかしら)

    (そうだとしたら――後でご褒美をあげないとね)

    629 = 1 :


     ――それぞれが思う。


     優勢が覆る事もある。

     儘ならない事もある。

     最後までどうなるか解らない。


     不運に見舞われる事もあるだろう。

     たった数巡の後先に泣く事もあるだろう。

     全てが読みや牌理通りに、なんてなる訳がない。


     だが、しかし――否、だからこそ。


    京太郎(――麻雀って楽しいよな)

    (――麻雀って楽しいのよねぇ)

    (――麻雀って楽しいですよね)


     図らずしも、三人の胸中が一致した。


     南四局0本場(親:染谷まこ):結果 途中流局 千点棒供託

     竹井久    33400
     原村和    37200
     須賀京太郎 28700
     染谷まこ   19700

    630 = 1 :


     ちなみに、誰かがハブられてるとか言ってはいけない。

     まあ、それはともかく――続くオーラス一本場、三巡目。


    まこ「ふっ……立直」


     眼鏡をきらりと光らせ、僅かに上がる口角。

     そんな染谷まこの親リーにより場況は急変した。


    (まこ、ちょっと早すぎ――うん! 無理! 字牌合わせ打ちっと)

    (こういう事もありますよね……跳満自摸以上で捲られますが、とりあえず合わせ打ちですね)

    京太郎(早い! 早いっすよ染谷先輩! しかも現物がない! どうしろと……端牌で当たりませんように)


     須賀京太郎の捨てた牌が無事通り、染谷まこが自摸る。

     牌の腹を親指でこすり、零れる彼女の不敵な笑み。

     竹井久、原村和、須賀京太郎に嫌な予感が走った。


    まこ「一発――」

     御無礼、と続けられた言葉。

    まこ「自摸、8100オール」

    久・和・京太郎「「「えっ」」」


     和了形:染谷まこ 表ドラ:白 裏ドラ:八萬
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │.2 │.2 │.2 │.3 │.4 │.5 │.6 │.7 │.8 │.9 │  │  │  │ │.1 │
     │索│索│索│索│索│索│索│索│索│索│中│中│中│ │索│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


     緑と赤に美しく染められた手牌が顕わになる。

     変則六面張1s4s7s-3s6s9s、高め1s一発自摸、倍満。

     安め自摸でも問題ない。跳満でお釣りが来る。


     ここまで焼き鳥かつ前の心情シーンでハブられた者による一撃だ。

     ちゃんと地の文でフラグは置いた。あとオーラス捲りって王道だよね。

     つまり、染谷まこ怒りの立直一発自摸面前混一色中一通(リーチイッパツツモメンホンチュンイッツー)。

     繋げて書くとやたら長い。そしてランボーは関係ない。


     眼鏡をくいっと持ち上げる染谷まこ。ついでに再び無意味にきらりと眼鏡が光ったりしていた。 


    まこ「トップ捲り、じゃな」

    (……まこに全部持っていかれた!)

    (……これまでのフリは何だったんでしょうか)

    京太郎(……あれ? これ流れ的に格好良く俺が決める場面じゃないの?)


     現実は時に非情である――そうして終局となった。


     南四局1本場(親:染谷まこ):結果

     竹井久    33400→25300(3位)
     原村和    37200→29100(2位)
     須賀京太郎 28700→20600(4位)
     染谷まこ   19700→45000(1位)

    631 = 1 :

    遅くなりましたけど、あけましておめでとうございます

    どうでもいいですけど〆でまこさんの裸足のゲンAAを改変して使おうかと思ったんですが
    あまりに酷い気がしたのでやめました
    あと闘牌は……書き溜めにした方がいいねっすね慎重な推敲不可避だし良く分かりました
    多分このスレでは二度とすることはないと思います何のスレかわかんなくなるし

    後はエピだけちょこっとなんですけど眠気が限界なので寝ますー

    632 = 612 :

    ワカメェ……
    乙乙

    九種九牌はまだしも、四風子連打と四開樌と四家立直と三家和って結構忘れられるルールだよなー

    633 :

    >>632
    そしてそれを覚えると、なぜかSSで使いたくなる不思議

    634 :

    >>632
    トリロン流局って一般的なの?

    635 :


    まこさんかっこいい!

    >>632
    三家和は採用しないこともあるし……

    636 :

    四風子連打は稀にあるけど四開樌四家立直三家和なんて1回も見たことない

    637 :

    数え役満を三家和で流されたなぁ...

    638 :

    一局戦で北家が四開樌引き起こした時のなんとも言えない空気
    お前負けになるけどそれでいいのかと

    639 :

    MJモバイルで四家立直狙いで曲げたら流局せずにそのまま続行された
    そして放銃した

    640 :

    自分で読み直すと聴いてた作業用BGMにくっそ影響されてるのが良く分かるという

    ぼちぼち

    642 = 1 :


     ・
     ・
     ・


     染谷まこがオーラスにトップを捲った対局が終わり。

     一息つこうと原村和が皆の分を含め紅茶を入れる準備を始めた時。

     竹井久が須賀京太郎へ問い掛けた。


    「須賀君、さっきの南四で九萬槓をした時なんだけど――海底も考えてたの?」

    京太郎「ん……ええ。嶺上開花で引けるのが一番いいんですけど、引けなかった時はまだ機会はあるな、と」

    「ふーん、やっぱりそうなんだ」


    「――ご褒美、いる?」

    京太郎「ご褒美って……犬の躾じゃないんですから」

    「躾なんて人聞きが悪いわね。後輩の成長を祝う意味よ。そうねぇ……」


     勿体ぶって顎に手を当て考える仕草。

     続いて、良い事思い付いたとばかりに無駄に爽やかな笑みを浮かべる。


     あ、これはアカンパターンや。

     須賀京太郎は経験からこれは碌な事を考えてないと察知。

     嫌な汗が背筋に流れた。


    「ほっぺにチューとか、どう? これなら須賀君も嬉しいわよね?」


     ――やっぱり碌な事じゃなかった。

     いきなり何を言っているのだろうかこの人は。

     どんな反応を期待してるのか。

     そもそも普段の行動を考えれば罠にしか思えない。

     トラップカード発動は勘弁して欲しい。


     ……さて、どう返したものか。

     こういう時は冷静に、慎重に、麻雀と同じだ。

     部長のペースに巻き込まれては駄目だ――

     打開策を考え言葉を選びながら、須賀京太郎は頭を掻く。

    643 = 1 :


    「!?」

    「だ、駄目です! 部長!」


     しかし、須賀京太郎が口を開く前に宮永咲が反応してしまった。


     茶化し甲斐のある応答は宜しくない。

     スルーしとけばいいものを……。

     そんな彼の内心の予想通りに、竹井久のターゲットが宮永咲に移る。


    「ふむ……どうして?」

    「ど、どうしてって……」

    「別にいいじゃない、減るものでもないし」

    「そうは言っても……」

    「するのは私だし、咲は関係ないわよね?」


     からかうように、軽快に、投げ掛けられたその言葉に、


    「……部長」


     宮永咲の目が据わった。

     そして滲み出る全部ゴッ倒すオーラ。原作お馴染みのアレである。


     ――あー、これこの前の照さんと同卓する前の流れと良く似てるなぁ。

     あの時も唐突に不機嫌になったし。


     親父さんも何故かノリノリで全身黒尽くめにわざわざ着替えて。

     『成る程、須賀君……そういう事なら俺を倒してみろ』とか言い出す始末。

     何がそういう事なのか。訳がわからない。しかもやたら強かった。


     幼い頃からあんな面子で家族麻雀を打っていたら強くなるわけだ。

     もしかしておばさんも麻雀強かったりするんだろうか――とは須賀京太郎の心中。


    「あ、もしかして……」

    「咲も須賀君にご褒美あげたかった? ほっぺにチューしたい?」

    644 = 1 :

    訂正
    ×からかうように、軽快に、投げ掛けられたその言葉に、
    ◯からかうように、軽快に、挑発的に、投げ掛けられたその言葉に、

    645 = 1 :


    「ふぇっ!?」


     竹井久に投げ掛けられた言葉にやたら黒い雰囲気が吹き飛ぶ。

     奇声を発し、びくりと身を仰け反らせる宮永咲。


    「そうならそうと言えばいいのに……」


     狼狽している様相の彼女にお構い無しで、竹井久は勝手に話を進めていく。


    「ち、ちが、違います!」

    「じゃあ――半荘か東風戦で勝った方がするっていうのはどう?」


     否定の言葉をおそらく意図的に無視。

     にまにまと緩んでいる口元から推測するに、大変楽しそうだ。


    「これなら公平よね」

    「あ、あぅ……」


    京太郎「……するの確定なんですか?」

    京太郎「――というか、別にご褒美いらないんですが、それは」


     見かねて助け舟を出す。が、ガン無視された。

     ステルスでもないのに酷い。


     投下された爆弾の如き提案をどう除去すべきか――と須賀京太郎は改めて思考。

     ……残念ながら、相手にしないという結論しか出てこない。


    「い、いえ、ちゅーしたい、とか、そ、そういうのじゃ、なくて!」


     震えるように首を振り、視線を足元に落とす宮永咲。

     動揺しているのが挙動から丸わかりだ。


    「――いや……確かに……るけど……じゃなくて……でも少しは……とか考えなくも……なんて」

    「……けど……こういうのは……な方がいいし……じゃなくってもっと――」


     聞き取れない程小さな声で何事かを早口で紡いでいる。

     高速詠唱か何かだろうか。

     そういうのは無言詠唱……じゃなかった、胸中で済ませた方が得策な筈だ。

     傍から見たら不審人物である。

    646 :

    咲ちゃんかわいい

    647 :

    まるでメインヒロインみたいだな

    648 :

    久の奇襲攻撃!
    さきはこんらんしている

    649 :

    そういや部長もホの字だったな

    650 = 1 :


    「――何て言うか、あれな風にー!」


     突如として上がる叫声。

     錯乱したのか部室の外に逃亡する彼女。


     ……あれな風にってどんなだよ。

     いい加減、まともに取り合ってはいけないと学習したらいいのになぁ。

     須賀京太郎は頭を抱えた。


    優希「さ、咲ちゃーん!?」


     片岡優希が宮永咲を追いかけ、部室の外を見遣る。


    優希「あ、躓いてコケそうになった」


     相変わらずの運動神経だ。

     須賀京太郎は呆れつつ、釘を刺しておくかと竹井久に一言。


    京太郎「部長……あんまり咲をからかわないで下さい。どうせ本気じゃないんですし」

    「あら、それはどうかしら?」


     韜晦しながら陽射しの下の猫のように目を細めている。

     どうやらご満悦のようだ。

     彼はその反応に嘆息。

     普段通りと言えば普段通りではある。


    優希「どっかに走り去って行っちゃったじぇ……」


     まさか校内で迷子にはならないだろうが、このままだと暫く彷徨ってそうだ。

     仕方無い……と思い、須賀京太郎は席を立つ。


    京太郎「ハァ……ちょっと探しに行ってきます」

    「須賀君、頑張ってねー。いってらしゃーい」


     手を振りながら告げられる。

     発端は誰のせいだと……やっぱり何時かギャフンと言わす。と声に出さず悪態をつく。


     部室を後にし、片岡優希が見ていた方向からして、宮永咲は階段を下りたと推測。

     まあ、そう遠くは行ってはいないだろう、あいつの足ならすぐ追い着く。

     鍛えてますから。と楽観し、須賀京太郎は駆け出した。


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