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    元スレ久「須賀君、悩みとかない?」 京太郎「はい?」

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    みんなの評価 : ★★★
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    551 = 1 :


     倒される手牌。

     和了牌を引き入れ、東一局1本場を制したのは――




















     ――須賀京太郎であった。


     和了形:須賀京太郎 表ドラ:5s 裏ドラ:⑨筒
                                                         ┌─┐
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤⑥│
     │四│五│六│④│⑤│⑥│⑦│⑧│.6 │.6 │  │  │  │筒│
     │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│西│西│西├─┘
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


     立直、門前清自摸和、自風、赤一。

     30符4飜。


    京太郎「2000、3900の一本場、2100、4000」


     東一局1本場:結果

     東家:竹井久    34900→30900
     南家:原村和    30000→27900
     西家:須賀京太郎 25100→33300
     北家:染谷まこ   30000→27900

    552 = 1 :

    誰得?と聞かれたら自分得としか言えない内容なような

    そして、おかしい……結構端折ってるはずなのに局が進まない
    闘牌って尺やばくないっすかね、セーブでー

    553 :

    ヤッターと思ったらまだ東一じゃねーかww

    554 :


    丁寧に描写すると仕方ないけど確かに長いw

    556 = 1 :

    自分で闘牌を書く上での打ち筋的な意味で
    和→わかる
    まこさん→わかる
    部長→まあわかる
    優希→入れると東場と南場の扱いが難しい取り敢えず却下
    咲さん→は? 場面切取りならともかく、通してだとファンタジーすぎて牌譜ねーよ即却下

    咲さん描写の場合どうすれば良いんだろう……負けさせれるの?
    まあ咲ちゃんは幼馴染路線だから対局させなくても問題ないよね

    ぼちぼち

    557 = 1 :


    京太郎(和了れた……)


     和了牌を自摸った感触が、未だ手にある。

     東一局1本場の接戦を制した熱も、未だ残っている。


     だが、しかし。


    京太郎(……浮かれるな。未だ東一局が終わったばかり)

    京太郎(始まったばかりで、点数状況は平たいままだ)


     表情に出さず、余韻を噛み締めつつも自戒。

     手中より、不要である牌を河に置いた。


     ――全員手が重いのか、副露も立直もなく、巡目のみが重なっていく。

     そして――


    京太郎(……張ったけど、愚形、終盤、ノミ手)

    京太郎(立直は無意味、ダマ)


    まこ(ふむ……久が高そうじゃな、安牌)


    (ダマで満貫だけど聴牌が遅かったのよねー……)

    (待ち牌殆ど無さそうだし、流れるかな)


    (無理に行く牌姿じゃありません……)

    (回しつつ出来れば聴牌だけでも)


     各々の思惑が交差し。

     海底牌が切られ、流局となった。


     聴牌:竹井久 須賀京太郎
     不聴:原村和 染谷まこ

     東二局0本場:結果

     東家:竹井久    30900→32400
     南家:原村和    27900→26400
     西家:須賀京太郎 33300→34800
     北家:染谷まこ   27900→26400

    559 = 1 :


     原村和に引き入れられた、聴牌となる九萬。

     それを受け、そのまま滞る事無く――


    「立直」

    (この状況で一向聴戻しはナンセンス……)


     ――為される立直宣言。

     東一局より変わらず、僅かな揺らぎも無い、流れるような一連の動作。


     打赤⑤筒。

     ドラ2を約束する牌を切る事に、一切の躊躇も無く。

     しかし、確かに、彼女の意思が乗った打牌だった。


     次巡。

     手牌:須賀京太郎
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │二│三│四│五│七│⑤│⑤│⑦│⑧│⑨│.6 │.6 │.6 │ │⑤│
     │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│ │筒│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                               赤

     ドラである⑤筒を自摸り――ドラ4確定。

     立直を掛ける事により、自摸にて跳満確定である。


    京太郎(――!)

    京太郎「立直!」


     打七萬。


    まこ(……ベタオリじゃな)

    (後は若い二人に任せましょうか……なんてね。オリ)

    (……追いつかれましたか)


     奇遇にも東一局1本場と同じく、追う者、追われる者が一致した、彼の選択。

     結果、この立直が明暗を分けた。


     次巡、須賀京太郎、④筒自摸。


    京太郎(――しくじっ――た!)

    560 :

    ③-⑥④の多面か、それかリーチに切ったハイだから危険だと考えたか
    結果論だし仕方ない

    561 = 560 :

    見返したら萬子は高いって書いてあった。
    じゃあピンズの多面の方がずっといいか

    562 = 1 :


    京太郎(これは……自分の方針で愚形を嫌う、手変わりを見る、と決めたなら――)

    京太郎(――押すにしてもダマで待つべきだった)

    京太郎(目先の先行立直に焦ったのか)


    京太郎(萬子が高いこの場だと、二五萬の頭待ちは良い待ちとは言えない……)

    京太郎(握り潰されている可能性が高い)

    京太郎(和了れなけりゃ、手中の跳満自摸なんて意味が無い)


    京太郎(何より、和の赤⑤筒切り立直と手中の⑤筒暗刻……)

    京太郎(筒子中央の繋がりを断ち切ってる要素を考慮してなかった)

    京太郎(必然的に、⑤筒周辺は和にほぼ通り、河から山に眠っている可能性も高い)

    京太郎(つまり、自分が思い描ける最良は――)

    京太郎(筒子待ち多面張、次点で索子待ち、立直と行くかどうかはそこからだ)

    京太郎(④筒引いてきて、初めて気付くなんて……馬鹿か俺は)


    京太郎(そういや……部長が以前、場況判断について質問した時に言ってたっけ)

    京太郎(自分で想定できる状況を全て思索して、下した判断なら……)

    京太郎(それは結果が伴わなくても、正しい、と)


    京太郎(だけど……何かを見落として……)

    京太郎(仮に、見落としていた何かに気付いていた場合、下さなかっただろう判断を選択していたら……)

    京太郎(それは結果が伴っても、正しくはない、と)


    京太郎(『だから須賀君、正しく判断して――そして、その結果、間違いなさい』とか)

    京太郎(『現実を深く見れる方が分厚いの』とか)

    京太郎(『見えている側は選べるのよ』とか)

    京太郎(『あと打ち方とかフォームの問題なの、憶えておいてね』なんて嘯いてたけど――)



    京太郎(――嗚呼、部長の言う通りだ)

    563 = 1 :


    京太郎(解ってて切るなら良い、解ってて押すなら良い)

    京太郎(解ってて立直して――和了牌の後先に……)

    京太郎(神のみぞ知る賽の出目、その結果を運に委ねるのは良い)


    京太郎(だけど……これは)

    京太郎(結果的に牌理がどうとか、そんな問題じゃなく……)


     ――尚、打牌自体はミスではない。

     実戦でも解った上で、打七萬を曲げる事は多々ある。

     萬子が高い場なら尚更であるし、速度重視とはそういうものだ。

     立直とは最強の役の一つである。


     が、しかし、彼が問題にしている点はそんな事ではない。

     麻雀を嗜む者であれば、何度も経験する壁。

     『見えているか、それとも見えていないか』

     つまり、そういう事であった――


     そして次巡、原村和、自摸切り③筒。

     偶然にも、手変わりで③④⑥筒待ち移行ならば、討ち取っていた牌。


    京太郎(――)


     須賀京太郎、一萬自摸。


     河に放たれたその牌は原村和に刺さり――


     王牌が捲られ、裏ドラは九萬。


     ――3900は4200、と点数が告げられた。


     和了形:原村和 裏ドラ:九萬
                                                         ┌─┐
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤一│
     │二│三│七│八│九│.2 │.2 │.3 │.4 │.5 │.5 │.6 │.7 │萬│
     │萬│萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│索│索├─┘
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


     東三局親流れ1本場:結果

     東家:竹井久    32400
     南家:原村和    26400→31600
     西家:須賀京太郎 34800→29600
     北家:染谷まこ   26400

    564 = 1 :

    訂正
    ×和了形:原村和 裏ドラ:九萬
    ◯和了形:原村和 表ドラ:⑤筒 裏ドラ:九萬

    565 = 1 :


     東四局0本場。


    京太郎(……さっきのを悔やみ続けても仕方ない)

    京太郎(次に活かすべきだ。手痛い教訓になった)

    京太郎(……やっぱり、実際に強い人と何度も打たないと駄目だよなあ)


     痛くなければ覚えませぬ……というわけでもないが、真実である。

     元来、麻雀は点数計算等や牌理はともかくとして、それ以外で打って覚える側面を有する。


     対人の機微、細かい場況の良し悪し、冷静さと集中を持続させる事の大切さ、その術……

     それらは実戦でこそ最も学習でき、磨かれるのだろう。

     プロや強者も鬼打ち――長い時間、あるいは高頻度で麻雀を打ち続けること――は欠かさない。

     間隔が開けば、すぐ鈍っていくのである。


     実際、個人的にも多分一番強かったと思う時期は、勉学より麻雀に比重を置いていた、雀キチだった時分だ。

     大学で麻雀にハマるとこうなる、という悪い例ではあるが、そういった覚えがある人もいるのではないだろうか。


     閑話休題。


    京太郎(ま……何はともあれ、切り替えろ)

    まこ(……東一0本場以後から、空気化しとる気がするんじゃけどのう)

    (和の手出し中張牌整理が早い、これは――)


    「――立直」


    京太郎(早い――けど、こっちも一向聴)

    京太郎(未だ十分追いつける牌姿)

    まこ(またベタオリ……)

    (和に流れが行っちゃったかしら……言葉にしたら、和はSOAとか言うけど)

    (……)

    京太郎(一発は無しか……良しっ、引いた――)

    京太郎(――打一索で高め一通平和聴牌、子同士なら……ここは、押す!)


    京太郎「――通らば立直」


     十分な考慮をもって行った選択。

     捨て鉢になったわけではない。

     押すべき所は危険だろうとも押す。

     其れは神ならぬ身である、麻雀打ちの真理の一つ。

    566 = 1 :






        今度は通りません――



    568 = 1 :

    訂正
    ×しかし、その全てが結果が伴う事は有り得ない。
    ◯しかし、その全てが結果を伴う事は有り得ない。

    569 :

    無駄に長いな戦牌描写

    570 :

    なあに、初っぱなから三連続で振り込むのが日常茶飯事の俺から見ればまだまだ

    571 :

    闘牌描写が長いのなんてどこだってそうだって、
    というか麻雀って長いからさどこぞの奴は10年やっても終わらないで更に地獄で反逆しているんだぜ。
    ここはまだマシな部類だよ。

    572 :

    曲げられない状況でデカイの振り込むより明らかな判断ミスに気付くほうが凹むな

    573 :

    オカルトがない分読んでて面白いから本筋から離れててもマシに思える
    オカルト全開の闘牌はファンタジー過ぎてなんか見ててもああそうですかとしかと思えない

    574 = 1 :


     続く南一局0本場、再び先行したのは、原村和。

     生来の引きの強さ――本人はそんな要素は考慮にも入れないだろうが――と、

     怜悧な打牌選択による加速。

     判断に迷わず。
     圧倒的に速く。
     美しく靭やか。

     そんな打ち筋を遺憾なく発揮する。

     彼女の牌譜を、一定以上の技量がある者が見れば、惚れ惚れとするだろう。

     仮想現実の世界で猛威を奮い、畏怖、崇拝される彼女の本領。

     勢いが乗った、その速度はまるで――


    「立直」


    京太郎(また、早い――)

    京太郎(この局は追い付けない……オリ)


    まこ(ハァ……いける牌姿にならん――)

    まこ(――回す!)


    (……)

    (……ちょっと本格的にまずそうね)


    「――自摸」


     ――風を斬り、天に舞う、飛燕。


     和了形:原村和 表ドラ:④筒 裏ドラ:9s

     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │四│五│六│七│八│④│⑤│⑥│  │  │  │  │  │ │六│
     │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│白│白│南│南│南│ │萬│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
     

     立直、自摸、場風。

     40符3飜。


    「1300、2600」


    京太郎(……残すは三局、三万点差以上)

    京太郎(親は残ってるものの、さて、どうするか――最優先は和の親を蹴る)


    まこ(……裏ドラが乗らんかったのが唯一の救いじゃ)

    まこ(次の局は和の親を蹴りつつ、点差を埋めるのが理想)


    (……何にせよ次が分水嶺)

    (親で連荘されたら、トップへは届かなくなると思って良いわ)


     南一局0本場:結果

     東家:竹井久    32400→29800
     南家:原村和    43600→48800
     西家:須賀京太郎 17600→16300
     北家:染谷まこ   26400→25100

    575 = 1 :

    麻雀漫画風に描写するとパない文字数になることを確信したので端折り方を加速
    アカギとか長くなるわけだ……多分次には阿知賀フラグ立てて終わらせれるはず……

    すいません、セーブで

    576 :

    おっつおっつ
    長いんはしゃーない。見てて面白いからおっけーや

    577 :

    乙乙
    闘牌は仕方ないよ

    578 :


    アカギが長いのは闘牌描写だけが原因じゃないような……

    579 :

    おっつおっつ

    580 :

    界=人鬼は俺も少し思った

    581 = 1 :

    >>574差し替え)

     続く南一局0本場、再び機先を制したのは原村和だった。

     生来の引きの強さ――本人は運の強弱など一顧だにしないだろうが――と、怜悧な判断による加速。

     その思惟に迷い無く。
     圧倒的なまでに疾く。
     流麗で靭やかな打牌。

     彼女の牌譜を一定以上の技量を持つ者が観れば、見惚れることになるだろう。

     仮想現実の電子世界で猛威を奮い、畏怖、そして崇拝され、天の使いに例えられる彼女の本領。


    「立直――」


     人の目には視えざる流れすら統べると、他者に錯覚させる其の疾さは――


    京太郎(早過ぎる、立ち向かえる牌姿になってない)

    京太郎(回して進むけど……置き去りにされた)


    まこ(ハァ……手牌が纏まらん――)

    まこ(――が、諦めん、回す!)


    (手が入らない……本格的にマズそうね)

    (迂回するけど、勢いに乗った和を止められるかしら)


     ――恰も、風を斬り裂き、白天を翔抜ける、最速の称号を冠した黒き燕。


    「――自摸」


     和了形:原村和 表ドラ:④筒 裏ドラ:九萬
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │四│五│六│七│八│④│⑤│⑥│  │  │  │  │  │ │六│
     │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│白│白│白│北│北│ │萬│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
     

     立直、自摸、白。

     40符3飜。


    「1300、2600」


    京太郎(……残すは三局、和と三万点差以上)

    京太郎(親番は残ってるものの、さて、どうするか――最優先は和の親を蹴る)


    まこ(……裏ドラの方を引かれんかったのが唯一の救いじゃ)

    まこ(次の局は和の親を蹴りつつ、点差を埋めるのが理想)


    (和の三連続和了……何にせよ、次が分水嶺)

    (親で連荘されたら、トップへは届かなくなると思って良いわ……まこと須賀君も解ってるはず)


     南一局0本場:結果

     東家:竹井久    32400→29800
     南家:原村和    43600→48800
     西家:須賀京太郎 17600→16300
     北家:染谷まこ   26400→25100

    582 = 1 :

    >>574>>581に全部差し替え
    致命的ミスに気付いたので訂正ついでにちょっと改稿
    帰って来れたなら夜から

    584 = 1 :


    (……須賀君は手中から早々と五萬、四萬、赤⑤筒落とし)

    (考えられる手は――染め、チャンタ、国士等)

    (だけど役満をは考慮するのは現状無意味、だから除外)


    (配牌オリを決め込んでない限り――)


    (……須賀君、貴方は諦めるなんて柄じゃないわよね?)


    (――比較的手作りしやすく高い手の可能性、つまり染め手が本命)

    (なら、此処は)


     竹井久、打南。


    京太郎「ポン!」


    京太郎(ここを鳴けたのは有難い)

    京太郎(それに、この河で役牌を叩けば和は……)


     場風の南が場に晒される。

     須賀京太郎、役牌一鳴き。


    (ん、良い子ね)


     原村和に真っ直ぐ進まれただろう場合、速度で間に合わないのなら――


    (和の自摸も飛ぶし……出来れば、もう一度)


     竹井久、打中。

     須賀京太郎の声は上がらず。


     再度巡る、竹井久の手番。

     打一索。


    京太郎「ポンッ!」


     河に放たれた鳳の牌が、再び副露される。


     ――彼女が迂回するように仕掛ければ良い。

    585 = 1 :


     須賀京太郎が竹井久の捨て牌にて、副露出来たのは偶然ではあるが。

     『原村和の手を遅らせる』

     その判断の元行われた、彼と彼女の打牌だった。


    (須賀君が露骨な染め手気配)

    (もう索子は打てませんね)


     場に染め手の者がいる場合、自身が切る牌に最も注意を払う者は――

     ――必然的に、副露される可能性が高い上家である。

     二回副露を重ねられれば尚更だ。


    (細工は流々仕掛けは上々――)

    (後は……)
     

     しかし、鳴きで自摸を飛ばされ。

     索子を切りにくい場にされても、尚。


     最初に聴牌に辿り着いたのは。

     またもや原村和だった。


     手牌:原村和
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │一│二│三│四│.3 │.3 │.3 │.5 │.6 │②│③│④│  │ │.7 │
     │萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│南│ │索│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                   赤

     七索自摸。


    (――須賀君は索子染め一直線、最悪を想定して聴牌と見て良し)

    (染谷先輩は索子を絞り、聴牌気配はまだ無い)

    (自分の手牌は受けが広い一手代わりタンヤオ、そして三色も見えます)

    (点数状況と場況から立直は無意味、受け重視)


     安全牌として抱えていた南を切り出し、ダマを選択。

     二位と約2万点差あるトップとしては当然だろう。

     そして、合理的な判断だ。

    586 = 1 :


     安全圏とはまだ言えないが――

     ――親の連荘や高打点の紛れが起きない限り、原村和優勢な状況であった。


     染め手の須賀京太郎がいる為、慎重な動きで巡目が重なっていく。


    (……)

    (須賀君と染谷先輩の状況は然程変わらず)


    (何とか間に合った……ってところかしら)

    (そして、ここで――通れっ)


    京太郎(後一つで聴牌――引いた)

    京太郎(……部長に8sを聴牌前に処理されたけど5s-8s)

    京太郎(直撃は期待しない、自摸にかける)


     そして。


     手牌:原村和
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │一│二│三│四│.3 │.3 │.3 │.5 │.6 │.7 │②│③│④│ │.4 │
     │萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│ │索│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                   赤

     原村和、四索自摸。

     打一萬でタンヤオ、ドラ一、高め三色、五面張への振り替えだ。


    (部長は前巡手出し8sを押していますね。聴牌でしょうか)

    (何にせよ、一萬は須賀君の現物かつ、染谷先輩の三巡目手出し二萬の外側)

    (そして部長は須賀君に南、一索と鳴かれた後、四二萬と手出しで嵌張を落としている)

    (河から見て、一旦索子を絞ったと思って良し)

    (また公九牌捨ての早さと手出しの動きから七対子、チャンタも薄い)

    (つまり、この一萬が当たるのはレアケース)


     刹那で纏められた牌理に適った思考の元。

     牌を曲げる事なく、放たれる一萬。

     ダマにて2s5s8s-4s7s待ちを選択。

     現実でもデジタル的思考の元、この一萬を手中に残す意味は無い。

    587 = 1 :


     しかし。

     原村和が捨てた、その牌。

     その一萬は――


    「出刃冴え――」


    (――っ!)


    「――なんてね、栄和」


     和了形:竹井久 表ドラ:発
                                                         ┌─┐
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤一│
     │一│.4 │.5 │.5 │.6 │.6 │.7 │⑥│⑦│⑧│  │  │  │萬│
     │萬│索│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│発│発│発├─┘
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


     ――己の危険すら顧みぬ、牌理の外側、悪の一文字を冠する、鋭利な不合理の刃に突き刺さった。


     一萬単騎待ち。

     発、ドラ三。

     40符4飜、満貫。


    「8000」


     ――竹井久、彼女が悪待ちを使う理由。

     それは、二つ、有る。


     一つは云うまでも無く、彼女の特性、何となく上手く事が運ぶ為。

     験担ぎにも似た、常人の枠からはみ出た其れ。

     
     また、もう一つの理由――其れは『対人戦術』。


     理に沿って進むと云う事は、時として、その理が己自身に絡みつく網となる事も有り得る。

     牌理に沿って進む打ち手を、その対局者を、良く識る者にとっては理自体が罠を張る絶好の機会。


     『理を頼り、読みに長ける者を討つには――愚形で刺し殺せ』


     河に迷彩を施した場合、単騎及びシャボはその性質上、牌理で読むことは不可能に近い。

     勿論、罠を張る者は理に沿わず進む分、打点や速度等で決して小さくは無いリスクを背負う事になる。


     しかし、牌理の外から狙い打たれた者は、常の打ち方を崩す事すら時として有り。

     平時ならば切れる牌が切れなくなる事すら有り得るだろう。

     其れはブラフや心理戦と呼ばれる、幻想の闘牌。


     視る者が視れば勘付くだろう、もう一つの悪待ちの意味。

     彼女にとって、悪待ちを使うにあたり、重きを置く、もう一つの理由であった。

    588 = 1 :


     原村和が改めて、河と竹井久の和了形を視る。

     竹井久が仕掛けた罠を悟る。


    「ハァ……部長、その待ちは非合理過ぎますし、リスクが高過ぎると思います」

    「でも直撃を取るには良い待ちでしょ?」

    「……それは否定しませんが」

    「それに、今の和ならここで討ち取らないと多分――」


     竹井久が次巡の己と原村和が自摸るはずである牌を捲る。

     露わになる、二索二枚。


    「――ほら」

    「……それは結果論です」

    「ん、まあ……終った事なんだし良いじゃない」

    「相変わらず納得は出来ませんが……わかりました」


     須賀京太郎も河と竹井久の手牌から、この局の彼女の意図を察知した。

     続いて、顔を上げ真っ直ぐに彼女を見て、徐に口を開く。


    京太郎「……部長、前から不思議には思ってたんですけど、一つ聞いても良いですか?」

    「ん、何? 須賀君」


    京太郎「それは、その悪待ちは……」

    京太郎「いや、その打ち方は――」

    京太郎「――自分を信じてるんですか? それとも捨ててるんですか?」


     須賀京太郎から投げ掛けられた問い。

     それに、ふむ、と顎に手を当て暫し思考する竹井久。


    「須賀君、同じ事なの」

    「自分の読みに、本心に沿って、余計な執着、恐れや迷いを整理して……」

    「すべき事を決断すれば――何時の間にか自分信じ、同時に捨てているの」

    「分ける事は出来ないわ」


     そして――

    589 = 1 :

                          _......._
                       ,  '":::::::::::::::::::::::::`  、
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                    r/:::::::::::::/lノ∧   ∨::::::::::|  \::::|:リ
                  / |:::::::::/  .ト、 ,__/:::::/|/   ∨\
                    /  \/    |-──|.:::/        /∠\
                /   |\\. .|.  /∨       / /  \|
                 /     ハ. \\|. /      / /      |
               /   \{ \ \|/──── "_/\       |

    590 = 1 :


     ――これも憶えておいてね。

     忘れちゃ駄目よ、と。


     以前の時のように。

     教師が教え子に、優しく、言い含めるように。

     後輩の胸中に、忘れてはならない事を、優しく、刻み込むように。


     彼に、柔らかく、告げられた。


     その言葉と。

     片目を瞑り向けられた。

     彼女の、竹井久の、瀟洒な香水木にも似た、その笑みに――

     一瞬、須賀京太郎は、頷く事も、応える事も、忘れ。

     ――僅かに、鼓動が、跳ねた。



     南二局0本場:結果

     東家:竹井久    29800→37800
     南家:原村和    48800→40800
     西家:須賀京太郎 16300
     北家:染谷まこ   25100

    591 = 1 :

    関係無いですけど、再び絶望した

    そして自分の部長像が半端じゃなく影響を受けてる事に今更気付く
    凡そ一年以上前にリアルタイム遭遇した純愛3威力7の衝撃によって咲SSを読みだしたきっかけだから仕方無いよね

    寝ますー

    593 :

    なんだその衝撃は

    594 :


    これは京久くるか
    咲ちゃんの追い上げに期待

    595 :

    つまり最終的に京やえになるのか......

    597 = 1 :


     前局、トップ者への満貫直撃はあったものの――

     須賀京太郎と原村和との差は未だ二万点以上。


     彼が捲りを視野に入れるならば、オーラス迄に満貫自摸以内の点差が理想だ。

     跳満自摸捲り以上と満貫自摸で捲り以下では難易度の差が雲泥である。

     つまり必要条件は親維持。

     打点が伴えば更に良い。


    京太郎(……)

    京太郎(……)

    京太郎(すべき事を決断、か――)


     南三局0本場、表ドラ北。

     一巡目。

     手牌:須賀京太郎
                                                               
     ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
     │二│四│①│⑥│⑨│⑨│.6 │.8 │.9 │.9 │  │  │  │ │一│
     │萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│東│南│西│ │萬│
     └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


     艶がない配牌。

     通常ならば受けを考えて、慎重にオリすら考えても可笑しくない牌姿。


    京太郎(……)

    京太郎(……これは厳しいな)

    京太郎(……ま、そういう事もあるさ)

    京太郎(でもな――)


     しかし――須賀京太郎に落胆は、諦観は見えなかった。


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