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    元スレ忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

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    401 :

    ――アリスが来る前・裏庭


    「……」

    「ここ、ですよね」

    「――」カチャッ


    (文面は「中庭に来てくだサイ。シノ一人だけで」……)カチカチ

    「……」パタン


    「大丈夫ですよ、私一人だけです」

    カレン「!?」ビクッ

    「もう、カレンったら。私がカレンのことに気づかないと思いましたか?」クスッ

    カレン「……シノ」モジモジ

    「陰からチラチラと見ていても、わかっちゃいますよ?」

    カレン「――ごめんナサイ」

    「謝らないで下さい」

    「……大丈夫、ですか?」

    カレン「……」

    カレン「正直、参っちゃってマス」タメイキ

    「ですよねぇ」


    カレン「――何からお話ししまショウカ?」

    「カレンが話したいこと、全部言ってください」ジッ

    カレン「……」

    「私は、じっくりと聴きます」

    「途中で言葉を挟んでしまうかもしれませんが……それで、どうでしょう?」

    カレン「――ハイ」コクリ

    カレン「ありがとうございマス、シノ」


    カレン「これはシノだけではないのデスガ」

    カレン「まず、内緒にしていてごめんなさいデシタ」ペコリ

    「……」

    カレン「私たちのクラスで、その……ああいった劇をすると決まってカラ」

    カレン「最初にモメたのは、どの二人が主役をするかデシタ」

    カレン「――それで結局」

    「……投票」

    カレン「Yes」コクリ

    カレン「つまり、『誰が主役とヒロインになってほしいか』といった投票会が開かレテ」

    カレン「結局、私と『彼』がそうなりマシタ」


    カレン「初めは、断ろうと思ってマシタ」

    カレン「シノたちと一緒にいる時間の方がずっと大事で……とても楽しかったからデス」

    カレン「……それに、相手が相手というのもありマシタ」キュッ

    402 = 56 :

    「――カレン」

    カレン「But」

    カレン「クラスの人たちは『それでもいい。九条さんが主役なら、どんな演技をしても絵になるから』ト」

    カレン「そんな風に言われたら、せっかく仲良くしてくれる皆さんに申し訳ありマセン」

    「……カレンは、優しいですから」ニコッ

    カレン「……」


    カレン「それから、あまり練習もしないまま本番を迎えマシタ」

    カレン「……それからのことは、シノたちが見ての通りデス」

    「……」

    カレン「私が一番辛かったノハ」

    カレン「――クラスの人が、誰も私を責めなかったことデス」

    カレン「特に、相手の方にはとんでもない迷惑をかけてしまいマシタ」

    カレン「それ、ナノニ……」ウルッ

    「!」ハッ


    カレン「相手の方は、何も言いませんデシタ」グスッ

    カレン「た、ただ、『こっちこそごめん。台本に、やりすぎだって注意できなかった』ッテ……」

    「……」

    カレン「わ、私、最初に台本をもらって、相手が『彼』だと分かってイテ」

    カレン「それでも、そう演技出来るって思ってマシタ。今日の朝までは、絶対に出来るつもりデシタッ」

    「――カレン」


    カレン「……But」

    カレン「今日の午前中、私ハ――」






    ――アリスが教室を出てから・教室前の廊下



    委員長「猪熊さん、小路さん。男子が片付け終わったみたいだから、ここ掃いてもらえる?」

    陽子「ん、ああ。わかった」

    「りょ、了解」


    陽子「……」ホウキ

    「……」チリトリ

    陽子「なぁ、綾?」パッパッ

    「なぁに、陽子?」サッサッ

    陽子「――カレン、心配だな」

    「ええ、そうね……」

    陽子「……綾?」キョトン

    「ごめんなさい。少し、考えることがあって」

    陽子「そっか……」

    403 = 56 :

    陽子(……あぁ、もう)

    陽子(『センサー』が当たったことは、まぁ仕方がないと割り切った)

    陽子(出来事って起こるときは起こるものだと思うし……だけど)


    ――お前、あの子の友達なんだろ?――

    ――話、聞いてあげろよ――



    陽子(正直、あの二人に言われなくたって分かってる)

    陽子(そんなの、当たり前だ。友達のために何かをする、なんて……)

    陽子(なのに――なんだか、私は調子が振るわない)グルグル

    陽子(どうしてなんだろう……)



    陽子「はぁ……」タメイキ

    「――そっか、こういうことなら」

    陽子「あ、綾?」

    「陽子。どうして、カレンは泣いたと思う?」ジッ

    陽子「な、なんだ、いきなり?」

    「考えてみて」

    陽子「……そ、そりゃあ」

    陽子「相手が例の男子だし、あの場面がどういう台本だったのかは分からないけど……」

    陽子「恋愛モノは、やっぱりキツかったってことじゃないのか?」

    「ええ、そうね。私もさっきまで、似たようなことを考えていたわ」

    「――でも、本当にそれだけなのかしら?」

    陽子「……え?」ピクッ


    「私たちと行動を共にすることが多かったにしても」

    「演劇をするんだったら、数回くらいは『通し稽古』を行うでしょう?」

    「カレンや他の人たちの演技を見ても、さすがにあれが初めての『通し』だなんて信じられない」

    陽子「……たしかに」

    「それならそういった機会に、『こういう演技は出来ない』ということを台本担当の人に伝えるはず」

    「別に伝えても良かったはず。普段のカレンなら、気軽な感じでそういった主張をすると思うし」

    陽子「――そ、そうだな」


    「ということは、カレンは台本の流れを知っていた上で、今日……」

    陽子「泣いた、ね」

    「そうね、辻褄が合わないわ」

    「それなら今日の演劇前に、カレンに『何か』が起きたと仮定したらどう?」

    陽子「……何か」

    陽子「ダメだ、思い付かないよ」

    「そうね、私もさっきまで同じだったわ」

    「――『シノ』のことに、考えが及ぶまでは」

    陽子「!」ハッ

    404 = 56 :

    「陽子には、今更言うまでもないことよね。アリスとカレンがシノのことを――『好き』ってこと」

    陽子「う、うん……」

    「それなら今日のあんな場面を見せられて、カレンが平然としていられるわけがないと思わない?」

    陽子「ってことは」

    「そう……カレンが、あの時の光景を見ていたとしたら」

    「壇上でのカレンの行動についても、辻褄が合うの」

    陽子「だ、だったら。劇の直前にでも、台本係に『やっぱりやめて』って……」アセアセ

    「そうね。でも何となくだけど――カレンは、人の期待を裏切れない子だと思うの」

    陽子「――」ハッ

    「……推理でも何でもない、ただの想像よ」

    陽子「いや……」


    陽子「びっくりしたよ、綾。よくそこまで考えられるな」

    「……あまり、気は進まないけどね」

    陽子「いや、凄いよ。だって、私には全然分からなかったし」

    「あのね」ジトッ


    「いい、陽子? あなたがしっかりしていてくれれば、私がこんな『想像』を話す必要なんてなかったの」

    陽子「……綾?」

    「私が知ってるあなたなら」

    「今の私の話なんて全部とばして、『とにかくカレンの話を聞いてあげよう』なんて私たちを巻き込んで飛んでいったはずよ」

    「――あの二人に言われなくても」

    陽子「――!」ハッ


    「シノの一件があって、調子が狂っちゃった?」

    陽子「……そう、かも」

    「それじゃ、もう悩むの禁止」

    「いい? あなたのためじゃなくて、私たち皆のためなんだからね?」ビシッ

    陽子「……うん」


    陽子「ありがと、綾。少し、目が覚めた」

    陽子「綾のためにも、調子戻すよ」パッパッ

    「……まったく」サッサッ

    「そういうことを臆面もなく言うから、陽子は困るのよ……まったく」カァァ

    陽子「ん、ホントにありがと」ニコッ

    陽子(……そうだ)

    陽子(二学期に入ってから、シノのことで動揺することが増えて)

    陽子(今日、色んなことが立て続けに起きて……私も、かなり参ったのかも)

    陽子(――でも)

    陽子「私が、しっかりしないとだな……」グッ

    405 = 56 :

    「――ところで」

    「私は、アリスのことも心配なのよ」

    陽子「アリスが? そりゃまた、どうして?」キョトン

    「……いい、陽子?」ジッ

    「今日、シノに起きたことと、前にカレンに起きたこと」

    「――わかるでしょ?」

    陽子「……あ」



    ――再び裏庭



    「――やっぱり、あれはカレンだったんですね」

    カレン「ご、ごめんナサイ。中に入れなくて、ソソクサト」

    「いえ……」

    カレン「シ、シノが、相手の方にどうResponseするノカ」

    カレン「それが気になったら、げ、劇に集中出来なくナッテ――!」

    カレン「そ、ソレデ……」ポロポロ

    「いいです、カレン。ほら、顔が水だらけですよ?」

    「今、拭いてあげます」

    カレン「シノ……」グスッ

    「大丈夫ですよ。このハンカチ、今日は使ってないので……」フキフキ

    カレン「――シノは、優しすぎマス」

    「カレンには負けます」ニコッ

    カレン「わ、私はトモカク……」

    カレン「――シノだって、すごく疲れてマス」

    「……そう、見えますか?」ピタッ

    カレン「ハイ」

    「そう、ですか……」フキフキ



    「実は、私もかなり参っちゃってるみたいで……」

    カレン「……ヤッパリ」

    「カレンも見ていたのなら、分かりますよね」

    「相手の方は――どこまでも『男の子』でした」

    カレン「――!」ハッ

    「私、どうすればいいのでしょうか?」

    「困ってしまいました……ああ、どうしましょう」タメイキ

    カレン「……シノ!」

    ダキツキ


    「カレン……」

    カレン「ムリ、しないでくだサイ」

    カレン「シノは、いつもムリしてマス」

    406 = 56 :

    「そんな、ことは……」

    カレン「ダッテ」

    カレン「……私やアリスは、いつもシノに色んなカオを見せマス」

    カレン「悲しい時、嬉しい時――今のように、泣いた時ダッテ」

    「……」

    カレン「ヨウコやアヤだって、シノには色んなカオをしマス」

    カレン「……シノは、私たちに悲しいカオをしマセン。いつも、笑ってマス」

    「――それ、は」

    「私は、皆さんと一緒にいる時は、ただ、楽しいから」アセアセ

    カレン「そうやって『ムリ』を重ねるカラ」

    カレン「……まだ泣いてる私が、シノにハグしてるんデス」

    「……!」ハッ


    「――カレンには、隠し事出来ませんね」タメイキ

    カレン「その『隠し事』は、私だけにデスカ? それもDoubtデスネ?」

    「だうと?」キョトン

    カレン「『嘘』って意味デス」

    「……」

    カレン「シノ」

    カレン「……どうすれば、シノはムリをしないでくれマスカ?」ジッ

    407 = 56 :

     ――そう言って、カレンは私を見つめてきました。
     上目遣いで。
     私がさっき、陽子ちゃんにした行為です。
     ただ、今のカレンには、あの時の私のような「計算」が全く感じられません。


     私も、ゆっくりと彼女の瞳を見つめます。
     見れば見るほど綺麗な光彩を帯びていて、吸い込まれそうになります。
     そして、カレンの顔の下部にある唇もまた抜けるような赤さで、魅力的でした。


    「――シノが、ムリしないでくれる方法」


     そう呟いて、カレンは私にその綺麗な顔を近づけてきます。
     ただでさえ近かったその距離は彼女が詰めることで、文字通り目と鼻の先にあります。


    「シノは、どう思いマスカ?」


     カレンは、気づいているのでしょうか。
     恐らく、意識してはいないでしょう。
     まだ涙に濡れた瞳。
     私の首にかかる、滑らかな腕。
     抜けるように赤い唇。
     絹のように淑やかな、その金髪。


     そういった全てが、私の――


    「……シノ」


     ――理性を、粉々に砕こうとしていることなんて。

    408 = 56 :

    「……あ」

    (その瞬間、私は気づいてしまいました)

    (間違いありません……あの金色は)

    カレン「シノ……?」

    「――カレン」ポンッ

    カレン「アッ……」

    (私の手が、カレンの肩に触れました)

    (そして、ほんの軽く押します)クイッ


    「もう、あまりに勢いよく抱きついてくるから……」

    「綺麗な金髪が乱れてしまってますよ?」ナデナデ

    カレン「……シノ」

    「……」

    「ごめんなさい、カレン」ペコリ

    カレン「!」


    「私、カレンが『好き』です」

    (いけない……)ハッ

    「それは、本当です。信じてくれますか?」

    (笑顔です、笑顔――)ニコッ

    カレン「……ハ、ハイ」コクコク

    「――でも、いや、だからこそ」

    「その……こういったこと、は」

    「出来ません」

    カレン「……?」

    カレン「!」ハッ


    カレン「わ、私、ハグしたダケデ……Uh」

    カレン「き、きs」カァァ

    「ストップです、カレン」フルフル

    「……どうですか? 落ち着きましたか?」

    カレン「……」

    カレン「Yes」

    409 = 56 :

    カレン「シノのお陰で、本当に助かりマシタ」

    「それは良かったです」

    「それでは、一緒に帰りましょうか」

    カレン「――イエ」

    カレン「わ、私! ちょっとクラスの人たちの所へ――」アセアセ

    「……そう、ですか」

    「分かりました」

    カレン「……」ジッ

    カレン「シノ」

    「はい?」


    カレン「――I like you very much」







     ――そう言って、カレンは走っていきました。
     私は、そんな彼女の後ろ姿を見つめながら、さっきの英語に思いを馳せます。


    (あいらいくゆー……?)


     さすがの私でもI Like Youの、それぞれの意味くらいは知ってます。
     私 好き あなた……


    (じゃあ、最後のべりーまっちは)


    「あなたが大好き、だよ。シノ」
    「そういう意味だったのですか。さすがは、アリスです」


     私の悩みに颯爽と答えてくれたのは、大好きな金髪少女でした。
     アリスは、ゆっくりと私に近づいてきます。


    「つまり、カレンはシノが大好きってこと」
    「えへへ、照れますね」
    「ただの『好き』じゃない、っていうことを強調したんだよ」
    「……」


     黙り込んだ私に、アリスはしっかりと視線を合わせてきます。


    「シノ、カレンとハグしてたね」
    「……アリスも一緒に来ればよかったのに」
    「うん、そうしたいと思ったよ。カレンと、その……キ、キス、しそうになるまでは」


     そう言うと、顔を赤らめながら地面に視線を落としてしまいました。


    「私ね、どうすればいいのかわからないの。もちろんカレンのことは心配だし、いつも笑ってるシノが顔を曇らせてることも 心配だよ」
    「……アリス」
    「で、でも……私、もう二人に置いていかれちゃったし。二人とも告白されたのに、私だけ……」
    「――!」


     アリスはブラウスをギュッと掴みながら、身体を震えさせています。
     その目に、さきほどのカレンと同じような光がきらめいたのは見間違いではないでしょう。
     アリスもまた、目を潤ませていました。


    「どうすればいいんだろう、って……そう思ったよ? でも、私は、もう――」

    410 = 56 :

     次の瞬間。
     私の腕には、柔らかな感触が広がりました。
     顔には、可愛らしく風になびく金髪が触れています。


    「シノ……」


     腕の中から、アリスが小さく声を出しました。
     私は、ギュッと抱きしめます。腕の中にいる、ガラス細工のように脆く柔らかい彼女を壊さないように。


    「私はアリスが置いていかれた、なんて思ってません」
    「……」
    「それはですね、アリス」


     そう言いながら、私は少し腕を緩めました。
     そして、腕の中から現れたアリスの瞳と、視線をしっかりと合わせます。


    「アリスの可愛さに、皆さんがまだ気づいていないってだけです。
     そして、私以上にアリスの可愛さを知っている人はいません」
    「……シノ」
    「これだけは、自信があるんですよ?」


     そう言って、にこやかに笑ってみせます。
     大丈夫、もう大丈夫です。
     さきほどカレンに指摘されたようなムリ、なんてことは――


    「それじゃ、シノ。私には……」


     ――ない、はずです。


    「え、えっと……キス、して」


     ない、はずでした。過去形です。ごめんなさい、ムリでした。


    「な、なんて――私、言わないよ?」


     そして、アリスは顔を赤らめながら上目遣いをしてきました。
     どうすればいいんでしょう? 
     正直な話、私の理性はさきほどから揺さぶられていて、壊れる寸前一歩手前にあるような気がします……。


    「だって……そうしたら」


     全部、壊れるような気がしちゃうから。
     アリスは静かに、そう言いました。


    「……」
    「ご、ごめんね、シノ? からかったわけじゃないよ」


     私だって、ホントはね――
     そこまでは聞き取れましたが、それ以降は聞き取れませんでした。
     それが何故なのかは、すぐ近くで、頭上に湯気をあげて黙りこんでしまった金髪少女を見れば一目瞭然でしょう。


    「……と、とにかく!」


     しばらく唸った後で、アリスは頬を染めながら、私を決然と見つめます。厳しい表情です。
     ちなみに、まだ私の腕の中にいるので、その厳しさは可愛らしさに巻き込まれて消えました。
     いけない、真剣にならなくては――


    「シノ! 私も、シノのことが好き――『大好き』なんだからね!」


     真剣になった反動で、私の理性は余計に強いダメージを受けました。

    411 = 56 :


    ――裏庭


    アリス『あれ、メールだ……あっ』

    アリス『ごめんね、シノ。今日は、一緒に眠れないみたい。イサミたちにも伝えておいてほしいかな』

    アリス『え、どこに泊まるかって? それはね――』


    「……」

    「ああ――」ハァ

    (どう、しましょう)

    陽子「――いたっ!」

    「もう、シノ! さっきアリスが教室に戻ってきて」

    陽子「シノが裏庭で倒れてるって聞いて、飛んできたんだよ」

    「あと、カレンも元気そうに『先に帰る』って言ってきて……」

    陽子「何が何だか――って、シノ? 聞こえてるか?」ズイッ

    「……陽子ちゃん、綾ちゃん」


    「私、色々と参っちゃいました」タメイキ

    陽子「へ?」キョトン

    「正直な話、もう今日は疲れて、本当にくたびれてしまいました」クタクタ

    「シ、シノ?」アセアセ

    「――だから」


    「お二人とも、私に肩を貸して頂けませんか?」




    ――その後・廊下


    陽子「もう、大丈夫か?」

    「ええ、ありがとうございます」ヨッコラセ

    「珍しいわね。シノがあんな風に、誰かに頼るなんて」

    陽子「基本、私たちが『大丈夫か?』とか言わないと、頼らないのになぁ」

    「……」

    「その考えを、さっき大きく揺さぶられてしまいまして」

    陽子「――そっか」

    「シノは、頑張り屋さんだから」

    「……憧れてるのよ、私は」カァァ

    「ありがとうございます」

    「――はぁ、疲れました」


    委員長「あ、猪熊さんたち!」

    陽子「あ、委員長」

    委員長「もう。急にいなくなって帰ってこないからどうしたかと」ハァ

    「ご、ごめんなさい」モジモジ

    412 = 56 :

    委員長「まったく……でも」チラッ

    「――あ」ハッ

    「委員長……ごめんなさい」

    「私、ちょっと――理性が大変だったもので」

    陽子(な、何を言ってるんだシノ……)

    (普段のシノのボケとは何か違うわ――『天然』というより『素』というか)


    委員長「……まぁ、無理もないわね」

    委員長「あんな状況になったら、誰だってそうなると思うし」

    「――委員長」

    委員長「……ただ」


    委員長「少し、カータレットさんにも気を配ってあげたほうがいいわ。先に下校したんだけど……さっき戻ってきた時、どこか物悲しそうな表情をしていたから」








     ――木枯らしが吹いていた。
     晩秋の寒さに見を震わせながら、私はゆっくりと「彼女」の家に向かって歩いていた。
     今日、おじさんはいないらしい。
     というわけで、私たちは二人きりでお泊り会ということに――


    (……何年ぶりだろう)


     あっちにいた頃、私たちはシスターのように過ごしていた。
     家族ぐるみの付き合いで、本当に血の繋がったきょうだいのように……。


     私は、彼女の泣いた姿を見たことがある。
     シノたちがビックリしたのは無理もない。今日、初めてそういう姿を見たのだろうから。
     ただ、彼女だって普通の女の子だ。笑っていることが多くても、泣くことだってある。


     シノたちの知らない彼女の姿を、私はよく知っている。
     だからこそ、私は困っている。
     私は、今日のシノじゃないけど、誰よりも彼女のことをわかっている自信がある。
     ……だから。


    (――シノ)


     私は、「好き」だよ。 
     ずっと一緒にいたいと思ってるよ。
     ――でも。



     それは、私だけじゃ叶えられないことなんだよね……?



     笑顔を作ろうとしても、なかなか作れない。
     会うまでには何とか形作れると思ったけど……仕方ない。
     マンションの前に着いて、私は彼女に電話をかける。
    「着いたら電話をして」と、言われていた。



     二言三言の会話の後で、私は携帯電話を切る。
     そして、待つこと数秒――

    413 = 56 :




    「……アリス」


     マンションのエントランスから、聞き馴染みのある声がした。
     ゆっくりと、私は彼女へと視線を向ける。


     トレードマークと言ってもいいユニオンジャックのパーカーは、少しクシャッとしていた。
    「さっき、抱きつかれたせい?」と聞くと、「ハイ」と返ってきた。
     そして「やっぱり見ていたデスネ」と、クスクスと笑いながら言った。
     そんな彼女の姿を見ていると、何故か故郷のことが脳裏をよぎった。
     きっと、今日、色々なことがあったせいだろう。
     そう納得して、どこか愛おしい気持ちになりながら私も自然に微笑むことが出来た。


    「――アリス」


     お互いに笑い合った後で、綻んだ口元はそのままに彼女は続ける。
     

    「『Council of War』といきマショウ」
    「『作戦会議』……それって、やっぱり」


     私が言葉を継ぐと「Yes」と彼女――九条カレンは首肯して、


    「The Subject:『私たちが、これからもずっとシノと一緒にいるためには、どうしたらいいか』デス」

    414 = 56 :

    ここまでになります。
    今回はおぼろげに頭の中に浮かんでいたアイデアを全部書き出しました。
    結果、長さはもとより、展開としてもかなりチグハグなものになってしまったかもしれません……。

    色々と触れたい要素はありますが、何よりここまで放置(?)されてきた金髪少女の「逆襲」を書きたいと思っていました。
    ここの所、ずっと陽子が主役になっていましたし……それはそれで、とても面白かったのですが。
    結局、この三人(アリス、忍、カレン)の関係に答えは出るのでしょうか……。

    それでは、また。
    二期まであと二ヶ月ちょっと……。

    415 :

    良い感じに事態が動き出してて
    この後の展開も楽しみ

    416 :

    2人がドロドロの愛憎劇をするのは誰も望んでないしなぁ…

    417 :




    ――校舎


    委員長「……うん」

    委員長「大体終わったわね」

    委員長「今残ってるみんな、お疲れ様」


    「……あ」

    「お掃除、終わりましたね」

    陽子「うん、おつかれシノ」

    「おつかれさま」

    「ありがとうございます、陽子ちゃん、綾ちゃん」ニコッ


    「学園祭が終わりましたけど」

    「これからどうしますか?」

    陽子「……うーん」

    「アリスもカレンも帰っちゃったし」

    「――」

    「私は、陽子ちゃんと綾ちゃんとご一緒したいです」

    陽子「……シノ」

    「お二人がいなかったら」

    「今日あった、色々なことを乗りきれなかったと思いますし」

    「ありがとうございます」ペコリ

    「シ、シノ……もう、照れるじゃない」

    陽子「まあ、シノがそう言ってくれるんなら」

    陽子「帰り、どこか一緒に行く? そういえばシノと綾と、3人で過ごすのは久しぶりだね」

    「はい、嬉しいですっ」ニッコリ


    陽子「――と、いうわけで」

    陽子「悪いね二人とも。私は、二人と一緒にいるから」

    子A「うわ、マジか」

    子B「『大宮さんたちも打ち上げ、どう?』って誘おうと思ってたのに」

    子A「……まあ、猪熊はともかく、二人は疲れてるみたいだし」

    陽子「なんで私だけ別なんだよ?」ジトッ

    子B「お前が二人をリードしろってことだよ」

    子A「猪熊は鈍感だなぁ」

    陽子「い、言わせておけば……」プルプル

    委員長「はいはい」

    委員長「まったく、あなたたちは……打ち上げは自由参加なんだから、無理に誘おうとしないの」


    「……あ」

    「お二人とも、今日はありがとうございました」ペコリ

    418 = 56 :

    子A「……ま、まぁ」

    子B「お、大宮さん……その」

    「はい?」

    子B「……あまり」

    子A「気にしない方がいいかなって」

    「……?」キョトン

    子B「そ、その」


    委員長「要するに」

    委員長「大宮さんにあまり無理しないでって、言いたいみたいよ」

    「……あ」ハッ

    「気をつけます。今日は、打ち上げ出られなくて申し訳ありません」

    子A「……気にしないでくれ」

    子B「うん」

    「はい、そうさせていただきますね」


    「それでは皆さん、お先に失礼します」

    委員長「うん、それじゃあね、大宮さん」

    「ご、ごめんなさい……せっかくの機会なのに」

    委員長「大丈夫よ、小路さん。今日、本当にお疲れ様」

    陽子「それじゃな、三人とも。また後で」

    委員長「うん、それじゃあね」


    委員長「……あなたたち、言いたいことくらい、はっきり言いなさいよ」アキレ

    子A「う、言い返せねぇ……」

    委員長「――ほら。二人とも、打ち上げの前にちょっと行かなきゃいけない場所があるのよ」

    子B「……え?」

    委員長「久世橋先生が呼んでるって、さっき烏丸先生から聞いたわ」

    子A「……マジ?」

    委員長「そう」

    委員長「――大宮さん本人を行かせない代わりに」

    委員長「あなたちに着いてきてもらうわよ」

    子B「……まあ」

    子A「大宮さんたちの代わりに、だったら仕方ないか」

    委員長「……本当に、よくわからない所で一途ね」タメイキ

    419 = 56 :




    ――それから。
     私たちは近くのファミリーレストランで、ささやかながら打ち合げをした。
     適当に料理を頼んで、思い思いに食べるという感じで。
     なんといってもよく食べたのが陽子で、「これ美味いな……」なんて言っている内に、テーブルから料理が消えていった。
     シノは、「ふふっ、陽子ちゃんは相変わらず食いしん坊さんです」と、陽子をからかいながら、自分の取り皿に料理を取っ ていく。
     ……私は、というと。


    「もう、陽子。私が取ろうと思っていたのに……」


     そんな風に友達をからかいながら、自分の取り皿に料理を載せていったりしていた。

     色々と言いたいこと(さっき、陽子に話した『想像』のこととか)はあったものの、今それを俎上に載せるのは無作法と感 じていた。
     ……せっかく、ささやかながらの『打ち上げ』なのだから。



    「……陽子ちゃん、綾ちゃん」


     そんなことを思っていると、ふとシノがそんなことを言った。
     陽子は口に食べ物をくわえたままで、私はスプーンを取り皿にあてていた。


    「私、アリスとカレンを悲しませてしまったかもしれません」


     どうすれば、いいでしょうか。
     迷うことなくシノは、シノにとっての本題を私たちに訊いてきた。


    「……シノはさ、妙な所で真面目すぎるんだよ」


     最初に口を開いたのは陽子だった。
     いつも通り飄々とした口調のまま、シノに向けて陽子は言う。


    「こう言っちゃ悪いかもしれないけど。授業中のシノみたいに、もっと適当に考えてみたらいいと思うよ?」
    「た、たしかに授業中はお昼寝とかしてますけど……アリスやカレンに対しては」
    「シノ、声が強張ってるわ」


     陽子に対してシノが言い返そうとしている所に、私は言葉を挟む。


    「シノがアリスやカレンに対して、どれだけしっかりと考えているか、私は知ってる」


     でもね、と私は続けて、


    「だからこそ――シノは、緊張しちゃダメだと思うの。シノが緊張してると、きっとあの二人も困っちゃうわよ」


     ここまで言ったところで、私は気付いた。
     こんなに自分の意見を言ったことなんてなかった、ということに。
     見れば、陽子は私の方へ嬉しそうな視線を向けている。
     ……どうしよう。何か言い返したほうがいいのかもしれない。
     と、思いながら私は、


    「……だ、だから。『適当に』やりましょう、シノ?」


     陽子の言を借りながら、私もまた顔を赤らめてテーブルへと視線を落としてしまうことになった……。

    420 = 56 :




    ――カレンの部屋


    カレン「……私は、シノが『好き』デス。アリス」

    アリス「――」


    アリス(カレンの部屋へと上がって、彼女に飲み物を出してもらってから)

    アリス(すぐに、私はカレンからそう言われた)


    アリス「……」

    アリス「私も、シノが『好き』だよ。カレン」

    カレン「私も、よく知ってマス。アリス」

    アリス「……」


    アリス「私は」

    アリス「きっと、シノに対して」

    アリス「……カレンも同じ気持ちなんだと、思うんだ」

    カレン「……」

    カレン「いいデス、カレン。話してくだサイ」


    アリス「――きっと、だけど」

    アリス「カレンもシノのことが好き……いや、大好きで」

    カレン「……」

    アリス「そして」

    アリス「シノと一緒にいたい、って、そう思ってると……私は思うんだ」

    カレン「アリスは、よく分かってマス」

    アリス「――多分」


    アリス「カレンも、カレン一人だけじゃ、シノの『想い』をかなえられないって」

    カレン「……」

    アリス「そう、思ってるんじゃないかなって」

    アリス「……これは、私もそう思ってたんだけどね」

    アリス「だから、きっとカレンもそう思ってるんじゃないかなって」

    アリス「――どう? カレン?」


    カレン「……Oh」コクリ

    カレン「アリスはまるでエスパーみたいデス!」

    カレン「……そうデス。私もシノが大好きデス」

    アリス「……」

    カレン「But」

    カレン「私『だけ』じゃ、シノの気持ちに応えられないと思ってマス」

    アリス「……カレンは、どうしたいと思う?」

    カレン「――」

    421 = 56 :

    カレン「私は、シノが『好き』デス」

    カレン「……多分、今日の劇の相手の方が、私に寄せてくれていたのと同じような気持ちだと思いマス」

    アリス「――!」ハッ

    アリス「……つまり」

    カレン「私はきっと、そういう意味でシノが『好き』なんだと思いマス」

    カレン「……デモ」

    カレン「シノは、そういう風に思われたくないんだとも思いマス」

    アリス「……」


    カレン「アリスは、さっき私と同じような気持ちだと言ってマシタ」

    アリス「……うん」

    カレン「アリスも、シノのことが……」


    カレン「『Love』、なんデスカ?」


    アリス「……」

    アリス「私は」

    アリス「きっと、シノのことが『Love』なんだと思うよ」

    カレン「……」

    アリス「でもね」

    アリス「――シノにキ、キス、とか」カァァ

    アリス「そういうことを考えられないのも、ホントなんだ」

    カレン「……アリス」

    アリス「だ、だから」

    アリス「――わ、私は、カレンと一緒に」

    アリス「シノと……そうだね」

    アリス「陽子や綾とも違った関係だけど」

    アリス「シノと――『そういう関係』でいたいかなって」

    アリス「思うんだ……」


    カレン「……」

    カレン「やっぱり」

    カレン「アリスは私の、Big sisterデス」

    アリス「……カレンと同じ、なのかな」

    カレン「Yes」


    カレン「私も、シノのことが『好き』デス」

    カレン「アリスと同じような気持ちなのもホントデス」

    アリス「……」

    422 = 56 :

    カレン「今日、色々と疲れたでショウ?」

    アリス「う、うん……」

    アリス「シノにもカレンにも――色々あって」

    アリス「私も置いてかれ――い、いや! 私も疲れたなって」アセアセ

    カレン「……アリス」


    カレン「私と、オフロに入りませンカ?」ニコッ



    ――大宮家


    「……」

    「ただいまです」ガチャッ

    「あっ、シノ……」

    「大丈夫? 今日、疲れたでしょ?」ニコッ

    「……はい」

    「私のこともそうなのですが……それ以上に」

    「カレンが――それに」

    「アリスは今日、カレンの家に泊まるそうです」

    「……そっか」


    「それじゃ、お風呂に入ってきなさいな」

    「え?」

    「疲れた時は、お風呂が一番いいと思うわよ」

    「……そう、ですね」

    「ありがとうございます、お姉ちゃん」

    「ん」ニコッ



    「……」

    (あの二人は、どうしているでしょうか)

    (――アリス)



    ――カレンの家


    アリス(シノ、どうしているかな)

    カレン「シノは、どうしているでショウ」

    アリス「……あ」

    カレン「ほら、アリス。もうそろそろ、オフロが湧きマス」

    カレン「……今日は、ゆっくりお休みしまショウ」

    アリス「う、うん……」


    アリス(――シノ)

    423 = 56 :

    祭りの後で、の話。

    このSSは、一応一年時で区切りとしようと思っていましたが、書いている内に二年時も書きたいという思いが……。
    どう思われるでしょうか?

    それでは、また。
    次回は、それぞれの「思い」の見つめなおしの話になると思います。

    424 = 56 :

    >>420 訂正です。

    ☓いいです、カレン→○いいです、アリス

    425 :

    乙でした
    書きたいと思うなら思うままに筆を執られた方がよろしいのではないかと

    426 :

    おつ!

    できれば二年時も書いてくれるとありがたい

    427 :

    続けたい限り続けるのがいいと思います

    428 :

    レス、ありがとうございます。
    久世橋先生をどう絡めるかで悩んでいますが、思いついたら書いていきたいと思います。



    ――九条家・浴室


    アリス「……」チャプン

    アリス「はぁ」

    カレン「ああ、気持ちいいデス――」ウットリ

    カレン「? どうしたデス、アリス?」キョトン

    アリス「……」


    アリス(たしかに、気持ちがいい)

    アリス(カレンのお家のお風呂は、ホントに広くて)

    アリス(浴槽は私とカレンの二人が入っても、まだまだ余裕がある)

    アリス(誰かが、入れそうなくらいに……)


    アリス「……シノも、お風呂に入ってるのかなって」

    カレン「……」

    カレン「アリス、シノとお風呂に入りたいデスカ?」

    アリス「うん。今日、ホントに疲れただろうし、しんぱ――」ハッ

    アリス「って、カレン!? な、何言ってるの!?」アセアセ

    カレン「Hnn、そうデスカ。アリスはシノと……」

    アリス「ち、違うよぉ」カァァ


    カレン「そうデスネ」ジーッ

    カレン「アリスの体格なら、シノと一緒に入っテモ」

    アリス「カレン」ジッ

    アリス「……お、怒るよ?」グスッ

    カレン「冗談デス」

    アリス「むぅ……」プンスカ

    カレン「正直な所」

    カレン「全く、そういうことを考えなかったというワケではないでショウ?」

    アリス「……」


    アリス(シノに会いに、日本行きを決意した時)

    アリス(『日本といえばお風呂! お風呂といえば、みんなで! 日本に行って、シノと一緒に――』)

    アリス「……考えたこと、あるよ」

    アリス「で、でも。その時は、まだ――」モジモジ

    カレン「シノが……『男の子』だって、知らなかったデスネ」

    アリス「……うん」

    429 = 56 :

    カレン「――私も考えたことがありマシタ」

    カレン「シノが『女の子』なら、一緒に入っていただろうなッテ」

    アリス「……カレン」

    カレン「But」

    カレン「一緒にお風呂に入れないからとイッテ」

    カレン「――『シノとアリスと、ずっと一緒にいたい』」

    アリス「……!」ハッ

    カレン「私のお願いが叶わないわけではありマセン」

    カレン「むしろ――私たちがシノとの『違い』を意識してしマウト」

    カレン「一緒に居づらくなってしまうかもしれマセン……」


    アリス「――カレン、変わったね」

    カレン「What?」キョトン

    アリス「前のカレンだったら」

    アリス「こういうお話をしてる間に、顔が真っ赤になってたもん」

    アリス「今じゃ、まるで『お姉さん』っぽくなってるよ」

    カレン「……」

    カレン「I decided the resolution」

    アリス「『覚悟を決めた』……そっか」

    カレン「ハイ」

    カレン「……一緒にいるといっテモ」

    カレン「なかなか、キモチの面とかでカンタンなものではないと思いマス」

    カレン「こうして強がってますケド、私だって不安でいっぱいデス」キュッ

    アリス「……カレン」

    カレン「アリスは、カクゴできてマスカ?」

    アリス「……私、は」


    アリス「そうだね」

    アリス「……『カレンとシノと、ずっと一緒にいたい』」

    アリス「その気持ちだけはホントだよ」

    カレン「よく知ってマス」コクリ

    アリス「――カレンみたいに、覚悟? 決めたわけじゃないけど」

    アリス「ずっと一緒にいられたらなって……」

    アリス「それだけ、かな」

    430 = 56 :

    カレン「……アリスは気負わずにいられてマス」

    アリス「そ、そんなことないよ」モジモジ

    アリス「シノと一緒に寝てると、朝起きた時とかいきなり脱ぎだしたり――」ハッ

    アリス「い、今のなしっ!」ブンブン

    カレン「一緒に、朝、脱ぎだした――」

    カレン「……アリスは、Hデス」カァァ

    アリス「カレンだって、やっぱり顔赤くしてる」カァァ


    カレン「やっぱり、アリスだけじゃシノと一緒にいるのはキケンデス」

    アリス「カレンだけじゃ、きっとシノと一緒に寝起きするだけでおかしくなっちゃうよ」

    カレン「……私が、一緒にいてあげマス」

    アリス「……私が、一緒にいてあげる」

    二人「――」




     ――それから、私たちはひとしきり笑った。
     一緒に笑っていると、お互いに持っていたような不安が消えていくように感じる。


     結局、私たちはいくら強がりを言っても、最後には照れてしまう。
     ……それなら「一緒にいよう」と思うのは当然なんだろう。


    (――シノ)


     私たちは、もう決めてるよ。大丈夫だよ。
     ……そっちは、元気にしてるかな?









    ――その頃、大宮家・洗面所



    「……ふぅ」

    (やっぱり、疲れましたね……)

    (妙に身体が重いですし――あっ)ポトッ


    「いけない、外し忘れてました」

    (いつもなら、部屋で外してくる『詰め物』が落ちました)

    (拾おうと身体を動かして――)


    「……」

    (洗面所の鏡に、私の姿が映し出されました)

    (まっ平らな胸に、我ながら白い肌――)

    (普段なら意識することのない自分の身体に、今日は……)

    431 = 56 :

    「……お風呂、入りましょう」

    (自分で自分に言い聞かせるようにして)

    (私は残りの衣類を脱いで、浴室の中へ)

    (そして軽く身体にお湯を当てた後で、ゆっくりと湯舟に浸かります――)


    「……」チャプン

    (アリスたちも、今頃お風呂に入っているのでしょうか)

    (お二人は、どんなお話をしているのでしょうか……)



    ――どうすれば、シノはムリをしないでくれマスカ?――

    ――キス、して……な、なんて、私、言わないよ?――


    「……」

    (いけない、理性が飛びかけてしまいました)フルフル

    (――本当に、どうすればいいのでしょうか?)

    (陽子ちゃんに言おうとした『隠し事』が)

    (まさか、こんな形で関係してくるとは思いませんでした……)


    「……」

    (この身体――)

    (白い肌、平らな胸……そして)

    (――本当に)


    (私は、二人と――)




    ――大宮家・廊下



    「……あぁ」

    「のぼせて、しまいました」フラフラ

    忍母「シ、シノ!? 大丈夫?」

    「……あ、お母さん」

    「大丈夫、ですよ」

    忍母「もう、そんなにフラフラしながら言われても説得力ないわよ?」

    忍母「ほら、リビングで冷たい麦茶でも飲みましょう」

    「……はい」

    432 = 56 :




    ――リビング


    「……ふぅ」ゴクゴク

    「ありがとうございます、生き返りました」

    忍母「良かったわ」

    「はいっ」ニコッ


    忍母「……ねぇ、忍?」

    「?」

    忍母「勇から聞いたんだけど」

    忍母「――告白されたって、本当?」

    「……」

    「はい、本当です」


    忍母「……忍は、どうしたい?」

    「実は、まだ考えがまとまらなくて……」

    「相手の方の連絡先は、持っているのですが」

    忍母「……私も、勇と同じ気持ちだと思うんだけど」

    忍母「どう、対応してもいいと思うの。それは本当よ」

    「ありがとうございます、お母さん」

    忍母「……ただ」


    忍母「アリスちゃんやカレンちゃんは、どうするのかなって」


    「――」

    忍母「……あ」

    忍母「ちょっと焦っちゃった。のぼせてるのに、こんな話題を振っちゃってごめんなさい」

    「……いえ」

    「私も、そのお二人のことで、色々と悩んでいるので……」

    忍母「――無理、しないでね」

    「はい」


    「それでは、私はお部屋に」ペコリ

    忍母「……忍」

    「?」

    忍母「私たちは、いつだって忍の味方だからね」

    「……」

    「ありがとうございます」ニコッ

    433 = 56 :

     


     ――シノは、『男の子』だ。
     その事実を、私はあの子と最も長い付き合いであろう陽子ちゃんよりも、よく知っていると思う。
     当たり前だ。家族、なんだから。


    「……」


     階段から音が聞こえてきた。
     寝転びながら雑誌を読んでいた私は、ゆっくりと身体を起こす。
     案の定、足音はこっちへ向かってきた。


    「お姉ちゃん、いますか?」


     コンコン、とノックの音がする。


    「いいわ、入って入って」
    「お邪魔します」


     カチャリという音とともに、シノが部屋へと姿を現した。
     ……お風呂あがりのシノには、見る人の心を突く「何か」がある。
     本人はそこまで意識しているわけじゃないんだろうけど、相当な「女の子」らしさだった。


    (……あの子にも同情するわね)


     今日、本気でシノに告白した彼を思い、私は軽く溜息をついてしまった。
     無理もない。この子を自分と同性だなんて、あの子が思うわけがない。


    「シノ、どうかした?」
    「……お姉ちゃんがよかったら、なんですけど」


     モジモジと少しだけ恥ずかしそうな素振りを見せながら、シノは切り出す。


    「アリスがいないので、寂しくなりそうで……今日、ここで寝かせてもらってもいいでしょうか?」

    434 = 56 :

    ここまでになります。
    カレンとアリスは自分の気持ちを整理したようですが、果たしてシノは……?

    行き当たりばったりですが、いつもありがとうございます。

    435 :

    乙です!

    最近更新頻度早くて嬉しいです。
    この先どうなるのか気になって仕方ない!

    436 :




    ――時間が流れて


    カレン「……そろそろ、寝まショウカ」

    アリス「あっ、そうだね」

    カレン「お布団、敷きマスカ?」

    アリス「ありがと、カレン」


    カレン「えっと、布団ハ――」キョロキョロ

    アリス「わ、やっぱりカレンのベッドおっきい……」

    アリス「ダブルベッドでも、ここまでのサイズは……」

    カレン「――と、思いマシタガ」

    アリス「カ、カレン?」ピクッ

    カレン「アリス、Please come in!」

    アリス「え、えぇ……?」アセアセ



    カレン「……」

    アリス「……」

    アリス(結局、入っちゃったけど)

    アリス(なんでだろう、妙に落ち着かない)

    アリス(そ、そっか。いつもお布団だから、久しぶりのベッドで――)

    アリス(……いや、違う。きっと)

    カレン「やっぱり、シノと一緒に寝たかったデスカ?」

    アリス「!?」ビクッ

    アリス「そ、そんなことないよっ」アセアセ

    カレン「声、裏返ってマス」

    アリス「……」


    アリス「こうして」

    アリス「カレンと一緒に寝るのは、久しぶりだから」

    アリス「ちょっと、焦っちゃった」

    カレン「――アリス」


    アリス「ホントはね」

    アリス「最初、日本にホームステイしようって決めた時」

    アリス「……『カレンも一緒に来られたらなぁ』って」

    アリス「ずっと、思ってたんだ」

    カレン「……」

    アリス「だから」

    アリス「こうして、一緒にいられるのは幸せだなぁ、って」

    アリス「……カレンと一緒にいるのは、すごく落ち着くよ」ニコッ

    437 = 56 :

    カレン「――アリスが、そういう子ダカラ」

    カレン「私だけが、シノと一緒にいる、ナンテ」

    カレン「そういう、独占欲? みたいなモノが持てないんデス」モジモジ

    アリス「あれ? さっき、アリスだけがシノと一緒にいるのはキケンだ、って……」

    カレン「……アリスはイジワルデス」プイッ

    アリス「冗談だよ」クスッ


    アリス「――私も」

    アリス「私だけがシノを独り占めしたい、なんて」

    アリス「思ったこと、ないよ?」

    カレン「……前に、ヨウコとシノが接近した時、物凄く焦ってマシタ」

    アリス「た、たしかにそうだけどっ」アセアセ

    アリス「……でも」

    アリス「なんだろうね。今日、シノがああやって告白されて」

    アリス「それで、普段あんなに丈夫なシノが……」

    アリス「私が見た中で、初めてあんなに疲れちゃってるのを見てから」

    アリス「……一緒にいてあげたい、って初めて思ったんだ」

    カレン「一緒にいたい、じゃナクテ」

    アリス「うん。私だって、シノを守れるんだって」


    アリス「――そう思ったら、何だか」

    アリス「いちいち、焦ったりしてちゃダメかな、って」

    アリス「……でも、ここでこう言ってても、どうなるかわからないけどね」

    カレン「つよがりを言うのは、お互い様デス」クスッ

    アリス「――カレン」

    カレン「What?」

    アリス「一緒に、いようね」

    カレン「……」


    カレン「こっちこそ、デス」ニコッ




    ――その頃・大宮家



    「布団、敷いたわよ」

    「ありがとうございます、お姉ちゃん」

    「今日、本当にお疲れ様。疲れたでしょうし、早めに寝ましょうか」

    「そうですね」

    「それじゃ、電気消すわよ」

    「はい」


    「……」

    「……」

    438 = 56 :

    「それじゃ、おやすみ――」

    「は、はい」

    「――の、前に」

    「ほら、話してみなさい」

    「……」

    「そうして何かを抱えたような表情のままだと」

    「あの子たちも、心配するわよ?」

    「――そう、ですよね」

    「……」


    「――陽子ちゃんにも、綾ちゃんにも」

    「アリスやカレンにも、言えてません」

    「……今日、お母さんにはお話ししようかと思いましたけど」

    「結局、話せないままでした」

    「言いにくいことなのね?」

    「はい」

    「お姉ちゃんにも、言おうか迷いました」

    「今日、促されなかったら、隠したままだったかもしれません」

    「……」


    「最初の『隠し事』は」

    「アリスに言えなかった、その――『性別』でした」

    「……そうですね、『隠し事』が増えちゃいました」

    「――今日、シノがされた」

    「はい。あの告白と関係しています」

    「私は、目の前にきたあの方を、じっと見ていました」

    「そして、思いました。『あ、この人も――』って」

    「この人も?」

    「……やっぱり『同性』ですから、何となくわかってしまいました」

    「『この方も、私が、あの二人に抱いているのと同じ気持ちなんですね』と」

    「……!」ハッ


    「シノ。ひょっとして……」

    「……」

    「はい、私――」


    「――ボクは『男』としてあの二人を見ているのかもしれない、と思いました」


    「……」

    「一度、そう思ってからは」

    「なんだか、落ち着かなくなってしまいました」モジモジ

    439 = 56 :

    「――アリスやカレンが私に向けてくれる『好き』と」

    「私が二人に対して持っている『好き』は……もしかしたら」

    「ストップ、シノ」

    「お、お姉ちゃん?」ピクッ


    「……何となく」コホン

    「シノの悩みは、そういう感じだと思ってたの」

    「お姉ちゃん……」

    「つまり」

    「その……シノは」

    「あの二人が――異性として、好きなんじゃないかってことね?」

    「……はい」

    「えっと、その――」

    「いやらしい意味で、ってこと?」

    「そ、そういうわけじゃ!」アセアセ

    「……そっか」

    「それなら、大丈夫じゃない?」

    「わ、私は、あの二人とそういうことは――」

    「え? お、お姉ちゃん?」


    「だって」

    「私の知ってるシノは、そういうことを考えられない子だもの」

    「だったら、いいんじゃない?」

    「……で、ですけど」

    「この前、カレンの家にお邪魔した時、あ、あの二人に……」

    「ほんの少し、行き過ぎたことを……」

    「あ。もしかして、お酒のせい?」ニヤニヤ

    「――わ、わざとじゃないですよ?」

    「分かってるわよ……お母さんには、内緒にしてあげるわ」

    「まあ高校生なら、そういうこともあるでしょ」

    「……もしかしてお姉ちゃんも?」

    「それは秘密」クスッ


    「ね? わかるでしょ」

    「……シノは、あの二人が好き過ぎるのよ」

    「過ぎますか」

    「シノ、変な所でマジメだから」

    440 = 56 :

    「……それ、陽子ちゃんや綾ちゃんにも言われました」

    「さすがに、お友達はしっかり見てるわね」

    「――だから、なるようになるの」

    「……はい」


    「今日の、あの男子に感謝した方がいいわね」

    「あの方、ですか」

    「おかげで」

    「……シノの悩みが、はっきりわかったと思うから」

    「……」


    「お姉ちゃん」

    「なぁに?」

    「……私」


    「アリスとカレンと、ずっと一緒にいてもいいんでしょうか?」


    「……」

    「シノが、そう決めたなら」

    「私は応援するわよ」

    「……い、いやらしいこと、とか」アセアセ

    「考えたらどうしよう、って――」カァァ

    「もう開き直っちゃいなさいよ」

    「『あ、そういえば自分って男だからしょうがないか』って」

    「そんな感じで」

    「……い、言うのはカンタンですけど」

    「大丈夫、大丈夫」

    「――正直、シノがそういうことを悩むようになったことも」

    「ある意味、成長だと思うわよ?」

    「……」


    「――さて」

    「そろそろ、寝ましょうか」

    「は、はい」

    「明日は、アリスも帰ってくるでしょうし」

    「一日遅れの、私たちの打ち上げ会とでも行きましょうか」

    「――楽しみです」

    「ええ」

    441 = 56 :

     ――そう言ってからすぐに、お姉ちゃんのベッドから寝息が聞こえてきました。
     かなり、お疲れのようです。
     私も、そろそろ寝ないといけません。


    「開き直り、ですか」


     ……正直、自信はあまりありません。
     たしかに私は、金髪少女――いや。
     今はもう、あのお二人が大好きです。


     以前、私の家に陽子ちゃんたちが泊まってくれた時。
     私はアリスとカレンに抱きついて、離すことが出来なくなりました。


     あの時は、今のように考えてはいませんでした。
     純粋に、好きでした。


    (……純粋、に)


     いけません、そろそろ寝ないとです。
     明日、元気な姿をアリスに見せないといけません。


    (アリス、カレン――)


     ずっと、一緒に……。



     ―


     
     ――夢の中。


     黒髪の少女は、花畑にいた。
     きらびやかな景色に目を細めて、同時に気配を感じる。


     そこにいたのは、二人の金髪少女だった。
     彼女たちは手を振りながら、黒髪の少女を招く。
    「こっちにおいでよ」と。


     少女は、走りだした。
     そして、すぐさま二人の元へ辿り着くと抱き寄せた。
     肩をぶつけ、頬を寄せ合い、「好き」という感情を思い切りぶつけ合う。


     ふと気づくと、二人が上目遣いに黒髪の少女を見つめていた。
     頬を赤らめたまま、彼女たちは誘う。


     自分の口元へ。


     誘われるまま、黒髪の少女は、金髪少女の口唇へと自分のそれを寄せて――




    「!」パチッ

    「――あ」

    「……」アセアセ

    「や、やっぱり……」


    「わ、私は――」カァァ

    442 = 56 :

    ここまでになります。
    停滞した展開が続いていると我ながら思いますが、次回で何かが動く予定です。
    どうなるかは未定ですが……。

    SS速報に、新しいきんモザSSが立ち始めているようで嬉しいです。
    二期が始まれば、相当多くなりそうですね。
    ……それまでに、このSSに一応の目処が立てばいいのですが。

    それでは。
    いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。

    444 :




    ――九条家


    カレン「おはようございマス、アリス」ニコッ

    アリス「おはよ、カレン」ニコッ

    アリス(ベッドの上で、私とカレンは挨拶を交わした)

    アリス(ビックリしたのは、私が身体を起こすと同時に、カレンも起きてきたことだった)

    アリス(……まるで)


    アリス「考えてみたら」

    カレン「What?」キョトン

    アリス「……私とカレンは、もう『一心同体』みたいなものなのかな」

    カレン「アリス……」

    カレン「私のコト、そんなに好きデスカ?」カァァ

    アリス「……」

    アリス「うん、大好きだよ」ニコッ

    カレン「わっ、からかったのに通じてマセン……」ガーン

    アリス「カレンとは、これからもずっと一緒」

    アリス「……そうだよね?」

    カレン「――ハイ」コクリ


    カレン「それデハ」

    カレン「シノに、メールしてみまショウカ」ピッピッ

    アリス「……うん」

    カレン「私がアリスと一緒に行くと言っタラ」

    カレン「シノ、ビックリするでショウカ?」

    アリス「うーん……どうだろ」

    アリス「ただ――嫌がったりは、絶対にしないよ」

    カレン「Thanks、アリス」



    ――大宮家・勇の部屋


    「……メール」カチカチ

    「……」

    「? シノ?」

    「お姉ちゃん、おはようございます」

    「あ、うん。おはよ」

    「……」

    「どうかした?」

    「――そ、そのですね、えっと」

    445 = 56 :

    ――それから・道路



    カレン「……Hnn」

    アリス「シノから返信きた?」

    カレン「いえ……」

    カレン「来マセン」

    アリス「ま、まだ寝てるのかな?」

    カレン「シノ、昨日はお疲れデシタ」

    アリス(それを言うなら、カレンだって……)


    アリス(でも、シノ……何だか引っかかるなぁ)

    アリス「今まで、お昼前には絶対に起きてたもん」

    カレン「……電話、してみまショウカ?」

    アリス「あ、でもでも! やっぱり、寝てる所を起こしちゃうのは悪いかなーって」

    カレン「アリスは優しいデス」

    アリス「……もう」カァァ



    ――大宮家・前の道路


    アリス「……つ、着いちゃった」

    カレン「……」

    カレン「会ったら、何を言えばいいのでショウカ」アセアセ

    アリス「もう、カレン。そんなこと考えなくていいよ」

    アリス「……シノなら、何を言ってもちゃんと」


    「……あ」ガチャッ

    アリス「ちゃん、と……」

    アリス(玄関のドアの前に、大好きな人が現れた――)

    カレン「シ、シノッ!」

    「……おはようございます、お二人とも」ニコッ

    アリス「お、おはよ、シノ」

    アリス(おかしいな……シノ、笑顔がなんだか)

    カレン「だ、大丈夫デスカ?」アセアセ

    「……」

    カレン「な、何だか、様子がおかしいデス」

    カレン「メールに返信も来なかったデス」

    「――」

    アリス「……シノ」


    「ごめん、なさい……」


    アリス「!?」

    カレン「シ、シノ……?」

    446 = 56 :

    カレン(目が、潤んでマス……?)

    アリス(口元は笑ってるのに――目だけが何だか)

    「少し、外出します」

    アリス「……?」

    カレン「そ、それなら、私たちも一緒に――」


    「……それは、ダメです」

    カレン「……」

    アリス(目だけが……とても、悲しそう)


    「ごめんなさい」

    「それでは……」

    カレン「シ、シノ!」

    「……」

    カレン「あ、あの――」


    カレン「I'll be waiting for you no matter what!」


    「――!」ハッ

    カレン「何があっても」

    カレン「ずっとシノを、待ってマス」

    アリス「私もっ」

    「……もう」


    「本当に……なんて」


    アリス(「なんて」の後は聞き取れなかった)

    アリス(その後、一瞬の間にシノは私たちの前から姿を消していた)

    アリス(……いつか、かくれんぼで見た「ニンジャ」のように)

    「二人とも、おはよ」

    アリス「……イサミ」

    カレン「イサミ、一体……シノは、どうしちゃったんデスカ?」

    「そうね」

    「二人とも、入っていいわよ……あの子を待ってたいでしょう?」

    447 = 56 :




    ――街中


    陽子「……はぁ」タメイキ

    陽子(結局、何だかモヤモヤした気分は消えないままだ)

    陽子(あれだけシノに「適当に!」なんて言った癖に、当の私はこの有り様)

    陽子(まだ、調子狂ってんのかなぁ……)

    陽子(ん? そういやこのショッピングモール……)

    陽子(前に、シノたちと一緒に――)

    陽子「行ってみるか」



    ――エントランス



    陽子「……ん?」

    子A「あっ」

    子B「……昨日ぶり、だな」

    陽子「おっす」


    陽子「校外で会うのは初めてか」

    陽子「何か用事あったの?」

    子A「いや、特にはないな」

    子B「何となく、足が向いただけというか」

    陽子「ふーん……」


    子A「それじゃ、俺たちは適当に館内回るけど」

    子B「猪熊はどうする?」

    陽子「うーん……そうだね」

    陽子「特に目的あるってわけじゃないし、私は――」

    子A「? そっちに何か……あっ」

    子B「あれは……」


    「……」

    陽子「シノ!」

    「――陽子ちゃん」

    陽子(……目が、潤んでる?)ピクッ

    子A「お、大宮さん」

    子B「何かあったのか?」

    「い、いえ」

    「……悪いのは、私ですから」

    陽子「シ、シノ……?」

    「あ、あの子たちに……」

    「……」

    448 = 56 :

    陽子(……困ったな)

    陽子(どうしたもんか――)

    子A「とりあえずさ」

    子A「そこの喫茶店にでも入る?」

    陽子「……え?」キョトン

    子B「大宮さん、何かかなり寒そうだし」

    子B「それだったら、ちょっと一服でも……」

    「……」

    「そ、そういうこと、でしたら……」

    陽子「え、え?」



    ――喫茶店


    「……暖かい」

    子A「うん。暖房が効いてるな」

    子B「これで注文した紅茶でも飲めば、少し落ち着くんじゃないか」

    「はい……」

    陽子「……」


    陽子(奥の席に私とシノが座り、対面には二人が座った)

    陽子(流れで私も着いてきちゃったけど、さっきからどう話を切り出せばいいのか分からない……)

    陽子(やっぱり綾の言うように、まだ私はキッパリできてないんだな……)


    陽子「――あ、あのさ、シノ」

    「陽子ちゃん……」

    陽子「どうかした? 目、ちょっと赤いよ?」

    「……」

    子A「……えっと」

    子B「連れてきておいて何だけど……もし、込み入った話になりそうなら、出てった方がいいか?」

    陽子「……あー、そうだなぁ」

    「いえ。お二人にも聞いて頂きたいです」


    陽子「シノ……?」

    「――お願い、できますか?」

    子A「……そういうことなら」

    子B「まあ、聞くくらいなら全然構わないぞ」

    「……ありがとうございます」

    陽子「……いいの、シノ?」

    「はい」

    449 = 56 :

    陽子「――」

    陽子(この二人に、ねぇ……)

    陽子(たしかに男子の中じゃ、シノとの接点は多いけどさー)ジッ

    子A「なんだ、猪熊?」

    子B「言いたいことあったりするか?」

    陽子「……いや、なんでも」ハァ



    「――まず、初めに」

    「私は、その……好きな方が、います」

    陽子「……言っちゃうんだ」

    子A「す、好きな人が……」

    子B「それって――」

    「はい」

    「……大好きな、金髪少女が」

    子A「金髪、少女……」

    子B(ってのは、もしかしなくても……)

    陽子「……シノ」


    「私、は」

    「純粋に、その子たちが大好きです」

    「そう、思ってました……」

    陽子「……え?」

    「――でも」


    「キス、する夢を見てしまいました」


    陽子「!」

    子A「キス……」

    「それから、ずっと」

    「その子たちのことが頭から離れなくなってしまって」

    「……い、いやらしい目で、見てるんじゃないかって」

    子B「いやらしい……」

    「そんなことを、思うようになって……そ、それで」

    陽子「シノ、無理すんな」

    「そ、そうだったら」

    「あの子たちにハグしたりしている時、こんな風に思うことなんてな、なかったのに……」

    「――私は、あの子たちを好きでいることは」

    450 = 56 :

    陽子(……何て言えばいい?)

    陽子(私はシノに、何を言えるんだ?)

    陽子(昨日、綾と言えることは全部言ったはず……なのに)


    子A「え、普通じゃない?」

    子B「気にすることじゃないと思うけど」


    陽子「」

    「……は、はい?」

    子A「だってさ」

    子A「好きな相手を思って、おかしくなることなんていくらでもあるし」

    子B「うん、普通のことだと思う」

    「……??」

    陽子「お、おい、二人とも」


    子A「それに」

    子A「相手だって大宮さんを、えっと……好き、なのは確かなんだよね?」

    「……そ、それは、そうだと思いたいですけど」

    子B「だったら、尚更だよ。それ、両想いってことだよ」

    子B「――というか、羨ましい」ボソッ

    子A「おい、本音漏れてんぞ」

    子B「……お前もそうだろ」プイッ

    陽子(なんだろう……この置いてきぼり感は……)


    子A「それならさ、きっと」

    子A「大宮さんの……それが『いやらしい』ことだとしたって」

    子B「相手は受け止めてくれるんじゃないかな、って……俺は思う」

    「……」

    子A「キス、か……」

    子B「おい、遠い目するのやめろ」

    子A「だってさ……両想いの相手とキス、なんて」

    子B「……ダメだ、俺も羨ましい」タメイキ

    陽子(本音、ダダ漏れだな……)


    「……キスも、いやらしいことも」

    「あの子たちなら、受け容れてくれる……ですか」

    子A「と、思うよ」

    子B「そもそも、そこまで『そういうこと』で悩める大宮さんを、その相手が見放すことなんて考えられないって」

    「……そ、それは」ハッ

    「すみません、メールが……」ピッピッ

    「――あ」


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