のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:126,861,887人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    101 = 56 :

    「――あ」


    アリス「」


     ――差し込んだ陽に照らされる、白い肌。
     胸部は全く平らだけれど、それが逆に綺麗さを際立たせている。

     上半身裸の同居人は、その手をパジャマズボンに伸ばしていた。
     そんな隙間から、妙にお洒落な――


    アリス(じゃ、なくてっ!)ブンブン


    アリス「な、なに、を……」

    「え、ええと……」

    「お、おはようございます、アリス」

    アリス「――な、何やってるの、シノ!」アセアセ


    アリス「あ、朝は私が顔を洗いに行ってる間に着替える、って約束でしょ!?」

    「……」

    「ごめんなさい、寝ぼけちゃってたみたいです」

    アリス「い、いいから、早く何か着てよぉ……」カァァ

    「――ところで、アリス」

    「今日は、こっちがいいですか? それとも……」スッ

    アリス(寝ぼけ眼でシノは、私の前に二つの「モノ」を出した)

    アリス(それぞれ、セットになっていて、どっちも膨らんでいる)

    アリス(それは、多分……)


    アリス「――な、何見せてるのぉ!?」ビクッ

    「――あ」

    「ご、ごめんなさい」ペコリ

    「えへへ……」ニコニコ

    アリス(だ、ダメ……寝ぼけてるんだ……!)ガーン


    アリス「と、とにかく! 私、外に出るから!」

    アリス「その間に着替えておくこと! いい!?」

    「はぁい……」

    アリス「――」バタン

    102 = 56 :




    ――廊下



    アリス「……はぁぁ」タメイキ

    アリス(あ、朝から目に毒だよ……)

    アリス(相変わらず、何であんな真っ白で綺麗な肌で――)

    アリス(下着もお洒落で……!?)


    アリス「じゃ、じゃなくてっ!」ブンブン

    アリス「……うう」

    「朝から何事、アリス?」ガチャッ

    アリス「ひゃっ!?」ビクンッ

    アリス「あ、い、勇。おはよう」

    「おはよ。でも、まぁ」

    「随分と大きな声出してたわねぇ」クスッ

    アリス「――ごめんなさい、起こしちゃった?」

    「ううん、いいのよ」


    「……やっぱり」

    「一緒の部屋、大変?」

    アリス「そ、それは、その……」

    アリス「――今日は、シノが着替えちゃってて」

    「ほほう……」


    「で、アリスはシノの裸見ちゃったわけだ」ニヤニヤ

    アリス「い、勇! 直接的すぎるよぉ……」

    「――あの子の肌、凄い綺麗よねぇ」

    アリス「……う」

    「ホント、ヘタすると私より――」

    アリス「……私は、シノを見る度に、女としての自信を無くしそうだよぉ」

    「あら? アリスだって、十分に女よ?」

    アリス「そ、そうかなぁ……」

    「だって、『可愛い』じゃない」

    アリス「……」

    アリス「――それ、女らしさ?」ジーッ

    「さ、そろそろご飯食べないと」

    アリス「勇……」


    「あ、そうそう」

    「シノの下着も見ちゃったんだろうけど……」

    「あの子のアレ、『女子用』だからね?」

    アリス「……」

    103 = 56 :

    「それじゃ、また後でねー」

    アリス「……し」

    アリス(知ってたよ……)

    アリス(だ、だから、こんなに自信を失くしてるわけで……)

    アリス(だって、あ、あんなによく似合うものを探すのが難しいのは、なにより「女」である私が――!)


    「……アリスー?」

    アリス「ひゃぁっ!?」ビクンッ

    「お顔、洗いに行ったのでは?」

    アリス「……い、勇に会って」

    「お姉ちゃん、もう起きてるんですか!」パァァ

    「それじゃ、朝ごはんです! さ、アリスも行きましょう!」

    アリス「う、うん……」

    アリス「……」


    アリス(胸、どっちを詰めたんだろ?)

    アリス(そ、それに、さっきの下着を付けて学校に行く、んだよね?)

    アリス(――うう、頭がパンクしそうだよぉ)カァァ

    「アリス? どうかしましたか?」キョトン

    アリス「――シノのせいで」

    アリス「身体が妙に熱いよ……」ハァ

    「もしかして熱ですか!? それは大変です!」

    「い、今、体温計を……」

    アリス「だ、大丈夫だから!」

    アリス(というより、シノを見るとどうしてもさっきの姿が思い浮かんで――)


    アリス(あぁ、これじゃまるで、私が変態さんみたいじゃない!)アセアセ

    「……ちょっと、ズレちゃいましたね」

    アリス(そ、そういうこともしないでぇ……!)カァァ

    104 = 56 :

    ここまで。

    最近、カレンちゃんに色々な意味で振り回されているアリス中心の話でした。
    実際、同性同士の共同生活だけでも大変なのに、それがこうもなってしまえば……
    アリスの赤面率は増すばかりですね……。

    それでは。
    アニメが終わっても、こうしてSSを見てくださる皆様に感謝します。

    105 :

    このSS本当好き

    106 :

     ――梅雨が明けて、少し経つ。

     どんよりとした曇り空が、カラッとした晴天に変わった。
     学生たちにとって、梅雨明けというものは二重の意味で嬉しいものだ。

     一つは、なによりどんよりとした気分が晴れること。
     人によっては校庭で遊んだり、中庭で青春を謳歌することだろう。

     二つは――


    「やっほー! ようやくカレンダーに、『赤』が蘇ったぞー!」
    「……陽子、そればっかりね」


     と、猪熊陽子が代弁してくれている通りなので、割愛。


    「とはいえ、気は抜けないんじゃない?」
    「へ? なんのことだ?」

     この世の春とばかりにステップを踏む陽子の一方で、綾の声音は冷静だ。
     コホンと一息つくと、彼女は陽子の目をしっかりと見つめ、


    「――期末試験、近づいてきたわよ……」
    「私の春を返せぇー!」
    「よ、陽子! い、いきなり近づかないで!」


     綾のすぐ近くまで、にじり寄る陽子。後退りしながら、顔を赤らめる綾。
     そんな二人の胸中に、芽生えた想いは一つ。


    「「勉強、しなきゃ(しましょう)!」」




    ――昼休み・教室


    「勉強会、ですか……」

    「そう」

    陽子「さすがに、ちょっと頑張らないとなー」

    アリス「……陽子、成績良くなかったの?」

    陽子「――ちゅ、中間のことは無かったことに……」

    「現実から目を逸しちゃ、ダメよ?」

    陽子「ぐっ……あ、綾、シビアなやつめ」



    「わぁ、楽しそうですねぇ」ニコニコ

    「――た、楽しそう?」

    陽子「あー、シノは私以上に、真剣味が足りませんなぁ」

    「……寧ろ、私はあの点数でここまでのほほんとしていられるシノが、羨ましくすらあるわ」ハァ

    「?」キョトン


    アリス「シ、シノはやれば出来るよっ!」アセアセ

    陽子「え? アリスはシノのそんな姿を知ってるのか?」

    アリス「……」

    アリス「わ、私の『第六感』がそう言ってるの!」キリッ

    (何故、スピリチュアルに……)

    陽子(要は、「シノのことは私が誰よりも知ってる」と……やれやれ)

    107 = 56 :

    カレン「アリスッ!」ダキッ

    アリス「わっ、カレン!」

    カレン「んー、相変わらずちっこいデスねー」

    アリス「……カ、カレンは大きくなりすぎ」

    カレン「え、それはどーいう意味で、デスか?」

    アリス「――い、言いたくないもん」

    カレン「height or bust?」

    アリス「……No Comment!」カァァ


    陽子「いやー、さすが本場の英語は一味違うなぁ……」

    「聞き取れなかったけど、アリスの表情からなんとなく分かるわね……」

    「金髪少女の英語……なんて素敵な……!」パァァ

    「あぁ、シノはどうあっても幸せなのね……」タメイキ


    カレン「勉強会、デスか……」

    「ええ、そうよ」

    陽子「そういや、カレンの成績はどうなんだ?」

    カレン「私ノ?」

    カレン「ウーン……『ソゥソゥ』デスね」

    「――あぁ、『So So』」

    陽子「なんて意味だっけ……」

    「陽子――あなた、本当に」ハァ

    「うーん、カレンは『想像』以上に可愛いですねぇ……」

    (すでにこの子は、一つ突き抜けているわ……!)ビクッ


    カレン「私も参加してもいいデスか?」

    陽子「勿論!」

    「Of Course、よ」

    アリス「カレンも……」

    カレン「? アリス、どうしまシタ?」

    アリス「う、ううん、なんでも……」

    カレン「シノも来ますよネ?」

    アリス「!」ハッ


    「ええ、勿論です!」

    「みんなで楽しく勉強しましょう!」

    カレン「イエース!」

    アリス「……」

    108 = 56 :

    陽子(なんだかなぁ……)

    (傍から見てる分だと、どこか切なくなってくるわね……)

    (でも、まぁ――)

    アリス「もう、カレン! あまりシノに触っちゃダメだよ!」

    カレン「アリスも触ればいいんデスよー」

    「えへへー……」ポワポワ

    アリス「……」

    アリス「――わ、私は、カレンと違って大人だもん!」

    カレン「……その、『大きさ』デ?」

    アリス「」

    アリス「どこが、かな?」ジッ

    カレン「ご想像にお任せしマス!」

    アリス「……むぅ」プクッ


    陽子(触ってる、と言っても)

    (カレンはシノの髪ばかりで)

    (……身体と身体のスキンシップでわけじゃ、ないわね)

    陽子(この前の雨の日のこと、まだ引きずってそうだなぁ……)


    アリス「わ、私だって、いつか大きく……!」

    「アリスはそのままで、十分すぎるほど可愛いですよー」

    アリス「……」

    アリス「シ、シノ……!」ダキッ

    「アリス!」ダキッ


    陽子(と、そんな考えも)

    (この二人を見るだけで、消えちゃうわね……)




    ――後日・大宮家


    「結局」

    陽子「みんなの意見をつき合わせた結果」

    カレン「シノの家になりマシタね……」


    「ところで」

    「私たち、もう少し待たないといけないのかしら?」

    陽子「そうだなぁ……」

    陽子「『色々』と、大変だろうし――」

    カレン「何が、色々なんデス?」

    「そ、それは……」カァァ

    陽子「……」プイッ

    カレン「??」

    109 = 56 :

    陽子「――なぁ、カレン」

    カレン「ハイ?」

    陽子「シノの部屋、あまり物色しないでおいた方がいいぞ?」

    カレン「物色、デスか」

    カレン「ハイ! 大丈夫デス!」

    陽子「――それこそ、妙な『詰め物』とか、妙な『下着』とかが……」

    カレン「」

    「ちょ、ちょっと陽子! 言い過ぎよ!」

    陽子「綾……カレンにこそ言っておくべきことだろ?」

    「……そ、それは、そうだけど」


    カレン「――ツメモノ」

    カレン「――シタギ」

    カレン「……」カァァァ

    (ほら、言わんこっちゃない)

    陽子(カレンは一旦スイッチ点くと、長いからなぁ……)


    「みなさん、お待たせしましたー」

    アリス「さ、どうぞ」

    陽子「おう、オツカレさん!」

    「お邪魔します」

    カレン「……アリス?」

    アリス「? どうしたの、カレン?」

    カレン「――部屋の整理、付き合ってたデス?」

    アリス「ちょ、ちょっとだけ、ね」

    アリス(ちょっと、「踏み込んだ所」はシノ一人に任せちゃったけど……)

    カレン「そう、デスか……」

    カレン「……」タメイキ

    「? カレン、どうかしました?」

    カレン「――な、なんでもないデス!」ブンブン

    カレン「……」カァァ

    「??」キョトン

    アリス「……カレン」



    ――大宮家・忍の部屋


    陽子「さ、バンバン解こう!」

    「へぇ、やる気満々なのね」

    陽子「……今回のテストで成績落としたら」

    陽子「なんだか、嫌な予感がして……」

    「――まぁ、『追試』は嫌よねぇ」

    陽子「ぐ、具体的に言わないでくれぇ……」ヘナヘナ

    110 = 56 :

    アリス「さ、シノはまず数学だね」

    「はい」

    カレン「いやいや、英語じゃないデス?」

    「あ、そっちも……」

    アリス「カ、カレン! シノは数学の方が悪いんだから、まずは――」

    カレン「英語なら、私も教えられるデス。シノの味方になれマス」

    「あぁ……それは」


    アリス「数学!」

    カレン「英語デス!」

    二人「……」ムーッ

    「あぁ……見つめ合う二人も可愛いですねぇ……」


    陽子「いやぁ、モテるって大変なんだなぁ……」

    「――」




    ――たしかに、私は女子からモテるけど――

    ――モテたって、私にとっては綾だけが!――




    「なんて、ね」ハァ

    陽子「……意味深な溜息つくの、やめようよ」ハァ



    「……」カキカキ

    カレン「シノ。そこは、形容詞だから名詞の前デス」

    「――あ」

    「ありがとうございます、カレン」ゴシゴシ

    カレン「エヘヘ……」


    アリス「――シ、シノ! そこスペルミスだよ!」

    「あぁ、本当」

    「ありがとうございます、アリス」

    アリス「え、えへへ……」

    111 = 56 :

    カレン「――アリス、やりますネ」

    アリス「カレンこそ」

    アリス「――というより、カレンは別の科目、大丈夫なの?」

    カレン「私デスか?」

    カレン「今日は、シノのお手伝いに専念しマス!」

    アリス「……そっか」


    カレン「でも、ちょっと疲れたデス」

    アリス「え、ええ!?」

    カレン「シノ、ベッド借りてもいいデスか?」

    「はい、どうぞカレン」

    カレン「よっこらせ、ット」ポフッ

    カレン「……寝心地いいデス」ウットリ

    「ありがとうございます」


    アリス「じゃ、じゃあ、続きやらないとだね!」

    「そう、ですねぇ……」

    「――私も、休みたくなっちゃいました、けど」

    アリス「シノ! 集中だよ、集中!」

    「うう……アリス先生は手厳しいですねぇ」


    カレン「……」

    カレン(気持ちいいデス……)

    カレン(こうして転がってると、疲れが吹き飛んでいっちゃいマス)

    カレン(――あ)

    カレン(これって……)


    カレン「シノの、匂い……?」ピクッ


    カレン(……)アセアセ

    カレン(――何を動揺してるのデスか)

    カレン(友達のベッドなんて、誰でも借りマス)

    カレン(あぁ、気持ちいいデス……いい匂いデス……)

    カレン(――アレ?)

    112 = 56 :




    カレン(どうして、身体が火照ってるデスか……!?)カァァ



    陽子「お、おい? なんかこの部屋、ちょっと暑くないか?」

    「言われてみれば……」

    「――なんとなく、原因はわかったような気もするけどね」

    陽子「ん……ああ、そういう」

    カレン(こ、これはただ休んでるダケ)

    カレン(そう、だから、こうして熱くなるのはおかしくて、シノがいい匂いだからッテ、それは変わらなくて……)

    陽子「シノー、クーラーの温度下げても大丈夫かー?」

    「はい! 大丈夫ですよ」

    「カレン……身体中、真赤ね」




    ――後日・試験返却日



    「……あ」

    アリス「凄いよ、シノ!」

    アリス「英語も数学も、中間よりよくなってる!」

    「ふふ、アリスたちのおかげです!」

    アリス「良かったよぉ……」

    「アリス!」ダキッ

    アリス「シノ!」ダキッ



    子A(今までなら、女子同士のスキンシップだからってことで軽く見てたけど)

    子B(今となっては、なぁ……)

    子A「もう、鼻の下伸ばしちゃって……」

    子B「なんか複雑そうな顔してるよね……」

    113 = 56 :

    陽子「見ろ、綾!」

    「あら、結構良くなってるわね……」

    陽子「これで――これで、夏は自由だ!」

    「そうね、これで夏休みが無事にやってくることになるわね」

    「――カレンは、どうだったのかしら?」

    陽子「ん、カレンか……」

    陽子「――なんとなく、予想付くような気がするのは私だけかな?」

    「安心して、陽子。多分、私も同じ――」




    ――別クラス



    カレン「……」ズーン

    子A「あ、ねぇ九条さん」

    カレン「……」

    子A「ちょっと見せっこしない?」

    カレン「――ン」

    カレン「いいデスよ」

    子A「わーい……って」

    子A「ご、ごめんなさい」

    カレン「イエ……」


    子A(九条さん……道理で、沈んちゃってるわけだ)

    子A(うう、うかつだったなぁ……バカ、私のバカ!)



    カレン「……」

    カレン(誰にも、言えマセン)

    カレン(それこそ、アリスにダッテ)

    カレン(……)


    カレン(テストの間ずっと、シノの匂いが忘れられなかった、なんて)

    カレン(そんな「匂い」が、やっぱりアリスのものとはチガって、余計に強く記憶に残っちゃった、ナンテ)

    カレン(……テストの結果は、どうでもイイデスが)


    カレン「……シノ」ボソッ

    カレン(忘れられマセン……!)カァァ

    114 = 56 :

    ここまでになります。

    今回はカレンちゃんメイン? でしたでしょうか。
    本SSに限り、カレンちゃんの赤面率の高さはメーターを振り切れてると思います。

    しかし書いてると、どうもパターンが固定化されてきた感があります。
    このままマンネリ一直線にならなようにしないとですね。

    それでは。
    いつもありがとうございます。

    115 :

    やっぱいいねこれ

    116 :

    お待たせしました。投下します。
    今回は、本編の前座に当たります。

    117 = 56 :



     ――鐘の音が鳴り響く。


     はたと気が付き、早乙女教師は一旦、話を区切った。
     眼前に座る生徒たちの瞳が、鮮やかな光を灯したことをありありと感じ取ったからだ。

     コホンと、一息。
     そして、生徒たちの方へ、自分も満面の笑みを浮かべながら、告げる。


    「……皆さん! 夏休みの始まりです!」
    「うおおお!」


     その瞬間、教室は確かに揺れた。
     夏休み。この言葉を聞いて、浮足立たない生徒はいない。

    「羽目を外しすぎないよう、楽しんで下さいね」

     と言い、一礼の後、早乙女教師は教室を静かに出て行った。


     ――テクテク。

     廊下を歩きながら、可愛い教え子たちの嬉しそうな表情を思い出し、笑みが漏れた。
     と、同時に。

    「……私も、昔はあんな感じだったなぁ」

     愛しくもあり、切なくもあり――

    118 = 56 :




    ――未だざわめく教室



    陽子「よっしゃ! 夏休みだ!」ガッツポーズ

    「ある意味、一番ノリがいいのは早乙女先生だったわね……」

    「ふふ、烏丸先生は可愛いですから」ニコニコ

    アリス「――夏休み、かぁ」


    カレン「Hey!」ガラッ

    陽子「おっ、カレン!」

    「なんとまあ、分かりやすいテンションの高さね」

    「カレンー」ホワホワ

    アリス「……あれ? カレン、その手に持ってるのって」

    カレン「ハイ!」スッ


    陽子「おお……これは」

    「海、かしら?」

    カレン「そうデス!」

    カレン「この前、ハワイへ行った時、撮ってきた写真デス」フンス

    アリス「うわあ、カレン楽しそう……」

    「――金髪少女の、水着姿」パァァ

    アリス「……むぅ」


    アリス(よくよく見てみると)

    アリス(カレンのスタイルは、いい)

    アリス(ちゃんと胸もあるし、もちろん腰回りだって細い)

    アリス(――シノは、「どっち」なんだろう?)チラッ


    アリス「ねぇ、シノ? 私が水着を着たら……」

    「アリスの水着、ですか?」

    「――すごく、可愛いと思います!」ニコニコ

    アリス「そうじゃなくてぇ……」

    アリス(でも、何だか恥ずかしい質問だから、置いとこうかな……)

    119 = 56 :

    カレン「シノは、大きいのと小さいの、どっちが好きデス?」

    アリス(って、カレンー!?)アセアセ

    「私、ですか……」

    「――そうですね」

    「どっちにも、どっちの良さがある、と思います!」ニコニコ

    カレン「シノは優しいデス!」ニコニコ

    (正直な話、金髪少女の水着姿というだけで、胸が高鳴ってしょうがありません……!)ハァハァ


    カレン「……」ジーッ

    アリス「……カレン、どうして私をそんなに見てるの?」

    カレン「これからデース!」グッ

    アリス「むぅ……」


    陽子「はは、あの3人も相変わらずだなぁ……」

    陽子「カレンもかなり慣れてきたみたいだし――って、おい? 綾?」

    「……」

    「私、カレンより高いわよね?」

    陽子「身長? そりゃ、そうだろ」

    「……ない、これはないわ」ワナワナ

    陽子「あ、綾?」


    「――はぁ」タメイキ

    カレン「どうしたデスか、アヤヤ?」

    「……」ジーッ

    カレン「Oh?」


    「――はぁ」

    カレン「……アァ」ポンッ

    カレン「アヤヤ! バストを気にすることありまセン!」グッ

    「……とは、言ってもねぇ」チラッ

    陽子「ん?」ピクッ

    「――近くでいつも見せつけられてれば、嫌にもなってくるわね」

    陽子「わ、私のせいなのか!?」ガーン

    120 = 56 :

    カレン「と、いうワケデ」

    カレン「今年の夏休みは、海へ行きまセンカ?」

    陽子「海、海か……いいなぁ!」

    「気持よさそうですねぇ……」パァァ


    アリス「海……」ズーン

    「海……」ズーン


    カレン「――なにやら、二人は行きたくなさそうデス?」

    陽子「ああ、理由は多分……」

    「二人とも! 気にしなくても、楽しいですよ!」

    二人「フォローになってない(よぉ)!」ガバッ



    カレン「海がイヤなら……ホット・スプリング!」

    アリス「温泉……?」

    「また、妙な所をついてきたわね……」

    陽子「温泉か――夏の温泉もいいかもなぁ」

    「――温泉、ですか」


    カレン「日本の温泉は、かなりイイと聞きマス!」

    カレン「そこに行くことは、とても魅力あるデス!」キラキラ

    「温泉、ねぇ……」

    陽子「たしかに『いい』とはいえ、なぁ……」

    アリス「温泉、良さそうだけど……二人とも、なんだか煮え切らないね?」

    二人「いや、なんて言ったって……」チラッ

    アリス「――!」ハッ

    121 = 56 :

    「皆さんが温泉に行くのなら」

    「私は、温泉の外でお待ちしてますね」

    「ご一緒できないのが残念ですが……」


    アリス「ご、ごめん、シノー!」ダキッ

    「ア、アリス?」パチクリ

    アリス「気づけなかったよ……」グスッ

    アリス「うう、一番近くにいたのに……」

    「――いいんですよ、アリス」ギュッ

    アリス「シノぉ……」ギュッ


    陽子「――アリスも、まだ甘いな」

    「まぁ、シノも楽しそうだし――カレン?」

    カレン「……」

    カレン「――配慮が足りなかったデス」ズーン

    陽子「ま、まぁまぁ、そう気にしないでって」

    「シノなら大丈夫よ。あの子、昔からああいう優しい子だから」

    カレン「――デモ」


    カレン(アリスをからかってる時とは、チガウ)

    カレン(シノがちょっとでも落ち込んだと思ったら、感じてしまうこのカンカク……)

    カレン(――ムゥ)キュッ



    「それなら!」ポンッ

    「お泊り会はどうでしょう?」

    アリス「お泊り会……?」

    陽子「あぁ、休みの定番だな!」

    「でも、誰の家に……?」


    カレン「ウーン……私の家は厳しいかもしれまセン」

    陽子「そっか」

    カレン「ハイ」

    カレン「7月から8月には、パパと仕事の付き合いがある人とのパーティーがありマス」

    カレン「その準備も大変だから、私の家は無理みたいデス……」

    「そ、そう、なの……」

    陽子(なんて、お嬢様だ……!)

    122 = 56 :

    「陽子は?」

    陽子「あぁ、うちは――弟や妹がうるさいだろうし」

    陽子「ちょっと厳しいかもだな……綾は?」

    「わ、私は、その……」

    「へ、部屋の整理が大変だから――」アセアセ

    陽子「へぇ、意外だな。綾って、整理好きだと思ってた」

    「ま、まぁ、ちょっとね……」

    (家に沢山の人を呼ぶことが恥ずかしい、だなんて言えないわよね……)ハァ



    陽子「と、なると」

    「流れ的に……」

    「私の家なら大歓迎です!」ニコニコ

    アリス「いいの? イサミやママに許可をとらなくて……?」

    「二人ならすぐに納得してくれます!」

    アリス「シノがそう言うなら……」


    陽子「それじゃ、シノの家で!」

    「お泊り会か……なんか新鮮でいいわね」

    カレン「……シノの家、デスカ」ボソッ

    「カレン?」

    カレン「い、いや! なんでもないデス!」ビクッ

    カレン「楽しみデス」ニコニコ

    「……」

    123 = 56 :

    (カレン、大丈夫かしら……?)

    陽子(確実に慣れてきたとはいえ、時々シノがからむと、一気に変わるからなぁ……)

    (まぁ、カレンにとっても大きな一歩になるでしょ……)

    陽子(そうだな――大丈夫だよな、うん)コクコク


    アリス「……シノの家で、お泊り会」

    アリス(シノの家に、人が沢山来る……)

    アリス(なんだろう――ちょっと、胸がチクリとするよ)キュッ

    アリス(……なんでだろ?)キョトン

    「? どうしました、アリス?」

    アリス「!」ビクッ

    アリス「な、なんでもないよぉ!」カァァ

    「??」


    カレン「……」

    カレン「楽しみ、デス」ボソッ

    カレン「――」キュッ

    124 = 56 :

    ここまでになります。

    お泊り会という本編の前座でした。

    さて、それぞれがそれぞれの想いを抱えて、いざ大宮家へ。
    次回の構想はある程度できていますので、早めに投下できるかと。
    ただ、予期せぬ仕事がある可能性もありますが……

    それでは。
    読んでて楽しい、という反応は非常に励みになります。自分も書いてて楽しいので。
    ありがとうございます。

    125 :


    雰囲気好きよー

    126 :

    キャラの個性が出てていい感じ

    127 :

    まともなきんモザSSは非常にレア

    128 :

    ごめんなさい……ミスでした。

    ☓早乙女→○烏丸

    誰だ、早乙女さんとやらは……

    投下まで、もうしばらくお待ちください。

    129 :

    私待つわ

    130 :

    週末更新なかったか…期待してまーつーわ

    131 :

    ――シノの家に、泊マル。

     イギリスにいた頃、私とアリスは姉妹のようなものでシタ。
     同じ本を読み、同じ遊びをして、同じベッドで寝ることモ……。

     そうデス、考えてみれば当然デス。
     私たちは、「友達」だったのですカラ。

     だから、今回だって同じことデス。
     ハイスクールで出来た友達の家に、泊マル。
     それだけのコト――

    「……なのに、どうシテ」

     私は、こんなにも落ち着かないのデショウ?

     ケータイを開いて確認してみれば、日付は夏休みに入ったばかりということを示してマス。
     そして、明日ハ――


    「――モヤモヤしマス」




     ――と。

     そんな一人の英国少女を例外として、他の面々は特に変わりなく明日を楽しみにしていた。

    「いやー、シノの家に泊まるの久しぶりだなー!」

     と、ある少女は浮き足立っており、

    「……お泊り、か。なんだか、『友達』って感じ」

     と、友達の大切さを噛み締めている少女もいて――


    「シノの家で、お泊り会……」

     おっと、この英国少女もまた例外のようで――







     ――当日・大宮家前





     陽子「……なんだか、久しぶりに来たような」

     綾「まあ、4月の頃は、主にシノ関係でゴタゴタがあったしね……」

     カレン「……ゴタゴタ」ハッ

     陽子「ん? どした、カレン?」

     カレン「あ、ああ、いや、ソノ!」アセアセ

     カレン「……No Problem、デス」カァァ

     綾(いや、その頬の赤みは『問題なし』じゃないわ……)

    132 = 56 :

    カレン「思エバ」

     カレン「あの時、シノの部屋に正体サレテ」

     カレン「……それ、カラ」

     カレン「……」カァァ

     綾「もう。陽子がおかしなこと言うから、カレンがおかしくなっちゃったじゃない」

     陽子「私のせいじゃないよな!? さっきまでの会話見なおしてみろ!」

     綾「……」



     ――陽子との会話といえば、初めて会った時のことは未だに……――


     綾「陽子が悪い」プイッ

     陽子「どうして、頬を染めるんだろうな……?」



     忍「皆さん、おまたせしました」ガチャッ

     アリス「……」カァァ

     陽子「おおー、お疲れさん!」

     綾(アリスのあの顔――整理、手伝わされたのね)

     カレン「? アリス、顔が『茹でダコ』みたいデス?」

     綾(こっちの英国少女は、日本文化にちゃっかり馴染んできてるし……)


     アリス「……そ、それは、その」

     忍「アリスは、私の部屋の整理をしてくれてたんです」

     忍「あと、洗濯なども――」

     アリス「も、もうその話は止めてぇ……」ブンブン

     忍「どうしてですか、アリス?」

     アリス「……」カァァ



     アリス(言えっこない)

     アリス(洗濯を畳んでいる時に、シノの下着と私の下着を比べて)

     アリス(溜息をついていた所を、ニヤニヤしたイサミに見られたことなんてぇ……!)

     勇「いやー、アリスのもアリスので、味があると思うよ?」

     アリス「そうは言っても、シノのアレはどう考えてもその辺の女子のレベルを超え……て?」

     アリス「」


     忍「あ、お姉ちゃん」

     勇「やっほー、みんな」

     陽子「イサ姉!」

     綾「お、お邪魔します!」

     カレン「……イサミ」

    133 = 56 :

     アリス「……」

     勇「さ、みんな入って入って」

     勇「いやー、この子たちったら昨日から張り切っちゃって」

     勇「シノが服の整理する横で、アリスったらもう――」

     アリス「イ、イサミ!」アセアセ


     陽子(――相変わらず、イサ姉には誰も敵いそうにないな)

     綾(アリス……姉妹二人に弄られてれば、あんなに敏感な反応になるわけね……)


     カレン「……」カァァ

     カレン「アリス? 顔、赤いデスよ?」キョトン

     アリス「あ、カレン……もう、困っちゃうよ」

     アリス「全く、シノもイサミも、まった、く……」

     アリス「――あ」


     カレン「どうしたデス?」

     アリス「う、ううん、なんでもないよ」

     カレン「そうデスか?」

     カレン「とにかく、あまり顔を赤くするのは身体によくないデス! 注意しまショウ!」

     アリス「……カレン」


     アリス「――行っちゃった」

     アリス「……」

     アリス(まさか、気づいてない?)

     アリス(カレンの顔――ううん、あれはきっと暑さのせいだ)

     アリス(そうでないと、あの、カレンが――)


     アリス(あんな、どこまでも女の子らしい表情をするわけが、ないもん)キュッ



     ――忍の部屋


     忍「さ、どうぞ皆さん」

     陽子「うわっ、整った部屋だなぁ……」

     綾「陽子の部屋は――」

     陽子「うー……お、弟とか妹とかがだな」

     綾「なんだ、言い訳ね……」

     陽子「ドライな反応!」


     カレン「ヘェ……」

     カレン「私の部屋もこれくらい整えたいものデス」

     アリス「カレンって、そんなに散らかすタイプだっけ?」

     カレン「――最近は、チョット」

     アリス「?」

    134 = 56 :

    「でも、ほとんどはアリスのおかげでもあるんですよ」

     忍「顔を赤くしながら掃除をしてくれる金髪少女……」パァァ

     陽子(うーん……やっぱり、安定のシノだな)

     綾(というより、当然のようにアリスが『顔を赤くしたワケ』とかはスルーされるのね……)


     アリス「シノがどうかした?」

     カレン「!」

     カレン「い、いや、なんでもないデス!」

     アリス「そう……?」


     カレン(――どうして、私はこうなのでショウカ?)

     カレン(どうも、昨日からおかしいデス……)

     カレン(シノが気になる、のはたしかとはイエ)

     カレン(だからといって、部屋の掃除を疎かにする、ナンテ……)


     アリス(カレンはこう見えて、意外としっかりする所はしっかりしてる)

     アリス(そんなカレンが、部屋を散らかしちゃう、なんて……?)

     アリス(それに、さっきの視線――あれは、シノに向けられていた、よね?)

     アリス(……どういう、ことなんだろ?)


     陽子「……おい、シノ。非常に言い難いんだけど」

     忍「え? どうかしましたか、陽子ちゃん?」

     陽子「――これ」スッ

     忍「あっ……」


     綾「も、もう、シノ! なんでこういうモノを出したままにしちゃうのっ!」

     忍「ご、ごめんなさい!」

     忍「――ちょっと、最近フィット感が薄くなってきて」

     綾「か、解説しなくていいからっ!」カァァ


     陽子「うーむ……」ジーッ

     陽子(こうして見てみると、シノは本当にバランス考えるんだな……)

     陽子(特に、こう――自分の身体つきと胸のバランス、みたいなものを……)

     綾「って、なに陽子も真面目に見てるのよ!」

     陽子「……いやー、つい興味本位で」

     綾「もうっ……」プイッ

    135 = 56 :

     アリス「――あぁ」

     アリス(何度間近で見ても、やっぱり慣れないよぉ……)

     カレン「……シノ、の、モノ」

     アリス(カレン……)

     カレン「――アリス、顔真赤デース」

     アリス「……カレン」

     カレン「わ、私! ちょっとお手洗い借りたいデス!」」

     忍「はい、どうぞカレン」

     カレン「サンクス!」


     アリス「……」

     アリス(言えそうにない)

     アリス(「それは、今のカレンにだけは言われたくないよ」なんて……)





     ――大宮家・リビング



     それから、しばらく時間が経った。
     その間も、主にシノの「道具」に関わるすったもんだがあったり、それに伴って各人の表情も変化した。

     とりわけ、二人の英国少女。
     彼女らは、その変化に何を感じただろうか――



     アリス「……ふぅ」

     忍「お腹いっぱいですねぇ……」

     陽子「美味しかったな、シノのお母さんの料理」

     綾「……陽子は、あれじゃ足りなかったんじゃない?」クスッ

     陽子「なっ、綾! 私はそんな大食いキャラじゃあ――」

     忍母「あらあら、陽子ちゃんはよく食べる子よ?」

     陽子「」

     陽子「お、おばさん……もう」カァァ

     勇「もう、お母さんったら。陽子ちゃんの赤面はレアなのよ?」

     忍母「あらあら、ごめんなさい」


     綾「……」

     綾(陽子って、あんな風に顔を赤らめるんだ……)

     綾(――ちょっと、得しちゃった)

     陽子「……おい、なんだ綾? その目は?」

     綾「なーんでも?」ニコニコ

     陽子「……」ハァ

    136 = 56 :

     カレン「……I'm Full! 満腹デース」

     アリス「カレン、よく食べてたね」

     カレン「アリスももっと食べないと、色々大きくなれマセンヨ?」

     アリス「……『色々』って?」

     カレン「想像次第、デース!」

     アリス「――昔は、私のほうがお姉さんだったんだよ?」ジトッ

     カレン「それで、今ハ?」

     アリス「……カレンの、いじわる」プイッ

     カレン「アリス、可愛いデス」ナデナデ

     カレン「……」





     ――夕食が終わり

     しばらく、談笑の時間があった。

     テレビを点けて、適当にチャンネルを切り替えていたら
     高校生の女子グループが音楽をやっているアニメに遭遇し、ついつい見入ってしまったり。

     話し合いの結果、シノが一番先に入浴すると決まると、二人の英国少女が揃って顔を赤らめたり。


     そんな、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき――


     
     忍「それじゃ、そろそろ寝ましょうか?」

     陽子「えー、まだ早くないか?」

     綾「陽子はだらしないわね……早寝早起きは生活の基本よ?」

     陽子「うーん……たしかに、『寝る子は育つ』って言うしなぁ」

     綾「……」ジッ


     綾(寝る子は育つ、ね)

     綾(それじゃ夜が遅い陽子の、色々な所のその『成長』は)

     綾(なんなのかしらね……)

     陽子(綾の視線が重い、重いぞ……!)



     カレン「……そう、いえバ」

     カレン「寝る場所は、決めたデス?」

     忍「あっ、そういえば……」

     忍「アリスは、いつも通りで大丈夫でしょうけど……」
     
     陽子「それじゃ、私は一階に布団でも敷いて……」

    137 = 56 :

     綾「――」

     綾「そ、それじゃあ私も、陽子と一緒に……」

     勇「ちょっといい、二人とも?」

     陽子「わっ、イサ姉!?」ビクッ

     綾「ど、どうしました?」ビクッ

     勇「――うちの部屋、空いてるわよ?」

     綾「……!」

     陽子「おー、いいなぁ、イサ姉の部屋!」

     陽子「それじゃ、行こうか!」

     勇「陽子ちゃんははっきりしてて良いわね……」

     綾「……あ、あの」

     綾「その……」モジモジ

     勇「――綾ちゃんも大歓迎よ?」

     綾「――あ」

     綾「ありがとう、ござい、ます……」

     勇「ふふっ」ニコッ


     陽子(あちゃー……綾は相変わらずだなぁ)

     陽子(まぁ、慣れない相手とは会話が成立しなかった頃に比べたら、ずっと進歩してるか……)

     綾「――陽子」キュッ

     陽子「うわっ!?」

     綾「一緒に、行くわよ……?」モジモジ

     陽子「あ、当たり前だろ!」

     陽子(こりゃ、守ってやらないとだなぁ……)


     忍「それじゃあ、私の部屋にはアリスと――」

     カレン「……」モジモジ

     忍「カレンも、どうぞ!」ニコニコ

     カレン「――私、モ」

     カレン「シノの、部屋二……?」

     忍「はいっ! 是非!」

     アリス「カレン、スペースは大丈夫だよ」

     カレン「……」


     カレン(落ち着くデス、私)

     カレン(何もおかしいことはありマセン。ただ、友達の部屋にお泊りするだけデス)

     カレン(アリスだっているじゃないデスカ)

     カレン(――シノ)

     忍「どうかしましたか、カレン?」

     カレン「い、いえ! なんでもない、デス……」

     カレン「……」

     アリス(――カレン)

    138 = 56 :

     

     ――勇の部屋


     勇「よいしょ、っと」

     勇「二人の布団、この辺でいいかしら?」

     陽子「ありがと、イサ姉!」

     勇「ふふ、ありがとう陽子ちゃん」

     綾「……」

     綾「あ、ありがとう、ございます……」

     勇「……」

     勇「それじゃ、綾ちゃんがここで、陽子ちゃんがあっちで」

     陽子「うん、分かった!」

     綾「え……え?」アセアセ

     勇「綾ちゃん、モテモテね? 私と陽子ちゃんに挟まれるなんて」

     綾「は、挟まれるなんて……そんなっ!」

     陽子「おー、綾がハーレム? シノとアリスたちみたいな?」

     綾「よ、陽子もおかしなこと言わないでぇ!」カァァ

     勇「ふふっ……」



     ――忍の部屋


     忍「……それじゃ、カレンはこっちで」

     カレン「ハ、ハイッ!」

     アリス「……」

     アリス「シノ、カレンはここじゃちょっとシノから遠いんじゃないかな?」

     カレン「……!」

     アリス「た、ただでさえ、シノの部屋には、その――いろんな『モノ』があるわけだし」

     忍「それもそうですね……」


     忍「それじゃ、カレンはここで!」

     カレン「――ハ、ハイ……」

     カレン(ここ――シノが近いデス)

     カレン(アア……)

     アリス(――カレン)

     アリス(モヤモヤしてるなら、ちょっとくらいはっきりさせたほうがいいかもね)

    139 = 56 :

     




     それから、時間が経って――



     ――勇の部屋


     陽子「……」スースー

     勇「あら、陽子ちゃん。意外と早く寝ちゃったわね」

     綾「……」

     綾「よ、陽子は、ちょっと疲れてたみたいです」

     綾「あ、朝に、ランニングしてきた、って言ってましたし」

     勇「ふーん……」ニコニコ

     綾「……」



     綾(陽子のバカバカ!)

     綾(い、勇さんと二人きりでどんなことを話せばいいのかわからないじゃない!)

     勇「……綾ちゃん」

     綾「は、はいっ!?」

     勇「髪下ろすと印象変わるのねぇ……可愛いわ、そっちも」

     綾「あ、ありがとう、ございます……」


     勇「――ね?」

     綾「はい……?」

     勇「陽子ちゃんとは、どうなの?」
     
     綾「」


     綾(お、落ち着きなさい小路綾)

     綾(何を言われたの、今? 陽子と私が、どうって……?)カァァ

     綾「わ、私と陽子は、ですね! べ、別に、その――」

     綾「お、おかしなことはなく、いえ、むしろ、普通過ぎるくらいといいますか……うう」

     勇「――いい友達なのねぇ」

     綾「そう、それです!」コクコクッ

     勇「ふふっ……」

     勇(物凄く顔が赤くなってることは言わないでおきましょうか)


     勇「陽子ちゃんはね」

     綾「……?」

     勇「とても、可愛い子よ」

     綾「はい?」

     勇「小さい頃からよく一緒にいてね」

     勇「シノともよく遊んでくれて……」

     綾「……」

    140 = 56 :

     勇「だから」

     勇「――綾ちゃんも、そんな風に思ってくれてたら」

     勇「私も、きっと陽子ちゃんも嬉しいだろうなぁって」

     勇「なんて、ね」

     綾「……」


     綾「あ、当たり前、です」

     綾「よ、陽子は――色々と困ったところもあるけど」

     綾「……いい、友達です」

     勇「ありがとうね、綾ちゃん」


     勇「――さて、それじゃそろそろ寝ましょうか?」

     綾「――あ」

     綾「は、はい」

     綾「お、おやすみ、なさい……」

     勇「はい、おやすみ」


     綾「……」スースー

     勇(――まったく)

     勇(どうして、シノの周りにはこんな可愛い子ばかり集まるのかしらねぇ……)クスクス

     勇(――さてさて、シノの部屋はどうなってることでしょう)



     ――忍の部屋


     忍「……」

     忍「――ん」モゾッ

     カレン「……」

     カレン(眠れマセン……!)アセアセ

     カレン(すぐ近くで、シノが寝息を立てている、それだけナノ二!)

     カレン(うう……)カァァ


     
     アリス「――カレン?」

     カレン「!」

     カレン「ア、アリス……?」

     アリス「大丈夫? さっきからうんうん唸ってるけど?」

     カレン「だ、大丈夫デス!」

     カレン「け、決して、シノの寝息ガ――」

     アリス「シノの……なに?」

     カレン「――あ」

     カレン「な、なんでもありマセン!」

     アリス「……」

    141 = 56 :

     アリス「――カレンは」

     カレン「?」

     アリス「シノのこと、『好き』なんだね」

     カレン「……」

     カレン「――ハイ、そうなのかもしれマセン」

     アリス「そう、だよね……」


     アリス「――シノ、可愛いもんね」

     カレン「ハイ……」

     カレン「正直、高校のどんな女子よりも可愛いデス」

     アリス「同意するよ……同時に、何故か虚しくもなるけど」ハァ

     カレン「ハイ……」ハァ


     アリス「――カレン」

     カレン「……アリス?」

     アリス「私も――」

     アリス「シノが、『好き』だよ」

     カレン「……」

     カレン「分かってマス」


     カレン「――アリスは可愛いカラ」

     カレン「きっと、もっと好かれるデス」

     アリス「カレンだって、すごく可愛いよ」

     アリス「――今だって」

     カレン「……見ないで下サイ」カァァ

     アリス「せっかく可愛いのに……」

    142 = 56 :

     カレン「――アリス」

     アリス「なぁに?」

     カレン「私、日本に来て良かったデス」

     カレン「アリスに会えて、シノとも出会えて……陽子やアヤヤみたいないい子にも会えテ」

     アリス「カレン……」

     カレン「なんだか――」


     カレン「毎日がキラキラ、輝いてるみたいデス……」



     ――そう言うと、満足したようにカレンは寝息を立て始めた。

     私はそのあまりの寝付きの良さに驚きながら、布団に潜り込んだ。
     
     こうして、カレンと話しあえて良かった、と素直にそう思う。


     「――温かい」

     たしかに、カレンがシノに『好き』といったのは、ちょっと動揺した。
     何故かわからないけど、たしかに。

     けれど。

     それを上回るくらいに、嬉しかった。
     カレンは、日本での生活を心から楽しんでることが、恥ずかしそうな声音からひしひしと伝わってきたから――


     「さぁ」


     寝よう。

     そして、また明日も――「おはよう」って言おう。

     何もない毎日が、こんなに楽しくなるなんて、思わなかった、なぁ――










     忍「……」パチッ

     忍「――『好き』?」キョトン

     忍「私は、二人とも好きですよー……」エヘヘ

     忍「……」スースー

    143 = 56 :

    >>132
    ☓正体→○招待でした。

    ここまでになります。
    とても長くなってしまいましたね……

    英国少女二人の会話により、ついに核心に迫ったか……と言いながら、次回からまたいつも通りの日常が始まる予定です。
    好き、と「好き」は、何か違うと思うタイプらしいですね(意味不明)

    色々と情報を入れ過ぎたので、読みにくかったかもしれません。
    楽しんでいただけたら、非常に嬉しいです。

    それでは。
    もう放送が終わってから1ヶ月ほど経つんですね……。

    144 :

    続きキマシタワーお疲れ様です。
    読みながらニヨニヨしてしまう…次回も期待してまーす

    145 :


    待っててよかった…

    146 :

    もう1ヶ月なのか...
    ともあれ、乙

    148 :

    まだかなまだかな

    149 :

     ――ここは、どこでしょう?
     
     私は、草原に佇んでいます。
     綺麗な草木が辺り一面を覆うこの場所は――


    「……あれ、は」

     目を凝らすと、二つの人影が見えました。
     二人は、私の方へ向かって走っているようです。
     揺らめく二つの金色は、私の目も、心も捉えて離しません。

     
    「……!」
    「――!」

     二人は、何かを叫んでいるようですが、残念なことにその声は私には届きません。
     とても可愛らしい声なだけに、意味がわからないことがとても残念です。
     それにしても……ああ、なんて綺麗な金髪――


     気がつくと、目の前の光景がちょっとだけ変わっていました。
     私は、草原に寝かされています。
     というより、押し倒されている、という方が正しいでしょうか。

     上にいるのは――なんということでしょう。

    「……シノ!」
    「――シノ!」

     ここが、天国なのでしょうか。
     私の上にいるのは、なんと先ほどの二人の金髪少女。
     吹き抜ける風が二人の綺麗な髪をはためかせ、幻想的な一瞬を見せつけます。

    「……ああ、そうですか」

     つい、独りごちてしまいます。
     私は、この二人が――



    「好き、なんですね……」
    「――シ、シノ?」

    150 = 56 :




    ――大宮家・忍の部屋


    「……あ」

    カレン「ど、どうした、デスカ……?」アセアセ

    カレン「顔、真っ赤デス」

    「――あれ?」キョトン

    「草木は? 風は……どこに?」

    カレン「何、言ってるデス?」

    「――あ、でも」


    ギュッ!


    カレン「」

    カレン「シ、シノ……い、一体、ナニを?」

    「えへへー」スリスリ

    「金色は、ここにありました……」

    カレン「シノ、くすぐったいデス……あの、ソノ」

    カレン(あ、朝から一体、ナニがどうなってるデスカ!?)アセアセ


    カレン「シ、シノ……!」

    「――あ、そうでした」

    「着替え、なくてはいけませんね……」

    カレン「!?」

    「……よいしょ、っと」プチッ

    カレン(シ、シノ……む、胸元が、見えちゃってマス……!)

    カレン(――以前、一度見たことありますが、本当に平らデス――)

    カレン(じゃ、なくテ! こ、このままじゃ……このまま、ジャ)ブンブン


    アリス「……うーん」

    アリス「――ふぅ、今日もいい天気」

    アリス「さて、二人、は……」チラッ

    アリス「」


    カレン「ア、アリス! た、助けるデス!」アセアセ

    アリス「……シノが、カレンの、上に、乗って」ブツブツ

    カレン「は、早くシテ!」カァァ

    アリス「そっか、シノはそういう――」ハッ

    アリス「ご、ごめんカレン! シノ、また寝ぼけてるでしょ!」グイッ

    「……あ」


    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について