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    元スレ忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

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    151 = 56 :

    「えへへ、ごめんなさい」ニコニコ

    アリス「――はぁ」

    アリス(……って、また胸元はだけてる!?)

    アリス「と、とにかく! ちょっと廊下に出て、着替えて!」カァァ

    「ええー……」

    「――私、もっと二人と一緒に」キュッ

    二人「……え(ハイ)?」

    「でも、まずは着替えないとですよね」

    「また、後で……ふふふ」ガチャッ



    バタン・・・



    カレン「……」

    アリス「――カレン?」

    カレン「ア、アリス? ちょっと目が怖いデス……」

    アリス「シノと、何があったの?」ジーッ


    カレン「……朝、起きたら、デスネ」

    アリス「うん」

    カレン「シノが、私に抱きついてきたデス」

    アリス「うん……」

    アリス「え?」ピクッ

    カレン「何かうわ言のようなことを言いナガラ」

    カレン「私に頬を、すり寄せテ……そ、それ、デ」カァァ

    アリス「……」

    カレン「『金色』がどうとか、草木とか風だとか……アリス?」

    アリス「……」


    アリス(実は、昨日私がカレンと話して、さぁ寝ようと思った時)

    アリス(シノの所から何か聞こえた、気がしたんだ)

    アリス(……好き)

    アリス(そんな言葉だった、ような気がして……それで)


    カレン「あぁ、どうしまショウ……?」

    カレン(赤みがとれてくれマセン!)カァァ

    アリス「……カレン」

    カレン「アリス……」

    152 = 56 :

    カレン「シノは、どうしちゃったデスカ……?」

    アリス「――多分、なんだけど」

    カレン「ハイ」

    アリス「シノは、シノは……」


    アリス「私とカレンのことが好きになっちゃったんだと、思うの――」カァァ



    ――数分後


    「……」ガチャッ

    カレン「あ、シノ。お帰りデス」

    アリス「もう、シノってば……反省してる?」

    「――」


    「ご、ごめんなさい!」カァァ

    カレン「わっ、シノ!?」ビクッ

    アリス「……もう、寝ぼけた後はいつもこうなんだから」

    アリス(――でも)

    アリス(今日は、いつもよりずっと――)


    「……カレン」

    カレン「は、ハイ!」

    「私のこと――嫌いになっちゃいましたか?」ウルウル

    カレン「……ハイ?」


    アリス(破壊力が、ありすぎだよっ!)カァァ


    「私――昨日、気づいちゃったんです」

    カレン「そ、それは、どういう……?」

    アリス「――シノ」

    「……」


    「二人のことが、好き、だってことに」


    カレン「……」

    アリス「……」

    153 = 56 :

    カレン「――シノ」

    「は、はい!」

    カレン「――私たちも」

    アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

    「……」

    「二人ともっ!」ダキッ

    二人「わっ!?」


    「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

    カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

    アリス「――シノも温かいよ」

    「アリス、ありがとうございます……」

    「えへへ……」

    二人「……」



    アリス(うーん……)

    アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

    アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


    「アリスー……」

    アリス「きゃっ!」


    アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


    カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

    カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

    カレン(一体、どうしテ?)


    「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

    カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


    カレン(デモ)

    カレン(――今は、このままでも)ギュッ

    154 = 56 :

    カレン「――シノ」

    「は、はい!」

    カレン「――私たちも」

    アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

    「……」

    「二人ともっ!」ダキッ

    二人「わっ!?」


    「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

    カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

    アリス「――シノも温かいよ」

    「アリス、ありがとうございます……」

    「えへへ……」

    二人「……」



    アリス(うーん……)

    アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

    アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


    「アリスー……」

    アリス「きゃっ!」


    アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


    カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

    カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

    カレン(一体、どうしテ?)


    「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

    カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


    カレン(デモ)

    カレン(――今は、このままでも)ギュッ

    155 = 56 :

    >>153>>154 
    連投してしまいました。






    ――大宮家・廊下


    >シノモアリスモ、ダイスキデス!

    >チョッ、シノ! ソコハ・・・

    >モウ、カレンバッカリ! シノ、コッチモ・・・



    「……」

    「――まったく、もう」タメイキ

    (なんというか……来るべき時が来た、というか)

    (……シノは、ねぇ)


    「好きと『好き』……つまり」

    (それが恋愛感情なのか、純粋な好きという感覚なのか――それが、分かってないのよね……)

    156 = 56 :

    ここまでになります。

    次回からいつも通りになると書きましたが、実際には普段通りの日常が少し変わってしまいましたね……
    当初の予定から、かなり外れてしまいましたが、書いてみたくなったもので。
    果たして、受け入れられるのやら……

    今後、こうして恋愛色強めになる、ということはないですが
    シノの二人に対する想いははっきりさせておきたかったので、今回はこうした話になりました。
    楽しんでいただけれたら、幸いです。

    それでは。
    のんのんびよりが、今期の癒やし枠ですね……。

    158 :

    お主も難民の一人か•••乙

    159 :

    ――大宮勇が自分の部屋から出て目にした光景は、半ば予想していたとはいえ、なかなかにショッキングなものだった。


    「……お二人とも」

    「ずっと、一緒にいましょうね……」ギュッ

    アリス「も、勿論だよ、シノ!」コクコクッ

    カレン「……シノが、こんな近く二」アセアセ


    (……さて)

    (とても微笑ましい光景ではあるけど――考えていかないといけないわね)


    (今後、シノがどうやって過ごしていくか……ほんの少しでも)



    と、実姉がいもう……『弟』のためを思って考えていた頃。



    ――勇の部屋


    陽子「……」スースー

    「――ん」

    「朝……あれ、勇さんは?」

    「ま、いっか――」フニッ

    「……なに、今のは」


    陽子「――んん」ピクン


    「」

    「……」フニフニ

    陽子「ん――ぁ」ピクピク

    「――!」ハッ


    (落ち着きなさい、小路綾)

    (状況を冷静に確認するのよ……さて、私の布団に陽子が寝ている理由は――)

    (――冷静に考えられるわけ、ないじゃない!)カァァ


    (ってことは、さっきの感触は――!)

    (……凄く、柔らかかったわね)シミジミ

    (じゃ、なくて! ああ、もうっ……)ブンブン

    160 = 56 :

    陽子「……ん、綾?」

    「ひゃぁっ!?」ビクッ

    陽子「な、なんだよ――朝から」

    「あ、朝から、積極的なのはどっちよ!?」アセアセ

    陽子「……あ」

    陽子「悪い、寝ぼけて綾の布団に入り込んじゃってたんだな」

    「も、もうっ……!」プイッ


    陽子「ところで」

    「な、なに?」

    陽子「積極的って、どういう意味で?」

    「……」

    「――知らないわよ! 陽子のバカ!」カァァ

    陽子「え、ええ……?」


    (――良かった)

    (いや、私の今の体温からすれば、一概に良いとも言えないけど)

    (……どうやら、気付かれていないみたいね)


    陽子「あ、そういえばさ、綾?」

    「なに、陽子?」

    陽子「――何か、朝から違和感があって」

    「……どこに?」

    陽子「いや――何だか、胸の辺りg」

    「き、気のせいよ! そうに決まってるわ!」ズイッ

    陽子「そ、そっかぁ……?」

    陽子「いや――やっぱり、下着付けて寝るべきだったかなぁ、と」

    「……」


    (そうね、そうよね)

    (大きい人って、そうする傾向あるものね)

    (良かった、陽子は私がしたことに――)ペタペタ

    (……おかしい、なんで悲しくなってくるんだろう?)ウルッ


    陽子「ところで、綾?」

    「なに?」

    陽子「――イサ姉、どこ行ったんだろう?」

    「……さっき、考えてたわ」

    (陽子のせいで、完全に吹き飛んでしまっていたけど)

    161 = 56 :



    ――廊下


    陽子「とりあえず、廊下に出れば」

    「何かは見つかるでしょうね――って、陽子! ズボン!」

    陽子「なんだよ、ズボンって……あっ」

    陽子「……」ゴソゴソ

    陽子「――サンキュ」カァァ

    (あぁ、もう! どうしてそこで顔を赤らめるのよ!)

    (別に、「ズボンから下着がちょっとだけはみ出て、柄まで見えそうになってた」なんて言ってないのに!)カァァ

    陽子(……気をつけないと、なぁ)タメイキ



    ――忍の部屋前


    陽子「なんだかんだで、シノの部屋」

    「――シノ?」コンコン

    「はーい?」

    「……シノ、随分と大人びた声になったわね?」

    陽子「綾――ボケなのか? ボケなんだよな?」アキレ


    「はい、どうぞ。二人とも」

    「あ、ありがとうございま……す……」

    陽子「――綾? どうした……ん……だ」



    「――んー」

    「お二人とも、いい匂いです」スーッ

    アリス「だ、だから――シノ、恥ずかしいし」

    カレン「くすぐったいデス……」カァァ


    「もう」

    「――三人で、お風呂入れたら、ですね」

    アリス「な、何言ってるの!?」ハッ

    カレン「そ、それは無理デス! impossible!」ブンブン

    「……はぁ」

    「こういう時だけ、『身体』がちょっとだけ憎らしいです……」キュッ

    アリス(シノ――なんて表情を)

    カレン(……起きてから、体温がおかしいデス!)カァァ

    162 = 56 :

    「……ええと?」

    陽子「イサ姉――あれは?」

    「それが、ねぇ」

    「私が入ってきたことにも気付かないで、さっきからずーっとああしてるのよ」

    陽子「おお……もう」


    「――で、でも、それって」

    「なぁに、綾ちゃん?」

    「シ、シノが、その」

    「……二人のことを、『好き』になってしまった、とか?」

    「――多分、ね」


    陽子「シノ……」

    陽子(いつかこうなる時が来るとは思っていた……!)

    陽子(幸い、色恋沙汰でシノがおかしなことに巻き込まれたりはしなかったけど――まさか)


    「うーん……二人とも、微妙に髪質が違うんですねぇ……」ナデナデ

    アリス「だ、だから、くすぐったいよぉ……」カァァ

    カレン「――シ、シノ、そこ、はァ」ピクッ


    陽子(――英国少女が、その鍵を握っていたとは、なぁ)



    ――その後。

    状況が落ち着いた辺りで、シノのお母さんの振る舞った手料理をご馳走になり、お泊り会は解散の運びとなった。

    私と陽子の間で色々なことが――じゃなくて!
    シノとアリスとカレンという三人少女の関係が、大きく発展を遂げた、そんなお泊り会だった。

    ……その発展が、おかしな事態を招かなければいいのだけど。

    163 = 56 :

    「……えへへ」ニコニコ

    アリス「シノ、凄く嬉しそうだね……」

    「だって!」

    「私がいて、アリスがいて、カレンがいて――」

    「……考えるだけで、ドキドキしてしまうんです!」エヘヘ

    アリス「そ、そっか。良かったね」

    アリス(嬉しがってるシノを見るのは、凄く嬉しい……んだけど)


    「アリスはいつも会えますから、それはとても歓迎すべきことなのですが」

    「カレンも、いつでも会えたらいいですねぇ……」シミジミ


    アリス(――ちょっとだけ、複雑だよ、シノ)キュッ



    ――帰り道



    カレン「……」トコトコ

    カレン「――I miss you」ボソッ

    カレン「また、すぐに会えますよネ……シノ?」

    164 = 56 :

    お泊り会編、これにておしまい。

    シノが何かと暴走してばかりいたように思いますが……結局、シノとアリスとカレンの三人はどうなっていくのでしょうか?
    自分も今後、どう書いていけばいいのか、迷うばかりです。

    それでは。

    166 :

    おもしろいなあ

    167 :

    投下します。

    今回、全体が地の文なので、読みにくいかもしれません。ご容赦下さい。

    168 = 56 :

     大宮家での「お泊り会」が終わり、五人の少女はそれぞれの生活に戻っていった。

     帰途につく中で、小路綾は猪熊陽子に顔を赤らめることが多かった。
     恐らく、その日の朝の一件が尾を引いていたのだろう。
     そんな綾に、陽子は呆れながらも優しく接していたのはいつもの通り。

     九条カレンは、どこか足運びが覚束なかった。
     途中でピタッと止まったかと思うと、次の瞬間にはテクテクと歩き出し、また止まる。
     そして、止まるとすぐにカァッと顔を赤らめる。その繰り返し。
     彼女にとっても、大宮忍の部屋での出来事が影響していることは疑いない。

     そして――


    「……シノは、ずるいよ」
    「アリス? どうしたんですか?」


     客人が帰り、大宮家にもまた、いつもの風景が見られるようになった。
     忍は、居候の少女の言葉を聞き、キョトンとした表情を浮かべてみせる。
     見れば、アリスは忍のベッドで枕を抱え、そこに顔の一部をうずめていた。
     「なんて可愛らしい」と、忍は心の中で思う。

    「だって……だって」


     アリスは、何かを言おうと身体を振ってみせるが、何も言葉が見つからない。
     何かを訴えたい。けれど、その「何か」を、どう言葉に乗せるか。

    169 = 56 :

    「――いきなり、あんな」


     大胆なこと、と言い終わる前に、近くに体温を感じた。


    「落ち着いて下さい、アリス」
    「……シノのせいで、全く落ち着けないよ」


     今朝方と同じように抱きしめられ、アリスは顔を赤らめながら訴えた。
     そんな彼女を、忍は愛おしそうに撫でた。


    「私、アリスと会えて、本当に良かったです」
    「わ、私も、だけど……」


     アリスはふと、今朝の風景を思い返してしまった。
     あの時の、大宮勇の言葉。


     ――少し、考えないといけないわね――


     こう呟いた勇は、どこか困ったように、それでいてとても愛しそうだった。


    「――シノは」
    「はい?」
    「シノは……本当に」


     アリスはそこで、ギュッと抱きしめ返しながら、


    「女の子じゃ、ないんだよね……?」


     おかしなことを言ってしまった、と思う。
     今まで、何度も見てきたではないか。
     平坦な胸、そこへの詰め物、そしてそして――

     数え上げればキリがないそんな確かな根拠を
     しかしアリスはどこかで認めるのを拒んでしまっていたように思う。

     だって――
     今、自分を撫で回す手のひらは、こんなに綺麗で、男性特有の無骨さなど全くない。
     その端正さは、女性の自分から見ても嫉妬しまうほどに完成されている。

     それに、髪だってそうだ。
     忍はよく、自分の髪を撫でては称賛する。
     けれど、忍自身の髪も、女性が自信を無くしてしまうくらい整っていることも、アリスはよく知っていた。


     アリスは――おそらく、カレンも――恐れていた。

     大宮忍は、男性である。
     
     この確かな事実を認めることを、自分はどこかで拒んでいる。

    170 = 56 :

    「――アリスは、おかしな事を言いますね」


     忍は、アリスの発言を意に介した風もなく、一旦アリスから腕を離した。
     そして、アリスの前に周りこんで、座り込む。


    「そうですよ、確かに私は――」


     そこで、一旦区切り、


    「『ボク』は、男です」


     それはいつか、アリスの故郷で言った一人称。
     あの時、忍はハッとして口を塞いでしまった。
     けれど、今はもう――


    「……そうですね、たしかにアリスと会う時までは」


     忍は、どこか懐かしそうに、言葉を紡いでいく。
     その仕草もまた、どこまでも女性らしい。


    「こうして、自分のことで悩むことだって――あったかも、しれません」


     似合いませんよね、と忍はアリスに微笑んでみせた。


    「その度に、陽子ちゃんや綾ちゃんに心配してもらって」


     楽しそうに言葉を続ける忍の表情からは、いつかの憂いなど窺えなかった。


    「――アリスと、こうしてまた会えて」


     再び、忍は静かにアリスを抱き寄せる。


    「それだけで、なんて嬉しいか……」
    「……もう、シノってば」


     アリスは、顔を赤らめながら、笑った。
     何だか、迷っている自分が恥ずかしくなってしまう。


     ここにいる忍は、たしかに――



     ――ハロー!――

     ――コニーチハー!――


     心を触れ合わせた、大切な相手なのだから。

     性別がどちらであろうと、それはたしかに――



    「シノは、シノだもんね」


     それだけで、十分ではないか――

    171 = 56 :

    「――もう、二人ともお熱いんだから」

     廊下にて、私――大宮勇は呟く。
     扉を開けると、シノとアリスが抱き合っていた。
     まるで、世界に二人だけしかいないような、おとぎ話のごとき空間。
     声をかけようとしたけれど、つい扉を閉めてしまうほどには、触れてはいけないオーラが漂っていた。


    「はぁ……これからのことで、ちょっと話したかったんだけどなぁ」


     私は、溜息をつく。
     シノが、アリスやカレンちゃんとの親交を重ねることに、私は全く異存はない。
     というよりも、いも――『きょうだい』の幸せを祈ることは、当然だし。


    「けれど――」


     どう、伝えるべきなのだろう?
     それとも、私が心配しすぎなのだろうか。

     社会的に見たら、男性が女性二人と過度なスキンシップを重ねているようだし。
     いや、シノのことがより明るみに出ると……

     こんな、あの子たちの幸せな関係に、障害が現れたら――


    「……なんて、杞憂に終わるだろうけれど」


     こんな、愚にもつかない思考をグルグルとさせて、良いことなんてないだろう。
    「悩みの9割は、現実には起きない」と、偉い人も言ってたような気がするし。



    「――ま、いっか」


     いずれ、軽いノリで持ちかけてみよう。
     こんなに改まって、話しても、


    「なんといっても、楽しくない」


     それが、何よりも大切だろうし――

    172 = 56 :


     ――その夜。


    「ハァ……」


     リビングで、私は溜息をついてしまいマシタ。
     ケータイの画面を見ながら、私は今日のことを思い返しては、熱くなりマス。


    「――風邪、じゃないノニ」


     夏風邪はタチが悪いと聞きますが、それ以上に今の私はおかしい、ようナ……


    「カレン、どうしたんだい?」
    「あ……パパ」


     そんなことをしていると、後ろからパパに声をかけられマシタ。
     私はチラッとケータイを見て、


    「――私、なんだかおかしい気がシテ」
    「どうしたんだろう……もしかして、その携帯電話に、なにか?」


     さすが、パパ。私のちょっとした挙動に、敏感に反応しマシタ。


    「少し、見せてもらっても、いいかな?」
    「ハイ――」


     私は、ケータイをパパに渡しマス。
     さっきから見ていた画像は、そのままにシテ――


    「……これは、集合写真かな?」


     その通りデス。
     シノのお家で撮った、みんな揃っての集合写真。
     私やアリス、アヤヤといった面々は顔を赤らめているのが見て取れマス。


    「ほほう、仲良いことは良きこと、か、な――?」


     パパは、画面を食い入るように見つめマシタ。
     何かに、気付いたのでショウカ……?」


    「――失礼かもしれないんだが、カレン?」


     パパは、目をパチパチとさせナガラ――


    「……この子は、もしかして」


     気づいて、しまったようデス。
     いや――もしかしたら、どこかで私はそれを望んでいたのかもしれマセン。


    「まさか――」


     ああ、パパが……

     言って、しまいそうデス――
     

    「シノ――」


     私は、今ここにはいない「友人」の顔を思い出し、胸がキュッとなってしまったのデシタ。

    173 = 56 :

    ここまでです。

    たしか、カレンは自分のマンションを所有してそこに住んでいたような気がしますが、このSSでは同居している設定と
    思って下さい。それとも勘違いだったかな……。

    前回で「お泊り会」が事実上終わりましたが、今回はそのまとめとも言える回だったと思います。
    心情描写に文章を割きたかったのは、そのためです。

    さて、九条家に何やら動きがありそうですが……それはまた、次回以降に。


    それでは。
    読んでくださる人に、感謝です。

    174 :

    うおお…いいところで止まった…!
    更新乙ですーカレン可愛すぎてもう…続きも楽しみデス…

    175 :

    家族でマンションに住んでるんじゃないの?

    176 :

    まあ、カレンが独り暮らしとか考えられないし

    177 :

    投下します。ただ、今回もまた地の文で、かなり幕間的な要素が強いので、楽しんで頂けるかどうか――





     ――聞いたことが、ある。


     私は、「あの時」のことを思い返していた。
     あの日……カータレット氏はえらくご機嫌で、私はそんな彼女に尋ねた。


    「どうしたんだい、えらく機嫌がいいけれど」
    「えぇ、実はね……」


     聞けば、今日は日本からホームステイに来る子がいるそうな。
     なるほど、そういうイベントがあれば心も躍るわけだ。
     

    「へぇ、それはいいねぇ」
    「でしょう? けれど――」


     どうやら、娘――アリスちゃんは乗り気じゃないとか。
     私は頭のなかで、まだ小さな彼女の姿を思い浮かべた。
     ……たしかに、飼い犬に寄り添い、縮こまっている姿が絵になりそうだ。


    「まあ、アリスちゃんも変わると思うよ?」
    「まぁ、どうして」
    「だって――カータレットさんが呼ぶ人が、悪い人なわけがないからね」
    「もう……」


     少し照れた彼女を見て私は、よりその考えを強めたものだ。




     ――数日後



    「やぁ、カータレットさん」
    「……あ、こんにちは


     暇が出来たので、カータレット家を訪れた私に
     いつものようにカータレット夫人が挨拶をしてくれた。
     しかし、どこか様子がおかしい……ような。


    「何かあった?」
    「ええ――まぁ、ね」


     彼女は意味深な言葉を紡ぎ、ぼんやりと外を見つめた。


    「そういえば、ホームステイに来た子は?」
    「今は、アリスと街に出てるわ。帰りは遅くなりそうね……」


     遠い目をしたままの彼女を見て、一つの考えが浮かんだ。
     ――あまり、想像したくはないものではあったけれど。


    「もしかして……ホームステイに来た子が、問題を?」
    「――そういう、わけじゃ」


     そう言って、スッと目を伏せる彼女を見て、私は何かを感じ取った。
     ホームステイに来た子は、いわゆる問題児的な子じゃない。
     だと、したら……

    178 = 38 :

    トリップをちょっとまちがえてました。






    「その子が、なにか」
    「――そうね」

     すると、カータレット夫人は立ち上がり、やおら引き出しを開けたかと思うと
     何かを取り出し、テーブルに戻ってきた。
     見るに、写真だと推察する。

    「九条さんなら、いいわ」
    「……そう、言ってもらえるなら」

     見れば――予想通りと言うべきか――そこには、アリスともう一人が写っていた。
     顔立ちから見て、東洋人だろう。
     自らも日本人である私は、写真の中の人物を日本人と推測した。

    「ほぉ、可愛い子だね……少し経てば、正統派の大和撫子にでもなりそうだ」
    「ナデシコ……? どういう意味なのかはよくわからないけれど」

     コホンと一息つき、カータレット夫人は写真の中の日本人少女を指さす。

    「貴方は、この子をどう思う?」
    「さっき言った通り、大和撫子……つまり、日本的美人になりそうだ、と」
    「――そう、そうよね」

     そう、彼女は意味深な表情を浮かべてみせた。
     どういうことなのか、私にはなおも分からない。

    「……見ちゃった、の」
    「見ちゃった? 一体何を?」

     単刀直入な私の質問に、カータレット夫人は一度目を瞑り
     覚悟をしたかのように見開いて、言った。


    「間違いで、その子と脱衣所で遭遇しちゃって」
    「うん」
    「――その」


    「胸がね、全く平坦で……」




     ――九条さんは、帰っていった。
     とても複雑そうな難しい表情を浮かべながら。
     無理もない、と思う。
     私にとっても、また……

    179 = 38 :

    「――ママ?」


     ハッとする。
     見れば、そこにはアリスとシノがいた。
     二人ともキョトンとした表情で、私を見ている。


    「おかえりなさい、二人とも」


     笑顔を浮かべて、私は二人を頭を撫でる。
     そうされながら、笑顔を見せる二人は――


    「……さ、もうそろそろ夕食ね」


     とても、愛しい。
     それは、本当だ。
     アリスは言うに及ばず――もちろん。


    「シノ。イギリスの街は、どうだった?」
    「はい! 凄く楽しかったです」


     皆さん優しくて、後、アリスが色々と案内してくれて……あと、後は――!

     一生懸命に、とても楽しそうに話すシノ。
     その姿を見て、「愛しい」という感情を持たないわけがない。
     ……ただ。


    「そう、それは良かったわね」


     シノ。
     日本から来た、可愛いホームステイのお客さん。
     娘のアリスと仲良く、とても楽しそうにしてくれて――


    「いっぱい、イギリスを味わってね」


     そんな、シノは……


    「はい! ぜひとも!」


     ……「どっち」なんて。

     些細なことのように思える、けれど――


    (とりあえず、アリスには言わないでおきましょう……)

    180 = 38 :

    (とりあえず、カレンには教えないでおこう……)


     車を走らせながら、私は決めた。
     カレンはホームステイ先の子と会ったことはないはずだ。
     今は――「こういうこと」は言わないでおいたほうが良いだろう、と感じたのだ。


    (――アリスちゃん)


     写真のアリスちゃんは、どこか照れたような表情を浮かべていて――
     その対象が果たして、「同姓」か「異性」かで、意味合いも変わってくる、だろう。


    (いつか――)


     向き合う時が来るのかもしれない、と私は予感した。






     ――それから、少し経って。


    「お、おじさん!」

     我が家に、アリスちゃんがやって来た。
     真剣な表情で、私に近寄ってきたと思うと――


    「私に、日本語を教えて下さい!」


     これが、一つの転機。
     この時私は、「予感」が「確信」に変わったことを、実感した――

    181 = 38 :

    一旦、ここまでにします。
    前述したように「幕間」という感じの話なので、楽しんで頂けたかどうか……

    ここで書きたかったのは、アリスのお母さんは決してシノのことを色眼鏡で見たりはしなかった、ということ。
    そして、カレンのお父さんは、前々からこうなることを予感していたということ。
    以上、2点でした。

    こんなお話だったので、次回は早めに投下する予定です。
    それでは。

    183 :




    ――その日



    「あれ……?」キョトン

    アリス「どうしたの、シノ?」

    「ああ、アリス――今日も可愛いですねぇ」ダキッ

    アリス「も、もう、シノ!」

    アリス「だ、抱きつくのは後にして、質問に応えて!」アセアセ

    「うう……最近、アリスがつれません」

    アリス「……」


    アリス(そう何度も抱きつかれて)

    アリス(甘い声出されながら頭を撫でられるのなんて――)

    アリス(……中毒になっちゃったら、困るじゃない)カァァ

    (まぁ、このアリスの恥ずかしそうな表情だけで大満足ですけどねぇ……)エヘヘ


    「ええ、実は……」スッ

    アリス「――メール?」

    「はい」

    「えと……アリスの所にも来てないですか?」

    アリス「私――あっ」ポチポチ

    アリス「来てる、一通」

    「そうですか……それで、送り主は?」

    アリス「――カレン」

    「私も、です」


    アリス「でも、どうして突然?」

    「さぁ――それはよく、分かりませんが」

    「中身を見る限り、何かの遊びのお誘いみたいですね」

    アリス「あ、ホントだ――なになに」



    『山、行きマショウ! 海がダメなら、山デス!』



    アリス「……山、行きたいんだね、カレン」

    「まぁ――海となると、色々と残念ですからね」

    アリス「……」

    アリス(そっか、シノは――)

    アリス(そ、それに正直――私も、多分、アヤも)ペタペタ

    「……どうしたんです、アリス? ちょっと悲しそうです」

    アリス「――シノは、気にしなくていいんだもんね」ズーン

    184 = 56 :

    「――あぁ」

    「私は、アリスのような小さいのも好きですよ?」

    アリス「……!?」カァァ

    アリス「シ、シノは直接的すぎっ!」

    「うーん……本音なんですけどねぇ」

    アリス(も、もう……!)プイッ




    ――同時刻



    陽子「あ、メールだ」

    「私にも」

    陽子「……カレンから?」

    「――ええと」

    「『山へいきましょう』ってことで、いいのかしら?」

    陽子「そう、なるな」


    陽子「そういえば、夏休みに入る前」

    陽子「『海はヤダ!』って声が、かなり大きかったよな?」ジッ

    「……陽子、その視線はなに?」ジトッ

    陽子「気にするもんでもないのに、なぁ」

    「――陽子には、わからないわよ」プイッ

    陽子「そっかぁ?」

    陽子「私は、綾の胸、可愛いと思うけどなぁ……」

    「な、なな……!」カァァ

    「よ、陽子のエッチ! 変態!」プイッ

    陽子「うわぁ――ムキになっちゃったよ」

    (バカ、バカ……!)




    ――同時刻




    カレン「……それじゃ」

    カレン「パパ、お願いしマス」

    カレン父「うん、分かった」

    カレン父「山までの足は、任せてくれ」

    カレン「心強いデス……」

    185 = 56 :

    カレン父「それで、カレン?」

    カレン「ハ、ハイ?」

    カレン父「――『あの子』も、来るんだよね?」

    カレン「……Of Course」

    カレン父「うん、分かった」


    カレン「あ、あの……パパ?」

    カレン父「なに、心配することじゃないって」

    カレン父「……」

    カレン父(ただ、カレンが「その子」に対して)

    カレン父(何か、特別な感情をもってそうなことは否めない……)

    カレン父(――親として、私はどう思ってるんだろう?)




    そんなこんなで日は流れ。
    各人の予定のすり合わせが行われた結果――


    「その日」は、意外と早く訪れることとなった。




    ――待ち合わせ場所



    「おまたせしましたー!」

    アリス「お、おまたせー!」

    陽子「よっ、二人とも!」

    「もう、ちょっと遅れ、て――」

    「……シノ、あなたそのカッコは」

    陽子「――うひゃぁ」

    「そ、そんなに見られると照れちゃいます」テレテレ

    アリス「シノ……二人は、そういう目で見てるんじゃないと思うよ?」


    陽子「なぁ、綾? 今って夏だよな」

    「それは、夏よ。ただ――」

    陽子「……目の前にいるシノは、どこの季節に?」

    「それ以前に、ここは日本よね……?」


    「うう……陽子ちゃんと綾ちゃんがいじめますー」グスッ

    アリス「だ、大丈夫だよシノ! 私はシノの味方だからね!」

    「……アリス」

    「アリスは、似合ってると思いますか?」

    186 = 56 :

    アリス「……」

    アリス「に、似合ってるに決まってるよぉ」

    (ちょっと目を逸らしましたね……)ハァ


    「そういえば、今日の主催者は……」

    陽子「カレンか。そういえば、ちょっとおそ――」

    陽子「……」

    「どうしたの?」

    陽子「いや、あれ――」

    「……あっ!」


    カレン「みなサーン!」

    アリス「カ、カレン!?」ビクッ

    「す、凄く大きな車ですね……」

    カレン「パパが頑張ったデス!」

    「す、凄いわね……」

    陽子「なんというか――お嬢様だったんだなぁ」





     ――着いた。


     運転席から、私はカレンの友達を見下ろした。
     皆、歳相応に可愛らしい子たちだった。なにより、良い子そうだ。
     私は、胸を撫で下ろす。
     父親たるもの、娘が心配なのは古今東西変わらない。

     ……ただ。


    「わぁ、凄いです!」
    「シノー!」


     窓からカレンは、「その子」に向かって手を振った。
     なるほど、たしかに可愛らしい。
     イギリスに来た頃から数年経ち、より「女の子」らしさに磨きをかけている……。


    「……パパ?」


     ハッとした。
     見れば、カレンは少し不安げな表情を浮かべている。
     恐らく、私から「彼」への視線を感じ取ったのだろう。


    「大丈夫だよ、カレン」


     私は娘に微笑みながら、


    「――ちょっと、気になっただけだから」


     車を、停めた。

    187 = 56 :




    ――数分後


    陽子「いやー、改めて凄いなこの車……」ジーッ

    「陽子。あんまりジロジロしちゃ――」

    陽子「うわっ、こんなところに引き出しが!」パカッ

    「ああもう、言ったそばから!」


    アリス「ふふっ、陽子は元気だねぇ」

    「そうですねぇ……」

    カレン「……」

    「? カレン、どうかしましたか?」

    カレン「な、なんでもないデス」

    カレン「今日は、楽しみまショウ!」

    「はいっ!」


    アリス「……」

    アリス(そういえば)

    アリス(さっき車に乗る時、カレンのお父さん――)

    アリス(少し、複雑そうな表情をしてた、ような……)




    ――さらに数分後



    カレン「着いたデース!」

    陽子「おおっ、これは……!」

    「綺麗な所ねぇ」

    「ふふ、車じゃないと、こういった所までは来られませんからね」

    アリス「川、かぁ……」


    アリス(意外と、水着で泳いでも楽しそう……)

    アリス(――ダメダメ! 水着のことを考えただけで、悲しい気分になるのは)

    カレン「アリス、大丈夫デス!」

    アリス「カ、カレン!?」ビクッ

    カレン「――アリスのママが、『アレ』ナラ」

    カレン「娘のアリスにだって受け継がれるはずデス!」

    188 = 56 :

    アリス「……カレン、どういう意味かな?」ジトッ

    カレン「タダ」

    カレン「ちょっと時期は、もうオソ――」

    アリス「カレンッ!」プンスカ


    「ふふ、仲良しさんですねぇ……」

    (金髪少女と綺麗な川、という光景もいいですね――)エヘヘ

    カレン父「……」

    「あ、カレンのお父さん」

    カレン父「――今日は、楽しんでほしいな」

    「はい! ありがとうございます!」ニコッ

    カレン父「……」


    カレン「――」

    アリス「カレン?」

    カレン「――シノッ!」ダキッ

    「ひゃっ!?」

    カレン父「!」


    カレン「ふふ、シノー? 油断大敵、デス!」

    「ちょ、カ、カレン……くすぐったいですってばー」

    カレン「相変わらず、綺麗な肌デス……」ナデナデ

    カレン「嫉妬しマス」

    「カ、カレンだって、お人形さんのように綺麗じゃないですかー」

    カレン「……」

    カレン「も、もう、シノ!」カァァ



    アリス「……ああ」

    アリス(「お人形さんのように」って、その言葉は私に言ってくれてたのに……)

    アリス(カレンに取られちゃったよぉ……)

    アリス(――あれ?)

    カレン父「……」

    アリス「あ、あの……おじさん?」

    189 = 56 :

    カレン父「!?」ハッ

    カレン父「あ、ああ、ごめんアリスちゃん」

    アリス「どうしたの……あっ」

    アリス「シノが気になるの?」

    カレン父「……」

    カレン父「ま、まぁね」

    アリス「……?」




     ――少なからず、動揺した。

     カレンが、私の目の前で抱きついた時。
     私は、たしかに心が揺れるのを感じた。

     しかし――実際に間近で見れば見るほど信じられない。


    「もう、カレン……くすぐったいですよぉ」
    「ふふっ、シノは可愛いデス……」


     娘のスキンシップを受け、浮かべる表情といい仕草といい。
     完璧に、女性のそれではないか。


    「――カータレットさん」

     呟いたのは、彼女の名前。
     遠い異国の友人と、私は芯から心を通わせたように思う。
     自分の娘と「あの子」のふれあいを見れば、それは混乱するだろう――






    ――それから




    「ちょ、ちょっと陽子、危ないってば……」

    陽子「大丈夫だって――よっ、と!」

    陽子「ほら、綾もおいでよ」

    「こ、怖いわよ……」

    陽子「大丈夫だって」

    陽子「私がいるんだから、こんな石ころへっちゃらだよ」

    「……」


    (――私がいるんだから、か)

    (こんな岩場を、よくもまぁ)

    (こういうことを、無意識に言ってるんだから……)

    「何だろう、癪だわ」

    陽子「癪なのはいいけど、転ぶなよー?」

    「わ、分かってるわよ!」

    190 = 56 :

    「――きゃっ!?」

    陽子「よ、っと」

    陽子「大丈夫か?」

    「え、ええ――」

    「!」ハッ

    陽子「?」


    (よ、陽子の腕に抱えられてる……!?)

    (ち、近い! 陽子、近いってば!)

    陽子「なんだ、どうかしたか?」

    「バ、バカぁ……」

    陽子(いやー、今日の暑さは酷いんだなぁ……)

    陽子(なにせ、綾がこんなに顔を真っ赤にしてるし――)

    (陽子の、バカ……)モジモジ



    ――その一方


    アリス「待っててシノ! 今、自分で捕るから!」

    「ええっ、アリス!?」

    「あ、危ないですよ」

    アリス「いいの!」

    カレン「……釣れまくりデース!」

    アリス「――カレンに、負けたくないもん!」

    「ア、アリス! そ、そんな所まで!」

    カレン「あっ、シノ!?」





     ――二人の子が向こうに探検に出かけて。


     こちらには、私と娘、それからもう二人が残った。
     その場にいれば、なるほどこの三人はとても仲が良いんだな、と実感する。
     カレンも、良い友達を持ってくれた――。


    「アリス……そこは危ないですってば」
    「いいの、シノ! 止めないで!」


     ――昔からかもしれないけれど。
     アリスちゃんはカレンとの勝負事になると、ムキになりがちだ。
     そういう所は微笑ましい……いや、待った!


    「ふ、二人とも! さすがにそこは危ない――」


     ドボン!


    「――よ?」


     何とも、間の抜けた音がした。
     視界には、アリスちゃんしか入らない――ということは、だ。

    191 = 56 :

    「シ、シノー!?」


     カレンも、私と共に水に分け入った。
     アリスちゃんは慌てて、救出を試み始めていた。


     ――ザブン。


    「え、へへ……」


     私たちが辿り着くとほぼ同時に、「彼女」は浮かんできた。


    「ちょ、ちょっと無理しすぎちゃいました……」
    「も、もう、シノったら」


     そんな「彼女」を、アリスちゃんは抱き上げる。
     しかし、小柄な彼女の手には余るようで、すぐさまカレンが補助に回った。


    「カ、カレン。私一人で大丈夫だよぉ」
    「アリス。その台詞は、145センチほどになってから言うべきデス」
    「そ、そんなぁ!?」


     カレンのからかいに、アリスちゃんは涙目になってしまった。
     相変わらず、微笑ましい光景だ。
     ――しかし。


    「……これ、は」


     私は、瞠目してしまった。


    「――ちょっと、冷たいですね」
    「シ、シノッ! 早く向こう、に……」
    「アリス、どうした、デス……カ」


     娘たちも、ピタリと動きを止めてしまった。
     知らぬは当人ばかり。
     「彼女」は、キョトンとした表情を浮かべている。


     濡れた服から、彼女の「下」が透けてしまっていた。
     いくら西洋風に着飾ったとはいえ、夏ということもあり、生地は薄手だ。
     そのため、透けた部分がより一層目立ってしまっている。


     胸元から、薄い桃色の下着が浮き出ていた。
     身体のラインも明瞭に表れ、「女性」らしさが如実に出ている。
    下手をすれば、下半身まで見えてしまう。

     ――なるほど。
     透けたレベルでこれなのだから、脱衣所で遭遇したカータレットさんの驚愕ぶりが目に見えるようだ。


    「パ、パパは見ちゃダメデス!」
    「うわっ!?」


     いけない、ついついぼんやりとしていた。
     気づけば、顔を真っ赤にした娘が私の袖をギュッと掴んで、抗議していた。

    192 = 56 :

    「――エッチ、デス」


     カレンは、ジトッとした目で、私を捉えている。
     その仕草は、何とも女性らしく、密かに娘の成長具合に驚いてしまう。


    「そ、そういうつもりじゃ……」


     いや、そもそもカレン、「あの子」は私と同じ――
     なんて言葉がちょっとでもよぎったのが恥ずかしいほどだ。
     そんな差異は――


    「……ちょっと、濡れちゃいましたねぇ」


     あそこで、どこか色っぽさすら出ている「彼女」にとって、何の意味もないことだろう。


    「あ、ああ……」

     
     赤く染め上げ、茫然自失の体といったアリスちゃん。
     そんな彼女と、私の娘が立ち直るのには時間がかかりそうだ――


    「いや、私も、か」


     囚われてしまった、気がする。
     なるほど、これは――






     ――それから。


    「あ、ありがとうございます」
    「いや、いいんだ。風邪でもひいたらことだからね」


     私は「彼女」を連れて、車に戻っていた。
     カレンたちも付いてきたいと言っていたが、敢えて拒んだ。
     二人で待っていて、と言った時のカレンの淡い表情が印象深い。

     娘に、すまないと感じるのは親心だろうか。
     ……それでもやはり。


    「重く、ないですか?」
    「――いや、全く」


     少し、恥ずかしそうな口調で訊いてくる。
     きっと、背中では赤く切なそうな……「女の子」の顔が見られることだろう。
     そうした事もまた、私の認識を崩しそうで――


     だから――

    193 = 56 :

     私は、足を止めて、


    「『女の子』みたいに、軽いよ――」


     瞬間。
     時間が止まった、ように感じた。
     私の肩にかかった手がピクッと動き、止まる。
     少し重みが増したのは、緊張のせいだろうか。


     時間にすればわずか数秒だったろう。
     しかし私には、10分以上にも感じられるほどだった。


    「……気付いたんですか?」


     ポツリ、と。
     そんな消え入りそうな声で、後ろの「彼女」が言う。
     

    「いや――カータレットさんから聞いていたんだ」
    「アリスの……そう、だったんですか」


     言いながら、再び歩き始める。
     あまり止まってもいられない。風邪をひかれては困る。


    「――あ、あの」
    「ん?」


     消え入りそうな声は、先ほど私に感謝をしてくれた時とは別人のようで。
     チクリと胸が痛んだ。


    「……どう、ですか?」
    「どう、って?」
    「あ、あの、その――」


     モジモジとしている様子が、よく分かった。
     背中越しの会話をしながら、私の足は目的地へと向かう。


    「……だ、だから、その」
    「もし君が、『気持ち悪いですか?』というようなことを言うのなら」


     ハッとした様子が、背中から感じられる。
     私は言葉を紡ぐのを止めない。


    「それは、Noだ」
    「で、でも……カレン、と触れ合っていたのは、その」


     男なんですよ、と。
     「彼女」は、言った。

    194 = 56 :

     恐らく、今日のような特殊な状況が、彼女をしおらしくさせていたのだろうと思う。
    「父親」の目の前で、「娘」と――「男子」がスキンシップをとる。
     その光景を見て、何も感じなかったかといえば……


    「――そうだね、確かに複雑な気分にはなったよ」
    「……!」
    「でもね」


     私は、歩みを止めない。
     目的地は、すぐそこだった。


    「――そんな気分よりも、何よりも」


     
     そこで私は、「彼女」をゆっくりと降ろした。
     そして、しっかりと向き合う。

     「彼女」は顔を赤らめながら、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
     どこからどう見ても「少女」そのもので――


    「カレンが、あんなに嬉しそうだったから」
    「……!」
    「それでいいんじゃないかな、と」


     そうだ、それでいいのだ。
     なんとなく、私は納得していた。
     よくわからないモヤモヤとした感覚は、面と向かってこう言ったことで霧消したように思える。


    「――で、でも」
    「いいんだよ」


     それは確かに、親の目の前で娘と異性が抱き付き合っていれば、感じることがないわけではない。
     けれど、それ以上に――


    「……『二人』も、そう思っているんだろう?」
    「えっ!?」


     慌てて、「彼女」は振り向いた。
     物陰から、ガサガサと音がして、


    「……見つかっちゃいマシタ」
    「ご、ごめんなさい」


     可愛らしい金髪少女が現れた――

    195 = 56 :

     


    ――帰り道


    「……」スースー

    陽子「……」ムニャムニャ

    カレン「二人とも、よく寝てるデス」

    アリス「何だか、凄く満足そうだよね」

    「お二人とも、本当に仲良しですから」


    カレン父「……」

    カレン父「三人とも、ちょっといいかな?」

    カレン「?」

    アリス「は、はい」

    「な、なんでしょう、か?」

    カレン父「……」


    カレン父「――これからも、普通にしてて大丈夫だから」

    「……!」ハッ

    カレン父「さっき、私が『忍ちゃん』にした質問も」

    カレン父「全部、気にしないでいい」

    「――で、でもっ!」

    カレン父「……むしろ」

    カレン父「気にして、カレンとギクシャクすることの方がずっとイヤだから」

    カレン「……パパ」


    アリス「……」

    アリス(ママ――)

    アリス(ママも、気づいてたんだね……)

    アリス(それじゃあ……)


    アリス(私はシノと、『仲良く』してて、いいのかな――?)キュッ

    196 = 56 :



    ――大宮家


    「……ふぅ」

    「楽しかった、ですね――」ニコニコ

    アリス「う、うん」

    アリス「……」

    「? どうしました?」

    アリス「――シノ」

    アリス「……私たち」

    アリス「大丈夫、なのかな?」

    「……」

    「はい?」キョトン

    アリス「……」


    「――アリス」ダキッ

    アリス「わっ!?」

    「大丈夫ですよ」

    「こうして抱きしめているだけで、安心です」

    アリス「そ、それは!」

    「無敵です」フンス

    アリス「――もう、シノったら」

    アリス(ああ、なんだか)

    アリス(……シノが「無敵」なんて言うんなら、大丈夫かな、って思っちゃうよ)

    「……」


    ――九条家


    カレン「あ、あの……パパ?」

    カレン父「――カレン?」

    カレン「……こ、これから、モ」モジモジ

    カレン「仲良く、してて――?」

    カレン父「……」

    カレン父「カレン」

    カレン「ハ、ハイッ!」

    カレン父「……娘の幸せを願わない父親なんて、いないよ」

    カレン「……!」

    カレン「――パ、パパッ!」

    カレン父「よしよし……」


    カレン父(――しかし)

    カレン父(あれで、「男の子」)

    カレン父(……カータレットさん、世界は広いですね)トオイメ

    197 = 56 :

    ここまでになります。
    ……正直、ここまで長くなるとは全く思ってませんでした。
    いざ川遊び編を書いてみようと思い立ち、気づけばメモ帳に溢れかえらんばかりの文章が……
    こんなに長くして、読んでくださる人には感謝ばかりです。

    さて、こうして夏休み編は終わり――おっと、お祭りという大事なイベントが。
    次回がどうなるかは未定ですが、「お祭り」になるかもしれません。
    ……もしかしたら、二学期入ってしまうかもしれませんけれど(小声)

    それでは。
    こんなに長くても書いてしまうということで、改めてこのSSが好きだということを実感しました。

    200 :

    二人無敵♪乙


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