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元スレ姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
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姫「試練って言うから、凄く緊張したんだからね!」
勇者「姫は強いな……負けたよ」
ルビス「…」
ルビス(あのスライムについて、勇者様が話す気がないならば私は黙っていましょう)
勇者「ルビス、俺が話したい事はもうこれでいい」
ルビス「では本題に入らせて頂きます」
ルビス「先程お話した通り、あなた方2人は現在とても危険な状態なのです」
勇者「っ、何故だ? 『あのメガザルが最後』っていうのはてっきり魔力が不充分だからとかだろ」
ルビス「その通りですが、もっと深刻なのです」
ルビス「竜王がついに勇者様が姫様を助け出したのを知り、『光のオーブ』を『ブラックオーブ』に変えようとしているのです」
勇者「ブラックオーブ?」
ルビス「魔界の『暗黒神』達をこの世界に呼び込めるオーブ、今は魔王の素質を持つ竜王にだけ作れる物ですね」
勇者「……まさか『光のオーブ』が闇に染められたせいで?」
ルビス「はい、勇者様と私、そして『メガザル』の魔力で生命力を得ている姫様の全員にオーブの魔力が供給されなくなっているのです」
姫「全員? ルビスさんや勇者も魔力が無いと駄目なの?」
勇者「………俺と姫の場合はまだ『メガザル』を使用して7日すら経ってないからだ」
勇者「『メガザル』は発動者の命を代償にして人数を問わず発動者の望む人間を蘇らせる、けど……」
ルビス「勇者様は直前の戦闘で魔力を消耗していたのに続けて発動したので……」
ルビス「ただでさえオーブからの魔力供給が止まった中『勇者様の復活』と『姫様の蘇生』を同時にこなし、私を実体化させる魔力すら消耗してしまったのです」
姫「…え、じゃぁ……私達は7日経たないと蘇生と復活が完了しないの?」
ルビス「ええ、しかし後3日の猶予無く魔力が無くなります」
勇者「何か手はないのか、ここまで遠回しに言ったからにはあるんだろ?」
ルビス「……それが姫様にとっての試練なのです」
姫「?」
ルビス「方法は唯一つ、あなた方2人の全ての『思い出』を代償に魔力を生み出すしかないのですよ……」
姫「……2人の思い出を」
勇者「代償に……だと!?」
勇者「待てよッ!! 俺1人で充分だろ!? 姫まで記憶を失う必要は……」
ルビス「残念ですが、私はあなた方2人の記憶を魔力に代えても実体化は出来ず、勇者様と姫様2人しか救えないのです」
姫「ルビスさん…消えちゃうじゃない」
ルビス「えぇ、私は再びオーブに光が戻るまで眠りにつく事になります」
勇者「……他に方法は無いのか!? 記憶はどこまで消える!?」
ルビス「あなた方の場合は……互いの過ごして来た思い出を全て失うかもしれません」
ルビス「…それでも勇者様には『竜王は倒すべき存在』として記憶に残るので、世界は救えます」
勇者「………!!」
姫「……」
姫(……勇者との思い出が、三年分とかじゃなくて、全部…消える?………)
姫「……やだ、勇者との思い出を全部失うなんてやだよ」
勇者「俺もだ……っ!! 3日も猶予があるんならその間に竜王を倒せばいい!!」
ルビス「不可能です、魔力が尽き……果てには髪の色すら白になる程『現実』のあなたは衰弱しています」
勇者「2日寝れば、少しは……っ」
ルビス「それでも竜王に満身創痍のあなたは勝てるのですか?」
勇者「勝てる! 勝つしかないだろ!?」
ルビス「……勇者様は理解している筈、『勇者の儀』を済ませたあなたを一度殺した竜王の強さを」
勇者「………ッ!!」
ルビス「他に方法はありません、仮にどちらか一方が生き残っていても……八方塞がりです」
姫「勇者だけを生き返らせても?」
勇者「駄目だ!!」
姫「でも私だって勇者や世界のために……!」
ルビス「姫様、勇者様の言うとおりそれをすると勇者様は竜王と戦う事すら出来ませんので」
姫「そんな……」
ルビス(……本当に、特殊な性質の勇者ですからね)
――― 「……2人に少しだけ時間をあげます」
――― 「その間に覚悟が出来ましたら、私を呼んで下さい」
姫「…………」
勇者「………」
姫「……あはは」
勇者「……」
姫「勇者、なんか疲れちゃったよ」
勇者「……ああ」
姫「……おんぶ、じゃなくて良いから……」ポロポロ
姫「最後の思い出に……抱っことか、抱き締めてほしいな………」ポロポロ
勇者「……」ぎゅっ
姫「……っ」ポロポロ
姫「こんなに好きなのに……っ」ポロポロ
姫「こんなにっ…っ、近くにいるのにっ」ポロポロ
勇者「……」なでなで
姫「わ、わすれたくないよっ……やっと勇者の気持ちも理解できて、勇者にどれだけ助けられたのかも知れてっ」
姫「……っ、私の病気の原因もわかって悪い奴の企みもわかってこれから出来る事もわかって……!」
姫「やっと勇者に何が出来るかなって、考えられると思ったのに……!」ポロポロ
勇者「………」なでなで
勇者「……姫」
姫「……っ、…ひっく」ポロポロ
勇者「今から言う事は、絶対に『勇者の言葉』だと思ったらダメだ」
姫「……?」スッ
勇者「『勇者の家にある本棚の右から三番目の本の表紙を読む』」
姫「…なに、それ」
勇者「記憶しようとしたらダメ、俺の言葉だとも思うな」
勇者「……多分これが俺達の最後の賭けで、最後の『試練』なんだ……」
姫「…………わかった」
ルビス「……もう、本当に良いのですね?」
勇者「ああ」
姫「……」ぎゅ
ルビス「………」
ルビス「私はもうこれが人間と会える最後の時なのです、姫様にお聞きさせて下さい」
姫「…?」
ルビス「私が出て来たというおとぎ話……どんなお話でしたか?」
姫「もう長い間読んでないけど、確か……『囚われの身である精霊ルビスを、人間の男の子が助ける』お話だよ」
ルビス「……そうですか」
ルビス「作者は……覚えていますか」
姫「うーん、わかんないや……確か『アルス』とか『アベル』とか……そんな感じだったよ」
ルビス「…!」
勇者「……」
勇者「満足か、ルビス」
ルビス「………ぇぇ」くすっ
―――――― 君(あなた)はきっと、目を開けた時には俺(私)の事を忘れてしまう。
『俺は……悲しいとは思わないよ』
『私も……寂しいとも思わない』
『俺(私)は……怒ったりもしないよ』
『でも……君(あなた)は怒って良いよ、泣いても良い、寂しいって……俺(私)に寄り添って良いから』
『君(あなた)がいたから、今の私(俺)がいる』
『姫(勇者)、今までごめん……』
『もっとしたい事や、食べたい物、見たい物……』
『一緒に叶えられたら良かったよね』
『だから君(あなた)は覚えてなくても、俺(私)だけの約束だよ』
『……勇者(姫)の願いは全部叶えるし、病気やお化けからも俺(私)が守ってあげる』
『 私(俺)は、君(あなた)だけの勇者でいるよ 』
姫「…………」
「……」
姫「そこに、いるのは誰……?」
「……初めまして、姫様」
姫「……」
勇者「お見苦しい姿をお許し下さい、俺は勇者って言います」
姫「…その姿はどうしたのです、髪まで白く……」
勇者「竜王に捕まっていた姫様を助けるため、洞窟のドラゴンと戦った時に魔力を使い切ってしまったようです」
姫「……何故、私のために?」
勇者「あなたはラダトームの大切な王女だからです」
姫「……そうですか」
メイド「!! お帰りなさい勇者さん!」
勇者「…? 誰かは知らないがありがとう」スタッ
姫「これがキメラの翼ですか……凄いですね」
メイド「……え?」
メイド「勇者さん、その髪……ていうか今私を知らないみたいに……」
勇者「…?」
メイド「姫様も! なんで勇者さんともっとイチャイチャしてないんですか!」
姫「……だ、誰ですか?」
メイド「……は? 2人とも変ですよ!」
兵士「……お?」
兵士「勇者!? それに姫様!!」
兵長「おぉ! 姫様をついに助け出したのか勇者! 直ぐに伯爵の奴に姫様の事を伝えなきゃな!!」
兵士「俺は城中に言って来ます!!」
勇者「今夜はパーティーだなきっと」
メイド(……??)
姫「………」
姫(『伯爵』…)
姫(『パーティー』……)
姫(『伯爵』『パーティー』……?)
姫(あれ、私はどうして竜王に捕まったのだろう?)
姫(どうして竜王は私を妻にしようとしたんだっけ……?)
勇者「姫様」
姫「ひゃっ!?」びくっ
勇者「俺は今度の戦いでボロボロになった服を着替えに帰りますので、これで失礼します」
姫「えぇ、なんとお詫びをしたら良いか……」
勇者「礼なんて要りませんよ、勇者として当たり前の事をしたんだから」
メイド(……やっぱりおかしい? でも姫様はどこか…)
勇者「ではこれで……」スッ
姫「はい……」ぺこり
―――――― 【 行かせちゃダメ! 】 ――――――
姫「!」
ガシッ
勇者「!?」
勇者「……姫様?」
姫「ぇ? ぁ……そのっ」
姫「……」
姫「私も……勇者様のご自宅にまでご一緒して良いですか…」
勇者「あ、あぁ……構わないですよ」
姫(……)
メイド「……?」
アベルって事は、上の世界の勇者と下の世界の賢者が魔王を倒した話の作者さんか?
姫がDQ3の主人公デフォネームうろ覚えで出た名前なんじゃねーの?
勇者「かなり散らかってるけど、入って」
姫「ありがとう」スッ
姫「……本が沢山あるんですね」
勇者「まあね」
姫「………」そわそわ
勇者「どうかしました?」
姫「いえ、ぁ……何でもないです」
姫(……なんで、かな)
姫(……)キョロキョロ
勇者「? 今飲み物持ってくるよ」
姫「はい」
姫(………当たり前なのに、『初めて』勇者様の家に来た気がする)
姫(それに、何だか……『本』が気になってしょうがない感じがする)
姫「……でも、凄い量の本…」
姫「あっ」とんっ
バサッ
姫(どうしよう、勇者様の大切な資料だったら……もどさなきゃ)ガサガサ
姫「……?」
姫(なに? これ……)ガサッ
●ラダトーム王女、姫の体質
○男性恐怖症
○低血圧
○貧血?
○足に若干の障害有り(強く踏み込む事が出来ない)
○極度の不眠症(近くに人がいれば眠れるのを12歳の時に確認)
○今までの16年間で三度に渡って意識不明の昏睡状態になる(原因は不明・呪いの可能性有り)
○風邪を引くと咳が止まらない為、吐血する(キアリーで対処可能なのが幼少期に確認)
姫「……男性、恐怖症…?」
姫「不眠症……? 足に障害?」
姫(…………)
姫(え? ぇ……)
姫(なんで勇者様が私の体質を知ってるの、それに……)
姫「男性恐怖症の私が、どうして勇者様と普通に話せたの……?」
姫(……おかしい)
姫(絶対おかしい、私はあの宿でついさっき勇者様と会ったはずなのに!)
―――――― 【本棚の右から……番目の本を…………】
姫「っ! ひゃぁっ!?」びくっ
姫(……な、なに今の……勝手に私の口が……!!)
勇者「どうした、何かあったのか!」バッ
姫「い、いえっ……」
勇者「? あー……紙束落としちゃったのか」ガサガサ
勇者「怪我はないですか? 疲れてるなら少しそこで横になると良いですよ」
姫「ううん、平気」にこっ
勇者「良かった」にこっ
勇者「…」ハッ
姫「っ…」ハッ
勇者「……と、とりあえず飲み物を~」スタスタ
姫「わ、私もお言葉に甘えて休ませて貰います……///」カアア
姫「…………」
姫(…………)
姫(私、もしかして勇者様の何かを知っていて……向こうも知ってる?)
姫(今の自然な動作と会話、間違いないよね)
姫(うん? でもなんで覚えてな
―――――― 【本棚の……勇者の…………】
姫「……っ」バッ
姫(また? あれ……)
姫「………っ」ぱくぱく
姫(……唇の力を抜くと勝手に動いてる)
姫(………)
―――――― 【勇者の家にある本棚の右から三番目にある本の表紙を読む】
姫(!!)
姫「本棚って……これ?」ゴトッ
姫(なんで私が知ってるかはともかく……右から三番目? 何段目の?)
姫「……『錬金釜とは』…?」
姫「……」キョロキョロ
姫(…何を期待してるんだろ、私)
ゴトッ
姫「えっと……『悟りの書』?」
姫(……次、かな)
勇者「何してるんです?」
姫「ふぇっ!?」ビクゥッ
勇者「本を読みたいなら左から五番目がオススメですよ、描写が凄く細かいんです」
姫「へぇ……」
姫「……?」
姫「あの、『何段目の』ですか?」
―――― 『ああ! 上から二段目ですよ』
―――― 『俺の目線に合ってるんで、よく手に取る本は上から二段目に入れてるんですよ』
―――― 『ところで、何か食べます? パーティー前だからおやつ程度なら出すよ』
姫「……上から二段目の右から三番目……」
スッ・・・
姫「…………」
姫(……な、なんでドキドキするんだろ……凄く、何か変……)
姫(……)スッ
姫「………… 『 ぼうけんのしょ 』 ………?」
姫(元は日記帳かな、表紙の字は子供が書いたみたいな……)
パカッ
姫「って、あれ……中身は真っ白?」
―――― パラパラパラパラ・・・
姫「……何も書かれてない」パラパラ
姫「………」パラパラパラパラ
姫「………」パラパラパラパラパラパラ
姫「ぇ、・・・」パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
姫「何これ、ページがなくならない!?」
姫(……見た目はそこまで分厚くないのに、もしかして何か魔法でもかかってるのかな)
―――――― パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ・・・
姫「……」パラパラパラパラ
―――――― パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ・・・………ピタッ
姫「!」
姫「あ、あれ……なんで止まったの? ……ページがめくれない?」ググッ
姫(……よく見ると何か書いてある)
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