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元スレ姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
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バリバリィィッ!!
しにがみのきし「―――――― !?」ゴシャッ
< ズドォン!!
メイド「い、今のは……ギラ?」
メイド「!!」バッ
勇者「2人共怪我はないか!?」スタッ
―――――― 【 ・・・ヌゥ 】
―――――― 【 我が忠実なる魔導師よ、あの男を殺せ 】
大魔導「御意」
バチバチィィッ!!
大魔導「消えるがいい人間、『ベギラマ』!」
ゴバァアアアン!!
勇者「……邪魔だ」
大魔導「!? 何故だ、直撃した筈…」
勇者「ッ……!!」ドゴォッ
大魔導「ぐぁあああ!?」
―――――― 【 ・・・ 】
ダースドラゴン「グルル……(私が行きますか)」
―――――― 【 よい、ダースドラゴン・・・そなたは先に大魔導達と共に城へ戻れ 】
大魔導「ぅぐ……く、ルーラを唱えます!」
しにがみのきし「……シー」ボロボロ
勇者「……逃げる気か」
―――――― 【 我は逃げぬ 】
勇者「何者だ、何の目的で来た」
―――――― 【 クックック・・・我の目的は『コレ』よ 】
姫「……」ぐったり
勇者「!! 姫ッ!」
勇者は叫ぶ。
巨竜の手に捕まる姫に、呼び掛けた。
しかし返事はない、気を失っていたのだ。
―――――― 【 我の妻となる王女は頂いた、もはやこの城に用は無し・・・!! 】
勇者「……っ!?」
聞き捨てならない言葉を放つと同時に羽ばたく巨竜。
勇者は僅かにその迫力に気圧され、後退りさえしてしまう。
夜空の下で崩れるラダトーム城の上空。
巨竜は見下ろすように舞い上がり、王者の如き覇気で圧倒した。
―――――― 【 燃え盛る我が火炎にて、貴様達を葬ってやろう・・・喜ぶがいい 】
巨竜の喉が轟音を挙げ、凄まじい爆炎が漏れ出る。
その太陽にも似た光からはラダトーム城が業火に飲まれる事は誰にでも想像できた。
勇者「……!!」
勇者(絶対に……やらせない!!)
そう、勇者にも想像できた。
そして彼は・・・
――― ゴォオオッッ!! ―――
ラダトーム城全体に響き渡る衝撃波。
巨竜の真下にいた兵士達はその音に自身の命運が尽きた事を悟った。
メイド「……え」
兵長「あれは……!?」
しかし、この2人は確かに見た。
天高く君臨した巨竜、その凶悪なアギトから放たれた爆炎は夜空に散っていたのだ。
―――――― 【 何ィッ・・・!? 】
巨竜が初めて驚愕の音を上げる。
それもその筈、巨竜の視界はいつの間にか星空を見上げていたからだ。
後から瞬時に襲って来る顎の鈍痛、全身が麻痺する感覚。
勇者「……落ちろ、ドラゴン」
姫「…っ」
―――――― 【 貴様・・・一体・・・? 】
巨竜の手から解放された姫を勇者は抱き捕まえ、巨竜を見下ろしていた。
何故? と竜の王者は刹那に思う。
人間が飛べる高さでも無ければ、人間に巨竜を『殴り飛ばす』力がある筈もない。
直後に巨竜はラダトーム城の真横に音を立てて落下した。
夜空に君臨していた筈の姿は、今や粉塵に隠されてしまう。
勇者「やったか?」
姫を抱きかかえた勇者は風に乗ったように静かに着地した。
勇者「姫! しっかりしろ、もう大丈夫だ!」
姫「……んぅ」
勇者「姫!! 良かった……無事か」
何度か揺さぶり、目を覚まさなかったら……と勇者は心配したが姫は僅かに覚醒した。
少しだるさを残した表情で彼女は目を覚ます。
姫「……勇者? なんで私、確か舞踏会に……」
勇者「もう舞踏会なんて良い、本当に無事で良かった……」
安心し、勇者はそのまま姫を抱き締めようとする。
―――――― が
―――――― ドシュッ!!
勇者「……っ?」
何かが、勇者の胸から突き出た。
【 ・・・まさか我を地に墜とすとはな、貴様は我が直接葬ってやる 】
聞こえたのは憎悪に満ちたような、威厳を感じさせる覇気に溢れた声。
勇者の体を貫いていた杖を勢いよく引き抜いた。
勇者「がぁ……ぐあああ!!」
姫「勇者!? 血が……!!」
勇者が跪いたのと同時、次なる追撃が襲って来た。
―――――― バリィッ!!
勇者と不気味な闇に包まれた魔導師のような男の間で、閃光が衝突した。
威力は先の大魔導という魔物が放ったベギラマよりも上なのにも関わらず、結果は相殺だった。
【 そなた、本当に人間か……その傷で我と互角の呪文を操るとは 】
勇者「がはっ……ゲホッ、ぐはぁ……はぁ……っ」
姫「いや…っ! もうやめて、何でもするから勇者を傷つけないで下さい!!」
勇者「……下がってろ姫……す、直ぐに終わる」
多量の血が流れる勇者を見た姫が叫んだ。
しかし勇者は姫を下がらせる、彼は分かっていたのだ。
勇者(姫が目的、なら……コイツを倒さない限り……)
【 初めて我に一撃を入れた人間よ、褒めてやろう……そなたは我にとって初の強敵と言えた 】
【 だが甘い、いや、弱い・・・そなたの『ベギラマ』では我の『ギラ』が互角なのだからな 】
勇者が止まる。
今、この敵は何と言った?
【 クックック・・・今のは『ベギラマ』ではない、『ギラ』だ 】
勇者「なっ……!?」
【 そなたの持つ魔法はそれだけか、ならばそなたは我の『ベギラマ』にすら勝てぬ!! 】
天に突き出した魔導師のような男の手に、莫大な閃光が集まっていく。
勇者の表情が、体が、その強大な力の前に固まってしまう。
これが『王者の力』。
勇者はその言葉が脳内に響いてから、ある存在を意味する名前を思い出した。
勇者「 ………【 魔王 】……? 」
姫「勇者逃げてぇぇぇぇっ!!!」
初めて、彼が戦った敵の正体。
そして彼が刹那に見てしまった格の差、力量の差。
……姫の必死の声は勇者に届かなかった。
―――――― ッッ!!! ――――――
閃光が、勇者の姿を飲み込む。
メイド「……!? 今の音は何?」びくっ
兵長「城の上からだな……」
メイド(勇者さん、まだ戦ってるのかも!)バッ
兵長「よせメイド!! 危険だ!」
メイド「大丈夫ですよ、勇者さんならきっともうやっつけたに違いありません!」
メイド(勇者さんが戦ってるのは初めて見たけど、明らかに勇者さんの方が強かった!)
メイド(だからただの魔物なんかに勇者さんが負ける訳ないよね!)
< バサァッ!
メイド「!」ピタッ
メイド(さっきのドラゴンが飛んで行ってる……勇者さん勝ったんだ!)
メイド(怪我してないかな? 姫様も無事かな?)
メイド「急がなきゃ!」
メイド「…………」
勇者「…」
メイド「……えっ?」
メイド「……ゆ、勇者さん?」
勇者「…」
メイド「ちょ、やだ……姫様? どこにいるんですか?」
メイド「勇者さん…も、ふふ、ふざけ……ないで下さいよ……」
メイド「………ぇ…?」
―――――― 『ゆーしゃ! おんぶしてー』
―――――― 『えへへー♪ わたしだけのゆーしゃだからねっ』
―――― 『……なによ、泣いてないわよ』
―――― 『別に、ちょっと使用人の男の子と喧嘩したの……』
―――― 『わっ、わっ、なんでぎゅーするの!?』
―――― 『……ありがと、勇者』
―― 『勇者、一緒に遊ぼう?』
―― 『勇者、ここの問題難しいから教えて』
―― 『勇者、今日は一緒に居て』
姫「勇者、起きてよ! もう……私を待たせないでよねばかっ」
勇者「……は…ぃ………は……い…………っ」
メイド「!!」
メイド「勇者さん! 聞こえますか!? メイドです、私です! しっかり!!」
勇者「…………」
メイド「勇者さん? 寝ちゃダメです! 勇者さん!!」
メイド「誰か! 誰か来て!! 勇者さんの血が……」
―――――― 『勇者・・・』
勇者「……っ、『ベホマ』!!」
< シュゥゥ…
メイド「! 全身の傷が塞がっていく……こんな呪文、見たこと……」
勇者「……」スッ
勇者(……待たせないさ、直ぐに迎えに行くよ)
勇者(待ってろよ……姫)
大魔導「竜王様、ご無事でしたか」
死神の騎士「……シー」
竜王【 ・・・少々余興に手間取ったがな 】
竜王【 今宵は我が花嫁の歓迎して!! 宴を開くが良い! 】
大魔導「御意」
竜王【 ああ、大魔導よ……我の玉座の間には誰も近づけるな 】
大魔導「は? ……分かりました」
竜王【 気にするな、折角の花嫁だぞ 】
大魔導「……左様で御座いますか、良い夜を竜王様」
竜王【 奴隷の人間共を食い、存分に今宵を楽しめ 】
―――――― ギィ・・・バタンッ
竜王【 クックック・・・楽にして良いぞ王女よ 】
姫「……」ぶるぶる
竜王【 そう怯えるな、我はそなたを妻にしようというだけだぞ? 】
姫「……っ」ポロポロ
姫「アンタなんかの……妻になんて絶対ならないわよ」ポロポロ
竜王【 ・・・理解に苦しむ、何故涙を流すのだ 】
姫「……分からないわよっ、他人を平気で傷つけて、勇者を……っ」ポロポロ
姫「アンタは私を妻になんて出来ない、……アンタには優しさも愛もある筈ない!!」
竜王【 ・・・ 】
竜王【 クックック、そなたを我が花嫁に選んで正解だったらしい 】
姫「っ……?」 ビクッ
竜王【 そなたの涙、今の言動から察するに『勇者』という男を思っているのだろう 】
竜王【 そして怒りはその男を奪った我への憎しみ、つまり『勇者』とは先の戦いで葬った男か 】
竜王【 何よりそなたの今の言葉……そなたは『恋』をし『優しさ』を受け、『愛』しているのだな 】
姫「………」
竜王【 我がそなたを妻に選んだのは『それ』だ、聞かせて貰おう 】
竜王【 『愛』とは、『優しさ』とは何だ・・・? 】
大魔王バーン名言きたww
「これはメラゾーマではないメラだ」
色々と展開が楽しみだ
「これはメラゾーマではないメラだ」
色々と展開が楽しみだ
竜王【 ・・・大魔導よ 】
大魔導「はっ」
竜王【 我は4日程前までは人間共の優しさなど理解出来なかった 】
大魔導「魔族たる我々には不要の感情ですから」
竜王【 だが今の我ならば相応しき相手さえ揃えば恋すらするだろうな 】
大魔導「はっ、・・・はい?」
竜王【 クックック・・・この我が、たったの3日で人間の持つ感情を理解したのだ 】
竜王【 我はあのラダトーム王女を妻に選んで正解、否、もはや運命とすら言える 】
大魔導「……この3日、何を話されたのです」
竜王【 王女の半生……そして王女の目を通して我が垣間見た男の姿 】
竜王【 我は王女と話をしたのではない、聞いていたのだ、ただ静かにな 】
大魔導「…………竜王様、その男とは………」
竜王【 クックック、そなたに頼んだ調べ物もまた、我にとって正解らしい 】
大魔導「……『マネマネ』にラダトーム城に潜入させ、3日前に我々と戦った男を調べました」
竜王【 それで、結果はどうか 】
大魔導「…あの男は、生きていました……」
竜王【 ! 】
大魔導「更に素性を調べ行くと、あの男は『勇者』で、古来からラダトーム城に仕える一族だそうです」
大魔導「その一族の名は…」
竜王【 【ロト】の一族、そして奴が今の【ロトの勇者】か 】
大魔導「ご、ご存知でしたか」
竜王【 約数百年も前に、このアレフガルドを救った一族だ 】
大魔導「ではまさか彼の大魔王を討ち倒したのも?」
竜王【 ロトだ 】
竜王【 奴らは守る物がある事で力を増し、神すら越える力を持つ 】
竜王【 間違いなくこの世界で最強の『化け物』だ 】
竜王【 クックック・・・ 】
竜王【 クックッ、フハハハハハハ!! 】
竜王【 大魔導よ、ラダトーム王女をこの城から遠ざけよ! 】
大魔導「御意、しかし何故に?」
竜王【 姫はしきりに我に言っていたのだ、勇者ならばどんな所にいようと助けに来てくれたとな 】
竜王【 ならば、我は見たいのだ! 大魔王ゾーマの闇を切り裂いた一族の、『愛』を! 】
大魔導「では早速、私達四天王が姫を移動させましょう」
竜王【 うむ 】
大魔導「しかし、宜しいのですか?」
竜王【 何がだ 】
大魔導「ラダトーム王女の体は何故か急激に衰弱しつつありますので」
竜王【 ・・・構わぬ、もはや我にはあの王女が妻である理由も無いのでな 】
竜王【 ・・・ 】
―――――― キィィィン
竜王【(……美しい光を放つオーブだ、だが我が優しき心を手放せば直ぐに我を拒絶し、消え去るだろう)】
竜王【(この光のオーブを闇に染め上げるまでは手放す訳にはいかぬ)】
竜王【(必ずや我は大魔王ゾーマを越える力を持ち、この世界を手に入れてみせる……)】
竜王【(それまでは・・・!)】
勇者「……何の冗談だ」
メイド「あの、だから……」
勇者「王様が亡くなった上に、伯爵がラダトームの王? ふざけるな!!」
メイド「私……に言わないで下さい」ビクビク
勇者「……ごめん」
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