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元スレ姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
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伯爵王「やあ」
勇者「……」
伯爵王「明日、私の戴冠式をするんだが……君に何かスピーチを頼みたい」
勇者「…………貴様は外道の屑だ」
伯爵王「NOか、そうだろうと思った」
勇者「姫にまだ王位継承権がある!! 伯爵に王位を継承する資格はない筈だ!!」
伯爵王「ふふ、姫様は魔物に連れ去られ、殺されましたよ?」
勇者「デタラメだ!!」ドガッ
伯爵王「では証拠があるとでも? 王女様が、姫が生きているという証拠がね!」
伯爵王「答えは否ッ!! 皆無!! 何も無いだろう!?」
勇者「っ……」
伯爵王「ふふ、しかしそんなに君が意地になるならば私も悪魔じゃない……チャンスをあげよう」
勇者「なに……」
伯爵王「君が、姫を助け出して来れば良いよ……そうしたら彼女に王位は譲ろうじゃないか」
勇者「…………」
―――――― ピチョンッ
まほうつかい「ケケッ、食事だぞ人間」
< がたんっ
まほうつかい「……けっ、返事もしねーのかよ」
姫「………」
姫(……ご飯、食べないと)ズル
姫(………)ドサッ
姫「だるい……や」
姫「……っ」ググッ
姫(っ)ドサッ
姫(………動けないよ、勇者)
姫(竜王に私の話を聞かせたのはいいけど……)
姫(……こんな洞窟の牢屋に入れられるなんてね)
姫(………最悪、だなぁ……)
ウルッ
姫(…………寒いよ)
姫(……おなか、すいたよ………)
スライム「ぴきーっ!」タッタッ!
姫「……?」
スラ「ぴーっ、ぴーっ!」ズズ
姫「……食べろって?」
スラ「ぴー……」コクンコクン
姫「………スプーン、とって」
スラ「ぴきーっ!」カチャ
姫「……ありがと、助かったわスライム」
スラ「ぴきーっ! ぴっぴきー!」
姫「……ごめんね、勇者とは違って私には君の言葉が分からないの」
スラ「ぴーっ…」
姫「………」
姫「もしかして、この間……お城の台所に忍び込んだスライム?」
スラ「ぴきーっ♪」コクン
姫(……そっか、あの後勇者がこの子を逃がしたから……)
姫(………勇者)
ぴょこっ
スラ「ぴー?」
姫「…!」
姫「スライムなら、勇者を呼べる?」
悪魔の騎士「……グォ…ッ」ガシャッ
悪魔の騎士(ば、馬鹿な!! この俺が手も足も出ないとは……)
悪魔の騎士「貴様、人間ではないのか……」
勇者「……勇者だよ、ただのな……」
―――――― ザクッ
―――――― ギィンッッ!!
ゴールドマン「……オソロ、シイ・・・キサマ、ナニモノダ」
勇者「……姫はどこだ」
ゴールドマン「……コタエナイナラ?」
勇者「ここ一帯に住む魔物を全て殺す」
ゴールドマン「…………」
ゴールドマン「【メガンテ】」カッッ
勇者「!!」
大魔導「ご報告致します」
竜王【 聞かずとも我には分かる、勇者が本格的に動き出したか 】
大魔導「……」
竜王【 どうかしたのか、大魔導よ 】
大魔導「お言葉ですが竜王様、我々は早急に姫を殺すべきだったのでは?」
竜王【 何が言いたい、大魔導 】
大魔導「……勇者は姫を探す為にたった2日で50を越える魔物を虐殺しています、あの悪魔の騎士やゴールドマンの『メガンテ』すら凌いだそうです」
竜王【 ・・・ 】
竜王【 クックック、クク・・・ふはははははははは!! 】
竜王【 面白い……!! 奴はどうやら姫の命が風前の灯火にある状態なのが分かるらしい 】
竜王【 そして今、あの男は極限の力を持って姫を探している訳か!! 】
大魔導「……」
竜王【 大魔導!! そなたを含む四天王全員を姫のいる洞窟に集結させよ! 】
大魔導「!?」
竜王【 ロトの勇者が全力を出し切り、そして大切な者を守れずに殺される様を我に見せよ!! 】
―――――― ガシャァン! ドサッ
スラ「ぴきーっ!? ぴーっ!」
姫「……」
スラ「ぴきーっ! ぴきーっ!」
スルッ
姫「…」トクン…トクン…
スラ「ぴきーっ!?? ぴーっ! ぴーっ! ぴきーっ!!」
死神の騎士「……シー」ガシャッ
スラ「ぴきーっ!! ぴきーっ!!」
死神の騎士「……」
ひょいっ
ぽーん!
スラ「ぴぎ!?」ドサッ
死神の騎士「シー……」
スラ「ぴきーっ!! ピィィッキィィィィ!!」
死神の騎士「…」イラッ
死神の騎士「シッ……!」ドガッ
スラ「ぴぃっ!」ドサッ
死神の騎士「……」スタスタ
スラ「ぴぃっ……ぴぃっ!」タッタッ!
死神の騎士「!」
ドラゴン「……グルル(そのスライム、どうしたんだ)」
死神の騎士「シッ(さあな、姫に情が芽生えた馬鹿なスライムだ)」
ドラゴン「ガゥ?(丁度ヒマだし殺る?)」
死神の騎士「……シー(勝手にしろ、同胞を斬る剣は無い)」
ドラゴン「ガァアアアアアッ!!」ギュォッ
スラ「ぴっ?」
―――――― ゴシャァ!!
スラ「ぴぃっ……!!?」ドサッ
スラ「ぴっ……ぴきぃ……」ズルズル
ドラゴン「ガゥ♪(トドメ♪)」スッ
―――――― ガシィッ
ダースドラゴン「ゴガァアアアア!! (ドラゴン貴様、同胞に何をしている!!)」
キースドラゴン「ギャオオオ……(スライム如きをいたぶって楽しいか貴様)」
ドラゴン「ガルル……っ」
ダースドラゴン「ゴガァア!! (大魔導、来てくれ!!)」
大魔導「何事だ」ズウッ
ダースドラゴン「グルル(そこのスライムにホイミをかけてやってくれ)」
大魔導「………いないが?」
スラ「ぴぃっ……ぴっ……」ズルズル
スラ「ぴきー……」ガサッ
『偉いね……ありがとう、どこから持って来たの?』
『あのね、もし私に……余り、待つ時間が無い時この手紙を勇者に届けて欲しいの』
『なに? ……あはは、今のは私でも分かるよ……『どうして直接行かさないのか』でしょ』
『………信じてるから、勇者ならきっと助けに来てくれるって』
スラ「……ぴきぃ」ズクン
スラ「っ……」ドクドクッ
ドサッ
スラ「……ぴぃっ」ズルズル
―――――― ザァァ・・・
勇者(……姫が浚われて、一週間)
勇者(手掛かりは何も無い……『太陽の賢者』や『雨の賢者』達も竜王の城しか分からない)
勇者(・・・)
勇者(嫌な、雨だ……)
―――――― 降りしきる雨の中、一匹のスライムは長い距離を歩き続けた。
身に負った傷の深さを考えれば自殺行為。
それはわかっている、しかしスライムは止まれない。
幼き日の、とある少女と少年。
その2人にスライムはかつて命を救われたことがあった。
しかし成長した少女が覚えていないのは直ぐに分かった。
そしてそれにも理由があるのを知った。
少年がどれだけ成長したのかを知れた。
スライムは自身の体に限界が来るのを無視し、歩き続けた。
彼は、100年近く生きていた理由を知ったから。
小さな自分にできる事を彼は成し遂げる。
―――――― 『……だれか、いないのかな』
―――――― 『………真っ暗』
薄れ行く意識。
それは静かに、確かにぼくに近づいていた。
見栄を張って森の深い所になど入らなければ……
そうすれば、こんな事にはならなかったかもしれないのに。
―――――― 『スライムの癖に生意気なんだよ』
―――――― 『なんだ? やる気か』
―――――― 『ハハッ、そうだよなぁ! たかが100年くらい生きてたからって調子に乗るなよ?』
『お前はただ生きていただけだ』、そう言われたのが堪らなく悔しかった。
だから、少しでもぼくの勇気を見せたかったのに……
―――――― 『…………だれか……いないのかな………』
ぼくは崖から落ち、道に迷い、力尽きて動けずにいた。
なんてぼくは馬鹿なんだろう、そう思う度に涙しか出なかった。
そんな時だった。
誰もいない筈の闇に包まれた森の中で、1つの光が照らしていた。
――― 『ほらね! この子スライムでしょー』
――― 『危ないよ姫ちゃん、僕の後ろにいて!』
――― 『危なくなんかないよ? 怪我してるよ、ホイミしてあげてゆーしゃ!』
・・・小さな2人の子供。
真っ暗な森を照らしていたのは少し大きな男の子だった。
幼勇者『大丈夫? ホイミ』
男の子がぼくの傍に来て、呪文を唱えた。
驚いた、こんな小さな人間の子供が100年生きたぼくでも習得出来なかった呪文を使うなんて。
―――――― 『……あったかい』
……何より、淡い癒やしの光はとても温かかった。
こんなに温かい光があるのかと、ぼくは感動した。
幼姫『ゆーしゃ、やっぱり来て良かったでしょ?』
幼勇者『うーん……肝試しのおかげでスライムを助けられたし、良かったのかな』
幼姫『良いに決まってるよっ! ねー?』なでなで
スラ『ぴ、ぴきーっ♪』
―――――― ザァァ・・・
メイド「……勇者、このスライム………」
勇者「…………」
スラ「…」
ギュッ
勇者「……ありがとう、ここまで知らせに来てくれたのか……」
メイド「っ……酷い、どうしてこのスライム……」
勇者(・・・)
―――――― 『ゆーしゃ! 見て見て~!』
―――――― 『ぴきぃぃ!?』
―――――― 『……スライムが可哀想だよ?』
―――――― 『えへへ、私とスラリンはお友達だもんね~?』
―――――― 『……ぴっ?(お友達?)』
―――――― 『うん、君と姫ちゃんは友達だよ』
―――――― 『あー! またゆーしゃとスラリンだけお話してるー! 私も仲間に入れてぇっ』
―――――― < 『わぁっ、泣かないで……というか、スラリンってスライムの名前?』
―――――― < 『うん! 可愛いでしょ!』
―――――― 『ぴきー……』
―――――― 『ぴきーっ♪(久しぶり勇者っ♪)』
―――――― 『……スラリン、か』
―――――― 『ぴきっ?(どうしたの、元気ないよ?)』
―――――― 『あのさ……少し、姫と会えなくなりそうなんだ』
―――――― 『ぴきー! ぴっ?(なんで! どうして?)』
―――――― 『………凄く、姫の体調が悪いんだ……もしかしたら……』
―――――― 『…………ううん、なんでもない』
―――――― 『ぴきー…?』
勇者(……ごめんな、それと…本当にありがとうな……)
スラ「…」
勇者(あんなに、一緒に遊んでたのにな……この間来た時、遊べなくてごめん……)
勇者(俺のせいで……)ギュッ
スラ「…」
(……久しぶりに来たけど、姫ちゃんと勇者…元気かな)
(あ、あれっ? 抜け道がなくなってる……)
兵士「zZZ」
(……しずかにすれば、大丈夫大丈夫……)
兵士「むにゃ…」
(ひっ)びくっ
兵士「……zZZ」
(ホッ)
(……どこに姫ちゃん達いるかな)
メイド「~♪」すたすた
(あっ……)
メイド「……っえ、ぃ」
メイド「キャー! スライムが台所に……!」
「ぴきー!(見つかっちゃったー!)」
<「大丈夫? 私がついてるわっ」
(え……姫ちゃん?)
< 「こらこら、女の子脅かしちゃダメだろ」
勇者「……」すっ
「ぴっぴきぴー!(勇者! 姫ちゃん! ぼくだよ、スラリンだよ!)」
勇者「え…?」
勇者「……だめ、姫は怖がりだから」
姫「余計なこと言ってないで追い出してよ!」
(……えっ?)
勇者「(まずいな…)はいはい」がしっ
「ぴきー……(姫ちゃん、ぼくを覚えてないの……)」
勇者「……悪いなスラリン、久しぶりの再会なのに」
「勇者、姫ちゃんはどうしたの? ぼくを忘れてしまったの?」
勇者「ああ……スラリンと最後に会ったあの日、姫はそれまでの記憶を失ったんだ」
「え……じゃあ、それじゃ……」
勇者「ごめんなスラリン、もう姫はお前とは遊べないんだ……俺もな」
「……そんな、何があったの……」
勇者「………言えない」
「…!」
―――――― ザァァ・・・
勇者「……あの時、お前…凄い寂しそうな目をしてたよな」
スラ「…」
勇者「姫を守れなかったせいで、寂しい思いさせたよな……スラリン……!」
メイド「……」ポロポロ
勇者「………疲れたよな、痛かったよな…今ホイミするから……」
メイド「勇者さん……もうその子…っ」ポロポロ
勇者「このままじゃ可哀想だろ……?」
勇者「……ホイミ……」ポウ
スラ「……」
勇者(………必ず)
スラ「…」
勇者(必ず、姫を助けるよ……)
勇者(きっと守る)
勇者(だから、応援してくれ……)
勇者「……必ず、約束するよ」
スラ「ぴきーっ♪」
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