私的良スレ書庫
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元スレ吹寄「上条。その……吸って、くれない?」
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本人が投稿してますよ。そういやこっちで言ってないのはアンフェアでしたね。
このSSは加筆修正を行ったうえでArcadiaに再掲載しています。
かけもち連載中の『ボーイ・ミーツ・トンデモ発射場ガール』と同じスタイルです。
このSSは加筆修正を行ったうえでArcadiaに再掲載しています。
かけもち連載中の『ボーイ・ミーツ・トンデモ発射場ガール』と同じスタイルです。
ちょっと大き目の総合病院の婦人科。
その待合室で、上条と吹寄は軽く手を繋いでソファに座る。
周りのほとんどは、当然のことながら20代や30代と思わしき女性で埋め尽くされている。
付き添いの男性の姿もちらほら見かけるが、上条と違いきちんと収入を得て、家庭を築く能力のある人に見えた。
吹寄が、付き添ってくれと上条にお願いするくらい不安を抱えているのに、
こんな素っ気無い触れ合い方しか出来ない理由は、簡単だった。
だって心底不安そうに上条の腕なんて抱えていたら、誰がどう見ても若気の至りで大変なことになっちゃったカップルだからだ。
そうではないのだ。確かに自分は母乳が出てしまうというおかしな状態にあるが、別に妊娠はしていない。
そもそも数日前にアレは終わったばかりだ。
まさかそこから古代中東のとあるご婦人のように、男性と逢坂の関を越えずに懐胎するわけはないだろう。
さすがに自分は聖母なんていうしち面倒くさい運命は背負っていないと吹寄は信じている。
「け、結構待たされるな」
「そうね……。よく混んでいるもの」
なんとかクラブと名前のついた育児や出産にかかわる雑誌をめくる女性が多い中、
ひたすら上条は居心地の悪さを感じていた。
女性から向けられる視線は、たぶん上条と吹寄どちらにも同等の非難が込められているように思う。
責任も取れないのに早まった男と、それに流された尻の軽い女、そういう非難だろう。
一方、数少ない男性からは、はっきりと上条は怒りのようなものをぶつけられているように思った。
責任も取れないくせにやってはいけないことをした男、そういう非難らしい。
……まあ、もし上条が吹寄を妊娠させたのなら、周囲の視線の非難はごもっともだと思う。
問題は上条はこれっぽっちもそんなことはしていないことなのだが。
ついでに言うと、たしか自分の両親は上条の歳にプラス5くらいの年齢で上条を授かっているので、
ちょっとくらい若くても、本人達が望んでいるならそれで良いのではないかと上条は思っていた。
「吹寄制理さん」
「っ! は、はい!」
「先生がこちらでお待ちです」
ナースが吹寄の名を呼ぶと、緊張を隠せない様子で吹寄が立ち上がった。
鞄を上条に預け、そっと目線を重ねあわす。
「ここで待ってるから」
「……うん。ありがと、上条」
緊張を緩ませてやれたのだろうか、すこしだけ吹寄の目じりが柔らかい曲線を描くようになった気がした。
吹寄は踵を返し、診察室のほうへと消えて行った。パタリと、扉が閉められる。
――さて、ここからだむしろ我慢のときだった。
何せ、上条は制服を着ている。場違いなことこの上ない。
せめて私服を着てくれば、童顔であることくらいは目を瞑ってもうちょっと大人に見てもらえたかもしれないのに。
暇を潰せるような何かでもあればよかったのだが、なんとかクラブとかいう育児雑誌も、なんとかページとかいう料理雑誌も、なんとかセブンとかいう女性誌も、正直どれにも上条は手を伸ばせない。
もうちょっと男性に優しい空間にする配慮はないのだろうか。
男性誌なり漫画の一冊でもあれば、もっと周囲の視線を無視する方法もあったのに。
上条は、チクチクとした非難の視線を実情の10倍くらいに増幅させて感じながら、部屋の隅で縮こまる。
あと、何分で吹寄は出てくるだろうか。
すぐ終わる手術だから、みたいな事を言われて30分とか1時間とか掛かったら、自分は息苦しさで窒息しかねなかった。
すがる思いで、吹寄が入って行った扉を眺める。勿論すぐに吹寄が出てくるわけなんて無いのに。
だが、思いが届いたみたいに、不意に上条の視線の先でその扉がガチャリと音を立てた。
出てきた女の人が、中へと頭を下げて挨拶している。
「先生、どうもありがとうございました。失礼します」
――ざわ、ざわ。
上条は、自分達よりその女性のほうがはるかに周囲の視線を集めていることに気付いた。
そりゃあ、無理も無いだろう。吹寄が婦人科にいるより、不自然だ。
身体的特徴はさておいて、どうしてあの人はあの可愛らしい色使いのワンピースを着ているのだろうか。
……あの歳で。
ついでに言うと恐らく事実を知らない周囲の人々は、十代前半、それも小学生くらいの女の子が、
一人で婦人科に診察に来ているものと勘違いしていることだろう。
上条が周囲と違う理由は簡単だ。
何せ、その身長135センチの極めて童顔の女性は、上条のクラスの担任、月詠小萌なのだから。
「――!! やっべ!」
不味い、コレは不味い。
こんなところで担任に見つかるとか、どんな罰ゲームだよって言いたくなるくらい不味い。
やましい事があるかどうかではないのだ。
普通の男子高校生として、婦人科の待合室にいるところを見られるなんて、恥辱以外の何者でもなかった。
身を隠すところはないかと振り返る。
だが、当たり前だが病院の待合室にそうそう気の利いた死角があるはずも無い。
そして小萌は良い先生だった。視界の中に知っている学生がいれば、ちゃんと気付いて見守って挙げられるような。
……そういう教師の美徳が、今はとにかく邪魔に感じる上条だった。
慌てて鞄からテキトーに本を取り出して広げて、思いっきり下を向く。
腰をずり下げて座高を低くし、ちょっとでも視界に入りにくいようにと涙ぐましい努力をする。
あとは、見つからないようにと願うことしか出来なかった。
「それでは、診察料がこちらになります」
「はい、ありがとうございますです」
上条からは離れた受付で、小萌先生が支払いを済ませる声がする。
出口は受付の真横だ。このまま、何事もなく過ぎてくれそうだ。
ほっと、肩の力を緩めるように、息をする。
まさか、それが仇となったわけではあるまいが。
「で、上条ちゃん? どうしてここにいるですか?」
ビクゥ! と上条は飛び上がりそうになった。
慌てて確認すると、小萌先生は上条の目の前にいた。
にっこりと微笑むその後ろに、何割かの怒りと、そして心配を覗かせていた。
>>110
バファリンか
バファリンか
上条さん何も悪くないのになw
まあそれが上条さんが上条さんたる所以だけどな
まあそれが上条さんが上条さんたる所以だけどな
>>113
バカにはわかんないままでいいよ
バカにはわかんないままでいいよ
「え、えーと先生。落ち着いて聞いてくれますか」
「落ち着いて聞けるような状況ですか!? 上条ちゃん、その鞄うちの学校のですよね?」
微笑んだのは最初の一声の前だけだった。
小萌先生は瞬時に激昂して上条が抱えた鞄に目をやる。吹寄のと、二つ。
要するにここで上条が、同じ高校の女の子の診察に付き添っていることがバレバレだった。
「ま、まあ見てのとおりです。てか先生! その、先生も体の都合がアレなんですか」
「も? つまり上条ちゃんが付き添っている女の子は……そういうことになってるんですか?」
「そういうことって、いやあの」
「上条ちゃん。小萌先生は、学生さんがそうやって隠し立てをした事にも出会ったことがあるです。
だから、分かるなんて言ったら怒るかもですけど、上条ちゃんの気持ちも、
相手の女の子の気持ちも、たぶん分かるです。
親御さんに話すのは、きっと先生に話すよりもっと辛いでしょう?
絶対に笑ったりしないし、絶対に裏切ったりなんてしないから、全部、先生に話してくれませんか?
……こういうことで、彼氏も彼女も不幸になる姿を、先生は絶対に絶対に、見たくないです。
だから上条ちゃん。真剣に先生に向き合ってください。
お付き合いしてる女の子を、幸せにしてあげたいですよね?」
怒ってると思ったら、あっという間に小萌先生は泣き顔になって、上条に自首を勧めだした。
そんな若気の至りをやらかしていない潔白な身としては対応に困る言い草だった。
ちょっと回りを見回すと、周囲の女性が一斉に上条から視線を外した。
「え、えっと。先生」
「なんですか、上条ちゃん」
「別に、そういう話でここにいるんじゃなくてですね」
「じゃあその手に持ってる本はなんですか!」
「え?」
上条が手にしているのは、さっき小萌先生から顔を隠すのに慌てて鞄から取り出したノートかテキストだ。
ろくに確認もしていなかったので、今になってようやく目を落とす。
開かれたページには、いやらしさを感じさせないタッチの女の子の裸と、子宮だとかそういう体の描写と、
十月十日とかおしべめしべとかそういう感じのことが書かれていた。保健体育の教科書だった。
健全な男子としてこんな教科書を上条は絶対に鞄に入れて持ち運びなどしない。
まず間違いなく、きっと真面目な吹寄が鞄に入れていたものだった。
――――というか、状況証拠としてこの上なく怪しい書物のヤバげなページを上条は開いていた。
「ちちちち違います! これは上条さんが先生から顔を隠すためにですね」
「上条ちゃん」
慌てて誤魔化そうとした上条に、ぽつんと小萌先生が一言こぼす。
目じりには、もう涙がじわっと来ていた。
諭すように、怒るように小萌先生は上条を睨みつける。
「駄目です。上条ちゃんが、そうやって嘘をついて相談できる人を減らしたら、
一番苦しむのは上条ちゃんの彼女さんなのですよ。
誰にも話せない苦しみなんて、きっと男の人には想像も出来ないことです。
先生は、上条ちゃんが女の子を苦しませて平気な子だとは思いません。
上条ちゃんだってきっと、現実を受け止めるのは苦しいことでしょうけど、
上条ちゃんの彼女と、お腹にいる新しい命のために、上条ちゃんは大人にならなきゃいけないです」
「先生……」
まくし立てられて、上条は弁解のタイミングを失った。
その隙を突くように、小萌先生が上条を、慈しむように抱きしめる。
「先生の前でなら、どんなに弱音を吐いても良いし、心の弱い部分を見せても良いです。
そんなことで、先生は上条ちゃんを見限ったりなんてしません。
だから、彼女さんの前では、上条ちゃんは強くいてあげてください。
ほら、妊娠確認の尿検査に、たぶんもう少ししたら診察室から出てくるです。
それまでにしゃんとしてください」
「いやだから先生」
「っ!」
言い募ろうとすると、さらに上条は強く抱きしめられた。
どうも、理由を説明しようとすると上条が言い訳をしているように思われるらしい。
そしてそれほどに上条が追い詰められているのかと思い込んで、せめて心を癒せるようにと、
精一杯心を込めて、上条を抱きしめてくれているらしかった。
……上条が顔を上げるたびにすっと外される視線が、ひたすら痛い。
学生のうちに相手を妊娠させた高校生と思わしき少年が、身長135センチのお子様に抱きしめられているのだ。
これを見たらもう犯罪というか、一体どういう状況なんだと問わずにはいられない状態に違いなかった。
上条は誤解を解こうと思うのだが、どうも、小萌先生は聞く耳持っちゃいなかった。
吹寄が帰ってきて、誤解を解いてくれるのを待つほうがいいだろうか。
「先生」
「なんですか、上条ちゃん?」
「先生は、何で病院に?」
「……ただの生理不順です。先生にはお相手はいませんから、そういうことではないのですよ」
何気なく聞いて、何気なく答えられてから上条は不味いと思った。
女の人に婦人科に来た理由を問うなんて、失礼もいいところだった。
「上条ちゃん、落ち着きましたか?」
「はあ、先生こそ、落ち着きました?」
「ふぇ?」
上条の胸、もといおなかから埋めた顔を上向かせて、小萌先生が首をかしげた。
「ちゃんと俺の話し、聞いてくれますか、先生」
「勿論です! 先生はさっきからずっと上条ちゃんの言葉を待ってるです!」
「いや、そうじゃなくて」
まるで聞いちゃいなかった。
「いいです先生。とりあえず診察室からアイツが戻ってきたら、話するってことで」
「わかりました。ちゃんと、話してくださいね」
「ええ、全部話します」
小萌先生はちょっと怒った感じで、とすんと乱暴に上条の隣に腰を下ろした。
そして上条の隣でキッと顔を上げ、周りの視線から上条を間持つように、周囲を見渡した。
そういう気遣いという意味では、小萌先生はとてもいい先生なのだった。
二人で座っていると、ほどなくて診察室の扉が開き、吹寄が出てきた。
ありがとうございましたとお礼を言い、丁寧に頭を下げて踵を返す。
そして、さっきよりもいくらか晴れやかになった顔で、こちらに戻ってきた。
……はずだったのだが、こちらの様子に気付いた瞬間、困った顔に変わっていた。
「吹寄ちゃん、だったですか」
「え? 先生?」
「上条ちゃんの、赤ちゃんを授かったのは」
「――へ?」
口を手で覆ってもう今にも泣きそうな小萌先生を前に、吹寄は混乱するしかなかった。
カエル先生そんな事言ってたのかよ……。
ナース服が好きとは言ってたけど
ナース服が好きとは言ってたけど
つまり、上条さんや一方通行はカエル顔の医者に診察されている時にセクハラされているわけですね!
冥〇帰し「ここが重傷だね?」
一〇通行「やめ……ろォ……」
こんな感じか?
一〇通行「やめ……ろォ……」
こんな感じか?
これで「上条ちゃんの赤ちゃんは私が欲しかったのに」とか言ったりしたら周囲の視線がどうなることやら
上条さんが吹寄と姫神と雲川先輩を同時に妊娠させて4人で産婦人科に行っているところを発見されろ
あれ?言葉みたいな顔になった五和さんに刺されるシーンがイメージできたぞ・・・・
吹寄逃げてぇぇぇぇぇぇ
吹寄逃げてぇぇぇぇぇぇ
「あの……先生、何を」
「吹寄ちゃん、その、今から検査ですか?」
「いえ、もう診察は終わりです。というか先生、勘違いを」
「それって……! じゃあ吹寄ちゃん、赤ちゃんを授かってはいなかったですか?」
「え、ええ。それはまあ」
上条を含め吹寄は男性とそういう仲になった覚えは無い。
だから当然そう返事をするわけだが、どうも小萌先生は違う受け取り方を下らしい。
はぁぁぁぁ、と安堵のため息を深くついて、それからキッと二人を睨みつけた。
「とりあえず、吹寄ちゃん。大変なことになっていないのは良かったです。
でも、二人にはちゃんと、先生として言っておかなければいけないことがあります。
ちょっとこっちに来るです!」
小萌先生はそう言ってバッグを持って婦人科を出て行った。
「……どうする?」
「どうするって、先生が来なさいって言っているんだから行くしかないでしょ」
「仕方ないか。それで吹寄、体、大丈夫だったのか?」
そう上条が尋ねると、吹寄は少し嬉しそうな顔をして微笑んだ。
「うん。飲んだ薬の組み合わせが悪かったんだって。前例があるみたいで、すぐわかったのよ。
一週間くらいは続いちゃうから面倒なんだけど、体とかに別条は無いって」
「そっか、良かったな、吹寄。病気だったらやっぱり辛いもんな」
「そうね。……ありがと、上条」
「お、おう」
ふわりと笑った吹寄の笑顔が、いつになく険が取れていて可愛らしかった。
ドギマギしてちゃんと返事を返せなかった自分が恥ずかしくなった。
「上条、責任とるって言ったこと、後悔してない?」
「突然なんだよ」
「もし、病気だったら、責任取らないでいいって言うつもりだったのよ。
だってそんな風に付き合うって言ってくれた人に、病気持ちの自分を押し付けるのは嫌だから。
でも、そう言うのじゃないなら責任取ってって、言ってもいいのかなって」
「責任とか、そういう言葉はもういいだろ」
「え?」
「好きでお前の隣にいるんだから、そういう言葉使うなよってことだ」
それだけ言って、上条がぷいとそっぽをむいた。
なんだか、その照れた態度が嬉しくなる。
見守ってくれる人だとか、見守ってあげる人だとかになりがちな年の差カップルじゃなくて、
上条とは対等な感じがする。そういう、等身大の上条が傍にいてくれるのが嬉しかった。
「ほら、小萌先生待たすとまた怒られるし、さっさと行こうぜ」
「うん」
上条が出した手に、吹寄は軽く自分の手を絡めた。
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