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元スレ吹寄「上条。その……吸って、くれない?」
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>別におまいらエロはいくらあってもおkだよね。
見くびるなよ。おk、なんじゃない。大歓迎なんだ。
見くびるなよ。おk、なんじゃない。大歓迎なんだ。
「上条君。どうして。こんなところに?」
他意のない目で、姫神が上条を見つめた。僅かに首をかしげたせいで、そのサラリとした髪が肩から流れ落ちる。
マズい、と上条は体をこわばらせた。不自然にならない態度で、後ろ手に教室のドアを閉める。
流石にここから吹寄が見えることは、ないと思う。
「姫神こそ、なんでこんなトコに?」
「別に。私は日直の仕事で職員室に行っただけ」
この廊下を通ること自体は、別に不自然ではない。不自然なのは、こんな普段使われていないような教室から出てきた、上条だけ。
姫神が、不審げに眉を動かした。
「ここ。確か倉庫みたいな部屋だよね」
「あ、ああ。大覇星祭の道具とかが詰まってる」
「なんで上条君がそんなところに?」
「いやまあ、なんつーか」
誤魔化しきれなかった。なんというか、学校をサボりがちな上条には、こんな場所との接点がない。
彼女の名前を出すのは、避けたかったのだが。
一応、この場所に留まると吹寄が困るので、姫神を誘導するために上条は教室に歩き出した。
「うちのクラスには大真面目な実行委員がいるだろう」
「吹ちゃんに。頼まれたの?」
「ああ」
「ふうん」
少し面白くなさそうな目で、その部屋のほうを姫神が眺めた。
吹寄の手伝いなら、姫神だってついこないだやったところだ。交通整理の計画を立てに外出したのだ。
「……私も一緒のときに。上条君を誘ってくれればよかったのに」
「え?」
「なんでもない。それで。吹ちゃんは?」
「さ、さあ。俺一人でこれやらされたからな。あいつ人使い荒いし」
「そんな風に言うのは良くないよ。上条君だって学生で。大覇星祭の参加者の一人なんだから。
吹ちゃんは無闇に人をこき使う人じゃない。一番頑張ってるのはいつだって吹ちゃんだよ」
「……分かってる」
別に、吹寄がどんな奴かなんていわれずとも良く分かっている。
この一週間、一緒にいるときには沢山の言葉を交わしたのだ。
それはただの睦み言だけではなくて、他愛ない学校での出来事だとか、吹寄が今まで上条に見えないところでやっていた努力など、
吹寄がただの嫌味な委員長キャラじゃないって事は、ちゃんとわかっている。
ただ、そんなことを姫神にはいえないし、つい、吹寄の評価が荒っぽくなるのだ。
どこまで上条の真意を汲んだかは分からないが、僅かに咎めるように吊り上げていた口元をゆるめ、姫神が微笑した。
「ならいいけど。上条君」
「お?」
「大覇星祭は。参加できるの?」
「当たり前だろ。学校も休みだし、強制参加なんだしさ」
「そういう意味じゃなくて。上条君は。すぐ誰かのために日常からいなくなるから」
「……」
そういえば、姫神の転校してきたその日にも、上条は非日常にいた。
ゴーレムと戦ったのは、始業式だけで学校が終わった後の時間ではあったけれど。
「ねえ。上条君」
「何だ?」
「……その。参加種目とか。もう決めちゃった?」
穏やかな表情と物腰のわりに言葉はストレートな姫神が、やけに躊躇いがちな感じで尋ねた。
姫神が足取りを緩める。教室まであと少しの廊下で、二人の距離が少し開いた。
「まだクラスでちゃんと決めてないだろ?」
「うん。だから先約とか。あるのかなって」
「いや別に、ないけど」
男女ペアの嬉し恥ずかしなイベントには、実行委員で忙しい吹寄は参加する気がないのだ。
となると、別に上条としては参加種目はなんでもいい。だから全然決めてなどいなかった。
……そのせいでちょっと吹寄に小言を言われたことはあるのだが。
「そっか。あの。上条君……」
姫神が胸にかけた十字架を弄んで、落ち着きなく視線を廊下に這わせる。
「私。男女ペア対抗の競技に出ろって。女子のくじ引きで決まってしまって困ってるの」
「あ、女子はくじで決めたのか、結局」
「……うん。うちのクラスには。公認のカップルっていないし。みんな遠慮しちゃって」
真実はちょっと違って、上条姫神をくっつけようとする政治力が裏で働いていたのだ。
……そういう事情をなんとなく察しながら、姫神はその流れにあえて逆らわなかったのだが。
「で、相手は決まってるのか?」
「ううん。これでも私。一応女子校育ち」
「男子と手を繋ぐのは怖いとか?」
「別にそこまでじゃないけど」
つんと、姫神が唇を尖らせる。まるで察しの悪いこの男に苛立っているからだ。
大体、こんな話の振り方をして、上条を誘っているのだと何故気付かない?
「上条君は。まだ参加する種目決めてないんでしょ」
「ああ」
「だったら……」
勇気を、振り絞る。
別になんでもないことなのだ。付き合って欲しいと告白するわけじゃない。
そんなのじゃなくて、ただ、大覇星祭という青春の大きなイベントで、上条と一緒に、ゴールを目指すだけ。
すう、と息を吸って、心を整える。
「私と一緒に。その」
「姫神?」
「男女ペアの競技に。出てくれないかな」
「へ?」
突然の申し出に、上条は目を見開いた。
だが手だけは止まることなく、カラリと教室の扉を開いた。
「おはようカミやん。今日もずいぶん遅いんやね……って、え?」
黒板の傍で誰かと喋っていたのか、真っ先に青髪が声をかけてきた。
だが、すぐさま青髪は凍り付いていた。
……上条と姫神が見詰め合っていて、姫神の表情がいつになく、恋する女の子の顔だったから。
「嘘、やろ……?」
数秒後、ホームルーム間近でほとんど揃っていたクラスメート全員がその状況に気付き、驚愕することになる。
――――すなわち。姫神秋沙は、やはり上条当麻と、友達以上の関係にあるのではないかと。
良く考えたら俺姫神スキーだったわ。なんかこれ書いてて再認識した。
>>910 上条乙
>>910 上条乙
>>913
安心しろ、そんなことわかってる
安心しろ、そんなことわかってる
時系列なんてクソくだらねぇ幻想は俺がこの手で跡形もなくぶち殺してやるよ!
「おはよう」
「あ……お、おはよう吹寄さん」
廊下で談笑していたクラスメイトの女子が、僅かにたじろぎつつ挨拶を返す。
いつもは理不尽に苛立ちを撒き散らしたりなどしない吹寄が、今日に限っては分かりやすく怒っていた。
「昼休みに、一言いってやるんだから」
上条がさっきとった行動は、間違ってはいないと思う。
二人で逢引していたところを目撃されないように、ちゃんと吹寄を隠しながら出て行ったのは、行動としては正解だ。
だけど、それをそのまま認める気にはなれなかった。上条が一緒に連れ歩いた相手が、友人の姫神だから。
正確には、別に友人であるという部分はどうでもいいのだ。問題なのは、姫神秋沙が、転校するより前から上条と知り合いだということ。
それは今になって、吹寄を苦しめる一因だった。
姫神はいい友達だ。その性格上、吹寄は真面目なタイプの知り合いのほうが好きだ。何事にも丁寧な姫神には好感を抱いている。
だが、好感を持てることが問題なのだ。姫神を好きになる男子の気持ちは、分からないでもない。自分よりも男子受けのする性格と容姿だろう。
……もしかして、上条とお似合いなのは、自分よりも姫神ではないか。姫神と上条がニアミスするたびに、この一週間、そんな不安を抱えていた。
教室の扉を開いて、近くにある自分の席を目指す。
周囲にいたクラスメイトに軽く挨拶をして、鞄の中身を机に移してふと顔を上げると、なんだか雰囲気がいつもと違っていた。
クラス中の視線が、盗み見るように時折こちらに向けられる。視線の先は自分ではなく、ちょっと後ろ。
「おはよう。吹ちゃん」
「おはよ。これ、どうしたの?」
「……さあ」
いつもより、姫神の態度は素っ気無かった。困惑の表情を浮かべてはいたけれど、どこか、追求を避けるようなニュアンスがあった。
姫神は僅かに首をかしげて軽く髪を整え、クラスメイトの視線を振り切るように何も書かれていない黒板を見つめた。
「話の中心は姫神?」
「……それと上条君」
「えっ……?」
「さっき。たまたま上条君と会って。一緒にちょっと廊下を歩いて教室に入ったんだけど。それを見て皆が何か考えているだけ」
「……」
姫神の頬が僅かに染まったような、そんな気がした。それが気のせいでないと吹寄は直感的に確信した。
上条の方を見つめると、尋問でもされるかのように、土御門と青髪に見下ろされていた。
困りきったような顔で、こちらを見つめてきた。
「カミやんどっち向いてるん?! 姫神さんに助けでも呼ぶ気?」
「はあ? いやだから、違うって!」
「つまらない意地を張ってもいいことなんて一つもないにゃー」
「つーか別に姫神のほうを見たんじゃなくて、吹寄が入ってきたから」
「ハァァァ? カミやん次は吹寄さんなわけ? 浮気するなんて姫神さんだけじゃなくて僕らも許さんよ? 相手がいること事態も許せへんけど」
「浮気って、全然ちげーよ!」
もう一度、情けない顔で上条がこちらを見た。その表情を見て、カチンとなった。
――――浮気ですって?
冗談じゃない。上条が自分を見るのは、浮気でもなんでもない。
本命は、他の誰でもない、自分なのだから。そのはずだから。
徒にクラスメイトに関係をバラしたりはしないと二人で決めてはいたけれど、こんな事態になってもはっきりとしない上条の態度が嫌だった。
言ってくれたって、良かったのに。
姫神との関係を疑われて、そんな風にヘラヘラと困り顔をこっちに向けてくる上条が、嫌だった。
「ほらカミやん、吹寄さんに助け求めたって無駄やね。呆れて返事もしてくれへんし」
「ってかなんか吹寄の機嫌は微妙によくない気がするにゃー」
「それはそうと、ほら、朝礼まであと二分しかないし早く吐けカミやん」
「何を吐けってんだよ」
「いつからや!? どこまでや?!」
「質問の意味がわかりませんね! さっぱり」
「シラ切っていいことなんか一つもないぜよ?」
「もう一度聞くでカミやん。いつから姫神さんとお付き合いしてて、どこまで姫神さんと行ったんや?」
「どこって。さっき廊下で出くわして、この教室まで行ったけど?」
「……一体いつまで尋問されたいんかな? 言っておくけど、僕らだけちゃうよ? 追及の手は」
コクリと、教室全体が頷いた。姫神と吹寄を除いて。
そして、何処からともなくポツリと、呟く声が聞こえた。
「最近だと思う。一ヶ月前には気配はなかった」「いや姫神の転校前からデキてたんじゃ」「それはない。俺の勘では」
「やっぱり大覇星祭効果か」「上条はあんまり手伝ってないだろ」「いやでも、イベントは多いし、姫神は吹寄の手伝いよくしてるし」
「転校前から知り合いで、秋のイベントを機に急接近、そのまま聖夜にゴールイン、か」「おいばかやめろ」
「どこのエロゲのスケジュールだよ」「エロゲが出てくるあたりお前彼女いないだろ」「……」「童貞乙」
「姫神さんってやっぱ上条君狙いかー」「だって男女ペア競技のくじ、引いたじゃん」「どういう理屈?」
「あれ絶対、わざと姫神さんに引かせたって本人も気付いてるよ」「だよねー。意外に積極的って言うか、大胆だって私も思ったし」
「仮に気付いてなかったとしても、今さっき姫神さんから上条君を誘ったんでしょ? 確定じゃん」
「なんか変じゃない? デキてないから誘うんでしょ? 付き合ってるんだったら別に無理してこんなイベントやらなくてもいいし」
「違うでしょ。カップルになれたから、ふたりの思い出にしようって魂胆でしょ」「そういうもん?」「あたしならそうだけどな」
「彼氏いない暦イコール年齢でしょ。アンタも」「それが何か?」
「でも姫神に彼氏ができた素振りはなかったよねー」「上条君にも異変はなかった気がするんだけどなぁ」
そして、誰の声だったろうか。最後の一言が、やけに教室にこだました。
「今週はバタバタしてたしね。アレの件で」
――そう。今週は、女子生徒の一部に、体調不良が出た件で学校、否、学園都市中が大変なことになっていたのだ。
妙齢の女子生徒たちの中に、母乳が出るようになってしまった生徒が続出したのだ。
「えっ……?」
ざあっと、姫神に、クラス中の視線が集中した。
特に男子の視線に限定すると、姫神の、慎ましくも小さくはない、その胸に。
「何……?」
誰も何も言わず、姫神から視線を外した。そして、ある一つの可能性に、たどり着く。
さすがにマニアックすぎる、そのプレイ。そこらに売っているようなエロ本では絶対にありえない特殊描写。
まさか。上条当麻は、姫神秋沙の母乳を飲んだのではないか。
「カミやん、まさか」
「ち、ちがう! 俺はそんなこと」
そう反射的に弁解しながら、上条はしまったと心の中で冷や汗をかいた。
動揺が、その態度に滲み出ていた。
困惑しながら頬を染める姫神の態度が、周囲の誤解を助長していた。
高校生にはいささかディープすぎるその趣味に、女子の大半がドン引きし、男子の半数が女子と同様の反応を、そして残りの男子が否定的な表情を作りつつもどこか羨ましいような、微妙な反応を示す。
もう、誤解は解けないのではないかと、そう思わせるような事態になっていた。
クラス中で、授業の準備をしようとしていた手が止まる。高校生、それも一年生の彼らには余りにセンセーショナルな出来事であった。
そこに。
「はーいみなさん、席に着くですよー。ホームルーム始めるです」
月読先生が、重たげに教室の扉を開けて入ってきた。小脇に抱えた紙束をよいしょと教卓に置いて、辺りを見渡す。
いつもより学生の足取りが遅いというか、戸惑いのようなものがあるのを感じつつも、時間を守らせるように教師らしい視線で周囲ににらみを利かせる。
「ほら早く座るです! ……それじゃホームルームを始めます。今日は連絡は一つだけですが、とっても大事なことなのでよく聞いてください。
三時間目に予定されていた体育は時間を変更して、一時間目になったです。男子はグラウンド、女子は保健なので教室に残ってくださいです」
その言葉の意味を、学生達はすぐに理解した。
この一週間は、体育の授業がいつも変更になっている。女子が保健の授業という扱いなのもいつもどおりだ。
……要は、女子の健康診断をやっているのだった。年頃の女子にとって非常に不安も大きく、恥ずかしいという思いも強い出来事なので、誰が母乳が出るようになったのかをはっきりさせない意味でも、女子の検診は必ず全員受診だった。
「とりあえず時間がないので、男子はすぐに移動を始めてください。それじゃこれでホームルームを終わります」
移動を促すためか、月詠先生は教室をすぐには去らず男子を一人一人見つめた。
クラスを席巻したあの追及する空気は、これでひとまず中断することになりそうだった。
持ち上げてから落とすパターンで好きな女の子を苛めるのがパターン化してきた。。。
>>919 ハーレムはない。NTRもない。その辺は心配しないでくれ。
>>919 ハーレムはない。NTRもない。その辺は心配しないでくれ。
この上条さんの演技を見るにつけ上条さんが脳味噌足りないって嘘なんじゃないかなって思う。
・・・少々情けないが。
・・・少々情けないが。
>>929
まあ、詰めが甘いからボロ出かけてるみたいだけどね
まあ、詰めが甘いからボロ出かけてるみたいだけどね
「次の人は中に入ってくださいですー」
一時間目が始まって、吹寄たちのクラスの女子は保健室の隣の部屋であれこれと他愛もない話をしていた。
母乳の一件で被害にあってしまった生徒の割合は四人に一人くらいだ。決して少なくはないが、大半の生徒にとっては他人事だ。
友達とだらだらと話した後に医者の診察を軽く受けるだけの楽な時間なので、学生側に不満はなかった。
「順番だよ。吹ちゃん」
「行こっか」
ハ行仲間の吹寄と姫神はこういうときは一緒に行動することが多い。
月詠先生に促され、二人は待機室から出て保健室に入った。
「これっていつまで検診続くのかな?」
「こないだ聞いたら、今週はこれでおしまいで、あとは来週の終わりにもう一回だって言ってたわね」
「そうなんだ」
「とりあえず一週間で問題は収まるって話だし」
保健室には普段と違い、衝立がいくつも立てられている。
入り口から見えない隅のほうで、吹寄は数人のクラスメイトに混じって服を脱いだ。
保健室に入ってからは上半身はブラ一つになって待機らしい。
しゅるしゅるとセーラーの首元を緩め、腕を袖から引き抜く。髪が乱れないように気を使いながら服を脱ぐと、隣で姫神がジッとこちらを見つめていた。
「どうしたの?」
「ううん」
吹寄と姫神の身長はほとんど変わらない。ただ、全体的に姫神はすらりとしていて、手も足も吹寄より細くて白い。
体重では恐らく姫神のほうが軽いだろう。そして、体重差の一番の要因は、きっとその胸のボリュームじゃないかと思う。
いつも服を脱ぐたびに、吹寄のスタイルを羨ましく思う。自分と違って、あれなら露出の高い水着などもさぞかし似合うだろう。
「……」
「吹ちゃん?」
「な、なんでもない」
実は吹寄のほうも、姫神のスタイルには劣等感めいたものを感じているのだった。
自分で認めたくはないが、姫神のブラに比べて、自分のブラのカップのなんとドでかい事か。
肩にかかったストラップも姫神のブラよりはっきり太いのが分かるし、ホックの作りも質実剛健だ。
下着はもっと、繊細でいて欲しいと思う。特に最近は、毎日大切な人に見せているわけだし。
「可愛いの着けてるね」
「えっ?」
「あんまりそれ。見たことないし」
「ま、まあね。新しく買ったやつだから」
「そうなんだ」
姫神のブラは黒の綿製のやつだった。装飾は一切なくシンプルだけど、肌の色とのコントラストが綺麗だ。
シックに、大人らしく纏まっていると思う。自分が同じものをつけても、なんだか、だらしない感じがするのだ。
……それを色香と素直に受け止められない辺り、吹寄はまだ若い高校生だった。
自分のブラを見下ろすと、ややダークなオレンジを基調とした、チェック柄が目に入る。
子供っぽい柄を上条に見せたくはないけれど、大人っぽいデザインのは狙いすぎているというか、そんな感じがするのでそれも見せたくない。
通販で一時間唸って、ようやく決めたブラだった。
「あ。呼ばれたから。行ってくるね」
「ええ」
衝立の向こうに、姫神が進んで行った。扉を開け、保健室の置くの準備室みたいなところに行く後姿を見送り、吹寄はため息をついた。
同時に、次のクラスメイトが保健室に入ってくる。
姫神が症状の現れた女学生かどうかはよく分からないが、おそらく数分で出てくるだろう。
「ねー吹寄。もう姫神行った?」
「え? ええ。それがどうかした?」
「どうかした、って。吹寄はこういうときに無関心を決め込むよねー。勿体無い」
吹寄の次の女子は、割とノリも良く口の軽いタイプだった。
さっさと服を脱ぎ、吹寄たちよりもいくらかお座なりに服を畳んで、吹寄の横に座る。
「姫神ってたぶん、『出ちゃった』サイドの人間でしょ」
「……さあ。知らないけど」
「吹寄もだよね?」
「えっ?」
「あー、実は私もだからさ。吹寄も姫神も時間かかってるから、分かるんだよね」
「そう」
積極的に肯定はしなかった。口が軽いといえ、この問題をペラペラと男子にばらす様な真似は流石にしないだろうし。
「もう収まって来た?」
「そろそろ一週間だし、収まるって言われてる頃じゃない」
「私は結構続いてるんだよね……。タイミングが一番悪かったみたいで。毎日こう搾ってるとさ、嫌になるよね」
「ええ……」
実は吹寄はただの一度たりとも自分で「処理」したことはない。
良く考えると、毎回彼氏に吸ってもらっていると言うのは、壮絶に変態的ではないだろうか。
「吹寄ってやっぱ一杯出たの?」
「は?」
「いやだって、ねえ。女子からすれば恨みたくなるレベルじゃん」
「小さいほうが楽でいいわよ」
「喧嘩売ってる?」
「買ってくれるなら喧嘩じゃなくて胸のほうを売りたいわね」
「くっ」
大きくても小さくても悩むものだ。それをわかって相手も冗談を飛ばしてきたのだろう。口を尖らせて口ごもり、言い返してきたりはしなかった。
彼我の間にはどうしようもなく越えられないような差がある。吹寄には深遠な谷間があり、自分には見通しやすい平原が広がっていた。
「……でさ。まあ本題は吹寄じゃなくて、姫神よね」
「上条君ってさ、やっぱ姫神と、しちゃったのかな。ねー吹寄、あんたはどう思う?」
「あたしが知っているわけないでしょう」
――もし万が一、上条が姫神のおっぱいを吸ってたりしたら、躊躇わずに包丁で刺せる気がする。
「でも姫神と一番よくつるんでんの吹寄じゃん。最近付き合いが悪くなったとか、そういうことないの?」
「別に。どっちかって言うとあたしのほうが付き合い悪いし」
「そっか。大覇星祭実行委員だもんね」
正しくはそれに加え、上条におっぱいを吸ってもらうために付き合いが悪くなっているのだが。
「はー、姫神ってたぶんこの一週間で上条君とデキたっぽいよね。アクシデントをうまく使ってるあたりしたたかというか」
「……したたかって。そういうことじゃないと思うけど。それに、と……上条とデキてるって話、どこまで確実なわけ?」
思わず擁護してしまったのは、他でもない自分のしたことへの弁解からだった。
ついでに言えば、上姫カップリングを前提に話しているのが実に不愉快だ。
薄い胸を張るように腕を組んで、クラスメイトが何言ってんのよとしたり顔で吹寄に諭す。
「上条君を追っかけて転校してきてんだから、そりゃ姫神は上条君狙いでしょ。上条君だってまんざらでもないと思うし、そういうの」
「……」
「やっぱああいう清楚なタイプの子から想われたら、男子は絶対に手を出しちゃうでしょ」
「そう思うなら自分もそういう路線で行けばいいじゃない」
「え、私? ムリムリ。私やあんたみたいなのじゃ上条君はなびかないし」
「……どういう意味?」
「えっ?」
問いかけには、二つの意味があった。
姫神みたいなのが上条の好みで、吹寄は範囲外というのは聞き流せない下馬評だ。
そして、そのクラスメイトが、暗黙の前提として付き合う相手に上条を選んでいるような物言いなのが、見過ごせなかった。
「べ、別に上条君を狙ってるって訳じゃなくて。ほら、話に上条君が出てきたからってだけ」
「そう」
「クラスでバカやってるから評価は低いけど、締めるトコは締めるっていうか、自分ってのを持ってる感じがするじゃん、上条君って。
ああいうところは、私みたいなヘラヘラしたのとじゃつりあわないと思うんだよねー、ってだけの話」
「……別にあたしはヘラヘラしてないけどね」
「ん? あれ、もしかして吹寄って意外と上条狙い……?」
「別に。狙ってなんかいないわよ」
もう、射止めているわけだし。
「なら怒るのやめてよね。なんか吹寄の本命を馬鹿にしちゃって怒られたのかと思ったし」
「そういうのじゃないわよ」
「まあ、今からどう動いても姫神ルートで決まりっしょ。さっさとフリーのかっこいい人の話で盛り上がるべきよね」
「あたしは興味ない」
「吹寄っていつもそうだね。まあ、硬派で似合ってるけど。って、あ、姫神出てきた」
ありがとうございました、と抑揚に乏しい声で呟き、姫神がこちらに向かってきた。
同時に、吹寄さん、と呼ぶ声が奥からした。
「あのおっぱいを上条君は独占かー。……姫神お疲れ!」
「うん」
姫神に声をかける前の、小さく呟いた声がやけに耳に残った。
それを振り切るようにして、姫神は保健室の奥へと進んだ。
「喰らえ必殺の魔球! エターナルフォースシュートォォォォ!!!!! カミやんは死ぬ!」
「おわっ!?! バカ、テメェそれただの上段回し蹴りじゃねーか!」
ボールは上条と青髪のすぐ傍を平和に転がって行った。空振りというよりは、もはやボールはオマケに近い。
「審判! コイツにレッド出してくださいよ!」
「無理やって。先生は今ボールのほう見てるし」
「テメーもボールに集中しろよ!」
「いや、ボクら今日はカミやんのマーク担当やし」
「二対一でマークされるほど上条さんはサッカーのセンスなんて持ってません!」
先生も気がそぞろなのか、男子の体育はグラウンドを全面使ったサッカーだった。
人間の密度が薄くコンタクトの回数が少ないし、ルールも分かりやすいのでサッカーは放置しやすい球技なのだ。
「おい青髪! 土御門! もっと上条にべったり張り付け! 上条に仕事をさせるな!」
「分かってるって! ほらカミやん! ボール来とるで! 死ね!」
「最後の単語が何で出てくんだよ! これはスポーツだろ」
「え? サッカーは格闘技やで?」
「どこの国の常識だ!」
必死になって青髪ピアスから距離をとる。体格で負けているせいで、なかなか逃げ切れない。
コートの中で二対一なので、振り切ることも出来なかった。
殺意をむき出しの青髪に対し、終始楽しげに笑っているだけの土御門のほうが補足し辛かった。
「チャンス! 殺れ土御門! そいつは副作用に苦しむ姫神さんの弱さに付け込んで最低の行為をしたクズだ!」
「――ッ!」
やばい、と上条は咄嗟に体を硬直させた。土御門は完全に背後を取っている。しかもウェイトの位置がいい。
体重の乗った蹴りが飛んできて、しかもかわす余裕が全くない状況だった。
だが。
「おい土御門ォォォ! テメェ何やってんだ! ちゃんとサッカーやれよ!!!!!」
「いやこれサッカーのプレイ内容じゃねーって!」
「いやー悪いみんな。ちょっとタイミングを取り損ねたにゃー。だが次は確実に決める!
このうらやまけしからん男子高校生に裁きの鉄槌をくだしてやるぜよ!」
少し、土御門の反応が鈍かった。まるで後ろめたいような、というか自らの行為の正当化をし損ねたような。
ピーンと、上条の頭が今後の行動指針をはじき出す。なにか、ひらめいたものがあった。
「さあサッカーを楽しむぞカミやん! とりあえず真実かゲロの一つでも吐いてもらうぜよ!」
「吐くのはテメーだろ土御門! 昨日自分の部屋で妹と何をやってた!」
「なっ?!」
――戦闘行為において上条より高みにいるはずの土御門が、ブザマに第二撃をスカってずっこけた。
「な、何をカミやん!」
「あの……土御門、君?」
不意に、秋めくグラウンドに、冬の到来を予感させる寒々とした風が吹きすさんだ。
静寂が辺りを支配する。クラスメイトの男子が、一斉に足を止めていた。
「なあ上条チーム」
「なんだ土御門チーム」
「サッカーってさ、フェアなゲームだよな?」
「もちろんだ。片方のチームのキャプテンだけが狙われるのはアンフェアだ」
「じゃあ、そっちもマンマークつけていいぞ。うちの優秀なキャプテンに」
「ああ。そうさせてもらおう。幸いそちらのキャプテンは肉体再生の能力者だったな。アキレス腱の一つや二つ、ぶち切れても問題ないな」
「構わん。やれ」
土御門と上条を除くクラスメイト達が、重々しくコクリと頷いた。
「おいカミやん! 変な疑いをかけるんじゃねー! 俺まで狙われることになっただろ!!」
「ハァ? 舞夏の弱さに付け込んで最低の行為をしたクズに何を言われても響きませんねーだ!」
「俺はそ、そんなことしてないにゃーっ!!! 人の意思に反してまでやるようなクズだとは思うなよ!」
「合意の上でやったとか余計に悪いだろ!」
「そういうカミやんこそ自分の犯罪を棚に上げるな!」
乱闘付きのサッカーは、高校生の体育では珍しいはずなのだが。
……乱痴気騒ぎは教室で授業を受けている他クラスから苦情が来るまで続いた。
そろそろ昼休みだから上条さんは吹寄さんとまたイチャイチャすると思う。この状況で。
クラスメイト何者だしwww
「色香」って「だらしない感じ」を指してるの?
「色香」って「だらしない感じ」を指してるの?
上条さんと我が人生とのあまりの落差に涙した
末永く爆発しやがれこの野郎
末永く爆発しやがれこの野郎
眠い目を擦りながら、上条はどうやら今は二時間目が終わったところの休み時間らしいと、辺りを見渡して確認する。
「ふぁ……」
一時間目がさんざんだったおかげで、二時間目から疲労の極致だ。
物言いたげな青髪ピアスの視線が授業中もずっと刺さり続けていたおかげで、今となってはほとんど気にならず、スルーできるようになった。
体をほぐすついでに、秋晴れの空を眺めて、振り向き様にすこしだけ姫神を視界に納める。こちらに背を向けているから、表情は分からなかった。
「カミやん」
「……」
「カミやん! 無視する気ならいくらでも声かけるよ?」
「なんだよ。さっきの話にはもう乗らないぞ」
「今日のお昼はどうするんかを聞きたかったんやけど」
「あー、まあいつもどおりだ」
上条は毎日青髪たちと食事を共にするわけではない。
違う友達とつるんだりもするし、今週に限っては吹寄と二人きりで食べることが多かった。
「そうなんや。ええね、姫神さんと二人でお昼とか」
「……」
反論するのも面倒で無視を決め込んだが、なんだか青髪の態度がいつもと違って弱っているというか、諦念が混じっていた。
「土御門君は舞夏ちゃんとで、カミやんは姫神さん、か」
「お、おい。カミやんとセットで俺に疑いをかけるな」
「なんか吹寄さんも誰かと付き合ってるって噂らしいし」
「へっ?」
要はカップル数が多くてへこんでいたらしいのだが、最後の一言には聞き逃せない名前が含まれていた。
「吹寄って、そういう噂あるのかよ」
「カミやんは関係ないやろ。もう相手いんのに」
「そういうのは今は良いだろ。気になるだろ、その、あの吹寄の話だし」
「あの、って。カミやんがどう評価してるんかは知らんけど、吹寄さんってモテるほうやと思うけど。
噂では、大覇星祭の実行委員つながりで上の学年の先輩と急接近したって話しやったかな」
「その先輩って誰だよ」
「そこまでは知らへんわ。でも吹寄さんのは情報が少ないし、まだ噂の域を越えへんような気はするね。
なんか、学校の中で逢引してるって情報があって、相手は誰かって予想したら実行委員がらみかなっていう流れやったはず」
「ふーん」
ばれないように、こっそり上条は安心のため息をついた。まず確実に、その相手は自分だ。
長時間の休みはほぼ毎回吹寄を拘束しているので、浮気を疑う余地は少ない。
それにまあ、あそこまで吹寄にさせている男子が自分以外にいるとも思えないし。
「ふぁ……」
一時間目がさんざんだったおかげで、二時間目から疲労の極致だ。
物言いたげな青髪ピアスの視線が授業中もずっと刺さり続けていたおかげで、今となってはほとんど気にならず、スルーできるようになった。
体をほぐすついでに、秋晴れの空を眺めて、振り向き様にすこしだけ姫神を視界に納める。こちらに背を向けているから、表情は分からなかった。
「カミやん」
「……」
「カミやん! 無視する気ならいくらでも声かけるよ?」
「なんだよ。さっきの話にはもう乗らないぞ」
「今日のお昼はどうするんかを聞きたかったんやけど」
「あー、まあいつもどおりだ」
上条は毎日青髪たちと食事を共にするわけではない。
違う友達とつるんだりもするし、今週に限っては吹寄と二人きりで食べることが多かった。
「そうなんや。ええね、姫神さんと二人でお昼とか」
「……」
反論するのも面倒で無視を決め込んだが、なんだか青髪の態度がいつもと違って弱っているというか、諦念が混じっていた。
「土御門君は舞夏ちゃんとで、カミやんは姫神さん、か」
「お、おい。カミやんとセットで俺に疑いをかけるな」
「なんか吹寄さんも誰かと付き合ってるって噂らしいし」
「へっ?」
要はカップル数が多くてへこんでいたらしいのだが、最後の一言には聞き逃せない名前が含まれていた。
「吹寄って、そういう噂あるのかよ」
「カミやんは関係ないやろ。もう相手いんのに」
「そういうのは今は良いだろ。気になるだろ、その、あの吹寄の話だし」
「あの、って。カミやんがどう評価してるんかは知らんけど、吹寄さんってモテるほうやと思うけど。
噂では、大覇星祭の実行委員つながりで上の学年の先輩と急接近したって話しやったかな」
「その先輩って誰だよ」
「そこまでは知らへんわ。でも吹寄さんのは情報が少ないし、まだ噂の域を越えへんような気はするね。
なんか、学校の中で逢引してるって情報があって、相手は誰かって予想したら実行委員がらみかなっていう流れやったはず」
「ふーん」
ばれないように、こっそり上条は安心のため息をついた。まず確実に、その相手は自分だ。
長時間の休みはほぼ毎回吹寄を拘束しているので、浮気を疑う余地は少ない。
それにまあ、あそこまで吹寄にさせている男子が自分以外にいるとも思えないし。
「なあカミやん」
「なんだよ?」
「やっぱ二人っきりのときの姫神さんって、可愛いん?」
「……はあ。知らねぇっつの」
そんなことを聞いてどうするというのだろうか。
別に答えがイエスでもノーでも、青髪に関係ないのは確実なんだし。
「姫神さんってやっぱ、あの薬に引っかかってるん?」
「知らねーよ。仮に知ってても、何でお前に言うんだよ」
「別に僕も本気で聴きたいって訳じゃあないんやけど」
「じゃあなんで俺に声かけるんだよ」
「そうでもしんとやってられへんからね」
はぁ、と面白くなさそうなため息をついて、青髪は机に突っ伏す。
これで話は終わりかとほっとしながら、上条も頬に手を付いて辺りを眺めた。
そんな窓際での男子のやり取りを、遠巻きに見ながらクラスの女子が姫神に話しかけた。
「あ、上条君がこっち見た」
「……」
「姫神ー。ちょっと反応したでしょ」
「別に。してないよ」
「まあそりゃそうか。教室内で見つめられるくらい今更だよね」
「……何回。否定すれば信じてくれるの?」
「はぐらかさなくって良いって。上条君が昼休みはたいていどこかに行ってるってのは事実みたいだし、姫神も最近フラフラしてたじゃん」
「別に。私は友達と別の場所で食べたりしてただけ」
「上条君にも聞けばそう答えるんだろうけどね。でも姫神よかったじゃん。上条君が一人の女の子に絞るって意外だったけど」
「上条君は。別にそういう軽薄な人じゃないと思う」
「あ、ごめん。なんか色んなトコで女の子と仲良くなるって噂があったからさ。彼氏の悪口とか聞かされたくないよね」
「だから。私と上条君はそういうのじゃない」
「……なんでそんなに否定するの?」
「なんでって。私は事実を言っているだけ」
「んー。でもそうなると、たぶん上条君には他に彼女がいるんじゃないかってことになるよねー」
「もうその辺にしといたら?」
いい加減、聞き続けるのも不愉快だった。姫神とクラスメイトの会話を遮るように、吹寄は声をかけた。
「なんかあたしの噂もされてるみたいだけど。本人のいる教室ではやめときなさいよ。せめて」
「あー、ゴメン。そういうの吹寄嫌いだもんね」
それこそが自然な姿とばかりに一人歩きをする噂話が嫌いなのもあるが、勿論理由はそれだけじゃない。
そして、その理由を説明をすることも憚られる現状に、吹寄は苛立っていた。
昼休みには、上条にその不満をぶつけてやる、そんなつもりで吹寄はいた。
お決まりの鐘が、昼休みを告げる。腹をすかせた高校生達にとっては待ちに待った時間だ。
だが。
「……ごゆっくり。カミやん」
「延滞すると先生の拳骨が飛ぶからご休憩はほどほどにな」
「別に、そんなんじゃねえよ」
「ごゆっくり」は、まあすることになるかもしれない。
ただ相手は周りが思っているように姫神とではなく、当然、恋人の吹寄とだ。
吹寄の座る席のほうを眺めると、もう立ち上がって、教室の外へと出ようとしているところだった。
ちなみにそばの姫神は、まだ席に座っていた。思わず目が合って、二人で気まずい感じに目を逸らした。
「……いいなあ」
ぽつりとこぼした青髪の言葉は、本音そのものといった響きだった。
それがたぶん、姫神との仲を羨んだものなのだろうとわかって、上条はため息をついた。
「お前の想像は間違ってるぞ」
「……僕が思ってるよりもっとすごい事してるん?」
「ああもう面倒くさいな。お前が思うんならそうなんだろう。お前の中ではな」
「僕の単なる妄想やったらどんなに良かったか……ハァ」
「ったく。パン買ってくる」
いい加減付き合うのにも飽きて、上条は教室を後にした。
早く吹寄の元にたどり着かないと機嫌がどんどん悪化していく気がするので、上条は早足でいつもの場所を目指した。
一応、姫神との中が取りざたされたせいで、吹寄がつまらない思いをしていることは察せている上条だった。
そんな上条を見送りながら、姫神はトントンとノートを整えた。
机の中に教材をしまい、どうしようかと迷いのある視線を扉のほうに向けた。
「……今日に限って。お弁当なしなんて」
食材の都合で今日はパンでも買う予定だったのだ。それがまずいことになった。
今、教室を出て行けば。確実にそれは上条に会いに行ったというサインだと受け取られるだろう。
でも。
――さっきの返事を。くれるのかもしれないし。
朝にもちかけた相談、すなわち大覇星祭の男女ペア競技へ一緒に参加しないかと言った件は、返事をもらえないまま保留されている。
教室を出る直前にくれた一瞥は、その返事をするという意図だったのかもしれないと、姫神は考えていた。
それが自分ではなく吹寄に向けられた視線だという可能性は、少し上付いた姫神の思考裏には閃かなかった。
「姫神も、パン?」
「今日はお弁当、作ってないから」
「ふーん。ごゆっくり」
そのフレーズはついさっきあちらのほうで聞こえたものと丸かぶりだ。
「……青髪くんと結婚すれば?」
「げ、それは勘弁」
楽しげに嫌味を言うクラスメイトに言い返して、姫神はごく自然な素振りで教室の扉を開いた。
それを、クラス中の皆がこっそりと見送った。
「――さて、諸君」
「なんだ?」
「学校内での不純異性交遊を、諸君は許せるのか?」
「――否。断じて否」
「では」
「我々も行動を起こそう」
クラスの男子が、一斉に頷いて昼食を勢い良く食べ始めた。
学内で不純異性交遊が行われないよう、見回りを行う気なのだった。
「男子って暇だね」
「そう言うなら見回りに参加するか?」
「え? いやー……。ってか尾行してるのバレたら見つからないように地下に潜るだけだと思うんだけど」
「その時はさらに執拗に迫るのみ」
「あっそ」
いち早く教室を出た吹寄、それを上条が追い、姫神がさらに続き、その上にクラスの男子が追い、噂話を女子が振りまく。
そうやって学校というのは回っているのだった。
そろそろ終わりが見えてきたな。1000までにはさすがに終わらないだろうけど。
あ、R-18は本編終了後の枠でやります。
あ、R-18は本編終了後の枠でやります。
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