私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
元スレ美琴「初めまして、御坂美琴です」一方通行「……あァ?」
SS+ スレッド一覧へ / SS+ とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★
レスフィルター : (試験中)
「あと……」
「ア?」
「もしかしたら、と思って」
「……?」
「……一方通行はさ、私と話すときはいつも私の話を聞いてくれるの。つまんない時でも自分が興味無い時でも……怒る時でも。
ちゃかしたりもするけどいつも最後まで私の話を聞いてくれるもん。でもさっきは……私が何か言おうとしても聞こうともしなかったでしょ?
だから変だと思ったの。いつもと違う、何かあったのかなーって」
「―――……」
言葉が出なかった。
自分でも気付かなかった些細な変化も嘘も彼女の洞察力によって見抜かれていたのだ。
彼女と自分の間に立てていた嘘や建前の壁がガラガラと音をたてて崩れていく。そしてそこに見えてくるのは美琴と自分自身の本音。
呆然とする一方通行の額に美琴は湿ったハンカチをあてながら彼を見つめている。
「何か……あったの? 一方通行」
もう限界だった。
「クッ………」
「えっ? どうしたの??」
突然うつむいて苦しそうな声を上げる一方通行に美琴はどうすればいいのか分からずその場でオロオロする。
(芳川さん呼べば良いの?あぁでもゲコ太先生の方が??)と考えを巡らせていると一方通行の微かな声が耳に届く。
それはとても切羽詰まった苦しげな声だった。
「オマエはッ……なンで」
「え……?」
「なンで………俺の……俺の……ッ」
「……?」
「俺の……傍に、いるンだよ……」
「え……なんでって……」
一方通行の口からダムが決壊したかのように感情が溢れる。
それは途絶えがちに紡がれていながら、どこか吐き出すかの様な言葉。まるで泣いているようだった。
美琴はその言葉を一言も逃さないように優しく、大切に拾いあげそれに耳を傾ける。
「俺の傍に……いちゃ…………ダメなンだ……」
「……どうして?」
「俺と……いたら……みんな傷つくンだ」
「……」
「……この……能力が…… いや……俺がみんなを…………傷つけてきたンだ」
「!」
幼い美琴にも分かった。
彼は今初めて『本音』を話しているのだと。
『もし彼がそれを打ち明けたとき、それを君は真剣に聞いてあげるといい』
冥土帰しの言っていたことを思い出す―――――そうだ。聞かなくては、彼の言葉を。
そして美琴は決して邪魔をしないようにそっと彼の言葉を待つ。
「だから…………俺は……『無敵』に」
「……『無敵』?」
「『無敵』になっちまえば…………誰も……誰も……」
(レベル5よりも……ってことはレベル6ってこと?そんなのになれるの??)
「誰も……近寄ってこねェから…………」
「……!」
「だから………俺はッ……」
美琴は瞬間的に理解した。
一方通行が何故自分にあんなことを言ったのか。今日何故迎えに来なかったか。
何故悲しい目をしていたのか。何故ひとりになろうとするのか。
パズルのピースがすべて揃ったような感覚だった。
『とても辛い経験をしてきた顔をしてたわ』
『一方通行はそんな人間に沢山傷つけられてきたの』
芳川の言葉がフラッシュバックする。
気付けば美琴は座っている一方通行の頭をかかえ込むように抱き寄せていた。
「オ、オイ 離せッ」
「……やだ」
ずっと触れてみたかった白い髪は柔らかく汗でしっとりと濡れていた。
真っ白で細い髪の毛が微かに震えている。まるで雨に濡れた子猫のようだ。
何故自分が彼を抱きしめているのかよく分からない。ただ抱き寄せずにいられなかった。
自分の腕から彼の温もりを感じて、胸からジワリと熱いものが込み上げてくる。
恥ずかしいのに、胸がドキドキするのに、頬が熱くなるのに、そんなことはひどくどうでもいいことように思えた。
美琴は彼の優しさを知っている。
不安な時なにも言わずに一緒にいてくれたことを知っている。
つまずいた自分を助けてくれた手の温もりを知っている。
今だって―――――
でもそれを上手く言葉にしようとすると声が出ない。
だから美琴は自分の思ったことを正直に彼に伝えようと思った。
ちゃんと思いが伝わるように、彼を傷つけないように、大切に言葉を伝えよう。
「私は傷ついたりしないよ 一方通行」
「!」
「だからそばにいちゃダメなんて、言わないで」
「……オマエは分かってねェンだ……俺が」
「私はちゃんと一方通行を見てきたよ。……短い間かもしれないけど」
「……」
「一方通行がどんな人か、私は分かってるつもりだよ?」
「……」
「今の一方通行は人を大切に思う優しいひとだよ」
「なに言って……」
「でもね、もしもその『無敵』になろうとしたら……一方通行が……変わっちゃうような気がして……それが、ちょっと恐い」
「……」
「……一方通行はさ、自分は誰かを傷つけちゃうって言ってたでしょ?」
「……あァ」
「もしかしたら……そういうこともあるかもしれない。能力者なら誰でも」
「……」
「だからね……もしも一方通行が、誰かを傷つけようとしたら……私は全力でそれをとめるよ」
「!!」
「傷つけられた方もイタイし、一方通行だって絶対イタイはずだもん」
「……」
「だから一方通行が悪いことしようとしたら、私が絶対一方通行をとめるよ。絶対!」
「……ハッ なに言ってンだか」
「本気だもん! 能力測定の結果もレベル4だったしヨユーだよ!」
「そォかよ……」
「……でも逆もだよ」
「あァ?」
「一方通行が誰かに傷つけられちゃいそうなときは……私、一方通行の味方だからね」
「……」
「だから…………そばにいちゃダメなんて言わないで」
美琴の声は一方通行の耳を優しくくすぐる。
ずっと自分は誰かにそう言ってほしかったのかもしれない。
美琴の言葉が胸に淀んでいたドロドロとした感情を溶かしていくようだった。
あんなにゴチャゴチャと巡らせていた思いが胸からストンと落ちていくような、まるで憑き物が落ちたような感覚。
「オマエ……ホント、バカだなァ……」
心底呆れるような声がこぼれ、それは美琴の心をキュッと締め付けた。
美琴は両の手に優しく力を込めて一方通行の頭を抱きしめる。
私はあなたの味方なのだと、そばにいたいんだと、ちゃんと伝わるように。
すると抱きしめている頭が少し揺れ、彼の肩も小刻みに震えだした。
最初は具合が悪くなったとかと心配したがそれは杞憂だった。
しばらくすると床にポタポタと透明な雫が落ちていった。
「ッ……」
「……」
美しい真っ白な頭をそっと撫でる。
昔母親にやってもらったときのことを思い出してそれを真似てみる。
優しく、優しく。
――――――――――
「まったく……あの子達どこ行っちゃったのから」
研究所内のスピーカーを使いアナウンスしたり、職員達に聞いてまわったが一方通行は見つからなかった。
美琴は美琴で携帯に連絡しても出やしないし5時になってもロビーには来ない。
5時を過ぎ外は日が暮れて学園都市をオレンジ色の光で満たしている。
部屋を半壊状態にした一方通行の動向も気になる。
そして美琴を遅く帰らせてはいけないしどちらにしても2人を早く見つけなければ。
そう思っていた矢先、ひとつまだ探していない場所を芳川は思い出した。
「まさか……ねぇ」
立ち入り禁止の閉鎖された研究室。
あそこなら誰も出入りはしないし、電気も通っていないからアナウンスも聞こえないだろう。
芳川はとりあえずそこへ足を向かわせることにした。
・・・・・・
・・・・
・・
『立ち入り禁止』のプラカードと道に括られたチェーンを跨ぎ階段を上がる。
閉鎖された研究室の廊下の端から端を見渡すと奥の方にソファーに腰掛ける人影を見つけた。
(こんなところに居たのね……もう)
近づいていくと人影は2つあった。どうやら2人は一緒だったようだ。
「あら、これは……」
芳川の目に入ったのはソファーに座りながら眠りこける美琴と一方通行の姿だった。
2人は隣同士に座りお互いの体を預け合ってスヤスヤと寝息を立てている。
美琴は一方通行の肩に頭を乗せ、一方通行は美琴の頭に自分の頬を乗せてお互い支え合っているように眠っている。
窓から入る夕日の光が幼い2人の姿をより美しく輝かせた。
「……なんだか起こしちゃうの勿体ないわね。写メでも撮っちゃおうかしら」
2人の心から安心しきって眠る顔は愛らしいの一言でまるで天使のようだ。
それを見てしまったがため芳川は携帯を持ちながらベストショットを求めて数分間その場を歩き回ることになった。
「ん? なにかしら……これ」
ふと2人の手の内にあるものに目がいった。
一方通行の手には緑色、美琴の手にはピンクの物体が握られている。
(どこかで見たことが…………)
こめかみに指を当てながら記憶の引き出しを開けてみる。確か、美琴に関係ある―――――
「……あっ! 確か御坂さんが好きだっていう―――」
それぞれの手にはゲコ太とピョン子のキーホルダーが握られていた。
2人が大事そうに握る少しヒビが入っているそのキャラクターの表情はどこか幸せそうに微笑んでいるように見えた。
以上です。
なんだか長くなってしまいました……読んでくださった方、お疲れさまです!
ではまた~ ノシ
なんだか長くなってしまいました……読んでくださった方、お疲れさまです!
ではまた~ ノシ
それを見た者の感想は以下の通り
『読んだらいつの間にかロリコンになってた』
『仕方ない』
『美琴ちゃんマジヴィーナスぅぅ!!』
『読んだらいつの間にかロリコンになってた』
『仕方ない』
『美琴ちゃんマジヴィーナスぅぅ!!』
これ現代編ものちのち書いてくれるんだよね?
超期待……してもいいですか?
超期待……してもいいですか?
きっと数ヶ月後には…あ、間違えた数年後にはズッコンバッコンしてるんだろうな
美琴ちゃんええこやわぁ、さすが打ち止めの原型なだけはある
このまま育って欲しいような、成長して原作のツンデレ具合を発揮してほしいような複雑な気分ww
このまま育って欲しいような、成長して原作のツンデレ具合を発揮してほしいような複雑な気分ww
美琴ちゃんマジ天使
そして>>328に全面的同意
そして>>328に全面的同意
我々の業界ではご褒美です
この美琴ちゃんが原作みたいなツンデレこじらせるとしたら、一方さんが過保護こじらせて妹分扱いしかしてくれないという展開かもしれん
まあ、こっちにとってはどっちでもおいしいんだけどなwwwwww
これからも期待して待ってる
この美琴ちゃんが原作みたいなツンデレこじらせるとしたら、一方さんが過保護こじらせて妹分扱いしかしてくれないという展開かもしれん
まあ、こっちにとってはどっちでもおいしいんだけどなwwwwww
これからも期待して待ってる
>>332
危ないとこだった
危ないとこだった
* * *
7月下旬。
外の気温は日に日に上昇していて人間の外出する気力を十分奪わせていた。
そんな夏真っ盛りの今日は土曜日。
ここ2ヶ月間芳川は土曜日は必ず出勤している。
今日もこうして後輩の若い研究者とともに仕事をこなしている。
本来なら非番をとっても良い立場にある彼女が出勤する理由、それは土曜日に職場に来る楽しみが一つ出来たことだ。
それはひとりの少女とひとりの少年の来訪。
芳川はすでに彼等が今日どこへ向かうか予想がついていた。
今日は食堂が午後から点検中、医務室は冥土帰しが出張中。ということは―――――
コンコン
小さなノック音。
部屋に居る人間にはドアの外に誰がいるか分かっていた。
「どうぞ」
「こんにちわ~」
「あら、いらっしゃい」
「お邪魔しま~す」
明るい声の主は予想通り、美琴であった。
開いたドアから水色のTシャツとショートデニムを履いた美琴と白いTシャツ姿の一方通行が入ってきた。見慣れた2ショットだ。
「お部屋使っていいですか?」
「良いわよ。でもあまり騒がないでね」
「は~い」
入ると2人はすぐに彼等がこの部屋を使う際に必ず使用するテーブルへ向かっていった。
向かい合わせに座ると2人はすぐに話し始めた。
「あっ! そういえば今日ロビーで見たことある人見かけたの」
「ダチか?」
「ううん~ 白衣着た男の人」
「オマエ何回もここ来てンだから、見たことあるヤツだって多いだろォが」
「そうじゃなくて、前にどっかで会ったことあるような……ここじゃない所で」
「……まァ、ここには他から派遣されてくるヤツもいるからな」
「そうなんだ」
「他の研究所で会ったヤツじゃねェのか?」
「ん~……そうなのかも」
(……あら……?)
芳川はどこか違和感を覚えた。
いつもの彼等の会話は美琴がひたすら言葉を投げかけ続け、それを一方通行がただ「ヘェ」とか「ふゥン」と返すだけ。はたから見れば会話にならない事が多いように思った。
まさに一方通行(いっぽうつうこう)な会話。ドッチボールとまではいかないが、会話の打ちっ放し状態だった。
だが今はどうだろう。
「それかオマエの見間違いなンじゃねェの? 早とちりとかしそォなタイプだろ、オマエ」
「なっ!そんなわけないもん!」
「どォだかなァ……ま、勘違いして他人に迷惑かけンなよ」
「もおおおぉぉぉぉ失礼なッ!!そんなことしないっつーの!!!」
いつもよりも会話がスムーズのような気がした。
というより一方通行が美琴に対してちゃんと受け答えをしている。一方通行が会話をしようとしているのだ。
「(なんか前より仲良さげッスね……)」
「(そうね……)」
今まで彼等を見てきた芳川とその後輩の青年は彼等の変化を敏感に感じ取った。
まず2人を纏う雰囲気が前とは違うことに気が付いた。明らかに穏やかなものへと変化している。
例えるならばいびつな形していた物体が角のとれた球体になったようなものだ。
美琴はいつも通り。しかし、一方通行の顔もいつも通り仏頂面なのだが少し表情が柔らかくなったように見える。
(何かあったのかしら……?)
そういえばこの間の出来事もおかしな事件だった。
一方通行の部屋へ行けば部屋の壁の一辺が壊滅状態になっており、美琴との約束の日なのに姿を表さない。
正直彼はとうとう壊れてしまったのではないかと思った。だが、やっと見つけたかと思えば美琴と2人で寄り添いながら眠りこけていた。
その2人を起こし、美琴をロビーまで送って行くときも、彼女が外へ出て行った後も、一方通行はずっと不思議な眼差しで彼女の姿を見つめていた。
愛おしそうな、泣きそうな、嬉しそうな、切なそうな―――――そんな感情が入り混ざった複雑な瞳をしていた。
そしてその瞳を覆う瞼はまるで涙を流した後のように少しだけ赤く染まっていた。
一体2人の間に何があったのだろうとその日は首を傾げていたものだ。
(……ま、この雰囲気をみると良いことだったみたいだし、そっとしておきますか)
部屋に置いてある小さな冷蔵庫から麦茶を取り出し、彼等の為にそれを硝子のコップに注ぎながら芳川はそう結論づけた。
彼等の問題に周りがあーだこーだ聞くのは無粋だ。当人達に任せて、それを自分は見守ろう。
二つのコップをテーブルまで運ぶ間そうして先程の疑問に終止符を打つことにした。
「はい。外は暑かったでしょう?」
「ありがとうございます!」
お礼を言って麦茶を飲む美琴とは違い一方通行は何も言わずにそれを一口飲む。
相変わらずの無作法っぷりに(流石にこういう所までは変わらないわよね)と思いフッと笑みがこぼれる。
美琴の方に目を向けると腕や顔がほんのり日に焼けて白い彼女の肌がもっと健康的な色に変わっていることに気付いた。
季節はもう夏。光り輝く太陽の下で子供たちが無邪気にはしゃぐ季節だ。
「そういえばそろそろ夏休みね」
「はい。一昨日終業式でした」
「そうなの」
もうそんな時期かと芳川は時間の経過の速さを噛み締める。
どうも研究所にこもりきりの生活だと季節感覚が狂ってしまう。改めて外が夏なのだということを思い知る。
「御坂さん、夏の予定は何かあるの?」
「あっ そうなんです! だから今日は芳川さん達にも会いに来たんです」
「どういうこと?」
「夏の間は当分ここには来れないかもしれないから。だから挨拶しときたいなーって」
「……!」
そっぽを向いていた一方通行がパッと美琴に視線を向ける。
その顔は驚きを隠しきれておらず、その表情はどうやら彼も初めて聞いたということを示していた。
「……どこか出掛ける予定でもあるの?」
「えーっと……、ま、ママに夏休みは家に帰って来なさいって言われたんです」
「あら、そうなの」
「あと先生が夏休み中に学校見学に行ってきなさいって」
「御坂さんレベル4になったんだもの。しかたないわ」
「それと、学校のプールとか宿題とか色々あって……夏休み中はここへ来るのが難しいかなって」
「そう……寂しくなるわ」
「…………」
会話に全く入って来ない一方通行の表情を時々確認しながら芳川は美琴と会話をしていた。
その表情は彼女の言葉を聞く度、不機嫌に俯きがちになっていくように見えた。沈黙はまさに苛立の表れのように思える。
最初自分が2人の仲を贔屓目で見ているせいかもしれないと思ったが、次の彼の行動でそれが間違いないものだと確信を得ることになった。
ガタンッッ
「ぉわっ! ……どしたの?」
「…………コーヒー買ってくる」
急に音をたてて立ち上がったかと思うと白い前髪で表情を隠しながらおもむろにドアの方へ歩き出した。
どうやら文字通りコーヒーを買いにいくようだ。そんな彼の態度はどうみてもご機嫌なものでは無かった。
美琴は突然の彼の行動が理解出来ない様子だ。
「へ? 麦茶あるのに?」
「……俺はコーヒーが飲みてェンだよ」
そう言って一方通行はさっさと部屋を出て行ってしまった。
(あらあら、拗ねちゃったかしら?)
彼の行動に少し可笑しくなってしまったが、子供らしい一面を垣間見ることが出来たのは喜ばしいことだ。
口元に笑みをこぼしながら芳川は彼の居た席に目をやる。
一方、美琴はある人に言われた言葉を思い出していた。
それがここ数日間の悩みの種であり、これからの夏休みの行く末を左右する事柄であることも分かっていた。
でもそれを誰にも相談出来なかった美琴は芳川といるこの状況は好機のように思えた。
(今ならいないし……芳川さんに聞いてみようかな)
そして美琴は目の前のオトナの女性に相談してみようと決めた。
「ぁ……あの、芳川さん……」
「ん?」
「あのぅ……その、そそ、相談があるんですけど……」
「? なにかしら」
「えっと、ですね……」
小声で顔を赤らめモジモジしだした美琴に芳川はいつもと違う雰囲気を察知した。
「ママが……」
「お母さんが?」
「か、帰ってくる時に……とと、友達も、ぃ、一緒にって……その……」
「そうなの。学校のお友達と?」
「……ぅうん」
「え?」
「その……えっと……あ……」
「?」
「ぁ……ぁあ一方通行を……その……一緒に……つつつ連れてこいって……」
「―――え?」
・・・・・
それは先週の日曜の朝の出来事だった。
寮に母である美鈴から電話が掛かってきたのだ。
日頃くることの少ない母からの電話に驚きながらも喜びながら受話器を持った。耳に明るくテンションの高い声色が伝わってくる。
『やっほ~~! 美琴ちゃん、元気にしてた?』
『ママ! どうしたの?いきなり』
『美琴ちゃんの声が聞きたくて♪』
『ふふっ なにか用があるんじゃないの?ママは用も無しに電話しないじゃん』
『アチャー、見抜かれてたかー 美琴ちゃんそろそろ夏休みよね?』
『うん』
『だったら夏休み中、コッチに帰って来なさい。たまにはいいでしょ?』
『! うんっ!そうする!!』
『あ、あともう一個』
『え?なになに??』
『前に電話で言ってた~……え~っと……あくせられーたくん?だっけ? その子も連れてきなさい』
『』
『美琴ちゃん?』
『――――ちょちょちょちょちょちょっと何言ってるのママ!!???』
『だって美琴ちゃんのボーイフレンドでしょ?ママの目でしっかり見定めてあげるから♪』
『くぁwせdrftgyふじこlp』
『それじゃ来る日にち決まったら教えてね じゃあね~』
ガチャン ツー… ツー…
『ぅえ!? ちょママ!??ママァァぁぁぁ―――ッッ!!??』
・・・・・
「……ってことがあって」
「……随分とパワフルなお母さんね……」
「はぁ……」
「それで彼には言ったの? そのこと」
「いいい言ってませんよっっ!!!」
「あら、何故?」
「だだだだだってだって!!! じょ、女子がだだ、男子をおおおお泊まりに誘うって……変ですよねっ!?」
「あー……」
「そそそれにッ……か、勘違いしてるもん!!べつに……ぼ……ぼーいふれんどじゃないしっ!!!」
両手を頬に当てて真っ赤になる美琴は今にも頭から湯気が出そうな勢いだ。とはいっても既に額からバチバチッと電気を走らせてはいたが。
そんな彼女の反応に胸がむず痒くなる感覚を覚えながら、とりあえずは美琴を落ち着かせることを優先した。
「まぁまぁ。別に変ではないと思うわよ?」
「……ふぇ? そ、そうなんですか??」
「お母さんも御坂さんのことを心配してるのよ。だから仲良くなった友達にも会いたいのよ、きっと」
「う~……」
(ま、それだけじゃないでしょうけど)
そんなこと言えば美琴はまた漏電してしまうだろう。本音は胸の内にしまっておくことにした。
「御坂さんはどうしたいの?」
「へ?」
「御坂さんは一方通行と一緒は嫌なの?」
「……」
「……」
「べ……べつに……い、ぃゃじゃ……」
「なら彼に聞いてみなさい。お家に友達を招くのは恥ずかしいことじゃないわよ」
「ッ~……」
そう言い残すと芳川は席を立ち、自分のデスクに戻っていった。
前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+ スレッド一覧へ
みんなの評価 : ★類似してるかもしれないスレッド
- 結標「もうやだこの仕事」一方通行「……はァ?」 (1001) - [56%] - 2010/8/5 9:18 ★★
- 霊夢「そういえば、あんたの名前は?」一方通行「………」 (1001) - [46%] - 2012/10/25 10:00 ★★
- いろは「私、先輩のことが、好きです」八幡「……えっ?」 (393) - [40%] - 2015/8/20 18:30 ☆
- 絹旗「どいてください!超邪魔です!」上条「な、なんだぁ?」 (1001) - [40%] - 2010/7/14 3:45 ★★★
- 梓「こ、この白髪ぁ!」一方通行「いってろ触角」 (773) - [38%] - 2011/5/5 13:45 ★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について