元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」2
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
451 :
キマシタワー
452 :
誰か上麦を…!糖分が足りない
453 :
ところでここは上麦限定スレなの?
本来の>>1と偽善使いの人は共に上麦だったけど、ナンパスレだった様な気がするんだが
454 :
ナンパスレで良いんじゃないか?偽善使いの人もブルーブラッド終わってるけど、みんなのスレだっていってるし
455 :
誰かが書くのを待ってる俺ガイル
456 = 454 :
オレも待ってる。
457 = 454 :
上に麦フレ書いてって人いたけど…ブルーブラッド読む限り偽善使いの人が半端じゃないクオリティの百合になりそうだよなーでもむぎのんは上条の嫁
458 :
んなこと言ってないでお前が書けば良いじゃない
459 :
麦フレって実はまだマトモに扱ったSS少ないよな
フレ/ンダじゃないハッピーエンドが見たいんだが中々…
麦のんナンパスレってことなら魔術サイドと絡んでるの見たいなと思って
右席とアイテムで書きかけたけどただのテッラいじりになって止めた
460 :
2巻以降を再構成しようにも、
偽善使いの作者さんのクオリティでの心理描写ひとつとっても俺にはできそうにない
461 :
偽善使いの人は女性らしいから、正直心理描写はまず無理だと思う。むぎのんのHシーンとかブルーブラッドのあわきん達の内面描写は女性じゃなきゃ書けないよ
462 :
とりあえず誰かが一発人柱として書かなければこの状態が続くな
だからだれか早く上麦分を僕に!!!
463 = 460 :
まあ人柱にならなれるかな……愉快なオブジェ確定ですが……
464 :
むぎのん結婚おめでとう…!
465 :
あれ?
結婚したのは名塚だろ?
絶許は関係なくね
466 :
ばっかオレと麦のんが結婚したってことだよ
467 :
>>466
そっちにドラゴン腕に生やしたツンツン頭が走っていったよ
468 :
~終わらない夏への扉~
一度目の接触は、落日の路地裏で
二度目の遭遇は、闇夜のレストランで
三度目の邂逅は、青天の瓦礫の王国で
「――“お姉様”――」
一回目は、嘲笑を湛えた形良い唇が
二回目は、冷笑を浮かべた切れ長の瞳が
三回目は、憫笑を描いた横顔が
「愛してるわ…――――」
氷雨の中での顔合わせ
涙雨の中での鉢合わせ
驟雨の中での巡り合わせ
昔、誰かが言っていた
『一度出会えば偶然で、二度出逢えば必然だ』と――
469 = 468 :
~第十五学区・とある映画館~
「………………」
夜の帳を落としたかのようなミニシアターの一角に並んで腰掛けていた少年は唖然としていた。
その表情には一筋の冷や汗が流れ、その胸中では大粒の脂汗が滲むほどに。
「………………」
その少年の右肩に緩やか栗色の髪を流れるままに持たせかけていた女性は憮然としていた。
その表情には明らかな嘆息が浮かび、その胸中では盛大な溜息が零れるほどに
「(なんでせうか…これは)」
出来立て熱々だったポップコーンが湿気るより早く、キンキンに冷やされたコカ・コーラが汗をかくより速く…少年は自らの選択を悔い、そして嘆いた。
無難な学園モノをチョイスしたつもりがどこをどう間違えたのか少女同士のガールズラブへとシフトした頃には後の祭り。
スクリーン一面に大開きとなる少女同士の官能的なラブシーンに白痴のように開いた口が塞がらない。
「あんたさあ…こういうの好きだったの?」
「!?」
「とんだサプライズだねー…かーみじょう?」
上条「サプライズってかハプニングですよ麦野さん…」
麦野「私はハプニングって言うかショッキングだよ。彼氏の教育間違えたかにゃーん?」
肘掛けに置かれた上条当麻の手の甲を、その煉乳を塗り固めたかのような人差し指でクルクルとなぞり書きする麦野沈利。
薄く淹れた紅茶を溶かし込んだような優麗な栗色の髪から香るヘアフレグランス。
その表情には不平と不満と憤懣の色が暗がりの中でもありありと見てとれるほどで
上条「…不幸だ…」
第三次世界大戦から生還…及び『凱旋』後初となるデートは出だしから躓きと相成った。
何故か?答えは最愛の恋人が指文字でなぞり書きするメッセージにある。それは――
『オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね』
猟奇的な女王様(かのじょ)が、この上なく御機嫌斜めだったからである――
470 :
あんたを待ってた
471 = 468 :
~第十五学区・カフェ『デズデモーナ』~
麦野「出てくんの遅すぎ。つーか何これ。バニラ溶けすぎでぬるくなってんじゃん。普通ならこれやり直しが基本のクオリティだぞ」
店員「…ごゆっくりおくつろぎくださいませ…」ビキビキ
上条「すいません!本当にすいません!!」
13:50分。映画鑑賞を終えた上条当麻と麦野沈利は劇場通りの一角にある喫茶店『デズデモーナ』にて遅めのランチを取っていた。
内装から調度品にいたるまで全て純白で統一された店内にて…麦野はあいも変わらずシャケ弁を平らげた後、運ばれてきたスイーツのハニトースト・バニララテ・クイニーアマンにフォークを突き刺しながら不平と不満を漏らしていた。
それも店員に対してクレームをつけるでもなく、聞こえよがしに吐き捨てる傲岸不遜っぷりである。
麦野「御坂オススメの店だっつーから来てみれば…とんだババ引かされた気分だわ。二度と来るか」
上条「…多分二度と来れないのは俺達の方だぞ沈利…」
舌打ちを堪え背中に鬼の貌を浮かび上がらせ去り行く店員を見やりながら上条は嘆息した。
しかし対面に腰掛けハニートーストのボックスを切り崩す麦野はどこ吹く風とばかりに
麦野「当麻、あん
たも食べる?」
ニコッとフォークに突き刺したハニートーストを差し出して来る麦野。
心底嬉しそうに、真底楽しそうに、溶けかかったバニラアイスより甘い笑みを浮かべて。
されど差し出したフォークは突きつけた銃口のように有無を言わさぬ迫力を湛えて。
上条「あ、ああ…あ、あーん?」
麦野「あーん♪」
誰が信じられよう?学園都市二百三十万人の学生達の中にあって、彼女が頂点から数えて四番目にあろうなどと
麦野「美味しい?」
上条「ああ。すげー美味いぞ」
麦野「私の作るお菓子より?」
上条「いや、沈利の方が美味いって」
麦野「よく出来ました」
誰が信じられよう?学園都市暗部の跳梁跋扈の中にあって、彼女が組織の一角を率いていた事があろうなどと
麦野「インデックスにも作ってやるかなー…どうせ帰ったら拗ねてるだろうし。御機嫌取りにちょうどいいでしょ?」
上条「作れんのか?」
麦野「レシピと材料さえあれば私に作れないもんなんてないわ。それに今食べたじゃない。この程度なら私の方が上手く作れる」
472 = 468 :
誰が信じられよう?学園都市より飛び出し、第三次世界大戦の最激戦区にて彼女が大立ち回りを繰り広げたなどと
上条「悪いなほんと…沈利にばっか作ってもらっちまって」
麦野「私は作る人。あんたは片付ける人。アイツは――」
上条「食べる人だな」
麦野「“働かざる者食うべからず”って事でこの間おにぎり教えたんだけどさ、どうしても三角に出来ないの。真ん丸か俵」
上条「洗剤で米洗ってお粥になった時より進歩したじゃねえか。洗濯機も回せるようになったし」
麦野「服の色落ちとか素材分けはまだ出来ないけどね。ネットに入れればなんとかなるって思ってるみたい」
上条「…なんか、子持ちの夫婦みたいだよな俺ら…」
麦野「悪くないかな。それはそれで」
初冬の陽射しが射し込む窓際の席を麦野は見送る。店内全体を見渡せる奥の席から。上条に気取られぬよう、ごく自然に。
麦野「ただ、あんたより年上に生まれてちょっと悔しいかな」
上条「何でだよ?」
麦野「私は16過ぎてるから結婚出来るけど、あんたはまだ18にもなってないからさ」
二十億の信徒を束ねる教皇自ら、十字教最暗部手ずから命を狙われたその日から麦野は陰ながら上条を守っている。
同様に、学園都市暗部からも多大な遺恨と強大な怨恨に晒されている自分の身に降りかかる火の粉を上条に飛ばさないようにとも気を配っている。
麦野「あんたより、年下に生まれたかったな。それだけは第三位がうらやましい」
窓際は狙撃と鴨撃ちの標的だ。そして出入り口からの客をさり気なくチェックする。敵か、まだ敵ではない人間かを選別するために。
暗部を引退しようが、暗部が解散しようが、麦野沈利が定め、己に課した生き方に変節はありえない。
命を懸けて盾となりえる事を上条当麻は許さない。ならば死を賭して剣となりえる事で上条当麻の敵を討つ。
それが彼女の志向であり、思考であり、至高である。
473 = 468 :
麦野「…その前に、当麻はちゃんと進級出来るのかにゃーん?あんたの欠席日数、もうあんたの平均点より多いんじゃない?本当に大丈夫?」
上条「だっ…ぜっ、絶対なんとかする!上条さんだって留年は絶対にイヤだイヤですイヤなんだ三段活用!」
麦野「インデックスにおにぎり教えるよかあんたに勉強教える方が骨が折れんだよ。マジでダブったらフライパンで往復ビンタだからね」
呆れ顔でデボンシアティーを口に運ぶ麦野。懊悩に頭を抱え唸る上条。
端から見ればあまり釣り合っていない年上女と年下男の取り合わせ。
ツバメを飼っているというより出来の良い姉、出来の悪い弟に周囲は見るだろう。
されど麦野にとっては唯一の、上条にとって無二の、それが互いの存在であった。
麦野「さてと…腹ごなしも済んだ事だし、ちょっとブラブラしない?」
上条「良いぞ。前にお前が言ってた冬の新作、見に行くか?」
麦野「うん。ついであんたの冬服も新調しようよ一緒に」
上条「んな金上条さんにはないっての!あのエリザリーナ独立国同盟産で十分です」
麦野「あれ分厚過ぎ。それにデザイン二の次じゃん」
上条「俺は垣根先輩みたいなおしゃれさんじゃねえからな。一方通行みたいなのも似合わねーし」
麦野「比較対象が悪い。あんなホスト崩れとヴィジュアル系連れて歩くとかどんな罰ゲームだよ」
そう言いながら二人は喫茶店を後にした。ごく自然に組んだ腕から手を繋いで指を絡ませて。
店員「…またのご来店を…」ビキビキ
空になったシャケ弁の容器を、ごく自然に放置したまま。
474 = 468 :
~第十五学区・とあるファミレス~
絹旗「あれ超麦野じゃないですか?」
浜面「おっ、本当だ。腕なんか組んでやがる」
滝壺「かみじょうと一緒。デートかな」
14時20分。第十五学区の歩行者天国に面したファミリーレストランにて、『アイテム』の面々が卓を囲んでいた。
四人掛けのテーブルの奥に絹旗最愛、手前に滝壺理后、通路には両手にドリンクバーのコップを携えた浜面仕上がウィンドウ越しに素通りして行く二人を見送って。
浜面「(いいなあ…俺もアイツらみたく滝壺と)」
絹旗「とか思ってるに違いありませんね。やっぱり浜面は超浜面です」
浜面「他人のプライバシーを覗くなよ!?って言うか読めんの?心読めんの!?」
絹旗「スケベ心は顔に出るんですよ浜面。浜面の超わかりやすい丸見えの下心なんてリーダーの私にはお見通しなんですよ!」
滝壺「大丈夫、わたしは未だに繋ごうとする手をワキワキさせて結局引っ込める意気地無しのはまづらを応援してる」
浜面「ひでえ言われようだ」
腕を下げず肩だけを器用に落として浜面は溜め息をついた。
端から見れば両手に華に見えなくもないが一方は棘を潜ませた徒花である。
更に一方の華はタンポポの綿毛のようにフワフワと揺蕩い、そこに吹く風は浜面にとって追い風とはならなかった。
唯一の救いは、この場に更に毒を孕ませたマリーゴールドが不在であるという事。
浜面「(珍しい事もあるもんだな。フレンダが集まりに顔出さないってのも)」
そう。麦野沈利が引退し、入れ替わりに補充された浜面仕上が顔を突き合わせていた仲間…
麦野の後を継いでリーダーとなった絹旗、その右腕となる滝壺、それを支える第三の少女…
フレンダ=セイヴェルンの姿が見当たらないのである。
何でも急用が入ったとかなんとかで土壇場でのキャンセルと相成ったのである。
絹旗「まったく。浜面といいフレンダといい超たるんでます。春はまだ先なのに今から平和ボケですか?色ボケですか?」
腕を組みながら鼻を鳴らす絹旗。暗部が解散となり、未だ身の振り方も定まらず長い年月を経て尚…
滝壺「(きぬはた、もっと肩の力を抜いてもいいんだよ)」
475 = 468 :
麦野からアイテムを引き継ぐと言う重責を背負い、難行に気負う部分があったのだろう。
生来の気質から外れた張り詰めた空気の残滓は未だに絹旗の纏う雰囲気をやや硬質なものに変えていた。
一時ながら頭を張る重圧から解放されたのはとある夏の事件の時のみであったが、それはまた本編とは関係ない話である。
浜面「まあまあ。特別急ぎの用件も大事な案件もねえし、そうプリプリすんなって」
滝壺「きぬはた、かみじょう見るとピリピリする」
絹旗「ちょっ、超関係ないですよあのバフンウニは!プリプリもピリピリもしてませんってば!」
バッと浜面からドリンクをひったくるようにして一息に飲み干す絹旗。
そして空になったコップをぬるい!ともう一度浜面に取りに行かせる。
それをハイハイと頷きながら歩みを進める浜面は、さながら機嫌を損ねた妹を宥める兄のようであり――
滝壺「(きぬはたにとって、むぎのはお姉ちゃんだったんだね)」
上条が現れるまでの麦野は紛れもなく畏怖される存在であった。
恐怖政治とまでは行かないが絶対君主であった。しかし戦力的にも精神的にも支柱の一角を担う存在であった。
麦野が引退した理由や経緯は絹旗も当然理解出来ている。
しかし上条への感情的な反発までは未だ拭い去れてはいない。
上条と麦野が共に生きる事を最後まで認めなかったし、最大に尊重したのもまた絹旗だからだ。
476 = 468 :
絹旗「(あのバフンウニ超嫌いです)」
暗部が総解散し、目下荒事から些末な雑事まで引き受ける『便利屋』に転身した後も、麦野はあまり顔を出さない。出してくれない。
自分の都合で暗部を抜けアイテムを辞めた自分がいつまでも顔を出しては新リーダーである絹旗の立つ瀬がないと言う麦野の考えも理解している。
されど一抹の寂しさは拭いきれない。それは置き去り(チャイルドエラー)と言う出自を経て、『暗闇の五月計画』の被験体となった過去に起因すると絹旗は己を分析する。
絹旗「(超無意味ですね。こんな自己分析)」
脳裏を過ぎる、己と同系統の能力を持ちながら相反する運用方法を体得したとある『少女』の姿。
漆黒の夜の海を渡る鳥のような雰囲気を身に纏った『彼女』の嘲笑。
こんな詮無い物思いに耽っていると知れば、如何な哄笑と呪詛を唱えながら自分を侮蔑するだろうかと。
同じ穴の狢、蠱毒の中の蛇蝎、それは言葉尻ではない同族嫌悪、揚げ足取りではない近親憎悪。すると…
PiPiPiPi…PiPiPiPi
浜面「ん?絹旗、着信来てるぞ」
絹旗「!。メールです。ちょっと失礼しますね」
そんな思い煩いを断ち切るかのように鳴り響く着信音…そしてディスプレイに浮かび上がるは…
絹旗「…フレンダ?」
フレンダ=セイヴェルンの文字。それだけならば取り立てて柳眉を逆立てる必要はない。
問題は開かれたメールボックスの内容…そこには件名も添付ファイルもなく、ただ一行…
漢字変換すらままならない、たった八文字の用件…それを目にし、絹旗は目を見開いた
477 = 468 :
―――『ふれめあたすけて』―――
478 = 468 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
諸事情により更新は完全に不定期で相も変わらず書き溜め無しのノープランですが、よろしくお願いいたします。
それでは失礼いたします…
480 = 468 :
第十五学区・とあるゲームセンター
御坂「もう一回!もう一度!もういっぺん勝負よ!」
御坂妹「何度やろうと同じ事です、とミサカはスッポンのようにしつこいお姉様を死んだ魚のような目で見つめます」
14時21分。御坂美琴と御坂妹はとあるゲームセンターの筐体の前にて控え目な胸を張り合っていた。
至る所から眩い光と軽快な音楽、そしてコインがジャラジャラと吐き出される金属音…
そんな喧騒の坩堝の最中、ヒートアップの一途を辿る美琴が指差す先…其処には学園都市製のダンス・ダンス・レボリューションのエントリー画面。
御坂「やっとリズムとかパターンが読めて来たのよ!次は勝つわ!絶対に勝つ!」
御坂妹「考えるな、肌で掴め、とミサカは非業の死を遂げた伝説の功夫の言葉を引用します。それよりも抜け出して来て大丈夫なのですか?とロシアでの戦い以来監視の目が厳しくなったお姉様に遠回しに水入りを求めます」
御坂「うっ…そ、それは…」
その指摘に対し思わず御坂が口籠もる。寸鉄が如く放たれた御坂妹の舌鋒の鋭さに対し…
今頃かぶる予定もない角隠しすら意味をなさないほど怒髪天を衝いているであろう寮監の怜悧な眦より鋭く…
同時に、御坂の胸の深奥に潜む傷口に痛苦が走った。
御坂妹「…お姉様のお心もわからないでもありませんが、今しばらくは謹慎の手と監視の目が緩む時期を待たれては?とミサカは促します」
御坂「…そうなんだけどね…あはは…」
御坂妹はMNW…ミサカネットワークを通じ、ロシアに拠点を置くミサカ10777号を介して事のあらましを知っていた。
戦闘機を奪い取り、ただ一人の思い人の元に馳せ参じ、差し伸べた手が迎えた結末を。
それが初冬の兆しが見え始めた学園都市に吹き荒ぶ寒風よりも御坂の中に穿たれた心の虚に吹き込んでいる事も、全て。
御坂「…そうだよね、帰らなくちゃね…」
御坂妹「………………」
御坂「わかってたんだ。きっとあの時から。私はあの娘に勝てない、最初から勝負の土俵にすら立ってなかったんだって」
御坂「それは結果論では?とミサカはうなだれるお姉様の肩に手を置いて諭します」
御坂「ううん、もう結果は、結論は、結末は、出ちゃったから」
481 = 468 :
何とはなしに気まずい思いのまま御坂妹は画面の切り替わったネームエントリーに目を走らせる。
アーケードモードの第一位は『MSK』の文字が、協力モードの第一は『HMGM&MSGM』の文字がそれぞれ皓々と浮かび上がる。
同時に、影を落とし憂いを帯びた御坂の横顔をも光は否応無しに照らし出す。
御坂「言ったんだ。あの娘。“お前は、私を選んだじゃないか”って…それで、アイツは私の手を取らなかった」
御坂妹はロシア上空にて、『ベツレヘムの星』にて、如何なやり取りが上条当麻と御坂美琴の間に起きたかを知っている。
しかしそれはあくまで『情報』だ。一万人近い妹達と脳波と電磁波と感覚共有で繋がろうとも…
決して当事者(御坂美琴)の痛みを分かち合う事は出来ない。
それが傍観者でしかなかった10777号や10032号である自分達(シスターズ)の限界。
同位体(クローン)であろうと姉妹であろうと…独立した一人の人格と、一個の個性と、一つの生命と、唯一の存在であるが故の『人間』としての壁。
御坂「やる事が残ってるからって、巻き込みたくないからって、自分がやらなきゃいけないからって…取らなかった私の手を、アイツはあの娘と結んだ」
そう言いながら御坂は筐体の前から離れ、ゲームセンター内の休憩所の椅子に腰を下ろした。
後を追うようについて来た御坂妹は、自販機の前に立ちながらその話を聞く。
ジュースの銘柄を聞いて話の流れを変えようとしても、口を挟む事すら叶わない。
御坂「見たの。沈んでいく要塞の中に、キラキラ光る翼で飛び込んで行くあの娘を。その顔を見て思ったのよ。ああ、かなわない。ああ、負けちゃったんだなあ…って」
プラプラと子供のように投げ出した足を揺らしながら御坂は御坂妹へと肩越しに振り返った。
御坂妹にとっては鏡で見る自分よりも身近な親しみを覚える顔が、今は精一杯の笑顔を振り絞っているように見えてならない。
482 = 468 :
御坂妹「挽回の余地は本当にないのですか?とミサカは答えのない質問をお姉様に投げ掛けます」
御坂「わからない。でも、これが三度目だから。三度目の正直にならなかったから」
御坂は止めようとした。死地に赴かんとする上条当麻を。
一度目は『絶対能力進化計画』に絡んで、二度目は『後方のアックア』に対して、三度目は『ベツレヘムの星』にて。
しかしいずれも…上条は御坂を生かすために巻き込まず、麦野を連れ立ち、伴い、従えて…
幾度も巨大な敵に挑み、何度も強大な敵を阻んだ。
御坂「私とあの娘の何が違ったんだろうって思った事もあった。序列だって一つしか変わらない。私だって戦えた、アイツと闘えたはずだったのにって」
それは麦野が恋人で、自分は友人に過ぎないからか?
そう己自身と上条自身に何度となく問い掛けて、問い掛けかけて止めるのを繰り返した。
ただ一つの引かれた線が、例えようもなく深い溝と高い壁に阻まれているようにすら感じられてならなかった。
御坂「あんた、インデックスって覚えてる?」
御坂妹「はい。ミサカにくーるびゅーてぃーなる渾名をつけた彼等の同居人ですね、とミサカは真っ白な修道服を脳裏に思い浮かべます」
御坂「そのインデックスも私と同じだった。力になりたいのに、助けてあげたいのに、蚊帳の外に置かれる、入り込めないって」
暖かいご飯、朗らかな団欒、他愛のない喧嘩、『家族』としてのぬくもりの中にあってさえ…
いざ闘争の幕が上がると、インデックスは舞台の演者でなく最前列の観客に戻されてしまう。
ただの恋人同士の間柄に入り込めない程度ならばやきもきこそすれど、こんな火を飲み込むような思いなどせずに済むのにと。
御坂「それはあんたが大事な家族だからよ、って言ったら“じゃあたんぱつは?”って聞き返されちゃった…ぐうの音も出なかったなあアレには…」
答えのない間違い探し。いや、自分では気づいている、気づいていた間違いと言う正解を認めたくないだけだ。
483 = 468 :
御坂「(きっと、あの時取れなかった手の距離が…そのまま私とアイツの距離だったんでしょうね)」
空を切る手、重ならない指先、風にかき消されてしまった叫び。
上条当麻が生き延び、命長らえていたからこそ浸れる悲嘆。
あれが今生の別れとなってしまっていたら、先に息絶えてしまったのは自分の心、先に死に絶えてしまったのは自分の魂だったであろう事は想像に難くない。
御坂「(私、負けてすらなかったんだ)」
失恋ならばいつか傷は癒やされるだろう。悲恋ならばそれは自らの礎となるだろう。
されど…種無くして草は生えず、草生えずして花開かず、花開かずして実は結ばれない。
そのいずれの道筋も道程も道行も開かれぬままに、ゴールテープを切る事はおろかスタートラインにすら自分は立てなかったと…御坂は携帯電話を取り出し現在時刻を確かめた。
―――そこに、あの日のストラップは既にない―――
484 = 468 :
とある星夜の偽善使い(フォックスワード)の者です。少しだけ更新させていただきました。それでは失礼いたします…
485 :
ひょおおおう続きktkr!!
486 :
相変わらず凄い文章力って言えばいいのかな……
ずっと待ってましたよ続編!!!!
487 :
ktkr
待ってました!!乙
488 :
キター
始まって早々もう胸が苦しいんだがどうしてくれるこのやろう
結婚してくれ!
やっぱり設定はまるっと継承されてるのかしら?
489 :
偽善使いの中の人は震災大丈夫だった?
490 :
今晩は赤飯だな
491 :
乙!
相変わらずすげぇ
ところで「HMGM&MSGM」って誰のこと?
麦野と上条さんなの?
492 = 485 :
■■とあわきん
493 = 468 :
~第十五学区・とあるショッピングモール~
麦野「う~ん…あんたって何着ても今一つパッとしないわねえ」
上条「悪うござんしたね…つか上条さんはいつまで一人マネキン5をやれば良いんでせうか?」
麦野「う~ん…あんたモード系も映えないわね…どうするか」
上条「…聞いてねえし…」
14時35分。上条当麻と麦野沈利は学園都市最大の繁華街を有する第十五学区のブランドショップに足を踏み入れ…もとい引きずり込まれたのである。
店内はシックながらも目玉が飛び出しそうな…そして値札の桁数を見て目を疑いそうな品々ばかり。
その明らかに浮き場慣れしていない様子で上条は居心地悪そうに肩を竦めていた。
上条「余所行きの一張羅なんて別に良いんだけどなあ」
麦野「彼氏改造計画」
上条「!?」
上条当麻はレベル0(無能力者)である。微々たる奨学金と実家からの仕送りをやりくりしつつ、同居人の高すぎるエンゲル係数に毎月頭を悩ませながら火の車で自転車操業する苦学生である。
物持ちの良い彼の所有するそれらは着古した部屋着が大半で、ワンシーズンに一着、気に入った服を購入するにとどまるささやかな金銭感覚の持ち主なのだ。
しかしながら、今彼を着せ替え人形のようにとっかえひっかえしている女性はそれを是としない。
麦野「あんた素材はいいんだし、磨けば光るし伸びしろだってある。こんなの飾りみたいなもんだけど、私が連れて歩いてるのに頭打ちなんてイヤだから」
上条「なんだかなあ…」
麦野「それにさ」スッ…
上条「!」
上条の身体に寸法を合わせるようにして重ねた服ごと、麦野は腕を回して抱きつく。
試着室の遮られたカーテン内とは言え、傍目から見れば寄せた身を擦り付けるように。
494 = 468 :
麦野「あんたと付き合うまで、こんなのくだらねえって思ってた。だけどさ、今なら少しわかる気がするんだ」
回したか細い腕がその背に触れ、たおやかな指先が彫刻を愛でるように滑り落ちる。
寄せた鼻面が上条の胸元に擦り付けられ、鼓動に耳をそばだてるようにして。
麦野「ハズレの映画にガッカリして、一人前なのは値段だけの店でお茶して、今もこうやって何着せたらあんたに似合うかウンウン頭悩ませて…私が馬鹿にして来た事が、あんたがいるだけで今こんなに嬉しい」
猫が身を擦り付けて匂いつけするそれにも似て、縋るそれとは似て非なる行為。
微睡みの中見る夢に笑みを浮かべるように目を細め、僅かにこもる手指の力。
かつて名を馳せた文豪は言った。人間が一生の内、真に幸福だと感じられる月日は二週間に満たないと。
なればその二週間の内のほんの数分、ほんの一時であろうと願わずにはいられない。永遠に時が止まれば良いのにと
麦野「取り戻した平穏も、満更馬鹿にしたもんじゃないんだってさ」
上条「………………」
麦野「こんな事、私が言うのは似合わない?」
上条「いいじゃねえか」
同時に上条の指先が麦野の栗色の髪に埋まる。その手付きに麦野の眦が下がり瞳が閉ざされる。
インデックスがスフィンクスを撫でている時と同じアクションだなと胸中で独り言ちながら。
上条「お前は変わったんだよ、沈利。でもきっとそれは悪い事じゃない。これからだってどんどん変わっていけるさ」
麦野「――私の世界を変えたのは、あんただよ当麻」
転戦に次ぐ転戦、連戦に次ぐ連戦。潜り抜けて来た戦禍、生き抜いて来た戦渦、駆け抜けて来た戦火。
今手にしている平穏が一時のそれなのかはわからない。されど
麦野「(あんたなんだよ。お前だけなんだよ)」
願わくば、その仮初めの平和が一時でも長く続きますように…そう二人は願った。
そして、星に祈るより儚い願いは終ぞ果たされる事はなかった。
星の瞬きのように短い、束の間の平穏の終わりはこの数時間後の事であった。
495 = 468 :
~第十五学区・噴水広場、時計台付近~
スキルアウトA「ようよう!こんなところで誰と待ち合わせしてるんだい?」
スキルアウトB「友達と待ち合わせ?彼氏と待ち合わせ?」
スキルアウトC「暇してるんなら待ち人来るまでお話しようよ」
フレンダ「(結局、こういうカス当たりしか寄って来ないって訳よ)」
時は僅かに遡り12時00分。フレンダ=セイヴェルンは噴水広場にある時計台にて人待ちをしていた。
次第に冷え込みが増し行く中、僅かに猫背になりつつポケットに入れ、その脚線美を摺り合わせるようにして暖を取っていた矢先にかかった声音…
フレンダの同僚とはまた異なる雰囲気のスキルアウト達に声をかけられたのである。
されどフレンダの碧眼には面倒事を厭う諦観にも似たくすんだ光だけが宿り、そこに喜色の色はない。
スキルアウトA「あれー?君ガイジンだよね?もしかして日本語わからない?」
スキルアウトB「英語で話し掛けたらわかるかあ?今ヒマってなんつったっけ…are you free?」
スキルアウトC「ギャハハハ!そりゃ“タダでヤラしてくれ”だろ!」
フレンダ「(浜面よりキモいって訳よ。どうしよっかな。息臭いし殺っちゃおうかな)」
カップル達の待ち合わせ場所として名の知れたそこで一人佇む自分に声をかけて来るのだから最初からろくでもない人種である事に疑いようはない。
しかし、ろくでなしはろくでなしであって自分達のような人でなし(暗部)ではない。
周囲は関わり合いになるまいと遠巻きに見やるか、目を合わさず足早に通り過ぎて行くのみではあるが――
ここで一悶着やらかせばすぐさまアンチスキルがやって来るだろう。
良くも悪くも暗部の後ろ盾を失ったフレンダにとって今や殺しは御法度なのだから。すると――
「ジャッジメントですの!」
スキルアウトABC「!?」
496 = 468 :
徹底して無視を決め込んでいたフレンダに対し尚言い寄ろうとしていたスキルアウト達の背後からかかる声色。
やや大人びた声にお嬢様然とした言葉使い、そして名乗られた所属――
「迷惑防止条例をご存知ありませんの?そちらの女性に何かご用がおありで?」
スキルアウトA「はあ?なんだよテメーには関係な…」
スキルアウトB「よっ、よせって…コイツはやめとけって…」
スキルアウトA「ああ?たかが風紀委員だろなにビビって…」
スキルアウトC「チッ…オイ行くぞ」
フレンダ「?」
最初に目についたのは、名門と名高い常盤台中学の制服…に、『霧ヶ丘女学院』のブレザーが肩掛けに羽織られた小柄な体躯。
「災難ですの。お怪我はございません事?」
フレンダ「大丈夫って訳よ」
「それは重畳ですの」
次に目についたのは、そのか細くもしなやかな二の腕に巻かれた『風紀委員活動第一七七支部、JUDGMENT 177 BRANCH OFFICE所属』の腕章…
そして細く括れた腰に巻かれた、円環を連ねたような『金属製のベルト』
「この辺りもだんだんと…この時間から良からぬ輩が闊歩し始めておりますの。お気をつけあそばせ?」
その可憐さと上品さのちょうど中間点で折られたスカートの中には『鉄矢』を束ねるホルスターが太腿に巻かれ…
いつの間に手にしていたのか、大ぶりの警棒にも似た『軍用懐中電灯』が弄ばれていた。
フレンダ「…風紀委員(ジャッジメント)?」
「ですの」
そして…フレンダは預かり知らぬ事だが、トレードマークでもありチャームポイントでもあったリボンを解き…
緩やかでなだらかなウェーブのかかった髪を初冬の風に靡かせるままにしているその立ち姿が、ひどく目に焼き付いた。
「―――白井黒子、と申しますの―――」
497 = 468 :
~第十五学区・噴水広場、木陰のベンチ~
白井「待ち合わせ?」
フレンダ「妹。結局、待ち合わせ時間に遅れたって訳よ」
12時10分。フレンダと白井は何とはなしに自販機にてクリームティーとアールグレイを買い、話し込んでいた。
白井からすれば先程絡んで来たスキルアウト達が戻って来る事、ないしそう遠くない場所からまだこちらを窺ってないかと言う考えからその場に留まっていた。
巡回パトロールの交代時間が過ぎ、ゆとりが生まれたのもその一因であろう。
白井「迷子になっている可能性はございませんの?貴女の妹とおっしゃるならば、良くも悪くも目立つと思いますの。支部に問い合わせて…」
フレンダ「そこまでしてもらわなくても構わないって訳よ」
反面、フレンダはやや居心地悪く感じていた。いくら暗部が総解散となった現状があると言えど…
フレンダ「(…はあ…)」
元、闇の住人と現、法の番人の取り合わせは得も知れぬ疼痛を伴って肩身を狭める。
後ろ暗い過去を持つ人間特有の、ある種の習い性と言って良い。
それをクリームティーの缶を口に運び、一口飲み干した後白井は向き直った。
白井「そうですの…もし何かありましたら最寄りの支部にお問い合わせ下さいな」
フレンダ「どういたしまして、って訳よ」
そこで会話は一応のスタッカートを刻んだ。すっくと白井は立ち上がり、空になった缶を――
ヒュンッ…カラン!
フレンダ「(テレポート?)」
フレンダの目の前で手中にあった空き缶がゴミ箱に転送された。
空間移動能力者。かつて、フレンダといがみ合った赤髪の少女を彷彿とさせる立ち姿。
その去り行く後ろ姿に覚える奇妙な既視感、異物感すら覚える看過出来ない引っ掛かり。
しかし白井はそんなフレンダの向ける眼差しに気づいているのかいないのか
498 = 468 :
『フリソソーグネガイガイマメザメテクー♪カギリナイミライノタメニー♪』
白井「はい、白井ですの…えっ?また“御坂先輩”が抜け出しましたの!?」
フレンダ「(御坂!?)」
取り出した近未来的なフォルムを持つ前衛的過ぎる携帯電話の着信に出る白井。
その通話口から漏れ聞こえた『御坂先輩』という忘れがたい名前。
以前、麦野が引退してすぐに舞い込んで来た『絶対能力進化計画』に絡んだ研究所で会敵したレベル5(超能力者)…『御坂美琴(レールガン)』の名前が想起された。
フレンダ「ちょっ、待っ――」
ヒュンッ…
しかし、引き留めんとするフレンダの制止の声が届くより早く…白井は先を急いだのか空間移動にてその姿を消失させていた。
呆けたように空を掴んだ手を引っ込め切れないフレンダを残して
フレンダ「…結局、なんな訳よ?」
見え隠れする御坂美琴の影、重なる赤髪の少女の面影。
待ち人は来たらず、去る人のみがフレンダを通り過ぎて行く。
手にしたアールグレイの缶が熱を失う程度の短い時間。その時――
499 = 468 :
「―――フレンダお姉ちゃん―――」
500 = 468 :
彼方より駆けて来る、軽やかな足音と甘やかな声音。
純白とピンクを基調とし、ふんだんにあしらわれたフリルとレース。
豪奢な金糸の髪を揺らしながら石畳を蹴るワインレッドのタイツを纏った姉譲りの脚線美
フレンダ「フレ―――あれ?」
「まっ、待って欲しいんだよ!いきなり走らないで欲しいかも!」
…と、駆けて来る金髪の少女の後に追いすがるようにして走って来るもう一つの人影。
それは少女達とは対照的な白銀の髪と、純白と白金を基調とした修道服。
フレンダ達がかつて居を構えていた国にあっては珍しくもない修道女、されど目にした事のない型の法衣。
フレメア「フレンダお姉ちゃん!」
フレンダ「フレメア!」
飛び込んで来る小柄で華奢な肢体…フレンダの実妹、フレメア=セイヴェルンを抱き止める。
久方振りの再会、今し方の邂逅、そしてそんな姉妹の抱擁を見やり…微笑みかけるは件の修道女
「良かったねふれめあ!お姉さん見つかったんだよ!」
フレメア「うん!ありがとう!」
フレンダ「…フレメア、結局、その娘はどこの誰って訳よ?」
「うん?私の事を聞いてるのかな?ふふん!なら答えてあげるが世の情けなんだよ!」
かくして物語はここにて第二幕を上げる。これより紡がれるは新たな歴史、ここより開かれるは新たな世界の入口――
みんなの評価 : ★★
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