元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」2
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
書き手が立てられないようなので
前スレ
麦野「ねぇ、そこのおに~さん」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1273075556/
2 :
>>1さんスレ立て乙です。お力を貸していただきありがとうございます…
遅れましたが、とある星座の偽善使い(フォックスワード)第三部『借りっぱなしのプール編』は明日21時の更新予定です。
それでは>>1さん重ね重ね乙です…ありがとうございました。
3 :
期待してる
むぎのんお供に引き連れて
本編再構成やってもいいいややってくださいおねがいします
4 :
スレ立て乙乙!
ここまで死亡フラグ立ちまくってて大丈夫か…主に麦のんの精神がwww
ラブラブイベントの全部が絶望endへつながりそうで怖い。
これで記憶喪失になったらインソックスさん発狂した麦のんに焼きごての刑にされちまいそうだ…
5 :
スレの最初から濃厚な濡れ場とか作者は狙ってたな……?
6 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。新スレ改めて>>1さんお疲れ様です。
書かせていただける場と機会をもらえて本当に嬉しいです。
投下は21時ですが、今夜で第三部は終了です。簡単にですが予告を…
・麦野沈利と背中の爪痕
・上条当麻と消える飛行機雲
・土御門元春と着信アリ
・エピローグ『No Buts!』
です。上条と麦野の短い夏、これにて終了です。よろしくお願いいたします。
7 = 6 :
~第三学区・プライベートプール~
上条「むっ、麦野さん?どうしてもここじゃないとダメでせうか?」
麦野「不満?なんならもっと広い所借りて――」
上条「広すぎるだろ!二人だけって時点で!!」
上条当麻と麦野沈利は第三学区にある高級プライベートプールにいた。
トランクスタイプの上条と黒のビキニスタイルの麦野の二人きりである。
周囲は当然ながら無人であり、堆く広がる入道雲以外に二人を見下ろす者はいなかった。
上条「どうなってんだよレベル5の財力って…学校か市民プールしか行けない上条さんには想像も出来ない世界です」
麦野「お金は使わなきゃただの数字よ。使ってこそ意味があるの」
上条「その数字すらオレには縁がないっての!」
麦野「それに…」
バーン!
上条「いっ!?ったあああぁぁぁー!」
麦野「アンタ、“そんな”背中で本当に市民プール行くつもりだったの?」
剥き出しの上条の背中に麦野は平手打ちを食らわした。さほど力は込めていないが上条には叫ぶほど痛がる理由があった。それは…
上条「~~~沈利が爪立てるからだろうが!!」
麦野「だよねー。だいぶ治ってきたけどまだ蚯蚓腫れ引いてないし」
上条の背中を走る十指の爪痕。誰の目にも明らかなそれは、二人の今現在の関係性をこれ以上なく雄弁に語るそれだった。
麦野「まっ、そういうのも男の勲章かも知れないけどこれからはそういう事にも気を使いなさい――アンタは私の男なんだから」
フフンと鼻を鳴らして満足度に腰に手を当てる麦野。未だヒリヒリする背中を後ろ手にさする上条が恨みがましい視線を向けるもなんのその。
上条「麦野さん…なんか当たりがキツくなってないでせうか?」
麦野「気のせいね。さっ、泳ぎましょ(マーキングよマーキング)」
依存心を脱したとは言え麦野沈利は独占欲と執着心が人一倍強い女である。ましてや相手はお人好しかつフラグを乱立させる上条である。念はどれだけ入れても不足はない。
麦野「(同じ女ならわかるでしょ。あんな爪痕立てるような女相手にしたらヤバいって)」
恋は戦争、と誰かが歌っていた。その通りだと麦野は真っ黒なイイ笑顔を浮かべた。
8 = 6 :
~第三学区・プライベートプール2~
上条「(女の子って…わっかんねえ生き物だよな…)」
上条はとりあえずプールの端から端までを目標にクロールで泳いでいた。背中の痛みはだいぶ引いたし水に触れても大丈夫だ。だが…
上条「(なんて言うか…たった数日で化けるっつーか…どんどん変わってくんだな)」
ふと水底に足をつけて立ち、プカプカと水面に揺蕩うプールボートの上の麦野を見やる。1ヶ月前に出会い、数日前から交際を始めている年上の彼女を。
麦野「ん?どしたのかーみじょう?足でもつったー?」
上条「いやー!大丈夫だー!」
麦野「じゃあなによ?…私の水着姿に見蕩れてたとか?」
上条「…実は」
麦野「ばっ…ナマ言ってんじゃねえぞクソガキ。元が良いんだから当たり前でしょ…それに」
そこでフロートを進めドンっと上条に体当たりし、耳元に囁きかける麦野
麦野「…水着なんかよりもっと恥ずかしい所見てるくせに」
上条「!!!」
チャプ…チャプ…
プールの波が打ち寄せる音と、遠くからは死に急ぐ汗ばんだ蝉の声…
麦野「…まだちょっと痛いんだからね」
上条「悪い…夢中だった」
麦野「いいよ。嬉しかった」
青天に座す真昼の月は高く、アクアブルーの水面とクリアブルーの迫間で二人は互いを見つめ合う。通り抜ける風が濡れた素肌を優しくさらって、麦野の緩く巻かれた柔らかな栗色の髪を揺らす。
麦野「嬉しかったよ。当麻」
上条「――――――」
麦野「だから…聞いてちょうだい」
その微笑が、何故か上条には消え入りそうなほど儚く見えた。触れれば消えてしまう真夏の陽炎のように。
麦野「あのスクランブル交差点で、あの一九学区の高速道路で…私、アンタを二度も死に目に合わせた」
上条「それはもう済んだ話だろ?一度目は沈利が助かった。二度目はお前が…最終的にはオレを助けてくれたろ?それでいいじゃねえか」
麦野「ううん…パッと見わかんないけど、お風呂入った後とかやっぱりわかる。うっすら残った白い傷跡がさ、浮かんで見えるのよ」
9 = 6 :
ボートの上から麦野が手を伸ばす。冥土帰しの腕を持ってしても朧気に残る原子崩し(メルトダウナー)の光芒が穿った古傷。
それを艶めかしい手付きで麦野は触れる。愛おしむように慈しむように。
麦野「それを申し訳なく思う気持ちと、それを嬉しく思う気持ちの両方が私にはある…私は、歪んでるからね」
上条「………………」
麦野「だから、やっと私にもアンタから痛みを与えてもらえた気がする…やっとアンタのモノになれた気がする…」
麦野「ありがとう」
麦野「壊す事しか知らない私に、たくさんのモノをくれてありがとう…当麻」
いつものような下品な悪態も付かず、かといってお姉さんぶるでもない…始めて口づけを交わしたあの星空で見たような、洗い流されたように透徹な笑み。
上条「…壊す事しか知らねえってのはもう無しにしようぜ沈利」
あの時と違うのは水着を着ている事と『光の翼』がない事くらいか、などと思いながら上条はボートの麦野に手を差し伸べる。『アルカディア』でのローズバスの時と同じように。
上条「前にも言ったけど…リンゴの皮むきだって上手いし、淹れてくれた紅茶はあったかかった。退院祝いに鮭料理作ってご馳走してくれたろ?」
麦野もその手を躊躇なく取る。片足をプールへと入れる。それを上条が両腕でしっかり抱き留める。
上条「第一九学区の時だって、最後は必死になってオレを助けてくれた…もうそれでいいんじゃねえか?」
麦野「…そうかしらね…」
寄せては返す緩やかな波の間に二人は抱き合う形で互いに濡れた身体を温めあっていた。ここに辿り着くまでに何度も殺し合いを繰り広げた偽善使いと首狩りの女王が。
上条「…オレさ、ある人に言われたんだ。“欲しいもんがあるなら力づくで奪え。守りてえもんがあるなら腕づくで浚え。”って」
麦野「…どっかのホスト崩れのチャラ男みたいな言い草ね…それで?」
上条「…なんつーかあんまそういうの好きじゃなかったんだけどな…今ならその人の言う事が少しわかる気がするんだ」
今、消え入りそうな夏の幻を抱くように身を寄せ合っているなどと誰が知れただろう?あの血溜まりの路地裏での出会いから。…それはきっと誰よりもこの二人が信じられはしなかっただろう。
10 = 6 :
上条「…オレは、これから先もずっと…沈利を離したくない…そう思ってんだ」
麦野「うん…私も、アンタと一緒にいたい…これからもずっと…アンタから離れたくない」
身を寄せ合う。入道雲が、水面が、夏の空が一体となった青のパノラマの下一枚の絵画のように。
後に麦野沈利は振り返る。この時、子供のようにはしゃぎまわっていた数日間…自分達はきっと何かを感じ取っていたのだと。
逃れ得ぬ永遠の離別、免れ得ぬ永久の惜別の予感を
二人の短い夏の終わりは、もう目の前だった。
~第三学区・プライベートプール更衣室~
麦野「じゃ、髪乾かしたら出るからちょーっと先に行って待っててくれないかにゃーん?かーみじょう」
上条「ああ!じゃあ出入り口の自販機の所でな!」
二時間後、プールから上がった二人はそれぞれ待ち合わせ場所を決めて一度別れた。
麦野「ふんふふん♪ふんふふん♪ふんふんふ~ん♪」
丁寧にドライヤーをかけ、鼻歌混じりに更衣室の鏡を見やる。こういう時男の子は楽でうらやましいな、などと詮無い事を考えながら――
『pipipipi!pipipipi!マヨエー!ソノテヲヒクモノナドイナイーカミガクダスーソノコタエハー…』
麦野「…チッ…」
鼻歌を止め、ドライヤーを切り、着信が鳴り響く携帯電話の通話ボタンを押す。画面は番号非通知。『電話の女』ならば番号通知不可と表示される。キナ臭い匂いがした。
麦野「―もしもし?」
?「こん・にち・わ~」
尻上がり気味のイントネーション、電話越しにも透けて見える不敵な笑み、それでいて拭い去れないキナっぽい香り…その声音に麦野は聞き覚えがあった。
土御門「せっかくのデート中のところ悪いんだぜい。ちょーっといいかにゃー?」
麦野「あの時のグラサン野郎かテメエェェェェェェ!!!」
麦野の怒号が轟く。夜の歩道橋で出会した同じ暗部の匂いがする金髪グラサンアロハシャツの男の声音。忘れようもない記憶。
11 = 6 :
土御門「おーおーカミやんの時とはエラい違いだにゃー…レベル5最恐の第四位でも彼氏の前じゃ」
麦野「関係ねえよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!!その趣味の悪いグラサンには出歯亀機能もついてんのかァ?ツラ出せ狸野郎!そのニヤケ面上下左右にブチ割って、腐ったハラワタまでジュージュー真っ黒焦げのイイ男にしてやるからさぁぁぁっ!」
上条との三度目の戦いから奥底に封じ込められた内なる怪物の目を覚まさせる。己の闇を乗り越えた麦野はそれを飼い慣らす。同じ暗部なら容赦も躊躇も逡巡もしないと。
土御門「狂いっぷりは相変わらずだな原子崩し。吼えるな。今日は上からのメッセージじゃない。お前個人に対する助言だ」
土御門に動じた様子はない。聞く人間の鼓膜はおろか叫ぶ人間の声帯を潰すような怒声を聞いても揺るがない。
麦野「はぁん?アドバイスぅ?遅めのランチにオススメの店でも教えてくれるって?…その舐めた口血吐く以外に使えなくしてほしい?静脈ブチ裂かれてテメエの血で溺死してぇのか何様なんだよテメエはァァァッ!」
土御門「聞け。第六位からの確定情報だ。七月二十日から上条当麻に向けた目を離すな、とな」
麦野「はあ?」
第六位、という単語に麦野のドスの効いた声音が水を打ったように止む。この間は学園都市上層部、今度は行方不明の第六位からの伝言?何の冗談だと再び罵声を上げようとするが――
土御門「第一九学区」
麦野「!?」
土御門「あの時上条当麻が自分一人の力と足だけで辿り着けたと本当に思うか?」
麦野「なっ、にをっ…!」
土御門「完全下校時刻も過ぎ、足もないまま第三学区から第一九学区まで誰の助けもなくこれたとでも?」
麦野は覚えている。あの月下と星空の下に上条が現れた時…彼は三人乗りのバイクで来た。残る二人は暗がりで見えなかったが、上条はあの場にいた滝壺に『友達』と紹介していた。
麦野「(もしかしてあの場に第六位が?)」
なら同乗した滝壺ならわかるか?金髪野郎ではないもう一人を…いや違う。今考えるべきは第六位の正体ではない。どんな能力かはわからない。だがそれは重要ではない。
麦野「(当麻が…危ない!?)」
12 = 6 :
上条とアイテムの面々しか知らないはずの『ほしのみえるばしょで』という手掛かりを背景なしのノーヒントで見抜き、上条を目的地まで手助けしたであろう第六位の言葉…くだらないジョークと笑い飛ばすには重い一言だった。
土御門「飲み込めたな?話はそれだけだ。この問題に学園都市は一切関与しない。あくまでもお前と上条当麻に関わってくる。話はそれだけだ。ああそうそう…」
だがはぐらかす土御門はいったん言葉を切り…改めて――
土御門「オレは黒よりもスク水の方が好」ブツッ…ツー…ツー…
麦野「…七月二十日…か」
土御門の戯れ言を断ち切る。上条当麻に迫る危機。どの勢力からの手かそれすらわからない。情報は圧倒的に足りていない。
念の為、などと言う甘い警戒に終始すれば間違いなく何かを失う予感がする。
麦野「“欲しいもんがあるなら力づくで奪え。守りてえもんがあるなら腕づくで浚え”…ね」
青臭い言葉だ、甘ったるい言葉だ、男の身勝手な言葉だ、女は男の持ち物じゃない。だがしかし
麦野「そうさせてもらうわ」
麦野沈利は選んだ。血塗れの手で上条を救ったあの日から。壊すことしか知らない人間が初めて選んだ、誰かを守る戦いを。
偽善使い(かみじょうとうま)と同じ生き方を――
~第三学区・プライベートプール外苑~
麦野「お待たせ」
上条「おう」
土御門元春からの警告から十分後、麦野沈利は出入り口で待ち合わせしていた上条当麻と合流を果たした。
先程まで水を浴びてぺちゃんこだった特徴的なツンツンヘアーも照りつける直射日光を浴びて復活している。
上条「ずいぶん時間がかかってたみたいだけど、やっぱ女の子の身嗜みって大変なんだな」
麦野「ああ…耳が腐りそうなイタズラ電話がかかってきてね。ブチ切ってやったわ」
上条「なんですと!?」
麦野「今の水着は黒より他のが似合うってさあ~ねえ~かーみじょう私怖ーい♪ストーカーかも知れな~い☆」
驚愕に目を見開く上条の腕に寄り添いながら麦野はわざとらしく猫なで声を出してみせる。
同時にこうも考える。『他人の心配をする前に自分の心配をしろ』と
13 = 6 :
麦野「(フレンダ達は使えない。なら上条に今一番近い位置に私が鍵になる)」
敵勢力の正体が暗部なら同じ毒を以て制する。だがそれもわからないままフレンダ達を投入する訳には行かない。
これが『仕事』ならば麦野はアイテムのメンバーに『死』にも等しい命令を躊躇なく下す。躊躇いなく下せる。
だがこれはいわば麦野個人の私情であり私的な理由だ。そんな理由でアイテム(道具)は使い潰せない。ならば
麦野「(私は当麻を守る盾にはなれない。けれど当麻の敵を屠る剣には――なれる)」
全ての幻想を破壊する上条の右手を、全ての物質を崩壊させる自分の左手が補う。
上条が全ての人間を救うなら麦野は全ての障害を薙払う。
それが血塗られ、壊す事しか知らない麦野の手が掴んだたった一つの冴えた偽善(やりかた)
麦野「だから…恐いからしばらく当麻の家にいてもいい?」
上条「はい!?」
どんな稚拙なやり口も選んでいられない。ようやく手にした彼女という立場も最大限利用する。
お人好しの上条の優しさにつけ込む事もいとわない。必ず転がりんでみせる。
麦野「三食昼寝エッチ付き…悪くない条件だと思うけど?それとも私がストーカーに襲われちゃってもいーい?かーみじょう」
病んでいようが歪んでいようが狂っていようが構わない。この上条当麻(マスターピース)を守るためなら――
麦野「(私は命も惜しくない)」
そう思えるから
14 = 6 :
~数日後…第七学区・上条当麻の家~
上条「うげっ!?はい…はい。はー…わかりました、行きますよ…」ピッ
麦野「また補修?アンタも大概ね…」
麦野がいもしないストーカーを理由に強引に上条の部屋に転がり込み護衛についてから数日…あの第三位に一晩中追い掛け回されたり、ATMカードを飲み込まれたりと言ったささやかな事件を除けば平穏な日々であった。
たった今朝っぱらから携帯で補修の呼び出しをくらった上条を麦野は呆れた顔で見やり、テレビをつける。
『はい!ウェイクアップTVです!では朝のヒットチャートの時間です!』
上条「悪い麦野。布団干すから窓開けてくれ」
麦野「はいはい」
呑気なアナウンサーが朝のCD売り上げランキングを発表している。上条はドタバタと朝の支度をしながらも、二人で使っているベッドの布団を干そうとベランダを空け――
そこで出会ってしまった。
上条「!?」
麦野「…なによこれ」
二人してベランダに出てみれば、『それ』は物干し台に引っかかっていた。
上条「し、シスター…さん?」
麦野「…生きてんの?それとも死に損なってんの?」
??「うう…もう一歩も動けないかも…」
麦野の制服と同じ純白を基調とした修道服『歩く教会』を身に纏った…麦野よりずいぶん幼く見える少女が
『はい!では次の曲は学園都市で今もっとも熱いナンバー!五週連続トップテン入りの一曲…』
呑気なアナウンスがテレビから流れる音しかしない…上条は絶句し、麦野は沈黙している。聞き慣れたイントロが番組から流れる。
そうだ…この曲は――
禁書「ご飯くれると嬉しいな」
『川田まみのNo Buts!です!』
七月二十日…運命の日。その白い死神は終わりの始まりを連れて来た。
――科学と魔術が交差する時、物語は始まる――
とある星座の偽善使い(フォックスワード)第三部完
15 = 6 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下及び、第三章はこれにて終了です。
次回、最終章「禁書目録」編に入ります。ここからインデックス、ステイル、神裂も登場いたします。
上条と麦野の短い夏、ずいぶん膨らんでしまいましたが…次回もよろしくお願いいたします。それでは失礼いたします。
16 = 4 :
乙。最後の最後で二期オープニングもってくるとかやべェ…何回イッたかわかンねェな。ズボンの中がぐちゃぐちゃだ
17 :
むぎのんも一緒にいる・・・
ハッピーであってくれ
18 :
むぎのん記憶喪失フラグか...?
19 :
20 :
作者超乙!そして>>19gj!
最初>>18の意味がわからなかったけど
>>その微笑が、何故か上条には消え入りそうなほど儚く見えた。触れれば消えてしまう真夏の陽炎のように。
>>その微笑が、何故か上条には消え入りそうなほど儚く見えた。触れれば消えてしまう真夏の陽炎のように。
>>その微笑が、何故か上条には消え入りそうなほど儚く見えた。触れれば消えてしまう真夏の陽炎のように。
でうわああああああってなったwwwwwwwwwwww
てめぇらずっと待ってたんだろ!?麦のんの記憶を消さなくてもすむ、インデックスが叩かれなくてもすむ・・・
そんな誰もが笑って、誰もが望む最高なハッピーエンドってやつを。今まで待ち焦がれてたんだろ?
こんな展開を・・・何のためにここまで歯を食いしばってきたんだ!?
てめぇのその手でたった一人の麦のんを幸せにして見せるって誓ったんじゃねえのかよ?お前らだってハッピーエンドの方がいいだろ!?
鬱エンドなんかで満足してんじゃねえ、命を懸けてたった一人の女の子を守りてぇんじゃないのかよ!?
だったら、それは全然終わってねぇ、始まってすらいねぇ・・・ちょっとくらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!
手を伸ばせば届くんだ!いい加減に始めようぜ、作者!!
という訳でハッピーエンドきぼん
21 :
No Butsが脈絡無さすぎでワロタ
ああ、乙です
22 :
このむぎのん上条さんに惚れすぎだろ・・バッドエンドにしたら許さない絶対にだ。
小清水は許した。
23 :
PSPとある魔術の禁書目録の麦野沈利、お願いできますでしょうか
皆さん、こんにちは!沈利です!(^▽^)
24 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
たくさんのレスをありがとうございます。いつも後押しされています。
そして>>19さん…素敵なロゴをありがとうございます。保存して今現在待ち受け画面にさせていただいています。最高のガソリンです。
今日は午後から半休がもらえたのでこの時間ですが投下させていただきます。最終章突入です。簡単な流れは
・とあるファミレスの暴食魔神(インデックス)
・とある高校の第六位(ロストナンバー)その2
・とある神父の魔人戦線(レベル5)
です。多くなりますがよろしくお願いいたします。
25 = 24 :
~第七学区・ファミレス『ジョセフ』~
禁書「ぷはー!やっとお腹が動いて来たんだよ!」
麦野「…アンタまだ食べるつもり?暴食はアンタの宗派じゃ七つの罪の一つにあたるんじゃないの?」
禁書「私にはインデックスって名前があるんだよ!ちゃんと呼んで欲しいかも!」
麦野「…話し聞けよクソガキ。さらっと流してんじゃないわよ」
禁書「このくらい朝飯前だから罪にはあたらないんだよ!」
麦野「私と当麻の朝ご飯まで食べといて何言ってんの?その小さい顔、ステーキプレートでジュージューされたい?」
禁書「しずり、見た目より怖いかも!」
麦野「馴れっ馴れしいんだよクソガキ!!」
麦野沈利とインデックスは行き着けのファミレス『ジョセフ』の窓際席にいた。
回転寿司かわんこそばの空き皿のように堆く積み上げられた食器を前にして、眉間に寄った皺を解きほぐす。
つい先程まで上条当麻のベランダに引っ掛かっていたこの禁書目録(インデックス)を名乗る少女に愛情込めた朝食はおろか冷蔵庫にあった腐りかけた焼きそばパンまで食べられてしまった。それが低血圧気味の麦野の機嫌をより斜めにしている。
上条『沈利。なんだかちょっと訳ありそうだ。なるべく早く補修は切り上げて帰るからこの子を見ててくれないか?』
麦野「(当麻のお願いじゃなきゃ誰がこんなクソガキの面倒なんか)」
ベランダでの遭遇、食い散らかされる食卓のイベントを経て麦野が得たインデックスの情報…それは彼女が十字教に所属する修道女であり、魔術結社に追われる身である事、七月七日の織女星祭に上がった花火を標に学園都市に逃げ込んで来た事、そして…
禁書『私の頭の中には10万3000冊の魔導書があるの』
という追われる事情。当然ながら聞かされた上条は半信半疑であり、麦野に至っては夢見がちな少女の眉唾物の話として取り合おうとしなかった。当初は。だがしかし
麦野「(あのイケすかないグラサン野郎と、ツラも名前も拝んだ事のない第六位の警告がなければ到底信じられなかったでしょうね)」
26 = 24 :
話半分だった疑念が、証拠はどうあれ上条に関する不吉な予言の骨格を肉付けて行く。
完全に信じ切ってはいないが警戒には値する。だからこそ麦野は『あるモノ』を懐中に忍ばせ、こうしてファミレスまでインデックスを連れて来たのだ。
麦野「(消した方がいいかしら?当麻に、クソガキはどっかに言ったって丸めこんで)」
警告にあった七月二十日の朝に現れた謎の少女…幾多の不確定要素のいずれが麦野の最愛の男の運命を歪めるか知れない。
上条には指一本触れさせなかったが、念の為少女の身体をボディチェックした。完全な丸腰だった。
消すのは容易い。これまで消して来た命と同様に。
麦野「(誰に追われてんだか知らないけど、私らには関係ねえよ。カァァァンケイねェェんだよ。下手に巻き込まれでもしたら、それこそ警告通りだ)」
麦野にとっての最優先すべきは上条当麻。自分の命すら二の次三の次である麦野からすれば、目の前のイレギュラーはただの疫病神に過ぎない。
善悪の如何に囚われず誰も彼も助けようとするのが上条なら、善悪の区別に拠らず上条を救おうとするのが麦野だ。
麦野「(けどまあ…昔の私ならベランダの時点で消し炭にしてるんだろうね)」
三度の戦いを経て、麦野も上条に感化されてしまったのだろうと微苦笑を浮かべる。三度の戦いを経て、彼の偽善が本物だと認めてしまったから。その生き方を
禁書「…うん!」
麦野「?」
ふと思考と回想の迷路から出た時、積み上げられた皿の山の向こうからインデックスが微笑みかけてきた。
禁書「そうやって、そういう風に笑えるんだね!しずり!」
麦野「…な、なに言ってんのよ…」
禁書「また変な顔してるんだよ!さっきの方が良かったかも!」
上条の事を思い浮かべていたのが顔に出ていたのか、インデックスが笑みを浮かべたままそれを指差してきた。
今し方まで抹[ピーーー]る算段をつけていた相手にそう言われ、麦野は珍しく狼狽した。
禁書「モシャモシャ…ねえねえしずり?さっきの…ゴクッゴクッ…“とうま”って人は…ムシャムシャ…しずりの恋人?」
麦野「…お堅い十字教のシスターは口に物入れたまま食べるのが作法なの?」
禁書「答えてほしいんだよ!」
麦野「デザートつけてあげるから口を閉じてなさい」
禁書「わかったんだよ!ならここからここまでのメニュー全部食べたいんだよ!」
麦野「………………」
27 = 24 :
なんとなく、上条が帰って来るまでは消さずに取っておこうと麦野は思った。少なくとも、確実な裏が取れるまでは。
やり方は他にもある。『暗部』仕込みのえげつないやり方が
~第七学区・とある高校~
上条「ってな事が今朝からあってさ…信じられねえかも知れないけど本当なんだ」
青髪「朝っぱらからそないな空から落下して来た系のヒロインとかなんやねん!カミやん病はもはやアウトブレイクや!ち○こもげろ!」
麦野とインデックスがファミレスにいる間、もはやお馴染みの補習仲間である青髪が二人きりの教室で喚いていた。
小萌は二人の補習課題を持って職員室へと戻っている。今は帰り支度をしながらの他愛ない馬鹿話である。
もちろんその話題は…今朝方ベランダに引っ掛かっていたインデックスの事だ。
上条「マジでオレだって驚いてるんだよ…沈利…麦野も朝から機嫌悪いし…あああ~不幸だ…」
青髪「美少女独占禁止法が適用されたんや。あの別嬪さんむっちゃ気ぃ強そうやから後が怖いで~今頃キャットファイトしてるんと違う?」
上条はふとその光景を頭に浮かべる…異国の修道女を苛む自分の彼女が真っ黒な笑顔でそれをやってのける様を…
上条「(…信じてるから止めてくれよな沈利…)」
青髪「ところでカミやん?」
上条「お?」
懊悩としている上条の様子を知ってか知らずか、青髪がカバンを手に取りながら話し掛けて来た。
青髪「なんか思い出さへん?こういうの」
青髪が周囲を顎でしゃくって見せる。二人以外誰もいない教室。窓辺から射し込む西日。いつも通りの補習の光景…に見えたが…
上条「ああ、お前と初めて話した時だったっけ?確か」
青髪「覚えててくれたんか…」
入学し、同じクラスになってからも席が少し離れていたためか最初は互いに挨拶を交わす程度の中だった青髪と上条。しかし…
上条「ああ。最初の小テストが全然ダメで、オレとお前だけ残されたんだよな。それから話し始めて…」
青髪「そや。お互いアホやな~って言うて。一発目で僕らクラスのアホ扱いや」
懐かしむように笑い目をさらに深くする青髪、破顔する上条。そこにちゃかしに来た土御門がいて…他愛もないデルタフォース(三馬鹿)のささやかな結成秘話だ。
上条「ホントだぜ…上条さんもまさか一学期の頭に馬鹿のレッテル貼られるなんて――」
青髪「――カミやん」
上条「…?どうした?」
28 = 24 :
二度目の呼び掛け。その特徴的な笑い目はすでになく、どこか真摯な光があった。
いつも馬鹿話ばかりしている変態という名の紳士である青髪が。
青髪「――僕ら…友達やんな?――」
痛いほど真っ直ぐな眼差しで
~第七学区・とある高校~
上条「青髪…」
思わぬ問い掛け、思わぬ態度であった。常に飄々とした態度の青髪ピアスが見せた、上条も初めて見る表情…しかし上条は
上条「当たり前だっての。なに今更言ってんだよ」
変わらぬ笑顔でそれに答えた。キッパリと、一分の淀みも迷いもつかえも見せずに。
上条「いっつも馬鹿話して一緒に吹寄に怒られて、お前やオレや土御門も一緒にメシ食って、この前なんか盗んだバイクで3ケツしたろ?この間お前とやりまくったガンシューティング、おかげで彼女とハイスコア取れたんだぜ?」
青髪「………………」
上条「オレ、お前と同じ馬鹿だから難しい事わっかんねえけどさ…お前の事友達だと思ってんのオレだけか?」
青髪「………!」
上条「友達だろ、オレら」
上条当麻は知らない。青髪ピアスが行方不明の第六位であるという事も。その真の能力…『俯瞰認識』も知らない。神の眼にも等しいその力を。世界の果てから世界の終わりまで見通す悪魔の力を。
青髪「――かなわんなあ、カミやん」
青髪にとって上条当麻は、学園都市上層部や統括理事長絡みの繋がりである土御門とは違った角度の『友達』であった。
故に…青髪は苦悩していた。近い未来、逃れようのない最悪の『死』が訪れる事を『俯瞰認識』を通して知ってしまったから。
青髪「――なんや、僕だけアホみたいや」
しかしそれを告げる事は出来ない。告げれば青髪そのものが運命の『特異点』ないし『破局点』となり、未来の可能性を歪め、観測すら不可能になりかねない。故に
青髪「――しゃあないなあ、ならカミやんの言う友達(デルタフォース)のよしみでオマケさんつけたるわ」
上条「?なんだよ。この間みたいな賞味期限切れの焼そばパンはなしにしてくれよな」
土御門を通して麦野沈利には布石を打った。ならば自分は…上条当麻に布石を打つ。これが良い事なのか悪い事なのか『自分の未来』だけは見通せない青髪にはわからない…が
青髪「…“羽”に気ィつけや…」
上条「“羽”…?」
青髪「せや、“羽”や」
29 = 24 :
青髪は知っている。麦野沈利とアイテムが自分と上条の命を狙った時、上条は自分の身を捨て瀕死になりながらも麦野に助命を乞うた事を
上条『だから…青髪を…青髪だけは』
その言葉を『俯瞰認識』で聞いた時、青髪は自分を恥じた。
第六位という正体を隠し、能力を偽り、嘘だらけの自分を上条は血塗れになりながらも助けてくれようとしてくれたのだ。
作り笑いのような自分、作られた似非関西弁、嘘だらけの自分を友達として扱かってくれた上条、命を懸け身体を賭けてくれた上条。
だから青髪は第一九学区の事件の際、助け船を出したのだ。土御門にバイクを盗ませてまで。
青髪『借りは返したで、カミやん』
だが…友達を助ける事にすら『借り』という理由をつけねば何も出来ない臆病な自分を…上条は今また『友達』だと言ってくれた。ならば
青髪「(借りは前に返したで…けどな、新しく“貸し”にしとくんは僕の勝手や)」
ならば、自分も踏み出す。青髪には戦う力がない。自分の能力は決して他人に明かせない。だから自分に出来る中での戦いをする。
上条「“羽”って…あの鳥とか天使のか?」
青髪「僕に言えるんわここまでや。あの未来から来たムチムチボインなドジッ娘メイド風に言うたら“禁則事項”や」
上条「はあっ…わかったわかった。とりあえず、“羽”に気をつけるようにするよ…なんせ」
『借り』は返したが『貸し』をするのは自由…青髪もまた、一歩踏み出した。
上条「――友達の言う事だからな――」
誰もが笑って迎えられる、最高のハッピーエンド(運命)を願って。
30 = 24 :
第七学区・三九号線木の葉通り
禁書「ねえねえしずり」
麦野「………………」
禁書「しずりってば!無視して欲しくないんだよ!」
夕刻。二人は通称『ケンカ通り』と呼ばれる大通りにいた。
脇道に一本逸れればスキルアウト達がたむろしている裏路地に入り込んでしまう、お世辞にも治安が良いとは言えないエリア。
そこに女二人はいた。麦野沈利はガードレールに腰掛け、その傍らにはインデックスが。
麦野「五月蝿いわねぇ…アンタの口は食べる時以外は閉じられないの?」
禁書「こういう事にも使えるんだよ!」ガー!
麦野「噛みついたらもうご飯食べさせないからね」
禁書「理由を話して欲しいんだよ!このままじゃ…また追っ手の魔術師がくるんだよ」
そこでインデックスの表情が曇り、声のトーンが落ちる。
魔術師…学園都市で能力開発を受けた麦野達とは異なるロジックで現実を歪める存在。
この科学万能の街では到底受け入れられないオカルト(非科学的存在)…インデックスを追う、刺客の字。
麦野「そうね。だから何?」
禁書「…無関係の人を巻き込む事は出来ないかも…」
麦野「そうね。私もそう思う」
禁書「ならどうして?」
10万3000冊の魔導書?魔術結社による追っ手?見た事も聞いた事もない存在を、出会ったばかりの少女の口から語られるままに鵜呑みにするほど麦野の歩んで来た血の斑道は平坦ではない。
禁書「“汝の隣人を愛せよ”って教えは、日本にも浸透してるのかな?」
麦野「残念。私が愛してるのは当麻だけ」
ならば…見て確かめる。ただでさえ目立つインデックスを街中へ連れ回し、刺客をおびき寄せるエサに使う。
沈みかける夕陽、人目につかない路地裏、そして女二人…追っ手が来るなら今このタイミングだ。魔術師であるかの真贋は引っ張り出してから見極める。
魔術師がどんな力を持っていようが所詮は『人間』だ。まして刺客につくような人間のなど、思考の面から言って後ろ暗い背景があるに違いない。ならば――学園都市『暗部』に属する自分のロジックやメソッドは無駄にはならない。
麦野「その当麻がアンタを頼むって私に言ったからよ」
禁書「しずり…」
これは共食いだ。上条やこの少女には無縁の世界に住まう、闇の住人同士の共食い。何が予言だ。何が魔術結社だ。
31 = 24 :
「もし―――そこのお嬢さん」
禁書「!!!」
麦野「はぁい、おにーさん」
エサ(禁書目録)に食いついてきたエモノ(刺客)を…麦野沈利はナンパされなれている女のように左手を上げた。
~第七学区・三九号線ケンカ通り~
インデックスを追ってこの学園都市に潜入してより、ステイル・マグヌスは一度は手中に納めかけた星の砂を取りこぼしてしまった。
第七学区まで追いつめながらも、インデックスを今一歩の所で取り逃がしてしまったのは昨夜の事だ。
だが…そう遠くまで行けはしないとつけた当たりは正解だった。第七学区に張り込み続けた結果…彼女はいたのだ。この街の女学生に連れられて。
ステイル「もし―――そこのお嬢さん」
好都合にも、人払いのルーンを刻む必要もないほど人通りの少ない場所だ。
イギリス清教と学園都市の関係性を鑑みて、事を荒立てる事は好ましくない。ましてや潜入と追跡の密命を帯びている身だ。
だが、これで何とか間に合いそうだ…インデックスに残された『時間』には
?「はぁい、おにーさん」
後はこの女学生から後腐れなくインデックスを引き渡してもらえばいい。
拒めば最悪、実力行使しかない…だが、どういう成り行きかわからないがインデックスと共にいるこの女学生は満面の笑みを浮かべ左手を上げ――
?「さんにーいちドバーン!!!」
ステイル「!?」
ドオオオオオオオオオオオオン…!!!
いきなり、女学生の左手から光球が現出した直後、閃光と爆発が炸裂した
32 = 24 :
~第七学区・三九号線路地裏~
禁書「!?」
インデックスは驚愕に眼を見開いた。1つは自分の纏う霊装『歩く教会』の魔翌力を追ってきた刺客との遭遇。
もう1つは…自分にご飯を食べさせてくれた、冷たい物言いながらも笑うと可愛い「むぎのしずり」という女性が――
麦野「あれー?あれー?なんか手応え違うわねえ…あれー?」
そのたおやかな左手から、眩いばかりの閃光とも放った光芒が路地裏の一区画を軽々と薙払う。
インデックスの頭の中にある、幾多の魔術数多の魔法のように…!
麦野「久しぶりだから演算狂っちゃったかしらねえ?」
禁書「し、しずり!」
麦野「なによ」
プラプラと左手を揺らしながら麦野は振り返りもせず、赤い髪の刺客と思しき青年のいた方向を見据えている。もうもうと巻き起こる粉塵の彼方を。
禁書「しずりは…魔術師だったの?」
ここは科学の最先端を行く学園都市。魔術と決して相容れない異国の地。だが…今麦野が放った光芒はまさに『魔術』に匹敵する。
麦野「違うわ」
粉塵が薄れて行く。麦野の優麗な栗色の髪がザワザワと逆立ち、ドス黒い笑みと犬歯を剥き出しにし、暗い笑みを浮かべた横顔がインデックスには見えた。
麦野「ただの――超能力者(レベル5)よ」
~第七学区・崩落の路地裏~
ステイル「…ッ!なんだアレは!!」
ステイル・マグヌスは出会い頭の一撃を寸での所で回避し、路地裏を駆けていた。
幸いにも破壊の余波となった粉塵のヴェールと瓦礫の山がステイルに後退のいとまを与えた。
ステイル「(このままでは…!)」
ステイルの魔術には下準備が不可欠である。こうして逃走しながらもいたるところにルーンのカードを貼り付ける。
確かに先手は思わぬ奇襲に取られたが、相手が調子づいて追ってきたならそこを叩けば良い。拠点防衛、待ち伏せ、トラップはステイルの領域だからだ。
33 = 24 :
ステイル「これが…学園都市か!」
路地裏の行き止まり、開けた場所に辿り着く。そこは奇しくも上条当麻と麦野沈利が最初に会敵した元工事現場である。
出口は1つ。姿を現した途端に叩く。焼き尽くす。路地裏への下準備は今終わらせた。ルーンは手の中にある。
だがステイルは煙草のフィルターを噛み潰しながら歯噛みした。
ステイル「クソッ」
油断していたつもりはなかった。だが結果としてペースを乱されまたインデックスへの道のりが遠くに感じられた。
だがステイルは不運であった。初めて対峙した能力者が
?「はぁ~い?そこのおにーさん?」
カツン、カツンと聞こえよがしに靴音を立てながらにじりよるその女学生が…この学園都市230万人の上から四番目に位置する超能力者…原子崩し(メルトダウナー)麦野沈利であった事が。
ステイル「…ずいぶん手荒な歓迎をしてくれるんだねこの街の人間は…おかげで肝が冷える思いだ」
?「アンタらの宗派ならそれを『洗礼』って言うんじゃないの?ねえ?マ・ジュ・ツ・シ・のおにーさん?」
ステイル「…残念だ…!もう既にそこまで知られてしまっているなら、尚の事君を生かして帰す訳には行かなくなった…!」
?「“君を帰さない”って?大胆なお誘いだけど…私、もう“彼氏”がいるから」
ステイル「僕の尊敬する女性はエリザベス一世で、好みのタイプは聖女マルタだ。君じゃあないよ」
?「そうね。私もアンタの香水のセンスは嫌いじゃないけど…鼻につくんだよその煙草の匂いがさァァァ!!!」
ステイル「―――!」
?「決ーめた…アンタ…」
夕闇の逆光の中、ステイルは見た。玲瓏たる美貌に狂笑を浮かべた…妖絶なる魔性の徒の口元がこう動いたのを
ブ ・ チ ・ コ ・ ロ ・ シ ・ か ・ く ・ て ・ い ・ ね
34 = 24 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。今日の投下はここまでです。
次回は相変わらずノープランですが、麦野VSステイルになると思います。
そして…前スレからハッピーエンドを望まれるレスを下さった方々、ありがとうございます。
やっと、ハッピーエンドを目指す覚悟が固まりました。ハッピーエンドを目指して頑張ります。それでは失礼いたします。
35 :
乙
ハッピーエンドは嬉しいが先に言わない方が良かった気がせんでもない
最後のサプライズがもったいなかったかな
36 :
次回は相変わらずノーパンだと…
37 :
乙です
ハッピーエンドか…
個人的には麦野記憶喪失ルートもありだと思ったけど…
38 = 20 :
乙!
俺はハッピーでいいと思う。正直不安すぎたから安心したくらいだ。でも良かった
39 :
乙!
お前ら落ち着け。何をもってハッピーかは人それぞれだぞ……
40 = 19 :
ハッピーエンドか…
青髪くんがフラグ立てたんかな
41 :
俺はバッドとハッピーエンドの両方が見たいな
42 :
濡れ場カットされた時点でハッピーじゃない
ハッピーじゃないんだ……
43 = 22 :
ハッピーエンドがある前提ならバッドもみたい。
安西先生・・濡れ場が見たいです・・このベタ惚れむぎのんならさぞかし以下略
44 :
ステイルさん・・・髪の二、三本は残ってるといいな・・・
45 = 24 :
とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。たくさんのレスをいただけて、いつも助けられています。ありがとうございます。
今日の投下は先ほどで終了のつもりでしたが、麦野VSステイルを投下させていただきます。
濡れ場を期待されていた方申し訳ありませんでした…苦手な方もいらっしゃると思い、書かずにいました。ごめんなさい。
46 = 24 :
~第七学区・打ち捨てられた工事現場~
麦野「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」
ステイル「…Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)…!」
共に『必殺』を名乗り上げ、闘争の女神に宣誓しあうかのように言葉を紡ぐ両者。
ルーンカードを片手に咥え煙草を放り捨てる…ステイル=マグヌス!
ステイル「Kenaz PuriSazNaPizGebo(炎よ!巨人に苦痛の贈り物を)!!!」
放物線を描く煙草の軌道がそのまま炎成る剣と化し…ステイルは眼前に立ちはだかる名も知らぬ魔女に対峙する。
麦野「へえ…?それが魔術…?発火能力で言えばレベル4の上位ってとこかしら?」
初めて目の当たりにする非科学(まじゅつ)にドス黒い笑みが浮かぶ。インデックスの言葉の裏は取れたと言わんばかりに。
ステイル「光栄の至り…と言って欲しいかい?僕のレベルが君達能力者で言う4ならば…そういう君のレベルはいくつかな!」
轟ッ!とステイルが手にした炎剣を振りかぶる。3000度を優に越す灼爛の一撃が、刃の軌道を持って麦野へと飛来し―
麦野「合ってるのは『4』だけだよ!!オカルト野郎ォォォォォォ!」
麦野が左手を振るう。瞬時に光の糸で編まれたような防盾が麦野と炎剣の狭間に生み出され――
ドオオオオオオォォォォォォン!!!
ステイル「クッ…!」
衝突の瞬間、麦野は原子崩しの防盾の制御を放棄し、瞬間的に暴走状態と為して指向性を無くした力場を破裂させた。
飛来した炎剣は爆裂によりちぢに乱され工事現場の粉塵が舞い上がる。
ステイル「AshToASh…DustToDust…SqueamishBloody Rood(灰は灰に…塵は塵に…吸血殺しの紅十字)!!!」
即座に追加呪文を詠唱し、真紅の炎剣に次いで蒼白の炎剣を現出。二刀流に構えそれをXのアルファベットをなぞるように粉塵ごと切り裂く!
が
ステイル「消えた!?」
47 = 24 :
圧倒的な熱量を湛えた熱風が切り開いた彼方に麦野の姿はない。止むを得ない近接戦を強いられたステイルにとって、目視の埒外に消えた麦野を視界を探すには――
麦野「さーんにーいちドバーン!!!」
ステイル「!!?」
ゴオオオオオオォォォォォォ!!!
ステイル「チィッ!」
ステイルから向かって左側、死角に入るか入らないかの煙幕の位置から原子崩しの光芒が殺到した。
ステイルはそれを地面に転がりながら回避する。粉塵の中、原子崩しの光球を見落としていれば…間違いなく首を落とされる直撃コースだった。
ステイル「(僕の炎剣を…目印に!)」
視界の利かない粉塵を打破しようと振るった炎剣を逆に目印にされ、原子崩しを放たれたのだ。闇夜に浮かぶ蛍を狙うように。
麦野「ケツまくって地べた舐めてんじゃねえぞデカブツ!!魔術ぅ?オカルトぉ?関係ねえよ!そんなのカァァンケイねェェんだよぉっ!!!」
激昂し尚もにじりよる魔女。ステイルは考える。コイツは狂ってる。マトモじゃない。しかし恐ろしく…戦い慣れていると!
麦野「パリィ!パリィ!パリィってか!舐めてんじゃねえぞ煙草野郎!魔術師(マジシャン)気取るなら鳩の1つでも飛ばしてみなよねェェェェェェ!!!」
ステイル「(やるしか…ないのか!)」
ステイルは超能力(レベル5)を、麦野は魔術(オカルト)を、それぞれ目の当たりにするのも初めてだ。
だが共に麦野は暗部組織(アイテム)、ステイルは必要悪の教会(ネセサリウス)と…学園都市とイギリス清教という違いはあれど闇の底を知る人間同士。
それを肌身で感じ取ったステイルが取った道…それは
ステイル「MTOWOTFFTOIIGOIIOF IIBO LAIIAOE IIM HAIIBOD IINFIIMS ICRMMBGP!!!(世界を構成する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ…それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。具現せよ、我が身を喰いて力と為せ!!!)」
麦野「!!?」
全力で、目の前の魔女を狩るという事
ステイル「イノケンティウス(魔女狩りの王)!!!」
地獄の釜を開いたかのような火炎が天を衝いて現出される。逃走中に貼り付けた裏路地中のルーンが輝き、紅蓮の巨人が光の魔女の足を止めた。
48 = 24 :
麦野「お熱いのは…嫌いなんだけどねぇぇっ!!」
吠える超能力者
ステイル「さて…続けようか!」
」
吼える魔術師
決着、迫る。
~第七学区・裏路地~
禁書「ハッ…ハッ…ハッ!」
インデックスは駆けていた。迷路のようにうねる路地裏を。逃げ出した魔術師と追い掛けた麦野を辿って。
禁書「しずり…!」
彼方から爆音と爆炎が噴き上がるのが暗い路地を走るインデックスにもわかった。
戦っている。麦野が。文句を言いながらもご飯をくれて、愚痴を言いながらもインデックスの身柄を預かると言ってくれたあの女性が――
麦野「出来の悪いパペットの陰に隠れてんじゃねぇぞデカブツ!焼きごてにされたいところから出てきなぁぁぁ!!!」
毛先は焼け焦げ、衣服を煤だらけにしながら光芒を十重二十重に乱れ撃つ。
しかし相対する紅蓮の巨人は穴をいくつ穿たれようと即座に逆再生するようにしてその穴を塞いでしまう。
ステイル「薙払え!イノケンティウス!」
ドゴオオオオオオォォォォォォン!
手にした麦野の身の丈を遥かに越す炎剣を横薙ぎに振るう巨人。捨て置かれた鉄骨や足組を積み木の城でも倒すように吹き飛ばす。
建設機材を跳ね飛ばし、熔解しかかってマグマ状の沼すら生まれる中、麦野は原子崩しを駆使し飛来する鉄骨を片っ端から撃墜して行く。
麦野「しつっこいんだよ木偶の坊!赤く擦り切れるまでヤるのがお好みぃ…?ならデカいだけが取り柄のソイツが立たなくなるまでイカせてやるよ遅漏野郎がァァァ!!!」
麦野は一歩も引かない。耐えざる3000度の炎剣と巨人が生み出す熱気に喉を焼かれながらも尚叫ぶ。それが…インデックスにはたまらなかった。
禁書「もうやめてぇぇぇ!!!」
麦野「!?」
ステイル「?!」
巨人と魔女の激突が…止んだ。
禁書「もういいんだよ…もういいんだよしずり…もう…いいんだよ…」
たまらない。もうたまらなかった。記憶を奪われるのも、逃げ続けるのも、それ以上に――自分のせいで、自分にあたたかいご飯をくれた人達が苦しむのをインデックスはもう見たくなかった。
禁書「ごはん…ありがとう…」
49 = 24 :
なのに
麦野「――黙ってなさい――クソガキ」
麦野沈利は諦めない。
ステイル「…インデックス!こっちに来るんだ!」
インデックスのためではない。
麦野「黙ってろ赤毛野郎!!!」
レベル5のプライドでもない。
ステイル「…まだやるつもい!?」
この男に負けたくないからでもない。
禁書「しずり…!」
アイツなら――諦めない。
麦野「…なぁぁにが魔術師だ、なぁぁにが魔術だ…!」
あのツンツン頭のお人好しなら諦めない。
麦野「いいわ…そんなくっだらない手品でこのレベル5第四位原子崩し(メルトダウナー)をどうにか出来るだなんて思ってるなら…」
あの偽善使い(フォックスワード)なら諦めない。
麦野「こんな図体だけデカい赤毛野郎にこの私が負けるとか思ってんなら…!!」
――上条当麻なら決して諦めない!!!――
麦野「そ の 幻 想 を ぶ ち 殺 す」
50 = 24 :
ステイル「!?」
麦野が懐中に手を突っ込む。その手にしているものは…トランプ大の拡散支援半導体(シリコンバルーン)。麦野の原子崩しを一枚の拡散支援半導体につき、14本まで拡散させ乱れ撃たせる…麦野沈利の切り札。
麦野「そっちがキング(魔女狩りの王)なら私はクイーン(原子の女王)…なら、キングに勝つには…!」
ステイル「(マズい!!!)」
バッと空中に何十枚もの拡散支援半導体がバラまかれる。ステイルにはそれの正体はわからない。
だが直感で、本能で、理解する…あれは必殺の一撃だと!
麦野「ジョーカーしかないわねェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
ステイル「潰せェェェェェェイノケンティウスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
禁書「しずりぃぃぃ!」
インデックスは見た。空中に放られたカード全てを麦野の原子崩しが貫いたのを。
ステイル「(しまった…ルーンが)」
ステイルは見た。乱れ撃ちの光の豪雨が、ルーンの仕組みもイノケンティウスの弱点も知らない能力者が、ルーンを設置した裏路地ごと、工事現場全てを斜線で薙払うのを。
麦野「伏せなインデックスゥゥゥゥゥ!!!」
麦野は見た。光に全てが包まれていく中…赤毛の神父が倒れ、紅蓮の巨人が崩れ落ちて行くのを
ズッ…┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドド…
みんなの評価 : ★★
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