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    元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」2

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
    タグ : - 麦野「ねぇ、そこのおに~さん」 + - フレンダ + - ヤンデレ + - 上条 + - 佐天 + - 滝壺 + - 絹旗 + - 美イン + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 24 :

    ~第七学区・崩壊した裏路地~
    禁書「しずり…しずり…!」

    麦野「…な…によこれ。これも魔術?それとも地獄?修道女に看取られる義理はないつもりなんだけど?」

    光が全てを薙払っていった光景の果てに…麦野はインデックスの膝の上で目を覚ました。あれだけの光の豪雨の中を…伏せろとは叫んだがインデックスは全くの無傷だった。それをぼんやりした頭で問うと

    禁書「違うんだよ!これは私の“歩く教会”のおかげなんだよ!どんな力も通さない霊装なんだよ!」

    身体が動かない。全て使い果たした気さえする。起き上がれない。あの魔術師は?どうなった?

    禁書「わからないんだよ…しずりを引っ張り出してくるので、せいいっぱいだったんだよ」

    麦野「…そう」

    戦いの狂気の後は決まってこうだ。会話をする事さえ億劫で…虚しくて…

    禁書「しずり」

    麦野「…なに」

    禁書「助けてくれて…ありがとうなんだよ…」

    麦野「…そう」

    禁書「名前…初めて呼んでくれて嬉しかったかも」

    麦野「…そう」

    禁書「…帰ろう?」

    麦野「…うん」

    禁書「立てる?」

    麦野「…ううん」

    禁書「…じゃあ、起きれるまで膝貸してあげるんだよ!」

    麦野「…そう」

    禁書「エラい?ねえわたしってエラい?」
    麦野「(ウザい…)」

    こんなにも、ぬくもりが愛しい。

    この日、麦野沈利は『二人目』の人間を助けた。

    壊すことしか知らない、その左手で

    52 = 24 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。これにて本日の投下は本当に終了です。

    次の話も相変わらずノープランですが、よろしくお願いいたします。
    たくさんのレス、本当にありがとうございます。失礼いたします。

    53 :

    乙!

    そろそろ物語もクライマックスか? クライマックスなのか!?

    54 :

    次はねーちんか?
    麦のん勝ち目がないな…

    55 = 36 :

    コスプレ勝負でも勝ち目なさそうだなぁ

    56 = 37 :

    ハッピーもバットもどっちも見たいな

    57 :

    そういう要望はもういいだろ
    特にこの著者はそういうものの影響を受けやすいのだから

    58 :

    そうだぞ
    わざわざ決心を鈍らせるようなことを言うべきではない

    超楽しみに待ってますぜ旦那

    59 :

    作者と>>58マジGJ。超乙。

    このむぎのんマジ上条さんに惚れてるんだな…むぎのんそげぶ良かった。あと

    麦野「しつっこいんだよ木偶の坊!赤く擦り切れるまでヤるのがお好みぃ…?ならデカいだけが取り柄のソイツが立たなくなるまでイカせてやるよ遅漏野郎がァァァ!!!」←この間まで上条さんにベットでそげぶされてたくせにとWWWWWWWテラ強気wwwwwwwwww

    ん?なんか宅配便きたわいあってghv,djbfkfk

    60 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下をさせていただきます。

    いつもたくさんのレスをありがとうございます。おかげさまで書けます。
    そして>>58さん、素敵なロゴをまたありがとうございます。保存して待ち受けにしてはニコニコしながら見つめています。本当にありがとうございます。

    61 = 60 :

    ~第七学区・とある廃ビル~

    ステイル「ぐはっ…!」

    「ステイル!まだ起き上がらないで下さい!傷が開きます!」

    放置されて久しいビルディングの一角に響き渡る一組の男女の声音。
    打ちっ放しのコンクリートの壁面にベッタリとその燃えるように赤い髪と同じ色の血を流しながらステイル=マグヌスはもたれかかっていた。

    ステイル「すまない神裂…また今一歩の所で力及ばなかった…この街の広さを、僕は甘く見ていたようだよ」

    神裂「彼女に傍らにいた栗色の髪の能力者…ですね?」

    ステイル「ああ。原理はさておき…光を司る力に僕は思えた。それもとびきりの破壊力だ。おかげでこのザマさ」

    拡散支援半導体(シリコンバルーン)を用いた原子崩しによる一掃攻撃に、ステイルは空中分解寸前であった魔女狩りの王を盾に瓦礫の崩落から辛うじて難を逃れ潜伏先のここまで逃げおおせたのだ。
    傍らの神裂がその軽くない戦傷のカバーに当たる。恐らくステイルはもう前線には出れない。出来ても後方支援が精一杯だと神裂は見立てた。

    神裂「わかりました…次は私が出ましょう。もう彼女に残された時間は、私達に許された時間は…あまりにも少ない…」

    ステイル「情けない…話だがね…」

    時間…インデックスの一年置きの記憶消去の術式を執り行う時間。
    10万3000冊の魔導書を完全記憶能力を以て保管する『魔導図書館』の代償として、彼女は脳の八割以上の容量を占められ、残る二割足らずの記憶を消去し続けなければ…彼女は絶命してしまうのだ。

    ステイル「クソッ…」

    二年前彼女と出会ってから、少なからぬ力をつけたつもりだった。インデックスのために、最強である理由を証明するために。
    それを…あの能力者…レベル5を自称し、インデックスが他称した『しずり』なる栗色の髪の女はその全てを粉砕した。
    教皇級の魔術『魔女狩りの王』を前に一歩も譲らず、あまつさえ魔術の知識もないままに全てのルーンを瓦礫と灰燼の山に埋もれさせて。

    ステイル「どうなっているんだ…この学園都市(まち)は」

    62 = 60 :

    ~第七学区・とある病院~

    上条「クソォッ!!」

    ガンッ!

    禁書「(ビクッ)」

    一方その頃…上条当麻は冥土帰しのいる病院の待合室にいた。
    小萌の補習を切り上げ、青髪からの助言を受けた後帰路に掴んとした…その道の途中、通称ケンカ通りで上条は出くわしたのだ。

    禁書『とうま!とーま!しずりが!しずりが!』

    麦野『五月蝿い…喚くんじゃないわよクソガキ…おかえり、当麻』

    ボロボロに服を焼け焦がされ、自慢の栗色の髪も痛み切って、至る所に擦過傷を負い疲労困憊の…最愛の恋人の姿だった。

    麦野『しつこいナンパに当たっちゃってね…携帯もあの瓦礫の下。ごめんね当麻』

    上条はすぐさま遅れて来たアンチスキルが来る前にインデックスを連れ麦野を抱えてケンカ通りを離れ、冥土帰しの病院に飛び込んだ。それが一時間前の出来事であった。

    禁書「ごめんなさい…とうま」

    上条「あっ…」

    そこで壁に叩きつけた拳を離し…上条はやっと待合室の椅子でしょんぼり俯くインデックスに気がつき我に返った。

    上条「悪い…えーっと…インデックス…本当に悪い…怖い目にあったのに…また怖がらせちまった…本当にごめん」

    禁書「ううん…わたしこそごめんなさい…ごめんなさい…!」

    インデックスは今にも泣き出しそうだった。無理もない。彼女の話を聞く限り…絶えず追っ手の影にさらされ続けていた彼女の心労は今現在の上条の比ではない。

    上条「謝るな、インデックス。お前が悪いんじゃない…悪いのは…!」

    補習だからと麦野一人にインデックスを預け、あまつさえ追っ手という話もどこか話半分で聞いていた…今殴りつけた壁よりも憎い己の甘さに、インデックスや麦野を傷つけたその魔術師の追っ手に…そして何よりインデックスを泣かせてしまいそうな自分に上条は憤っていた。

    ――しかし―

    63 = 60 :

    麦野「かーみじょう」

    禁書「!」

    上条「麦野…!」

    そこへ…所々に包帯を巻きながらも、しっかりとした足取りで…麦野沈利が姿を現した。
    声は若干ハスキーになっている。熱と煙に巻かれ喉を痛めたのだろう。だがそれ以外は見た目にはいつも通りに見える。

    麦野「なーに幽霊でも見たような顔してるのかにゃーん?勝手にお通夜してんじゃないわよバ上条」

    上条「沈利…!お前歩いたりして大丈夫なのかよ!?怪我は?身体は?!」

    麦野「かーみじょう」

    ドンッとその豊かな胸から上条に当たりに行き、ポスッとその首筋に鼻先を埋めた。もたれかかるように。

    麦野「アンタの女は誰?」

    上条「えっ、そ、そりゃ…沈利…だろ」

    麦野「でしょ。私は誰?レベル5の四位、原子崩し(メルトダウナー)麦野沈利。忘れちゃったなら補習ばっかの緩んだ頭のネジ締め直してあげよっかー?かーみじょう」

    上条はその華奢な身体をしっかり抱き寄せた。傍らのインデックスが驚いたような、恥ずかしがっているような視線を向けてくる。実にイタい眼差しで。

    麦野「アンタの女はね、こんなくっだらない所で死んでやるほど出来た女じゃないの…だからちゃんと私を支えてて」

    上条「…沈利…」

    麦野「クソガキ」

    禁書「!」

    麦野「アンタもこっち来なさい」

    ジト目でインデックスを呼ぶ麦野。インデックスは胸中穏やかではない。自分が関わったせいで傷ついた人間に呼びつけられては誰しも同じ反応を示すだろう。だが

    ギュッ…

    64 = 60 :

    禁書「し、しずり…?」

    麦野「ガキがいっちょまえに年上の心配してんじゃないの。こんな傷、暗部ならザラよ。あんなタバコ臭いデカブツなんて私の敵じゃない。100人いようが指先一本でブチコロシかくていよ」

    インデックスを囮にステイルをおびき寄せた罪悪感による代償行為か、はたまた純粋に母性が為せる業かは他ならぬ麦野自身にもわからない。だがこうしてやるべきだと本能の囁くままに、麦野はインデックスを抱き締めた。

    麦野「それにね…コイツ(上条)私より強いから。アンタらの魔術の世界がどうとか、強い魔術師がなんとかそんなの関係ないから」

    禁書「…うっ…」

    麦野「アイツらは私達に牙を剥いた。だから潰すの。敵は潰す。徹底的に。別にアンタのためじゃない」

    禁書「…ううっ…」

    麦野「アンタなんて足手まといになる重みもない。アンタがいたって問題にもならない。わかるー?」

    禁書「…うううっ…!」

    麦野「泣いちゃいな、インデックス」

    禁書「…ううっ、ううぅっ、ううう!」

    その先はもう言葉にならなかった。インデックスはもう涙を止める術を知らなかった。
    一年おきに消される記憶は彼女の過去を白紙にしてしまった。それでも――

    上条「……沈利……」

    母のぬくもりにも似た何かは、本能が覚えているものだ。

    65 = 60 :

    ―第三学区・ホテル『ミネルヴァ』―

    麦野「…すっかり泣き疲れね。まさかこの歳で子守りさせられる羽目になるなんて思ってなかった」

    上条「いや…本当のお母さんみたいだったぜ」

    麦野「やめて。子供は嫌いなの」

    結局、麦野は冥土帰しの診療もあって一日の入院の必要もなくなった。
    手持ちの拡散支援半導体(シリコンバルーン)全てを用いた原子崩しによる爆撃攻撃による消耗の方が重かったためだ。
    今三人は第三学区にある超高級ホテルにいる。垣根帝督が逗留しているようなVIP専門のスイートルーム。警備、監視体制、いずれも万全だ。
    レベル5の財力の面目躍如である。

    麦野「ムカつくわあの赤毛野郎。おかげで髪の毛ボロボロ。最悪短くするしかないわね」

    インデックスは緊張の糸が切れたのか泣き疲れて眠ってしまい、上条はそんなインデックスに布団をかけてやる。麦野は痛んだ毛先をいじりながら腹を立てていた。

    上条「悪い…麦野。ありがとうな。こんなボロボロになるまで、インデックスを守ってくれて…マジでありがとう」

    麦野「…アンタならどうするかって」

    上条「え?」

    麦野「アンタなら、助けようとしたでしょう。だから」

    誰かのためになんて偽善はごめんだ。自分のための偽善ついでに勝手にインデックスが助かった、それだけだと言外に麦野は言うのだ。

    麦野「…ま、アンタと出会う前の私なら多分負けてた。少なくとも勝てなかった」

    上条「…そんなに強かったのか…魔術師ってヤツらは」

    麦野「違う」

    麦野が煤けたジャケットを脱ぎ捨て、胸元を緩める。少し太めだと気にしている脚のストッキングを脱ぐ。もうボロボロではけたものではない。

    麦野「――アンタなら諦めなかったろうなって、そう思えたから勝てた」

    上条「………………」

    麦野「ありがと」

    麦野沈利は変わりつつある。胸の奥底に闇の怪物を住まわせながら、その手綱を完全にさばいて。
    身の内の狂気を、上条と同じ生き方を選ぶ中で奮おうと。

    66 = 60 :

    麦野「さてっと…じゃあお風呂行こうかしら…当麻もくる?」

    上条「ぶっ!!!」

    麦野「あれー?今日一番頑張った人のお背中も流してくれないほど私の彼氏は薄情だったっけ?あれー?どうしたのかーみ~じょーう~?」

    が、途端にいつもの狡猾極まりない笑顔でからかう口調といじる雰囲気を全開にする麦野。それを見た上条は思わず後退りする。

    上条「インデックスがいますいるだろいるでしょの三段活用!だいたいお前怪我してるだろ!今日はやめとけって!」

    麦野「あれー?お背中流してってお願いしてるだけなのになにいやらしい事考えてるのかなーん?か~みーじょ~う?」

    上条「だあああ!わかった!背中流すだけだからな!それで我慢しろよ!」

    麦野「うん。お風呂って響くしね。私声出る方だし」

    上条「何の話だ何の!!」

    禁書「うるさいんだよ!!!眠れないんだよ!!!」

    出会ったばかりの三人が、ほんのわずか歩み寄れた夜。
    インデックスとの遭遇、魔術世界の存在、魔術師との戦闘、山積する問題は未だ片付いていない。
    ともあれ三人は今日という日を生き延びた。誰一人欠ける事なく

    67 = 60 :

    上条「一年前の…記憶がない!?」

    一夜明け…三人はホテル『ミネルヴァ』のレストランで朝食をとっていた。
    激動の一日の中で知り得る暇もなかった、インデックスの抱えた事情。その脳髄に収められた10万3000冊の魔導書、この世の真理をねじ曲げ、神の摂理を行使する知識…追っ手はそれを狙ってきているのだと。

    麦野「…最初は半信半疑だったけど、あんな出来の悪いパペット振り回せる所を実感として見せられるとね…」

    給仕が顔を青ざめさせながら皿を片付ける傍ら、麦野は時鮭をほぐしながら一人ごちた。
    インデックスが言うにはあの紅蓮の巨人はイノケンティウス(魔女狩りの王)というらしい。
    予めルーンの刻まれた媒体を至る所に貼り付けて結界と為し、術者の魔翌力を触媒に顕現されルーンを破らない限り幾度も復活する類の術式だと教えられた。

    麦野「(つまり結果として、あの一帯全てを消し飛ばしたのは正解だった訳か)」

    上条「だからその秘密を守るために…お前を…インデックスをそいつらは狙ってるんだな!?」

    上条はコーヒーが冷めるのも気にとめずインデックスの説明に聞き入っていた。麦野曰く、軍事機密かそれ以上の秘匿性を持った情報がインデックスの頭脳に一極集中されているのだ。
    その知識が他の勢力に渡る前にインデックスを回収するか、さもなくば始末するか…刺客はそのためにいるのだと。

    禁書「そうなんだよ。だから昨日…しずりは戦ってくれたんだよ。その刺客と…でも刺客は一人じゃないかも」

    麦野「言わばアンタは“知りすぎた人間”ってヤツね…だとしたら次は全力で来るわよ。私を見てるからね」

    上条「!?」

    麦野の言葉に上条が目を見開く。だが当の麦野は素っ気ないほど当たり前に。

    麦野「私はあのタバコ臭い赤毛野郎とやりあった。つまりこのクソガキの回収に当たる障害と見なされた。私が相手ならもうそんな事態を舐めてかからない。様子見もしない。必ず潰しにかかる」

    インデックスを秘密裏に回収するため不当な方法で学園都市に潜入しているだろう内情を鑑みれば、刺客は目立つ事や荒事を避けるために少数精鋭で来るだろう。
    そして敵は麦野の存在を知った。麦野は刺客を退けた。次に来る時はそれを念頭に入れてくるだろうと。

    68 = 60 :

    上条「…上等だ」

    それを聞いて上条は拳を固く握り締める。機密保持だかなんだか知らないが、こんな少女の記憶を奪い、永きに渡って追い続け、さらに麦野まで傷つけられ…黙って見ていられるほど、出来た人間ではなかった。

    上条「魔術師だろうとなんだろうと…やってやる。どんなヤツらかなんてオレは知らない…勝てるかなんてわかんねえ、負けるかも知れねえ、でも…それでもインデックスと沈利を狙うなら、オレはそいつらに刃向かってやる。何度だって」

    幻想殺し…上条の右手に宿る異能を打ち消す力。異能しか打ち消せない力。テストで百点が取れる訳でも女の子にモテる訳でもない、スキルアウトにナイフでも出されたら逃げるしかない右手。

    その力だって魔術に果たして通用するかどうか…だが、追われている少女を、それに立ち向かった女性を、その手を取れずに終わる事など、上条の中の『上条当麻』が許しはしない。断じて

    禁書「…二人とも、ありがとうなんだよ…ごめんね…でもありがとう…ごめんね…ありがとう…なん…だよ…でも…危なくなったら…ちゃんと逃げて欲しいかも…」

    上条「…任せろ。インデックス」

    麦野「(記憶…か)」

    再び目に涙の滲み始めてきたインデックスにハンカチを差し出す上条を見ながら麦野沈利は思う。もし、今までの記憶が一切合切奪われ、白紙にされてしまったら…?

    69 = 60 :

    禁書「えへへ…なんだか話してスッキリしてまたお腹空いてきたんだよ!もっと食べたいかも!」

    上条「どうなってんだよお前の身体!?まだ入るのか!?それも魔術なのか?ブラックホールなのか!!?」

    禁書「れでぃーに対して失礼なんだよ!」ガブッ!

    上条「んがあ!?痛っ!痛たたた!?」

    たった今、自分達を助けると言ってくれた…この最愛の少年の記憶が自分の中から消えてしまったら?

    麦野「(私なら生きていけない)」

    二人で見た星空

    二人で見た花火

    二人で見た夜明け

    二人で見た夏の青空

    その全てが、喪われたら…生きていけない。麦野沈利はそう思った。心の底から

    70 = 60 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下はここまでです。

    重ね重ね、レスや感想をいただきありがとうございます。もう一度…ロゴをありがとうございます。なんだか宝物をいただいた心持ちです。永久保存いたします。

    それでは失礼いたします。ありがとうございました

    71 :

    乙!

    な、なんか物騒なフラグが立ってる気がしますが、乙!

    72 :

    乙乙乙!!!!!!!
    むぎのんがイイ女過ぎて上条さん爆発しろ
    でもインフォメーションさん来たらむぎのん上条家でらめえぇぇっ!な事できなくね?いつもいるんだろ

    73 = 72 :

    乙乙乙!!!!!!!
    むぎのんがイイ女過ぎて上条さん爆発しろ
    でもインフォメーションさん来たらむぎのん上条家でらめえぇぇっ!な事できなくね?いつもいるんだろ

    74 :

    乙です
    あのあのフラグ立ちまくりなんですけどあの

    75 = 58 :

    どうなるかわからなくてハラハラするな

    76 :

    チートキャラのねーちんはどうするのかねえ……

    77 :

    ちーとばかし難しい問題だなそれは

    78 = 60 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
    たくさんのレスといただいたロゴにすごく勇気づけていただけました。本日最後の投下をさせていただきます。

    79 = 60 :

    ~第三学区・ホテル『ミネルヴァ』~

    禁書「しずり、行っちゃうの?」

    麦野「服の替えを調達しに行くだけよ。当麻、お願いね?」

    上条「ああ、なるべく早く戻って来いよ。携帯もないんだからな」

    麦野「平気。アンタ達こそ気をつけなさいよ…それと当麻?」

    上条「ん?」

    麦野「私がいない間にクソガキと乳くりあってたらオ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

    上条「するか!!!」

    禁書「いってらっしゃいなんだよ!帰りにアイスくれるとうれしいな」

    麦野「(…どんな胃袋してんのよ…頭じゃなくてお腹に魔導書詰まってんじゃない?)」

    七月二十一日。朝食を済ませると、麦野はステイルとの戦闘で駄目にしてしまった服と携帯電話を補充するために一度街に出る事にした。
    当初、上条達も同行しようとしたがインデックスの守りを揺るぎない物にするためにホテルに留まっているように麦野が伝えたのだ。
    白昼堂々街中で襲ってくるような荒事に相手がそうそう出れないという事情も相俟っての外出だが…

    ~第七学区行きモノレール車内~

    麦野「(また狙ってくるとしたら、このタイミングでしょうね)」

    麦野はモノレールに揺られながら街を見下ろし思案する。
    相手が自分なら、籠城戦の最中ノコノコ街に出て来た敵勢力の人間を捕まえ人質ないし人質交換に使おうとする。
    昨日がインデックスを囮にしたなら、今日は自分を餌に使う。それだけの話だ。

    麦野「(当麻なら考えつきもしないんだろうな)」

    だがそれで良い。『暗部』仕込みの思考法など上条には不要なものだ。
    次は敵も腹を括ってくる。ならば面が割れている自分一人の方が動きは軽い。
    こうした交通機関、人通りの多い道を選んで歩けば必ず向こうの網に引っ掛かる。

    麦野「(蛇の道は蛇…たーのしみだねー)」

    上条には見せられない真っ黒な笑顔のまま、麦野は第七学区へと降り立った。

    80 = 60 :

    ~第七学区・カフェ『サンクトゥス』~

    麦野「…なんでてめえがここにいる訳?ガキは貧相な尻突き上げて地べたの泥水でもしゃぶってろ。消えな」

    御坂「たかがお茶しに来たくらいでなんでそこまで言われなきゃなんないのよ!」

    服を調達しに行ったセブンスミストが何故か半壊しており(虚空爆破事件が原因だと麦野は知らなかった)出鼻を挫かれた麦野は昨日痛めた喉を潤すために近くのカフェレストランに立ち寄った。
    その店先でばったりであったのが…目下の恋敵である第三位『超電磁砲』御坂美琴であった。
    二人は今、お互い以外誰もいないオープンテラスの席で互いに背中合わせで舌戦を繰り広げていた。

    麦野「アンタ当麻を一晩中追っ掛け回してたんだって?その挙げ句一昨日の停電騒ぎ。アレもアンタなんでしょ?」

    御坂「うっ…それは…」

    麦野「二重の意味でムカつくてめえのツラのおかげでせっかくエスプレッソが泥水だわ。最悪の気分。さっさと私の視界から消えてくれない?」

    御坂「…人が黙って聞いてりゃ…言・い・た・い・放題言ってくれるじゃないのゴラアアアァァァ!」

    常ならばストッパー役となる白井黒子が傍らに控えているが、七月二十一日現在『幻想御手』の音楽ファイルを追って捜査中のためにこの場にいない事が災いした。
    対する麦野も握り締めたエスプレッソの取っ手を握り潰さんばかりで、さらに店内が何故かガラガラで二人しかオープンテラスにいない事が拍車をかけた。

    麦野「ああん?テメエが当麻の友達だからって私が手加減するとか思ってる?なら考え違いね…私はテメエの事が会った瞬間から気に食わねえェェんだよォォ!!」

    似たような能力、同じレベル5、学園都市暗部と学園都市広告塔。相似形を描きながら相反する麦野と御坂。どちらも低い沸点の上好いた男まで同じである。
    現時点で御坂に自覚は芽生えていないが、同じ女で当麻と肌を重ねた麦野にはわかる。目下最大のライバルはこの超電磁砲だと…

    81 = 60 :

    しかし

    麦野「…やーめた」

    御坂「えっ!?」

    麦野「私、今アンタと揉めてる暇ないの。それどころじゃないってんだよボケ」

    あっさり矛を収める麦野、出鼻を挫かれる御坂。麦野はヒビの入ったカップをソーサーに戻し座り直す。
    同時に席を蹴ったにも関わらず、振り上げた拳を一方的におろされては御坂でなくとも戸惑う。

    御坂「なっ、なによ!いきなり喧嘩売って来たりいきなり引っ込めたり!訳がわかんないわよ!」

    麦野「ヘラヘラ愛想笑い浮かべてカメラの前で手振ってりゃいいアンタには関係ない世界の話。いい気なもんねー常盤台のお嬢様(エース)は」

    御坂「…!」

    再び煽られ今度こそ許すまじと言った表情の御坂。互いに背中越しに睨み合う。だが麦野は更に言葉を紡ぐ。

    麦野「――出て来なさいよ。せっかく仕込みが終わるまで待ってあげたんだからさ」

    御坂「?…アンタなに言って――」

    「気が付いていましたか…ステイルに人払いのルーンを刻んでもらっていたのですが」

    御坂「!?」

    麦野「昼下がりだって言うのに『不自然』に私達しかいなかったし誰も入って来なかったからねえ?この電気ウナギがそれを『不自然』に思った様子もしなかったし」

    そこには…天鵞絨のように艶めかしい黒髪を結い上げた、片足だけジーンズを切り詰めシャツ一枚にブーツとウエスタンスタイルに似つかわしくない…令刀と言われる儀式用の日本刀を佩いた女性がいた。

    御坂「(私が…気づけなかった!?)」

    御坂美琴『超電磁砲』は派手な攻撃にばかり目を奪われがちだが、自身を中心とし微弱な電磁波の反射でソナーのように周囲の状況や死角を拾える。
    その御坂美琴の警戒網を『誤認』させ、周囲の無人状態を『不自然』と認識させなかった…この奇抜なファッションの女性は何者なのだと御坂は訝った。

    神裂「…話が早くて助かります。私は神裂火織と申します…貴女が察しの通り――“魔術師”です」

    御坂「(魔術師…!?)」

    82 = 60 :

    ~第七学区・『サンクトゥス』オープンテラス~

    麦野「へえ…その魔術師さんとやらはあの赤毛のデカブツみたいに自分の…ええっと“魔法名”って奴は名乗らないの?」

    インデックスからイノケンティウス(魔女狩りの王)やルーンの魔法の説明を受けた際に聞いた。魔術師は魔法名なる者を名乗ると。

    神裂「…出来ればもう一つの名は名乗りたくありませんね」

    麦野「そう。で、何の用?まさか一緒に午後のお茶しに来ました…なんて雰囲気じゃないわよねェェ?」

    御坂「(魔術師?魔法名?なんなのこいつら…なんなのこの雰囲気…)」

    昼下がりのオープンテラスは一触即発だ。空を駆ける鳥すら避けて通る。ステイルの人払いのルーンと、神裂の張り詰めた空気と、麦野の胎動し始めた狂気で。

    神裂「手短にいいましょう…インデックスを引き渡して下さい。もう彼女には…私達には…時間がないんです!」

    麦野「あ、そう。てっきりあの煙草野郎の敵討ちかなーって思ったんだけど…残念、そんなつもりはないわ…消えなアバズレ…!」

    御坂「ちょっ、ちょっとアンタ達!なにさっきから訳わかんない事言ってんのよ!人を無視して勝手に話進めてんじゃ…」

    麦野「関係ねえよ!テメエにはカァァンケイねェェんだよ売女ぁぁ!」

    麦野の目が爛々と煮えたぎるような黒い炎を宿していく。神裂もステイルが麦野を評した言葉に得心がいった。
    確かにイカレてる。間違いなく狂っている。しかしそれを暴力として奮うだけの術を持っていると。

    神裂「…どうしても話し合う事で解決は出来ませんか?失礼ですが、貴女とあの少年は…彼女と、インデックスと面識を持った事すら昨日が初めてではないのですか」

    麦野「そうねえ?のべつまくなし食い散らかす、馴れ馴れしい、テレビのリモコンも満足に回せない、正直当麻の側に居られるだけで私も迷惑なのよねえ?」

    麦野はインデックスや御坂美琴のようなタイプが嫌いだ。生まれながらにどんな闇に落ちようと輝きを失わない『光』を持ったタイプが。
    最初は上条当麻が守ると決めたから守る、ただそれだけだった。
    インデックスを守ろうとする上条を守るために。だが今は少し違う。

    83 = 60 :

    麦野「けどねー…アンタ達、あのクソガキの記憶消しくってんだって?プチプチプチプチスライム潰すみたいにさあ?」

    神裂「っ!…それは!」

    麦野「考えたのよねー…大事な人生の記憶を消すなんてふざけた真似されたら私なら生きていけない…でもね?あのクソガキ笑うんだよ?」

    自分なら当麻の記憶を奪われたら生きていけない。もう笑う事すら出来ない自信がある。なのに

    麦野「ご飯が美味しいって喜んで、寝るの邪魔されて怒って、私が傷ついたの見て泣いて…アイス買って来てって笑ってんだよぉアバズレェェェ!!!」

    神裂「…ッッ!!」

    自分は人殺しの化け物だ。誰かを助けるために戦うんじゃない。誰かを救うために闘うんじゃない。それは偽善使い(フォックスワード)の生き方だ。

    でも麦野はそんな生き方をする少年に救われたから。そんな少年に救われんとする少女の涙を見たから

    神裂「…交渉決裂…ですね…」

    神裂が諦念と覚悟の両方を決めたように佩刀『七天七刀』に手をかける。
    その目蓋には、今麦野が叫んだように、喜んで怒って悲しんで笑う…インデックスの姿が映っていた。

    御坂「なんなのよ…なんなのよアンタ達…一体なんなのよ!」

    御坂美琴は懊悩する。魔術師、魔法名、インデックス、記憶、上条当麻…知らぬ言葉と知っている単語の中で…
    それらを語る麦野の横顔を見てしまったから。
    アルカディアの時のような狂気を宿しながら…それでも『何か』を守ろうとするように見える麦野を見てしまったから

    麦野「…だから消えなさいって言ったでしょお子さま中学生…巻き込まれたくなかったからさっさとケツ振って逃げればどう?」

    麦野沈利は覚悟を決める。暗部で鍛えられた嗅覚が告げる。この日本刀を佩いた女性が、あの赤髪の魔術師より数段ランクの高い魔術師であると。

    神裂「参ります…!」

    狩りの王(キング)にシリコンバルーン(ジョーカー)は使い切った。

    相対するはアイテムの女王(クイーン)と元女教皇(クイーン)

    それを見守るは常盤台の第三位(エース)

    ――クイーンは二枚いらない――

    84 = 60 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。本日の投下はこれにて終了です。

    それでは失礼いたします。

    85 :


    むぎのんかっこよすぎ

    86 :

    一応メール欄にsagaいれといたほうが良くないッスか?

    87 :

    携帯だからメンドイらしい

    88 :

    LEVEL5 vs 聖人か…むぎのんガンバ
    ただ最近の禁書みてると美琴が援護してかろうじて勝てるかどうか位のチートだよな

    89 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
    休みなので夜更かし気味の投下をさせて下さい。

    では科学のレベル5VS魔術の聖人です。

    90 = 89 :

    ~第七学区・『サンクトゥス』オープンテラス~

    麦野「っらああああああぁぁぁぁぁぁ!」

    神裂「っはああああああぁぁぁぁぁぁ!」

    爆風にテーブルが吹き飛び、剣風に石畳が薙ぎ倒される。オープンテラスは連続した爆撃でも炸裂しているかのような惨状を呈していた。

    神裂「七閃っ!!」

    一度の抜刀に見せかけ七筋の鋼糸を投擲する『真っ正面から裏をかく』攻撃が麦野へと飛来する。
    それも抉れた石畳や切り倒された街路樹まで巻き込んだ質量攻撃となって。

    麦野「ッッッ!!」

    左手を横薙ぎに奮い、粒子と波形の狭間を揺蕩う電子を光のカーテンのように展開し、飛来する物体全てを焼き尽くす。
    原子崩しの威力がそのまま防盾となったそれは容易く神裂の放った一手を熔解させ炎上させる。

    神裂「それがステイルの言っていた『光を司る力』ですか」

    麦野「だったらなんだよ露出狂女ァァァ!こぉぉんな形で割れんならあの赤毛のデカブツ野郎の首をしっかりもいでりゃ良かったかしらねェェ!?」

    左文字の流れを組む頑健な鋼糸は溶鉱炉に浸したように形を失い、神裂はそれを巻き戻す事なく手から放る。
    しかしその顔色に揺らぎはない。むしろ…吠える麦野が自らに生まれた揺らぎを鼓舞せんとしているようだった。

    麦野「(原子崩しが…撃てない!!)」

    速い。速すぎるのだ。神裂の動きが速すぎて『原子崩し』の照準が合わせられないのだ。
    慎重に座標を割り出し照準を定め放とうにも、神裂の速力が麦野の演算を凌駕しているのである。

    麦野「ちょこまかケツ振ってんじゃねぇぞアバズレェェェ!テメエの脚に見とれてやるほど落ちちゃねぇぞぉぉ!!」

    神裂「…ッ!」

    放つ、放つ、放つ。無数の原子崩しを目視射撃ではなく見越し射撃で。一発一発が大砲のように地面を穿つ。
    神裂の駆ける地点、方向、座標を予測し撃つ。だが神裂はそれすら裏切って跳び、伏せ、かいくぐる。

    91 = 89 :

    神裂「(ステイルから聞いた以上の破壊力ですね)」

    神裂はその視力8.0という常人離れした目の良さと、聖人として常人を遥かに上回る動体視力から麦野の左手の角度…すなわち、原子崩しの射出角度を見抜き撃たれる前に回避しているのだ。
    さらに、あくまで直線的な砲撃である原子崩しの狙いを曲線的な動きで掻き回し、脚力で掻き乱す。

    神裂「(ならば――砂かぶりの位置まで!)」

    ドンッ!と足元が爆裂したようなロケットダッシュで距離を詰め七天七刀を居合いに構える。すれ違いざまの疾走居合い。

    麦野「女に迫られる趣味はねぇぇんだよぉぉぉ!」

    麦野も自らの足元に原子崩しを放ち、加速。飛び込む神裂、飛び出す麦野。

    神裂「ハアアアァァァ!!」

    未だ納刀されたままでの鞘突きが麦野を襲う。狙いは鳩尾。射抜き、その衝撃で膝を突かせんとする。

    ゴッ!!!

    麦野「グガッ…アアアァァァ!!」

    一撃の元、水月へと突き刺さる鞘頭。仰け反る麦野。しかし

    麦野「バァァァ…カがぁぁぁ!!!」

    神裂「!?」

    スキルアウトを素手で殴り倒すほどの、聖人には遠く及ばずとも強い肉体を持った麦野はその鞘ごと七天七刀を掴み――

    ドジュウウウゥゥゥ!

    神裂「そんな…!」

    零距離から左手の光球…粒子と波形の中間点に留めた力場の射出口で七天七刀を熔解させたのだ。
    核シェルターをも易々と貫通せしめる熱度の原子崩しで…!

    麦野「そんな皮被り(さやつき)の長物振り回してれば…私に勝てるとか…思ってたー?」

    神裂「―――!」

    麦野「ブンブンブンブン…ブンブンブンブンうっとおしいハチは…」

    半ばから溶け落ちた七天七刀を掴んでいた左手を…そのまま突き出し――

    神裂「しまっ…!」

    麦野「掴んだら…潰さないとねェェェェェェ!!!」

    ドオオオオオオォォォォォォン!!!

    92 = 89 :

    ~第七学区・グラウンドゼロ~

    御坂「…なん…なのよ…これ…」

    第四位原子崩し(メルトダウナー)と女教皇(プリエステス)という科学と魔術の正面衝突を目の当たりにし、御坂美琴は茫然自失としていた。

    御坂「だっ…第四位!」

    麦野が七天七刀を破壊し、零距離から原子崩しを放った衝撃が爆心地同然となったオープンテラスにもうもうと土煙を巻き上げるのを見、御坂は駆け出した。

    麦野「ゲホッ、ゲホッ…ガハッガフッ…ゲエッ…エ…エェ…ェェ…!」

    御坂「ア、アンタ!大丈夫!?大丈夫!!?」

    麦野「グッ…フーッ…こ…れが…大丈…夫に…見えんなら…アンタ眼科にいったら…?」

    鳩尾を七天七刀の鉄鞘で撃ち抜かれ、呼吸も困難な中、血の多分に混じった吐瀉物を吐きながら麦野沈利は地面に手をついていた。
    駆け寄る御坂の手を振り払い、悪態をつく。骨が砕かれたか折れたか…昨日のステイルとの激闘も重なり、麦野沈利の身体は軋みを上げていた。

    御坂「びょっ、病院!早く、早く連れて行かないと!」

    麦野「…逃げ…ろっ…て言ったで…しょ…この…売女…」

    御坂「逃げれる訳…ないでしょうが!もうしゃべんなぁ!!」

    御坂美琴にはわからない。なぜ麦野があの神裂を名乗る女性と戦わなくてはならないのか。
    御坂美琴にはわからない。あの傲岸不遜を地で行き誰も彼も見下す第四位が…吐瀉物を吐き血を撒き散らしながら必死に抗うのか。
    御坂美琴にはわからない。そんな泥臭く地を這いもがく麦野沈利を見て…得体の知れない激情が込み上げてくるのか。

    それは奇しくも、血溜まりの中麦野に抗った、あのツンツン頭の無能力者と重なった。

    麦野「バ…カ…」

    まだ…終わってないんだよ…第三位(レールガン)



    神裂「Salvere000(救われぬ者に救いの手を)」

    93 = 89 :

    ~第七学区・グラウンドゼロ2~

    御坂「…!」

    精も魂も尽きたような麦野を抱えながら、御坂は愕然とした。

    神裂「危ない…所でした…身かわしがコンマでも遅れれば…今頃私は生きてはいられなかったでしょう」

    土煙の彼方…左肩口を抉られ焦がされた傷を抑えながらも…神裂火織を名乗る魔術師は立っていたのだ。

    麦野「…チッ…人に…情けかけるから…痛い目見るんだよ…ビッチが…」

    もし神裂が抜刀していればあの突きの時点で麦野は絶命していた。そのある種の優しさを指して麦野は言っているのだ。
    神裂は強い。身を捨てて得た神裂の「優しさ」とという隙を突いて尚…届かない。

    神裂「――もう一度言います。インデックスを…引き渡して下さい!魔法名を名乗った以上…もう私は手心を加える事は出来ません!」

    傷口より痛む心を抑えつけて神裂は告げる。間もなく命を落としてしまうインデックス、今も戦えずとも後方から支えてくれるステイル、それを無碍に、無為に、無駄には出来ないのだ。
    刺客として、追っ手として、あまりに優し過ぎるが故に。

    ――しかし――

    麦野「関係…ねえんだよ…!」

    御坂「あんた…!」

    麦野「関係ねえよ!カァァンケイねェェェんだよォォォッ!」

    麦野沈利は立ち上がる。寄り添う御坂の前に背を向けて。神裂に胸を晒して。

    麦野「なーにが魔術師だ。なーにが魔法名だ。ここでテメエをブチのめせば、そんなの関係ねえって証明出来んのかねぇ!?」

    後になど引けない。自分の後ろに御坂美琴が、インデックスが、上条当麻がいるのだ。だから…麦野沈利は立ち上がる。何度でも。

    94 :


    ハッピーエンドで嬉しいかなって思ったけど、
    こういうのは最後まで分からない方が良かったと思ったり、
    いやいや分からなかったら怖くて最後まで読めないと思ってみたりww

     でも何がハッピーなのかって考えたりあの伏線はどうなるんだて考えてるうちに
    もっと疑心暗鬼になってしまったりww

     作者さん乙です!

    95 = 89 :

    麦野「見くびらないで欲しいわねえクッソババア…私もね…アンタと同じ穴の狢よ…刀振り回して説得してるつもり?力振りかざして上から目線で“手心を加えられない”?神様にでもなったつもりかってんだよテメエはァァ!」

    神裂「…!!」

    神裂が戦慄く。戦力差は圧倒的だ。いかに麦野がレベル5と言えそれは軍隊クラス…対する神裂は聖人…魔術世界の核兵器だ。
    その神裂が一瞬気圧される。その、先程までの狂気を越えた鬼気に。

    麦野「――見せてみなさいよ…ご自慢のお家芸…魔術ってヤツをさあああぁぁぁーっっ!!!」

    麦野が再び左手を突き出す。神裂が気圧されるながらも呪文を詠唱する。

    神裂「くっ…!」

    ゴッ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

    御坂「これが…魔術!?」

    後に『後方のアックア』と渡り合うほどの水の魔法…大海原を思わせる大質量の水が…逆巻く萼となってオープンテラスを軽々と覆い尽くす異様を見せつけ

    麦野「――巻き込んで、悪かったわね」

    御坂「え!?」

    ドオオオォォォンッ!

    御坂「!?」

    御坂の足元に原子崩しを放ち爆裂させ吹き飛ばした。迫り来る大海簫の一撃の直撃から外れるコースへ

    御坂「だっ…第四位―――!!!!!」

    大海原の一撃が迫る

    死へ誘う死神の大鎌が

    96 :

    続きが気になって寝れない

    97 = 89 :

    麦野「(…残念…)」

    迫り来る一面の青。これが魔法かだなんてぼんやりと考える。

    御坂「―――!―――!!!」

    麦野「(うっせえんだよ売女…聞こえねえんだよ)」

    地鳴りと共に遅い来る激流が御坂の叫びをかき消す。

    麦野「(ああ…そう言えば…インデックスに…アイス買ってあげないといけないんだっけ)」

    これが死か――そう薄ぼんやりと思う。

    麦野「(こんな事なら…あいつにもう一回抱かれたかったなあ…)」

    想う、最愛の少年。初めて出来た彼氏。私の――初めての男

    麦野「(ごめんね、当麻)」

    98 = 89 :

    バキイイイイイイィィィィィィ…

    その瞬間、迫り来る大海原が割れた

    麦野「!?」

    跡形もなく、粉々に打ち砕かれ

    御坂「?!」

    舞い散る水しぶきは虹を生み出す暇もなく

    神裂「!!」

    ただ一人の少年が…力尽きた麦野の前に舞い降りた。


    「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!」


    ガッシャアアアアアアアアアァァァァァァン!!!

    幻想を打ち砕く音と共に

    麦野「――アンタ…なんで…」

    夢かとすら思った。幻かとすら思った。

    御坂「――遅いのよ!アンタは!」

    もう、奇跡なんてたくさんなのに

    神裂「――まだ、仲間がいたのですね」

    もう、幻想(きせき)なんて望まなかったはずなのに


    「言ったろ…助けてやるって…!」


    まるで、御伽噺の英雄(ヒーロー)のように


    上条「お前の全部抱えて…引きずり上げてやるってなあああああああ!!!」


    上条当麻は、現れた

    99 = 89 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)です。投下はこれにて終了です。

    土日は夜更かしし放題なので少し嬉しいです。コメントくださった方々ありがとうございます…いつも深く感謝しております。

    それでは失礼いたします…

    100 :

    こ、ここで投下終了…だと…!?ww

    乙です
    いつも楽しみにさせてもらってます


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