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    元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」2

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    みんなの評価 : ★★
    タグ : - 麦野「ねぇ、そこのおに~さん」 + - フレンダ + - ヤンデレ + - 上条 + - 佐天 + - 滝壺 + - 絹旗 + - 美イン + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    901 = 468 :

    ~2~

    絹旗「……“成績”もロクに叩き出せなかった劣等生が、見ない間に随分と超要領が良くなったみたいですね」

    黒夜「立ち回って生き延びたんじゃないのさ…ひっはは。死に損なったんだ」

    絹旗「やっぱり劣等生は超劣等生です。新しい枠組みからも弾き出された、哀れな」

    ベッドに敷かれたクッションを背もたれに、黒夜は噛み付く事もせず言葉を交わす。
    話し合いなど最も望むべくもない相手、絹旗最愛を前にしてである。

    黒夜「…で?優等生のアンタが私にトドメ刺しに来たってか?今ならやれるんじゃないか?今の私なら車より軽くひしゃげるぞ?絹旗ちゃんよぉ」

    絹旗「――あなたが何を言おうが超勝手ですが、私がそれに手を貸してやる義理はないんですよ」

    対する絹旗もベットに横たわる黒夜を、傍らのパイプ椅子に腰掛けて見やる。
    そう…同じ空気を吸う事すら忌み嫌っていた黒夜海鳥を前にしてだ。

    絹旗「あなたは超死に体で、そっちの男は心が死んでるようなんで。死人は二度殺せないんですよ」

    黒夜「………………」

    絹旗「殺してほしけりゃ、超自分の足で私の前に立つ事ですね。今のあなたにそんな価値は超ないんですよ」

    絹旗とて、場合によっては引導を渡すためにこの部屋を訪れたのだ。
    黒夜はそれだけの事をして来た。フレンダを傷つけたのだから。
    だが…まるで轢殺されかけた老衰の犬のような黒夜を見、その気すら失せてしまったのだ。

    絹旗「…せいぜい、私に殺される時まで生き延びる事ですね。ほっといても私以外の誰かがあなたを殺しに来ますから」

    ガタッと絹旗はパイプ椅子より立ち上がり…黒夜に背を向けた。
    そして振り返りもせずに――何かをポイッと投げて寄越した。
    そしてそれを――黒夜は生き残った右手でキャッチした。

    黒夜「…これ、まっじぃんだよね。っつーか甘いんだよ」

    絹旗「超餞別です。いつか野垂れ死ぬ日のあなたのために」

    そう言い捨てて絹旗は去って行く。残された黒夜の手には…
    チョコレートとクッキーと蜂蜜と生クリームが練り込まれた、一本のチョコレートバー。

    黒夜「…ひっはは…ひはは…」

    そして…それを一かじりする。甘い。甘過ぎて色んな味が疎かになっている。
    脳が常に糖分を必要としているでは済まされない不味さ。なのに

    黒夜「…しょっ…ぺえ…」

    黒夜は、噛み締めるようにそれを味わった。

    902 = 468 :

    ~とある病院・廊下~

    一方通行「――が見てえだァ?ンなもん芳川辺りに車でもなンでも出させりゃいいだろうがァ」

    打ち止め『ダーメ!あなたも一緒じゃなきゃダメってミサカはミサカは…わぷっ』

    番外個体『やっほぅ一方通行。今夜21時に自宅集合だよん。来なかったらあなたの部屋にコミックLO平積みしてあらぬ疑いかけさせちゃうよ』

    一方通行「ンなもンオレの部屋にねェだろうが!!」

    御坂『お電話代わりました、とミサカは着々と一方通行の部屋に“週刊わたしのおにいちゃん・いちごましゅまろフィギュア”を並べる作業に従事します』

    一方通行「…!!」

    御坂『私達の要望が受け入れられないならば実力行使も辞しません、とミサカは(ry』

    芳川『一方通行?ご覧の有り様よ。何とかしてちょうだい』

    一方通行「なンとかすンのはオマエの仕事だろうが芳川ァァァァァ!」

    芳川『ダメよ。私は身内に甘い女なの』

    その頃、一方通行は上条当麻・浜面仕上との鼎談を切り上げ病院内の携帯使用エリアにて黄泉川家の面々と通話をしていた。
    ただしそのこめかみには打ち止めのおねだり、番外個体の悪意、御坂妹の嫌がらせにはちきれんばかりの青筋が浮いている。
    それもそのはず…彼女達がむずがっているのだ。今夜限りのイベントへ連れ出せと

    一方通行「チッ…」

    渋々了承の意を伝えると忌々しそうに一方通行は通話を終了させた。
    行くと決めた数時間の我慢で、行かないと断った場合の数日間の鬱陶しさを天秤にかけてだ。
    とかく擬似的ながら『家族関係』という物は時にわずらわしい。だが切っても切り離せないとも理解している。

    一方通行「…クソッタレ…」

    そう悪態を吐きながら一方通行は杖をついて歩み出す。するとそこへ――

    絹旗「………………」

    一方通行「………………」

    黒夜海鳥との面会を終えた絹旗最愛と一方通行が鉢合わせ、どちらともなく顔を見合わせる。
    打ち止めより大きく、番外個体よりは小さい、そんな合わせにくい目線。


    絹旗「………………」


    家族を持たない置き去りの少女と


    一方通行「………………」


    疑似家族を持つ名前を捨てた少年が交差する時


    一方・絹旗「「――――――」」


    物語は始まる――


    903 = 468 :

    ~上条&麦野の病室~

    麦野「あれー?あれー?このシャケ前の時と違うんだけど…あれー?」

    上条「仕方ねえだろ?病院食の減塩メニューなんだから」

    麦野「違った意味で血圧上がるわ」

    上条「朝は低血圧なのになあ…」

    一方その頃…上条当麻と麦野沈利は少し早い夕飯にありついていた。
    しかし麦野の機嫌はやや斜めだった。運ばれて来た病院食のシャケの塩気が足りていないと文句を付けているのだ。
    二つ並んだそれぞれのベッドで、上条がヒョイと顔を覗かせる。

    麦野「だいたいね、シャケは赤くなきゃダメなのよ。それがなんでこんな白っぽいの?それに焼いたって言うかあっためた感じよね?皮がパリパリじゃないシャケなんてシャケじゃない!それからこの下に引かれたレタスのせいでなんか身が柔いわよね?ねえこれってシャケへの冒涜だと思わない?まずね、シャケって言うのは焼いた時に(ry」

    上条「(…やっちまった…)」

    ベッドに備え付けられたテーブルから身を乗り出して麦野は語る。シャケへの思いの丈を。
    麦野のそれは嗜好というより美学、信念というより信仰ですらある。
    回転寿司に行けばサーモンからハラスばかり取り、とある牛丼屋に行けば朝定食のシャケにブチ切れ、“このシャケを焼いた奴は誰だ!”“責任者はどこか”とマジ切れするレベルである。

    麦野「いい?シャケって言うのは煮て良し焼いて良し生でもいただける優れものなのよ?たまにサーモンステーキに浮気しちゃう事もあるけどやっぱり至高は焼き鮭よ焼き鮭。いい?鮭って言うのはね(ry」

    上条「だーっ!!わかった!わかったっつの!ちょっと落ち着けって!!」

    麦野「私は冷静よ当麻。こんなシャケへの冒涜のようなメニューに怒りを通り越して冷たい殺意すら湧いてるわ」

    上条「嘘だッッ!思いっきしキレたルチアみたいな顔してるじゃねーか!!」

    話題がループしかけた所で何とかカットする。このシャケ狂もといシャケ教の口に戸は立てられない。
    恐るべき熱心さで神の教えを説く信者にも似ていた。
    この点と粗暴な言動さえ除けば最高なのだが、その点を抜いてしまえば最早麦野ではないという絶対矛盾。
    世の中そうそううまい話は転がっていないものなのだ。シャケのようには。

    904 = 468 :

    ~2~

    麦野「私はね?当麻とシャケどっちを選ぶ?って聞かされたら最終的は苦渋の選択の末血の涙を流して断腸の思いで当麻を選ぶけど、それでもシャケへのこの愛は決して消えないのよ。例えば顔が当麻で身体がシャケのシャケ条当麻(ry」

    上条「んなシーマンなみたいなキメラ生物学園都市にだっていないってーの!」

    まともに取り扱っていてはいつまでもシャケについて語りかねない雰囲気を変えようと上条は病室のテレビにチャンネルを回す。
    こういう時同じ部屋なのは逃げ場がない。その上まだ6時ちょっと過ぎなのだ。と

    『…今夜未明には、使徒座流星群が――』

    上条「使徒座流星群?」

    麦野「ああ…なんか星が降って来るらしいわよ?前のしし座流星群なんて比べ物にならないくらいだって」

    たまたま回したチャンネルに映るニュース番組…
    そこには何と、初冬にも関わらず流星群が降るとの内容が事細かに解説されていた。
    麦野も茫洋としながらも、シャケに関する話題から一瞬なりともそちらに意識がシフトしたらしい。
    テレビのキャスターが言うには今夜の日付変更前がピークだと言う。

    上条「こっから見えねえかなあ…やっぱ」

    麦野「難しいんじゃないかしらね…」

    星。それは二人にとって若干特別な意味合いを持つ。
    思い返されるは第十九学区での上条と麦野の最後の激突。
    『ほしのみえるばしょ』での死闘。そこで二人は互いを初めて対等の目線で見つめ合えたのだから。

    上条「――屋上、なんてどうだ?」

    麦野「えっ…でも私、こんな格好だよ?」

    カチャ、と端を置いて麦野は自分の格好を見やる。
    お世辞にも可愛らしいとは言えない入院服。病室が同じと言えども外に出るとなると話は別だ。
    二人とも身体に穴を開けられたばかりの上、まだ少々痛むものの――

    上条「いいって。俺しか見てねーだろ?」

    麦野「…当麻が見てるから問題なんだよ…まあいいけど?」

    上条「よしっ!!じゃあ屋上で天体観測しようぜ!」

    麦野「たまに強引よね、あんたって」

    そう呆れ顔ながらも…麦野は薄く笑んだ。コートまで穴だらけにされてしまいもう着れないが――
    少なくとも、二人で身を寄せ合う分にはまだ十分な季節だとも。
    星を見に遠出は出来ないが、それより大切なのは二人の距離。そう信じているから。

    麦野「――付き合ってあげるわ。仕方ないから」

    905 = 468 :

    ~第二十一学区・天文台付近の山道~

    一方通行「長ェな」

    黄泉川「山道だからそう感じるだけじゃんよ」

    打ち止め「見て見てー!ダムがお星様で光ってるよってミサカはミサカは窓から手を出して指差してみたり!」

    既に日も沈んで久しい夜の山道を、黄泉川家全員を乗せたステーションワゴンがひた走って行く。
    後部座席左側にて窓から吹き込む初冬の風にアホ毛を揺らす打ち止め、中央に位置する一方通行に寄りかかる番外個体。
    右側にて暗視ゴーグルを取り付け星を探す御坂妹、助手席には芳川桔梗、運転席には黄泉川愛穂がそれぞれ乗り込んで。

    一方通行「チッ…たかが天体観測に呼びつけンじゃねェよ。ンな所くンだりどンだけヒマなンだ」

    番外個体「ひひひ。嫌そうな顔嫌そうな顔。ミサカ星よりその顔が拝みたかったんだよ」

    一方通行「放り出すぞ」

    御坂「不法投棄は犯罪です、とミサカは美しい自然を愛する少女的なイメージアップを狙います」

    ぎゅうぎゅうの車内に一方通行は辟易していた。
    自分以外は全員女。皆それぞれ異なる香水やらヘアフレグランスやらで非常に甘ったるい密閉空間なのだが彼は気にも止めない。
    さりげなく番外個体を押し付ける乳房すら圭角に触れてもいない。
    そんな様子は芳川は微苦笑混じりでルームミラーより見やる他なかった。が


    ドンッ!!


    全員「「「「「「!!?」」」」」」

    その時――背後からけたたましい煽りを喰らわせながらピッタリついて来る、一台の車がやって来た。

    一方通行「(敵か!?)」

    一方通行がチョーカーに手をやる。小康状態の終わりかと脳裏を過ぎる不吉な想像。
    そしてそこで――一方通行は無茶な煽りを入れて来る車の正体に気づく――
     
     
     
     
     
    垣根「ふははははは!!ちんたら走ってんじゃねえぞ第一位ィィィィィ!!」
     
     
     
     
     
    一方通行「第二位(スペアプラン)!?」

    芳川「こんな山道にマイバッハ!!?」

    そこに――初春飾利を乗せた『未元物質』こと学園都市第二位、垣根帝督がマイバッハで併走して来たのだ。
    どうやら真っ暗闇にも目立つホワイトヘアーと、ファッキンアクセラレータと言う彼の圭角がその存在を捉えたのだろう。

    芳川「馬鹿よ!馬鹿がいるわ!!!」

    一方通行「無視しろォ。アイツは常識ってもンが哀れなくらい欠けてやがンだ」

    垣根「ヒューヒュー!幼女連れて夜のお散歩かあ?アンチスキル呼ぶぞコラー!」

    906 = 468 :

    ブチッ、とその一言に一方通行の中の何かがキレた。
    隣に中学生を乗せて殴りたくなるほどのドヤ顔で腹立たしい煽りを入れて来る垣根に。お前にだけは言われたくないと。
    他の人間ならもっと口汚く罵られてもこうまで頭には来ない。
    ただし垣根に言われるとどんなに些細な事でもどうにも我慢ならないのだ。

    黄泉川「あの時のホストじゃんよ…だいたい私がそのアンチスキル…」

    一方通行「黄泉川ァァァァァ!あのクソ野郎に抜かせンなァァァァァ!」

    黄泉川「一方通行!?」

    どけっ!と打ち止めを番外個体の膝に乗せて窓から身体を乗り出しハコ乗り状態でがなり立てる一方通行。
    それを同じくウィンドウから中指を立てた挑発ポーズでやり返す垣根。
    ちなみに二車とも百キロ近い併走状態である。

    一方通行「垣根くゥゥゥゥゥン!?ローンはあと何年残ってますかァ!?残念だったなァ払い終わる前に愉快で素敵な冷蔵庫に改造してやンよスクラップの時間だクッソ野郎ォォォォォ!!」

    垣根「舐めてやがるなよっぽど死にてえと見える。女も車も人生も俺の方がノリノリなんだよアクセロリータァァァァァ!星見に行く前にオマエを星にしてやるォォォォォ!!」

    打ち止め「馬鹿がいるよ!馬鹿が二人いるよってミサカはミサカは…きゃうっ!」

    ちなみに、これらの会話はヘアピンカーブでのドリフト走行中の会話である。
    ノリノリの黄泉川、真っ青な芳川、吐きそうになっている番外個体のお腹に打ち止めがのしかかり、御坂妹は気絶、初春だけはいつも通りの中――
     
     
     
     
     
    削板「ぬおおおおお根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
     
     
     
     
     
    雲川「するなってさっき言ったろこの馬鹿がァァァァァ!」

    一方通行「ナンバーセブン!?」

    垣根「根性バカ?!」

    芳川「馬鹿が増えたわ!!」

    轟ッッ!と二車の間を駆け抜けて行くはデコチャリに跨った削板軍覇。
    と、その背に二人乗りし必死にしがみつく雲川芹亜。
    夏の事件の際、麦野が駆るヴェンチュリーと張り合って以来の悪夢である。

    一方通行「どけこのバ垣根!」

    垣根「ひっこめペド野郎!」

    削板「根性ぉぉぉぉぉ!!」

    一方・垣根「「お前が一番うるせェェェェェ!」」

    こうしてステーションワゴンVSマイバッハVSデコチャリの三つ巴は山頂付近まで続き…
    熱くなり過ぎた男三人はこってり絞られ、説教されたのはまた別の話…

    907 = 468 :

    ~ほしのみえるばしょ~

    上条「寒くねえか?」

    麦野「大丈夫…すごくあったかい」

    消灯時間を過ぎた病室から抜け出し、上条と麦野は屋上にいた。

    麦野「あんたってさ…やっぱり体温高いわよね。熱あるみたい」

    上条「そう言う沈利は指先冷た過ぎだろ…」

    麦野「冷え性って訳じゃないけど、あんたくらい体温高いとそう感じるのかもね」

    麦野が御坂と衝突した際、破損させてしまった給水塔に腰掛ける二人。
    病室から持ち出した毛布をかぶるようにして見上げる空。
    雲一つない澄み切った夜空にかかる月の幻暈が霞むほど眩い星辰。
    冬特有の硬質で透明な空気に、微かに白む吐息が名残も残さず消える。

    麦野「私した事ないんだけど、キャンプとかってこんな感じなの?」

    上条「昔父さんとした時は、こんなにベッタリしなかったけどな」

    麦野「やだもう」

    ちょうど座る上条の膝の間に麦野が入り、上条がその背中を包むようにして抱く。
    後ろから回された上条の少し固い指先が、麦野の滑らかな手指をくすぐって行く。

    麦野「私の勝手なイメージなんだけど、焚き火なんかあって、マグカップにコーヒー入ってて…火を見つめてるの」

    上条「ああ」

    麦野「揺れて、乱れて、舞い上がって…それでも暗闇を照らす、そんな炎…かな?私のキャンプのイメージって」

    その上条の手を包むようにして麦野が頬擦りする。
    そこには狂気も思い詰めた横顔もない…ただただ自然な微笑があった。
    上条当麻しか知り得ない、麦野沈利の素顔と言って良いそれが。

    上条「…沈利さ、“スタンド・バイ・ミー”って映画、知ってるか?」

    麦野「死体探しに行く話?」

    上条「いや、そうなんだけどさ…子供の頃、あれに憧れたんだよ。ああやって秘密基地作ったり…友達とキャンプ行ったり」

    麦野「………………」

    上条「俺、そういうの出来なかったからさ。こんな不幸体質だし、イジメられてたしさ…だからかな、父さんあんなに休みの度に俺を連れて歩いてくれたの」

    麦野は知っている。上条の幼少時代の幾多の悲劇と数多の悲惨な過去を。
    自分とはまたベクトルの異なる恵まれぬ幼年期。
    それに対し麦野はキュッと上条の手を強く握る。
    まるで“大丈夫だよ”“私はここにいる”と無言で伝えるように。

    星はまだ降って来ない。

    908 = 468 :

    ~2~

    上条「だから…もし子供が出来たら、俺が教えてやりたいんだ。火の起こし方だとか、テントの張り方だとか」

    麦野「…子供、欲しい?」ニヤッ

    上条「い、いや今すぐじゃねえぞ!?」

    麦野「そりゃ今すぐは無理だろ。あんた高校生、私一応女子大生だし」

    少し暗くなってしまった空気を混ぜっ返す。そして手近にあった魔法瓶に手を伸ばす。
    先程帰って来たインデックスがお土産にケーキを買って来てくれたご褒美に淹れた紅茶を詰めたものだ。
    本当ならばブランデーかウォッカも入れたかったが仮にも病院なので流石に手には入らない。

    麦野「でもさ…仮に結婚式やるならどんなのやりたい?」

    上条「そういうのは普通女の子の夢だろ?男なんて飾りみたいなもんだって」

    麦野「お飾りでも結婚式は一人じゃ出来ないでしょうに。でもゼクシィに乗ってる馬鹿女みたいなのはヤだ。如何にも頭悪そうで」

    上条「沈利って女の女嫌いか?」

    麦野「男の女嫌いより、女の女嫌いの方が多いんだよ。当麻は知らないでしょうけど」

    上条「そんなもんか…」

    麦野「嫌なのよね女って。嫌いなヤツほど仲良いふり、人を誉めちぎった直後に“でも、ここが○○だよね”…数え上げたらキリないわ」

    それでもアイテムの面々といるのは、変わり者の集団にあって女特有のねちっこさ、鬱陶しさがないからだと麦野は考える。
    女同士の救いのなさ、それが招いた悲劇だって麦野は知っている。

    麦野「だから、あんたのそういうカラッとした所、私は気に入ってる。嫌な過去があっても私みたいに歪まない。馬鹿だけど、馬鹿だから私に嘘つけない」

    上条「誉めてんだかけなしてんだかどっちだよ!!」

    麦野「愛してるのさ」

    上条「~~~~~~!」

    麦野「あっ、照れてる照れてる♪まあ飲みなよ」

    そうして麦野はトクトクとカップに魔法瓶の紅茶を注ぐ。
    上条がそれを照れ隠しのように一息に飲み干し…呟く。美味いと。
    それが麦野には嬉しくてたまらない。その一言がいつも欲しくて、頑張れているのかも知れない。

    きっと、幸せだの好きだのというのは星の金貨のように遠くにあるものではなく…
    そんな取るに足らないものの中にこそあるのではないか、と二人は考える。


    星はまだ降って来ない。

    909 = 468 :

    ~3~

    麦野「――でも、あんたとこんな風に星を見に来るだなんて、思ってなかったよ」

    上条「……俺も、沈利と付き合うまで夢にも思ってなかった」

    互いにふと思う。この先進む未来の中で、この星を見つめる自分達二人。
    その自分達が…三人になった時もきっと自分達はこうしているだろうと。
    もしかしたら三人が四人になっているかも知れない。
    さっき話したようなキャンプが…家族で、親子で、出来るかも知れないと。

    上条「なあ、流れ星来たら…なにお願いする?」

    麦野「――ないな。もう、私の願いは叶っちゃったから」

    上条「叶った?」

    麦野「そうよ。星に願う事なんてね、私くらい何でも出来てお金があるイイ女でも叶わないような高ーい望みくらいしかないわ」

    上条「自分で言うなよ!!」

    そう茶目っ気たっぷりに人差し指を立てて星を見上げる麦野の表情は柔らかかった。
    あの路地裏で出会った時のような投げやりなのに暴力的で、全てに渇ききったような冷めた横顔はそこにない。

    麦野「叶えてくれたのはあんただよ。他の誰にも出来ない、私ですら叶わない願いを、あんたが叶えてくれたのさ」

    上条「俺が?」

    麦野「こんな話知らない?牢獄に放り込まれた二人の人間。一人は星を見ていた。一人は泥を見ていた。そういう話」

    上条「ごめん…本なんて読まねえからわかんねえわ」

    麦野「――あんたは、泥ばかり見てた私に、星の在処を教えてくれたんだよ。当麻」

    見上げれば月が埋もれそうな星の海。白金を散りばめたような瞬き。
    それが今の麦野が見つめているもの。かつて破滅を迎えた少女達が手にした、永遠とも思える夏の青空の中では決して見えないもの。
    それは、暗い場所だからこそ輝く星。闇の底から見上げた自分を照らす星灯り。
    暗ければ暗いほど眩い、夜の中に彷徨っても決して見失わぬ道標。

    麦野「…叶えてあげる。あんたが見てる夢。星に祈るよりももっと確実に」

    上条「………………」

    麦野「私にしか叶えてあげられない、あんただけの願いを聞かせて。当麻」

    星は、今二人の手の中にある。どんな暗闇の中でも決して輝きを失わない…
    名も無きふたつ星。散りばめた星空にだって引けを取らない、得難い白金の金貨。



    麦野「ほら―――」
     
     
     
     
    サアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア………
     
     
     
     
    その時、星が降って来た

    910 = 468 :

    ~メモリーズ・ラスト~

    禁書目録「お星様なんだよ!」

    フレメア「本当!大体、いくつくらい!?」

    禁書目録「私にもちょっとわからないかも!多過ぎるんだよ!!」

    その時、インデックスとフレメア=セイヴェルンは病院内のガーデンにて流星群を見上げていた。
    光の雨のように降り注ぐ流星群を、並んでベンチに腰掛けながら、お土産のケーキを頬張りながら。

    フレメア「おっ、お願いしなきゃ…えーっと…えーっと…」

    禁書目録「ふれめあと、ずっと友達でいられますよーに!!」

    フレメア「!!」

    手指を組んで祈ろうとするフレメアの側で、口元に生クリームをつけたままインデックスが叫んだ。
    両手を大きく広げて、星空を抱き締めるように、清々しいまでの大声で。

    禁書目録「ふっふっふ!甘いんだよふれめあ!このストロベリーショートケーキより甘いんだよ!」

    フレメア「ふぎゃああああ!」

    禁書目録「願い事は早い者勝ちなんだよ!」

    フレメア「んー!んーと、んーと…こ、これからもインデックスとフレンダお姉ちゃんと浜面達と一緒にいられますよーに!!あと、あと、駒場のお兄ちゃん!」

    そして、フレメアもまたたくさんの願い事をインデックスに負けじと流星群の空に叫ぶ。
    その脳裏には…浜面ははっきり言わなかったが、もう『星』になってしまった駒場利徳への祈りが込められていた。

    フレメア「私は…私はもう大体、大丈夫だから…だからそこで見ててね!」

    禁書目録「………………」

    それを見つめるインデックス。インデックスも一緒に祈る。
    出会った事のない、出逢わなかったフレメアの『大切な人』のために――

    フレメア「……このケーキ、駒場のお兄ちゃんにも食べさせてあげたかったなあ」

    禁書目録「ストロベリーショートケーキ?」

    フレメア「うん!でも、大体なんでイチゴのケーキにしたの?」

    禁書目録「んー?ふっふっふ…」

    そこでインデックスは含み笑いを浮かべる。フレメアの肩を抱き寄せて、その耳元に囁きかけるようにして

    禁書目録「――フレメアの格好が、このケーキみたいだからこれにしたんだよ?」

    フレメア「!!」

    禁書目録「さあ、いただかれるんだよ!それくれないとふれめあを食べちゃうんだよ!!」

    フレメア「にゃあああ!私のイチゴー!!」

    こうして、二人の少女の願いが届く頃――

    911 = 468 :

    ~2~

    打ち止め「ミサカ達みんなが幸せになれますように!ってミサカはミサカはMNWを代表して上位個体としての威厳を見せつけてみるのだ!」

    番外個体「一方通行が地獄に堕ちますように。叶えてくれないなら自分でやっちゃうよお星様?」

    御坂「(貴女の殺してやる殺してやる詐欺はもはや持ちネタですね、とミサカは…10031人の冥福を祈ります)」

    黄泉川「家内安全、無病息災じゃん」

    芳川「楽して稼げるお仕事を下さい…」

    そして、黄泉川家の面々が天文台の手摺りから身を乗り出し…
    各々の願いを数百数千にものぼりそうな常識外れの流星群に祈る中…

    垣根「飾利の背が伸びますように…あと第一位のクソ野郎がひどい死に方をしますように」

    一方通行「星に祈ってるようなメルヘンな頭の時点でオマエに勝ちの目はねえな」

    垣根「ああん?やるかコラ?やんのかコラ?喧嘩なら売るぞ?買うぞ?」

    削板「祈る事がねえ!!」

    雲川「(この根性馬鹿が私の気持ちに気づきますように)」

    初春「(垣根さんにもう少しだけ常識が身に着きますように…白井さんが立ち直れますように)」

    天文台の下ではマイバッハのボンネットに寝転ぶ垣根、寄りかかる一方通行、しゃがみ込む削板と…
    眉間に皺を寄せてこめかみを引きつらせ祈る雲川、かなり切実そうな初春がそれに続く。

    垣根「ふん…今のうちにテメエの無事でも祈ってな。またおっ始めんだろうが」

    一方通行「…どこまで知ってやがンだ」

    垣根「テメエ一人が“闇”と付き合ってるとか思い上がってんじゃねえぞクソ野郎」

    他の人間には聞こえない声量で垣根がデッドボール並みの直球を投げて来る。
    そして――一方通行もそれを口から出る屁だと反射しなかった。

    垣根「テメエをブチのめして最後に笑うのはこの俺だ。その日までせいぜいヘドロん中で血吐いて生き延びるこったなクソ野郎」

    一方通行「吠えてろクソ野郎」

    二人の友情など育む余地はない。ただ張り合う譲れないプライドがそこにあるだけだ。
    浜面の評する所の『トムとジェリー』のように。だが

    垣根「今の俺を――あの頃と同じと思うなよ」

    そう静かに語る垣根の視線の先には…初春飾利。

    垣根「……変わったのは、テメエ一人じゃねえんだ」

    一方通行「――言ってろ」

    守るべき何か。それだけが今の二人の、唯一の共通項――

    垣根「ケッ」

    一方通行「チッ」

    ……似た者同士の。

    912 = 468 :

    ~3~

    フレンダ「うわー…星・星・星って訳よ!!」

    浜面「すげーなこれ…願い事し放題だな」

    絹旗「(…祈り…)」

    滝壺「イギリスから信号が来てる…」

    一方通行らが星見を行っている頃…『アイテム』の面々も病室にて流星群を見上げていた。
    フレンダは滝壺の膝掛けを借りて車椅子から、浜面は窓枠に腰掛けて、絹旗はフレンダの車椅子を支えながら、滝壺はお裾分けされた紅茶をクピクピ飲みながら。

    浜面「でも…パッと浮かんで来ねえよな願い事って…」

    フレンダ「金よ!結局、世の中金が全てって訳よ!!」

    絹旗「フレンダ超夢がありませんね」

    滝壺「大丈夫、わたしはそんな現金主義のふれんだを応援している」

    浜面「一人くらい“星が綺麗”とか言えよ!女だろお前ら!」

    浜面は思わず嘆息する。『アイテム』に所属していると女性に対するある種の男が捨てきれない幻想までぶち殺されてしまいそうだった。
    出来る事ならば唯一の黒一点として『コイツらが女の子らしくなりますように』と願いたい。だがしかし――

    浜面「(…コイツらが一人も欠けませんように、あとロードサービスの道に進めますように、それから滝壺と…ちゅ、チューからちょっとだけ…ちょっとだけ先に進めますように…)」

    絹旗「浜面超必死に願い事してます。ちょっと引きますよねこういう男」

    フレンダ「結局、浜面はキモいって訳よ」

    滝壺「大丈夫、私はそんなちょっとイタいロマンを捨て切れないはまづらを応援してる」

    浜面「ひでえ言われようだ。決めた!コイツらの願いが一つも叶いませんように!!」

    全員「「「ひどいっ!!」」」

    家族を取り戻したフレンダ、家族を作れるかも知れない浜面と滝壺、家族のいない絹旗…
    三者三様の在り方。人種も、出自も、性別も違う彼等のそれぞれの願い。
    そこで絹旗は祈る。全員の無事を。麦野から受け継いだアイテムの『リーダー』として

    絹旗「(ああ…神様が超いなくっても、祈る星にまで見捨てられた訳じゃないですよね?)」

    かつて病院の廊下でインデックスと交わした『祈り』の話…
    絹旗は祈る。神頼みでなく、彼等を、仲間を、一人も欠けさせずに強くあれる、そんな自分を自分自身に祈った。

    絹旗「(それから、超ついでに――)」

    脳裏を過ぎるは、あり得たかも知れない…『もう一人の自分』――

    913 = 468 :

    ~4~

    SC「ほ…し」

    黒夜「それはわかるのか」

    SC「う…ん」

    黒夜「そうかい」

    同じ頃…隔離病棟にて黒夜とシルバークロースもまた星を見上げていた。
    何の事はない。あまりに星々の瞬きと、流星群の輝きが眩しくて寝付け切れなかったためだ。

    黒夜「…星なんて、何年見てなかったかねえ?ひっはっはっは…」

    夜より深く、決して晴れない闇の中を這いずり回って来た二人。
    しかし二人は今や任務を失敗した追われる身。追う者と追われる者が逆転してしまったのだ。
    あれほど居心地の良かった闇が自分達を縊り殺しに来る、そんな道行き。

    黒夜「――存外、悪くないじゃないか」

    SC「うん…」

    黒夜「なあシルバークロースよ。お前の本当の名前、なんて言うんだったんだ?」

    SC「?」

    黒夜「…わかる訳…ねえか…」

    記憶の全てを失われて初めて…黒夜は任務以外でシルバークロースに対して開襟を開いて語り掛けるようになった。
    あれほど醜悪な内面をしていたこの端正な顔立ちの男が、無邪気な笑顔で少年のように星空を見上げている。
    それが…この先、再び戦いの日々となるだろう黒夜のささくれひび割れた心を僅かに慰めた。

    黒夜「…わかってねえんだろうな。私はお前もろともあの二人を串刺しにしようとしたんだぞ?」

    SC「ううん。ううん」

    黒夜「…野良犬みたいについて回りやがって。お前は顔をまたいじれば逃げられるだろうに…クソッタレ」

    そこで黒夜は再びベッドに寝そべった。まるで犬が飼い主を気遣うようにこちらを見やって来るシルバークロースの頭を…
    もう失われてしまったイルカのビニール人形を撫でるように触れた。
    それにシルバークロースはにっこり笑った。記憶を喪う前は冷笑的な笑みしか浮かべなかったニヒルな男が。

    黒夜「…また一から出直しだ!」

    だからこそ…黒夜海鳥は再び漆黒の翼を広げる。
    自分はこのままでは終わらせない。このままでは終われない。
    そう…身投げした闇の中で喰われるような弱い『悪』よりも…
    より黒く、より暗い場所で黒き翼を広げるオオワシのような『巨悪』に返り咲く。いつの日か

    黒夜「これで終わったと思うなよ…最後に笑うのはこの私だ!!黒夜海鳥だ!!!ひっーはっはっはっはっはっはっはっ!!」

    この数日後、黒夜とシルバークロースは病院内から消息を断つ事となる。

    決して散らぬ悪の華を、再び返り咲かせるために――彼女もまた立ち上がるのだ。

    914 = 468 :

    ~5~

    御坂「遅いわねえ…黒子のヤツ」

    その頃、御坂美琴もまた再建された常盤台女子寮の窓辺より頬杖をついて星を見上げていた。
    白井黒子がまだ帰ってこないのだ。あの後インデックスとカフェを出た時には既に二人の姿はそこになかった。
    二人揃ってテレポーターであるが故に追跡は難しかったし、首を突っ込むつもりもなかった。

    御坂「にしても…どこほっつき歩いてんだかね」

    お土産のショートケーキは冷蔵庫の中。先に食べてしまいたくなる誘惑が徐々に自分の中で大きくなって行く中御坂は思う。
    行き先は恐らく…軍艦島。二人が『死んで』しまったの場所に違いないと

    御坂「星かあ…私の初恋、叶いそうもないしなあ…もう」

    ついつい『あの二人が別れますように』と祈ってやろうかと悪い笑顔をして、そこで止める。
    あの二人はもう『死』すら分かてないんじゃないかとすら思えるほど深い部分で繋がっているように感じられるがゆえ。
    そうでなければ、御坂とて『勝負』を黒星で終える事など選びはしなかったのだから。

    御坂「なら…どうか私の周りの人達が目一杯幸せになれますように…と」

    超電磁組、妹達、数え切れないほどたくさんの人々。
    御坂美琴の世界にいる全ての人達のために御坂は祈る。
    上条当麻という星に手は届かずとも、祈る声は届くと御坂はもう知っているから――

    ヒュンッ


    御坂「!」

    そこで…御坂は気づいた。自分が頬杖をついていた窓辺をすり抜けて…
    『空間移動』にて帰って来た…親愛なるルームメイトの『帰還』を。
    肩越しに振り返り、見交わす。そこにはもう――

    御坂「…遅かったじゃないの…」

    「申し訳ございませんの…」

    御坂「ダメなんだからねー能力使って帰ってきちゃ…でもまあ許してあげる!」

    見慣れた常盤台中学の冬服。そこに霧ヶ丘女学院のブレザーはもう羽織られていない。
    金属製の円環ベルトも、軍用懐中電灯ももう纏われてはいない。
    そして…長い間下ろされたままだった髪が…特徴的なリボンによるツインテールに戻されて――
     
     
     
     
     
    白井「――ただいまですの!“お姉様”!!」
     
     
     
     
     
    御坂「…おかえりっ!黒子!!手洗ってきなさい!ケーキあるわよ!!」

    8月10日より数ヶ月経って…白井黒子は御坂美琴の元に帰って来た。

    終わらない夏の日に、別れを告げて――

    915 = 468 :

    ~6~
    禁書目録「ふふふ!泣いても叫んでも誰も来ないんだよ!」

    そう、これはきっと誰かの祈りなのだ

    フレメア「く、くすぐったいかもインデックス…!だ、大体そんな所舐めちゃ…あっ!」

    例えばそれは、明日を目指す者の祈り

    一方通行「ガス欠だァ?オイどうすンだこりゃァ!」

    黄泉川「仕方ないじゃんよー!でも…どうするじゃん?レッカー呼ぶじゃん?」

    垣根「あー…俺の車に女共まとめて移すか?でも第一位、オメーの席ねーから!歩いて帰れ!!」

    一方通行「変わらねェなァてェェェェェいィィィィィとくゥゥゥゥゥン!!」

    初春「垣根さん!意地悪しちゃダメです!」

    例えばそれは、未来を求める者の祈り

    削板「俺の根性ならみんなまとめて乗せて(ry」

    雲川「乗れるか!!自分が何(デコチャリ)乗ってるかちょっとは考えて欲しいんだけど!!」

    御坂「もうイヤだこのレベル5、とミサカは一人下山の準備をします」スタスタ

    芳川「待って!!そんな甘い見通しで降りたら遭難してしまうわ!」

    青髪「なにお願いしたん?」

    心理掌握「………………」

    青髪「え?も一回言うて?」

    例えばそれは、先を願う者の祈り。

    浜面「うー冷えて来た冷えて来た…窓締めんぞー」

    フレンダ「冷えて来たからあったかいココア買って来て欲しい訳よ!」

    絹旗「超ホットレモンお願いします。二階の自販機ですけど」

    滝壷「私は、むぎのからもらったお茶でいいや」

    浜面「フレンダはともかく絹旗は自分で買いに行け!」

    絹旗「パンツ見せてあげますんで超頑張ってくれませんか?」ピラッ

    浜面「いらん!」

    立ち位置が異なれども

    黒夜「――誰が、祈ったりするもんか」

    SC「あー…」

    敵味方に別れていようとも

    御坂「明日…晴れると思う?」

    白井「ええ…きっと晴れますの」

    それこそ…海を越え、国が違えども

    結標「繋がったかしら――そっちはどう?秋沙」

    姫神『――うん。こっちも。星がいっぱい。淡希は?』

    結標「――私もよ」

    きっと今この時、全ての人間が同じ星空を見上げ、祈っている。

    レイヴィニア「…流星群…か…」

    『明日』を、『未来』を、『誰かの幸福』を、分け隔てなく――

    絶対等速「彼女が出来ますように…!イヤほんとマジで!」

    そして――終わらない幻想(あした)を夢見る者達が――もう一組

    916 = 468 :

    ~7~

    ずっと一人で構わないと、ずっと独りで生きていけると、そう思っていた。
    過去が、狂気が、孤独が、後悔があまりに重過ぎていて閉ざしていた瞳。
    その開かれた眼差しの先に…あいつがいて、私がいる。

    上条「本当に…どんな願い事でも聞いてくれんのか?」

    麦野「なんだったら絹旗が着てるような服でも着てやろうか?」

    あの夏の日。あの星の夜。私が長針、あいつが短針。
    交わる度に一つづつ、少しづつ、私は前に進めた気がする。そう思えてならない。

    上条「服かあ…なら上条さん、沈利に着て欲しい服があんだけどさ」

    麦野「なに?バニーガール以外なら受け付けるわよ」

    私がガラクタのように見てきた人間、物事、この色褪せた世界。
    それが…こいつといるだけで、何よりも得難い宝物に見えて来るという奇跡。
    それはきっと誰にも壊せない、こいつがくれた優しい幻想。

    上条「…今じゃなくって、あと何年か後に着て欲しいもんがあんだ」

    麦野「…私、ヒラヒラしたヤツ嫌いなんだけど?」

    上条「――着てくんねえか?」

    麦野「――着てやるわよ」

    恋をすれば救われるだとか、愛されれば報われるだとか、そんな誇大妄想の延長みたいなものなんていらない。
    私が欲しかったもの。それは罪と血と死にまみれた汚れた私の手をとってくれる、こいつの傷だらけの手。

    麦野「着てやるから…着てやるから早く迎えに来いってんだよー!!」

    季節が通り過ぎても、今日という日を忘れてしまっても、変わらず私はこいつと手を携えていきたい。
    時にゆっくり、時に加速し、過ぎ行く一秒一秒を、泣いて、笑って、抱き合って。

    上条「よっし!!ならもう一個の願い事、叶えてくれ!」

    麦野「ひとつじゃないの!?」

    上条「一つだけなんて言ってねーだろ!」

    投げ捨てて来たガラクタが、こいつといるだけでこんなにも眩しい。
    この流星群が霞むほど、私にとって目映い『光』

    上条「いいかー!!言うぞ言います言ってやるの三段活用!!!」

    張り上げるような声音、囁くような声色、私を選んだ男、私が選んだ男。

    上条「俺は―――………

    上条、当麻

    私に許された、たった一つの『永遠』――

    917 = 468 :

    ~光輝く麦の穂を持つ乙女~

    かくして、物語はここに始まる。

    果たされた旧き約束を胸に抱き、二人は今一度歩き出す。

    麦野「――しょうがないなあ……」

    交わされた新しき約束を星に誓い、二人は再び走り出す。

    麦野「そんな風に言われたら、断れないじゃない」

    取り戻せない昨日を共に悔やんで

    麦野「――断るつもりもないんだけどさ」

    困難に覚束ない今日を共に生き抜き

    麦野「私の事を、誰よりわかってくれてるあんたが」

    希望に満ち溢れた明日を共に夢見て

    麦野「そう言ってくれるのが…本当に嬉しい」

    この星降る夜だけが見下ろしていた

    麦野「だから――叶えてあげる。あんたの願いと、“私”の願いも」

    世界で一番優しい幻想に包まれて

    麦野「――でもね?それは“私達”だけじゃないんだにゃーん?」

    終わらない物語の1ページ目を共に手繰る。

    麦野「将来、この星を見に来る時は――“三人”でね?」

    アラトスの『星辰譜』はこう記す。『乙女座の一番星、その名はスピカ』

    麦野「――だって、お前は、私を選んだじゃないか」

    アラトスは『星辰譜』にこう語る。『スピカの意、それは“光り輝く麦の穂を持つ乙女”の役』であると。

    麦野「ふふふ…と・う・ま」

    天文暦にも載っていない、希望という名の星を目指して二人は歩む。
     
     
     
     
     
    麦野「これからも、よろしくね?」
     
     
     
     
     
    神より浄めし魔を討つ少年と、麦の穂を持つ乙女が交差する時、神話は始まる――
     
     
     
     
     
    新約・とある星座の偽善使い(フォックスワード)・終
     
     
     
     
     

    918 = 870 :


    ただただ泣いた
    次回作に期待

    919 = 468 :

    以上、新約・とある星座の偽善使い(フォックスワード)、最終回『メモリーズ・ラスト』終了です。

    今回のテーマは『救い』『生きる』に続いて『祈り』でした。

    皆様のレスに支えられ、ずるずると1ヶ月もスレをお借りいたしましたが、今までどうもありがとうございました!

    それでは以下、皆様のスレになります。失礼いたします!ではお疲れ様でした!!

    920 :

    乙。
    黒子良かったね。

    そして頑張れ雲川さん。いつか想いは通じるさ。多分。

    921 :

    乙!!
    こんなに感動したSSは初めてだった...
    本当にありがとう!!

    922 :

    あんた天才や 涙でてきた

    次回作も期待します

    923 :

    上条さんがむぎのんに着て欲しいと言ったのはウェディングドレスか

    924 :

    お疲れさまでした
    感無量とはこのことかな

    925 :

    またひとつ神スレが終わってしまったか……
    次回作超期待

    あと作者の黒子と結締と姫神のSSタイトルをよかったら誰か教えてくれ、名前がわからん……

    926 :

    >>915
    >それこそ…海を越え、国が違えども
    >結標「繋がったかしら――そっちはどう?秋沙」
    >姫神『――うん。こっちも。星がいっぱい。淡希は?』
    >結標「――私もよ」
    >きっと今この時、全ての人間が同じ星空を見上げ、祈っている。
    ここで時差を気にした俺は負け組

    927 :

    時差なんて思い浮かべもしなかった俺は勝ち組

    928 :

    >>925 とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド)かな?
    >>926 こまけぇこたぁ(ry

    作者様、お疲れさまでした
    やっぱりハッピーエンドは最高だな、俺の願いも叶えてもらったよ
    (自分は>>864の奴です)




    929 :

    乙!!
    青髪と心理掌握してんを書いてくれ!!

    931 :


    インデックスさん、フレメアになにしてんのww

    932 :

    >>931
    ペロペロしてんだろ?言わせんな恥ずかしい

    933 :

    いやホントに乙です……。
    ここまで完成度高いSSは記憶にないレベルだわ
    2万回異なる文章で上麦SSを投下してレベル6を目指してくれ!

    934 :

    乙乙乙!!レイニーブルーの絶望感が嘘のような最高のハッピーエンドをありがとう!!

    新約偽善使い二巻、レイニーブルー続編、カッキースピンオフ、ソギー雲川、青ピ掌握、どれか書いてほしいなー(チラッ)

    935 = 924 :

    >>934
    たしかに俺もみたいが
    これ以上はさすがに作者がたいへんだろう
    妄想でがんばっとけ

    936 :

    外伝も本編もお疲れ様だぜー!
    ここまで完成度高いSSはそうそうないわ…ただ全力で作者乙
    またどっかで作品読ませてくれよー

    937 = 929 :

    アオピ掌握を!!!
    というか他カップル(候補)の外伝を求める!!

    938 :

    乙!
    超面白かった。
    次回作待ってる。

    次回作とかもう考えてたり…
    は流石にないか。
    まあ、期待してる!

    >>1は天才です。

    939 :

    >>938
    小ネタスレで見かけたけど、とある夕凪の座標空間(ブルーゲイル)って話らしいぞ?

    なんにせよ>>1乙…!!!前作の破滅の美学満点な最高のバッドエンドから今回みたいな全員救出の最高のハッピーエンドまでほんとお疲れ様1!!いろんなむぎのんいっぱい見れてほんとよかったよ

    940 :

    すんばらしいage

    942 :

    >>937
    実はいくつかストックがありますが、上麦の要素がほぼ絡まなくなるスレ違いの外伝(あわきん→←黒子の百合、青P×食蜂の友達以上恋人未満など)

    なので、投下は総合スレにさせていただくと思います。ここは皆様のスレですので…それでは失礼いたします。これからも良い上麦を…

    943 :


    作者も良い上麦を

    出来ればこのスレに報告してくれると嬉しいな

    944 :


    何気ない夫婦生活とかほのぼの系もみてみたかったwwwwww

    945 :

    きっとむぎのんは、詩菜さんを超える、嫉妬深く、独占欲の強い奥さんになるだろうな…

    946 :

    乙の乙の乙!作者ー!前みたいなキャラ1クラスオーバーで飲み会みたいなノリで番外編やってくださいおねがいします!またフィアンマ出してくれ!

    でもってまじめに感想…クラシックみたいな心理描写とハードロックなバトルが最高でした。ブルブラの百合とレイニーの破滅を読んで本当に女性なんだなって思った。上麦とあわくろに目覚めさせてくれてありがとう。総合に投下したら是非教えてほしい。絶対読みに行くから

    947 :

    相変わらず目から冷や汗が止まらないんだぜ

    それにしてもまたしても素敵な独自解釈やら設定やら伏線やら投下してくれやがって、今後の新刊でかまちーの投下する設定と摺り合わせるのがきっと大変じゃん
    どう料理してくれるのか今から楽しみだぜちくしょう結婚してくれ

    次の本編(?)投下は新約2巻発売後になんのかな
    今から待ち遠しいぜ
    しばらくは心理掌握関連の燃料投下もありそうだし、番外編も超期待してる

    948 :

    ぜ、前作って言われてる百合ものってそんなにおっかないのか?誰か詳細おしえろください。

    949 :

    百合だけど百合否定的な内容
    姫神が病む ぐらいでね?

    950 :

    >>943
    ありがとうございます。これからも何か書く時は上条さんと麦野がちょいちょい出てくると思います。

    そして総合の方にとある驟雨の空間座標(レイニーブルー)の黒子視点を投下させていただきました(新約~にもリンクしています)。
    苦手な方は大変申し訳ございません…では失礼いたします。


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