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    元スレ麦野「ねぇ、そこのおに~さん」2

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
    タグ : - 麦野「ねぇ、そこのおに~さん」 + - フレンダ + - ヤンデレ + - 上条 + - 佐天 + - 滝壺 + - 絹旗 + - 美イン + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    201 = 195 :

    ~第三学区・『ミネルヴァ』スイートルーム3~

    上条・麦野「「ッらあああああああああああああああああ!!!」」

    駆ける。走る。奔る。10メートルにまで引き離された彼我の距離をひたすらに!

    禁書「――侵入者、再確認」

    轟ッッ!と上向いた『光の柱』が再び、断頭台の刃のように振り下ろされる。
    インデックスが――上条と麦野の姿を再確認する!

    上条・麦野「「((来る!))」」

    身構える上条、その手を勝利者の勝ち名乗りを支えるかのように支え持つ麦野。

    そして

    バサァッ!

    上条「おまえ…!」

    麦野「あんた…!」

    そこへ舞い散る…漆黒の神父服より何万枚にものぼる…ルーンの刻まれしカード!

    「Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)」

    現出されし煉獄の巨人、顕現されし紅蓮の十字架…地獄の業火を纏いし彼の者の字は…

    ステイル「イノケンティウス(魔女狩りの王)!!!!!!」

    上条・麦野「「ステイル(赤毛)!?」」

    魔女狩りの王が、光の柱と激突する。

    202 = 195 :

    ~side magician~

    ステイル=マグヌスは上条当麻を嫌っていた。
    たった数日でかつて己が占めていたインデックスの傍らをさも当然のように寄り添っている事が。

    ステイル=マグヌスは麦野沈利を嫌っていた。
    たった一度の会敵で、己がインデックスのために研ぎ続けた牙を得も知れぬ力で打ち破った事が。

    ステイルはたった今、目の前でインデックスの身に起きた異変に奥歯が砕けんばかりに歯噛みしていた。

    やっと彼女の記憶を奪わずに済む、やっと彼女を呪縛から救い上げられたように思えた矢先の事だった。

    上条・麦野「「ッらあああああああああああああああああ!!!」」

    あの二人は、立ち向かう。巨象と蟻ほどもある絶望を通り越した戦いに、異能を打ち消す右手と、それを支える身体一つで。

    ステイル「…!」

    その姿に、ステイルはプライドに火を点けられた。魔術師でもない能力者(バケモノ)共が立ち向かう中…なぜ自分が背を向けられよう。

    誓ったはずだ。たとえインデックスが全て忘れてしまうとしても、自分は何一つ忘れずにインデックスのために生きて死ぬと

    ステイル「MTOWOTFFTOIIGOIIOF IIBO LAIIAOE IIM HAIIBOD IINFIIMS ICRMMBGP!!!(世界を構成する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ…それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。具現せよ、我が身を喰いて力と為せ!!!)」

    誓ったはずだ。インデックスの前では誰にも折れず曲がらぬ炎の剣となりて、我が名が最強である理由を証明すると

    ステイル「イノケンティウス(魔女狩りの王)!!!!!!」

    今ここから始めるのだ。魔術師(ステイル=マグヌス)を

    203 = 195 :

    ~第三学区・『ミネルヴァ』スイートルーム4~

    ステイル「行けえ!能力者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

    禁書「――警告、第六章第十三節。新タナ敵兵ヲ確認。戦闘思考変更、戦場ノ索敵ヲ開始…完了。現状最モ何度ノ高イ敵兵『上条当麻』『麦野沈利』ノ破壊ヲ最優先シマス」

    激突する炎と光。神から賜りし始原の二元がぶつかり合う。光の柱を防ぎ切りながら。彼我の距離…六メートル!

    上条「(手を…伸ばせば…届くんだ!)」

    千切れかけた腕でも、壊れかけた手でも

    麦野「(早く…速く…はやく!!!)」

    それを支える麦野沈利がいる。その先にインデックスがいる。

    禁書「――警告、第二二章第一節。炎ノ魔術ノ術式ヲ逆算二成功シマシタ。曲解シタ十字教ノ教義ヲルーンニヨリ記述シタモノト判明。対十字教用ノ術式ヲ組ミ込ミ中…第一式、第二式、第三式。命名『神よ、何故私を見捨てたのですか』即時実行シマス」

    ドンッ!!!!!!

    上条「色が…変わった!?」

    ステイル「ここまでとは…!」

    無限に等しい再生力を誇るイノケンティウスが、たちまちその力を奪われかきけされて行く…
    真白き光から赤黒い光へと色を変えた竜王の殺息(ドラゴンブレス)によって!

    麦野「(まだ…まだ…まだ!!!)」

    まだ届かない。ステイルが稼いでくれた僅かな時間でもまだ…インデックスまでまだ…届かないにも関わらず…

    麦野「(―――!!!)」

    再び光の柱が迫る――

    204 = 195 :

    ~side Kanzaki~

    誰を守るために力をつけたのだろう。

    力があるから誰かを守ろうとしたのか。

    神の加護たる幸運を、『聖人』としての力を生まれながら手にしていながら

    守りたかった人々に不運を押し付け、守れず、出奔し、さすらい、迷って

    新たな仲間の元で手にしたモノ

    旧き仲間の元に置いてきたモノ

    肩を並べる者のいない『力』

    背を任せる者を信じきれなかった『弱さ』
    それをあの少年に…心ごと殴りつけられたようだった。

    上条『なら――今度は守ってみろよ…魔術師』

    205 = 195 :

    短髪の少女は道を切り開いた。ステイルはその道を後押しした。ならば――自分は?

    『必要悪の教会の魔術師』神裂火織は?

    『元天草十字凄教の女教皇』神裂火織は?

    『聖人』神裂火織は?

    『神裂火織』はなにを為すべきだ?

    神裂「救われぬ者に救いの手を」

    決まっている――理由など、いらない。

    神に見捨てられた人々さえ一人も残さず救って見せると決めた日から

    インデックスの記憶を消したその日から

    仲間を信じきれず出奔したあの日から

    その全てをひっくるめて、今こそ名乗ろう、そして今こそ伸ばそう。

    神裂「Salvere000!!!」

    救われぬ者に、救いの手を

    206 = 195 :

    ~第三学区・『ミネルヴァ』スイートルーム5~

    神裂「Salvere000(救われぬ者に救いの手を)!!!」

    ドンッ!!!!!!

    神裂は飛んだ。光の柱に呑まれそうな上条と麦野の元へ。疾風すら遅きに逸し迅雷すら後塵に拝する速力で

    上条「神裂!」

    麦野「…飛ぶわよ?かーみじょう」

    上条「え」

    神裂「手を!!」

    上条が言い切るより早く…神裂は二人の連なった手を掴み…インデックスの頭上へと投げ放つ!それと同時に

    ドオオオオオオオオオオオオオオオン!

    神裂「…ガッ…ハッ!」

    上条達に代わって襲い来る、竜王の殺息の衝撃の余波に吹き飛ばされる。
    光の柱の直撃を避けられたのは一重に、神裂の並み外れた身体能力が故である。

    神裂「こ…れ…で!」

    中空へ投げ出された二人を、インデックスはまだ捉えきれていない。

    御坂美琴が足場を崩さねば、ステイルが足止めせねば、神裂が駆けつけねば、誰が欠けても成し得なかった『奇跡』

    そして『奇跡』は空を舞う。眼下の『奇蹟』へと

    207 = 195 :

    ~side Mugino~

    傍らの少年との血塗れの路地裏の出逢いから

    眼下の少女とのベランダでの出会いから

    ずいぶん遠くまで、ずいぶん長くまで感じられる

    満天の星空を背に、上条のちぎれかけた腕を支えながら…宙を舞う。

    麦野「ねえ当麻…あんたを助けてくれる人、いっぱいいたでしょ?」

    何度も、何回も、何遍も自分を支え、救い、守り、抱いてくれた右手を――離す

    麦野「今度は――アンタが助けられる番」

    宙を舞う上条の背中を抱く。為すべき事はわかっている。自信がこの胸に、確信がこの心にある。

    麦野「今度は――私がアンタを助ける番」

    電子よ跪け

    麦野「だって」

    光子よ首を差し出せ

    麦野「アンタは」

    原子よ平伏せ

    麦野「私を」

    私は女王

    麦野「選んだじゃないか」

    私は原子を統べる女王

    麦野「だって――アンタは私を選んだじゃないか」

    原子崩し(メルトダウナー)――麦野沈利

    そして上条当麻の――麦野沈利

    バサアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!

    『光の翼』は、二度羽ばたく

    208 = 195 :

    ~第三学区・『ミネルヴァ』スイートルーム6~

    宙へ投げ出された上条当麻を守護するように広がる十二枚の光の翼を、自動書記に操られたインデックスは見上げた。

    禁書「目標――索敵」

    だがそれは遅きに逸した。上条当麻の右手を離し、その背を抱く麦野沈利の『光の翼』はそれよりも遥かに早かったのだから

    上条「――待たせたな――インデックス」
    上条当麻が千切れかけの右腕を…左手を添えて…空中からインデックスの頭上へと迫る。

    上条「――帰ろうぜ――」

    禁書「目標――視認」

    掴む事も、握る事も、振るう事も出来ない右手…だが今はもうそれすら必要ない…触れるだけで終わる。

    上条「おまえ言ったよな…地獄の底までついてきてくれるかって」

    添えた左手で右手を差し出す。インデックスの表情が見える

    上条「悪いけど…オレが地獄に行っちまったら、コイツ(麦野沈利)までついて来ちまうからさ…だから」

    添えた左手で右手を差し出す。インデックスの髪に触れる

    上条「だから――引きずり上げてやる」

    添えた左手で右手を差し出す。インデックスの頭部に…触れた!!

    上条「地獄の底まで、ついて行きたくなけりゃあ…地獄の底から、引きずり上げてやるしか…ねーよなぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

    パキイイイイイイイイイイイイイイン…!

    インデックスが解き放たれたその時…『羽』が舞った

    209 = 195 :

    ~終章・1~

    竜王の殺息(ドラゴンブレス)が開けた天井の風穴から降り注ぐ『羽』を…力尽きた麦野とインデックスの狭間から上条は見上げた。

    上条「(あれが…青髪の言ってた…“羽”…なのか?)」

    ちぎれかけた右腕を抱きながら上条当麻はぼんやりと舞い散る数百枚にものぼる翼の雨を見つめていた。

    ステイル「――!――!!――!!!」

    御坂は力を使い果たし、神裂は倒れ伏し、彼方のステイルの声は聞き取れない。だが上条にはわかった。逃げろ、と言われているのが。

    だが上条当麻は動かない。力尽きた麦野と、インデックスを置いて逃げる事は出来ない。
    この『羽』が危険だと言う事はわかっているのに

    上条「――――――」

    これが、神の下した答えか。逃れようもない不幸が贈り物だとでも言うつもりか。
    自分が逃げれば少女二人が犠牲になり、自分が逃げず身を盾に犠牲をすれば二人は助かる――最悪の二者択一。

    上条「――沈利――」

    210 = 195 :

    『かーみじょう』

    そうさ

    『ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね』

    そうだろ?

    『リンゴより甘いのがいーい?かー・み~じょ・う?」』

    そうなんだろ?

    『いくら一人暮らしだからってベッドの上に投げっ放しはお姉さん関心しないにゃーん?』

    インデックスが犠牲になるんじゃない

    『私に関わった事、いつか後悔させてやるんだからね』

    麦野沈利が犠牲になるんじゃない

    『それとも今頃はあの第三位の所かしらねえ!?自家発電覚えたての猿みたいに腰振ってねえ?こんな血で汚れたメンヘラ女よりかは腐れ売女の×××の締まり方がまだしもマシってさぁァ!』

    俺が犠牲になるんじゃない

    『私と!テメエの!住んでる世界が!立ってる場所が!どれだけ違うか能天気にぬくぬく生きてるテメエが考えた事が一度でもあるのか上条当麻ァァッ!』

    帰るんだ

    211 = 195 :

    『おっかえりー。ねぇねぇ当麻?聞いて聞いて?この娘ったらねー…』

    三人で

    『にっ…似合う?久し振りに引っ張り出して着てみたんだけど…』

    みんな一緒に

    『関係ねえよ!!他人の目なんてカァンケイねェェんだよォォォ!!私は当麻と二人で回りたいんだよォォォ!!』

    助かるんだ

    『プリ帳の一番頭に貼ってやるよォォォ!ピンナップにして晒してねぇぇぇかーみ~じょーう~!』

    誰一人欠ける事なく

    『…二度目は、アンタから来て…』

    終わらせるんだ

    『わ、私だって初めてだってんだよぉぉぉ!!!』

    掴め

    『――アンタなら、諦めないって思ったから』

    浚え

    『そろそろ、誰かがアンタを助けてあげてもいい頃だと思う』

    この手で

    『あんたは、私を選んだじゃないか』

    この腕で

    『愛してる…当麻』

    希望(ほし)を――掴め!!!

    212 = 195 :

    上条「いいぜ…」


    ちぎれかけた右腕の断面から『力』が


    上条「この物語(せかい)が…」


    ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾと何かが這い出してくるような感覚が


    上条「神様(アンタ)の作った奇跡(システム)の通りに動いてるってんなら」


    透明な『なにか』が…上条当麻の中の『なにかが』…


    上条「― ― ま ず は 、 そ の 幻 想 を ぶ ち 殺 す ! ! 」


    今、その萼(あぎと)を剥き出す!!


    グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

    213 = 195 :

    ~終章・2~

    ステイル「なんなんだ…アレは!!?」

    あの男がインデックスを止めた。魔術による逃れようのない翼が降り注ぐのも見えた。だが倒れ伏すステイルには今見ているモノが信じられない。

    上条「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!!!!!」

    グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!!!!

    ちぎれかけた右腕に宿る半透明の竜王の顎と、上条当麻が雄叫びが少女達に降り注ぐはずだった『羽』を一枚残さず…かき消した。跡形もなく…!

    ステイル「馬鹿な…」

    恐怖でおかしくなった頭が見せた幻覚か…それともあれが本来の『上条当麻』の姿なのか…それすら判別がつかない。

    ステイル「どうなってるんだ…この学園都市(まち)は…!」

    先程の麦野沈利の翼…十二枚の『光の翼』…あれはまるで、聖座(せいざ)を追われた光を掲げし者…暁の明星(ルシュフェル)のようで…

    眼前の上条当麻の腕…神への反逆であるかのように牙を剥く竜王の顎…あれはまるで、地に投げ落とされた竜…偽神(サタン)のようではないか

    ステイル「なんなんだ…なんなんだ…君達は!!!」

    グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!!!!

    神裂「神浄の…討魔!」

    凱歌を歌い上げる『何か』の産声…『神浄討魔』の覚醒…その雄叫びを最後に…ステイルと神裂の意識は途絶えた―――

    214 = 195 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
    禁書目録編及び本日の投下を終了いたしましす。

    思った以上に長くなってしまった上麦も、次回でエピローグの予定です。ここまでお付き合いいただいた皆様方、あともう少しだけお付き合いいただければ幸いです。

    それでは失礼いたします

    215 :

    うおおおおお

    216 :

    うわああああああああああああああああああああああああああああああ





    217 :

    うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおこの作者は化け物か?激しく乙!!!!!!!!!!!

    218 :

    俺、ここまで熱いSS読んだことない…
    >>1
    まだ終わってないけど拍手が止まらない

    219 = 194 :





    220 :

    ばかやろう…おれなんか麦のんの光の翼んとことKJさんドラゴンストライクでマジ泣きだよ…

    221 :

    さすが上条さんだぜ!!

    222 :

    うますぎるだろう
    人が多いのに流れは原作通りだし、何より熱い!

    223 :

    ふと思ったんだが歩く教会が無事だったってことは、インデックス解放したとき右手が掠りでもしてたらシリアスシーンが台無しになるとこだったな。

    なにわともあれ>>1超乙。

    224 :

    おい作者、SSなんか書いてないで働けよ

    225 :

    光の翼って言われると麦野が最終回のV2ガンダムみたいになるビジョンが……

    226 :

    後日談もやらなイカ?まだまだ読み足りないでゲソ。

    227 :

    バトル描写がたまらん
    熱いなー!

    228 :

    >>225

    麦野「ガンダムッ!!!」

    229 :


    何故ここまで熱いんだ……なんか泣いてしまった
    禁書の登場人物のかっこよさが顕現してる

     惜しみない乙の嵐を!!!  ってまだ終わってなかったなww
    まだまだ読み足りないです!!

    230 :

    鎌池働け

    上×麦以外に無いように思えてきたよ

    231 :

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)の者です。
    最終回のエピローグを投下させていただきます。
    たくさんのレスをありがとうございます。ただただ感謝する事しか出来ません。

    それではよろしくお願いいたします。

    232 = 231 :

    ~エピローグ~

    上条「だあああぁぁぁ!不幸だ不幸過ぎる不幸ですよの三段活用!!」

    禁書「とうま!朝からうるさいんだよ!せっかくハンバーガーお腹いっぱい食べる夢見てたのに!」ガブッ!

    上条「痛たたた!痛たたたたたた離して下さいインデックスさん!!上条さんの頭はハンバーガーじゃありませんよ!!?」

    上条当麻は起き抜けに頭を抱えていた。目覚まし時計が故障し、あまつさえ二段構えであった携帯電話のアラームも充電切れ。
    その上大騒ぎの大急ぎの大忙しで朝の支度を整えんとする矢先にインデックスから噛みつき攻撃を受ける始末。

    禁書「もう…とうまはしずりがいないと本当にダメなんだよ!もっとしっかりしなくちゃダメかも!」

    上条「それは言わない約束だろ…ってやべえもうこんな時間だ!インデックス!朝ご飯は冷蔵庫の中の昨日の残りな!じゃあ行ってきます!」

    禁書「あっ!とうま!しずりに伝えて欲しいんだよ!今度はビーフストロガノフ作ってくれたらうれしいなって!」

    上条「ああ!伝えとくよ!」

    禁書「いってらっしゃいなんだよ!とうま!」

    学生服を引っ掛け、靴に足を突っ込み、鞄を片手に開け放つ玄関。見送るインデックスが手を振る。それを背に受け上条は駆け出す。

    季節は春。舞い散る桜の花片がいたるところを鮮やかに染め上げる。柔らかな春風がそれを吹き上げる――
    上条当麻は無事留年の危機を乗り越え、高校二年生への進級を果たしていた。

    233 = 231 :

    ~第七学区・とある高校~

    青髪「アウト!」

    土御門「セーフ!」

    上条「よよいの…よいってなあ!」

    キーンコーンカーンコーン…

    吹寄「遅いぞ上条当麻!新学年早々まだ春休みボケが抜けきらないの!?」

    小萌「はーい上条ちゃんギリギリセーフでーす。今日はツいてましたねー?」

    上条「はっはっは!今年の上条さんは一味違うの事ですよ」

    姫神「でも。一限目は小テストの返却。点数も一味?」

    上条「姫神…今は素直に間に合った事を喜ばせてくれ…」

    滑り込みで教室に駆け込んできた上条、それを茶化す土御門と青髪。たしなめる吹寄と姫神と小萌。
    一年生の時とさして変わらぬ顔ぶれ。だがそれがかえって気のおけない和やかな雰囲気を醸し出している。

    土御門「でも今朝は特にギリギリだったんだぜい…またあの彼女さんと朝までコースかにゃー?」

    青髪「なんやて!?“昨夜はお楽しみでしたね”やって!?詳しく聞かしーやカミやん!」

    上条「昨日はメシ作りに来てくれただけだっての!つか顔近い!目見開くな!」

    小萌「はーい授業を始めますからおしゃべりはやめてくださいねー」

    窓際に縦並びの三馬鹿(デルタフォース)。前が青髪、真ん中が上条、後ろが土御門の揃い踏みである。
    小萌に注意され、それぞれ向き直る中、青髪ピアスはニヤニヤしながらも思案する。

    234 = 231 :

    青髪「(一度ならず二度までも“死”から逃れただけあって悪運強いなーカミやんは)」

    レベル5第六位(ロストナンバー)…青髪ピアスの能力『俯瞰認識』を以て見通した上条当麻の未来…それは麦野沈利という存在を得て大きく変わった。

    青髪「(一度目は、カミやんの記憶が失われる未来が半分…第四位の記憶が喪われる確率が半分やったはずやのに)」

    土壇場の窮地に竜王の顎(ドラゴンストライク)を発現させ、本来存在しないはずの『2人とも助かる』という結末を掴み取った上条。
    神の加護も運命の赤い糸も打ち消してしまう右手は、ついぞ神の摂理から宿命の因果律まで食い破ってしまった。

    青髪「(二度目は…あの第三次世界大戦やな。あっこでもカミやんは“死”を迎えるはずやったのに)」

    『右方のフィアンマ』を下した後、ベツレヘムの星と共に北海へと沈むその刹那…再び現れたのだ。
    あの『光の翼』を持つ麦野沈利がまたも土壇場で光臨し上条当麻を救ったのである。

    青髪「(あの人はプランの手順がワヤになるし僕は予言外れるし自信なくすで)」

    統括理事長アレイスター・クロウリーのプラン、青髪ピアスのシナリオにはないイレギュラーの続発。

    青髪「(まっ、ええか!友達失う未来なんて別に欲しないし!!)」

    それはあの2人のみならず…あの2人に関わる人間にまで及んでいる。そう、例えば――

    235 = 231 :

    ~第七学区・カフェ『サンクトゥス』~

    麦野「………………」

    垣根「よう、また会ったな第四位」

    2人は麦野と神裂が激突した後、再建したカフェテラスに差し向かいでコーヒーを楽しんでいた。
    というよりも…一方的に垣根が麦野に話し掛けているような形だが。

    麦野「…勘定持ってやるからとっと私の視界から消えろホスト崩れ。キャッチ(客引き)かますなら暗くなってから湧いて来いゴキブリみたいに」

    垣根「つれなくするなよ第四位。お前、今はただのカタギだろ?もう暗部でも何でもねえ女にどうこうする気はねえよ」

    『前方のヴェント』が襲来した『0930事件』の前にはもう麦野沈利は『アイテム』から引退していた。
    新たなリーダーに絹旗最愛を据え、フレンダがそれを補い、『八人目のレベル5』となった滝壺理后がそれを支えている。
    滝壺からたまにメールが来る。なんでも元スキルアウトを束ねていた『浜面仕上』なるメンバーが新たに加わり、新生アイテムは立派に各勢力と渡り合っていると。

    麦野「私がカタギに戻ったからなんだってぇ?関係ねえよ。テメェにはカァァンケイねェェんだよ。どうせならそのイケ好かねえツラも第一位にプチッと潰されちまえば良かったのにさあ?」

    垣根「オレは構わねえがオレを必要とする女が悲しむだろ?」

    236 = 231 :

    そして垣根帝督もまた、一方通行との戦闘で重傷こそ負わされたものの健在である。
    今現在も虎視眈々と学園都市を掌握するために動いているらしい。

    麦野「だったらとっととその必要とする女の所に行けば?もうアンタの口から出る屁は嗅ぎ飽きたわ」

    垣根「相変わらず口が悪いな…やべっ、メール来てたか…じゃあオレ行くわ」

    携帯電話をいじる垣根。その画面には『初春飾利』の名が表示されていた。
    そして垣根はおもむろに麦野の分の伝票も持って席を立ち上がった。

    麦野「貸しでも作るつもり?」

    垣根「まさか。他人の女には手を出さねえよ。そのくらいの常識はある」

    そして垣根帝督は背を向けて手をヒラヒラと振りながら去って行く

    垣根「――いい女になったな。麦野。見違えたぜ。お互いフリーだったら本気で口説いちまいそうだ」

    麦野「――遠慮しとくわ。私にはもう目が離せない男がいるから。アンタもカッコ良くなったよ。少なくとも昔よりずっとね」

    垣根「安心しろ。自覚はある」

    麦野「テメェで言うなヤクザ予備軍」

    垣根帝督。本来であれば肉体を失うほどの手傷を追い命を落とす運命であったが、その際関わった少女を通じて彼も新たな道を歩む事となる。
    そして今この時は…出会った頃より髪の伸びた、花飾りの似合う少女の元へと彼は向かう

    垣根「あばよ麦野。旦那によろしくな」

    麦野「まだ早いっての。もうちょっと先」

    そして学園都市第二位は颯爽と去って行く。『帝』の文字に恥じない、王者のように堂々とした足取りで。

    237 = 231 :

    ~第七学区・カフェ『サンクトゥス』~

    麦野「遅いわね…おかげで変なヤツに捕まるし――」

    「お待たせー!ごめん!また黒子に捕まっちゃって…げっ」

    麦野「…オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね…第三位」

    御坂「いい加減その呼び方やめてよね。私には御坂美琴って名前があんのよ…遅れちゃったのは本当にごめん!」

    垣根帝督が去った後、少し遅れて御坂美琴は麦野沈利と待ち合わせていたカフェにやって来た。
    それを麦野沈利は頬杖をつきながら見やった。

    麦野「いいわ。ケーキで許してあげる」

    御坂「年下にたかるつもり!?」

    麦野「序列はアンタのが上でしょうが。遅れてきた罰」

    御坂「うう~…」

    インデックスの一件以来、たまにこうして顔を突き合わせてお茶を飲む程度には関係は改善された。
    上条を通じて時に肩を並べて戦う事も何度かあった。未だ第三位と第四位のタッグを阻めた者はいない。
    だが、恋敵である事に変わりはない。今も昔も

    御坂「大学はどう?」

    麦野「そこそこ。そういうアンタは?」

    御坂「変わらず、かな」

    麦野「そ」

    大覇星祭の際に上条の両親が来た時は我先にと張り合ったり、一歩も譲らない。
    誰にでもフラグを立てる男の彼女というものは決して楽ではないのだ。

    御坂「あー…なんかあったかいわねえ」

    麦野「春だからね…けど花見にアンタは呼ばないわよ。前に飲ませたらアンタひどかったんだから」

    御坂「嘘!?全然覚えてないし言ってくれなかったじゃない!」

    麦野「言いたくないくらいひどかったって察しな御坂。アンタの家系って酒癖悪い?」

    御坂「ちょっと!親は関係ないでしょ!親は!」

    かしましい女の2人の戦いは続く…まるで似通った姉妹のように、気心しれた喧嘩友達のように――戦友のように

    238 = 231 :

    ~第七学区・映画館前~

    麦野「かーみじょう」

    上条「はい…」

    麦野「この私を一時間も待たせるだなんてエラくなったねー?んー?上条当麻くーん?」

    上条「すいませんでしたァッ!!!」

    待ち合わせに遅れた映画館前での見事な土下座を決め込み、地面に頭をこすりつける上条と仁王立ちの麦野。そのあまりの絵面は当然道行く通行人の耳目を引く。

    打ち止め「ねえねえ?あれはなにってミサカはミサカは指差してみたり!」

    一方通行「見ちゃいけませン」

    黄泉川「男の方完全に尻に引かれてるじゃん。あれ?アイツうちの学校の上条じゃん?」

    芳川「時間に甘い男は嫌われるのよ…私は自分に甘いけど」

    絹旗「げっ…超会いたくない男見ちゃいました」

    フレンダ「結局、ベッド以外じゃカカア天下な訳よ」

    滝壺「はまづらも遅れたよね?」

    浜面「うっ…」

    削板「待ち合わせに遅れるなんて根性が足りん根性が!」

    239 = 231 :

    麦野「まっ…いいわ。どうせこんなこったろうって思ってた」

    上条「悪い悪い…今朝返ってきた小テストが悪くってさ…それで補習が」

    麦野「そ。なら罰ゲームね?」

    立ち上がった上条の頭を撫でながら麦野は目線を合わせ…虫も殺さぬような笑顔のまま…

    上条「…!」

    麦野「んっ…」

    公衆の面前で…見せつけるようなキスをした。それも長く、深く。

    一同「「「「「「ゴクリ…」」」」」」

    上条「~~~ッッッ!!!」

    そして…名残惜しそうに唇を離し、途切れた銀の架け橋を舐めとるように麦野は舌舐めずりした

    麦野「はあっ…ごちそうさま。続きは映画終わってからね?」

    上条「さ、さいですか…」

    勝ち誇ったような笑顔のまま腕を組む。壊す事しか知らない左手を、見捨てる事を知らない右手に絡ませて。

    240 = 231 :

    麦野「で?なに見るの当麻?最近チェックしてないから私わからないわよ」

    上条「これ…なんてどうかな?なんかこのキャストってさ…俺達に似てないか?」

    麦野「なになに?平凡な男子高校生と年上のお姉さんのラブストーリー?ありがちね…」

    どんな未来が待ち受けようと、どんな運命が待ち構えていようと、2人でなら超えられる。2人でなら明日を迎えられる。

    麦野「確かに似てるけど女優は私の方が綺麗ね。俳優はアンタより顔いいけど」

    上条「なぬっ!む、麦野さん?そんなに遅刻を怒ってらっしゃるんでせうか…?」

    麦野「嘘よ。私にとってアンタ以上の男なんていないし、いらない」

    春の夜風が吹く。あたたかな空気と、舞い散る桜の花片を運んで、優しい時間を連れて来る。

    上条「ほ、誉められても上条さんからは何も出ませんよ」

    麦野「いいわ。身体で返してもらうから」

    上条「!!?し、沈利??!」

    麦野「あっ、すいませーん。学生で、タイトルは…」

    満天の星空だけが知る、2人の行き先、2人の行く末に、誰もが笑って迎えられる、最高のハッピーエンドへ

    上条・麦野「「とある星座の偽善使い(フォックスワード)二枚下さい」」

    ――永遠(とわ)の幸あれ――

    とある星座の偽善使い(フォックスワード)・完

    241 :

    完・・・だと・・・?
    いい締めだった。

    242 = 231 :

    皆様のおかげで無事完結と相成りました。これにて『とある星座の偽善使い』は終了となります。ありがとうございます…

    終了という訳で、少しだけ蛇足を

    このSSは

    Janne Da Arcの「ダイヤモンドヴァージン」って麦野→上条に合いそうだなーというその場の思いつきが最初でした。

    そして…作中で麦野が歌っていたシルビィ・バルタンの「IRRESISTIBLEMENT」は最大のネタバレでした。気になられた方は日本語訳の歌詞を見ていただけば幸いです。


    本当に勢いだけで最初から最後までノープランで書いた初SSを、ハッピーエンドへ導いて下さったのは読んで下さった皆様です。

    全員がヒーローだったこのハッピーエンドを下さったのは、読んで下さった皆様方全員です。

    ロゴを作ってくれた方、スレを立てて下さった方、感想や指摘のレスを下さった方、そして初代>>1さん、全ての上麦好きの皆様

    本当にありがとうございました。

    244 :

    意外とあっさりだったな。
    でもいい終わりだった。乙

    245 :

    乙!
    更新も速くて読みやすくて面白かった!

    246 :

    番外編くれ

    247 :

    浜麦にネ申作はいくつかあるが、上麦のネ申作はこれが初だ。乙だった。非女神まで出すとは細かいやつだ

    248 = 228 :

    乙かれさま

    249 :

    番外編でバットエンドとか無しですか

    250 :

    本当に些細なことなんだが軍覇さんは何なん?


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